説明

エンジン搭載の電気自動車の前部構造

【課題】エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させる。
【解決手段】エンジン10をエンジンルーム44内の車幅方向中央部に車両前方に傾くように配置する。エンジン10の一部をフロアトンネル58a内に位置させる。発電機14及びモータ16をエンジンルーム44内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、このエンジンによって駆動可能な発電機と、少なくとも発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと、このバッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車が従来技術として知られている。
【0003】
特許文献1のものは、ダッシュパネルを境に車室の前方に形成されたエンジンルーム内に縦置きされたエンジンと、このエンジンから後方に延びる出力軸に連結された発電機と、この発電機によって生成された電力を蓄えるバッテリと、車室後方のリアパネルの下に配設され且つバッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている。そして、前端がダッシュパネルに連結される車室フロアパネルの前部に上方に向けて膨出し且つエンジンルームに通じる隆起部が形成され、この隆起部の下に発電機が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−155828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジン搭載の電気自動車、特に、エンジンが小型化して、その小型化の分、レイアウトの自由度が高くなったプラグインハイブリッド車では、エンジン、発電機及びモータを車両前部に配置することが考えられる。
【0006】
このようにエンジン、発電機及びモータを車両前部に配置したエンジン搭載の電気自動車において、エンジン、発電機及びモータの位置関係を工夫して、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させたい。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車の前部構造であって、上記エンジンは、ダッシュパネルによって車室と仕切られたエンジンルーム内の車幅方向中央部に車両前方に傾くように配置されていて、一部が、フロアパネルの車幅方向中央部に上記ダッシュパネルから車両後方に延び且つ上方に膨出するように形成されたフロアトンネル内に位置しており、上記発電機及び上記モータは、上記エンジンルーム内に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、エンジンを車両前方に傾くように配置しているので、重心を低くすることができ、走行安定性を向上させることできる。
【0010】
また、エンジンの一部をフロアトンネル内に位置させているので、比較的重量のあるエンジンが比較的車両後方に配置されることになり、エンジンルーム内のレイアウト性を向上させることができるとともに、ヨー慣性モーメントを低減させることができる。
【0011】
以上により、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させることができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記エンジンは、その駆動軸が車幅方向に延びるように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、本発明の最良の形態を実現することができる。
【0014】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記エンジンは、その駆動軸が上記ダッシュパネルよりも車両後方に位置し、且つ前端が上記駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、エンジンを、その駆動軸がダッシュパネルよりも車両後方に位置し、且つ前端が駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置しているので、比較的重量のあるエンジンがさらに車両後方に配置されることになり、エンジンルーム内のレイアウトをさらに向上させることができるとともに、ヨー慣性モーメントをさらに低減させることができる。
【0016】
第4の発明は、上記第2又は3の発明において、上記発電機は、その回転軸が車両側面視で上記エンジンの駆動軸に対してオフセットするように上記エンジンの車幅方向一方側に配置されており、上記エンジンの駆動軸と上記発電機の回転軸とは、ギヤを介して連結されていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、発電機を、その回転軸が車両側面視でエンジンの駆動軸に対してオフセットするようにエンジンの車幅方向一方側に配置しているので、ギヤの配置スペースを確保することができる。
【0018】
また、エンジンの駆動軸と発電機の回転軸とをギヤを介して連結しているので、エンジンの回転数と発電機の回転数とを適切な回転数に調整することができる。
【0019】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記発電機は、運転者の着座側とは反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
これによれば、発電機を運転者の着座側とは反対側に配置しているので、発電機がステアリングシャフトに干渉したり、発電機が車両前突時にブレーキ装置のブースターなどに接触したりするのを防止することができる。
【0021】
第6の発明は、上記第4又は5の発明において、上記エンジンの駆動軸と上記発電機の回転軸とは、その上下方向高さ位置が上記駆動輪の駆動軸と略同じであることを特徴とするものである。
【0022】
これによれば、エンジンの駆動軸と発電機の回転軸との上下方向高さ位置を駆動輪の駆動軸と略同じにしているので、エンジンと発電機とが比較的下方に配置されることになる。この結果、重心をさらに低くすることができ、走行安定性をさらに向上させることできる。
【0023】
第7の発明は、上記第2〜6のいずれか1つの発明において、上記モータは、その回転軸が上記発電機の回転軸よりも車両前方に且つ上記駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
これによれば、モータを、その回転軸が発電機の回転軸よりも車両前方に且つ駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置しているので、比較的重量のあるエンジン、発電機及びモータが駆動輪の駆動軸よりも車両後方に配置されることになり、ヨー慣性モーメントをさらに低減させることができる。
【0025】
第8の発明は、上記第2〜7のいずれか1つの発明において、上記エンジンの吸気系が、上記エンジンルーム内の車幅方向中央部に配置されていて、上記エンジンの前部上方から上記駆動輪の駆動軸の上方を通って車両前方に延びていることを特徴とするものである。
【0026】
これによれば、エンジンの吸気系が、エンジンルーム内の車幅方向中央部に配置されていて、エンジンの前部上方から駆動輪の駆動軸の上方を通って車両前方に延びているので、エンジンへの吸気を容易に行うことができる。
【0027】
第9の発明は、上記第2〜8のいずれか1つの発明において、上記発電機は、上記エンジンの車幅方向一方側に配置されており、上記エンジンの排気系が、該エンジンの前部下方から上記発電機側とは反対側に延びた後、上記フロアパネルの下方を通って車両後方に延びていることを特徴とするものである。
【0028】
これによれば、発電機をエンジンの車幅方向一方側に配置するとともに、エンジンの排気系が、エンジンの前部下方から発電機側とは反対側に延びた後、フロアパネルの下方を通って車両後方に延びているので、発電機とエンジンの排気系とが干渉するのを防止しながら、エンジンから車両後方への排気を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、エンジンを車両前方に傾くように配置するとともに、その一部をフロアトンネル内に位置させているので、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジン搭載の電気自動車の概略ブロック図である。
【図2】電気自動車の全体構造を示す概略側面図である。
【図3】電気自動車の全体構造を示す概略平面図である。
【図4】エンジン、ジェネレータ、モータ及びデフの車体への取付を示す概略斜視図である。
【図5】減速機及びモータの内部構造を示す概略斜視図である。
【図6】エンジンの排気通路の配置を示す概略側面図である。
【図7】エンジンの排気通路の配置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
−電気自動車のシステム構成−
図1は、エンジン搭載の電気自動車の概略ブロック図であり、この電気自動車(以下、車両とも言う)1は、近距離走行時(例えば50km以下の走行時)には、家庭用電源など外部電源からの外部電力が供給されて充電されたバッテリ12の電力を、モータ16に供給して駆動輪を駆動させる一方、遠距離走行時には、エンジン10によってジェネレータ(発電機)14を駆動してその発電電力をバッテリ12に供給して充電して、その充電されたバッテリ12の電力をモータ16に供給して駆動輪を駆動させるプラグインハイブリッド車である。このプラグインハイブリッド車は、上述の如く、エンジン10及びモータ16を動力源として備え、このエンジン10は発電にのみ使用して、車両が動くための動力は全てモータ16に頼っているシリーズ式ハイブリッド車である。
【0033】
上記エンジン10は、2つの気筒(以下、シリンダとも言う)がクランク軸(駆動軸)10a(図2に図示)の延びる方向に1列に並んだ直列2気筒の小型レシプロエンジンである。このレシプロエンジンでは、該エンジン用の燃料タンク18から供給される燃料(例えばガソリン)を燃焼室で燃焼させて得られたエネルギーでシリンダ内部のピストンを上下させ、それをコンロッドとクランク軸10aによって回転運動に置き換えるようになっている。また、上記気筒には、吸気通路(吸気管)19(「エンジンの吸気系」に相当。図2等に図示)19及び排気通路(排気管)20(「エンジンの排気系」に相当。図6等に図示)が連通している。吸気通路19は、上流側では1つであるが、下流側では2つに分岐して各気筒に連通している。吸気通路19の上流端部には、エンジン10への空気を取り入れるためにエアインテーク19aが配設されているとともに、このエアインテーク19aの下流側には、吸入空気中の異物やホコリを除去するためにフィルタを用いたエアクリーナ19bが配設されている。排気通路20は、下流側では1つであるが、上流側では2つに分岐して各気筒に連通している。排気通路20には、排気ガス中のHCやCO、NOなどの有害成分を浄化するために三元触媒を用いた排気浄化装置20aが配設されているともに、この排気浄化装置20aの下流側には、排気ガスの爆発音のエネルギーの圧力変動を打ち消し、吸収させて音を静かにするマフラー20bが配設されている。そして、エンジン10は、バッテリ12の残量が少なくなったとき(例えばバッテリ12の充電率SOCが30%以下になったとき)に自動運転されるようになっている。尚、上述の如く、エンジン10を小型化したため、燃料タンク18やエアクリーナ19bなども小型化している。
【0034】
上記バッテリ12は、大容量化した大型・高性能のものであって、ジェネレータ14及びモータ16にそれぞれ、インバータ22を介して接続されていて、ジェネレータ14からの発電電力及びモータ16からの回生電力が供給されて充電される。また、バッテリ12は、車両1の非使用時には、外部電源からの外部電力が供給・充電可能になっている。そして、バッテリ12は、その電力をモータ16に供給して駆動させる。
【0035】
上記ジェネレータ14は、その回転軸(入力軸)14a(図2に図示)がエンジン10のクランク軸10aに連結されていて、エンジン10によって駆動可能になっている。
【0036】
上記モータ16は、その回転軸(出力軸)16a(図2に図示)が上記駆動輪としての左右の前輪30,32に減速機23(図2等に図示)、ディファレンシャルギヤ(以下、デフと言う)24及び左右の前輪駆動軸(ドライブシャフト)26,28(「駆動輪の駆動軸」に相当)を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて前輪30,32を駆動させる。減速機23は、モータ16の回転速度を減速して該モータ16の動力をデフ24に伝達する。減速機23の減速ギヤ23a(図5に図示)の減速比(即ち、モータ16からデフ24への減速比)は、例えば1/2程度である。デフ24は、車両1がカーブを曲がるときに、内輪差(内側と外側の前輪30,32の速度差)を吸収しながら、モータ16の動力を前輪30,32に振り分けて伝達する。また、デフ24は、モータ16の回転速度を最終的に減速して該モータ16の動力を前輪30,32に伝達する機能も受け持っている。デフ24のファイナルギヤ24a(図5に図示)の減速比(即ち、デフ24から前輪30,32への減速比)は、例えば1/4程度である。つまり、減速機23及びデフ24の減速比(即ち、モータ16から前輪30,32への減速比)は、全体として、例えば1/7〜1/8程度である。
【0037】
上記インバータ22は、交流電力を直流電力に変換するAC−DCコンバータ(発電機14用のインバータ)22aと直流電力を交流電力に変換するDC−ACコンバータ(モータ16用のインバータ)22bとが一体化してなるものであって、バッテリ12、ジェネレータ14及びモータ16相互間の電力の授受及び変換を行う。具体的には、バッテリ12をジェネレータ14からの電力で充電するときには、ジェネレータ14からの交流電力をAC−DCコンバータ22aによって直流電力に変換してバッテリ12に供給する。また、バッテリ12の電力をモータ16に供給するときには、バッテリ12からの直流電力をDC−ACコンバータ22bによって交流電力に変換してモータ16に供給する。さらに、ジェネレータ14からの電力をモータ16に供給するときには、ジェネレータ14からの交流電力をAC−DCコンバータ22aによって直流電力に変換した後、その直流電力をDC−ACコンバータ22bによって交流電力に変換してモータ16に供給する。
【0038】
−電気自動車の前部構造−
以下、電気自動車1の前部構造について説明する。図2は、電気自動車の全体構造を示す概略側面図、図3は、電気自動車の全体構造を示す概略平面図、図4は、エンジン、ジェネレータ、モータ及びデフの車体への取付を示す概略斜視図、図5は、減速機及びモータの内部構造を示す概略斜視図、図6は、エンジンの排気通路の配置を示す概略側面図、図7は、エンジンの排気通路の配置を示す概略平面図である。尚、これらの図では、図を見易くするため、部材の図示省略や簡略化などを適宜行っている。
【0039】
車両1前部には、ダッシュパネル40によって車室42と仕切られた、該ダッシュパネル40の車両前方空間としてのエンジンルーム44が設けられている。ダッシュパネル40は、フロアパネル58の前端から上方に起立し、車幅方向に延びるダッシュロア40aを有している。このダッシュロア40aは、上下方向に延びる縦壁部40bと、この縦壁部40bの下端から斜め下後方に延びてフロアパネル58に連結する傾斜壁部40cとを有している。エンジンルーム44内の車幅方向両側には、左右のフロントサイドフレーム46,48が車両前後方向に延びるようにそれぞれ配置されている。これらのフロントサイドフレーム46,48は、車両前後方向に水平に延びる水平部46a,48aと、この水平部46a,48aの後端からダッシュロア40aの傾斜壁部40cに沿うように斜め下後方に延びる傾斜部46b,48bとを有している。左右のフロントサイドフレーム46,48の前端の間には、バンパーレインフォースメント(図示省略)がクラッシュカン(図示省略)を介して車幅方向に延びるように架設連結されている。このバンパーレインフォースメントの車両後方で且つ左右のクラッシュカンの間には、ラジエター56が車幅方向に延びるように配置されている。
【0040】
フロアパネル58の車幅方向中央部には、ダッシュロア40aから車両後方に延び且つ上方に膨出するように形成されたフロアトンネル58aが設けられている。このフロアトンネル58aは、上面が車両後方に行くに従って下方に傾斜する傾斜トンネル部58bと、この傾斜トンネル部58bの後端(下端)から車両後方に延びてキックアップ部58dに達し、上面が略水平に延びる水平トンネル部58cとを有している。傾斜トンネル部58bは、エンジンルーム44に連通するようにダッシュロア40aの車幅方向中央部(詳細には、縦壁部40bの下部の車幅方向中央部及び傾斜壁部40cの車両前後方向略全体の車幅方向中央部)に開口している。
【0041】
上記エンジン10は、エンジンルーム44内の後部の車幅方向中央部にクランク軸10aが車幅方向に延びるように横置き配置されている。また、エンジン10は、そのシリンダが上下方向に対して車両前方に傾くように配置されている。詳細には、エンジン10は、そのシリンダヘッド10b側が車両前方を、吸気側が上方を向くように配置されている。そして、エンジン10は、その上部後方(一部)がフロアトンネル58aの傾斜トンネル部58b内に位置している。また、エンジン10は、そのクランク軸10aがダッシュロア40aの縦壁部40bよりも車両後方に位置し、且つ前端が前輪駆動軸26,28よりも車両後方に位置するように配置されている。エンジン10上端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの上面よりも低く、下面よりも高い一方、その下端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの下面よりも低い。
【0042】
上記ジェネレータ14は、エンジンルーム44内の後部の車幅方向中央部における車両左方側寄りで且つエンジン10の車両左方(車幅方向一方側)近傍に、回転軸14aが車幅方向に延びるように配置されている。つまり、ジェネレータ14は、フロアパネル58上の助手席60側(フロアパネル58上の運転席61とは反対側。即ち、運転者の着座側とは反対側)に配置されている。また、ジェネレータ14は、その回転軸14aが車両側面視でエンジン10のクランク軸10aに対して車両前方にオフセットするように配置されている。回転軸14aは、エンジン10のクランク軸10aにギヤ11を介して連結されている。このギヤ11の減速比(即ち、エンジン10からジェネレータ14への減速比)は、例えば1/2程度である。そして、エンジン10の回転数は、例えば2000回転程度である。この結果、ジェネレータ14の回転数は、4000〜5000回転程度になる。また、ジェネレータ14の回転軸14aとエンジン10のクランク軸10aとは、その上下方向高さ位置が前輪駆動軸26,28と略同じである。ジェネレータ14上端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの上面よりも低く、下面よりも高い一方、その下端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの下面よりも低い。そして、ジェネレータ14は、エンジン10の車両前後方向中央部の左側面に取付部材15を介して取り付けられている。
【0043】
上記モータ16は、エンジンルーム44内の車幅方向中央部に、回転軸16aが車幅方向に延び且つジェネレータ14の車両前方(詳細には斜め上前方)に隣接するように配置されている。モータ16は、その回転軸16aがジェネレータ14の回転軸14aよりも車両前方に且つ前輪駆動軸26,28よりも車両後方に位置するように配置されている。モータ16上端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの上面よりも高い一方、その下端の上下方向高さ位置はフロントサイドフレーム46,48の水平部46a,48aの下面よりも低い。
【0044】
上記吸気通路19は、エンジンルーム44内の車幅方向中央部に配置されていて、エンジン10の前部上方からデフ24及び前輪駆動軸26,28の上方を通って車両前方に延びている。上記エアインテーク19aは、エンジンルーム44内の前部におけるラジエター56の上方に配置されている。上記エアクリーナ19bは、エンジンルーム44内の前部におけるエアインテーク19aの車両後方(詳細には斜め下後方)近傍に配置されている。
【0045】
上記排気通路20は、エンジン10の前部下方から車両右方(即ち、ジェネレータ14側とは反対側)に延びた後、フロアパネル58及びリアフロアパネル90の下方を通って車両後方に延びている。上記排気浄化装置20aは、エンジンルーム44内の右部におけるエンジン10の車両右方に配置されている。
【0046】
上記減速機23は、エンジンルーム44内の車幅方向中央部におけるエンジン10の車両前方近傍で且つモータ16の車両右方近傍に配置されている。上記デフ24は、エンジンルーム44内の車幅方向中央部におけるエンジン10の車両前方近傍に、減速機23の斜め下前方に隣接するように配置されている。
【0047】
そして、エンジン10、ジェネレータ14、モータ16、減速機23及びデフ24は、左右のフロントサイドフレーム46,48の間に配置されている。
【0048】
また、エンジン10はダッシュパネル40に取り付けられている。具体的には、エンジン10は、その後部上面に設けられた防振マウント70を介してダッシュロア40aの縦壁部40bの車幅方向中央部に弾性支持されている。モータ16は、左側フロントサイドフレーム46に取り付けられている。具体的には、モータ16は、その上部の左側面に設けられた防振マウント72を介して左側サイドフレーム46の水平部46aの上面に弾性支持されている。デフ24は、クロスメンバや平面視で略四角枠状のペリメータフレームの前方フレームなど、車幅方向に延びる車体フレーム74に取り付けられている。具体的には、デフ24は、その下部に設けられた防振マウント76を介して車体フレーム74の車幅方向中央部の上面に弾性支持されている。これらの防振マウント70,72,76の詳細な説明は省略するが、その基本的な構造は従来周知のものである。また、ペリメータフレームは、エンジン10の振動が伝達されるのを抑制するとともに車両1前突時の衝撃荷重を分散、吸収させるものである。
【0049】
以上のように、エンジン10、ジェネレータ14、モータ16、減速機23及びデフ24は、車体に3点支持されている。
【0050】
尚、エンジン10、ジェネレータ14及びモータ16は、車両前突時に下方に移動するように構成されている。
【0051】
また、上記インバータ22は、エンジンルーム44内の車幅方向中央部における吸気通路19の上方に、車両後方に行くに従って上方に傾斜するように配置されている。上記デフ24の車両前方には、ステアリングギヤボックス80が車幅方向に延びるように配置されている。このステアリングギヤボックス80の右部からは、ステアリングシャフト82が斜め上後方に延びている。
【0052】
以下、電気自動車1の後部構造について簡単に説明する。
【0053】
フロアパネル58の後部には、キックアップ部58aが上方に立ち上がるように形成されており、このキックアップ部58aから車両後方に延びるように連続形成されたリアフロアパネル90が設けられている。このリアフロアパネル90上の前部にはベンチタイプのリアシート102が配置されている。リアフロアパネル90のリアシート102の車両後方には凹部90aが形成されている。リアフロアパネル90の下方の車幅方向両側には、左右のリアサイドフレーム92,94が車両前後方向に延びるようにそれぞれ配置されている。
【0054】
後輪98,100には、左右のトレーリングアーム96a,96bをクロスビーム96cと呼ばれる梁で繋いだ形式のトーションビーム式サスペンション96が採用されている。クロスビーム96cは、リアフロアパネル90の車両前後方向中央部の下方に車幅方向に延びるように配置されていて、車両側面視で後輪98,100の中心の車両前方で且つ後輪98,100の前端近傍に位置している。
【0055】
上記バッテリ12は、リアフロアパネル90の凹部90a内に配置されている。上記燃料タンク18は、リアフロアパネル90の前部左方の下方におけるクロスビーム96cよりも車両前方に配置されている。上記マフラー20bは、リアフロアパネル90の前部右方の下方におけるクロスビーム96cよりも車両前方に配置されている。また、燃料タンク18及びマフラー20bは、リアフロアパネル90上のリアシート102の下方に配置されている。そして、バッテリ12、燃料タンク18及びマフラー20bは、左右のリアサイドフレーム92,94の間に配置されている。
【0056】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、エンジン10を車両前方に傾くように配置しているので、重心を低くすることができ、走行安定性を向上させることできる。
【0057】
また、エンジン10の一部をフロアトンネル58a内に位置させているので、比較的重量のあるエンジン10が比較的車両後方に配置されることになり、エンジンルーム44内のレイアウト性を向上させることができるとともに、ヨー慣性モーメントを低減させることができる。
【0058】
以上により、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させることができる。
【0059】
また、エンジン10を、その駆動軸10aがダッシュロア40aの縦壁部40bよりも車両後方に位置し、且つ前端が前輪駆動軸26,28よりも車両後方に位置するように配置しているので、比較的重量のあるエンジン10がさらに車両後方に配置されることになり、エンジンルーム44内のレイアウトをさらに向上させることができるとともに、ヨー慣性モーメントをさらに低減させることができる。
【0060】
さらに、ジェネレータ14を、その回転軸14aが車両側面視でエンジン10の駆動軸10aに対してオフセットするようにエンジン10の車両左方に配置しているので、ギヤ11の配置スペースを確保することができる。
【0061】
また、エンジン10の駆動軸10aとジェネレータ14の回転軸14aとをギヤ11を介して連結しているので、エンジン10の回転数とジェネレータ14の回転数とを適切な回転数に調整することができる。
【0062】
さらに、ジェネレータ14を運転者の着座側とは反対側に配置しているので、ジェネレータ14がステアリングシャフト82に干渉したり、ジェネレータ14が車両前突時にブレーキ装置のブースター(図示省略)などに接触したりするのを防止することができる。
【0063】
また、エンジン10の駆動軸10aとジェネレータ14の回転軸14aとの上下方向高さ位置を前輪駆動軸26,28と略同じにしているので、エンジン10とジェネレータ14とが比較的下方に配置されることになる。この結果、重心をさらに低くすることができ、走行安定性をさらに向上させることできる。
【0064】
さらに、モータ16を、その回転軸16aがジェネレータ14の回転軸14aよりも車両前方に且つ前輪駆動軸26,28よりも車両後方に位置するように配置しているので、比較的重量のあるエンジン10、ジェネレータ14及びモータ16が前輪駆動軸26,28よりも車両後方に配置されることになり、ヨー慣性モーメントをさらに低減させることができる。
【0065】
また、エンジン10の吸気通路19が、エンジンルーム44内の車幅方向中央部に配置されていて、エンジン10の前部上方から前輪駆動軸26,28の上方を通って車両前方に延びているので、エンジン10への吸気を容易に行うことができる。
【0066】
さらに、ジェネレータ14をエンジン10の車両左方に配置するとともに、エンジン10の排気通路20が、エンジン10の前部下方からジェネレータ14側とは反対側に延びた後、フロアパネル58の下方を通って車両後方に延びているので、ジェネレータ14とエンジン10の排気通路20とが干渉するのを防止しながら、エンジン10から車両後方への排気を容易に行うことができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、エンジン10を横置き配置しているが、これに限らず、例えば、縦置き配置してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、エンジン10の上部後方をフロアトンネル58a内に位置させているが、エンジン10の一部がフロアトンネル58a内に位置している限り、これに限らず、例えば、エンジン10の後部略全体をフロアトンネル58a内に位置させてもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態では、エンジン10は2気筒のレシプロエンジンであるが、これに限らず、例えば、1気筒のレシプロエンジンであってもよく、また、1ローターのロータリーエンジンであってもよい。
【0070】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0071】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明にかかるエンジン搭載の電気自動車の前部構造は、走行安定性を向上させるとともに、車両前部のレイアウト性を向上させ、且つ、ヨー慣性モーメントを低減させることが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 電気自動車
10 エンジン
10a クランク軸(駆動軸)
11 ギヤ
12 バッテリ
14 ジェネレータ(発電機)
14a 回転軸
16 モータ
16a 回転軸
19 吸気通路(エンジンの吸気系)
20 排気通路(エンジンの排気系)
26,28 前輪駆動軸(駆動輪の駆動軸)
30,32 前輪(駆動輪)
40 ダッシュパネル
42 車室
44 エンジンルーム
58 フロアパネル
58a フロアトンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えているエンジン搭載の電気自動車の前部構造であって、
上記エンジンは、ダッシュパネルによって車室と仕切られたエンジンルーム内の車幅方向中央部に車両前方に傾くように配置されていて、一部が、フロアパネルの車幅方向中央部に上記ダッシュパネルから車両後方に延び且つ上方に膨出するように形成されたフロアトンネル内に位置しており、
上記発電機及び上記モータは、上記エンジンルーム内に配置されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項2】
請求項1記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンは、その駆動軸が車幅方向に延びるように配置されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項3】
請求項2記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンは、その駆動軸が上記ダッシュパネルよりも車両後方に位置し、且つ前端が上記駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項4】
請求項2又は3記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記発電機は、その回転軸が車両側面視で上記エンジンの駆動軸に対してオフセットするように上記エンジンの車幅方向一方側に配置されており、
上記エンジンの駆動軸と上記発電機の回転軸とは、ギヤを介して連結されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項5】
請求項4記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記発電機は、運転者の着座側とは反対側に配置されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項6】
請求項4又は5記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンの駆動軸と上記発電機の回転軸とは、その上下方向高さ位置が上記駆動輪の駆動軸と略同じであることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1つに記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記モータは、その回転軸が上記発電機の回転軸よりも車両前方に且つ上記駆動輪の駆動軸よりも車両後方に位置するように配置されていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項8】
請求項2〜6のいずれか1つに記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンの吸気系が、上記エンジンルーム内の車幅方向中央部に配置されていて、上記エンジンの前部上方から上記駆動輪の駆動軸の上方を通って車両前方に延びていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれか1つに記載のエンジン搭載の電気自動車の前部構造において、
上記発電機は、上記エンジンの車幅方向一方側に配置されており、
上記エンジンの排気系が、該エンジンの前部下方から上記発電機側とは反対側に延びた後、上記フロアパネルの下方を通って車両後方に延びていることを特徴とするエンジン搭載の電気自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73583(P2011−73583A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227268(P2009−227268)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】