説明

ガスケット構造体及びその製造方法

【課題】簡易な構造でゴム材の注入部での接着性の影響を少なくしたシール対象基材及びガスケットが一体とされたガスケット構造体とその有効な製造方法を提供する。
【解決手段】シール対象基材2の所定部位に接着剤層を介してゴム製ガスケット3が加硫成型によって一体固着されたガスケット構造体1であって、上記ガスケット3は、断面山形のビード状に連なるガスケット本体部3aと、該ガスケット本体部3aの側部近傍適所に設けられた成型時のゴム材の注入部3cと、該ガスケット本体部3aと注入部3cとの間のゴム材の流入連結部3bとを備え、該連結部3bは、上記成型時におけるゴム材の流入ラインが、上記注入部3cの中心からガスケット本体部3aの稜線Lに直交する線Loから外れた状態となるよう形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール対象基材の所定部位に接着剤を介してゴム製ガスケットが加硫成型によって一体固着されたガスケット構造体、例えば、燃料電池のスタックを構成するセパレータの全周囲及び媒体用開口部周りにガスケットを一体に備えるガスケット構造体、或いは、ハードディスク装置等におけるカバーとガスケットとが一体とされたガスケット構造体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、シール対象基材とガスケットとが一体とされたガスケット構造体の例としては、特許文献1或いは特許文献2に示される先行技術を挙げることができる。図6及び図7は、このようなガスケット構造体の例と、その製造方法を概念的に示している。図6(a)は、基材とガスケットとが一体とされたガスケット構造体の一部を示す平面図、図6(b)は(a)におけるE−E線矢視断面図、図6(c)は(a)におけるF−F線矢視断面図を示している。また、図7は、同ガスケット構造体を成型によって製造する要領を、図6(c)に対応した部分の断面図で示している。
【0003】
図6に示すガスケット構造体50は、シール対象基材51の所定部位に形成された環状溝51aの底部に、接着剤層52を介して該環状溝51aの形状に沿った環状のゴム製ガスケット53が加硫成型によって一体固着されたものである。ガスケット53は、断面山形のビード状に連なるガスケット本体部53aと、該ガスケット本体部53aの裾部の適所より突出する成型時のゴム材の流入連結部53bと、該流入連結部53bにおけるゴム材の流入基部にバリ跡として残る(目視できない場合もある)成型時のゴム材の注入部53cとを備えている。
【0004】
図6のようなガスケット構造体50をゴム材の成型によって製造する場合の例を、図7を参照して説明する。図7に示す金型60は、射出成型法或いはトランスファー成型法に適用されるもので、下金型61及び上金型62よりなる。下金型61は上記基材51を収容し得るキャビティ61aを備える。また、上金型62は、上記ガスケット53の形状に対応するよう形成された環状のキャビティ62aと、未加硫ゴム材53Rの注入ゲート62bとを備え、更に注入ゲート62bとキャビティ62aとを繋ぐ未加硫ゴム材53Rの流入路62cがキャビティ62aに連通するよう形成されている。このような注入ゲート62b及び流入路62cは、環状のキャビティ62aの外側部に沿って1箇所以上設けられる。
【0005】
上記金型60において、先ず、下金型61に形成されたキャビティ61a内に上記基材51を配置し、該基材51における上記環状溝51aの底部に接着剤52Rを塗布した上で上金型62を下金型61に型締め合体させる。そして、注入装置(不図示)から注入ゲート62bに未加硫ゴム材53Rを注入し、注入されたゴム材53Rは、注入圧により流入路62cを経てキャビティ62a内に至る。キャビティ62a内がゴム材53Rで充分に充填されると保圧状態に保ち、ゴム材53Rを加硫する。この加硫は、金型を加熱するか、未加硫ゴム材53Rの保有する熱によってなされ、この加硫に伴い接着剤52Rの硬化が促進される。その後、脱型し、注入ゲート62bに残存するゴム材を切除すれば、図6に示すように、シール対象基材51の環状溝51aの底部に接着剤層52を介してガスケット53が一体固着されたガスケット構造体50が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−76877号公報
【特許文献2】特開2008−1002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような成型方法において、注入ゲート62bからは、未加硫のゴム材53Rが高圧で注入される為、この注入ゲート62bの近傍では、塗布されている接着剤52Rにせん断応力が作用し、硬化過程で、接着剤52Rがシール対象基材51の表面との間で剥離し、充分な接着力が得られないことがある。また、上記保圧は、キャビティ62a内に充填されたゴム材53Rの戻りを抑える為になされるが、保圧力が強過ぎると上記せん断応力による剥離がより顕著となり、弱過ぎると接着一体性が悪くなる。更に、これらの理由により、加硫後は注入ゲート62b近傍部分が変形し易くなる。従って、保圧力の調整に難しさがあった。そして、上記のようなガスケット構造体50の場合、その適用対象基材の特性上、ガスケットが固着されるべき基材の所定部位の幅が限られており、その為、上記上金型62における注入ゲート62bは、その制約からキャビティ62aの側部に接近した位置に設けられることが不可避であった。その為、図6(a)の2点鎖線で示す注入部53cの近傍の接着性が充分でない範囲aが、ガスケット本体部53aにまで及び、これがガスケット53としてのシール性能を低下させる一要因となることがあった。
【0008】
特許文献1及び特許文献2は、上記のような特有の課題を解消することを意図するものでない。特に、特許文献2では、注入ゲートがガスケットに近いことにより、ゴム材の注入性が悪くなることに鑑み、注入ゲートの開口部をガスケットの長手方向に沿って長径とするものであるが、注入ゲート近傍部の接着性の問題に言及するものではない。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたもので、簡易な構造でゴム材の注入部での接着性の影響を少なくしたシール対象基材及びガスケットが一体とされたガスケット構造体とその有効な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るガスケット構造体は、シール対象基材の所定部位に接着剤層を介してゴム製ガスケットが加硫成型によって一体固着されたガスケット構造体であって、上記ガスケットは、断面山形のビード状に連なるガスケット本体部と、該ガスケット本体部の側部近傍適所に設けられた成型時のゴム材の注入部と、該ガスケット本体部と注入部との間のゴム材の流入連結部とを備え、該連結部は、上記成型時におけるゴム材の流入ラインが、上記注入部の中心からガスケット本体部の稜線に直交する線から外れた状態となるよう形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のガスケット構造体において、前記所定部位を、シール対象基材に形成された環状溝の底部としても良い。
【0012】
第二の発明に係るガスケット構造体の製造方法は、シール対象基材の所定部位に対する接着剤の塗布、及び、断面が山形のビード状に連なるガスケット本体部を含むガスケット形状に対応するキャビティを備えた金型への上記シール対象基材の配置を行った上で、該金型に形成された注入ゲートよりキャビティ内に未加硫ゴム材を注入して、上記シール対象基材の所定部位にゴム材を上記ガスケット形状となるよう一体加硫成型するガスケット構造体の製造方法であって、上記金型のキャビティは、その側部に、上記注入ゲートから上記ガスケット本体部に対応する部位に至るゴム材の流入路を備え、該流入路はその途中に整流部を有し、注入ゲートから注入される未加硫ゴム材をこの整流部により迂回させて該キャビティ内に至らせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第一の発明に係るガスケット構造体は、シール対象基材の所定部位に接着剤層を介してゴム製ガスケットが加硫成型によって一体固着されたものであるから、このガスケット構造体が、梱包や搬送等の流通におかれてもシール対象基材とガスケットとが分離することがない。そして、本ガスケット構造体は、燃料電池やハードディスク装置等の組立工場にそのまま持ち込まれ、他のシール対象部材と締結一体とすることにより、当該シール対象基材と他のシール対象部材との間にゴム製ガスケットが圧縮状態で挟圧され、両者間のシールがなされる。従って、上記の組立工場では、別途準備したガスケットをシール対象部材間に介装する作業が不要とされ、組立て作業の効率化が図られる。
【0014】
また、ガスケット本体部と成型時のゴム材の注入部との間のゴム材の流入連結部は、上記成型時におけるゴム材の流入ラインが、上記注入部の中心からガスケット本体部の稜線に直交する線から外れた状態となるよう形成されているから、注入部の中心からゴム材がガスケット本体に至る距離が実質的に大きくなる。従って、前述のように、成型時におけるゴム材の注入部の近傍の接着性が充分でない範囲が、ガスケット本体部にまで及んでいることがなく、この部分でのシール性も他の部位と同様に良好に維持される。
【0015】
前記所定部位を、シール対象基材に形成された環状溝の底部とした場合、ガスケットとシール対象基材との安定した固着一体化が図られる。この場合、所定部位の幅が環状溝の幅に制約されるが、本ガスケット構造体は、このような制約による成型時の前記影響を受けることがなく、良好なシール機能を備えているものである。
【0016】
第二の発明に係るガスケット構造体の製造方法によれば、シール対象基材の所定部位に接着剤を塗布した上で、金型に形成された注入ゲートよりキャビティ内に未加硫ゴム材を注入して、上記シール対象基材の所定部位にゴム材を上記ガスケット形状となるよう一体加硫成型するものであるから、ゴム材の加硫と共に、接着剤の硬化が促進され、これによって、シール対象基材の所定部位にゴム製のガスケットが強固に固着一体化される。
【0017】
そして、上記金型のキャビティは、断面が山形のビード状に連なるガスケット本体部に対応する部位と、その側部に、上記注入ゲートから上記ガスケット本体部に対応する部位に至るゴム材の流入路とを備え、該流入路はその途中に整流部を有しており、注入ゲートから注入される未加硫ゴム材をこの整流部により迂回させて該キャビティ内に至らせるよう未加硫ゴム材の成型がなされるから、前記所定部位の幅に制約があっても、注入ゲートからキャビティ内のガスケット本体部に対応する部位に至るゴム材の流路を大きく確保することができる。
【0018】
従って、注入ゲートからゴム材を高圧で注入することにより、注入ゲートの近傍で塗布されている接着剤にせん断応力が作用し、硬化過程で、接着剤がシール対象基材の表面との間で剥離し、充分な接着力が得られないことがあっても、これがガスケット本体部にまで及ばないので、得られたガスケット構造体のシール性能が低下することがない。また、ゴム材の流路が大きく確保されることにより、キャビティ内がゴム材で充分に充填された後の上記保圧の調整も容易になされ、保圧の調整不備が原因のシール性の低下が生じる懸念もない。
【0019】
本発明において、ガスケットを構成するゴム材としては、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKM、EPDM、VMQ等から選ばれたいずれかのゴム材が望ましく採用される。また、接着剤層を構成する接着剤としては、熱硬化性の接着剤が用いられ、具体的には、エポキシ系、フェノール系、カップリング剤系、イミド系、ゴム糊系の接着剤が望ましく採用される。この接着剤は、上記ゴム材の加硫成型時に、加硫温度で硬化し、この硬化の際にゴム材及びシール対象基材の界面において化学反応を起こし、両被接着部材を強固に一体とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガスケット構造体を燃料電池のセパレータに適用した例を示す平面図である。
【図2】図1におけるA部の拡大図である。
【図3】(a)は図2におけるB−B線矢示断面図、(b)は図2におけるC−C線矢示断面図である。
【図4】(a)(b)は同ガスケット構造体を成型によって製造する要領を示し、(a)は図3(b)に対応した部分で示す断面図、(b)は(a)におけるD−D線矢視断面図である。
【図5】(a)〜(d)は他の実施形態の種々の態様を示すもので図2の拡大部に対応する図である。
【図6】従来のガスケット構造体の例を示し、(a)は同ガスケット構造体の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるE−E線矢視断面図、(c)は(a)におけるF−F線矢視断面図を示している。
【図7】同従来のガスケット構造体を成型によって製造する要領を、図6(c)に対応した部分で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示すガスケット構造体1は、燃料電池のセパレータであって、不図示の高分子電解質膜等と合体されて燃料電池構成用スタック(不図示)が構成されるものである。このガスケット構造体1としてのセパレータは、カーボンプレート或はメタルプレート等をシール対象基材2とし、このシール対象基材2の所定部位に接着剤層(図3参照)4を介してゴム製のガスケット3が一体固着されたものである。シール対象基材2は、適所に冷媒、水素及び酸素等の媒体流通用の開口部2a…を複数備え、該シール対象基材2の全周囲及び開口部2a…の周りには、環状溝(図2参照)2bが形成されている。この環状溝2bの底部が、ガスケット3が一体固着される所定部位とされ、該環状溝2bに一体固着されたガスケット3によって、上記スタックの複数が締結合体されて燃料電池が構成された際に、上記媒体の漏出の防止が図られる。
【0022】
上記ゴム製ガスケット3は、断面山形のビード状に連なるガスケット本体部3aと、該ガスケット本体部3aの裾部の適所より外周側に突出する成型時のゴム材の流入連結部3bと、該流入連結部3bにおけるゴム材の流入基部にバリ跡として残る(目視できない場合もある)成型時のゴム材の注入部3cとを備えている。そして、注入部3cの中心3coから、ガスケット本体部3aの稜線Lに直交する線Lo上であって、ガスケット本体部3aの裾部に沿って稜線L方向に伸びる長楕円形状のゴム材の存在しない緩衝帯3dが形成されている。この緩衝帯3dは、後記する成型時における上金型7が備える整流部7dによって形成されるもので、注入ゲート7bから注入された未加硫のゴム材3Rは、この整流部7dを迂回するようにしてキャビティ7a(いずれも図3参照)内に至る。従って、この迂回によって形成される上記流入連結部3bにおけるゴム材の流入ラインLfは、図2の拡大部分で示すように、上記線Loに沿わず、緩衝帯3dを取り囲むように該線Loから外れた状態に形成される。
【0023】
ここで、上記ガスケット構造体1を成型によって製造する方法を、図4(a)(b)を参照して説明する。(b)は(a)におけるD−D線矢視断面図であるが、ゴム材が注入される前の状態を示している。図4において、この製造に用いられる金型5は、前記と同様射出成型法或いはトランスファー成型法に適用されるもので、下金型6及び上金型7よりなる。下金型6は上記シール対象基材2を収容し得る環状のキャビティ6aを備える。また、上金型7は、上記ガスケット3の形状に対応するよう形成された環状のキャビティ7aと、未加硫ゴム材3Rの注入ゲート7bとを備え、更に注入ゲート7bとキャビティ7aとを繋ぐ未加硫ゴム材3Rの流入路7cがキャビティ7aに連通するよう形成されている。流入路7cの途中には、ゴム材3Rの流入の障壁となる整流部7dが形成されている。このような注入ゲート7b及び流入路7cは、環状のキャビティ7aの外側部に沿って1箇所以上設けられる。
【0024】
上記金型5において、先ず、下金型6に形成されたキャビティ6a内に上記シール対象基材2を配置し、該シール対象基材2の上記環状溝2bの底部に接着剤4Rを塗布した上で下金型6に上金型7を型締め合体させる。尚、この場合、キャビティ6a内に上記シール対象基材2を配置する前に、上記環状溝2bの底部に接着剤4Rを塗布しておいても良い。そして、注入装置(不図示)から注入ゲート7bに未加硫ゴム材3Rを注入し、注入されたゴム材3Rは、注入圧により流入路7cを経てキャビティ7a内に至る。この時、流入路7cの途中には整流部7dが設けられているから、ゴム材3Rは図4(b)に示すように整流部7dを迂回する流入ラインLfを描いてキャビティ7a内に流入してゆく。従って、注入ゲート7bからキャビティ7a内に至る距離が、整流部7dがない場合に比べ実質的に長くなる。
【0025】
全キャビティ7a内がゴム材3Rで充分に充填されると保圧状態に保ち、ゴム材3Rを加硫する。この加硫は、金型を加熱するか、未加硫ゴム材3Rの保有する熱によってなされ、この加硫に伴い接着剤4Rの硬化が促進される。その後、脱型し、注入ゲート7bに残存するゴム材を切除すれば、図1乃至図3に示すように、シール対象基材2の環状溝2bの底部に接着剤層4を介してゴム製のガスケット3が一体固着されたガスケット構造体1が得られる。
【0026】
上記成型過程では、前述のように、注入ゲート7bから、未加硫のゴム材3Rが高圧で注入される為、この注入ゲート7bの近傍では、塗布されている接着剤4Rにせん断応力が作用し硬化過程で、接着剤4Rがシール対象基材2の表面との間で剥離し、充分な接着力が得られないことがある。未加硫ゴム材3Rの注入圧は、流入に伴い低下する為、ある範囲以上の領域では接着力に対する影響も少なくなる。図2では、2点鎖線で示す範囲bが未加硫ゴム材3Rの注入圧の影響を受けて充分な接着力が得られない範囲として示している。
【0027】
上述のように、注入ゲート7bからキャビティ7a内に至る距離が、整流部7dがない場合に比べ実質的に長くなるので、図2に示すように、充分な接着力が得られない範囲bは、ガスケット3のガスケット本体部3aに及ぶことがない。従って、シール機能の主体となるガスケット本体部3aでの接着力が不足する部分がなくなり、シール性能が充分に発揮されることになる。そして、接着力が得られない範囲bが、ガスケット本体部3aに影響を及ぼさないから、未加硫ゴム材3Rの充填後の微妙な保圧調整も不要となり、製造の効率化も図ることができる。
尚、流入連結部3bは、ガスケット構造体1としての機能上不要のものであるから、成型後これを除去しても良い。その為、上記成型時に、この部分に相当する部位に接着剤4Rを塗布しないようにすれば、成型後の流入連結部3bの切除がし易くなる。
【0028】
図5(a)〜(d)に他の実施形態の種々の態様を示す。これらは典型的な例を示すもので、接着力が得られない範囲bが、ガスケット3のガスケット本体部3aに影響を及ぼさないものであれば、他の形態のものも採用し得ることは言うまでもない。ここで、(a)(c)(d)の例は、緩衝帯3dを取り囲む流入連結部3bを大きく確保しながら、ゴム材の注入部3cからガスケット本体部3aに至るゴム材の流入方向を絞り、これによりガスケット3全体のゴム材に方向性を持たせたものである。また、(b)の例は注入口3c(金型5の注入ゲート7b)の断面形状を前記稜線Lに沿った長円若しくは長楕円或いは長方形としてゴム材の注入性を高めると共に、これに伴い、緩衝帯3dを取り囲む流入連結部3bを大きく確保して接着力が得られない範囲bがガスケット3の本体部3aに影響を及ぼさないようにしたものである。更に、(d)の例は、緩衝帯3dを前記稜線Lに沿った細長状としたもので、この場合は、シール対象基材2の環状溝2bの幅による制限が更に厳しい場合に好適である。
【0029】
図5(a)〜(d)に示す実施形態のガスケット構造体も、図4に示すような金型5によって製造される。即ち、上金型7の、キャビティ7a、注入ゲート7b、流入路7c及び整流部7dの形状等をこれらに対応するよう形成することにより同様に成型することができる。
他の構成は、図1乃至図3に示す実施形態と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0030】
尚、上記実施形態では、シール対象基材2のガスケット3が一体固着される所定部位を環状溝2bの底部としたが、このような環状溝を有さず有効幅に制約のある平坦な部位であっても良い。また、燃料電池のセパレータに適用した例について述べたが、ハードディスク装置、その他のシール対象基材とガスケットとが一体固着された状態で流通に供せられるものにも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ガスケット構造体
2 シール対象基材
2b 環状溝(所定部位)
3 ガスケット
3a ガスケット本体部
3b ゴム材の流入連結部
3c ゴム材の注入部
3d 緩衝帯
3R 未加硫ゴム材
4 接着剤層
4R 接着剤
5 金型
7 上金型(金型)
7a キャビティ
7b 注入ゲート
7c 流入路
7d 整流部
L 稜線
Lo 稜線に直交する線
Lf 流入ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール対象基材の所定部位に接着剤層を介してゴム製ガスケットが加硫成型によって一体固着されたガスケット構造体であって、
上記ガスケットは、断面山形のビード状に連なるガスケット本体部と、該ガスケット本体部の側部近傍適所に設けられた成型時のゴム材の注入部と、該ガスケット本体部と注入部との間のゴム材の流入連結部とを備え、該連結部は、上記成型時におけるゴム材の流入ラインが、上記注入部の中心からガスケット本体部の稜線に直交する線から外れた状態となるよう形成されていることを特徴とするガスケット構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケット構造体において、
前記所定部位は、シール対象基材に形成された環状溝の底部であることを特徴とするガスケット構造体。
【請求項3】
シール対象基材の所定部位に対する接着剤の塗布、及び、断面が山形のビード状に連なるガスケット本体部を含むガスケット形状に対応するキャビティを備えた金型への上記シール対象基材の配置を行った上で、該金型に形成された注入ゲートよりキャビティ内に未加硫ゴム材を注入して、上記シール対象基材の所定部位にゴム材を上記ガスケット形状となるよう一体加硫成型するガスケット構造体の製造方法であって、
上記金型のキャビティは、その側部に、上記注入ゲートから上記ガスケット本体部に対応する部位に至るゴム材の流入路を備え、該流入路はその途中に整流部を有し、注入ゲートから注入される未加硫ゴム材をこの整流部により迂回させて該キャビティ内に至らせることを特徴とするガスケット構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−174981(P2010−174981A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18486(P2009−18486)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】