説明

エンジン回転数算出装置及びエンジン音生成装置

【課題】車両走行速度と仮想的エンジンの回転数が比例関係にないと想定される場合であっても、実際のエンジン音に近い自然な音を発生することができるエンジン回転数算出装置及びエンジン音生成装置を提供する。
【解決手段】アクセル開度に依存しかつ車速に依存しない仮想的エンジンの回転数を記憶する記憶手段を備え、車両走行速度と仮想的エンジンの回転数が比例関係にないと想定される場合には、検出したアクセル開度に基づき記憶手段から仮想的エンジンの回転数を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪自動車や自動二輪車に代表される各種車両の走行状態に応じてエンジンの模擬音を発生させるためのエンジン回転数算出装置及びエンジン音生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護に対する関心の高まりに伴って、電動モータを駆動源とする電気自動車(エンジンと電動モータを併用するハイブリット車も含む)が普及し始めている。そのような電気自動車は、エンジン駆動の自動車と比べて走行駆動音が極めて小さい。そのため、歩行者などが電気自動車の接近に気付きにくいという問題がある。また、エンジン駆動車の運転に習熟し電気自動車の駆動音に不慣れな運転者が電気自動車を運転した場合、エンジン駆動車と電気自動車の速度が同じでも駆動音が異なるため、運転感覚に違和感を生じることがある。このような問題を解決するために、電気自動車等において、自動車のアクセル開度と車両走行速度とをパラメータとして仮想的なエンジンの回転数を算出し、算出したエンジンの回転数に応じた擬似的なエンジン音を報知音として発生させる装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−010576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、車両走行速度に応じて仮想的なエンジンの回転数を算出しているため、例えば走行開始時や半クラッチ状態時など車両走行速度と仮想的エンジンの回転数が比例関係にないと想定される場合には、発生する報知音(エンジン音)が不自然な音になる、という問題がある。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気自動車等において、車両走行速度と仮想的エンジンの回転数が比例関係にないと想定される場合であっても、エンジン駆動の自動車における実際のエンジン音に近い自然な音を発生することができるエンジン回転数算出装置及びエンジン音生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、仮想的エンジンの回転数を算出するエンジン回転数算出装置であって、自動車のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、前記自動車の車速を検出する車速検出手段と、前記自動車のアクセル開度に依存しかつ前記自動車の車速に依存しない前記仮想的エンジンの回転数を記憶する記憶手段と、少なくとも前記検出された車速に基づいて、前記仮想的エンジンの回転数と該車速が比例関係にあると想定すべき状態であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき状態であると判断された場合、前記検出されたアクセル開度に基づき前記記憶手段から仮想的エンジンの回転数を取得する回転数取得手段と、を備えることを特徴とするエンジン回転数算出装置である。
【0006】
この発明において、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき場合には、自動車のアクセル開度に依存しかつ自動車の車速に依存しない仮想的エンジンの回転数を記憶する記憶手段から仮想的エンジンの回転数を取得している。すなわち、自動車の車速を用いることなく仮想的エンジンの回転数を算出している。したがって、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき状態であるにも関わらず、自動車の車速に応じた仮想的エンジンの回転数を算出してしまい、この仮想的エンジンの回転数に基づいて不自然なエンジン音を生成してしまう、ということを避けることができる。これにより、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき場合であっても、電気自動車等において自動車の挙動に合った、エンジン駆動の自動車と同様の自然なエンジン音を生成することができる。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記のエンジン回転数算出装置において、前記記憶手段は、アクセル開度と、時間によって変化する仮想的エンジンの回転数と、を対応付けたテーブルを記憶し、前記回転数取得手段は、前記検出されたアクセル開度と時間経過とに対応した仮想的エンジンの回転数を前記テーブルから取得することを特徴とする。
【0008】
この発明において、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき場合には、アクセル開度と、時間によって変化する仮想的エンジンの回転数と、を対応付けたテーブルから仮想的エンジンの回転数を取得している。したがって、電気自動車等において、例えば走行開始時のエンジンの回転数の挙動に合った、エンジン駆動の自動車と同様の自然なエンジン音を生成することができる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記のエンジン回転数算出装置において、前記記憶手段は、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルを記憶し、前記回転数取得手段は、前記検出されたアクセル開度に対応した仮想的エンジンの回転数上昇率を前記テーブルから取得し、当該回転数上昇率に基づいて仮想的エンジンの回転数を算出することを特徴とする。
【0010】
この発明において、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき場合には、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルから仮想的エンジンの回転数上昇率を取得し、取得した回転数上昇率から仮想的エンジンの回転数を算出している。したがって、例えばアクセル開度が変化したとしても、仮想的エンジンの回転数はその時点のアクセル開度に対応した回転数上昇率に応じて時間変化する値となるので、仮想的エンジンの回転数が不連続な値をとることがなくなり、より精度良く仮想的エンジンの回転数を取得することができる。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記のエンジン回転数算出装置と、前記エンジン回転数算出装置が算出した仮想的エンジンの回転数に基づいて擬似的なエンジン音を生成するエンジン音生成部と、を備えることを特徴とするエンジン音生成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仮想的エンジンの回転数と自動車の車速が比例関係にないと想定すべき場合であっても、電気自動車において、自動車の挙動に合った、エンジン駆動の自動車と同様の自然なエンジン音を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態によるエンジン音生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
エンジン音生成装置10は、原動機回転数センサ101と、車速センサ102と、アクセル開度センサ103と、エンジン回転数算出部104と、エンジン音生成部105と、車速非依存回転数記憶部106aと、車速依存回転数記憶部106bと、エンジン音記憶部107と、を含んで構成される。なお、以下の説明において、電気自動車等の電動モータのみを搭載した車両の場合には、エンジンや変速機等は仮想的なものを意味する。
【0014】
図1において、原動機回転数センサ101は、自動車の駆動源である原動機(電動モータ)の回転数を検出し、当該回転数を表す原動機回転数情報を出力する。車速センサ102は、自動車の車輪の回転速度を検出し、当該回転速度を表す車両走行速度(以下、車速とする)情報を出力する。アクセル開度センサ103は、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、当該踏み込み量を表すアクセル開度情報を出力する。なお、本実施形態では、アクセルペダルの踏み込み量を表すアクセル開度を0〜15の16段階で表し、アクセル開度の数字が大きいほど踏み込み量が大きい。
【0015】
原動機回転数センサ101からの原動機回転数情報、車速センサ102からの車速情報、アクセル開度センサ103からのアクセル開度情報は、それぞれエンジン回転数算出部104に入力される。また、アクセル開度センサ103からのアクセル開度情報は、エンジン音生成部105にも入力される。
【0016】
エンジン回転数算出部104は、上記入力された各情報(原動機回転数情報、車速情報、アクセル開度情報)に基づいて、車速非依存回転数記憶部106a又は車速依存回転数記憶部106bを参照することにより仮想的エンジンの回転数を取得し、取得した仮想的エンジンの回転数をエンジン音生成部105へ出力する。ここで、エンジン回転数算出部104は、上記入力された各情報に基づいて仮想的エンジンの回転数と自動車の車速とが比例関係にあると想定すべきか否かを判断し、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にないと想定すべき場合(例えば走行開始時や半クラッチ状態時など)は、アクセル開度に依存しかつ車速に依存しない仮想的エンジンの回転数を記憶する車速非依存回転数記憶部106aから仮想的エンジンの回転数を取得する。車速に依存しないとは、異なる車速に対して仮想的エンジンの回転数が同じ値をとることである。一方、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にあると想定すべき場合には、エンジン回転数算出部104は、車速依存回転数記憶部106bを参照して、アクセル開度と車速に応じた仮想的エンジンの回転数を算出する。
【0017】
エンジン音生成部105は、入力された仮想的エンジンの回転数及びアクセル開度情報に基づいて、エンジン音記憶部107を参照してエンジン音の音圧波形に対応する電圧信号を生成し、生成した電圧信号を外部のスピーカなどに出力する。
【0018】
次に、図2に車速非依存回転数記憶部106aに記憶されたデータの一例を示す。
図2は、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数を対応付けたテーブルの一例である。図2において、横軸はアクセル開度を表わし、縦軸は仮想的エンジンの回転数(単位は1000rpm)を表す。図2に示すとおり、小さいアクセル開度には低い回転数が対応付けられ、大きいアクセル開度には高い回転数が対応付けられている。エンジン回転数算出部104は、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にないと想定すべきであると判断した場合に、アクセル開度情報に従って、当該アクセル開度に対応する仮想的エンジンの回転数を図2のテーブルから取得し、取得した仮想的エンジンの回転数をエンジン音生成部105に出力する。
【0019】
次に、図3及び図4に車速依存回転数記憶部106bに記憶されたデータの一例を示す。
図3は、アクセル開度と車速の組に変速段度を対応付けたテーブルの一例である。変速段度は、変速機の段数を示す。図3において、横軸は車速(単位は10km/h)を表し、縦軸はアクセル開度を表し、テーブルの中に記された数値は変速段度を表す。図3(a)は車速が増加している場合に用いるテーブルであり、図3(b)は車速が減少している場合に用いるテーブルである。車速が増加している場合と減少している場合に別のテーブルを用いるのは、車速が狭い範囲で増減を繰り返した場合に、変速段度が頻繁に切り替わることを防ぐためである。エンジン回転数算出部104は、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にないと想定すべきであると判断した場合に、アクセル開度情報と車速情報に従って、図3のテーブルのうち加速時か減速時かに応じたテーブルから、当該アクセル開度と当該車速に対応する変速段度を取得する。なお、図3の各テーブルにおいて、車速0とは0km/h以上10km/h未満を表し、車速1とは10km/h以上20km/h未満を表し、以降も同様である。
【0020】
図4は、変速段度と変速比を対応付けたテーブルの一例である。変速比は、変速機の出力回転数に対する仮想的エンジンの出力回転数(変速機の入力)の比である。エンジン回転数算出部104は、変速段度を図3のテーブルから取得すると、当該変速段度に対応する変速比を図4のテーブルから取得する。
【0021】
次に、図5にエンジン音記憶部107に記憶されたデータの一例を示す。
図5は、仮想的エンジンの回転数とアクセル開度の組にエンジン音の音圧波形を対応付けたテーブルの一例である。エンジン音の音圧波形は、予め録音した実際のエンジン音(エンジン駆動の自動車のエンジン音)をデジタルデータとして記憶したものであり、図5のテーブルには、異なる回転数と異なるアクセル開度の5つの条件に対応した5つの波形1〜5が設定されている。図5において、横軸は仮想的なエンジンの回転数(単位は1000rpm)を表し、縦軸はアクセル開度を表す。エンジン音生成部105は、アクセル開度情報と仮想的エンジンの回転数に従って、当該アクセル開度と当該回転数に対応する音圧波形を図5のテーブルから取得する。例えば、回転数がx1、アクセル開度がy1である点pの条件に対しては、点pから最も近い3つの音圧波形(波形1〜3)を合成してエンジン音の音圧波形を生成する。このとき、点pからの距離に応じて各音圧波形の重み付けをして合成を行う。
【0022】
なお、上記図2の車速非依存回転数記憶部106aと図3及び図4の車速依存回転数記憶部106bと図5のエンジン音記憶部107とに記憶されているデータは、例えば自動車あるいは本車内エンジン音生成装置10の製造時にプリセットデータとして予めデータを設定し記憶するようにしておけばよい。
【0023】
次に、上記構成を有するエンジン音生成装置10の動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
エンジン音生成装置10の稼働中において、原動機回転数センサ101、車速センサ102、およびアクセル開度センサ103は、それぞれ常時、センサの検出動作を行っている。これにより、自動車の走行状態が検出される(ステップS1)。
【0024】
ステップS1で検出された走行状態の情報(原動機回転数情報、車速情報、アクセル開度情報)は、エンジン回転数算出部104へ入力される。エンジン回転数算出部104は、まず、原動機回転数情報と車速情報に従って、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にあると想定すべきか否かを判断する(ステップS2)。例えば、実際の原動機の回転数と車速とが比例関係にない場合、あるいは車速が所定値以下の場合に、仮想的エンジンの回転数と車速とが比例関係にないと想定すべきであると判断する。仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にあると想定すべきであると判断した場合には処理がステップS3の処理に移行する。一方、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべきであると判断した場合には処理がステップS4の処理に移行する。
【0025】
仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にあると想定すべきであると判断した場合には、エンジン回転数算出部104は、図3および図4のテーブルを参照して仮想的エンジンの回転数を算出する(ステップS3)。具体的には、まず、エンジン回転数算出部104は、入力されたアクセル開度と車速とに対応する変速段度を図3のテーブルから取得する。そして、エンジン回転数算出部104は、取得した変速段度に対応する変速比を図4のテーブルから取得する。次に、エンジン回転数算出部104は、次の式(1)から仮想的エンジンの回転数Neを算出する。ここで、Vは車速であり、Rはタイヤの駆動半径であり、itは変速比であり、ifは終減速比である。終減速比は予め設定された固定の変速比である。ただし、式(1)から算出したNeが600より小さい場合には、エンジン回転数算出部104は、エンジンがアイドリング状態であるとみなし、仮想的エンジンの回転数Neを600とする。
【0026】
【数1】

【0027】
一方、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべきであると判断した場合には、エンジン回転数算出部104は、図2のテーブルを参照して仮想的エンジンの回転数を取得する(ステップS4)。具体的には、エンジン回転数算出部104は、入力されたアクセル開度に対応する仮想的エンジンの回転数を図2のテーブルから取得する。
【0028】
ステップS3またはS4で取得された仮想的エンジンの回転数はエンジン音生成部105へ入力される。エンジン音生成部105は、この仮想的エンジンの回転数と、アクセル開度センサ103から入力されたアクセル開度情報とに従って、エンジン音記憶部107を参照することによりエンジン音の音圧波形を生成する(ステップS5)。
ステップS5で生成されたエンジン音の音声波形に対応する電圧信号が外部のスピーカなどに出力されることにより、スピーカからエンジン音が発生される。
【0029】
このように、本実施形態によれば、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき場合には、アクセル開度に基づいて、予め用意した図2のテーブルを参照することにより仮想的エンジンの回転数を取得し、取得した仮想的なエンジンの回転数に従ってエンジン音の音圧波形に対応する電圧信号を生成している。すなわち、車速を用いることなく仮想的エンジンの回転数を算出している。したがって、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき状態であるにも関わらず、車速に応じた仮想的エンジンの回転数を算出してしまい、不自然なエンジン音を生成してしまう、ということを避けることができる。また、図2のテーブルを用いるので、例えば停止状態から走行が開始された直後や半クラッチ状態の時などにおいて、エンジン回転数の挙動に合った自然な音を生成することができる。これにより、自動車の挙動に合った自然なエンジン音を生成することができる。例えば、アクセル開度が大きいにも関わらず車速が0あるいは非常に低速である場合に、エンジンが空回りしているような高回転のエンジン音を生成することができる。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、この発明の第2の実施形態によるエンジン音生成装置について説明する。
例えば、車速が0km/hから増加し10km/hに到達するまでの状態では、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にない(例えば半クラッチ状態)とみなすことが可能である。
そこで、本実施形態では、エンジン回転数算出部104は、このような自動車の走行開始時には、アクセル開度と、時間によって変化する仮想的エンジンの回転数と、を対応付けたテーブルを参照して、仮想的エンジンの回転数を取得する。
【0031】
図7に本実施形態において車速非依存回転数記憶部106aに記憶されたデータの一例を示す。
図7は、時間と仮想的エンジンの回転数を対応付けたテーブルの一例である。図7において、横軸は時間(単位は秒)を表し、縦軸は仮想的エンジンの回転数(単位は1000rpm)を表す。このテーブルは、各アクセル開度0〜15に対応して設けられている。図7に示す例では、アクセル開度0とアクセル開度15に対応するテーブルを示している。図7に示すとおり、小さいアクセル開度には低い回転数上昇率が対応付けられ、大きいアクセル開度には高い回転数上昇率が対応付けられている。エンジン回転数算出部104は、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべきと判断した場合に、アクセル開度情報に従って、各テーブルのうち当該アクセル開度に対応するテーブルから、経過時間に対応する仮想的エンジンの回転数を取得する。
他の構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0032】
このように、本実施形態によれば、自動車の走行開始時には、アクセル開度と時間経過とに基づいて、予め用意した図7のテーブルを参照することにより仮想的エンジンの回転数を取得している。これにより、走行開始時のエンジン回転数の挙動に合った自然なエンジン音を生成することができる。
【0033】
[第3の実施形態]
次に、この発明の第3の実施形態によるエンジン音生成装置について説明する。
本実施形態では、エンジン回転数算出部104は、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき場合に、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルを参照して、仮想的エンジンの回転数を取得する。
【0034】
図8に本実施形態において車速非依存回転数記憶部106aに記憶されたデータの一例を示す。
図8は、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルの一例である。仮想的エンジンの回転数上昇率は、単位時間(1秒間)に上昇する仮想的エンジンの回転数である。図8において、横軸はアクセル開度を表し、縦軸は仮想的エンジンの回転数上昇率(単位は1000rpm)を表す。図8に示すとおり、小さいアクセル開度には低い回転数上昇率が対応付けられており、大きいアクセル開度には高い回転数上昇率が対応付けられている。エンジン回転数算出部104は、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべきであると判断した場合に、アクセル開度情報に従って、当該アクセル開度に対応する仮想的エンジンの回転数上昇率を図8のテーブルから取得し、取得した回転数上昇率に基づき仮想的エンジンの回転数を算出する。具体的には、エンジン回転数算出部104は、取得した回転数上昇率に前回仮想的エンジンの回転数を算出した時からの経過時間を乗算し、その値を前回算出した仮想的エンジンの回転数に加算して仮想的エンジンの回転数を算出し、算出した仮想的エンジンの回転数をエンジン音生成部105に出力する。
他の構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき場合には、アクセル開度に基づいて、予め用意した図8のテーブルを参照することにより仮想的エンジンの回転数上昇率を取得し、取得した回転数上昇率から仮想的エンジンの回転数を算出している。したがって、例えば第2の実施形態ではアクセル開度が変化すると仮想的エンジンの回転数が不連続になってしまうが、本実施形態ではアクセル開度が変化したとしても仮想的エンジンの回転数が不連続になることはない。このため、より精度良く仮想的エンジンの回転数を取得することができる。
【0036】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0037】
例えば、急ブレーキがかけられたことをABS(Antilock Brake System:アンチロック・ブレーキ・システム)が検知した場合に、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき状態であると判断してもよい。或いは、クラッチの状態を検出する所定のセンサが半クラッチ状態であることを検知した場合に、仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき状態であると判断してもよい。
さらに、本発明は、実際に道路を走行可能な各種車両に限らず、ドライブシミュレータ等のように仮想的に走行状態を再現するものに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態によるエンジン音生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】アクセル開度と仮想的エンジンの回転数を対応付けたテーブルの一例である。
【図3】アクセル開度と車速の組に変速段度を対応付けたテーブルの一例である。
【図4】変速段度と変速比を対応付けたテーブルの一例である。
【図5】仮想的エンジンの回転数とアクセル開度の組にエンジン音の音圧波形を対応付けたテーブルの一例である。
【図6】エンジン音生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】アクセル開度と、時間によって変化する仮想的エンジンの回転数と、を対応付けたテーブルの一例である。
【図8】アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルの一例である。
【符号の説明】
【0039】
10…エンジン音生成装置 101…原動機回転数センサ 102…車速センサ 103…アクセル開度センサ 104…エンジン回転数算出部 105…エンジン音生成部 106a…車速非依存回転数記憶部 106b…車速依存回転数記憶部 107…エンジン音記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想的エンジンの回転数を算出するエンジン回転数算出装置であって、
自動車のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記自動車の車速を検出する車速検出手段と、
前記自動車のアクセル開度に依存しかつ前記自動車の車速に依存しない前記仮想的エンジンの回転数を記憶する記憶手段と、
少なくとも前記検出された車速に基づいて、前記仮想的エンジンの回転数と該車速が比例関係にあると想定すべき状態であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記仮想的エンジンの回転数と車速が比例関係にないと想定すべき状態であると判断された場合、前記検出されたアクセル開度に基づき前記記憶手段から仮想的エンジンの回転数を取得する回転数取得手段と、
を備えることを特徴とするエンジン回転数算出装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、アクセル開度と、時間によって変化する仮想的エンジンの回転数と、を対応付けたテーブルを記憶し、
前記回転数取得手段は、前記検出されたアクセル開度と時間経過とに対応した仮想的エンジンの回転数を前記テーブルから取得する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転数算出装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、アクセル開度と仮想的エンジンの回転数上昇率を対応付けたテーブルを記憶し、
前記回転数取得手段は、前記検出されたアクセル開度に対応した仮想的エンジンの回転数上昇率を前記テーブルから取得し、当該回転数上昇率に基づいて仮想的エンジンの回転数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転数算出装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のエンジン回転数算出装置と、
前記エンジン回転数算出装置が算出した仮想的エンジンの回転数に基づいて擬似的なエンジン音を生成するエンジン音生成部と、
を備えることを特徴とするエンジン音生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−155507(P2010−155507A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334233(P2008−334233)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】