説明

ガスタービンプラント、その制御装置、及びその制御方法

【課題】低カロリー燃料ガスと高カロリー燃料ガスとを燃焼器に導入するガスタービンプラントで、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても安定運転できるようにする。
【解決手段】燃焼器に圧縮空気を送る空気圧縮機11は、外気の吸込量を調節する吸気量調節器15を有している。制御装置100は、燃焼器に導入される燃料ガスの単位重量当たりのカロリーに関する設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識部102,105,106と、ガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付部103と、設定カロリーの値毎の、吸気量調節器15の開度とガスタービン出力との予め定めた関係を用いて、設定カロリー認識部が認識した設定カロリーの値とガスタービン出力受付部が受け付けたガスタービン出力とに応じた吸気量調節器の開度を求める開度演算部と、この開度を吸気量調節器15に出力する出力部128と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低カロリー燃料ガスと高カロリー燃料ガスとが混合したガスを燃焼させて駆動するガスタービンプラント、その制御装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンプラントでは、例えば、以下の特許文献1に記載されているように、製鉄所の高炉からの高炉ガス(以下、BFG(Blast Furnace Gas)とする)に代表される低カロリー燃料ガスと、コークス炉からのコークス炉ガス(以下、COG(Coke Oven Gas)とする)に代表される高カロリー燃料ガスとを混合したガスを燃料とするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなガスタービンプラントでは、経済性の面から、コストの高い高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても、安定運転可能なプラントが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても安定運転できるガスタービンプラント、その制御装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明の一態様としてのガスタービンプラントの制御装置は、
外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機と、該圧縮空気に燃料ガスを混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備え、前記空気圧縮機は、開度が変化して前記外気の吸込量を調節する吸気量調節器を有し、低カロリー燃料ガスと、該低カロリー燃料ガスよりも単位重量当たりのカロリー値の高い高カロリー燃料ガスとが混合したガスを前記燃料ガスとして前記燃焼器に導入するガスタービンプラントの制御装置において、
前記燃料ガスの単位重量当たりのカロリーに関する設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識部と、ガスタービンの出力であるガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付部と、前記設定カロリーの値毎の、前記吸気量調節器の開度と前記ガスタービン出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識部が認識した前記設定カロリーの値と前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記ガスタービン出力とに応じた前記吸気量調節器の開度を求める開度演算部と、前記開度演算部が求めた前記開度を前記吸気量調節器に出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0007】
当該制御装置では、オペレータ等の意思に応じて、燃料ガスの単位重量あたりのカロリー(以下、単に単位カロリーとする)に関する設定カロリーを変更することができる。このため、当該制御装置では、経済性の観点から、オペレータ等の意思に応じて、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくすることができる。
【0008】
また、当該制御装置では、設定カロリーが変更されても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0009】
ここで、前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記関係は、前記設定カロリーの値が低いほど、前記ガスタービン出力に対する前記吸気量調節器の開度が大きく設定された関係であることが好ましい。
【0010】
空気圧縮機は、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、サージングの可能性が高まり、吸気量調節器の許容最小開度が大きくなる。このため、設定カロリーの値毎の、吸気量調節器の開度とガスタービン出力との予め定めた関係が、設定カロリーの値が低いほど、ガスタービン出力に対する吸気量調節器の開度が大きく設定された関係であれば、燃料ガスの単位カロリーが低くなっても、空気圧縮機のサージング発生を抑えることができる。
【0011】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記設定カロリー認識部は、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けると、該高カロリー燃料ガスの比率が小さい又は該高カロリー燃料ガスを含まないガスを前記燃料ガスとし、該異常信号に対して、予め定められている該燃料ガスに関するカロリーの値を前記設定カロリーの値として認識するようにしてもよい。
【0012】
当該制御装置では、高カロリー燃料供給元に異常が発生し、燃料ガス中の高カロリー燃料ガスの比率が小さくなる、又は、燃料ガス中に高カロリーガスが含まれなくなっても、設定カロリーの値が異常時に応じた値に自動変更されるため、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0013】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付部と、前記目標出力受付部が受け付けた前記目標出力と、前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算部と、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常時における、前記燃料流量調節器の制御量を出力する異常時制御量出力部と、前記高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けていないときには、前記制御量演算部が求めた前記制御量を出力し、前記異常信号を受け付けたときには、前記異常時制御量出力部からの前記制御量を出力する切替部と、前記切替部から出力された制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力部と、を有してもよい。
【0014】
当該制御装置では、異常信号を受け付けたときに、この異常に応じたガスタービン出力の制御を行うので、高カロリー燃料供給元の異常により燃焼器に流入する燃焼ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力を先行制御することになる。よって、当該制御装置では、高カロリー燃料供給元に異常が発生しても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0015】
また、前記切替部を有する前記制御装置において、前記異常時制御量出力部は、前記高カロリー燃料供給元の異常時における前記ガスタービンの予め定められている目標出力である異常時目標出力と、前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の前記制御量を出力してもよい。
【0016】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、前記設定カロリーの値と前記ガスタービンの許容最大出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識部が認識した前記設定カロリーの値に対する該ガスタービンの許容最大出力を求める許容出力演算部と、前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付部と、前記目標出力受付部が受け付けた前記目標出力と前記許容出力演算部が求めた前記許容最大出力とを比較し、該目標出力が該許容最大出力未満のときには該目標出力を出力し、該目標出力が該許容最大出力以上のときには該許容最大出力を目標出力として出力する比較部と、前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記ガスタービン出力と前記比較部が出力した前記目標出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算部と、前記制御量演算部が求めた前記制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力部と、を有してもよい。
【0017】
当該制御装置では、設定カロリーが変更されても、ガスタービンの許容最大出力を大きく超えた運転を避けることができるので、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0018】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記ガスタービンプラントは、前記高カロリー燃料ガスのみが流れる高カロリー燃料ラインと、該高カロリー燃料ラインに並列配置された複数の高カロリー燃料流量調節弁と、を備え、前記制御装置は、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁に対する制御量を求める制御量演算部と、前記制御量に応じて、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁毎の弁開度を定める弁開度設定部と、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁のそれぞれに対して、前記弁開度設定部が定めた前記弁開度を出力する出力部と、を有してもよい。
【0019】
当該制御装置では、高カロリー燃料ラインを流れる高カロリー燃料ガスの流量を高い精度で制御することができる。
【0020】
また、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁を備えているガスタービンプラントの前記制御装置において、前記弁開度設定部は、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁に対する前記制御量が所定値以下では、1台の前記高カロリー燃料流量調節弁のみを稼働させ、該制御量が所定値より大きければ、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁を稼働させるよう、該複数の高カロリー燃料流量調節弁毎の弁開度を定めてもよい。
【0021】
また、前記目的を達成するための発明に係るガスタービンプラントは、
以上のいずれかの制御装置を備えていることを特徴とする。
【0022】
当該ガスタービンプラントも以上のいずれか制御装置を備えているので、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0023】
また、前記目的を達成するための発明に係るガスタービンプラントの制御方法は、
外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機と、該圧縮空気に燃料ガスを混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備え、前記空気圧縮機は、開度が変化して前記外気の吸込量を調節する吸気量調節器を有し、低カロリー燃料ガスと、該低カロリー燃料ガスよりも単位重量当たりのカロリー値の高い高カロリー燃料ガスとが混合したガスを前記燃料ガスとして前記燃焼器に導入するガスタービンプラントの制御方法において、
前記燃料ガスの単位重量当たりのカロリーに関する設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識工程と、ガスタービンの出力であるガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付工程と、前記設定カロリーの値毎の、前記吸気量調節器の開度と前記ガスタービン出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識工程で認識された前記設定カロリーの値と前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記ガスタービン出力とに応じた前記吸気量調節器の開度を求める開度演算工程と、前記開度演算工程で求められた前記開度を前記吸気量調節器に出力する出力工程と、を実行することを特徴とする。
【0024】
当該制御方法では、オペレータ等の意思に応じて、燃料ガスの単位重量あたりのカロリー(以下、単に単位カロリーとする)に関する設定カロリーを変更することができる。このため、当該制御装置では、経済性の観点から、オペレータ等の意思に応じて、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくすることができる。さらに、当該制御方法では、設定カロリーが変更されても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0025】
ここで、前記ガスタービンプラントの制御方法において、前記関係は、前記設定カロリーの値が低いほど、前記ガスタービン出力に対する前記吸気量調節器の開度が大きく設定された関係であることが好ましい。
【0026】
空気圧縮機は、前述したように、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、吸気量調節器の許容最小開度が大きくなる。このため、設定カロリーの値毎の、吸気量調節器の開度とガスタービン出力との予め定めた関係が、設定カロリーの値が低いほど、ガスタービン出力に対する吸気量調節器の開度が大きく設定された関係であれば、燃料ガスの単位カロリーが低くなっても、空気圧縮機のサージング発生を抑えることができる。
【0027】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御方法において、前記設定カロリー認識工程では、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けると、該高カロリー燃料ガスの比率が小さい又は該高カロリー燃料ガスを含まないガスを前記燃料ガスとし、該異常信号に対して、予め定められている該燃料ガスに関するカロリーの値を前記設定カロリーの値として認識してもよい。
【0028】
当該制御方法では、高カロリー燃料供給元に異常が発生し、燃料ガス中の高カロリー燃料ガスの比率が小さくなる、又は、燃料ガス中に高カロリーガスが含まれなくなっても、設定カロリーの値が異常時に応じた値に自動変更されるため、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0029】
また、いずれか一のガスタービンプラントの制御方法において、前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付工程と、前記目標出力受付工程で受け付けられた前記目標出力と、前記ガスタービン出力受付工程で受け付けた前記出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算工程と、前記高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けていないときには、前記制御量演算工程で求められた前記制御量を出力し、前記異常信号を受け付けたときには、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常時における、前記燃料流量調節器の制御量を出力する制御量切替工程と、前記制御量切替工程で出力された制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力工程と、を実行してもよい。
【0030】
当該制御方法では、異常信号を受け付けたときに、この異常に応じたガスタービン出力の制御を行うので、高カロリー燃料供給元の異常により燃焼器に流入する燃焼ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力を先行制御することになる。よって、当該制御方法では、高カロリー燃料供給元に異常が発生しても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0031】
また、前記制御量切替工程を実行する前記制御方法において、前記高カロリー燃料供給元の異常時における前記ガスタービンの予め定められている目標出力である異常時目標出力と、前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記出力との偏差に応じた異常時制御量を求める異常制御量演算工程を実行し、前記制御量切替工程では、前記異常信号を受け付けたときには、前記異常制御量演算工程で求められた前記異常時制御量を前記制御量として出力してもよい。
【0032】
また、いずれか一の前記ガスタービンプラントの制御方法において、前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、前記設定カロリーの値と前記ガスタービンの許容最大出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識工程で認識された前記設定カロリーの値に対する該ガスタービンの許容最大出力を求める許容出力演算工程と、前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付工程と、前記目標出力受付工程で受け付けられた前記目標出力と前記許容出力演算工程で求められた前記許容最大出力とを比較し、該目標出力が該許容最大出力未満のときには該目標出力を出力し、該目標出力が該許容最大出力以上のときには該許容最大出力を目標出力として出力する比較工程と、前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記ガスタービン出力と前記比較工程で出力された前記目標出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算工程と、前記制御量演算工程で求められた前記制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力工程と、を実行してもよい。
【0033】
当該制御方法では、設定カロリーが変更されても、ガスタービンの許容最大出力を大きく超えた運転を避けることができるので、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部切欠全体側面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【図4】燃料ガスの単位カロリーの値とガスタービンの許容最大出力との関係、及び燃料ガスの単位カロリーの値と空気圧縮機の入口案内翼の許容最小開度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る一実施形態における制御量に対する、リターン流量調節弁の弁開度と吸気燃料調節器の入口案内翼の開度の関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る一実施形態における、設定カロリーの値毎の、ガスタービン出力と空気圧縮機の入口案内翼の開度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る一実施形態における、コークスプラントに異常が発生した際のコークスプラントから出るCOG流量の時間変化、燃料ガスの単位カロリーの時間変化、ガスタービン出力の時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明に係る一実施形態における、複数のCOG流量調節弁に対する制御量と各COG流量調節弁の弁開度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るガスタービンプラントの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
本実施形態のガスタービンプラントは、図1に示すように、ガスタービン10と、このガスタービン10の出力等を制御する制御装置100と、を備えている。
【0038】
ガスタービン10は、図2に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機11と、燃料ガスに圧縮空気を混合して燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器14と、燃焼ガスにより駆動するタービン21と、を備えている。
【0039】
空気圧縮機11は、圧縮機ロータ12と、これを回転可能に覆う圧縮機ケーシング13と、外気の吸気量を調節するために開度を変えることができる入口案内翼16と、この入口案内翼16の開度を変える案内翼駆動装置17と、を有している。なお、本実施形態では、入口案内翼16と案内翼駆動装置17とで、吸気量調節器15を構成している。
【0040】
燃焼器14は、燃料ガス及び空気圧縮機11からの圧縮空気を受け入れてこれらを噴出する燃料供給器18と、燃料供給器18から燃料ガス及び圧縮空気が内部に噴射されて、燃料ガスの燃焼領域を形成する燃焼筒19と、を有している。燃料供給器18には、例えば、特開平09−221686号公報等に記載されているものように、燃料ガスの噴出口及び圧縮空気の噴出口のそれぞれにスワラが設けられている。燃料ガスの噴出口に設けられている燃料用スワラと圧縮空気の噴出口に設けられている空気用スワラとは、互い異なる角度で設けられている。このため、燃料噴出口から噴出した燃料ガスの旋回流と空気噴出口から噴出した圧縮空気の旋回流との角度が異なり、燃料ガスと圧縮空気との混合が促進される。このため、この燃焼器14は、燃料ガスの単位カロリーの比較的大きな変動があっても、この燃料ガスを安定燃焼させることができる。
【0041】
タービン21は、燃焼ガスにより回転するタービンロータ22と、このタービンロータ22を回転可能に覆うタービンケーシング23とを有している。空気圧縮機11の圧縮機ロータ12は、タービンロータ22と接続され、このタービンロータ22と一体回転する。
【0042】
ガスタービンプラントは、さらに、図1に示すように、ガスタービン10の回転で発電する発電機25と、ガスタービン10から排気された燃焼ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラー26と、この排熱回収ボイラー26で発生した蒸気で駆動する蒸気タービン27と、蒸気タービン27の駆動で発電する発電機28と、蒸気タービン27から排気された蒸気を水に戻す復水器29と、燃料ガスを圧縮して燃焼器14に送る燃料ガス圧縮機31と、燃焼器14に燃料ガスを供給するための主燃料ガスライン65と、製鉄所40の高炉41からのBFGを主燃料ガスライン65に送るBFGライン45と、コークスプラント50のコークス炉51からのCOGを主燃料ガスライン65に送るCOGライン55と、主燃料ガスライン65中で燃料ガス圧縮機31で加圧された燃料ガスを主燃料ガスライン65中の上流側部分に戻す燃料リターンライン67と、を備えている。なお、以下では、主燃料ガスライン65及び燃料リターンライン67を流れるガスがCOGとBFGとの混合ガスであっても、BFG単味であっても、主燃料ガスライン65を流れるガスを単に燃料ガスと呼ぶことにする。
【0043】
BFGの単位重量あたりのカロリー(以下、単に単位カロリーとする)は、場合によるがCOGの単位カロリーの1/10程度である。このため、低カロリー燃料ガスとしてのBFGは、高カロリー燃料ガスとしてのCOGよりも低コストである。
【0044】
ガスタービン10に接続されている発電機25には、ガスタービン10の出力としての発電量を検知する出力計24が取り付けられている。蒸気タービン27には、前述したように、蒸気タービン27の駆動で発電する発電機28が接続されている。なお、ここでは、ガスタービン10及び蒸気タービン27のそれぞれが異なる発電機25,28を駆動するが、ガスタービン10及び蒸気タービン27で共通の発電機を駆動するようにしてもよい。この場合、この共通の発電機による発電量がガスタービン10の出力として扱われる。
【0045】
燃料ガス圧縮機31は、空気圧縮機11と同様、圧縮機ロータと、これを回転可能に覆う圧縮機ケーシングと、燃料ガスの吸気量を調節するために吸気燃料量調節器35と、を有している。吸気燃料量調節器35は、圧縮機ケーシングの入口に設けられ、開度を変えることができる入口案内翼36と、この入口案内翼36の開度を変える案内翼駆動装置37と、を有している。また、本実施形態において、燃料ガス圧縮機31は、図示しない減速装置を介して空気圧縮機11によって駆動される。
【0046】
主燃料ガスライン65には、この主燃料ガスライン65を通る燃料ガスの単位カロリーを検知するカロリー計66が設けられている。燃料リターンライン67には、ここを流れる燃料ガスの流量を調節するリターン流量調節弁68が設けられている。なお、本実施形態では、燃料ガス圧縮機31の吸気燃料量調節器35とリターン流量調節弁68とで燃料流量調節器39を構成している。また、COGライン55は、途中で2ライン55a,55bに分岐しており、各ライン55a,55bに、ここを流れるCOGの流量を調節するCOG流量調節弁56(56a,56b)が設けられている。
【0047】
コークスプラント50は、コークス及びCOGを生成するコークス炉51と、コークス炉51からのCOGをガスタービンプラントへ送るためのCOG送風ファン52と、これらを制御する制御装置53と、を備えている。コークスプラント50の制御装置53は、コークス炉51やCOG送風ファン52が異常状態になると、異常信号をガスタービンプラントの制御装置100に送る。
【0048】
ガスタービンプラントの制御装置100は、図3に示すように、ガスタービン10の目標出力を外部から受け付ける目標出力受付部101と、燃焼器14に供給する燃料ガスの単位カロリーの設定値である設定カロリーの値を外部から受け付ける設定カロリー受付部102と、出力計24からのガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付部103と、カロリー計66からの燃料ガスの単位カロリーを受け付ける検知カロリー受付部104と、コークスプラント50の異常時における燃料ガスの予め定められたカロリーの値を出力する異常時カロリー出力部105と、コークスプラント50から異常信号を受け付けたか否かに応じて、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値と異常時カロリー出力部105からのカロリーの値とのうち一方を出力するカロリー切替部106と、燃料流量調節器39の制御量を算出する第一制御量算出部110と、空気圧縮機11の吸気量調節器15の制御量を算出する第二制御量算出部120と、各COG流量調節弁56の制御量を算出する第三制御量算出部130と、を有している。
【0049】
設定カロリー受付部102は、外部から受け付けた設定カロリーの値を記憶しておく記憶部102aを有している。また、目標出力受付部101も、外部から受け付けた目標出力を記憶しておく記憶部101aを有している。なお、前述したように、ガスタービン10及び蒸気タービン27で共通の発電機を駆動する場合、目標出力は、この共通の発電機による発電量の目標値がガスタービン10の目標出力として扱われる。
【0050】
カロリー切替部106は、コークスプラント50から異常信号を受け付けていないときには、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値を出力し、異常信号を受け付けたときには、異常時カロリー出力部105からのカロリーの値を設定カロリーの値として出力する。
【0051】
第一制御量算出部110は、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値に対応したガスタービン10の許容最大出力を求める許容出力演算部111と、目標出力受付部101が受け付けた目標出力と許容出力演算部111が求めた許容最大出力とを比較し、目標出力が許容最大出力未満のときには目標出力を出力し、目標出力が許容最大出力以上のときには許容最大出力を目標出力として出力する比較部112と、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力と比較部112が出力した目標出力との偏差に応じた燃料流量調節器39の制御量を求める制御量演算部113と、コークスプラント50の異常時における燃料流量調節器39の予め定めた制御量を出力する異常時制御量出力部116と、コークスプラント50から異常信号を受け付けたか否かに応じて、制御量演算部113が求めた制御量と異常時制御量出力部116からの制御量とのうち一方を出力する制御量切替部117と、制御量切替部117から出力された制御量を示す制御信号を燃料流量調節器39に出力する第一出力部118と、を有している。
【0052】
許容出力演算部111は、設定カロリーの値とガスタービン10の許容最大出力との関係を記憶しており、この関係を用いて、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値に対応したガスタービン10の許容最大出力を求める。
【0053】
許容出力演算部111が用いる関係は、図4に示すように、設定カロリーの値が高くなるに伴って、ガスタービン10の許容最大出力が大きくなる関係、言い換えると、設定カロリーの値が低くなるに伴って、許容最大出力が小さくなる関係である。
【0054】
燃料ガスの単位カロリーが低くなると、ガスタービン10の出力を一定に保つために、燃焼器14に送る燃料ガスの流量が多くなり、燃焼器14内の圧力及びタービン21の入口圧力が高まる。このため、空気圧縮機11は、高圧の燃焼器14内に空気を送ることになり、サージングの可能性が高まる。すなわち、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、空気圧縮機11のサージングの可能性が高まり、ガスタービン10の許容最大出力は小さくなる。このため、本実施形態では、許容出力演算部111が用いる関係として、前述したように、設定カロリーの値が低くなるに伴って、許容最大出力が小さくなる関係を用いている。
【0055】
制御量演算部113は、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力と比較部112が出力した目標出力との偏差を求める減算器114と、この偏差に対する比例及び積分制御量を求めるPI制御量演算器115と、を有している。なお、ここでは、制御量演算部113は、偏差に対する比例及び積分制御量を出力するが、この代わりに、偏差に対する比例、積分及び微分制御量を出力するようにしてもよい。
【0056】
コークスプラント50のCOG送風ファン52が停止する等、コークスプラント50に異常が発生した場合、コークスプラント50からCOGが送られてこなくなり、燃料ガスの単位カロリーが低くなる。また、前述したように、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、ガスタービン10の許容最大出力は小さくなる。このため、異常時制御量出力部116から出力される燃料流量調節器39の制御量は、コークスプラント50が正常で、燃料ガス中にCOGが含まれ、燃料ガスの単位カロリーが高い場合と比べて、燃焼器14に送る燃料ガスの流量を少なくする制御量である。
【0057】
この異常時制御量出力部116は、このような制御量を予め定められている値として記憶しておき、これを出力する。但し、異常時制御量出力部116が出力する制御量は、予め定められている値でなくてもよい。この場合、具体的に、異常時制御量出力部116は、図3に示すように、コークスプラント50の異常時におけるガスタービン10の予め定められている目標出力である異常時目標出力を出力する異常時目標出力部116aと、この異常時目標出力とガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力との偏差を求める減算器116bと、を有して構成してもよい。なお、この場合、この異常時制御量出力部116は、前述の制御量演算部113と同様、減算器116bが求めた偏差に対する比例及び積分制御量を求めるPI制御量演算器を有していてもよい。
【0058】
制御量切替部117は、コークスプラント50から異常信号を受け付けていないときには、制御量演算部113が求めた制御量を出力し、異常信号を受け付けたときには、異常時制御量出力部116からの制御量を出力する。
【0059】
第一出力部118は、前述したように、制御量切替部117からの制御量を示す制御信号を燃料流量調節器39に出力する。この燃料流量調節器39は、前述したように、燃料ガス圧縮機31の吸気燃料量調節器35とリターン流量調節弁68とで構成されている。燃料ガス圧縮機31の吸気燃料量調節器35は、図5に示すように、この制御信号が示す制御量を、この制御量が大きいほど吸気燃料量調節器35の入口案内翼36の開度を大きくすると解釈する。また、リターン流量調節弁68は、この制御信号が示す制御量を、この制御量が大きいほど自身の開度を小さくすると解釈する。このため、第一出力部118からの制御量が大きい場合には、燃料ガス圧縮機31の入口案内翼36の開度が大きくなり、リターン流量調節弁68の弁開度が小さくなって、燃焼器14に送られる燃料ガスの流量は多くなる。逆に、第一出力部118からの制御量が小さい場合には、燃料ガス圧縮機31の入口案内翼36の開度が小さくなり、リターン流量調節弁68の弁開度が大きくなって、燃焼器14に送られる燃料ガスの流量は少なくなる。
【0060】
このように、燃料ガス圧縮機31の入口案内翼36の開度及びリターン流量調節弁68の弁開度を変化させて、燃焼器14に送る燃料ガスの流量を調節しているのは、第一出力部118からの制御量の変化に対して、燃焼器14に送る燃料ガスの流量変化の応答性を高めるためである。
【0061】
第二制御量算出部120は、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力とカロリー切替部106からの設定カロリーの値とに対応した空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の制御量である開度を求める制御量演算部125と、制御量演算部125が求めた入口案内翼16の開度を示す制御信号を空気圧縮機11の案内翼駆動装置17に出力する第二出力部128と、を有している。
【0062】
第二制御量算出部120の制御量演算部125は、図6に示すように、燃料ガスの設定カロリーの値毎の、ガスタービン出力と空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の開度との関係を記憶している。制御量演算部125は、この関係を用いて、カロリー切替部106からの設定カロリーの値とガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力とに対応した空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。
【0063】
ガスタービン出力と入口案内翼16の開度との関係は、設定カロリーの値がいずれの場合も、ガスタービン出力が設定カロリーの値毎の第一の値以上で且つ第二の値(>第一の値)未満の間で、ガスタービン出力が大きくなるに伴って、入口案内翼16の開度を大きくする関係である。また、設定カロリーの値がいずれの場合も、ガスタービン出力が第一の値未満では、入口案内翼16の開度が0であり、ガスタービン出力が第二の値以上では、入口案内翼16の開度がその設定カロリーの値における最大開度である。
【0064】
また、ガスタービン出力と入口案内翼16の開度との関係は、設定カロリーの値が低くなるに伴って、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度が大きくなるよう設定されている。具体的に、入口案内翼16が開き始めるガスタービン出力、つまり、ガスタービン出力の第一の値は、設定カロリーの値が低くなるに伴って小さくなっている。また、ガスタービン出力が第一の値以上で第二の値未満でのガスタービン出力の増大に伴う入口案内翼16の開度の増大の割合は、設定カロリーの値が低くなるに伴って大きくなっている。さらに、ガスタービン出力が第二の値以上の入口案内翼16の開度、つまり、その設定カロリーの値における最大開度も、設定カロリーの値が低くなるに伴って大きくなっている。
【0065】
前述したように、燃料ガスの単位カロリーが低くなると、ガスタービン出力を一定に保つために、燃焼器14に送る燃料ガスの流量が多くなり、燃焼器14内の圧力及びタービン21の入口圧力が高まる。このため、空気圧縮機11は、高圧の燃焼器14内に空気を送ることになり、サージングの可能性が高まる。すなわち、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、空気圧縮機11のサージングの可能性が高まる。また、空気圧縮機11は、入口案内翼16の開度が小さくなるに伴って、サージングの可能性が高まり、許容最小開度が大きくなる。よって、図4に示すように、燃料ガスの単位カロリーが低くなるに伴って、空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の許容最小開度が大きくなる。このため、本実施形態では、制御量演算部125が用いる関係として、設定カロリーの値が低くなるに伴って、空気圧縮機11における入口案内翼16の許容最小開度が大きくなる関係を用いている。
【0066】
第三制御量算出部130は、検知カロリー受付部104が受け付けた燃料ガスの単位カロリーとカロリー切替部106からの設定カロリーの値とに応じたCOG流量調節弁56の制御量を求める制御量演算部131と、この制御量に対する2台のCOG流量調節弁56a,56b毎の弁開度を定める弁開度設定部135と、この弁開度設定部135が定めた2台のCOG流量調節弁56a,56b毎の弁開度を対応するCOG流量調節弁56a,56bに出力する第三出力部138と、を有している。
【0067】
第三制御量算出部130の制御量演算部131は、検知カロリー受付部104が受け付けた燃料ガスの単位カロリーとカロリー切替部106からの設定カロリーの値との偏差を求める減算器132と、この偏差に対する比例及び積分制御量を求めるPI制御量演算器133と、を有している。なお、ここでは、PI制御量演算器133は、偏差に対する比例及び積分制御量を出力するが、この代わりに、偏差に対する比例、積分及び微分制御量を出力するようにしてもよい。
【0068】
弁開度設定部135は、図8に示すように、COG流量調節弁56の制御量と、この制御量に対する2台のCOG流量調節弁56(56a,56b)のそれぞれの弁開度との関係が設定されている。具体的に、この弁開度設定部135には、例えば、制御量演算部131からの制御量が所定値(例えば40%)Cまでは、2台のCOG流量調節弁56a,56bのうちの第一COG流量調節弁56aの弁開度Vaとして、この制御量に比例した弁開度が設定されている。また、弁開度設定部135には、制御量が前述の所定値Cまでは、2台のCOG流量調節弁56a,56bのうちの第二COG流量調節弁56bの弁開度Vbとして、0、つまり全閉が設定されている。また、弁開度設定部135には、制御量が所定値Cになると、第一COG流量調節弁56aの弁開度Vaとして、所定のレートで小さくなる弁開度が設定され、第二COG流量調節弁56bの弁開度Vbとして、所定のレートで大きくなる弁開度が設定されている。そして、第一及び第二COG流量調節弁56a,56bの弁開度が同一の弁開度になると、これらの弁開度Va,Vbとして、両流量調節弁56a,56bに関して同一であって、制御量の増加に伴って大きくなる弁開度が設定されている。
【0069】
すなわち、本実施形態では、COGの流量が比較的小さい場合(制御量が比較的小さい場合)は第一COG流量調節弁56aの1台のみを稼働対象とし、COGの流量が比較的大きい場合(制御量が比較的大きい場合)は第一及び第二COG流量調節弁56a,56bの両方を稼働対象とする。
【0070】
なお、図8では、弁開度の変化を理解しやすくするために、COG流量調節弁56の稼動台数が切り替わる時は、弁開度が急激に変化するように示されている。しかしながら、実際には、前述したように、各COG流量調節弁56の弁開度は、稼働台数が切り替わる時、所定のレートで変化するので、COG流量が急激に変化することはない。
【0071】
ここで、本実施形態において、設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識部は、設定カロリー受付部102と異常時カロリー出力部105とカロリー切替部106とを有して構成されている。
【0072】
また、以上で説明した本実施形態の制御装置100は、コンピュータで構成されており、制御装置100の各部の処理は、いずれも、ハードディスクドライブ装置等の外部記憶装置やメモリ等の記憶装置と、この記憶装置に記憶されているプログラムを実行するCPUとを有して構成されている。
【0073】
次に、以上で説明したガスタービンプラントの動作について説明する。
【0074】
まず、コークス炉51から所定流量以上のCOGが供給されることを前提として、オペレータがガスタービン10の目標出力として比較的高い目標出力を目標出力受付部101に入力し、設定カロリーの値として比較的高い値を設定カロリー受付部102に入力した場合について説明する。
【0075】
目標出力受付部101は、外部からガスタービン10の目標出力を一旦受け付けると、この目標出力を記憶部101aに記憶して、新たに目標出力を受け付けない限り、この記憶部101aに記憶した目標出力を出力し続ける。また、設定カロリー受付部102も、外部から設定カロリーの値を一旦受け付けると、この値を記憶部102aに記憶して、新たに設定カロリーの値を受け付けない限り、この記憶部102aに記憶した値を出力し続ける。
【0076】
第一制御量算出部110の許容出力演算部111は、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値に対応したガスタービン10の許容最大出力を求める。比較部112は、目標出力受付部101が受け付けた目標出力と許容出力演算部111が求めた許容最大出力とを比較し、目標出力が許容最大出力未満のときにはこの目標出力を出力し、目標出力が許容最大出力以上のときには許容最大出力を目標出力として出力する。
【0077】
この場合、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値が前述したように比較的高い値であるため、許容出力演算部111は、比較的高い許容最大出力を出力する。このため、許容出力演算部111から出力された許容最大出力に対して、目標出力受付部101が受け付けた目標出力の方が基本的に小さい値である。よって、比較部112は、目標出力受付部101が受け付けた目標出力をそのまま目標出力として出力する。
【0078】
減算器114は、比較部112から出力された目標出力と、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力との偏差を求める。PI制御量演算器115は、この偏差に対する比例及び積分制御量を求める。制御量切替部117は、コークスプラント50から異常信号を受け付けていなければ、このPI制御量演算器115が求めた制御量を出力する。第一出力部118は、この制御量を示す制御信号を燃料流量調節器39に出力する。
【0079】
この場合、目標出力が大きい関係で、PI制御量演算器115が求めた制御量は、燃焼器14に送る燃料ガスの流量が比較的多いことを示す制御量である。このため、この制御量を示す制御信号を受け付けた燃料流量調節器39のうち、燃料ガス圧縮機31の吸気燃料量調節器35における入口案内翼16の開度は、比較的大きな開度になり、リターン流量調節弁68の弁開度は0又は0に近い弁開度になる。
【0080】
第二制御量算出部120の制御量演算部125は、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力とカロリー切替部106からの設定カロリーの値とに対応した空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。ここで、カロリー切替部106は、コークスプラント50から異常信号を受け付けていなければ、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値を制御量演算部125に出力する。
【0081】
制御量演算部125は、図6に示す、設定カロリーの値毎の、ガスタービン出力と空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の開度との関係a,b,cのうちから、カロリー切替部106から出力された設定カロリーの値、つまり、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値に対応した関係aを抽出する。この場合、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値は、比較的高い値であるため、制御量演算部125は、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度が比較的小さくなるよう設定されている関係aを抽出する。
【0082】
制御量演算部125は、この関係を用いて、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力に対応する空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。
【0083】
第二出力部128は、制御量演算部125が求めた空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を示す制御信号を空気圧縮機11の吸気量調節器15に出力する。この結果、吸気量調節器15の入口案内翼16は、制御量演算部125が求めた入口案内翼16の開度になる。
【0084】
第三制御量算出部130における制御量演算部131の減算器132は、検知カロリー受付部104が受け付けた燃料ガスの単位カロリー、つまりカロリー計66で検知された燃料ガスの単位カロリーとカロリー切替部106からの設定カロリーの値との偏差を求める。この場合、カロリー切替部106は、前述したように、コークスプラント50から異常信号を受け付けていなければ、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値を出力するので、減算器132は、カロリー計66で検知された燃料ガスの単位カロリーと設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値との偏差を求める。制御量演算部131のIP制御量演算器133は、この偏差に対する比例及び積分制御量、つまり、COG流量調節弁56の制御量を求める。すなわち、制御量演算部131は、燃料ガスのカロリーの値が設定カロリーの値に維持されるようにフィードバック制御を行う。
【0085】
第三制御量算出部130の弁開度設定部135は、制御量と2台のCOG流量調節弁56(56a,56b)のそれぞれの弁開度との関係を用いて、制御量演算部131が求めた制御量に対する2台のCOG流量調節弁56毎の弁開度を求める。前述したように、制御量演算部131が求めた制御量が所定値までは、2台のCOG流量調節弁56のうちの第一COG流量調節弁56aのみが稼働対象となり、第二COG流量調節弁56bは稼働対象にならない、つまりこの第二COG流量調節弁56bは全閉のままである。一方、制御量演算部131が求めた制御量が所定値より大きくなれば、2台のCOG流量調節弁56a,56bのいずれもが稼動対象になる。ここでは、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値が、所定流量以上のCOG供給を前提とした比較的高い値であることから、制御量演算部131が求めた制御量は比較的大きな値のCOG流量になる制御量となる。このため、この制御量は所定値以上になり、2台のCOG流量調節弁56a,56bのいずれもが稼動対象になる可能性が高い。
【0086】
第三出力部138は、弁開度設定部135が求めた弁開度を示す制御信号を、2台のCOG流量調節弁56a,56bに出力する。この結果、各COG流量調節弁56a,56bは、弁開度設定部135が求めた弁開度になる。
【0087】
次に、オペレータがガスタービン10の目標出力として、前述の場合と同様、比較的高い目標出力を目標出力受付部101に入力し、設定カロリーの値として、前述の場合と異なり、比較的低い値を設定カロリー受付部102に入力した場合について説明する。つまり、前述の場合と同様のガスタービン出力を確保しつつも、COGの消費量を抑える場合について説明する。
【0088】
第一制御量算出部110の許容出力演算部111は、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値が比較的低い値であるため、比較的低い許容最大出力を出力する。比較部112は、前述したように、目標出力受付部101が受け付けた目標出力と許容出力演算部111が求めた許容最大出力とを比較し、目標出力が許容最大出力未満のときには目標出力を出力し、目標出力が許容最大出力以上のときには許容最大出力を目標出力として出力する。この場合、比較的高い目標出力が比較的低い許容最大出力以上である可能性が高く、比較部112は、目標出力として、目標出力受付部101が受け付けた目標出力ではなく、許容出力演算部111が求めた許容最大出力を目標出力として出力する可能性が高い。すなわち、設定カロリー受付部102が受け付ける設定カロリーの値が低い値になるにつれて、比較部112は、目標出力として、目標出力受付部101が受け付けた目標出力ではなく、許容出力演算部111が求めた許容最大出力を目標出力として出力する可能性が高くなる。そこで、ここでは、比較部112が許容最大出力を目標出力として出力したとする。
【0089】
以下、第一制御量算出部110は、前述の場合と同様に、減算器114が、比較部112から出力された目標出力とガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力との偏差を求め、PI制御量演算器115が、この偏差に対する比例及び積分制御量を求める。制御量切替部117は、コークスプラント50から異常信号を受け付けていなければ、このPI制御量演算器115が求めた制御量を出力する。第一出力部118は、この制御量を示す制御信号を燃料流量調節器39に出力する。
【0090】
図4を用いて前述したように、設定カロリーの値が低くなれば、ガスタービン10の許容最大出力は低下し、この許容最大出力よりも高い出力でガスタービン10を運転しようとすると、空気圧縮機11がサージングする可能性が極めて高くなる。これに対して、本実施形態では、設定カロリーの値が低くなれば、許容最大出力を目標出力としてフィードバック制御するため、空気圧縮機11のサージング発生を抑えることができる。しかも、本実施形態では、ガスタービン出力が、目標出力受付部101が受け付けた目標出力よりも低い出力になるものの、この目標出力に近い出力を確保することができる。
【0091】
第二制御量算出部120の制御量演算部125は、前述の場合と同様、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力とカロリー切替部106からの設定カロリーの値とに対応した空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。この際、制御量演算部125は、図6に示す、設定カロリーの値毎の、ガスタービン出力と空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の開度との関係a,b,cのうちから、カロリー切替部106から出力された設定カロリーの値、つまり、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値に対応した関係を抽出する。この場合、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値は、比較的低い値であるため、制御量演算部125は、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度が比較的大きくなるよう設定されている関係b又はcを抽出する。そして、制御量演算部125は、この関係b又はcを用いて、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力に対応する空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。
【0092】
そして、第二出力部128は、制御量演算部125が求めた空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を示す制御信号を空気圧縮機11の吸気量調節器15に出力する。
【0093】
図4を用いて前述したように、設定カロリーの値が低くなれば、空気圧縮機11における入口案内翼16の許容最小開度は大きくなり、この許容最小開度よりも小さな開度で空気圧縮機11を運転しようとすると、この空気圧縮機11がサージングする可能性が極めて高くなる。これに対して、本実施形態では、設定カロリーの値が小さくなれば、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度が比較的大きくなるよう設定されている関係を用いて、入口案内翼16の開度を求め、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度を比較的大きくしているため、空気圧縮機11のサージング発生を抑えることができる。
【0094】
第三制御量算出部130の制御量演算部131は、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値とカロリー計66で検知された燃料ガスの単位カロリーとの偏差を用いて、この偏差が無くなるCOG流量調節弁56の制御量を求める。この場合、設定カロリー受付部102が受け付けた設定カロリーの値は比較的低い値であるため、制御量演算部131は、COG流量調節弁56の制御量として比較的小さい値のCOG流量になる制御量を求める。
【0095】
第三制御量算出部130の弁開度設定部135は、前述したように、制御量演算部131が求めた制御量に対する2台のCOG流量調節弁56それぞれの弁開度を求める。前述したように、制御量演算部131が求めた制御量が比較的小さい値のCOG流量になる制御量である場合は、第一COG流量調節弁56aの1台のみみが稼働対象となり、この制御量が比較的大きい値のCOG流量になる制御量である場合は、第一及び第二COG流量調節弁56a,56bの2台が稼動対象になる。ここでは、制御量演算部131は比較的小さい値のCOG流量になる制御量を求めることから、第一COG流量調節弁56aの1台のみが稼働対象になる可能性が高い。
【0096】
第三出力部138は、弁開度設定部135が求めた弁開度を示す制御信号を、2台のCOG流量調節弁56a,56bに出力する。この結果、各COG流量調節弁56a,56bは、弁開度設定部135が求めた弁開度になる。
【0097】
流量調節弁は、基本的に、弁開度が大きいときに弁を流れる流体の流量精度に対して、弁開度が小さいときに弁を流れる流体の流量精度の方が悪い傾向にある。本実施形態では、COGの流量が小さいときには、2台のCOG流量調節弁56a,56bのうち、第一COG流量調節弁56aのみを稼動し、残りの1台である第二COG流量調節弁56bを全閉とするため、1台のCOG流量調節弁56aを流れるCOGの流量が比較的大きくなり、COG流量を高精度で制御することができる。
【0098】
なお、2台のCOG流量調節弁56a,56bを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、3台以上のCOG流量調節弁を用いてもよい。この場合、COG流量調節弁の制御量に関する所定値として、COG流量調節弁の台数nから1を引いた値(n−1)分の所定値を設定する。具体的に、例えば、COG流量調節弁の台数が4台の場合、3つの所定値を設定する。そして、制御量が最も小さい第一所定値までの場合は、1台のCOG流量調節弁を稼働対象とし、制御量が第一所定値から次に小さい第二所定値までの場合は、2台のCOG流量調節弁を稼働対象とする。さらに、制御量が第二所定値から次に小さい第三所定値までの場合は、3台のCOG流量調節弁を稼働対象とし、制御量が第三所定値より多き場合は、4台のCOG流量調節弁の全てを稼働対象にする。
【0099】
以上のように、本実施形態では、設定カロリーの値が比較的低い値になっても、COG流量を高精度で制御できる。よって、本実施形態では、設定カロリーの値が比較的低い値になっても、燃料ガスの単位カロリーを高精度で制御することができる。
【0100】
また、本実施形態では、設定カロリーの値が比較的低い値になっても、空気圧縮機11のサージング発生を抑えることができる。よって、本実施形態では、コストの高い高カロリー燃料ガスであるCOGの使用量を少なくしても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0101】
次に、オペレータがガスタービン10の目標出力として、最初の場合と同様、比較的高い目標出力を目標出力受付部101に入力し、設定カロリーの値として比較的高い値を設定カロリー受付部102に入力し、そのときに、コークスプラント50から異常信号が出力された場合について説明する。
【0102】
コークスプラント50のCOG送風ファン52が停止する等の異常があった場合、図7に示すように、コークスプラント50から出るCOG流量は、瞬時に少なくなる、又は瞬時に0になる。また、コークスプラント50からのCOGは、ガスタービンプラントの燃焼器14に至るまでに、比較的長い配管中を流れることになるため、燃焼器14に流入するCOG流量は、コークスプラント50に異常が発生してから遅れを持って、比較的急激に少なくなる。このため、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーも、コークスプラント50に異常が発生してから遅れを持って、比較的急激に低下する。
【0103】
第一制御量算出部110の制御量切替部117は、コークスプラント50から異常信号を受け付けると、異常時制御量出力部116からの制御量を出力する。そして、第一出力部118は、この制御量を示す制御信号を燃料流量調節器39に出力する。
【0104】
ところで、コークスプラント50に異常が発生すると、図7を用いて前述したように、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが異常発生から遅れを持って、比較的急激に低下する。また、燃料ガスの単位カロリーが低下すると、ガスタービン10の許容最大出力も低下する。このため、異常時制御量出力部116に記憶されている異常時の制御量は、コークスプラント50の異常で想定される燃料ガスの低い単位カロリーに対応したガスタービン10の許容最大出力を目標とする制御量である。
【0105】
本実施形態では、コークスプラント50から異常信号が出力されると、ガスタービン出力と目標出力との偏差に基づくフィードバック制御から、前述したように、異常時制御量出力部116が予め記憶している異常時の制御量、つまり、低い単位カロリーに対応した小さい許容最大出力を目標とする制御量の出力制御に切り替わる。このため、コークスプラント50から異常信号が出力されると、図7に示すように、コークスプラント50の異常に伴って、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力が急低下する。
【0106】
なお、異常時制御量出力部116が異常時目標出力部116aと減算器116bと、を有して構成している場合、異常時目標出力部116aは、コークスプラント50の異常で想定される燃料ガスの低い単位カロリーに対応したガスタービン10の許容最大出力を異常時目標出力として出力する。減算器116bは、この異常時目標出力とガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力との偏差を求め、この偏差を燃料流量調節器39の制御量として出力する。異常時目標出力は、前述したように、コークスプラント50の異常で想定される燃料ガスの低い単位カロリーに対応したガスタービン10の許容最大出力であるから、異常時制御量出力部116が異常時目標出力部116aと減算器116bとを有して構成している場合でも、前述の場合と同様、コークスプラント50から異常信号が出力されると、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力が急低下する。
【0107】
以上のように、本実施形態では、コークスプラント50の異常に伴って、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力を急低下させているので、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが低下した結果、ガスタービン出力が低下する場合に比べて、ガスタービンプラントを安定運転することができる。しかも、本実施形態では、コークスプラント50の異常時に想定されるガスタービン10の許容最大出力を目標とする制御量を出力するため、コークスプラントの異常時におけるガスタービン出力の低下を最小限に抑えることができる。
【0108】
カロリー切替部106は、コークスプラント50からの異常信号を受け付けると、異常時カロリー出力部105からの設定カロリーの値を第二制御量算出部120に出力する。異常時カロリー出力部105に記憶されている異常時の設定カロリーの値は、コークスプラント50の異常時に想定される燃料ガスの低い単位カロリーの値である。
【0109】
このため、第二制御量算出部120の制御量演算部125は、図6に示す、設定カロリーの値毎の、ガスタービン出力と空気圧縮機11の入口案内翼16(IGV)の開度との関係a,b,cのうちから、カロリー切替部106から出力された設定カロリーの値、つまり、設定カロリーの値が比較的低い値の関係cを抽出する。そして、制御量演算部125は、この関係cを用いて、ガスタービン出力受付部103が受け付けたガスタービン出力に対応する空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を求める。
【0110】
第二出力部128は、制御量演算部125が求めた空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を示す制御信号を空気圧縮機11の吸気量調節器15に出力する。
【0111】
図4を用いて前述したように、燃料ガスの単位カロリーが低くなれば、空気圧縮機11における入口案内翼16の許容最小開度は大きくなり、この許容最小開度よりも小さな開度で空気圧縮機11を運転しようとすると、この空気圧縮機11がサージングする可能性が極めて高くなる。これに対して、本実施形態では、コークスプラント50の異常に伴って、燃焼器14に流入する燃料ガスの単位カロリーが低下する前に、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度が比較的大きくなるよう設定されている関係を用いて、入口案内翼16の開度を求め、ガスタービン出力に対する入口案内翼16の開度を比較的大きくしているため、空気圧縮機11のサージング発生を抑えることができる。
【0112】
第三制御量算出部130の制御量演算部131は、カロリー切替部106からの設定カロリーの値とカロリー計66で検知された燃料ガスの単位カロリーとの偏差を用いて、この偏差が無くなるCOG流量調節弁56の制御量を求める。カロリー切替部106から出力される設定カロリーの値は、コークスプラント50から異常信号が出力された場合、前述したように、異常時カロリー出力部105から出力された設定カロリーの値、つまり、コークスプラント50の異常時に想定される燃料ガスの低い単位カロリーの値である。この場合、異常時カロリー出力部105から出力された設定カロリーの値は比較的低い値であるため、制御量演算部131は、COG流量調節弁56の制御量として比較的小さい値のCOG流量になる制御量を求める。
【0113】
第三制御量算出部130の弁開度設定部135は、前述したように、制御量演算部131が求めた制御量に対する2台のCOG流量調節弁56a,56b毎の弁開度を求める。第三出力部138は、弁開度設定部135が求めた弁開度を示す制御信号を、2台のCOG流量調節弁56a,56bに出力する。この結果、各COG流量調節弁56a,56bは、弁開度設定部135が求めた弁開度になる。この場合、制御量演算部131は比較的小さい値のCOG流量になる制御量を求めることから、第一COG流量調節弁56aの1台のみが稼働対象になり、第二COG流量調節弁56bの弁開度は0、つまり第二COG流量調節弁56bは全閉状態になる。
【0114】
以上、本実施形態では、経済性の観点から、オペレータ等の意思により、高カロリー燃料ガスであるCOGガスの使用量を少なくすることができる。しかも、本実施形態では、高カロリー燃料ガスの使用量を少なくしても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0115】
さらに、本実施形態では、高カロリー燃料ガスの発生元であるコークスプラント50に異常が発生しても、ガスタービンプラントを安定運転することができる。
【0116】
なお、異常時カロリー出力部105や異常時制御量出力部116が記憶している異常時の値は、高カロリー燃料ガスの発生元の一つの異常形態に対応した値のみでもよいが、高カロリー燃料ガスの発生元の複数の異常形態のそれぞれに対応した値であってもよい。この場合、異常時カロリー出力部105や異常時制御量出力部116は、高カロリー燃料ガスの発生元からの異常信号が示す異常形態に応じた異常時の値を出力することになる。
【0117】
また、以上で説明した実施形態は、高カロリー燃料ガスとしてCOGを用い、低カロリー燃料ガスとしてBFGを用いる例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、高カロリー燃料ガスや低カロリー燃料ガスとして他のガスを用いてもよい。
【符号の説明】
【0118】
10…ガスタービン、11:空気圧縮機、14:燃焼器、15:吸気量調節器、16:入口案内翼、21:タービン、24:出力計、25:発電機、31:燃料ガス圧縮機、35:吸気燃料量調節器、39:燃料流量調節器、40:製鉄所、41:高炉、45:BFGライン、50:コークスプラント、51:コークス炉、52:COG送風ファン、55:COGライン、56:COG流量調節弁、65:主燃料ガスライン、66:カロリー計、100:制御装置、101:目標出力受付部、102:設定カロリー受付部、103:ガスタービン出力受付部、104:検知カロリー受付部、105:異常時カロリー出力部、106:カロリー切替部、110:第一制御量算出部、111:許容出力演算部、112:比較部、113:(第一制御量算出部の)制御量演算部、116:異常時制御量出力部、116a:異常時目標出力部、116b:減算器116b、117:制御量切替部、118:第一出力部、120:第二制御量算出部、125:(第二制御量算出部の)制御量演算部、128:第二出力部、130:第三制御量算出部、131:(第三制御量算出部の)制御量演算部、132:減算器、133:PI制御量演算器、135:弁開度設定部、138:第三出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機と、該圧縮空気に燃料ガスを混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備え、
前記空気圧縮機は、開度が変化して前記外気の吸込量を調節する吸気量調節器を有し、
低カロリー燃料ガスと、該低カロリー燃料ガスよりも単位重量当たりのカロリー値の高い高カロリー燃料ガスとが混合したガスを前記燃料ガスとして前記燃焼器に導入するガスタービンプラントの制御装置において、
前記燃料ガスの単位重量当たりのカロリーに関する設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識部と、
ガスタービンの出力であるガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付部と、
前記設定カロリーの値毎の、前記吸気量調節器の開度と前記ガスタービン出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識部が認識した前記設定カロリーの値と前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記ガスタービンの出力とに応じた前記吸気量調節器の開度を求める開度演算部と、
前記開度演算部が求めた前記開度を前記吸気量調節器に出力する出力部と、
を有することを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記関係は、前記設定カロリーの値が低いほど、前記ガスタービン出力に対する前記吸気量調節器の開度が大きく設定された関係である、
ことを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記設定カロリー認識部は、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けると、該高カロリー燃料ガスの比率が小さい又は該高カロリー燃料ガスを含まないガスを前記燃料ガスとし、該異常信号に対して、予め定められている該燃料ガスに関するカロリーの値を前記設定カロリーの値として認識する、
ことを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、
前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付部と、
前記目標出力受付部が受け付けた前記目標出力と、前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算部と、
前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常時における、前記燃料流量調節器の制御量を出力する異常時制御量出力部と、
前記高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けていないときには、前記制御量演算部が求めた前記制御量を出力し、前記異常信号を受け付けたときには、前記異常時制御量出力部からの前記制御量を出力する切替部と、
前記切替部から出力された制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力部と、
を有することを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記異常時制御量出力部は、前記高カロリー燃料供給元の異常時における前記ガスタービンの予め定められている目標出力である異常時目標出力と、前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の前記制御量を出力する、
ことを特徴とするガスタービンの制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、
前記設定カロリーの値とガスタービンの許容最大出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識部が認識した前記設定カロリーの値に対する該ガスタービンの許容最大出力を求める許容出力演算部と、
前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付部と、
前記目標出力受付部が受け付けた前記目標出力と前記許容出力演算部が求めた前記許容最大出力とを比較し、該目標出力が該許容最大出力未満のときには該目標出力を出力し、該目標出力が該許容最大出力以上のときには該許容最大出力を目標出力として出力する比較部と、
前記ガスタービン出力受付部が受け付けた前記ガスタービン出力と前記比較部が出力した前記目標出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算部と、
前記制御量演算部が求めた前記制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力部と、
を有することを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記ガスタービンプラントは、前記高カロリー燃料ガスのみが流れる高カロリー燃料ラインと、該高カロリー燃料ラインに並列配置された複数の高カロリー燃料流量調節弁と、を備え、
前記複数の高カロリー燃料流量調節弁に対する制御量を求める制御量演算部と、
前記制御量に応じて、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁毎の弁開度を定める弁開度設定部と、
前記複数の高カロリー燃料流量調節弁のそれぞれに対して、前記弁開度設定部が定めた前記弁開度を出力する出力部と、
を有することを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記弁開度設定部は、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁に対する前記制御量が所定値以下では、1台の前記高カロリー燃料流量調節弁のみを稼働させ、該制御量が所定値より大きければ、前記複数の高カロリー燃料流量調節弁を稼働させるよう、該複数の高カロリー燃料流量調節弁毎の弁開度を定める、
ことを特徴とするガスタービンプラントの制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置を備えていることを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項10】
外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機と、該圧縮空気に燃料ガスを混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備え、
前記空気圧縮機は、開度が変化して前記外気の吸込量を調節する吸気量調節器を有し、
低カロリー燃料ガスと、該低カロリー燃料ガスよりも単位重量当たりのカロリー値の高い高カロリー燃料ガスとが混合したガスを前記燃料ガスとして前記燃焼器に導入するガスタービンプラントの制御方法において、
前記燃料ガスの単位重量当たりのカロリーに関する設定カロリーの値を認識する設定カロリー認識工程と、
ガスタービンの出力であるガスタービン出力を受け付けるガスタービン出力受付工程と、
前記設定カロリーの値毎の、前記吸気量調節器の開度と前記ガスタービン出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識工程で認識された前記設定カロリーの値と前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記ガスタービン出力とに応じた前記吸気量調節器の開度を求める開度演算工程と、
前記開度演算工程で求められた前記開度を前記吸気量調節器に出力する出力工程と、
を実行することを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記関係は、前記設定カロリーの値が低いほど、前記ガスタービン出力に対する前記吸気量調節器の開度が大きく設定された関係である、
ことを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記設定カロリー認識工程では、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けると、該高カロリー燃料ガスの比率が小さい又は該高カロリー燃料ガスを含まないガスを前記燃料ガスとし、該異常信号に対して、予め定められている該燃料ガスに関するカロリーの値を前記設定カロリーの値として認識する、
ことを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、
前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付工程と、
前記目標出力受付工程で受け付けられた前記目標出力と、前記ガスタービン出力受付工程で受け付けた前記ガスタービン出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算工程と、
前記高カロリー燃料供給元の異常を示す異常信号を受け付けていないときには、前記制御量演算工程で求められた前記制御量を出力し、前記異常信号を受け付けたときには、前記高カロリー燃料ガスの供給元である高カロリー燃料供給元の異常時における、前記燃料流量調節器の制御量を出力する制御量切替工程と、
前記制御量切替工程で出力された制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力工程と、
を実行することを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記高カロリー燃料供給元の異常時における前記ガスタービンの予め定められている目標出力である異常時目標出力と、前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記出力との偏差に応じた異常時制御量を求める異常制御量演算工程を実行し、
前記制御量切替工程では、前記異常信号を受け付けたときには、前記異常制御量演算工程で求められた前記異常時制御量を前記制御量として出力する、
ことを特徴とするガスタービンの制御方法。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記ガスタービンプラントは、前記燃焼器に流入する前記燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節器を備えており、
前記設定カロリーの値と前記ガスタービンの許容最大出力との予め定めた関係を用いて、前記設定カロリー認識工程で認識された前記設定カロリーの値に対する該ガスタービンの許容最大出力を求める許容出力演算工程と、
前記ガスタービンの目標出力を受け付ける目標出力受付工程と、
前記目標出力受付工程で受け付けられた前記目標出力と前記許容出力演算工程で求められた前記許容最大出力とを比較し、該目標出力が該許容最大出力未満のときには該目標出力を出力し、該目標出力が該許容最大出力以上のときには該許容最大出力を目標出力として出力する比較工程と、
前記ガスタービン出力受付工程で受け付けられた前記ガスタービン出力と前記比較工程で出力された前記目標出力との偏差に応じた前記燃料流量調節器の制御量を求める制御量演算工程と、
前記制御量演算工程で求められた前記制御量を前記燃料流量調節器に出力する出力工程と、
を実行することを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60946(P2013−60946A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168536(P2012−168536)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】