説明

エンジンルームの排熱装置

【課題】 エンジンフードに形成された開口部を開閉する蓋体によって運転者の視界を妨げることなく、十分な冷却風量を確保することができるエンジンルームの排熱装置を提供する。
【解決手段】 車両外部とエンジンルーム2内を連通する開口部11を有するエンジンフード10と、開口部11を開閉塞可能なカバー体20と、カバー体20を開閉方向に駆動する開閉機構30と、を備えたエンジンルームの排熱装置Sであって、開口部11は、エンジンフード10における車両走行中の負圧発生領域に設けられ、開閉機構30は、カバー体20をスライドさせることによって開口部11を開閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンルームの排熱装置に係り、特に運転者の視界の妨げることなくエンジンルーム内を排熱処理することができるエンジンルームの排熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内の前方位置にはラジエータが配設されている。ラジエータは、車両前方に設けられたラジエータグリルから流入する走行風またはファンによる強制的な冷却風によってエンジンへ循環させる冷却水を空冷している。この冷却水を空冷した後の暖気は、ラジエータ後方のエンジンルーム内に送られ、エンジンルームの後方下側から外部へ排出されるようになっている。しかし、暖気はエンジンルーム内の上方に向かうため、暖気をエンジンルームの後方下側から外部へ排出する構成では、効率よく暖気を外部へ排出することができなかった。
【0003】
効率よく暖気を外部へ排出させるため、モータによって蓋体を駆動してエンジンルームのフードに設けられた開口部を開閉し、この開口部からエンジンルーム内の暖気を外部に排出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の放熱装置では、ラジエータの冷却水経路に圧力スイッチが設けられており、冷却水の吐出圧力が所定以上の値となったときにこの圧力スイッチが働き、圧力スイッチが働くとモータが作動し、蓋体が駆動され開口部が開いた状態となる。これにより、特許文献1に記載の放熱装置では、ラジエータグリルからエンジンルーム内に吹き込み冷媒を冷却した後の走行風(暖気)を、エンジンフードに設けられた開口部を通して外部へ排出することができる。
また、この放熱装置では、開口部を蓋体によって開閉塞できるので、閉塞した状態では外部から雨水や洗車水がエンジンルーム内に浸入してしまうことを防ぐことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平2−149718号公報(第1〜3頁、図1〜2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエンジンルームの放熱装置では、蓋体が開いたときに、蓋体が運転者の前方の視界を妨げてしまうおそれがあった。この不都合を回避するために蓋体を小さくすると開口面積が小さくなって冷却風量が減少してしまい、十分な空冷効果を得ることができないという問題があった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、エンジンフードに形成された開口部を開閉する蓋体によって運転者の視界を妨げることなく、十分な冷却風量を確保することができるエンジンルームの排熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞可能なカバー体と、該カバー体を開閉方向に駆動する開閉機構と、を備えたエンジンルームの排熱装置であって、前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、前記開閉機構は、前記カバー体をスライドさせることによって前記開口部を開閉塞することにより解決される。
【0007】
このように本発明のエンジンルームの排熱装置では、カバー体が、開閉機構に駆動されることよってスライドしてエンジンフードに設けられた開口部を開閉塞するので、運転者の前方の視界を妨げず、かつ、大きな空気抵抗を発生させることなくカバー体を開閉動作させることができる。したがって、エンジンフードに大きな開口面積を形成することができ、大きな冷却効果を確保することが可能である。また、開口部は、車両走行中の負圧発生領域に設けられているので、この負圧によってエンジンルーム内の高温の暖気を効率的に外部へ吸い出すことが可能となる。
具体的には、前記カバー体は、1又は複数の開閉部材を有し、前記開閉機構は、前記開閉部材を車両前後方向または車両幅方向にスライドさせるように構成することができる。
【0008】
また、前記エンジンフードには、前記開口部が複数形成され、前記カバー体には、前記複数の開口部にそれぞれ対応する複数の通気孔が形成され、前記カバー体は、前記複数の通気孔を前記複数の開口部にそれぞれ対面させた開放位置と、前記複数の通気孔を前記複数の開口部にそれぞれ対面させない閉塞位置とに変位可能であり、前記開閉機構は、前記カバー体を前記開放位置と閉塞位置との間で変位させるように構成することができる。
【0009】
この場合、前記エンジンフードには、略矩形状の開口部が略等間隔で複数形成され、前記カバー体には、略矩形状の通気孔が略等間隔で複数形成された構成とすることができる。また、前記エンジンフードには、略扇形状の開口部が略等角度間隔で複数形成され、前記カバー体には、略扇形状の通気孔が略等角度間隔で複数形成された構成とすることができる。
【0010】
また、前記開口部または前記通気孔にはフィルタ部材が張設されると好適である。このように構成すれば、外部から開口部や通気孔を通ってエンジンルーム内に異物が入り込んでしまうことを防止することができる。
【0011】
また、前記課題は、本発明によれば、車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞可能なカバー体と、該カバー体を開閉方向に駆動する開閉機構と、を備えたエンジンルームの排熱装置であって、前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、前記カバー体は、少なくとも前記開口部のうち車両前側を閉塞する第1開閉部材と、前記開口部のうち前記第1開閉部材の閉塞領域よりも車両後側を閉塞する第2開閉部材と、を有し、前記開閉機構は、前記カバー体を開方向へ駆動するとき、前記第1開閉部材をその後端部が前記エンジンフードよりも車両上側に位置するように傾動させると共に、前記第2開閉部材をその前側端が前記エンジンフードよりも車両下側に位置するように傾動させることにより解決される。
【0012】
このように本発明のエンジンルームの排熱装置では、第1開閉部材と第2開閉部材を有するカバー体が開閉機構に駆動されると、第1開閉部材は後端部がエンジンフードよりも車両上側に位置するように傾動し、第2開閉部材は前側端がエンジンフードよりも車両下側に位置するように傾動するので、運転者の前方の視界を妨げず、かつ、大きな空気抵抗を発生させることなくカバー体を開閉動作させることができる。したがって、エンジンフードに大きな開口面積を形成することができ、大きな冷却効果を確保することが可能である。また、第1開閉部材の後端部がエンジンフードよりも上側に位置するように傾動することによって、第1開閉部材の後方は走行風の流れによって負圧領域となるので、開口部からより効率的にエンジンルーム内の高温の暖気を効率的に外部へ吸い出すことが可能となる。
また、前記カバー体は、前記第1開閉部材と前記第2開閉部材が車両前後方向に隣接して配設され、前記第1開閉部材と前記第2開閉部材によって前記開口部の略全域を閉塞するように構成することができる。
【0013】
また、前記開閉機構は、車両搭載エネルギー源を用いて前記カバー体を駆動する構成とすると好適である。このように構成すると、開閉機構を駆動するためのエネルギー発生源を別途車両に搭載する必要がないので、構成を簡単にすることができる。
具体的には、前記車両搭載エネルギー源は、車両のバッテリであり、前記開閉機構は、バッテリを電源とするアクチュエータによって前記カバー体を駆動する構成とすることができる。
また、他の構成として、前記車両搭載エネルギー源は、油圧装置または圧縮空気装置であり、前記開閉機構は、油圧アクチュエータまたは空圧アクチュエータによって前記カバー体を駆動する構成とすることができる。
【0014】
また、前記開閉機構は、車両運転時に発生するエネルギーを用いて前記カバー体を駆動する構成とすると好適である。このように構成すると、開閉機構を駆動するためのエネルギー発生源を別途車両に搭載する必要がないうえ、本来廃棄するエネルギーを用いるので省エネルギー化を図ることができる。
具体的には、前記車両運転時に発生するエネルギーは、エンジンルーム内に流入した冷却風であり、前記開閉機構は、前記カバー体を閉方向に付勢する弾性体を有し、前記カバー体がエンジンルーム内に流入した冷却風に基づいて開方向に所定の圧力を受けたときに、前記弾性体が、前記圧力によって伸縮し前記カバー体を開方向へ移動させる構成とすることができる。
【0015】
また、車両の状況を検出する状況検出機構からの検出信号に基づいて前記開閉機構の駆動を制御する制御部を備えると好適である。このように、車両の状況を検出する状況検出機構からの検出信号に基づいて、制御部が開閉機構を制御するようにすると、状況に応じて効率的に開閉部を開閉塞して、エンジンルーム内から暖気を排出させることができる。
また、前記制御部が、前記検出信号に基づいて前記カバー体による前記開口部の開度を変更するように前記開閉機構を制御すると、開度に応じてエンジンルーム内の冷却をより効率的に行うことができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記検出信号の表す検出量が第1の所定値以上となったときに閉状態から前記カバー体を開方向へ駆動させるように前記開閉機構を制御し、前記検出信号の表す検出量が前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以下となったときに開状態から前記カバー体を閉方向へ駆動させるように前記開閉機構を制御すると好適である。このようにカバー体を閉状態から開方向へ駆動するときの検出量(第1の所定値)と、カバー体を開状態から閉状態へ駆動するときの検出量(第2の所定値)とを同一とせず、第2の所定値の方が第1の所定値よりも小さく設定しているので、一旦、カバー体が開くと開口部を開放した状態が維持され易くなる。これにより、カバー体の開閉動作が繰り返され開口部が頻繁に開閉されることを防止して、開閉に伴うわずらわしさを低減させることができる。
【0017】
具体的には、前記検出信号は、車両の速度を表す信号とすることができる。また、前記検出信号は、ラジエータの冷却水の温度を表す信号とすることができる。
また、前記検出信号は、エンジンの回転数を表す信号であり、前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止したことを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御すると好適である。このように構成すると、エンジンの停止後に開口部を通って外部から雨水や異物がエンジンルーム内に入ってしまうことを防止することができる。また、前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止したことを検出したとき、所定時間後に、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御するようにしてもよい。このようにすると、エンジン停止後にエンジンルーム内から所定時間熱を効率的に放出させることができる。
【0018】
また、前記状況検出機構からの検出信号は、エンジンの回転数を表す信号とラジエータの冷却水の温度を表す信号であり、前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止し、且つ、ラジエータの冷却水の温度が所定の温度以下となったことを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御すると好適である。このように構成すると、冷却水の温度が所定の温度以下になるまでエンジンルーム内の熱を放出させることができるので、エンジン停止後にエンジンルーム内の排熱制御を確実に行うことが可能である。
【0019】
また、前記検出信号は、車両への降雨を検出する雨滴検出信号であり、前記制御部は、前記検出信号に基づいて車両への降雨を検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御すると好適である。このようにすると、エンジンルーム内に開口部を通って雨水等が入り込むことを防止することができる。
また、前記検出信号は、ウォッシャ液の吐出要求信号であり、前記制御部は、前記検出信号に基づいてウォッシャ液が吐出されることを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御すると好適である。このように構成すると、ウォッシャ液の吐出要求信号の発生と連動して噴射前に開口部を閉塞することが可能であり、開口部を閉塞することによってウォッシャ液の噴出方向がエンジンルームから開口部を通って排出される暖気によってずれてしまうという不都合を防止することができる。これにより、ウォッシャ液を通常の噴射パターンでウインドウガラスに対して噴射することができる。
【0020】
また、前記検出信号は、ワイパ装置作動要求信号であり、前記制御部は、前記検出信号に基づいてワイパ装置が作動することを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御すると好適である。このように構成すると、ワイパ装置作動要求信号の発生と連動させて開口部を閉塞することが可能であり、雨水等が開口部を通ってエンジンルーム内に入り込んでしまうことを防止することができる。
【0021】
また、前記エンジンフードには、前記開口部が複数形成され、前記カバー体は、前記複数の開口部にそれぞれ対応して複数設けられ、前記開閉機構は、前記複数のカバー体をそれぞれ独立に開閉方向に駆動可能に形成され、前記制御部は、前記検出信号に基づいて前記複数のカバー体を選択的に開閉駆動させるように前記開閉機構の駆動を制御する構成とすると好適である。このように構成すると、複数の開口部のうち適切な位置の開口部を状況に応じて開放させることができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記複数のカバー体の選択的な開閉駆動に基づいて車両の姿勢を制御するように構成すると好適である。このように構成すれば、車両姿勢の安定性や旋回性をより向上させることができる。
【0023】
また、ラジエータから車両後方へ排出される冷却風の排出方向を変更可能な導風板と、該導風板の向きを変更する導風板駆動部と、を備え、前記制御部は、前記開閉機構を制御して前記カバー体を開方向へ駆動するときに、前記導風板駆動部を制御してラジエータから車両後方へ排出される冷却風の排出方向を前記開口部側に向けるようにすると好適である。このように構成とすると、より効率的にエンジンルーム内の暖気を排出させることができる。
【0024】
また、前記課題は、本発明によれば、車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞する変位カバー体と、を備え、前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、前記変位カバー体は、エンジンルーム内で発生した熱エネルギーによって熱せられることにより前記開口部を開放する開状態に変位することにより解決される。このように車両走行中にエンジンルーム内に発生する熱エネルギー(廃棄エネルギー)を利用し、この熱エネルギーによって開口部を開閉塞可能な変位カバー体を用いることによって、エンジンルーム内が高温状態となったときに暖気を外部へ排出させることができる。
具体的には、前記変位カバー体は、熱膨張係数の異なる板状部材を貼り合わせてなる板状部材、もしくは、形状記憶部材からなる板状部材で構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエンジンルームの排熱装置によれば、エンジンフードに形成された開口部の開口面積を大きく設定したとしても、この開口部を開閉塞するカバー体を、運転者の前方の視界を妨げることなく開閉塞させることができる。また、カバー体の開閉に伴う空気抵抗の発生を抑止することが可能である。これにより、エンジンルーム内から開口部を通って外部へ排出させる風量を十分に確保して、効果的にエンジンルーム内の排熱を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図9は本発明の一実施形態に係るものであり、図1はエンジンルームの排熱装置の断面説明図、図2はエンジンルームの排熱装置の動作説明図、図3はカバー体の動作説明図、図4は開口部の形成場所の説明図、図5は電気的構成の説明図、図6は冷却水の温度に基づく動作説明図、図7は車両速度に基づく動作説明図、図8,図9は処理ステップのフローチャートである。
図10〜図25は本発明の他の実施形態に係るものであり、図10〜図13はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図14は図13のエンジンルームの排熱装置の説明図、図15〜図17はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図18は図17のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図19はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図20はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図21は図20のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図22はエンジンルームの排熱装置の説明図、図23はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図、図24は図23のカバー体の動作説明図、図25はエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【0027】
図1〜図3に示すように、本例のエンジンルームの排熱装置S(以下、「装置S」という)は、車両外部とエンジンルーム2内を連通する矩形状の開口部11を有するエンジンフード10と、開口部11を開閉塞可能なカバー体20と、カバー体20を開閉方向に駆動する開閉機構30と、ラジエータ5の後方に設けられた導風板42の向きを変更する導風板駆動機構40と、開閉機構30および導風板駆動機構40を制御する制御部50を主要構成要素としている。
【0028】
エンジンルーム2内には、ラジエータグリル4の後方にラジエータ5が配設され、このラジエータ5の後方にエンジン3等が配設されている。そして、常時は、車両1の走行時には、ラジエータグリル4からエンジンルーム2内へ走行風が流入し、冷却風としてラジエータ5に吹き付けられる。また、停止時等には、ラジエータ5のファン(不図示)が作動して冷却風がラジエータ5に吹き付けられる。ラジエータ5に吹き付けられた冷却風は、冷媒(冷却水)と熱交換して暖気となり、導風板42を通ってエンジン3の方向へ排出される。エンジン3の方向へ排出された冷却風は、エンジンルーム2内を通過して、エンジンルーム2後方下部から外部へ放出される。
【0029】
しかし、所定条件において本例の装置Sが作動し、図2,図3に示すようにカバー体20が開方向へ移動することによって開口部11が所定開度だけ開放され、開口部11から暖気(冷却風)を外部へ排出することができる。
従来、エンジンルーム2の後方下部から暖気を排出する場合には、暖気はエンジンルーム2の上部に溜まり易いうえ、エンジンルーム2内を後方まで通過しなければならないことから通気抵抗が大きく、効率よく暖気を排出することができなかった。
これに対し、本例の装置Sでは、開口部11がエンジンルーム2の上方に位置するうえ、開口部11がエンジンルーム2の車両前後方向の中央付近に設けられているので排出されるまでの距離が短くなるので、効率よく暖気を排出することができる。図4は車両1の走行時における風圧分布を示しており、本例の開口部11はエンジンフード10における負圧発生領域に設けられている。このように、本例の装置Sでは、開口部11が負圧発生領域に設けられているので、冷却風(暖気)は、この負圧に引っ張られるようにしてスムーズに外部へ放出される。これにより本例の装置Sでは、より一層エンジンルーム2内の高温の暖気を効率的に排出することができる。
【0030】
本例のカバー体20は、金属製,合成樹脂製等の板状の開閉部材21の裏面に車両幅方向に突出するようにローラ22が配設された構成である。
本例の開閉機構30は、エンジンフード10の裏面に配設された電動モータ31aによって駆動されるアクチュエータ31,一対のローラガイド32から構成されている。ローラガイド32は、開口部11の車両前後方向の側辺に沿って配設されている。ローラガイド32は、カバー体20のローラ22と係合しており、カバー体20は、ローラガイド32によってエンジンルーム2内の後方にスライドするように案内される。カバー体20は、エンジンフード10と略平行な状態でスライドし、エンジンルーム2内の後方へ向けて移動する。
【0031】
このように、本例の装置Sでは、カバー体20はスライドして開口部11を開放させるように構成されている。これにより、大きな開口面積を確保することができると共に、開口部11を開口させたときにカバー体20が運転者の視界前方を遮ることがないので好適である。また、カバー体20がスライドする構成であるため、移動中および移動後に大きな空気抵抗を生じさせることがなく、エンジンルーム2内にコンパクトに収容することができる。
【0032】
本例の導風板駆動機構40は、複数の導風板42と、これらを車両上下方向に離間して連結するリンク43と、リンク43を駆動するアクチュエータ41を主要構成要素としている。アクチュエータ41は、電動モータ41aを有して構成されており、電動モータ41aの作動によってリンク43を介して導風板41の向きを変更する。アクチュエータ41およびリンク43は、導風板駆動部に相当する。導風板42は、常時は、車両前後方向に向いてラジエータ5下流の冷却風をエンジンルーム2後方に向けて排出するが、所定条件でアクチュエータ41が作動すると、下端部を上方へ向けるように傾動し冷却風を開口部11へ向けて排出する。
【0033】
制御部50は、所定の信号を受けて電動モータ31a,41aを駆動するための制御信号を送出する。また、図5に示すように、制御部50には、アクチュエータ31の作動によってカバー体20の開度に対応する位置信号を送出する位置センサ51が接続されている。この位置センサ51は、電動モータ31aの回転量を出力するセンサであってもよいし、アクチュエータから伸縮量を出力するセンサであってもよいし、カバー体20の移動量を出力するセンサ等であってもよい。
また、制御部50には、状況検出機構としての、ラジエータ5の冷却水の温度を検出する温度センサ52、車両1の速度信号を送出する速度センサ53、エンジン3の回転数信号を送出するエンジン回転数センサ54、車両1への降雨を検出する雨滴センサ55、ウォッシャ液の吐出要求信号を発生させて車両1のウォッシャ装置を作動させる操作スイッチ56、車両1のワイパ装置を作動させる作動信号を発生させる操作スイッチ57等が接続されている。
【0034】
また、制御部50には、車両1に搭載されたバッテリ60から電力供給されている。バッテリ60は、制御部50を作動させる電源となると共に、制御部50からアクチュエータ31a,41aへ供給される制御信号はこれらを作動させる電源となる。
本例の制御部50は、これらセンサからの検出信号等に基づいて電動モータ31a,41aへ制御信号を送出し、カバー体20や導風板42を駆動する。
【0035】
なお、本例ではバッテリ60を駆動源としてアクチュエータ31を駆動してカバー体20を開閉動させるように構成されているが、これに限らず、車両に搭載された油圧源160によって油圧アクチュエータ131を駆動したり、圧縮空気源260によって空圧アクチュエータ231を駆動したりするように構成してもよい。例えば、油圧源160によって油圧アクチュエータ131を駆動する場合には、制御部50から油圧バルブ131aに開閉信号(制御信号)を送出することにより油圧アクチュエータ131の伸縮を制御することができる。また、圧縮空気源260によって空圧アクチュエータ231を駆動する場合には、制御部50から気圧バルブ231aに開閉信号(制御信号)を送出することにより空圧アクチュエータ231の伸縮を制御することができる。
このように、本例の装置Sでは、車両搭載のバッテリ60や、油圧源160,圧縮空気圧源260を駆動源として用いることができるので、別途駆動源を搭載する必要がないので好適である。
【0036】
本例の制御部50は、開口部11を開状態とするときには、導風板42の向きを変えてラジエータ5後方への冷却風を開口部11の方向へ排出するように電動モータ41aへ制御信号を送出する。すなわち、本例の装置Sでは、開口部11が開放されたときには、ラジエータ5からの冷却風が開口部11を通って外部へ効率的に排出されるようにしている。また、制御部50は、開口部11を閉状態とするときには、導風板42を通常位置に戻すように電動モータ41aに制御信号を送出する。なお、開状態とは、開口部11が一定の開度で開放されていることを指す。
【0037】
制御部50は、温度センサ52からの検出信号により冷却水の温度をモニターしており、図6に示すように、検出信号の表す検出量に基づいて冷却水の温度がT1(第1の所定値)以上となったと判断したときに、電動モータ31aに開信号(制御信号)を送出する。電動モータ31aは、開信号を受け取ると開口部11を閉塞した状態(閉状態)からカバー体20を開方向へ駆動し、開口部11を開放した状態(開状態)とする。このように、本例の装置Sでは、冷却水の温度が高くなったときには開口部11を開放してエンジンルーム2内の高温の暖気を積極的に排出して循環をよくして、冷却水の温度が高くならないようにしている。
【0038】
一方、制御部50は、検出信号の表す検出量に基づいて冷却水の温度がT2(第2の所定値)以下となったと判断したときには、電動モータ31aに閉信号(制御信号)を送出する。電動モータ31aは、閉信号を受け取るとカバー体20を開状態から閉方向へ駆動し、開口部11をカバー体20によって閉塞する。このように、本例の装置Sでは、冷却水の温度が小さくなったときには、開口部11をカバー体20によって閉塞して、冷却水が過冷却となってしまうことを防止している。
【0039】
本例の装置Sでは、上述のT2はT1よりも小さい値が設定されている。このように、T2をT1よりも小さく設定することで、カバー体20が頻繁に開閉動作することに伴うわずらわしさを防止することができる。また、頻繁に開閉動作させないことにより、カバー体20の開閉に用いられる消費エネルギーを削減することができる。
【0040】
また、制御部50は、速度センサ53からの検出信号により車両1の速度をモニターしており、図7に示すように、検出信号の表す検出量に基づいて車速がV1(第1の所定値)以上となったと判断したときに、電動モータ31aに開信号(制御信号)を送出する。電動モータ31aは、開信号を受け取ると閉状態からカバー体20を開方向へ駆動し、開状態とする。このように、本例の装置Sでは、車速が大きくなったときにはエンジンルーム2内の温度が上昇し易いことから、開口部11を開放して内部の高温の暖気を積極的に排出する。
【0041】
一方、制御部50は、検出信号の表す検出量に基づいて車速がV2(第2の所定値)以下となったと判断したときには、電動モータ31aに閉信号(制御信号)を送出する。電動モータ31aは、閉信号を受け取るとカバー体20を開状態から閉方向へ駆動し、開口部11をカバー体20によって閉塞する。このように、本例の装置Sでは、車速が小さくなったときには、開口部11をカバー体20によって閉塞して、冷却水等が過冷却となってしまうことを防止している。
また、冷却水の温度に基づくカバー体20の開閉動作と同様に、カバー体20を頻繁に開閉動作させてしまうことを防止するために、V2はV1よりも小さな値に設定されている。
【0042】
なお、本例では、検出信号に基づいて冷却水の温度や車速の大きさによって開口部11を開放した状態か閉塞した状態かのいずれかにカバー体20を駆動していたが、これに限らず、冷却水の温度や車速の大きさに応じて、例えば段階的に開口部11の開放面積を変化させるように構成してもよい。すなわち、制御部50は、冷却水の温度や車速の大きさが小さいときには、開口部11の開度を小さく設定し、冷却水の温度や車速の大きさが大きくなるにつれて開口部11の開度が徐々に大きくなるように設定する。このような設定に基づいて、制御部50は、電動モータ31aへ制御信号を送出し、位置センサ51からの位置信号によってカバー体20の開度が設定値となったときにカバー体20の開閉方向への駆動を停止する。このように開口部11の開度を可変とすることによって、エンジンルーム2内の温度を効率的に所定範囲内に保持することができる。
【0043】
また、制御部50は、エンジン回転数センサ54からの検出信号によってエンジン3が作動しているか否かをモニターしている。そして、制御部50は、エンジン回転数センサ54からの検出信号に基づいてエンジン3が停止していると判断したときには、開口部11を閉状態とするように開閉機構30へ制御信号を送出する。
なお、エンジン3が停止していると判断したときに、直ちに開口部11を閉状態とするように構成してもよいし、所定時間経過後に開口部11を閉状態とするように構成してもよい。このように、エンジン3の停止に伴って開口部11を閉状態とすることによって、雨水や異物がエンジンルーム2内に入り込むことを防止することができる。また、所定時間経過後に閉状態とするときには、閉状態となる前の所定時間にエンジンルーム2を放熱させることができる。
【0044】
また、制御部50は、車両1の外部に向けて設けられた雨滴センサ55からの検出信号によって、雨が降っているか否かをモニターしている。そして、制御部50は、雨滴センサ55からの検出信号に基づいて車両1に向けて雨が降っている判断したときには、開口部11を閉状態とするように開閉機構30へ制御信号を送出する。これにより、開口部11が開状態であるときに雨が降ってきた場合にでも、直ちに開口部11を閉状態としてエンジンルーム2内へ雨水が浸入することを防止することができる。
【0045】
また、制御部50は、ウォッシャ装置の操作スイッチ56の操作位置によって、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生したか否かをモニターしている。そして、制御部50は、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生したと判断したときには、開口部11を閉状態とするように開閉機構30へ制御信号を送出する。これにより、開口部11が開状態であるときにウォッシャ液を吐出する場合にでも、直ちに開口部11を閉状態とすることができる。すなわち、開口部11が開状態となったままウォッシャ液を吐出した場合には、通常時と風圧分布が異なっているため、適正に散布されず噴射方向がずれてウォッシャ液が飛散してしまうおそれがある。しかしながら、本例のようにウォッシャ液を吐出するときに開口部11を閉状態とすることによって、通常のウォッシャ液のスプレーパターンを確保することができる。
【0046】
また、制御部50は、ワイパ装置の操作スイッチ57の操作位置によって、ワイパ装置の作動信号が発生したか否かをモニターしている。そして、制御部50は、ワイパ装置の作動信号が発生したと判断したときには、開口部11を閉状態とするように開閉機構30へ制御信号を送出する。これにより、開口部11が開状態であるときにワイパ装置を作動させる場合にでも、直ちに開口部11を閉状態とすることができる。これにより、雨水等が開口部11からエンジンルーム2内へ浸入してしまうことを防止することができる。
【0047】
次に、本例の装置Sの動作について図8,図9に基づいて説明する。
まず、制御部50は、冷却水の温度センサ52からの検出信号に基づいて冷却水の温度がT1以上か否かを判断する(ステップS1)。冷却水の温度がT1以上であると判断したとき(ステップS1;YES)はステップS3に進む。一方、冷却水の温度がT1以上ではないと判断したとき(ステップS1;NO)は、速度センサ53からの検出信号に基づいて車速がV1以上か否かを判断する(ステップS2)。
ステップS2で車速がV1以上であると判断したとき(ステップS2;YES)はステップS3に進む。一方、車速がV1以上ではないと判断したとき(ステップS2;NO)は、再びステップS1に戻る。
【0048】
ステップS3では、雨滴センサ55からの検出信号に基づいて雨が降っているか否かを判断する。雨が降っていると判断したとき(ステップS3;YES)は、再びステップS1に戻る。一方、雨が降っていないと判断したとき(ステップS3;NO)は、ウォッシャ装置の操作スイッチ56の操作位置に基づいてウォッシャ液の吐出要求信号が発生したか否かを判断する(ステップS4)。
ステップ4で制御部50がウォッシャ液の吐出要求信号が発生していると判断したとき(ステップS4;YES)は、再びステップS1に戻る。一方、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生していないと判断したとき(ステップS4;NO)は、ワイパ装置の操作スイッチ57の操作位置に基づいてワイパ装置の作動信号が発生したか否かを判断する(ステップS5)。
【0049】
ステップ5で制御部50がワイパ装置の作動信号が発生したと判断したとき(ステップS5;YES)は、再びステップS1に戻る。一方、ワイパ装置の作動信号が発生していないと判断したとき(ステップS5;NO)は、ステップS6で開閉機構30に開信号(制御信号)を送出してカバー体20を移動させて開口部11を開状態とする。また、制御部50は、電動モータ41aに制御信号を送出して導風板42からの冷却風の排出方向を通常方向から開口部11側へ変更する。
このように制御部50は、冷却水の温度または車速が所定値以上となり、かつ、降雨が検出されておらず、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生しておらず、ワイパ装置の作動信号が発生していないときに、開口部11を開放させるように制御する。
【0050】
以上のようにして開口部11が開状態となった後、制御部50は、冷却水の温度センサ52からの検出信号に基づいて冷却水の温度がT2以下となったか否かを判断する(ステップS11)。冷却水の温度がT2以下となったと判断したとき(ステップS11;YES)は、ステップS16に進む。ステップS16では、制御部50は、開閉機構30に閉信号(制御信号)を送出してカバー体20を移動させて開口部11を閉状態とする。また、制御部50は、電動モータ41aに制御信号を送出して導風板42からの冷却風の排出方向を開口部11側から通常方向へ変更する。
【0051】
一方、ステップS11で冷却水の温度がT2以下ではないと判断したとき(ステップS11;NO)は、速度センサ53からの検出信号に基づいて車速がV2以下となったか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12で車速がV2以下となったと判断したとき(ステップS12;YES)はステップS16に進む。一方、車速がV2以下となっていないと判断したとき(ステップS12;NO)は、雨滴センサ55からの検出信号に基づいて雨が降っているか否かを判断する。雨が降っていると判断したとき(ステップS13;YES)は、ステップS16に進む。一方、雨が降っていないと判断したとき(ステップS13;NO)は、ウォッシャ装置の操作スイッチ56の操作位置に基づいてウォッシャ液の吐出要求信号が発生したか否かを判断する(ステップS14)。
【0052】
ステップ14で制御部50がウォッシャ液の吐出要求信号が発生していると判断したとき(ステップS14;YES)は、ステップS16に進む。一方、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生していないと判断したとき(ステップS14;NO)は、ワイパ装置の操作スイッチ57の操作位置に基づいてワイパ装置の作動信号が発生したか否かを判断する(ステップS15)。
【0053】
ステップ15で制御部50がワイパ装置の作動信号が発生したと判断したとき(ステップS15;YES)は、ステップS16に進む。一方、ワイパ装置の作動信号が発生していないと判断したとき(ステップS15;NO)は、再びステップS11へ戻る。
このように一旦、開口部11が開状態となった後は、制御部50は、冷却水の温度または車速が所定値以下なったとき、降雨が検出されたとき、ウォッシャ液の吐出要求信号が発生したとき、ワイパ装置の作動信号が発生したときのいずれかの条件が満たされたときに、開口部11を閉塞させるように制御する。
【0054】
また、本例は以下のように改変してもよい。
図10の例では、カバー体20が、開閉部材としての前カバー23a,後カバー23bを有して構成されており、これらはリンク機構(不図示)等を介して一つのアクチュエータ31によって駆動されるように構成されている。閉状態では、前カバー23aの後端部と後カバー23bの前端部が突き合わされた状態となっている。そして、アクチュエータ31に駆動されることによって、前カバー23aはエンジンルーム2内の車両前方にスライドし、後カバー23bはエンジンルーム2内の車両後方にスライドする。このように構成しても、開状態において運転者の視界を妨げることなく、開口面積を大きく確保することができると共に、開方向への移動中および移動後に大きな空気抵抗を生じさせることがないので好適である。なお、図10の例において、前カバー23a,後カバー23bをそれぞれ別のアクチュエータによって駆動するように構成してもよい。
【0055】
また、図10の例では、閉状態では、前カバー23aの後端部と後カバー23bの前端部が突き合わされた状態となっていたが、これに限らず、図11のように構成してもよい。すなわち、図11の例では、閉状態において前カバー23aの後端部と後カバー23bの前端部が車両上下方向に重なった状態となっている。なお、図11では、前カバー23aの後端部が後カバー23bの前端部の上側に位置しているが、後カバー23bの前端部が前カバー23aの後端部の上側に位置するように構成してもよい。
【0056】
図12の例では、カバー体20が、開閉部材としての左カバー24a,右カバー24bを有して構成されており、それぞれアクチュエータ31A,31Bによって駆動されるように構成されている。閉状態では、左カバー24aの右端部と右カバー24bの左端部が突き合わされた状態となっている。そして、アクチュエータ31A,31Bに駆動されることによって、左カバー24aはエンジンルーム2内の車両左方向にスライドし、右カバー24bはエンジンルーム2内の車両右方向にスライドする。このように構成しても、開状態において運転者の視界を妨げることなく、開口面積を大きく確保することができると共に、開方向への移動中および移動後に大きな空気抵抗を生じさせることがないので好適である。なお、図11の例と同様に、左カバー24aと右カバー24bの端部が閉状態において車両上下方向に重なるように構成してもよい。
【0057】
図13,図14の例では、カバー体20が第1開閉部材としての前カバー25a,第2開閉部材としての後カバー25bを有して構成されている。そして、前カバー25aと後カバー25bはリンク機構によって連結されており、アクチュエータ31によって後カバー25bが駆動されると、後カバー25bの移動に連動して前カバー25aが移動するように構成されている。
この例では、閉状態では、前カバー25a,後カバー25bが開口部11のうち前側の領域,後側の領域をそれぞれ閉塞している。そして、アクチュエータ31が作動すると、後カバー25bはその前端部がエンジンフード10の外側面よりも下に位置するように傾動し、これに伴い、前カバー25aはその後端部がエンジンフード10の外側面よりも上に位置するように傾動する。
【0058】
このように前カバー25a,後カバー25bが傾動することにより、運転者の視界を妨げることなく、大きな開口面積を確保することができると共に、大きな空気抵抗の発生を防止することができる。
そして、本例の装置Sでは、前カバー25aが後端を持ち上げるようにして前傾する姿勢となることによって、走行時に前カバー25aに走行風が当たると、前カバー25aの後方が負圧となり、より効果的にエンジンルーム2内の暖気を外部へ排出させることができる。
【0059】
なお、この例では、一のアクチュエータ31によって前カバー25a,後カバー25bを連動させるように構成しているが、前カバー25a,後カバー25bにそれぞれ専用のアクチュエータを設けてもよい。さらに前カバー25aをアクチュエータ31によって駆動し、これに連動して後カバー25bが傾動するように構成してもよい。
また、本例では、カバー体20が第1開閉部材としての前カバー25a,第2開閉部材としての後カバー25bから構成され、これらによって開口部11の略全域を閉塞可能であるが、これに限らず、カバー体20を第1開閉部材としての前カバー25a,第2開閉部材としての後カバー25bおよび他の開閉部材から構成するようにしてもよい。
【0060】
図15の例では、カバー体20の開閉部材26がスライドするのではなく、アクチュエータ31によって前端部がエンジンルーム2内へ入り込むように傾動して、開口部11を開放する構成である。
図16の例では、カバー体20が開閉部材としての前カバー27a,中カバー27b,後カバー27cを有して構成されている。この例では、閉状態では、前カバー27a,中カバー27b,後カバー27cによって開口部11が閉塞されている。そして、開状態では、アクチュエータ31によって前カバー27a,中カバー27b,後カバー27cの前端部をエンジンルーム2内へ入り込ませるように前傾させてエンジンルーム2内と外部とを連通させる。
このように構成しても、開状態において運転者の視界を妨げることなく、大きな開口面積を確保することができると共に、大きな空気抵抗の発生を防止することができる。
なお、図16の例において、前カバー27aまたは中カバー27bを図13,図14の例で示したように後側端部がエンジンフード10の上側に位置するように傾動させるように構成してもよい。このように構成すれば、前カバー27aまたは中カバー27bの後方に負圧を発生させることができ、エンジンルーム2内の暖気を効率的に外部へ排出させることができる。
【0061】
図17,図18の例では、カバー体20が開閉部材としての前カバー28a,後カバー28bを有して構成されている。前カバー28aは、前端部がヒンジ28abによって回動可能に支持されており、裏面側に付勢手段としてのコイルスプリング29aの一端が取り付けられている。コイルスプリング29aの他端はエンジンルーム2内の固定物(例えば、本例ではエンジン3)に取り付けられている。そして、このコイルスプリング29aは、常時、引張力により前カバー28aをエンジンルーム2側へ付勢している。
また、後カバー28bは、後端部がヒンジ28bbによって回動可能に支持されており、裏面側に付勢手段としてのコイルスプリング29bの一端が取り付けられている。コイルスプリング29bの他端はエンジンルーム2内の固定物(例えば、本例ではエンジン3)に取り付けられている。そして、このコイルスプリング29bは、常時、引張力により後カバー28bを外部側へ付勢している。また、後カバー28bの前端部には風受部28baが設けられている。この風受部28baは後カバー28bの本体部の前端部から本体部に対して斜下方向に所定の角度をもって延出する矩形状の部材である。
【0062】
以上のような構成により、常時は、前カバー28a,後カバー28bは、付勢力によって開口部11を閉塞する位置に保持されている。
しかし、車両1の走行時に車速が大きくなりラジエータグリル4からの冷却風によってエンジンルーム2の内圧が所定値以上に上昇すると、コイルスプリング29a,29bによる付勢力に抗して、冷却風の圧力によって前カバー28a,後カバー28bが開口部11を開放させる方向へ回動する。そして、一旦、開状態となると冷却風の外部への流れが形成され、この冷却風の流れによって風受部28baに冷却風が当たって後カバー28bを開状態に保持する。
【0063】
そして、車速が小さくなるとラジエータグリル4からの冷却風の導入量が減少し、エンジンルーム2の内圧が低下するので、再び前カバー28a,後カバー28bは、コイルスプリング29a,29bの付勢力によって開口部11を閉塞する。
このように、図17,図18の例では、車両1の走行時に発生するエネルギーによって開口部11を開放することが可能である。
【0064】
また、図17,図18の例では、カバー体20を回動させることによって、開口部11を開放させていたが、図19にようにスライドさせることによって開放させるように構成してもよい。すなわち、図19の例では、カバー体20は、車両前後方向にスライド可能に構成されている。そして、カバー体20の開閉部材21の裏面には、車両下側に向かって延出する風受部21aが形成されている。また、カバー体20は、常時、付勢手段としてのコイルスプリング21bによって閉方向に付勢されている。
このような構成により、常時は、カバー体20は、付勢力によって開口部11を閉塞する位置に保持されている。しかし、車両1の運転時に車速が大きくなって、ラジエータグリル4から流入する冷却風量が多くなると、この冷却風によって風受部21aが車両後方に向けて所定値以上の圧力を受ける。これにより、カバー体20は、コイルスプリング21bの付勢力に抗して車両後方へスライドし、開口部11を開放させる。
なお、図17〜図19の例では、付勢手段としてコイルスプリングを用いていたが、これに限らず、例えばゴム等の弾性材料を用いてもよい。
【0065】
また、図20,図21の例では、装置Sは、開口部11を有するエンジンフード10と、この開口部11を開閉塞する変位カバー体120とを備えて構成されている。
本例の変位カバー体120は、開口部11の前端部縁に前端部が取り付けられた前カバー121aと、開口部11の後端部縁に後端部が取り付けられた後カバー121bを有している。前カバー121a,後カバー121bは、それぞれ2枚の熱膨張係数が異なる板状部材を貼り合わせて構成されたものであり、前カバー121aは上側の部材121aaよりも下側の部材121abの方が熱膨張係数が大きく、後カバー121bは下側の部材121bbよりも上側の部材121baの方が熱膨張係数が大きいものが選択されている。そして、前カバー121aは、上側の部材121aaの前端部が開口部11の縁部に取り付けられ、後カバー121bは、下側の部材121bbの後端部が開口部11の縁部に取り付けられている。
【0066】
このような構成により、常時は、前カバー121aの後端部と後カバー121bの前端部が上下に重なって開口部11を閉塞した状態となっている。しかし、車両1の運転時には、エンジンルーム2内の温度が上昇し、所定値以上の温度となると、エンジンルーム2内の熱エネルギーによって変位カバー体120が熱せられることによって変形し始める。つまり、熱膨張係数が大きな部材121ab,121baは熱膨張係数の小さな部材121aa,121bbに比べて車両前後方向に伸びる量が大きいので、前カバー121a,後カバー121bは、熱膨張係数の大きな部材側から熱膨張係数の小さな部材側に向けて撓むようにして変位する。
【0067】
これにより、図21(B)に示すように、前カバー121aの後端部が持ち上がると共に、後カバー121bの前端部がエンジンルーム2内へ入り込むように撓んで、開口を形成する。そして、この変位量は、エンジンルーム2内の温度に応じて変化するので、変位カバー体120は、エンジンルーム2内の温度が高ければ大きく変位して大きな開口を生じ、エンジンルーム2内の温度がそれほど高くなければ小さく変位して小さな開口を生じる。
このように、図20,図21の例では、車両1の走行時に発生するエネルギーによって開口部11を開放することが可能である。
【0068】
また、図20,図21の例は、異なる熱膨張係数を有する板状部材を貼り合わせた変位カバー体120を用いているが、これに限らず、カバー体を形状記憶部材で形成してもよい。すなわち、カバー体を所定の温度で所望の形に変形する形状記憶部材で形成することにより、エンジンルーム2内の温度が所定以上となったときに、カバー体が変位して開口を生じさせるように構成できる。
【0069】
また、上記実施形態では、エンジンフード10には、開口部11が一箇所のみに形成されていたが、これに限らず、複数箇所に開口部11を設けてもよい。
【0070】
図22の例では、エンジンフード10の車両左右側に開口部11a,11bが設けられ、これらに対してそれぞれカバー体20A,20Bが開閉塞可能に設けられている。本例のカバー体20A,20Bは、それぞれアクチュエータ31A,31Bによって独立に開閉塞可能であるが、これに限らず、一つのアクチュエータによって連動してカバー体20A,20Bを開閉塞させるように構成してもよい。各カバー体20A,20Bの構成は、図13,図14のカバー体20と同様であるので説明を省略する。
本例のカバー体20A,20Bは、制御部50からの制御信号によってアクチュエータ31A,31Bが作動することよって開口部11a,11bの開閉塞を行う。制御部50は、車両の旋回を検出する旋回検出センサ58からの検出信号によってカバー体20A,20Bの開度を各位置センサからの位置信号によって調節するように制御を行う。旋回検出センサ58としては、ハンドルの回動角度を検出するセンサや、幅方向の加速度を検出するセンサ、車輪の向きを検出するセンサ等を用いることができる。
【0071】
カバー体20A,20Bが開方向に作動して開口部11a,11bが所定の開度で開放された状態にあるとき所定方向の車両旋回の検出信号を受けると、制御部50は、旋回方向と反対側のカバー体をより広く開放させるようにアクチュエータに制御信号を送出する。これにより、積極的に空気の流れを利用して、旋回時の車両安定性や旋回性をより向上させるように走行時の車両1の姿勢を制御することができる。
【0072】
また、図22(B)に示すように車両左右側に開口部11a,11bを設けると共に、さらに車両前後方向に開口部11c,11dを設け、これらをカバー体20A〜20Dによって開閉塞可能とする構成にしてもよい。本例では、カバー体20A〜20Dは、それぞれアクチュエータ31A〜31Dによって独立に駆動されるようになっている。
本例では、制御部50は、速度センサ53からの検出信号により、車両1が低速のときは車両前側の開口部11a,11bを開放し、高速のときは車両後側の開口部11c,11dを開放させるようにアクチュエータ31A〜31Dに制御信号を送出する。また、図22(A)の例と同様に旋回方向に応じて所定位置の開口部を開放させるようにしてもよい。
このように車両幅方向および車両前後方向に複数のカバー体20A〜20Dを設けることによって、車両速度や旋回方向等に応じて複数の開口部のうちから適切な位置の開口部を選択的に開放させるように構成することが可能となる。
【0073】
また、図23,図24の例では、エンジンフード10の中央部に矩形状の複数(本例では4)の開口部211a〜211dが車両前後方向に略等間隔に形成され、この開口部211a〜211dがカバー体220によって開閉塞可能となっている。開口部211a〜211dの車両前後方向の奥行き長さは、隣り合う開口部同士間の車両前後方向の長さと同程度に設定されている。カバー体220は、図24(A)に示すように開閉部材221に、開口部211a〜211dに対応させて矩形状の通気孔221a〜221dが形成され、この通気孔221a〜221dにそれぞれフィルタ部材222が張設された構成である。このカバー体220は、エンジンルーム2内でアクチュエータ31によって車両前後方向に往復駆動される。
本例のフィルタ部材222は、外部からエンジンルーム2内へ異物が入り込んでしまうことを防ぐための設けられたものであり、金属製のワイヤを格子状にもしくは網目状に形成したものである。なお、フィルタ部材222は、金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0074】
図23(A)及び図24(B)に示す閉塞位置では、カバー体220は開口部211a〜211dを閉塞している。この状態では、開閉部材221の通気孔221a〜221d以外の部分が開口部211a〜211dに対面して開口部211a〜211dを閉塞しており、エンジンルーム2内と外部とを遮断している。この状態からアクチュエータ31が開方向に作動すると、図23(B)及び図24(C)に開放位置では、カバー体220は車両後方へ所定距離スライドし、開口部211a〜211dには開閉部材221の通気孔221a〜221dがそれぞれ対面する。これにより、開口部211a〜211dが開放され、エンジンルーム2内と外部とが連通した状態となり、エンジンルーム2内から暖気が外部へ排気される。
なお、本例では、カバー体220が車両前後方向にスライドする構成であるが、これに限らず、開口部を車両幅方向に離間させて複数形成し、カバー体220を車両幅方向にスライドする構成としてもよい。
【0075】
なお、図23,図24の例では、エンジンフード10に形成された開口部211a〜211dが矩形状であったが、これに限らず、図25に示すように略扇形状であってもよい。図25の例では、エンジンフード10に左側に略扇形状の開口部311a〜311cが形成され、右側に開口部311d〜311fが形成されている。開口部311a〜311fは略同じ中心角(本例では中心角略30度)を有する略扇形状であり、隣り合う開口部とその中心角と略同じ角度間隔(本例では中心角で略30度)離間して形成されている。
本例のカバー体320A,320Bは、エンジンルーム2側に配設されており、不図示のアクチュエータによって仮想中心を中心として回動するようにスライドされることによって、開口部311a〜311fを開閉塞可能となっている。左右に配設されたカバー体320A,320Bは、扇形状の開閉部材323A,323Bに、それぞれ開口部311a〜311c,開口部311d〜311fに対応した略扇形状の通気孔323a〜323c,323d〜323fが形成された構成である。これらの通気孔にフィルタ部材324が張設されている。
【0076】
図25(A)は左右のカバー体320A,320Bによって開口部311a〜311fが閉塞された状態を示している。この状態から不図示のアクチュエータによってカバー体320A,320Bが開方向に駆動されると、カバー体320A,320Bはそれぞれ時計方向,反時計方向に回動する。図25(B)は、通気孔323a〜323fが開口部311a〜311fと合致するまでカバー体320A,320Bが回動し、開口部311a〜311fが開放された状態を示している。このように開口部311a〜311fが開放されることによって、エンジンルーム2内の暖気が外部へ排気される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンルームの排熱装置の断面説明図である。
【図2】図1のエンジンルームの排熱装置の動作説明図である。
【図3】図1のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図4】図1のエンジンルームの排熱装置の開口部の形成場所の説明図である。
【図5】図1のエンジンルームの排熱装置の電気的構成の説明図である。
【図6】図1のエンジンルームの排熱装置の冷却水の温度に基づく動作説明図である。
【図7】図1のエンジンルームの排熱装置の車両速度に基づく動作説明図である。
【図8】図1のエンジンルームの排熱装置の処理ステップのフローチャートである。
【図9】図1のエンジンルームの排熱装置の処理ステップのフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図14】図13のエンジンルームの排熱装置の説明図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図18】図17のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図20】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図21】図20のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図22】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置の説明図である。
【図23】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図24】図23のエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【図25】本発明の他の実施形態に係るエンジンルームの排熱装置のカバー体の動作説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1・・車両、 2・・エンジンルーム、 3・・エンジン、
4・・ラジエータグリル、 5・・ラジエータ、 10・・エンジンフード、
11・・開口部、 20・・カバー体、 21・・開閉部材、 22・・ローラ、
30・・開閉機構、 31・・アクチュエータ、 31a・・電動モータ、
32・・ローラガイド、 40・・導風板駆動機構、 41・・アクチュエータ、
41a・・電動モータ、 42・・導風板、 43・・リンク、
50・・制御部、 51・・位置センサ、 52・・温度センサ、
53・・速度センサ、 54・・エンジン回転数センサ、 55・・雨滴センサ、
56・・操作スイッチ、 57・・操作スイッチ、58・・旋回検出センサ、
60・・バッテリ、 S・・排熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞可能なカバー体と、該カバー体を開閉方向に駆動する開閉機構と、を備えたエンジンルームの排熱装置であって、
前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、
前記開閉機構は、前記カバー体をスライドさせることによって前記開口部を開閉塞することを特徴とするエンジンルームの排熱装置。
【請求項2】
前記カバー体は、1又は複数の開閉部材を有し、
前記開閉機構は、前記開閉部材を車両前後方向または車両幅方向にスライドさせることを特徴とする請求項1に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項3】
前記エンジンフードには、前記開口部が複数形成され、
前記カバー体には、前記複数の開口部にそれぞれ対応する複数の通気孔が形成され、
前記カバー体は、前記複数の通気孔を前記複数の開口部にそれぞれ対面させた開放位置と、前記複数の通気孔を前記複数の開口部にそれぞれ対面させない閉塞位置とに変位可能であり、
前記開閉機構は、前記カバー体を前記開放位置と閉塞位置との間で変位させることを特徴とする請求項1に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項4】
前記エンジンフードには、略矩形状の開口部が略等間隔で複数形成され、
前記カバー体には、略矩形状の通気孔が略等間隔で複数形成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項5】
前記エンジンフードには、略扇形状の開口部が略等角度間隔で複数形成され、
前記カバー体には、略扇形状の通気孔が略等角度間隔で複数形成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項6】
前記開口部または前記通気孔にはフィルタ部材が張設されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項7】
車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞可能なカバー体と、該カバー体を開閉方向に駆動する開閉機構と、を備えたエンジンルームの排熱装置であって、
前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、
前記カバー体は、少なくとも前記開口部のうち車両前側を閉塞する第1開閉部材と、前記開口部のうち前記第1開閉部材の閉塞領域よりも車両後側を閉塞する第2開閉部材と、を有し、
前記開閉機構は、前記カバー体を開方向へ駆動するとき、前記第1開閉部材をその後端部が前記エンジンフードよりも車両上側に位置するように傾動させると共に、前記第2開閉部材をその前側端が前記エンジンフードよりも車両下側に位置するように傾動させることを特徴とするエンジンルームの排熱装置。
【請求項8】
前記カバー体は、前記第1開閉部材と前記第2開閉部材が車両前後方向に隣接して配設され、前記第1開閉部材と前記第2開閉部材によって前記開口部の略全域を閉塞することを特徴とする請求項7に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項9】
前記開閉機構は、車両搭載エネルギー源を用いて前記カバー体を駆動することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項10】
前記車両搭載エネルギー源は、車両のバッテリであり、
前記開閉機構は、バッテリを電源とするアクチュエータによって前記カバー体を駆動することを特徴とする請求項9に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項11】
前記車両搭載エネルギー源は、油圧装置または圧縮空気装置であり、
前記開閉機構は、油圧アクチュエータまたは空圧アクチュエータによって前記カバー体を駆動することを特徴とする請求項9に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項12】
前記開閉機構は、車両運転時に発生するエネルギーを用いて前記カバー体を駆動することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項13】
前記車両運転時に発生するエネルギーは、エンジンルーム内に流入した冷却風であり、
前記開閉機構は、前記カバー体を閉方向に付勢する弾性体を有し、前記カバー体がエンジンルーム内に流入した冷却風に基づいて開方向に所定の圧力を受けたときに、前記弾性体は、前記圧力によって伸縮し前記カバー体を開方向へ移動させることを特徴とする請求項12に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項14】
車両の状況を検出する状況検出機構からの検出信号に基づいて前記開閉機構の駆動を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記検出信号に基づいて前記カバー体による前記開口部の開度を変更するように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記検出信号の表す検出量が第1の所定値以上となったときに閉状態から前記カバー体を開方向へ駆動させるように前記開閉機構を制御し、前記検出信号の表す検出量が前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以下となったときに開状態から前記カバー体を閉方向へ駆動させるように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14又は15に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項17】
前記検出信号は、車両の速度を表す信号であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項18】
前記検出信号は、ラジエータの冷却水の温度を表す信号であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項19】
前記検出信号は、エンジンの回転数を表す信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止したことを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項20】
前記検出信号は、エンジンの回転数を表す信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止したことを検出したとき、所定時間後に、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項21】
前記状況検出機構からの検出信号は、エンジンの回転数を表す信号とラジエータの冷却水の温度を表す信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいてエンジンが停止し、且つ、ラジエータの冷却水の温度が所定の温度以下となったことを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項22】
前記検出信号は、車両への降雨を検出する雨滴検出信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいて車両への降雨を検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項23】
前記検出信号は、ウォッシャ液の吐出要求信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいてウォッシャ液が吐出されることを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項24】
前記検出信号は、ワイパ装置作動要求信号であり、
前記制御部は、前記検出信号に基づいてワイパ装置が作動することを検出したとき、前記カバー体を閉方向に駆動して閉状態にするように前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項25】
前記エンジンフードには、前記開口部が複数形成され、
前記カバー体は、前記複数の開口部にそれぞれ対応して複数設けられ、
前記開閉機構は、前記複数のカバー体をそれぞれ独立に開閉方向に駆動可能に形成され、
前記制御部は、前記検出信号に基づいて前記複数のカバー体を選択的に開閉駆動させるように前記開閉機構の駆動を制御することを特徴とする請求項14に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項26】
前記制御部は、前記複数のカバー体の選択的な開閉駆動に基づいて車両の姿勢を制御することを特徴とする請求項25に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項27】
ラジエータから車両後方へ排出される冷却風の排出方向を変更可能な導風板と、該導風板の向きを変更する導風板駆動部と、を備え、
前記制御部は、前記開閉機構を制御して前記カバー体を開方向へ駆動するときに、前記導風板駆動部を制御してラジエータから車両後方へ排出される冷却風の排出方向を前記開口部側に向けることを特徴とする請求項14〜26のいずれか一項に記載のエンジンルームの排熱装置。
【請求項28】
車両外部とエンジンルーム内を連通する開口部を有するエンジンフードと、前記開口部を開閉塞する変位カバー体と、を備え、
前記開口部は、前記エンジンフードにおける車両走行中の負圧発生領域に設けられ、
前記変位カバー体は、エンジンルーム内で発生した熱エネルギーによって熱せられることにより前記開口部を開放する開状態に変位することを特徴とするエンジンルームの排熱装置。
【請求項29】
前記変位カバー体は、熱膨張係数の異なる板状部材を貼り合わせてなる板状部材、もしくは、形状記憶部材からなる板状部材であることを特徴とする請求項28に記載のエンジンルームの排熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−168631(P2006−168631A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366344(P2004−366344)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】