ガスセンサ
【課題】 ガス検知層が剥離することを防止するとともに、絶縁性の密着層を介したガス検知層と検知電極との電気的な接続を図り、特定ガスの濃度変化を良好に検知するガスセンサを提供すること。
【解決手段】 ガス検知層4とシリコン基板2および絶縁被膜層3,230から構成される基体15との間に密着層7を形成し、両者の密着性を高め剥離を防止する。この密着層7を絶縁性金属酸化物から構成されており、ガス検知層4の特性に対し影響を与えない。そして、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接することで、ガス検知層4と検知電極6とが電気的に接続され、特定ガスの濃度変化に応じて変化するガス検知層4の電気的特性が良好に検知される。
【解決手段】 ガス検知層4とシリコン基板2および絶縁被膜層3,230から構成される基体15との間に密着層7を形成し、両者の密着性を高め剥離を防止する。この密着層7を絶縁性金属酸化物から構成されており、ガス検知層4の特性に対し影響を与えない。そして、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接することで、ガス検知層4と検知電極6とが電気的に接続され、特定ガスの濃度変化に応じて変化するガス検知層4の電気的特性が良好に検知される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化スズ(SnO2)等の金属酸化物半導体に、白金(Pt)等の貴金属を触媒として担持させ、被検知ガスによって電気的特性(例えば、抵抗値)が変化することを利用して、被検知ガスの濃度変化を検知するガスセンサが知られている。このようなガスセンサのガス検知層は、その製造工程において、貴金属元素を含む溶液中に金属酸化物半導体粉末を含浸させた後、焼成することにより、貴金属を金属酸化物半導体表面上に分散させた状態で担持させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、金属酸化物半導体に触媒として塩基性金属酸化物を担持させたガス検知層を用いると、硫化水素やメルカプタン類などに起因すると思われる各種の臭い(特に悪臭)に対して高いガス感度を示すことが知られている(例えば特許文献2参照)。しかし、塩基性金属酸化物は電気抵抗値が高く、特許文献1のように金属酸化物半導体粉末個々に塩基性金属酸化物を触媒として担持させた場合、ガス検知層自体の電気抵抗値が高くなり、ガスセンサの回路設計は困難となる。そこで、金属酸化物半導体粉末よりなるガス検知層を焼結させた後にその焼結体(ガス検知層)の表面上に塩基性金属酸化物を担持すれば、ガス検知層の電気抵抗値の増加を抑制することができる(例えば特許文献3参照)。
【0004】
一方、このようなガスセンサのガス検知層は、常温では被検知ガスと反応せず、例えば200〜400℃に加熱されることで活性化されて被検知ガスに反応することから、ガス検知層が形成される半導体基板等の基体内に発熱抵抗体が設けられるのが一般的である。しかしながら、発熱抵抗体を用いてガスセンサを高温で駆動した場合、ガス検知層と基体との熱膨張差に起因して界面での剥離が生ずるおそれがある。また、このようなガスセンサでは、高信頼性を得るために、ガス検知層と基体との機械的な密着強度を高めることも当然に求められる。そこで、ガス検知層と基体との間に、密着層を形成するものが種々提案されている。例えば、薄膜抵抗体である白金(Pt)製ヒータと下地の絶縁膜との間に酸化ハフニウム層を形成し、熱膨張を緩和する熱型センサ(例えば特許文献4参照)や、基板上に形成される電極層の表面に凹凸を形成して電極層の表面積を増加させ、さらにこの電極層とガス検知層との間に両者の材料組成を少しずつ変化させた導電性の傾斜機能材料を中間層として用い、熱膨張係数を緩和するガスセンサが提案されている(例えば特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭63−279150号公報
【特許文献2】特公平6−27719号公報
【特許文献3】特公平5−51096号公報
【特許文献4】特開2001−91486号公報
【特許文献5】特開平9−33470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4において提案された熱型センサでは、接触面積の大きい薄膜同士の密着性向上には有効であるが、厚膜のガス検知層と基体との接触面積は小さいため有効ではない。また、特許文献5において提案されたガスセンサでは、基体とガス検知層との間の密着性を電極層の表面を凹凸に形成してその電極層上に導電性の中間層を設けることで確保することはできるものの、被検知ガスのガス反応は、検知電極とガス検知層の界面で起こるため、電極層とガス検知層との間にガス検知層とは異なる組成の導電性の中間層を形成してしまっては、ガス感度に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、密着層を用いてガス検知層が基体から剥離することを防止するとともに、ガス感度に悪影響を与えずに特定ガスの濃度変化を良好に検知するガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明のガスセンサは、基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出するための検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記検知電極の前記基体と対向する側の面は、前記基体と当接している。
【0009】
また、請求項3に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層と当接している。
【0010】
また、請求項4に係る発明のガスセンサは、基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出する検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層の前記検知電極および前記ガス検知層と対向する側に形成された第一凹凸面と当接しており、前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は、第二凹凸面を有するとともに、全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係るガスセンサは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記基体上に形成される前記ガス検知層側から前記ガス検知層と前記密着層との接触面を投影したときの投影面積は、前記基体上に形成される当該ガス検知層側から当該ガス検知層と前記密着層および前記検知電極との接触面を投影したときの投影面積の50%以上を占めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記基体は、板厚方向に開口部が形成された半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、前記開口部に対応する部位に隔壁部を有する絶縁層と、前記絶縁層の前記隔壁部上に形成される発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層上に形成される保護層とを備え、前記検知電極、前記密着層および、前記ガス検知層は、前記基体の前記保護層上に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサでは、検知電極とガス検知層との界面で起こるガス反応がガス検知に対し比較的大きな影響を及ぼすため、その界面に導電性の物質(換言すれば、ガスに活性な物質)を介在させない構成とすることが好ましい。その一方、検知電極の表面を含めた基体上に絶縁性の材料からなる密着層を形成すれば、ガス検知層と検知電極との電気的な接続を確保することができなくなってしまう。そこで、請求項1に係る発明のガスセンサでは、検知電極のガス検知層と対向する側の面を全面、ガス検知層と当接させつつ、上記密着層をガス検知層の電子伝導に影響を与えない絶縁材料にて構成するようにしている。これにより、基体とガス検知層との密着性を効果的に高めつつ、特定ガスに対する良好なガス感度が得られるといった従来の技術に無い効果を得ることができる。また、本発明のガスセンサによれば、ガス検知層に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。
【0014】
また、請求項2に係る発明のガスセンサによれば、検知電極は、基体とガス検知層との双方に当接する構成を有することから、検知電極は密着層を覆わない形態で、この密着層と同一面上に形成されることになる。これにより、密着層を覆うように検知電極を設けて、その検知電極に接触するようにガス検知層を形成する場合に比べて、密着層の形成量を低減しながら、請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明のガスセンサによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、検知電極の基体側の面は密着層と当接しているので、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明のガスセンサによれば、検知電極の基体側の面は密着層と当接しているので、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。検知電極のガス検知層と対向する側の面を全面、ガス検知層と当接させつつ、上記密着層をガス検知層の電子伝導に影響を与えない絶縁材料にて構成するようにしている。これにより、基体とガス検知層との密着性を効果的に高めつつ、特定ガスに対する良好なガス感度が得られるといった従来の技術に無い効果を得ることができる。さらに、検知電極のガス検知層と対向する側には、第二凹凸面が備えられており、ガス検知層が備える検知電極に対向する側の面は、検知電極が備える第二凹凸面の凹凸と嵌め合うような凹凸形状(凹凸面)になっている。このため、検知電極とガス検知層とが当接する面が平坦な場合に比べ接触面積が増加しており、上記第二凹凸面のアンカー効果により、検知電極とガス検知層との間の密着性をより一層向上させることができる。また、検知電極の基体側の面は、密着層が備える第一凹凸面の凹凸と嵌め合うような凹凸形状(凹凸面)になっている。そして検知電極は、その凹凸面において密着層の第一凹凸面と当接しているので、第一凹凸面のアンカー効果により、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。また、本発明のガスセンサによれば、ガス検知層に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。
【0017】
また、請求項5に係る発明のガスセンサによれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、ガス検知層と密着層との接触面の投影面積(以下、「第1投影面積」と言う。)がガス検知層と密着層および検知電極との接触面の投影面積(以下、「第2投影面積」と言う。)に対して50%以上を占める。第1投影面積は、実測が困難なガス検知層と密着層との接触面積と正の相関がある。同様に、第2投影面積は、実測が困難なガス検知層と密着層および検知電極との接触面積と正の相関がある。したがって、上記のような構成により、基体とガス検知層との密着性をより確実に得ることができる。また、第1投影面積が第2投影面積の50%以上を占めることで、第2投影面積に占めるガス検知層と検知電極との接触面の投影面積(以下、「第3投影面積」と言う。)の割合が抑えられることになる。第3投影面積は、実測が困難なガス検知層と検知電極との接触面積と正の相関がある。つまり、本発明の構成によれば、触媒として作用する検知電極とガス検知層との接触面積が抑えられることになる。このため、被検知ガス中の特定ガス以外の雑ガスに起因したガス検知層の電気的特性の変化を検知電極が検出し難くなり、特定ガスの濃度変化を良好に検知することができるといった付随的な効果を得ることができる。なお、第2投影面積は、ガス検知層と密着層との接触面、および、ガス検知層と検知電極との接触面のそれぞれを、基体上に形成されるガス検知層側から投影した投影面積であるので、第1投影面積と第3投影面積との和が第2投影面積となる。
【0018】
また、請求項6に係る発明のガスセンサによれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果に加え、ガス検知層を発熱抵抗体と対向するように保護層上に形成しており、この発熱抵抗体は、半導体基板に形成された開口部に対応する位置に形成されるため、ガス検知層を効率よく加熱して活性化させることができ、より良好に特定ガスの濃度変化を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1乃至図5を参照して、ガスセンサ1の構造について説明する。図1は、ガスセンサ1の平面図であり、図2は、ガスセンサ1の図1に示すA−A線における矢視方向断面図である。また、図3は、ガスセンサ1が備える発熱抵抗体5の平面図であり、図4は、ガスセンサ1の図1に示すB−B線における矢視方向断面図である。また、図5は、ガスセンサ1の図2に示すC−C線における矢視方向断面図である。なお、図2において、上下方向を上下方向と言い、図1乃至5において、左右方向を左右方向と言う。
【0020】
ガスセンサ1は、図1に示すように、縦が2.6mm,横が2mmの矩形状の平面形状を有するガスセンサであり、図2に示すように、シリコン基板2の上面に絶縁被膜層3が形成され、この絶縁被膜層3には、発熱抵抗体5が内包されるとともに、その上面には密着層7およびガス検知層4が形成された構造を有する。ガス検知層4は、被検知ガス中の特定ガスによって自身の抵抗値が変化する性質を有する。ここで、本ガスセンサ1では、二酸化スズに0.2重量%の酸化カルシウムを触媒として含有させてガス検知層4が設けられており、このガス検知層4を用いて被検知ガス中のアンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)、二硫化メチル((CH3)2S2)、メチルメルカプタン(CH3SH)、トリメチルアミン((CH3)3N)などの特定ガスを検知するように構成されている。なお、本発明における「検知」とは、被検知ガスに含まれる特定ガスの有無を検知するのみならず、当該特定ガスの濃度変化を検知することも含む趣旨である。また、シリコン基板2が、本発明における「半導体基板」に相当し、シリコン基板2,絶縁被膜層3および絶縁被膜層230が、本発明における「基体」に相当する。以下、ガスセンサ1を構成する各部材について詳述する。
【0021】
シリコン基板2は、所定の厚みを有するシリコン製の平板である。また、図2に示すように、シリコン基板2の下面はシリコン基板2および絶縁被膜層230の一部が除去され、絶縁層31の一部が隔壁部39として露出された開口部21が形成されている。即ち、ガスセンサ1では、開口部21を有するシリコン基板2と、絶縁被膜層3と、絶縁被膜層230とにより、ダイヤフラム構造を有する基体15をなすものである。この開口部21は、隔壁部39の位置が、開口部21の開口側から平面視したとき、絶縁層33,34内に埋設された発熱抵抗体5が配置される位置となるように形成されている。
【0022】
絶縁被膜層3は、シリコン基板2の上面に形成された絶縁層31,32,33,34および保護層35から構成される。シリコン基板2の上面に形成された絶縁層31は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜であり、この絶縁層31の下面の一部は、シリコン基板2の開口部21に露呈している。また、この絶縁層31の上面に形成された絶縁層32は、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜であり、この絶縁層32の上面に形成された絶縁層33は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜である。この絶縁層33の上面には、後述する発熱抵抗体5および、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12の他、絶縁層34が形成されている。この絶縁層34は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜である。この絶縁層34の上面には、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜からなる保護層35が形成されている。この保護層35は、後述する発熱抵抗体5および、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12を覆うように配設されることでこれらの汚染や損傷を防ぐ役割を果たす。
【0023】
シリコン基板2の下面に形成された絶縁層231は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜であり、この絶縁層231の下面に形成された絶縁層232は、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜である。絶縁層231,232は、シリコン基板2の下面に設けられた絶縁被膜層230を構成する。
【0024】
発熱抵抗体5は、図2および図3に示すように、シリコン基板2の開口部21の上部に対応する部位であって、絶縁層33と絶縁層34との間に、平面視渦巻き状に形成されている。また、絶縁層33と絶縁層34との間には、発熱抵抗体5に接続され、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12が埋設されており、図4に示すように、このリード部12の末端にて、外部回路と接続するための発熱抵抗体コンタクト部9が形成されている。発熱抵抗体5およびリード部12は、白金(Pt)層とタンタル(Ta)層とから構成された2層構造を有する。また、発熱抵抗体コンタクト部9は、白金(Pt)層とタンタル(Ta)層とから構成された引き出し電極91の表面上に、金(Au)からなるコンタクトパッド92が形成された構造を有する。なお、発熱抵抗体コンタクト部9は、ガスセンサ1に一対設けられている。
【0025】
保護層35の上面には、発熱抵抗体5上に位置するように検知電極6と、検知電極6に通電するためのリード部10(図4参照)とが、それぞれシリコン基板2と平行な同一平面上に形成されている。この検知電極6およびリード部10は、発熱抵抗体コンタクト部9の引き出し電極91と同様に、保護層35の上に形成されるタンタル(Ta)層と、その表面上に形成された白金(Pt)層とから構成されている。また、図4に示すように、リード部10の末端には、その表面上に金(Au)からなるコンタクトパッド11が形成され、外部回路と接続するための酸化物半導体コンタクト部8として構成されている。なお、酸化物半導体コンタクト部8は、図1および図4に示すように、ガスセンサ1に一対設けられている。
【0026】
検知電極6は、図5に示すように、櫛歯状の平面形状を有し、ガス検知層4における電気的特性の変化を検出するための一対の電極である。図2に示すように、この検知電極6のガス検知層4に対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接し、ガス検知層4と検知電極6とが電気的に接続されている。このように、ガス検知層4と検知電極6の面61とが全面接触しているので、ガス検知層4と検知電極6との界面におけるガス反応が密着層7を含めた他部材によって何ら阻害されることがない。また、発熱抵抗体5により加熱されてガス検知層4が速やか且つ良好に活性化することから、その観点からもガスセンサ1のガス感度を高めることができる。一方、この検知電極6の保護層35と対向する側の面62は、保護層35と当接している。そして、検知電極6の周りであって、検知電極6の面61を除く部位には、基体15とガス検知層4との密着性を向上させ、ガス検知層4が基体15から剥離することを防ぐ密着層7が設けられている。
【0027】
この密着層7は、基体15とガス検知層4との間の密着性を向上させるための層であって、絶縁性の金属酸化物からなる複数の粒子が凝集した構造をなしている。そのため、密着層7は、自身の表面が凹凸面になっており、基体15と厚膜状に形成されたガス検知層4との密着性を上記凹凸面のアンカー効果によって高めている。なお、この密着層7は、例えば、絶縁性の金属酸化物の粒子を分散させたゾル溶液を塗布し、焼成して固化させることにより得ることができる。
【0028】
そして、この密着層7は、図5に示す横断面図のように、櫛歯状に形成された一対の検知電極6間の領域に形成されるとともに、検知電極6の周縁部と接触する。一方、図2に示す縦断面図のように、検知電極6のガス検知層4との間には密着層7が形成されておらず、検知電極6のガス検知層4に対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接する構成を有する。このような構成により、検知電極6とガス検知層4との界面で起こるガス反応に影響を及ぼすことなく、基体15とガス検知層4との密着性を向上させている。さらに、ガス検知層4が剥離する場合には、ガス検知層4の端部から剥離することが多いが、本実施形態の密着層7は、その上面において、ガス検知層4の端部と当接しているため、ガス検知層4の端部から剥離することも防止することができる。
【0029】
さらに、この密着層7は、検知電極6とガス検知層4との界面で起こるガス反応に影響を及ぼさないよう、アルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)等の絶縁性の金属酸化物により構成されている。なお、検知電極6とガス検知層4との密着性を向上させるために、この密着層7の膜厚は、検知電極6の厚みより小さいことが好ましい。このような構成にすることにより、密着層7の厚さを薄くすることができる他、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61が全面にわたって密着層7の上面に対して確実に露出するため、当該面61を全面、確実にガス検知層4と当接させることができる。
【0030】
[実施例1]
上記構造を有するガスセンサ1を、以下の製造工程に従って作製した。なお、作製途中のガスセンサ1の中間体を、基板と称する。また、各工程の説明に用いる工程名に付した括弧内の数字は、各工程の実施順序を示しており、例えば、「(1) シリコン基板2の洗浄」は、1番目に行われる工程であることを示している。
【0031】
(1) シリコン基板2の洗浄
まず、厚みが400μmのシリコン基板2を洗浄液中に浸し、洗浄処理を行った。
【0032】
(2) 絶縁層31,231の形成
上記シリコン基板2を熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層31,231をそれぞれシリコン基板2の両面(上面および下面)に形成した。
【0033】
(3) 絶縁層32,232の形成
次に、LP−CVDにてジクロルシラン(SiH2Cl2)、アンモニア(NH3)をソースガスとし、厚さが200nmの窒化ケイ素膜(Si3N4)膜からなる絶縁層32,232をそれぞれ絶縁層31,231の表面上に形成した。
【0034】
(4) 絶縁層33の形成
次に、プラズマCVDにてテトラエトキシシラン(TEOS)、酸素(O2)をソースガスとし、絶縁層32の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層33を形成した。
【0035】
(5) 発熱抵抗体5およびリード部12の形成
その後、DCスパッタ装置を用い、絶縁層33の表面上に厚さ20nmのタンタル(Ta)層を形成し、その層上に厚さ220nmの白金(Pt)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で発熱抵抗体5およびリード部12のパターンを形成した。
【0036】
(6) 絶縁層34の形成
そして、(4)と同様に、プラズマCVDにてテトラエトキシシラン(TEOS)、酸素(O2)をソースガスとし、絶縁層33,発熱抵抗体5およびリード部12の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層34を形成した。このようにして、厚さ200nmの絶縁層34内に発熱抵抗体5およびリード部12を埋設した。
【0037】
(7) 保護層35の形成
さらに、(3)と同様に、LP−CVDにてジクロルシラン(SiH2Cl2)、アンモニア(NH3)をソースガスとし、絶縁層34の上面に、厚さが200nmの窒化ケイ素(Si3N4)膜からなる保護層35を形成した。
【0038】
(8) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ドライエッチング法で保護層35,絶縁層34のエッチングを行い、発熱抵抗体コンタクト部9を形成する部分に穴をあけ、リード部12の末端の一部を露出させた。
【0039】
(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル(Ta)層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金(Pt)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極6,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。
【0040】
(10) 密着層7の形成
櫛歯状の検知電極6間およびその周囲の保護層35上に、焼成後に密着層7となるゾル溶液層を形成した。なお、ゾル溶液層は、粒径が10nm〜20nmの範囲内のアルミナ粒子を含むゾル溶液を所定の粘度に調製し、このゾル溶液を、インクジェット法を用いて保護層35上に塗布し、乾燥することにより形成した。
【0041】
(11) コンタクトパッド11,92の形成
そして、DCスパッタ装置を用い、上記電極部分の作製された基板の電極側の表面上に、厚さ400nmの金(Au)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理でコンタクトパッド11,92を形成した。
【0042】
(12) 開口部21の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、マスクとなる絶縁膜をドライエッチング処理により形成した。そして水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液中に基板を浸し、シリコン基板2の異方性エッチングを行うことで、下面が開口され、発熱抵抗体5の配置位置に対応する部分の絶縁層31の隔壁部39となる部分が露出されるように、開口部21を形成した。
【0043】
(13) ガス検知層4の形成
さらに、ゾル溶液層および検知電極6の表面上に、酸化スズを主成分とし、酸化カルシウムを添加した酸化物半導体ペーストを厚膜印刷により塗布し、厚さ30μmのペースト層を形成した。なお、酸化物半導体ペーストは以下の手順により作製した。まず、純水に塩化スズ(SnCl2)を加え、十分撹拌して溶解させた後、アンモニア水を滴下して、水酸化スズを析出させた。その後、沈殿粉末を純水で数回洗浄してアンモニウムイオンおよび塩素イオンを除去し、乾燥させた。乾燥後、純水に沈殿粉末と水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を分散させ、十分に攪拌させた後、乾燥させた。このときの、水酸化カルシウムの添加量は、酸化カルシウム(CaO)換算で0.2重量%となるように添加した。乾燥後、800℃、5時間の条件で焼成し、得られた粉末5gをらいかい機で1時間粉
砕した。その後、有機溶剤を混合し、らいかい機(もしくはポットミルでもよい)で4時間粉砕した。さらに、バインダーおよび粘度調製剤を添加して4時間粉砕を行い、25℃にて粘度140Pa・sのペーストに調製した。
【0044】
(14) 基板の焼成
基板を熱処理炉に挿入し、650℃で1時間の焼成条件にて焼成し、密着層7およびガス検知層4が形成された基板を得た。
【0045】
(15) 基板の切断
ダイシングソーを用いて基板を切断し、平面視、2.6mm×2mmの大きさのガスセンサ1を得た。
【0046】
次に、上記製造工程に従ってガスセンサ1を作製したことによる本発明の効果を確認するため、以下に示す2種の評価および検証を行った。
【0047】
[評価1]
密着層7を絶縁性のアルミナ(Al2O3)粒子を用いて構成したガスセンサ1と、比較例として、ガスセンサ1の密着層7の材料を除いて同一な構成を有するガスセンサを作製し、特定ガス成分に対するガス感度を評価した。この比較例の密着層は、ガス検知層4の主成分をなす酸化物半導体である酸化スズ(SnO2)からなり、触媒となる酸化カルシウムを含有しないものを用いた。
【0048】
評価試験の手順は次の通りである。まず、温度25℃、相対湿度40%RHで、酸素(O2)の分量を20.9体積%とした酸素と窒素(N2)との混合ガスをベースガスとし、ベースガス雰囲気中で各ガスセンサのベースガス抵抗値(Rair)を測定した。この測定時の発熱抵抗体5の温度は、350℃となるように制御した。そして、ベースガス抵抗値測定後、ベースガス中に検知対象となる特定ガス成分としてのアンモニア(NH3)を5ppm混合し、5秒後に各ガスセンサの電気抵抗値(Rgas)を測定した。そして、ベースガス抵抗値と測定した電気抵抗値との比(Rgas/Rair)を算出し、これをガス感度とした。
【0049】
以上のように行った評価1の結果を図6に示す。図6は、評価1の結果を表す棒グラフである。図6に示すように、両ガスセンサともに、ガス感度は実用上問題がないとされる0.95未満の値が示されたが、本実施例のガスセンサ1のガス感度は0.67であり、比較例のガス感度0.94と比較して、顕著なガス感度を示すことが確認された。このように、密着層が被検知ガス中に含まれる特定ガス成分に反応を示す物質により作製された比較例よりも、絶縁性金属酸化物で作製した実施例の方が、ガス感度が良好であることから、密着層の材料が、検知電極とガス検知層との界面で起こる反応がガス検知に対し比較的大きな影響を及ぼすことが示唆された。
【0050】
[評価2]
ついで、実施例1のガスセンサ1における特定ガス成分以外の雑ガスに対する特性を評価した。この評価試験の手順は次の通りである。まず、上記の評価1と同様に、ベースガス雰囲気中でのガスセンサ1のベースガス抵抗値(Rair)を測定した。そして、ベースガス抵抗値測定後、ベースガス中に特定ガス成分であるアンモニアではなく、雑ガスとして二酸化窒素酸化物(NO2)を1ppm混合し、10秒後にガスセンサ1の電気抵抗値(Rgas')を測定した。そして、ベースガス抵抗値と測定した電気抵抗値との比(Rgas'/Rair)を算出し、これを雑ガス特性とした。この雑ガス特性は、比(Rgas'/Rair)の値が大きくなるほど、特定ガス成分の濃度変化に対する検知精度が低下することを示す指標である。雑ガス特性は、1.9以下であることが実用上好ましいとされており、特に好ましくは1.5以下であることが好ましいとされている。
【0051】
本発明者らが実験により種々検討したところ、この雑ガス特性を抑えるには、触媒として作用する検知電極6とガス検知層4との接触面積の割合を低くすると有効であることが新たに確認された。具体的には、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保して、ガス検知層と検知電極との接触面積の割合を抑えることが雑ガス特性を抑える上で有効となることが実験結果から示唆された。例えば、第1投影面積を150,000μm2,第2投影面積を250,000μm2として、第1投影面積が第2投影面積の60%を占めるようにガスセンサ1を製造した場合、その雑ガス特性は1.33であった。この雑ガス特性を示す比1.33は、実用上特に好ましいとされる1.5よりも小さい値であり、雑ガス特性を良好に抑えられることが確認できた。なお、第1投影面積が第2投影面積に占める割合の上限は、ガスセンサにて検知すべき特定ガスの最低濃度変化が測定可能であるか否かを基準として、100%未満の値が適宜設定される。
【0052】
ここで、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保する場合には、上記のガスセンサ1の製造工程における条件を以下のように設定すればよい。以下、評価2において上述の第1投影面積が第2投影面積の60%を占める場合を例に、製造工程の条件を説明する。「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」では、基板上に形成されるガス検知層4側から一対の検知電極6を投影したときの投影面積(第3投影面積)が100,000μm2となるように、検知電極6を形成した。また、「(10) 密着層7の形成」は、基板上に形成されるガス検知層4側から当該ガス検知層4の領域内で検知電極6を含む形で密着層7を投影したときの投影領域における、当該密着層のみの投影面積(第1投影面積)が150,000μm2となるように密着層7を形成した。さらに、「(13) ガス検知層4の形成」では、基板上に形成されるガス検知層4側からガス検知層4と密着層7および検知電極6との接触面を投影したときの投影面積(第2投影面積)が250,000μm2となるように、ガス検知層4を形成した。これにより、評価2において上述のガスセンサ1では、上記第1投影面積は、第2投影面積の50%以上(150,000μm2/250,000μm2×100=60%)を占める構成となっている。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態のガスセンサ1では、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61を全面、ガス検知層4と当接させて検知電極6とガス検知層4との接触面積を確保しつつ、基体15とガス検知層4との間にガス検知層4の電子伝導に影響を与えない絶縁材料からなる密着層7を形成している。したがって、本実施形態のガスセンサ1によれば、基体15とガス検知層4との間の密着性を向上させつつ、良好なガス感度が得られるという従来の技術にはない効果を得ることができる。また、ガス検知層4に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。さらに、この発熱抵抗体5は、シリコン基板2に形成された開口部21に対応する位置に形成されるため、ガス検知層4を効率よく加熱して活性化することができ、良好に被検知ガス中の特定ガスの濃度変化を検知することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、基体15をなすシリコン基板2はシリコンにより作製したが、アルミナ(Al2O3)や半導体材料から作製してもよい。また、作製されたガスセンサ1の平面形状は矩形に限らず、多角形や円形であってもよく、その大きさ、厚み、各部材の配置も限定されるものではない。
【0055】
また、ガスセンサ1の製造方法は、実施例1に限定されず、適宜変更を加えることが可能である。例えば、実施例1では、「(10) 密着層7の形成」において、密着層7となるゾル溶液層をインクジェット法により形成したが、ディップ法、電気泳動法、液膜転送法、ミスト輸送法、スクリーン印刷法、スピンコート法など、その他の方法により形成してもよい。また、密着層7を検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成後に行っていたが、検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成前に行うようにしてもよい。その場合には、例えば、密着層7となるゾル溶液層を保護層35上に膜状に形成した後、検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成を形成する箇所をエッチング等により除去し、続いて当該除去部分に検知電極6,リード部10および引き出し電極91を形成する。
【0056】
また、上記実施形態においては、密着層7の膜厚は、ガス検知層4の膜厚より小さい構成を有していたが、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61を全面、ガス検知層4と当接していればよく、これに限定されない。さらに、密着層7は、上記実施形態では、櫛歯状に形成された一対の検知電極6間の領域および検知電極6の周縁部の二つの領域に形成する構成としたが、いずれか一方の領域のみに密着層7を形成するようにしてガス検知層4と基体15との密着性を確保するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保して、ガス検知層と検知電極との接触面積の割合を抑えるようにしていたが、上記実施形態の場合に限定されない。第1投影面積が第2投影面積に占める割合は、ガス感度や雑ガス特性等に応じて適宜設定可能である。
【0058】
また、絶縁被膜層3は酸化ケイ素および窒化ケイ素からなる複層構造としたが、酸化ケイ素又は窒化ケイ素からなる単層構造としてもよい。また、本実施の形態では、絶縁層33,34内に発熱抵抗体5を埋設させたが、これに限定されない。例えば、絶縁層32内に発熱抵抗体5を埋設させるようにしてもよい。
【0059】
また、ガス検知層4は、主成分として金属酸化物半導体である酸化スズを用いたが、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO2)、酸化バナジウム(VO2)など、その他の金属酸化物半導体を用いてもよい。また、金属酸化物半導体に添加する塩基性金属酸化物としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)などのアルカリ土類金属の酸化物、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属の酸化物、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、その他、ランタノイド系元素などの希土類の酸化物を用いてもよい。
【0060】
ところで、上述の実施形態において、検知電極6の基体15と対向する面は保護層35と当接する構成を有していた。この構成によれば、密着層7の形成量を低減しながら基体15とガス検知層4との密着性を向上できるという長所がある一方で、基体15と検知電極6との接触面の面積が大きい場合などには、基体15と検知電極6との密着性が改善されない場合がある。そこで、密着層の構成を変形例1のようにしてもよい。以下、検知電極6の下面に、密着層7が形成される変形例1に係るガスセンサ101について、図7を参照して説明する。なお、ガスセンサ101の構成は、密着層の構成を除き、上述の実施形態と同様であるので、同様の形態の説明は省略する。図7は、ガスセンサ101の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。図7において、上下方向を上下方向と、左右方向を左右方向と言う。
【0061】
図7に示すように、変形例1に係るガスセンサ101において、検知電極106のガス検知層104と対向する側の面161は全面、ガス検知層104と当接している。一方、検知電極106の基体15側の面162,即ち密着層と対向する側の面162は、密着層107と当接している。このような構成にすることにより、検知電極106と保護層35との密着性を向上させている。また、変形例1においては、上述の実施形態に比べ、基体15を構成する保護層35と密着層107との接触面の面積が増加しているので、密着層107と保護層35とがより確実に密着する。したがって、例えば、基体15と検知電極106との接触面の面積が大きい場合にも、基体15と検知電極6との密着性を向上することができ、ガス検知層104が基体15から剥離することを防止することができる。
【0062】
次に、実施例2として、変形例1の製造工程について説明する。変形例1のガスセンサ101の製造方法は、前述の実施例1と、「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」および、「(10) 密着層7の形成」とにおいて異なる。上述の実施例1と同様の工程についての説明は省略し、以下、実施例1と異なる製造工程について説明する。
【0063】
[実施例2]
(9) 密着層107の形成
発熱抵抗体5および開口部21に対応する保護層35の上面の位置に、焼成後に密着層7となるゾル溶液層をスピンコート法により形成し、乾燥させた。その後、ゾル溶液層のうちで検知電極106を形成する部分をエッチングにより除去し、凹状部を形成した。
【0064】
(10) 検知電極106,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、密着層107のエッチングにより除去された凹状部および保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極106,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。
【0065】
ところで、上述の実施形態および変形例1において、検知電極とガス検知層とは直接当接した構成を有している。ガス検知層と検知電極との接触面の面積が大きい場合などには、基体と検知電極との密着性が改善されない場合がある。そこで変形例2のように、密着層とガス検知層との間に検知電極が形成され、且つ、密着層は検知電極およびガス検知層に対向する側に第一凹凸面を備えるとともに、検知電極はガス検知層に対向する側に第二凹凸面を備えるようにしてもよい。以下、変形例2に係るガスセンサ201について、図8および図9を参照して説明する。図8は、ガスセンサ201の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。また図9は、図8に示すガスセンサ201の一部を拡大した拡大図である。なお、図8および図9において、上下方向を上下方向と、左右方向を左右方向と言う。
【0066】
図8および図9に示すように、変形例2に係るガスセンサ201の構成は、密着層207,検知電極206およびガス検知層204の構成を除き、上述の実施形態と同様である。したがって、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略し、以下上述の実施形態と異なる密着層207,検知電極206およびガス検知層204の構成について詳述する。
【0067】
図8および図9に示すように、変形例2に係るガスセンサ201の密着層207は、ガス検知層204および検知電極206と対向する側の表面に第一凹凸面271を備えている。この密着層207は、基体15とガス検知層204との間の密着性を向上させるための層であって、絶縁性の金属酸化物からなる複数の粒子が凝集した構造をなしている。変形例2においては、密着層207の表面が凹凸面になっているため、密着層207は、基体15と厚膜状に形成されたガス検知層204との密着性を上記第一凹凸面271のアンカー効果によってより効果的に高めている。なお、この密着層207は、例えば、絶縁性の金属酸化物の粒子を分散させたゾル溶液を塗布し、焼成して固化させることにより得ることができる。
【0068】
検知電極206は、基体15側、即ち密着層207と対向する側に、密着層207の第一凹凸面271の凹凸に嵌め合うような凹凸を有する凹凸面261を備え、その凹凸面261において密着層207の第一凹凸面271と当接している。このように変形例2においては、上述の実施形態に比べ、基体15を構成するガス検知層204および検知電極206と密着層207との接触面の面積が増加しているので、ガス検知層204および検知電極206と密着層207とがより確実に密着する。したがって、例えば、基体15と検知電極206との接触面の面積が大きい場合にも、基体15と検知電極206との密着性を向上させることができ、ガス検知層204が基体15から剥離することを防止することができる。
【0069】
また検知電極206は、ガス検知層204と対向する側に第二凹凸面262を備えている。一方、ガス検知層204の検知電極206と当接する面241は、検知電極206が備える第二凹凸面262の凹凸に嵌め合うような凹凸を有する凹凸面となっている。そして、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面は全面、第二凹凸面262においてガス検知層204の面241と当接している。このため、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面が平らな場合に比べ、検知電極206とガス検知層204との接触面積が増加しており、上記第二凹凸面262のアンカー効果により検知電極206とガス検知層204との密着性を向上させることができる。したがって、例えば、ガス検知層204と検知電極206との接触面の面積が大きい場合にも、ガス検知層204が基体15から剥離することを防止する効果が増加する。なお、第二凹凸面262を備えた検知電極206は、例えば、第一凹凸面271を備えた密着層207の表面に導電性の金属膜をスパッタ法で成膜することにより得ることができる。また例えば、検知電極形成後、ガス検知層と対向する側の面に機械的な凹凸化処理を施すことによって第二凹凸面を形成してもよい。
【0070】
次に、実施例3として、変形例2に係るガスセンサ201の製造工程の一例について説明する。変形例2のガスセンサ201の製造方法は、前述の実施例1と、「(8)発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成」、「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」、「(10) 密着層7の形成」および、「(13) ガス検知層4の形成」において異なり、他の工程については工程の内容および実施順序ともに実施例1と同様である。上述の実施例1と同様の工程についての説明は省略し、以下、実施例1と異なる製造工程について説明する。
【0071】
[実施例3]
(8) 密着層207の形成
発熱抵抗体5および開口部21に対応する保護層35の上面の位置に、表面に凹凸のあるアルミニウム膜をスパッタ法により所定の厚みで成膜し、そのアルミニウム膜を酸化して酸化アルミニウムとした。この工程において、自身の表面が凹凸面になった密着層207が形成された。
【0072】
(9) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ドライエッチング法で自身の上面に密着層207が形成された保護層35,絶縁層34のエッチングを行い、発熱抵抗体コンタクト部9を形成する部分に穴をあけ、リード部12の末端の一部を露出させた。
【0073】
(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、密着層207および保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極206,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。この工程において、「(8) 密着層207の形成」において形成した密着層207の表面の凹凸面に起因して、検知電極206の上面に凹凸を有する第二凹凸面262が形成された(図10)。
【0074】
(13) ガス検知層204の形成
さらに、検知電極206および密着層207の上面に、酸化スズを主成分とし、酸化カルシウムを添加した酸化物半導体ペーストを厚膜印刷により塗布し、厚さ30μmのペースト層を形成した。このとき、ガス検知層204と検知電極206とが当接する面である面241には、「(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成」において形成した検知電極206の第二凹凸面262の凹凸に嵌め合う凹凸が形成された(図11)。なお、酸化物半導体ペーストは実施例1と同様の手順により作製した。
【0075】
次に、上記製造工程に従って製造したガスセンサ201の構造を確認するため、検知電極206の第二凹凸面262およびこの第二凹凸面262とガス検知層204の面241とが当接した状態を走査電子顕微鏡により10,000倍に拡大して確認した。図10は、検知電極206の形成直後(ガス検知層204を形成前)における検知電極206の第二凹凸面262を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。図10の写真に示すように、上記製造工程に従って作成した検知電極206のガス検知層204に対向する側の面には、複数の金属粒子が凝集して形成された第二凹凸面262が確認された。この第二凹凸面262は、この「(8) 密着層207の形成」において形成した密着層207の表面の凹凸面に起因して形成された凹凸面である。一方図11は、検知電極206とガス検知層204との当接面を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。図11の写真において、図11の下部に見られる比較的粒の大きい粒子を備える層が検知電極206であり、図11の上部に見られる比較的粒の小さい粒子を備える層がガス検知層204である。ガス検知層204の検知電極206と当接する側の面241は、検知電極206が備える第二凹凸面262の凹凸に嵌め合う凹凸面となっていることが確認された。図10および図11の写真から、変形例2に係るガスセンサ201は、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面が平らな場合に比べ、検知電極206とガス検知層204との接触面積が増加していることが確認された。
【0076】
なお、上記変形例2において、「(2) 絶縁層31,231の形成」を行い、絶縁層31,231を形成するようにしていたが、この工程を省略し、シリコン基板2の両面に窒化ケイ素膜(Si3N4)膜からなる絶縁層32,232を形成するようにしてもよい。また各製造工程の実施順序は必要に応じて変更可能であり、例えば、「(9) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成」は「(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成」の後に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、半導体式ガスセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ガスセンサ1の平面図である。
【図2】ガスセンサ1の図1に示すA−A線における矢視方向断面図である。
【図3】ガスセンサ1が備える発熱抵抗体5の平面図である。
【図4】ガスセンサ1の図1に示すB−B線における矢視方向断面図である。
【図5】ガスセンサ1の図2に示すC−C線における矢視方向断面図である。
【図6】評価1の結果を表す棒グラフである。
【図7】ガスセンサ101の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。
【図8】ガスセンサ201の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。
【図9】図8に示すガスセンサ201の波線240付近を拡大した拡大図である。
【図10】検知電極206の形成直後(ガス検知層204を形成前)における検知電極206の第二凹凸面262を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。
【図11】検知電極206とガス検知層204との当接面を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。
【符号の説明】
【0079】
1,101,201 ガスセンサ
2 シリコン基板
3,230 絶縁被膜層
4,104,204 ガス検知層
5 発熱抵抗体
6,106,206 検知電極
7,107,207 密着層
15 基体
21 開口部
31,32,33,34,231,232 絶縁層
35 保護層
39 隔壁部
61,62,161,162 面
261 凹凸面
262 第二凹凸面
271 第一凹凸面
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化スズ(SnO2)等の金属酸化物半導体に、白金(Pt)等の貴金属を触媒として担持させ、被検知ガスによって電気的特性(例えば、抵抗値)が変化することを利用して、被検知ガスの濃度変化を検知するガスセンサが知られている。このようなガスセンサのガス検知層は、その製造工程において、貴金属元素を含む溶液中に金属酸化物半導体粉末を含浸させた後、焼成することにより、貴金属を金属酸化物半導体表面上に分散させた状態で担持させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、金属酸化物半導体に触媒として塩基性金属酸化物を担持させたガス検知層を用いると、硫化水素やメルカプタン類などに起因すると思われる各種の臭い(特に悪臭)に対して高いガス感度を示すことが知られている(例えば特許文献2参照)。しかし、塩基性金属酸化物は電気抵抗値が高く、特許文献1のように金属酸化物半導体粉末個々に塩基性金属酸化物を触媒として担持させた場合、ガス検知層自体の電気抵抗値が高くなり、ガスセンサの回路設計は困難となる。そこで、金属酸化物半導体粉末よりなるガス検知層を焼結させた後にその焼結体(ガス検知層)の表面上に塩基性金属酸化物を担持すれば、ガス検知層の電気抵抗値の増加を抑制することができる(例えば特許文献3参照)。
【0004】
一方、このようなガスセンサのガス検知層は、常温では被検知ガスと反応せず、例えば200〜400℃に加熱されることで活性化されて被検知ガスに反応することから、ガス検知層が形成される半導体基板等の基体内に発熱抵抗体が設けられるのが一般的である。しかしながら、発熱抵抗体を用いてガスセンサを高温で駆動した場合、ガス検知層と基体との熱膨張差に起因して界面での剥離が生ずるおそれがある。また、このようなガスセンサでは、高信頼性を得るために、ガス検知層と基体との機械的な密着強度を高めることも当然に求められる。そこで、ガス検知層と基体との間に、密着層を形成するものが種々提案されている。例えば、薄膜抵抗体である白金(Pt)製ヒータと下地の絶縁膜との間に酸化ハフニウム層を形成し、熱膨張を緩和する熱型センサ(例えば特許文献4参照)や、基板上に形成される電極層の表面に凹凸を形成して電極層の表面積を増加させ、さらにこの電極層とガス検知層との間に両者の材料組成を少しずつ変化させた導電性の傾斜機能材料を中間層として用い、熱膨張係数を緩和するガスセンサが提案されている(例えば特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭63−279150号公報
【特許文献2】特公平6−27719号公報
【特許文献3】特公平5−51096号公報
【特許文献4】特開2001−91486号公報
【特許文献5】特開平9−33470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4において提案された熱型センサでは、接触面積の大きい薄膜同士の密着性向上には有効であるが、厚膜のガス検知層と基体との接触面積は小さいため有効ではない。また、特許文献5において提案されたガスセンサでは、基体とガス検知層との間の密着性を電極層の表面を凹凸に形成してその電極層上に導電性の中間層を設けることで確保することはできるものの、被検知ガスのガス反応は、検知電極とガス検知層の界面で起こるため、電極層とガス検知層との間にガス検知層とは異なる組成の導電性の中間層を形成してしまっては、ガス感度に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、密着層を用いてガス検知層が基体から剥離することを防止するとともに、ガス感度に悪影響を与えずに特定ガスの濃度変化を良好に検知するガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明のガスセンサは、基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出するための検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記検知電極の前記基体と対向する側の面は、前記基体と当接している。
【0009】
また、請求項3に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層と当接している。
【0010】
また、請求項4に係る発明のガスセンサは、基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出する検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層の前記検知電極および前記ガス検知層と対向する側に形成された第一凹凸面と当接しており、前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は、第二凹凸面を有するとともに、全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係るガスセンサは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記基体上に形成される前記ガス検知層側から前記ガス検知層と前記密着層との接触面を投影したときの投影面積は、前記基体上に形成される当該ガス検知層側から当該ガス検知層と前記密着層および前記検知電極との接触面を投影したときの投影面積の50%以上を占めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記基体は、板厚方向に開口部が形成された半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、前記開口部に対応する部位に隔壁部を有する絶縁層と、前記絶縁層の前記隔壁部上に形成される発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層上に形成される保護層とを備え、前記検知電極、前記密着層および、前記ガス検知層は、前記基体の前記保護層上に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサでは、検知電極とガス検知層との界面で起こるガス反応がガス検知に対し比較的大きな影響を及ぼすため、その界面に導電性の物質(換言すれば、ガスに活性な物質)を介在させない構成とすることが好ましい。その一方、検知電極の表面を含めた基体上に絶縁性の材料からなる密着層を形成すれば、ガス検知層と検知電極との電気的な接続を確保することができなくなってしまう。そこで、請求項1に係る発明のガスセンサでは、検知電極のガス検知層と対向する側の面を全面、ガス検知層と当接させつつ、上記密着層をガス検知層の電子伝導に影響を与えない絶縁材料にて構成するようにしている。これにより、基体とガス検知層との密着性を効果的に高めつつ、特定ガスに対する良好なガス感度が得られるといった従来の技術に無い効果を得ることができる。また、本発明のガスセンサによれば、ガス検知層に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。
【0014】
また、請求項2に係る発明のガスセンサによれば、検知電極は、基体とガス検知層との双方に当接する構成を有することから、検知電極は密着層を覆わない形態で、この密着層と同一面上に形成されることになる。これにより、密着層を覆うように検知電極を設けて、その検知電極に接触するようにガス検知層を形成する場合に比べて、密着層の形成量を低減しながら、請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明のガスセンサによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、検知電極の基体側の面は密着層と当接しているので、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明のガスセンサによれば、検知電極の基体側の面は密着層と当接しているので、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。検知電極のガス検知層と対向する側の面を全面、ガス検知層と当接させつつ、上記密着層をガス検知層の電子伝導に影響を与えない絶縁材料にて構成するようにしている。これにより、基体とガス検知層との密着性を効果的に高めつつ、特定ガスに対する良好なガス感度が得られるといった従来の技術に無い効果を得ることができる。さらに、検知電極のガス検知層と対向する側には、第二凹凸面が備えられており、ガス検知層が備える検知電極に対向する側の面は、検知電極が備える第二凹凸面の凹凸と嵌め合うような凹凸形状(凹凸面)になっている。このため、検知電極とガス検知層とが当接する面が平坦な場合に比べ接触面積が増加しており、上記第二凹凸面のアンカー効果により、検知電極とガス検知層との間の密着性をより一層向上させることができる。また、検知電極の基体側の面は、密着層が備える第一凹凸面の凹凸と嵌め合うような凹凸形状(凹凸面)になっている。そして検知電極は、その凹凸面において密着層の第一凹凸面と当接しているので、第一凹凸面のアンカー効果により、ガス検知層と基体との密着性のみならず、検知電極と基体との密着性をも確保することができる。また、本発明のガスセンサによれば、ガス検知層に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。
【0017】
また、請求項5に係る発明のガスセンサによれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、ガス検知層と密着層との接触面の投影面積(以下、「第1投影面積」と言う。)がガス検知層と密着層および検知電極との接触面の投影面積(以下、「第2投影面積」と言う。)に対して50%以上を占める。第1投影面積は、実測が困難なガス検知層と密着層との接触面積と正の相関がある。同様に、第2投影面積は、実測が困難なガス検知層と密着層および検知電極との接触面積と正の相関がある。したがって、上記のような構成により、基体とガス検知層との密着性をより確実に得ることができる。また、第1投影面積が第2投影面積の50%以上を占めることで、第2投影面積に占めるガス検知層と検知電極との接触面の投影面積(以下、「第3投影面積」と言う。)の割合が抑えられることになる。第3投影面積は、実測が困難なガス検知層と検知電極との接触面積と正の相関がある。つまり、本発明の構成によれば、触媒として作用する検知電極とガス検知層との接触面積が抑えられることになる。このため、被検知ガス中の特定ガス以外の雑ガスに起因したガス検知層の電気的特性の変化を検知電極が検出し難くなり、特定ガスの濃度変化を良好に検知することができるといった付随的な効果を得ることができる。なお、第2投影面積は、ガス検知層と密着層との接触面、および、ガス検知層と検知電極との接触面のそれぞれを、基体上に形成されるガス検知層側から投影した投影面積であるので、第1投影面積と第3投影面積との和が第2投影面積となる。
【0018】
また、請求項6に係る発明のガスセンサによれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果に加え、ガス検知層を発熱抵抗体と対向するように保護層上に形成しており、この発熱抵抗体は、半導体基板に形成された開口部に対応する位置に形成されるため、ガス検知層を効率よく加熱して活性化させることができ、より良好に特定ガスの濃度変化を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1乃至図5を参照して、ガスセンサ1の構造について説明する。図1は、ガスセンサ1の平面図であり、図2は、ガスセンサ1の図1に示すA−A線における矢視方向断面図である。また、図3は、ガスセンサ1が備える発熱抵抗体5の平面図であり、図4は、ガスセンサ1の図1に示すB−B線における矢視方向断面図である。また、図5は、ガスセンサ1の図2に示すC−C線における矢視方向断面図である。なお、図2において、上下方向を上下方向と言い、図1乃至5において、左右方向を左右方向と言う。
【0020】
ガスセンサ1は、図1に示すように、縦が2.6mm,横が2mmの矩形状の平面形状を有するガスセンサであり、図2に示すように、シリコン基板2の上面に絶縁被膜層3が形成され、この絶縁被膜層3には、発熱抵抗体5が内包されるとともに、その上面には密着層7およびガス検知層4が形成された構造を有する。ガス検知層4は、被検知ガス中の特定ガスによって自身の抵抗値が変化する性質を有する。ここで、本ガスセンサ1では、二酸化スズに0.2重量%の酸化カルシウムを触媒として含有させてガス検知層4が設けられており、このガス検知層4を用いて被検知ガス中のアンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)、二硫化メチル((CH3)2S2)、メチルメルカプタン(CH3SH)、トリメチルアミン((CH3)3N)などの特定ガスを検知するように構成されている。なお、本発明における「検知」とは、被検知ガスに含まれる特定ガスの有無を検知するのみならず、当該特定ガスの濃度変化を検知することも含む趣旨である。また、シリコン基板2が、本発明における「半導体基板」に相当し、シリコン基板2,絶縁被膜層3および絶縁被膜層230が、本発明における「基体」に相当する。以下、ガスセンサ1を構成する各部材について詳述する。
【0021】
シリコン基板2は、所定の厚みを有するシリコン製の平板である。また、図2に示すように、シリコン基板2の下面はシリコン基板2および絶縁被膜層230の一部が除去され、絶縁層31の一部が隔壁部39として露出された開口部21が形成されている。即ち、ガスセンサ1では、開口部21を有するシリコン基板2と、絶縁被膜層3と、絶縁被膜層230とにより、ダイヤフラム構造を有する基体15をなすものである。この開口部21は、隔壁部39の位置が、開口部21の開口側から平面視したとき、絶縁層33,34内に埋設された発熱抵抗体5が配置される位置となるように形成されている。
【0022】
絶縁被膜層3は、シリコン基板2の上面に形成された絶縁層31,32,33,34および保護層35から構成される。シリコン基板2の上面に形成された絶縁層31は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜であり、この絶縁層31の下面の一部は、シリコン基板2の開口部21に露呈している。また、この絶縁層31の上面に形成された絶縁層32は、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜であり、この絶縁層32の上面に形成された絶縁層33は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜である。この絶縁層33の上面には、後述する発熱抵抗体5および、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12の他、絶縁層34が形成されている。この絶縁層34は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜である。この絶縁層34の上面には、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜からなる保護層35が形成されている。この保護層35は、後述する発熱抵抗体5および、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12を覆うように配設されることでこれらの汚染や損傷を防ぐ役割を果たす。
【0023】
シリコン基板2の下面に形成された絶縁層231は、所定の厚みを有する酸化ケイ素(SiO2)膜であり、この絶縁層231の下面に形成された絶縁層232は、所定の厚みを有する窒化ケイ素(Si3N4)膜である。絶縁層231,232は、シリコン基板2の下面に設けられた絶縁被膜層230を構成する。
【0024】
発熱抵抗体5は、図2および図3に示すように、シリコン基板2の開口部21の上部に対応する部位であって、絶縁層33と絶縁層34との間に、平面視渦巻き状に形成されている。また、絶縁層33と絶縁層34との間には、発熱抵抗体5に接続され、発熱抵抗体5に通電するためのリード部12が埋設されており、図4に示すように、このリード部12の末端にて、外部回路と接続するための発熱抵抗体コンタクト部9が形成されている。発熱抵抗体5およびリード部12は、白金(Pt)層とタンタル(Ta)層とから構成された2層構造を有する。また、発熱抵抗体コンタクト部9は、白金(Pt)層とタンタル(Ta)層とから構成された引き出し電極91の表面上に、金(Au)からなるコンタクトパッド92が形成された構造を有する。なお、発熱抵抗体コンタクト部9は、ガスセンサ1に一対設けられている。
【0025】
保護層35の上面には、発熱抵抗体5上に位置するように検知電極6と、検知電極6に通電するためのリード部10(図4参照)とが、それぞれシリコン基板2と平行な同一平面上に形成されている。この検知電極6およびリード部10は、発熱抵抗体コンタクト部9の引き出し電極91と同様に、保護層35の上に形成されるタンタル(Ta)層と、その表面上に形成された白金(Pt)層とから構成されている。また、図4に示すように、リード部10の末端には、その表面上に金(Au)からなるコンタクトパッド11が形成され、外部回路と接続するための酸化物半導体コンタクト部8として構成されている。なお、酸化物半導体コンタクト部8は、図1および図4に示すように、ガスセンサ1に一対設けられている。
【0026】
検知電極6は、図5に示すように、櫛歯状の平面形状を有し、ガス検知層4における電気的特性の変化を検出するための一対の電極である。図2に示すように、この検知電極6のガス検知層4に対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接し、ガス検知層4と検知電極6とが電気的に接続されている。このように、ガス検知層4と検知電極6の面61とが全面接触しているので、ガス検知層4と検知電極6との界面におけるガス反応が密着層7を含めた他部材によって何ら阻害されることがない。また、発熱抵抗体5により加熱されてガス検知層4が速やか且つ良好に活性化することから、その観点からもガスセンサ1のガス感度を高めることができる。一方、この検知電極6の保護層35と対向する側の面62は、保護層35と当接している。そして、検知電極6の周りであって、検知電極6の面61を除く部位には、基体15とガス検知層4との密着性を向上させ、ガス検知層4が基体15から剥離することを防ぐ密着層7が設けられている。
【0027】
この密着層7は、基体15とガス検知層4との間の密着性を向上させるための層であって、絶縁性の金属酸化物からなる複数の粒子が凝集した構造をなしている。そのため、密着層7は、自身の表面が凹凸面になっており、基体15と厚膜状に形成されたガス検知層4との密着性を上記凹凸面のアンカー効果によって高めている。なお、この密着層7は、例えば、絶縁性の金属酸化物の粒子を分散させたゾル溶液を塗布し、焼成して固化させることにより得ることができる。
【0028】
そして、この密着層7は、図5に示す横断面図のように、櫛歯状に形成された一対の検知電極6間の領域に形成されるとともに、検知電極6の周縁部と接触する。一方、図2に示す縦断面図のように、検知電極6のガス検知層4との間には密着層7が形成されておらず、検知電極6のガス検知層4に対向する側の面61は全面、ガス検知層4と当接する構成を有する。このような構成により、検知電極6とガス検知層4との界面で起こるガス反応に影響を及ぼすことなく、基体15とガス検知層4との密着性を向上させている。さらに、ガス検知層4が剥離する場合には、ガス検知層4の端部から剥離することが多いが、本実施形態の密着層7は、その上面において、ガス検知層4の端部と当接しているため、ガス検知層4の端部から剥離することも防止することができる。
【0029】
さらに、この密着層7は、検知電極6とガス検知層4との界面で起こるガス反応に影響を及ぼさないよう、アルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)等の絶縁性の金属酸化物により構成されている。なお、検知電極6とガス検知層4との密着性を向上させるために、この密着層7の膜厚は、検知電極6の厚みより小さいことが好ましい。このような構成にすることにより、密着層7の厚さを薄くすることができる他、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61が全面にわたって密着層7の上面に対して確実に露出するため、当該面61を全面、確実にガス検知層4と当接させることができる。
【0030】
[実施例1]
上記構造を有するガスセンサ1を、以下の製造工程に従って作製した。なお、作製途中のガスセンサ1の中間体を、基板と称する。また、各工程の説明に用いる工程名に付した括弧内の数字は、各工程の実施順序を示しており、例えば、「(1) シリコン基板2の洗浄」は、1番目に行われる工程であることを示している。
【0031】
(1) シリコン基板2の洗浄
まず、厚みが400μmのシリコン基板2を洗浄液中に浸し、洗浄処理を行った。
【0032】
(2) 絶縁層31,231の形成
上記シリコン基板2を熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層31,231をそれぞれシリコン基板2の両面(上面および下面)に形成した。
【0033】
(3) 絶縁層32,232の形成
次に、LP−CVDにてジクロルシラン(SiH2Cl2)、アンモニア(NH3)をソースガスとし、厚さが200nmの窒化ケイ素膜(Si3N4)膜からなる絶縁層32,232をそれぞれ絶縁層31,231の表面上に形成した。
【0034】
(4) 絶縁層33の形成
次に、プラズマCVDにてテトラエトキシシラン(TEOS)、酸素(O2)をソースガスとし、絶縁層32の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層33を形成した。
【0035】
(5) 発熱抵抗体5およびリード部12の形成
その後、DCスパッタ装置を用い、絶縁層33の表面上に厚さ20nmのタンタル(Ta)層を形成し、その層上に厚さ220nmの白金(Pt)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で発熱抵抗体5およびリード部12のパターンを形成した。
【0036】
(6) 絶縁層34の形成
そして、(4)と同様に、プラズマCVDにてテトラエトキシシラン(TEOS)、酸素(O2)をソースガスとし、絶縁層33,発熱抵抗体5およびリード部12の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素(SiO2)膜からなる絶縁層34を形成した。このようにして、厚さ200nmの絶縁層34内に発熱抵抗体5およびリード部12を埋設した。
【0037】
(7) 保護層35の形成
さらに、(3)と同様に、LP−CVDにてジクロルシラン(SiH2Cl2)、アンモニア(NH3)をソースガスとし、絶縁層34の上面に、厚さが200nmの窒化ケイ素(Si3N4)膜からなる保護層35を形成した。
【0038】
(8) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ドライエッチング法で保護層35,絶縁層34のエッチングを行い、発熱抵抗体コンタクト部9を形成する部分に穴をあけ、リード部12の末端の一部を露出させた。
【0039】
(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル(Ta)層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金(Pt)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極6,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。
【0040】
(10) 密着層7の形成
櫛歯状の検知電極6間およびその周囲の保護層35上に、焼成後に密着層7となるゾル溶液層を形成した。なお、ゾル溶液層は、粒径が10nm〜20nmの範囲内のアルミナ粒子を含むゾル溶液を所定の粘度に調製し、このゾル溶液を、インクジェット法を用いて保護層35上に塗布し、乾燥することにより形成した。
【0041】
(11) コンタクトパッド11,92の形成
そして、DCスパッタ装置を用い、上記電極部分の作製された基板の電極側の表面上に、厚さ400nmの金(Au)層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理でコンタクトパッド11,92を形成した。
【0042】
(12) 開口部21の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、マスクとなる絶縁膜をドライエッチング処理により形成した。そして水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液中に基板を浸し、シリコン基板2の異方性エッチングを行うことで、下面が開口され、発熱抵抗体5の配置位置に対応する部分の絶縁層31の隔壁部39となる部分が露出されるように、開口部21を形成した。
【0043】
(13) ガス検知層4の形成
さらに、ゾル溶液層および検知電極6の表面上に、酸化スズを主成分とし、酸化カルシウムを添加した酸化物半導体ペーストを厚膜印刷により塗布し、厚さ30μmのペースト層を形成した。なお、酸化物半導体ペーストは以下の手順により作製した。まず、純水に塩化スズ(SnCl2)を加え、十分撹拌して溶解させた後、アンモニア水を滴下して、水酸化スズを析出させた。その後、沈殿粉末を純水で数回洗浄してアンモニウムイオンおよび塩素イオンを除去し、乾燥させた。乾燥後、純水に沈殿粉末と水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を分散させ、十分に攪拌させた後、乾燥させた。このときの、水酸化カルシウムの添加量は、酸化カルシウム(CaO)換算で0.2重量%となるように添加した。乾燥後、800℃、5時間の条件で焼成し、得られた粉末5gをらいかい機で1時間粉
砕した。その後、有機溶剤を混合し、らいかい機(もしくはポットミルでもよい)で4時間粉砕した。さらに、バインダーおよび粘度調製剤を添加して4時間粉砕を行い、25℃にて粘度140Pa・sのペーストに調製した。
【0044】
(14) 基板の焼成
基板を熱処理炉に挿入し、650℃で1時間の焼成条件にて焼成し、密着層7およびガス検知層4が形成された基板を得た。
【0045】
(15) 基板の切断
ダイシングソーを用いて基板を切断し、平面視、2.6mm×2mmの大きさのガスセンサ1を得た。
【0046】
次に、上記製造工程に従ってガスセンサ1を作製したことによる本発明の効果を確認するため、以下に示す2種の評価および検証を行った。
【0047】
[評価1]
密着層7を絶縁性のアルミナ(Al2O3)粒子を用いて構成したガスセンサ1と、比較例として、ガスセンサ1の密着層7の材料を除いて同一な構成を有するガスセンサを作製し、特定ガス成分に対するガス感度を評価した。この比較例の密着層は、ガス検知層4の主成分をなす酸化物半導体である酸化スズ(SnO2)からなり、触媒となる酸化カルシウムを含有しないものを用いた。
【0048】
評価試験の手順は次の通りである。まず、温度25℃、相対湿度40%RHで、酸素(O2)の分量を20.9体積%とした酸素と窒素(N2)との混合ガスをベースガスとし、ベースガス雰囲気中で各ガスセンサのベースガス抵抗値(Rair)を測定した。この測定時の発熱抵抗体5の温度は、350℃となるように制御した。そして、ベースガス抵抗値測定後、ベースガス中に検知対象となる特定ガス成分としてのアンモニア(NH3)を5ppm混合し、5秒後に各ガスセンサの電気抵抗値(Rgas)を測定した。そして、ベースガス抵抗値と測定した電気抵抗値との比(Rgas/Rair)を算出し、これをガス感度とした。
【0049】
以上のように行った評価1の結果を図6に示す。図6は、評価1の結果を表す棒グラフである。図6に示すように、両ガスセンサともに、ガス感度は実用上問題がないとされる0.95未満の値が示されたが、本実施例のガスセンサ1のガス感度は0.67であり、比較例のガス感度0.94と比較して、顕著なガス感度を示すことが確認された。このように、密着層が被検知ガス中に含まれる特定ガス成分に反応を示す物質により作製された比較例よりも、絶縁性金属酸化物で作製した実施例の方が、ガス感度が良好であることから、密着層の材料が、検知電極とガス検知層との界面で起こる反応がガス検知に対し比較的大きな影響を及ぼすことが示唆された。
【0050】
[評価2]
ついで、実施例1のガスセンサ1における特定ガス成分以外の雑ガスに対する特性を評価した。この評価試験の手順は次の通りである。まず、上記の評価1と同様に、ベースガス雰囲気中でのガスセンサ1のベースガス抵抗値(Rair)を測定した。そして、ベースガス抵抗値測定後、ベースガス中に特定ガス成分であるアンモニアではなく、雑ガスとして二酸化窒素酸化物(NO2)を1ppm混合し、10秒後にガスセンサ1の電気抵抗値(Rgas')を測定した。そして、ベースガス抵抗値と測定した電気抵抗値との比(Rgas'/Rair)を算出し、これを雑ガス特性とした。この雑ガス特性は、比(Rgas'/Rair)の値が大きくなるほど、特定ガス成分の濃度変化に対する検知精度が低下することを示す指標である。雑ガス特性は、1.9以下であることが実用上好ましいとされており、特に好ましくは1.5以下であることが好ましいとされている。
【0051】
本発明者らが実験により種々検討したところ、この雑ガス特性を抑えるには、触媒として作用する検知電極6とガス検知層4との接触面積の割合を低くすると有効であることが新たに確認された。具体的には、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保して、ガス検知層と検知電極との接触面積の割合を抑えることが雑ガス特性を抑える上で有効となることが実験結果から示唆された。例えば、第1投影面積を150,000μm2,第2投影面積を250,000μm2として、第1投影面積が第2投影面積の60%を占めるようにガスセンサ1を製造した場合、その雑ガス特性は1.33であった。この雑ガス特性を示す比1.33は、実用上特に好ましいとされる1.5よりも小さい値であり、雑ガス特性を良好に抑えられることが確認できた。なお、第1投影面積が第2投影面積に占める割合の上限は、ガスセンサにて検知すべき特定ガスの最低濃度変化が測定可能であるか否かを基準として、100%未満の値が適宜設定される。
【0052】
ここで、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保する場合には、上記のガスセンサ1の製造工程における条件を以下のように設定すればよい。以下、評価2において上述の第1投影面積が第2投影面積の60%を占める場合を例に、製造工程の条件を説明する。「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」では、基板上に形成されるガス検知層4側から一対の検知電極6を投影したときの投影面積(第3投影面積)が100,000μm2となるように、検知電極6を形成した。また、「(10) 密着層7の形成」は、基板上に形成されるガス検知層4側から当該ガス検知層4の領域内で検知電極6を含む形で密着層7を投影したときの投影領域における、当該密着層のみの投影面積(第1投影面積)が150,000μm2となるように密着層7を形成した。さらに、「(13) ガス検知層4の形成」では、基板上に形成されるガス検知層4側からガス検知層4と密着層7および検知電極6との接触面を投影したときの投影面積(第2投影面積)が250,000μm2となるように、ガス検知層4を形成した。これにより、評価2において上述のガスセンサ1では、上記第1投影面積は、第2投影面積の50%以上(150,000μm2/250,000μm2×100=60%)を占める構成となっている。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態のガスセンサ1では、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61を全面、ガス検知層4と当接させて検知電極6とガス検知層4との接触面積を確保しつつ、基体15とガス検知層4との間にガス検知層4の電子伝導に影響を与えない絶縁材料からなる密着層7を形成している。したがって、本実施形態のガスセンサ1によれば、基体15とガス検知層4との間の密着性を向上させつつ、良好なガス感度が得られるという従来の技術にはない効果を得ることができる。また、ガス検知層4に流す電流又は印加する電圧の大きさを小さくしても十分に特定ガスの濃度変化を検知できるので、ガスセンサの回路設計を容易且つ安価なものとすることができるといった効果も副次的に得られる。さらに、この発熱抵抗体5は、シリコン基板2に形成された開口部21に対応する位置に形成されるため、ガス検知層4を効率よく加熱して活性化することができ、良好に被検知ガス中の特定ガスの濃度変化を検知することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、基体15をなすシリコン基板2はシリコンにより作製したが、アルミナ(Al2O3)や半導体材料から作製してもよい。また、作製されたガスセンサ1の平面形状は矩形に限らず、多角形や円形であってもよく、その大きさ、厚み、各部材の配置も限定されるものではない。
【0055】
また、ガスセンサ1の製造方法は、実施例1に限定されず、適宜変更を加えることが可能である。例えば、実施例1では、「(10) 密着層7の形成」において、密着層7となるゾル溶液層をインクジェット法により形成したが、ディップ法、電気泳動法、液膜転送法、ミスト輸送法、スクリーン印刷法、スピンコート法など、その他の方法により形成してもよい。また、密着層7を検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成後に行っていたが、検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成前に行うようにしてもよい。その場合には、例えば、密着層7となるゾル溶液層を保護層35上に膜状に形成した後、検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成を形成する箇所をエッチング等により除去し、続いて当該除去部分に検知電極6,リード部10および引き出し電極91を形成する。
【0056】
また、上記実施形態においては、密着層7の膜厚は、ガス検知層4の膜厚より小さい構成を有していたが、検知電極6のガス検知層4と対向する側の面61を全面、ガス検知層4と当接していればよく、これに限定されない。さらに、密着層7は、上記実施形態では、櫛歯状に形成された一対の検知電極6間の領域および検知電極6の周縁部の二つの領域に形成する構成としたが、いずれか一方の領域のみに密着層7を形成するようにしてガス検知層4と基体15との密着性を確保するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、第1投影面積を第2投影面積の50%以上確保して、ガス検知層と検知電極との接触面積の割合を抑えるようにしていたが、上記実施形態の場合に限定されない。第1投影面積が第2投影面積に占める割合は、ガス感度や雑ガス特性等に応じて適宜設定可能である。
【0058】
また、絶縁被膜層3は酸化ケイ素および窒化ケイ素からなる複層構造としたが、酸化ケイ素又は窒化ケイ素からなる単層構造としてもよい。また、本実施の形態では、絶縁層33,34内に発熱抵抗体5を埋設させたが、これに限定されない。例えば、絶縁層32内に発熱抵抗体5を埋設させるようにしてもよい。
【0059】
また、ガス検知層4は、主成分として金属酸化物半導体である酸化スズを用いたが、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO2)、酸化バナジウム(VO2)など、その他の金属酸化物半導体を用いてもよい。また、金属酸化物半導体に添加する塩基性金属酸化物としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)などのアルカリ土類金属の酸化物、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属の酸化物、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、その他、ランタノイド系元素などの希土類の酸化物を用いてもよい。
【0060】
ところで、上述の実施形態において、検知電極6の基体15と対向する面は保護層35と当接する構成を有していた。この構成によれば、密着層7の形成量を低減しながら基体15とガス検知層4との密着性を向上できるという長所がある一方で、基体15と検知電極6との接触面の面積が大きい場合などには、基体15と検知電極6との密着性が改善されない場合がある。そこで、密着層の構成を変形例1のようにしてもよい。以下、検知電極6の下面に、密着層7が形成される変形例1に係るガスセンサ101について、図7を参照して説明する。なお、ガスセンサ101の構成は、密着層の構成を除き、上述の実施形態と同様であるので、同様の形態の説明は省略する。図7は、ガスセンサ101の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。図7において、上下方向を上下方向と、左右方向を左右方向と言う。
【0061】
図7に示すように、変形例1に係るガスセンサ101において、検知電極106のガス検知層104と対向する側の面161は全面、ガス検知層104と当接している。一方、検知電極106の基体15側の面162,即ち密着層と対向する側の面162は、密着層107と当接している。このような構成にすることにより、検知電極106と保護層35との密着性を向上させている。また、変形例1においては、上述の実施形態に比べ、基体15を構成する保護層35と密着層107との接触面の面積が増加しているので、密着層107と保護層35とがより確実に密着する。したがって、例えば、基体15と検知電極106との接触面の面積が大きい場合にも、基体15と検知電極6との密着性を向上することができ、ガス検知層104が基体15から剥離することを防止することができる。
【0062】
次に、実施例2として、変形例1の製造工程について説明する。変形例1のガスセンサ101の製造方法は、前述の実施例1と、「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」および、「(10) 密着層7の形成」とにおいて異なる。上述の実施例1と同様の工程についての説明は省略し、以下、実施例1と異なる製造工程について説明する。
【0063】
[実施例2]
(9) 密着層107の形成
発熱抵抗体5および開口部21に対応する保護層35の上面の位置に、焼成後に密着層7となるゾル溶液層をスピンコート法により形成し、乾燥させた。その後、ゾル溶液層のうちで検知電極106を形成する部分をエッチングにより除去し、凹状部を形成した。
【0064】
(10) 検知電極106,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、密着層107のエッチングにより除去された凹状部および保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極106,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。
【0065】
ところで、上述の実施形態および変形例1において、検知電極とガス検知層とは直接当接した構成を有している。ガス検知層と検知電極との接触面の面積が大きい場合などには、基体と検知電極との密着性が改善されない場合がある。そこで変形例2のように、密着層とガス検知層との間に検知電極が形成され、且つ、密着層は検知電極およびガス検知層に対向する側に第一凹凸面を備えるとともに、検知電極はガス検知層に対向する側に第二凹凸面を備えるようにしてもよい。以下、変形例2に係るガスセンサ201について、図8および図9を参照して説明する。図8は、ガスセンサ201の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。また図9は、図8に示すガスセンサ201の一部を拡大した拡大図である。なお、図8および図9において、上下方向を上下方向と、左右方向を左右方向と言う。
【0066】
図8および図9に示すように、変形例2に係るガスセンサ201の構成は、密着層207,検知電極206およびガス検知層204の構成を除き、上述の実施形態と同様である。したがって、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略し、以下上述の実施形態と異なる密着層207,検知電極206およびガス検知層204の構成について詳述する。
【0067】
図8および図9に示すように、変形例2に係るガスセンサ201の密着層207は、ガス検知層204および検知電極206と対向する側の表面に第一凹凸面271を備えている。この密着層207は、基体15とガス検知層204との間の密着性を向上させるための層であって、絶縁性の金属酸化物からなる複数の粒子が凝集した構造をなしている。変形例2においては、密着層207の表面が凹凸面になっているため、密着層207は、基体15と厚膜状に形成されたガス検知層204との密着性を上記第一凹凸面271のアンカー効果によってより効果的に高めている。なお、この密着層207は、例えば、絶縁性の金属酸化物の粒子を分散させたゾル溶液を塗布し、焼成して固化させることにより得ることができる。
【0068】
検知電極206は、基体15側、即ち密着層207と対向する側に、密着層207の第一凹凸面271の凹凸に嵌め合うような凹凸を有する凹凸面261を備え、その凹凸面261において密着層207の第一凹凸面271と当接している。このように変形例2においては、上述の実施形態に比べ、基体15を構成するガス検知層204および検知電極206と密着層207との接触面の面積が増加しているので、ガス検知層204および検知電極206と密着層207とがより確実に密着する。したがって、例えば、基体15と検知電極206との接触面の面積が大きい場合にも、基体15と検知電極206との密着性を向上させることができ、ガス検知層204が基体15から剥離することを防止することができる。
【0069】
また検知電極206は、ガス検知層204と対向する側に第二凹凸面262を備えている。一方、ガス検知層204の検知電極206と当接する面241は、検知電極206が備える第二凹凸面262の凹凸に嵌め合うような凹凸を有する凹凸面となっている。そして、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面は全面、第二凹凸面262においてガス検知層204の面241と当接している。このため、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面が平らな場合に比べ、検知電極206とガス検知層204との接触面積が増加しており、上記第二凹凸面262のアンカー効果により検知電極206とガス検知層204との密着性を向上させることができる。したがって、例えば、ガス検知層204と検知電極206との接触面の面積が大きい場合にも、ガス検知層204が基体15から剥離することを防止する効果が増加する。なお、第二凹凸面262を備えた検知電極206は、例えば、第一凹凸面271を備えた密着層207の表面に導電性の金属膜をスパッタ法で成膜することにより得ることができる。また例えば、検知電極形成後、ガス検知層と対向する側の面に機械的な凹凸化処理を施すことによって第二凹凸面を形成してもよい。
【0070】
次に、実施例3として、変形例2に係るガスセンサ201の製造工程の一例について説明する。変形例2のガスセンサ201の製造方法は、前述の実施例1と、「(8)発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成」、「(9) 検知電極6,リード部10および引き出し電極91の形成」、「(10) 密着層7の形成」および、「(13) ガス検知層4の形成」において異なり、他の工程については工程の内容および実施順序ともに実施例1と同様である。上述の実施例1と同様の工程についての説明は省略し、以下、実施例1と異なる製造工程について説明する。
【0071】
[実施例3]
(8) 密着層207の形成
発熱抵抗体5および開口部21に対応する保護層35の上面の位置に、表面に凹凸のあるアルミニウム膜をスパッタ法により所定の厚みで成膜し、そのアルミニウム膜を酸化して酸化アルミニウムとした。この工程において、自身の表面が凹凸面になった密着層207が形成された。
【0072】
(9) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ドライエッチング法で自身の上面に密着層207が形成された保護層35,絶縁層34のエッチングを行い、発熱抵抗体コンタクト部9を形成する部分に穴をあけ、リード部12の末端の一部を露出させた。
【0073】
(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、密着層207および保護層35の表面上に厚さ20nmのタンタル層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で櫛歯状の検知電極206,リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。この工程において、「(8) 密着層207の形成」において形成した密着層207の表面の凹凸面に起因して、検知電極206の上面に凹凸を有する第二凹凸面262が形成された(図10)。
【0074】
(13) ガス検知層204の形成
さらに、検知電極206および密着層207の上面に、酸化スズを主成分とし、酸化カルシウムを添加した酸化物半導体ペーストを厚膜印刷により塗布し、厚さ30μmのペースト層を形成した。このとき、ガス検知層204と検知電極206とが当接する面である面241には、「(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成」において形成した検知電極206の第二凹凸面262の凹凸に嵌め合う凹凸が形成された(図11)。なお、酸化物半導体ペーストは実施例1と同様の手順により作製した。
【0075】
次に、上記製造工程に従って製造したガスセンサ201の構造を確認するため、検知電極206の第二凹凸面262およびこの第二凹凸面262とガス検知層204の面241とが当接した状態を走査電子顕微鏡により10,000倍に拡大して確認した。図10は、検知電極206の形成直後(ガス検知層204を形成前)における検知電極206の第二凹凸面262を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。図10の写真に示すように、上記製造工程に従って作成した検知電極206のガス検知層204に対向する側の面には、複数の金属粒子が凝集して形成された第二凹凸面262が確認された。この第二凹凸面262は、この「(8) 密着層207の形成」において形成した密着層207の表面の凹凸面に起因して形成された凹凸面である。一方図11は、検知電極206とガス検知層204との当接面を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。図11の写真において、図11の下部に見られる比較的粒の大きい粒子を備える層が検知電極206であり、図11の上部に見られる比較的粒の小さい粒子を備える層がガス検知層204である。ガス検知層204の検知電極206と当接する側の面241は、検知電極206が備える第二凹凸面262の凹凸に嵌め合う凹凸面となっていることが確認された。図10および図11の写真から、変形例2に係るガスセンサ201は、検知電極206のガス検知層204と対向する側の面が平らな場合に比べ、検知電極206とガス検知層204との接触面積が増加していることが確認された。
【0076】
なお、上記変形例2において、「(2) 絶縁層31,231の形成」を行い、絶縁層31,231を形成するようにしていたが、この工程を省略し、シリコン基板2の両面に窒化ケイ素膜(Si3N4)膜からなる絶縁層32,232を形成するようにしてもよい。また各製造工程の実施順序は必要に応じて変更可能であり、例えば、「(9) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成」は「(10) 検知電極206,リード部10および引き出し電極91の形成」の後に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、半導体式ガスセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ガスセンサ1の平面図である。
【図2】ガスセンサ1の図1に示すA−A線における矢視方向断面図である。
【図3】ガスセンサ1が備える発熱抵抗体5の平面図である。
【図4】ガスセンサ1の図1に示すB−B線における矢視方向断面図である。
【図5】ガスセンサ1の図2に示すC−C線における矢視方向断面図である。
【図6】評価1の結果を表す棒グラフである。
【図7】ガスセンサ101の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。
【図8】ガスセンサ201の図2に示す図1のA−A線における矢視方向断面図に対応する断面図である。
【図9】図8に示すガスセンサ201の波線240付近を拡大した拡大図である。
【図10】検知電極206の形成直後(ガス検知層204を形成前)における検知電極206の第二凹凸面262を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。
【図11】検知電極206とガス検知層204との当接面を走査電子顕微鏡により拡大して撮影した写真である。
【符号の説明】
【0079】
1,101,201 ガスセンサ
2 シリコン基板
3,230 絶縁被膜層
4,104,204 ガス検知層
5 発熱抵抗体
6,106,206 検知電極
7,107,207 密着層
15 基体
21 開口部
31,32,33,34,231,232 絶縁層
35 保護層
39 隔壁部
61,62,161,162 面
261 凹凸面
262 第二凹凸面
271 第一凹凸面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、
前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出するための検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、
前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記検知電極の前記基体と対向する側の面は、前記基体と当接していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、
前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層と当接していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、
前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出する検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、
前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、
前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層の前記検知電極および前記ガス検知層と対向する側に形成された第一凹凸面と当接しており、
前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は、第二凹凸面を有するとともに、全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記基体上に形成される前記ガス検知層側から前記ガス検知層と前記密着層との接触面を投影したときの投影面積は、前記基体上に形成される当該ガス検知層側から当該ガス検知層と前記密着層および前記検知電極との接触面を投影したときの投影面積の50%以上を占めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記基体は、板厚方向に開口部が形成された半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、前記開口部に対応する部位に隔壁部を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記隔壁部上に形成される発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層上に形成される保護層とを備え、
前記検知電極、前記密着層および、前記ガス検知層は、前記基体の前記保護層上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項1】
基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、
前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出するための検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、
前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記検知電極の前記基体と対向する側の面は、前記基体と当接していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、
前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層と当接していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
基体上に形成されるとともに、被検知ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する金属酸化物半導体を主成分とするガス検知層を有するガスセンサにおいて、
前記基体上には、前記ガス検知層における電気的特性の変化を検出する検知電極および前記ガス検知層と接触する絶縁性の密着層を備え、
前記検知電極は、前記密着層と前記ガス検知層との間に備えられ、
前記検知電極の前記密着層と対向する側の面は、前記密着層の前記検知電極および前記ガス検知層と対向する側に形成された第一凹凸面と当接しており、
前記検知電極の前記ガス検知層と対向する側の面は、第二凹凸面を有するとともに、全面、前記ガス検知層と当接していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記基体上に形成される前記ガス検知層側から前記ガス検知層と前記密着層との接触面を投影したときの投影面積は、前記基体上に形成される当該ガス検知層側から当該ガス検知層と前記密着層および前記検知電極との接触面を投影したときの投影面積の50%以上を占めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記基体は、板厚方向に開口部が形成された半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、前記開口部に対応する部位に隔壁部を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記隔壁部上に形成される発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層上に形成される保護層とを備え、
前記検知電極、前記密着層および、前記ガス検知層は、前記基体の前記保護層上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−209390(P2008−209390A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159924(P2007−159924)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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