エンジンの制御装置
【課題】流量可変のオイルポンプ及びオイルをピストンの裏面に噴射するオイルジェットを備えたエンジンの性能を向上させる。
【解決手段】エンジンコントロールユニット38において、オイルポンプ制御部38Aは、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧に基づいてオイルポンプ34の流量(オイルジェット噴射量)を制御する。点火時期設定部38Eは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量及びエンジン回転速度Neに応じた点火時期を設定する。点火時期補正部38Fは、点火時期設定部38Eにより設定された点火時期を、オイルポンプ制御部38Aによって制御されるオイルジェット噴射量に応じて補正する。そして、点火時期制御部38Gは、点火時期補正部38Fにより補正された点火時期に応じた制御信号を点火プラグ26の駆動回路に出力する。
【解決手段】エンジンコントロールユニット38において、オイルポンプ制御部38Aは、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧に基づいてオイルポンプ34の流量(オイルジェット噴射量)を制御する。点火時期設定部38Eは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量及びエンジン回転速度Neに応じた点火時期を設定する。点火時期補正部38Fは、点火時期設定部38Eにより設定された点火時期を、オイルポンプ制御部38Aによって制御されるオイルジェット噴射量に応じて補正する。そして、点火時期制御部38Gは、点火時期補正部38Fにより補正された点火時期に応じた制御信号を点火プラグ26の駆動回路に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンを冷却するために、特開2011−74891号公報(特許文献1)に記載されるように、ピストンの裏面にオイルを噴射するオイルジェットが取り付けられたエンジンにおいて、エンジンの回転速度及び燃料噴射量(負荷)に応じてオイルの噴射圧力(噴射量)を変化させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−74891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルジェットの噴射量が増減すると、ピストンの温度(ピストン温度)が変化するため、エンジン制御パラメータ(例えば、点火時期、燃料噴射量など)の要求も変化する。しかし、従来技術においては、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に応じて噴射量を変化させていたが、エンジン制御パラメータの要求変化に対処しておらず、例えば、点火時期、燃料噴射量などが不適切となって、所要のトルクや燃費が得られないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、オイルジェットの噴射量と少なくともエンジンの点火時期とを併せて制御することで、エンジン性能を向上させたエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、流量可変のオイルポンプと、オイルポンプから供給されるオイルをピストンの裏面に噴射するオイルジェットと、を備えたエンジンの制御装置は、エンジンの運転状態に応じて、オイルポンプの流量を変化させると共に、エンジンの点火時期を変化させる。
【発明の効果】
【0007】
オイルジェットの噴射量とエンジンの点火時期とを併せて制御することで、エンジン性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エンジン制御システムの概要図である。
【図2】エンジンコントロールユニットに備えられた各種機能のブロック図である。
【図3】オイルポンプ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】オイルポンプの制御方法及びその作用を示し、(A)はオイル吐出圧を設定するマップの説明図、(B)はオイル吐出圧の変更に伴って変化するオイルジェット噴射量の説明図である。
【図5】エンジン制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】補正対象を判定するマップの説明図である。
【図7】制御パラメータ補正処理の第1実施例を示すフローチャートである。
【図8】ピストン冠面温度を推定するマップの説明図である。
【図9】ピストン冠面温度に応じた補正量を求めるマップの説明図である。
【図10】第1実施例による点火時期補正の効果の説明図である。
【図11】第1実施例による燃料噴射量補正の効果の説明図である。
【図12】制御パラメータ補正処理の第2実施例を示すフローチャートである。
【図13】オイルジェット噴射量の増量後のピストン冠面温度を推定するマップの説明図である。
【図14】第2実施例による点火時期補正の効果の説明図である。
【図15】第2実施例による燃料噴射量補正の効果の説明図である。
【図16】オイルジェット噴射量補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】オイルジェット噴射量の増量率を求めるマップの説明図である。
【図18】オイルジェット噴射量補正による効果の説明図である。
【図19】オイルジェット噴射によるノッキング抑制効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、エンジン制御システムの概要を示す。
シリンダブロック10に形成されたシリンダ10Aには、複数のピストンリング12を取り付けたピストン14が軸方向に往復動自由に嵌挿されている。シリンダブロック10の上面に締結されるシリンダヘッド16には、吸気を燃焼室18へと導入する吸気ポート16Aと、排気を燃焼室18から排出する排気ポート16Bと、が夫々形成されている。吸気ポート16Aの下流端には、所定の吸気タイミングで吸気を吸気ポート16Aから燃焼室18へと導入すべく、図示しない動弁機構により開閉駆動される吸気弁20が配設されている。排気ポート16Bの上流端には、所定の排気タイミングで排気を燃焼室18から排気ポート16Bへと排出すべく、図示しない動弁機構により開閉駆動される排気弁22が配設されている。
【0010】
また、吸気ポート16Aには、吸気弁20の傘部に向けて燃料を噴射供給すべく、通電により針弁が上昇して開弁する、電子制御式の燃料噴射弁24が取り付けられている。燃焼室18の頂部にあたるシリンダヘッド16には、燃焼室18に導入された燃料と空気との混合気を火花点火する点火プラグ26が取り付けられている。
【0011】
さらに、シリンダブロック10の下方には、ピストン14の裏面、即ち、ピストン14の冠面の裏面に向けて、ピストン14の冷却、及び、ピストン14とコネクティングロッド28との連結部を潤滑するために、オイルを噴射する2つのオイルジェット30が配設されている。2つのオイルジェット30は、その開弁圧力が異なり、例えば、一方のものは低圧(例えば、300kPa)で開弁し、他方のものは高圧(例えば、500kPa)で開弁する。従って、オイルジェット30に供給するオイルの圧力を変化させることで、オイルジェット噴射量を、0(オイルを噴射しない状態)、小(一方のオイルジェット30のみからオイルが噴射される状態)、大(双方のオイルジェット30からオイルが噴射される状態)に制御することができる。
【0012】
なお、オイル圧力に応じてオイル噴射量を連続的又は多段階に制御可能なオイルジェットを使用する場合には、シリンダブロック10の下方に1つのオイルジェット30を取り付けてもよい。
【0013】
オイルジェット30には、オイルパン32に貯蔵されたオイルが、エンジン駆動の流量可変式のオイルポンプ34及びオイルフィルタ36を介して供給される。オイルポンプ34は、流量が連続的又は多段階に変更可能であれば、その可変機構は如何なるものでもよく、また、電動モータにより駆動されるものであってもよい。
【0014】
燃料噴射弁24、点火プラグ26及びオイルポンプ34は、コンピュータを内蔵したエンジンコントロールユニット38(制御装置)により電子制御される。エンジンコントロールユニット38は、エンジン運転状態として、スロットル開度、エンジン回転速度、エンジン負荷、油水温(油温、水温)、吸気温度、空燃比、排気温度などを入力し、フラッシュROM(Read Only Memory)などに格納された制御プログラムによって、燃料噴射弁24、点火プラグ26及びオイルポンプ34に制御信号を出力する。ここで、エンジン負荷としては、例えば、吸気流量、吸気負圧、過給圧力、スロットル開度、アクセル開度など、トルクと密接に関連する状態量を適用することができる。また、エンジン運転状態は、公知のセンサで直接検出してもよいし、CAN(Controller Area Network)などで接続された他のコントロールユニットから適宜読み込んでもよい。
【0015】
図2は、エンジンコントロールユニット38に備えられた各種機能を示す。
エンジンコントロールユニット38は、制御プログラムを実行することで、オイルポンプ制御部38A、燃料噴射量設定部38B、燃料噴射量補正部38C、燃料噴射制御部38D、点火時期設定部38E、点火時期補正部38F及び点火時期制御部38Gを夫々実現する。
【0016】
オイルポンプ制御部38Aは、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧を演算し、このオイル吐出圧に基づいてオイルポンプ34を電子制御する。
【0017】
燃料噴射量設定部38Bは、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じた燃料噴射量を設定する。燃料噴射量補正部38Cは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量を、オイルポンプ制御部38Aによるオイルポンプ34の制御状態、具体的には、オイルジェット30から噴射されるオイルの噴射量(オイルジェット噴射量)に応じて補正する。燃料噴射制御部38Dは、燃料噴射量補正部38Cにより補正された燃料噴射量に応じた制御信号を燃料噴射弁24に出力することで、燃料噴射弁24を電子制御する。
【0018】
点火時期設定部38Eは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量、及び、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Neに応じた点火時期を設定する。点火時期補正部38Fは、点火時期設定部38Eにより設定された点火時期を、オイルポンプ制御部38Aによって制御されるオイルジェット噴射量に応じて補正する。点火時期制御部38Gは、点火時期補正部38Fにより補正された点火時期に応じた制御信号を点火プラグ26の駆動回路(図示せず)に出力することで、点火プラグ26を電子制御する。
【0019】
図3は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38のオイルポンプ制御部38Aが所定時間Δt1ごとに繰り返し実行する、オイルポンプ制御処理の一例を示す。
【0020】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では、図4(A)に示すような、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたオイル吐出圧が設定されたマップを参照し、エンジン運転状態としてのエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧を設定する。ここで、図4(A)に示すマップでは、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々小さい運転領域、要するに、ピストン14の温度が比較的低い熱的に余裕がある運転領域では、オイル吐出圧が「低」となっている一方、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々大きい運転領域、要するに、ピストン14の温度が比較的高い熱的に厳しい運転領域では、オイル吐出量が「高」となっている。なお、オイル吐出圧としては、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに限らず、他のエンジン運転状態も考慮したマップを参照して設定してもよい。
【0021】
ステップ2では、オイル吐出圧に応じた制御信号、例えば、PWM制御のディーティ比でオイルポンプ34を駆動することで、オイルポンプ34を電子制御する。
このようにすれば、エンジン運転状態に応じて、オイルポンプ34のオイル吐出圧が可変制御されるため、図4(B)に示すように、オイルジェット30のオイル噴射量を3段階に制御することができる。この場合、熱的に厳しい運転領域では、オイル吐出圧が高圧となるので、2つのオイルジェット30から噴射されるオイルにより、ノッキングを改善しつつピストン14を冷却することができる。また、熱的に余裕がある運転領域では、オイル吐出圧が低圧となるので、オイルジェット30から噴射されるオイルが小又は0となり、オイル消費量が低減すると共に、オイルポンプ34を駆動するためのエネルギ軽減により燃費を向上させることができる。さらに、エンジン始動時には、オイルジェット噴射量が0となるので、HC及びPNを低減させることもできる。
【0022】
図5は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量設定部38B、燃料噴射量補正部38C、点火時期設定部38E及び点火時期補正部38Fが協働して所定時間Δt2ごとに繰り返し実行する、エンジン制御処理の一例を示す。なお、所定時間Δt2は、オイルポンプ制御の実行間隔である所定時間Δt1と同一であってもよく、また、異なってもよい(以下同様)。
【0023】
ステップ11では、例えば、エンジン運転状態としてのエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Q(吸気流量)から求めた基本燃料噴射量を、空燃比、水温、ステアリング操作状態、バッテリ電圧などに応じて補正し、最終的な燃料噴射量を演算する。
【0024】
ステップ12では、例えば、エンジン回転速度及び燃料噴射量に応じた進角が設定されたマップ(図示せず)を参照し、エンジン回転速度Ne、及び、ステップ11で設定された燃料噴射量に応じた点火時期を演算する。ここで、点火時期は、エンジン運転状態としてのアイドル状態、水温などに応じて補正してもよい。
【0025】
ステップ13では、例えば、図4(B)に示すマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに基づいて、オイルジェット30が作動しているか否か、要するに、オイルジェット噴射量が小又は大であるか否かを判定する。そして、オイルジェット30が作動していると判定すれば処理をステップ14へと進める一方(Yes)、オイルジェット30が動作していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0026】
ステップ14では、図6に示すような、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じた補正対象が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qにより特定される運転状態が、点火時期の変更のみでトルクが大きく変動するトルク変動領域にあるか否かを判定する。そして、運転状態がトルク変動領域にあると判定すれば処理をステップ16へと進める一方(Yes)、運転状態がトルク変動領域にない、即ち、点火時期と燃料噴射量とを共に補正する領域にあると判定すれば処理をステップ15へと進める(No)。
【0027】
ステップ15では、エンジン運転状態としての排気温度が所定温度以下であるか否か、要するに、燃料噴射によりピストン14を冷却する必要がない運転状態であるか否かを判定する。そして、排気温度が所定温度以下であると判定すれば処理をステップ16へと進める一方(Yes)、排気温度が所定温度より高ければ処理をステップ17へと進める(No)。
【0028】
ステップ16では、点火時期を補正するサブルーチンを実行し、その後処理を終了させる。
ステップ17では、点火時期を補正するサブルーチンを実行する。
【0029】
ステップ18では、燃料噴射量を補正するサブルーチンを実行し、その後処理を終了させる。
このようにすれば、オイルジェット30が作動している場合、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qにより特定される運転状態がトルク変動領域にあるか、又は、排気温度が所定温度以下であれば、エンジン運転状態に応じた点火時期が補正される。また、オイルジェット30が作動している場合、運転状態がトルク変動領域になく、かつ、排気温度が所定温度より高ければ、運転状態に応じた点火時期及び燃料噴射量が補正される。一方、オイルジェット30が作動していない場合、エンジン運転状態に応じた点火時期及び燃料噴射量が補正されず、そのままとなる。
【0030】
図7は、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量補正部38C又は点火時期補正部38Fが実行する、エンジン制御パラメータ補正処理(燃料噴射量又は点火時期を補正するサブルーチン)の第1実施例を示す。
【0031】
ステップ21では、例えば、図8に示すような、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度(ピストン温度)の推定値が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。ここで、ピストン冠面温度は、オイルジェット噴射量により大きく変化するため、図4(A)に示すオイル吐出圧の設定マップと同様に、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々小さい運転領域では「低」、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々大きい運転領域では「高」となっている。
【0032】
ステップ22では、図9に示すような、ピストン冠面温度に応じたエンジン制御パラメータの補正量が設定されたマップを参照し、ステップ21で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。ここで、エンジン制御パラメータとしては、点火時期及び燃料噴射量を採用する(以下同様)。
【0033】
ステップ23では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、エンジン制御パラメータを補正する。
このようにすれば、エンジン運転状態に応じたエンジン制御パラメータ(点火時期、燃料噴射量)は、オイルジェット30から噴射されたオイルにより冷却されるピストン冠面温度に応じて補正される。
【0034】
環境温度変化などに伴ってオイルジェット噴射量が増量した場合、図10に示すように、オイルジェット噴射量の増量によってピストン冠面温度が徐々に低下する。このとき、従来技術であれば、破線で示すように点火時期が一定のままであるが、本実施形態では、実線で示すように点火時期が進角されるので、同一のトルクであればスロットル開度が小さくて済むようになる。このため、スロットル開度の減少により燃料噴射量が低減し、燃費を改善することができる。
【0035】
また、環境温度変化などに伴ってオイルジェット噴射量が増量した場合、図11に示すように、オイルジェット噴射量の増量によってピストン冠面温度が徐々に低下する。このとき、従来技術であれば、破線で示すように燃料噴射量が一定のままであるが、本実施形態では、燃料噴射量を補正すると、実線で示すようにピストン冠面温度の低下に伴い気筒内の冷却のために増量する燃料噴射量が削減されるので、トルクを一定としたまま燃費を改善することができる。
【0036】
図12は、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量補正部38C又は点火時期補正部38Fが実行する、エンジン制御パラメータ補正処理(燃料噴射量又は点火時期を補正するサブルーチン)の第2実施例を示す。
【0037】
ステップ31では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が変化したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が変化したと判定すれば処理をステップ32へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が変化していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0038】
ステップ32では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が増量したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が増量したと判定すれば処理をステップ33へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が増量していない、要するに、オイルジェット噴射量が減量したと判定すれば処理をステップ37へと進める(No)。
【0039】
ステップ33では、例えば、図13に示すような、オイルジェット噴射量の増量後について、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度の時間的変化特性が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。要するに、オイルジェット噴射量の増量後について、オイルポンプ34の流量変化に遅れて変化するピストン冠面温度を推定する(以下同様)。
【0040】
ステップ34では、例えば、図9に示すようなマップを参照し、ステップ33で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。
ステップ35では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、オイルジェット噴射量が増量した過渡期におけるエンジン制御パラメータを補正する。
【0041】
ステップ36では、オイルジェット噴射量が増量してから第1の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(増量から減量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ33へと戻す(No)。
【0042】
オイルジェット噴射量が減量した場合のステップ37では、例えば、オイルジェット噴射量の減量後について、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度の時間的変化特性が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。なお、オイルジェット噴射量が減量した場合のピストン冠面温度を推定するマップは、図13に示すマップに類似した特性を有している。
【0043】
ステップ38では、例えば、図9に示すようなマップを参照し、ステップ37で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。
ステップ39では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、オイルジェット噴射量が減量した過渡期におけるエンジン制御パラメータを補正する。
【0044】
ステップ40では、オイルジェット噴射量が減量してから第2の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(減量から増量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ37へと戻す(No)。
【0045】
このようにすれば、オイルジェット噴射量が変化した過渡期において、その変化開始から所定時間経過するまでは、ピストン冠面温度に応じた補正量で、エンジン制御パラメータが補正される。
【0046】
加速状態などの過渡期において、図14に示すように、スロットル開度の増加に伴ってエンジン回転速度が上昇すると、オイルジェット噴射量も増加する。そして、オイルジェット噴射量が増加することで、上昇したピストン冠面温度も徐々に低下する。このとき、スロットル開度の増加により点火時期が遅角されるが、従来技術であれば、遅角された点火時期はそのままとなる。しかし、本実施形態では、過渡後においては、ピストン冠面温度の低下により点火時期が徐々に進角されるため、その分だけトルクが向上すると共に、排気温度が低下する。
【0047】
また、加速状態などの過渡期において、図15に示すように、スロットル開度の増加に伴ってエンジン回転速度が上昇すると、オイルジェット噴射量も増加する。そして、オイルジェット噴射量が増加することで、上昇したピストン冠面温度も徐々に低下する。このとき、スロットル開度の増加に伴って燃料噴射量も増量されるが、従来技術であれば、増量された燃料噴射量がそのままとなる。しかし、本実施形態であれば、過渡後においては、ピストン冠面温度の低下によりピストンを冷却する燃料噴射量が削減され、燃費を改善すると共に排気温度を低減させることができる。
【0048】
図16は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38のオイルポンプ制御部38Aが更に所定時間Δt3ごとに繰り返し実行する、オイルジェット噴射量補正処理の一例を示す。
【0049】
ステップ41では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が変化したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が変化したと判定すれば処理をステップ42へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が変化していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0050】
ステップ42では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が増量したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が増量したと判定すれば処理をステップ43へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が増量していない、要するに、オイルジェット噴射量が減量したと判定すれば処理をステップ46へと進める(No)。
【0051】
ステップ43では、例えば、図17に示すような、オイルジェット噴射量が増量を開始してからの経過時間に応じた、オイルジェット噴射量の増量率が設定されたマップを参照し、その経過時間に応じた増量率を演算する。
【0052】
ステップ44では、オイルジェット噴射量に増量率を乗算することで、オイルジェット噴射量を補正する。
ステップ45では、オイルジェット噴射量が増量してから第3の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(増量から減量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ43へと戻す(No)。
【0053】
オイルジェット噴射量が減量した場合のステップ46では、オイルジェット噴射量が減量を開始してからの経過時間に応じた、オイルジェット噴射量の減量率が設定されたマップを参照し、その経過時間に応じた減量率を演算する。
【0054】
ステップ47では、オイルジェット噴射量に減量率を乗算することで、オイルジェット噴射量を補正する。
ステップ48では、オイルジェット噴射量が減量してから第4の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(減量から増量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ46へと戻す(No)。
【0055】
このようにすれば、図18に示すように、加速などによりスロットル開度が増加した場合、その変化開始から所定時間経過するまでは、オイルジェット噴射量が徐々に増加する。このため、過渡期を越えてオイルジェット噴射量が増量補正されることとなり、ピストン冠面温度をより低下させることができる。そして、ピストン冠面温度のさらなる低下により、点火時期をさらに進角させることが可能となり、トルクを向上させることができる。また、点火時期の進角により、排気温度を低下させることもできる。
【0056】
さらに、オイルジェット噴射量の増加に伴いピストン冠面温度が低下するため、図19に示すように、ノッキングが発生する点火時期が進角し、ノッキングの発生を抑制することができる。なお、ピストン14に、オイルジェット30から噴射されたオイルを円環状に流通させて冷却を促進するクーリングチャネルが形成されている場合、ピストン冠面温度の変化は短時間で行われる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
【0057】
(イ)請求項1〜3に記載のエンジンの制御装置において、
前記オイルポンプの流量を変化させることは、前記流量を増量させることであり、前記エンジンの点火時期を変化させることは、前記点火時期を進角させること、であるエンジンの制御装置。
上記構成によると、オイルポンプの流量を増量させることで、オイルジェットから噴射されたオイルによりピストンの温度が徐々に低下する。そして、ピストン温度の低下に伴い、エンジンの点火時期を進角させることで、例えば、トルク向上、スロットル開度の低減による燃費改善などを図ることができる。
【0058】
(ロ)請求項1〜3又は(イ)のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置において、
前記オイルジェットの流量変化が開始された場合、前記流量変化開始からの経過時間に応じた変化率により、前記オイルジェットの流量を徐々に変化させる、エンジンの制御装置。
上記構成によると、ピストンの温度を安定させることができる。
【0059】
(ハ)請求項2に記載のエンジンの制御装置において、
前記ピストンの温度を、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷から推定する、エンジンの制御装置。
上記構成によると、直接検出できないピストンの温度を推定することができる。
【符号の説明】
【0060】
14…ピストン、24…燃料噴射弁、26…点火プラグ、30…オイルジェット、34…オイルポンプ、38…エンジンコントロールユニット(制御装置)、38A…オイルポンプ制御部、38B…燃料噴射量設定部、38C…燃料噴射量補正部、38D…燃料噴射制御部、38E…点火時期設定部、38F…点火時期補正部、38G…点火時期制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンを冷却するために、特開2011−74891号公報(特許文献1)に記載されるように、ピストンの裏面にオイルを噴射するオイルジェットが取り付けられたエンジンにおいて、エンジンの回転速度及び燃料噴射量(負荷)に応じてオイルの噴射圧力(噴射量)を変化させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−74891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルジェットの噴射量が増減すると、ピストンの温度(ピストン温度)が変化するため、エンジン制御パラメータ(例えば、点火時期、燃料噴射量など)の要求も変化する。しかし、従来技術においては、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に応じて噴射量を変化させていたが、エンジン制御パラメータの要求変化に対処しておらず、例えば、点火時期、燃料噴射量などが不適切となって、所要のトルクや燃費が得られないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、オイルジェットの噴射量と少なくともエンジンの点火時期とを併せて制御することで、エンジン性能を向上させたエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、流量可変のオイルポンプと、オイルポンプから供給されるオイルをピストンの裏面に噴射するオイルジェットと、を備えたエンジンの制御装置は、エンジンの運転状態に応じて、オイルポンプの流量を変化させると共に、エンジンの点火時期を変化させる。
【発明の効果】
【0007】
オイルジェットの噴射量とエンジンの点火時期とを併せて制御することで、エンジン性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エンジン制御システムの概要図である。
【図2】エンジンコントロールユニットに備えられた各種機能のブロック図である。
【図3】オイルポンプ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】オイルポンプの制御方法及びその作用を示し、(A)はオイル吐出圧を設定するマップの説明図、(B)はオイル吐出圧の変更に伴って変化するオイルジェット噴射量の説明図である。
【図5】エンジン制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】補正対象を判定するマップの説明図である。
【図7】制御パラメータ補正処理の第1実施例を示すフローチャートである。
【図8】ピストン冠面温度を推定するマップの説明図である。
【図9】ピストン冠面温度に応じた補正量を求めるマップの説明図である。
【図10】第1実施例による点火時期補正の効果の説明図である。
【図11】第1実施例による燃料噴射量補正の効果の説明図である。
【図12】制御パラメータ補正処理の第2実施例を示すフローチャートである。
【図13】オイルジェット噴射量の増量後のピストン冠面温度を推定するマップの説明図である。
【図14】第2実施例による点火時期補正の効果の説明図である。
【図15】第2実施例による燃料噴射量補正の効果の説明図である。
【図16】オイルジェット噴射量補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】オイルジェット噴射量の増量率を求めるマップの説明図である。
【図18】オイルジェット噴射量補正による効果の説明図である。
【図19】オイルジェット噴射によるノッキング抑制効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、エンジン制御システムの概要を示す。
シリンダブロック10に形成されたシリンダ10Aには、複数のピストンリング12を取り付けたピストン14が軸方向に往復動自由に嵌挿されている。シリンダブロック10の上面に締結されるシリンダヘッド16には、吸気を燃焼室18へと導入する吸気ポート16Aと、排気を燃焼室18から排出する排気ポート16Bと、が夫々形成されている。吸気ポート16Aの下流端には、所定の吸気タイミングで吸気を吸気ポート16Aから燃焼室18へと導入すべく、図示しない動弁機構により開閉駆動される吸気弁20が配設されている。排気ポート16Bの上流端には、所定の排気タイミングで排気を燃焼室18から排気ポート16Bへと排出すべく、図示しない動弁機構により開閉駆動される排気弁22が配設されている。
【0010】
また、吸気ポート16Aには、吸気弁20の傘部に向けて燃料を噴射供給すべく、通電により針弁が上昇して開弁する、電子制御式の燃料噴射弁24が取り付けられている。燃焼室18の頂部にあたるシリンダヘッド16には、燃焼室18に導入された燃料と空気との混合気を火花点火する点火プラグ26が取り付けられている。
【0011】
さらに、シリンダブロック10の下方には、ピストン14の裏面、即ち、ピストン14の冠面の裏面に向けて、ピストン14の冷却、及び、ピストン14とコネクティングロッド28との連結部を潤滑するために、オイルを噴射する2つのオイルジェット30が配設されている。2つのオイルジェット30は、その開弁圧力が異なり、例えば、一方のものは低圧(例えば、300kPa)で開弁し、他方のものは高圧(例えば、500kPa)で開弁する。従って、オイルジェット30に供給するオイルの圧力を変化させることで、オイルジェット噴射量を、0(オイルを噴射しない状態)、小(一方のオイルジェット30のみからオイルが噴射される状態)、大(双方のオイルジェット30からオイルが噴射される状態)に制御することができる。
【0012】
なお、オイル圧力に応じてオイル噴射量を連続的又は多段階に制御可能なオイルジェットを使用する場合には、シリンダブロック10の下方に1つのオイルジェット30を取り付けてもよい。
【0013】
オイルジェット30には、オイルパン32に貯蔵されたオイルが、エンジン駆動の流量可変式のオイルポンプ34及びオイルフィルタ36を介して供給される。オイルポンプ34は、流量が連続的又は多段階に変更可能であれば、その可変機構は如何なるものでもよく、また、電動モータにより駆動されるものであってもよい。
【0014】
燃料噴射弁24、点火プラグ26及びオイルポンプ34は、コンピュータを内蔵したエンジンコントロールユニット38(制御装置)により電子制御される。エンジンコントロールユニット38は、エンジン運転状態として、スロットル開度、エンジン回転速度、エンジン負荷、油水温(油温、水温)、吸気温度、空燃比、排気温度などを入力し、フラッシュROM(Read Only Memory)などに格納された制御プログラムによって、燃料噴射弁24、点火プラグ26及びオイルポンプ34に制御信号を出力する。ここで、エンジン負荷としては、例えば、吸気流量、吸気負圧、過給圧力、スロットル開度、アクセル開度など、トルクと密接に関連する状態量を適用することができる。また、エンジン運転状態は、公知のセンサで直接検出してもよいし、CAN(Controller Area Network)などで接続された他のコントロールユニットから適宜読み込んでもよい。
【0015】
図2は、エンジンコントロールユニット38に備えられた各種機能を示す。
エンジンコントロールユニット38は、制御プログラムを実行することで、オイルポンプ制御部38A、燃料噴射量設定部38B、燃料噴射量補正部38C、燃料噴射制御部38D、点火時期設定部38E、点火時期補正部38F及び点火時期制御部38Gを夫々実現する。
【0016】
オイルポンプ制御部38Aは、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧を演算し、このオイル吐出圧に基づいてオイルポンプ34を電子制御する。
【0017】
燃料噴射量設定部38Bは、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じた燃料噴射量を設定する。燃料噴射量補正部38Cは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量を、オイルポンプ制御部38Aによるオイルポンプ34の制御状態、具体的には、オイルジェット30から噴射されるオイルの噴射量(オイルジェット噴射量)に応じて補正する。燃料噴射制御部38Dは、燃料噴射量補正部38Cにより補正された燃料噴射量に応じた制御信号を燃料噴射弁24に出力することで、燃料噴射弁24を電子制御する。
【0018】
点火時期設定部38Eは、燃料噴射量設定部38Bにより設定された燃料噴射量、及び、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度Neに応じた点火時期を設定する。点火時期補正部38Fは、点火時期設定部38Eにより設定された点火時期を、オイルポンプ制御部38Aによって制御されるオイルジェット噴射量に応じて補正する。点火時期制御部38Gは、点火時期補正部38Fにより補正された点火時期に応じた制御信号を点火プラグ26の駆動回路(図示せず)に出力することで、点火プラグ26を電子制御する。
【0019】
図3は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38のオイルポンプ制御部38Aが所定時間Δt1ごとに繰り返し実行する、オイルポンプ制御処理の一例を示す。
【0020】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では、図4(A)に示すような、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたオイル吐出圧が設定されたマップを参照し、エンジン運転状態としてのエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたオイル吐出圧を設定する。ここで、図4(A)に示すマップでは、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々小さい運転領域、要するに、ピストン14の温度が比較的低い熱的に余裕がある運転領域では、オイル吐出圧が「低」となっている一方、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々大きい運転領域、要するに、ピストン14の温度が比較的高い熱的に厳しい運転領域では、オイル吐出量が「高」となっている。なお、オイル吐出圧としては、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに限らず、他のエンジン運転状態も考慮したマップを参照して設定してもよい。
【0021】
ステップ2では、オイル吐出圧に応じた制御信号、例えば、PWM制御のディーティ比でオイルポンプ34を駆動することで、オイルポンプ34を電子制御する。
このようにすれば、エンジン運転状態に応じて、オイルポンプ34のオイル吐出圧が可変制御されるため、図4(B)に示すように、オイルジェット30のオイル噴射量を3段階に制御することができる。この場合、熱的に厳しい運転領域では、オイル吐出圧が高圧となるので、2つのオイルジェット30から噴射されるオイルにより、ノッキングを改善しつつピストン14を冷却することができる。また、熱的に余裕がある運転領域では、オイル吐出圧が低圧となるので、オイルジェット30から噴射されるオイルが小又は0となり、オイル消費量が低減すると共に、オイルポンプ34を駆動するためのエネルギ軽減により燃費を向上させることができる。さらに、エンジン始動時には、オイルジェット噴射量が0となるので、HC及びPNを低減させることもできる。
【0022】
図5は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量設定部38B、燃料噴射量補正部38C、点火時期設定部38E及び点火時期補正部38Fが協働して所定時間Δt2ごとに繰り返し実行する、エンジン制御処理の一例を示す。なお、所定時間Δt2は、オイルポンプ制御の実行間隔である所定時間Δt1と同一であってもよく、また、異なってもよい(以下同様)。
【0023】
ステップ11では、例えば、エンジン運転状態としてのエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Q(吸気流量)から求めた基本燃料噴射量を、空燃比、水温、ステアリング操作状態、バッテリ電圧などに応じて補正し、最終的な燃料噴射量を演算する。
【0024】
ステップ12では、例えば、エンジン回転速度及び燃料噴射量に応じた進角が設定されたマップ(図示せず)を参照し、エンジン回転速度Ne、及び、ステップ11で設定された燃料噴射量に応じた点火時期を演算する。ここで、点火時期は、エンジン運転状態としてのアイドル状態、水温などに応じて補正してもよい。
【0025】
ステップ13では、例えば、図4(B)に示すマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに基づいて、オイルジェット30が作動しているか否か、要するに、オイルジェット噴射量が小又は大であるか否かを判定する。そして、オイルジェット30が作動していると判定すれば処理をステップ14へと進める一方(Yes)、オイルジェット30が動作していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0026】
ステップ14では、図6に示すような、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じた補正対象が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qにより特定される運転状態が、点火時期の変更のみでトルクが大きく変動するトルク変動領域にあるか否かを判定する。そして、運転状態がトルク変動領域にあると判定すれば処理をステップ16へと進める一方(Yes)、運転状態がトルク変動領域にない、即ち、点火時期と燃料噴射量とを共に補正する領域にあると判定すれば処理をステップ15へと進める(No)。
【0027】
ステップ15では、エンジン運転状態としての排気温度が所定温度以下であるか否か、要するに、燃料噴射によりピストン14を冷却する必要がない運転状態であるか否かを判定する。そして、排気温度が所定温度以下であると判定すれば処理をステップ16へと進める一方(Yes)、排気温度が所定温度より高ければ処理をステップ17へと進める(No)。
【0028】
ステップ16では、点火時期を補正するサブルーチンを実行し、その後処理を終了させる。
ステップ17では、点火時期を補正するサブルーチンを実行する。
【0029】
ステップ18では、燃料噴射量を補正するサブルーチンを実行し、その後処理を終了させる。
このようにすれば、オイルジェット30が作動している場合、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qにより特定される運転状態がトルク変動領域にあるか、又は、排気温度が所定温度以下であれば、エンジン運転状態に応じた点火時期が補正される。また、オイルジェット30が作動している場合、運転状態がトルク変動領域になく、かつ、排気温度が所定温度より高ければ、運転状態に応じた点火時期及び燃料噴射量が補正される。一方、オイルジェット30が作動していない場合、エンジン運転状態に応じた点火時期及び燃料噴射量が補正されず、そのままとなる。
【0030】
図7は、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量補正部38C又は点火時期補正部38Fが実行する、エンジン制御パラメータ補正処理(燃料噴射量又は点火時期を補正するサブルーチン)の第1実施例を示す。
【0031】
ステップ21では、例えば、図8に示すような、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度(ピストン温度)の推定値が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。ここで、ピストン冠面温度は、オイルジェット噴射量により大きく変化するため、図4(A)に示すオイル吐出圧の設定マップと同様に、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々小さい運転領域では「低」、エンジン回転速度及びエンジン負荷が夫々大きい運転領域では「高」となっている。
【0032】
ステップ22では、図9に示すような、ピストン冠面温度に応じたエンジン制御パラメータの補正量が設定されたマップを参照し、ステップ21で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。ここで、エンジン制御パラメータとしては、点火時期及び燃料噴射量を採用する(以下同様)。
【0033】
ステップ23では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、エンジン制御パラメータを補正する。
このようにすれば、エンジン運転状態に応じたエンジン制御パラメータ(点火時期、燃料噴射量)は、オイルジェット30から噴射されたオイルにより冷却されるピストン冠面温度に応じて補正される。
【0034】
環境温度変化などに伴ってオイルジェット噴射量が増量した場合、図10に示すように、オイルジェット噴射量の増量によってピストン冠面温度が徐々に低下する。このとき、従来技術であれば、破線で示すように点火時期が一定のままであるが、本実施形態では、実線で示すように点火時期が進角されるので、同一のトルクであればスロットル開度が小さくて済むようになる。このため、スロットル開度の減少により燃料噴射量が低減し、燃費を改善することができる。
【0035】
また、環境温度変化などに伴ってオイルジェット噴射量が増量した場合、図11に示すように、オイルジェット噴射量の増量によってピストン冠面温度が徐々に低下する。このとき、従来技術であれば、破線で示すように燃料噴射量が一定のままであるが、本実施形態では、燃料噴射量を補正すると、実線で示すようにピストン冠面温度の低下に伴い気筒内の冷却のために増量する燃料噴射量が削減されるので、トルクを一定としたまま燃費を改善することができる。
【0036】
図12は、エンジンコントロールユニット38の燃料噴射量補正部38C又は点火時期補正部38Fが実行する、エンジン制御パラメータ補正処理(燃料噴射量又は点火時期を補正するサブルーチン)の第2実施例を示す。
【0037】
ステップ31では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が変化したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が変化したと判定すれば処理をステップ32へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が変化していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0038】
ステップ32では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が増量したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が増量したと判定すれば処理をステップ33へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が増量していない、要するに、オイルジェット噴射量が減量したと判定すれば処理をステップ37へと進める(No)。
【0039】
ステップ33では、例えば、図13に示すような、オイルジェット噴射量の増量後について、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度の時間的変化特性が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。要するに、オイルジェット噴射量の増量後について、オイルポンプ34の流量変化に遅れて変化するピストン冠面温度を推定する(以下同様)。
【0040】
ステップ34では、例えば、図9に示すようなマップを参照し、ステップ33で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。
ステップ35では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、オイルジェット噴射量が増量した過渡期におけるエンジン制御パラメータを補正する。
【0041】
ステップ36では、オイルジェット噴射量が増量してから第1の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(増量から減量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ33へと戻す(No)。
【0042】
オイルジェット噴射量が減量した場合のステップ37では、例えば、オイルジェット噴射量の減量後について、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたピストン冠面温度の時間的変化特性が設定されたマップを参照し、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じたピストン冠面温度を推定する。なお、オイルジェット噴射量が減量した場合のピストン冠面温度を推定するマップは、図13に示すマップに類似した特性を有している。
【0043】
ステップ38では、例えば、図9に示すようなマップを参照し、ステップ37で推定されたピストン冠面温度に応じた補正量を演算する。
ステップ39では、エンジン制御パラメータに補正量を加算することで、オイルジェット噴射量が減量した過渡期におけるエンジン制御パラメータを補正する。
【0044】
ステップ40では、オイルジェット噴射量が減量してから第2の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(減量から増量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ37へと戻す(No)。
【0045】
このようにすれば、オイルジェット噴射量が変化した過渡期において、その変化開始から所定時間経過するまでは、ピストン冠面温度に応じた補正量で、エンジン制御パラメータが補正される。
【0046】
加速状態などの過渡期において、図14に示すように、スロットル開度の増加に伴ってエンジン回転速度が上昇すると、オイルジェット噴射量も増加する。そして、オイルジェット噴射量が増加することで、上昇したピストン冠面温度も徐々に低下する。このとき、スロットル開度の増加により点火時期が遅角されるが、従来技術であれば、遅角された点火時期はそのままとなる。しかし、本実施形態では、過渡後においては、ピストン冠面温度の低下により点火時期が徐々に進角されるため、その分だけトルクが向上すると共に、排気温度が低下する。
【0047】
また、加速状態などの過渡期において、図15に示すように、スロットル開度の増加に伴ってエンジン回転速度が上昇すると、オイルジェット噴射量も増加する。そして、オイルジェット噴射量が増加することで、上昇したピストン冠面温度も徐々に低下する。このとき、スロットル開度の増加に伴って燃料噴射量も増量されるが、従来技術であれば、増量された燃料噴射量がそのままとなる。しかし、本実施形態であれば、過渡後においては、ピストン冠面温度の低下によりピストンを冷却する燃料噴射量が削減され、燃費を改善すると共に排気温度を低減させることができる。
【0048】
図16は、エンジン始動を契機として、エンジンコントロールユニット38のオイルポンプ制御部38Aが更に所定時間Δt3ごとに繰り返し実行する、オイルジェット噴射量補正処理の一例を示す。
【0049】
ステップ41では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が変化したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が変化したと判定すれば処理をステップ42へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が変化していないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0050】
ステップ42では、例えば、時系列で連続するオイルジェット噴射量を比較することで、オイルジェット噴射量が増量したか否かを判定する。そして、オイルジェット噴射量が増量したと判定すれば処理をステップ43へと進める一方(Yes)、オイルジェット噴射量が増量していない、要するに、オイルジェット噴射量が減量したと判定すれば処理をステップ46へと進める(No)。
【0051】
ステップ43では、例えば、図17に示すような、オイルジェット噴射量が増量を開始してからの経過時間に応じた、オイルジェット噴射量の増量率が設定されたマップを参照し、その経過時間に応じた増量率を演算する。
【0052】
ステップ44では、オイルジェット噴射量に増量率を乗算することで、オイルジェット噴射量を補正する。
ステップ45では、オイルジェット噴射量が増量してから第3の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(増量から減量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ43へと戻す(No)。
【0053】
オイルジェット噴射量が減量した場合のステップ46では、オイルジェット噴射量が減量を開始してからの経過時間に応じた、オイルジェット噴射量の減量率が設定されたマップを参照し、その経過時間に応じた減量率を演算する。
【0054】
ステップ47では、オイルジェット噴射量に減量率を乗算することで、オイルジェット噴射量を補正する。
ステップ48では、オイルジェット噴射量が減量してから第4の所定時間経過したか否か、又は、オイルジェット噴射量が変化したか否か(減量から増量に転じたか否か)を判定する。そして、いずれかの条件が成立したと判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、いずれの条件も成立していないと判定すれば処理をステップ46へと戻す(No)。
【0055】
このようにすれば、図18に示すように、加速などによりスロットル開度が増加した場合、その変化開始から所定時間経過するまでは、オイルジェット噴射量が徐々に増加する。このため、過渡期を越えてオイルジェット噴射量が増量補正されることとなり、ピストン冠面温度をより低下させることができる。そして、ピストン冠面温度のさらなる低下により、点火時期をさらに進角させることが可能となり、トルクを向上させることができる。また、点火時期の進角により、排気温度を低下させることもできる。
【0056】
さらに、オイルジェット噴射量の増加に伴いピストン冠面温度が低下するため、図19に示すように、ノッキングが発生する点火時期が進角し、ノッキングの発生を抑制することができる。なお、ピストン14に、オイルジェット30から噴射されたオイルを円環状に流通させて冷却を促進するクーリングチャネルが形成されている場合、ピストン冠面温度の変化は短時間で行われる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
【0057】
(イ)請求項1〜3に記載のエンジンの制御装置において、
前記オイルポンプの流量を変化させることは、前記流量を増量させることであり、前記エンジンの点火時期を変化させることは、前記点火時期を進角させること、であるエンジンの制御装置。
上記構成によると、オイルポンプの流量を増量させることで、オイルジェットから噴射されたオイルによりピストンの温度が徐々に低下する。そして、ピストン温度の低下に伴い、エンジンの点火時期を進角させることで、例えば、トルク向上、スロットル開度の低減による燃費改善などを図ることができる。
【0058】
(ロ)請求項1〜3又は(イ)のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置において、
前記オイルジェットの流量変化が開始された場合、前記流量変化開始からの経過時間に応じた変化率により、前記オイルジェットの流量を徐々に変化させる、エンジンの制御装置。
上記構成によると、ピストンの温度を安定させることができる。
【0059】
(ハ)請求項2に記載のエンジンの制御装置において、
前記ピストンの温度を、エンジン運転状態のうち少なくともエンジン回転速度及びエンジン負荷から推定する、エンジンの制御装置。
上記構成によると、直接検出できないピストンの温度を推定することができる。
【符号の説明】
【0060】
14…ピストン、24…燃料噴射弁、26…点火プラグ、30…オイルジェット、34…オイルポンプ、38…エンジンコントロールユニット(制御装置)、38A…オイルポンプ制御部、38B…燃料噴射量設定部、38C…燃料噴射量補正部、38D…燃料噴射制御部、38E…点火時期設定部、38F…点火時期補正部、38G…点火時期制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量可変のオイルポンプと、前記オイルポンプから供給されるオイルをピストンの裏面に噴射するオイルジェットと、を備えたエンジンの制御装置であって、
前記エンジンの運転状態に応じて、前記オイルポンプの流量を変化させると共に、前記エンジンの点火時期を変化させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの点火時期を、前記オイルポンプの流量変化に遅れて変化する前記ピストンの温度に応じて変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記オイルポンプの流量変化に応じて、前記エンジンの気筒内の冷却のために増量する燃料噴射量を削減する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項1】
流量可変のオイルポンプと、前記オイルポンプから供給されるオイルをピストンの裏面に噴射するオイルジェットと、を備えたエンジンの制御装置であって、
前記エンジンの運転状態に応じて、前記オイルポンプの流量を変化させると共に、前記エンジンの点火時期を変化させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの点火時期を、前記オイルポンプの流量変化に遅れて変化する前記ピストンの温度に応じて変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記オイルポンプの流量変化に応じて、前記エンジンの気筒内の冷却のために増量する燃料噴射量を削減する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−68102(P2013−68102A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205374(P2011−205374)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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