説明

ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法

【課題】有機層および無機層を有する積層型のガスバリアフィルムにおいて、ガスバリア性のみならず、生産性にも優れるガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】基板Zの表面に大気中で成膜された第1有機層12を有し、その上に、真空中で成膜された第2有機層14を有し、その上に、真空中で成膜された無機層16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置等に用いられるガスバリアフィルムに関し、詳しくは、基板フィルムに、有機層と無機層とを積層してなるガスバリアフィルムであって、高い生産効率で製造することが可能なガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置、半導体装置、薄膜太陽電池等の各種の装置における防湿性を要求される部位や部品、食品、衣料品、電子部品等の包装に用いられる包装材料に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のプラスチックフィルム(基板フィルム)に、ガスバリア性を発現する膜を成膜してなる、ガスバリアフィルムが利用されている。
このようなガスバリアフィルムに成膜されるガスバリア性を発現する膜としては、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム等の各種の無機物(無機化合物)からなる膜が知られている。
【0003】
また、より高いガスバリア性を得ることを目的として、有機層(有機化合物層)と無機層(無機化合物層)など、複数の膜を積層してなる積層型のガスバリアフィルム(ガスバリア積層体)も知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基板フィルムの表面に、表面の平均粗さが4nm以下のエポキシ化合物からなる樹脂薄膜層を成膜し、この樹脂薄膜層の上に、気相堆積法によって成膜された無機酸化物からなる蒸着層を成膜し、さらに、この蒸着層の上に、同様の樹脂薄膜層を成膜してなるガスバリアフィルムが記載されている。
また、特許文献2には、熱可塑性の基板フィルムの表面に、架橋アクリレート層を成膜し、この架橋アクリレート層の上に、酸化シリコンや酸化アルミニウム等の無機物からなる酸素バリア層を成膜し、さらに、この酸素バリア層の上に、同様の架橋アクリレート層を成膜してなる、ガスバリアフィルムが記載されている。
【0005】
これらのガスバリアフィルムにおいては、基板フィルムの表面に有機層を成膜することにより、基板フィルム表面の微細な凹凸等を相殺して平滑性の高い表面を成膜し、この平滑性の高い表面に、無機酸化物等からなる無機層(ガスバリア膜)を成膜することにより、優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムを実現している。
また、無機層の上に有機層を成膜することにより、主にガスバリア性を発現する無機層の保護を図っている。さらに、有機層および無機層を、複数層を積層することにより、より高いガスバリア性を得ると共に、無機層の応力緩和やガスバリアフィルムの可撓性を確保することも可能である。
【0006】
無機層の成膜は、一般的に、(プラズマ)CVD、スパッタリング、真空蒸着等の気相堆積法(真空成膜法)によって行なわれる。
他方、有機層の成膜には、前記特許文献1や特許文献2にも記載されるように、フラッシュ蒸着法が好適に用いられている。
【0007】
前述のように、有機層は、無機層の成膜面の平滑性を確保するために成膜されるが、フラッシュ蒸着を利用する事により、非常に表面平滑性が高い有機層を成膜できる。
しかも、フラッシュ蒸着は、真空中で成膜を行なう技術であるため、フラッシュ蒸着による有機層の成膜、および、気相堆積法による無機層の成膜、さらに、フラッシュ蒸着による有機層の成膜を、1つの真空チャンバの中で連続的に行なうことができ、かつ、これにより、成膜面へのゴミ等の異物の付着も防止できる。
【0008】
例えば、前記特許文献1や特許文献2には、真空チャンバ内にドラムを配置し、このドラムに巻き掛けて基板フィルムを長手方向に搬送しつつ、ドラムの周面に対向して配置されたフラッシュ蒸着装置、CVD装置(真空蒸着装置)、および、フラッシュ蒸着手段によって、有機層、無機層、および、有機層を、順次、成膜する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−341003号公報
【特許文献2】米国特許第6420003号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、このような有機層および無機層を積層してなるガスバリアフィルムにおいては、一般的に、無機層に比して、有機層の方が厚く成膜される。
すなわち、有機層を、ある程度、厚く成膜しないと、基板フィルム表面の凹凸を相殺して、十分に平滑な面を得ることができない。
【0011】
例えば、特許文献1では、有機層の好ましい範囲として5〜2000nmが、無機層の好ましい範囲として5〜500nmが例示されている。
さらに、特許文献1には、実施例として、基板フィルム(PETフィルム)の表面に、厚さ500nmの有機層(透明エポキシ層)を成膜し、その上に、厚さ100nmの無機層(酸化シリコン層)を成膜してなるガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムにおいて、無機層の上に、さらに、同様の有機層を形してなるガスバリアフィルムが、記載されている。
【0012】
ところが、この膜厚の差が、生産性向上の妨げになってしまう場合が有る。例えば、無機層の膜厚が50nm、成膜速度が500nm/minで、有機層の膜厚が500nmである場合には、無機層の成膜に有機層の成膜が追い付くためには、有機層には、5000nm/minの成膜速度が必要になる。
そのため、特許文献1や特許文献2等に示されるように、長尺な基板フィルムを長手方向に搬送しつつ、連続的に、フラッシュ蒸着法による有機層、および、気相堆積法による無機層(あるいはさらに、同有機層)を成膜して、ガスバリアフィルムを製造する場合には、有機層の成膜が律速となって、基板フィルムの搬送速度を向上できない。
すなわち、従来のフラッシュ蒸着法を利用する有機/無機の積層型のガスバリアフィルムの製造方法においては、表面平滑性が高い成膜面に無機層を成膜することによって、ガスバリア性に優れるガスバリアフィルムを製造可能である反面、有機層の成膜が律速となって、高い生産性(高速生産)をすることができないという問題が有る。
【0013】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、有機層および無機層を積層してなるガスバリアフィルムにおいて、フラッシュ蒸着等からなる表面平滑性や表面清浄性の高い有機層の上に成膜面に無機層を成膜することができ、しかも、製造にあたって、高速で基板フィルムを搬送することができ、高い生産性および良好なガスバリア性を確保することができるガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明のガスバリアフィルムは、大気圧中で成膜された第1有機層と、真空中で成膜された前記第1有機層上の第2有機層と、真空中で成膜された前記第2有機層上の無機層とを有することを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
【0015】
このような本発明のガスバリアフィルムにおいて、前記第1有機層、第2有機層、および無機層の組み合わせを、複数、有するのが好ましく、また、前記無機層の上に、真空中で成膜された第3有機層を有するのが好ましく、また、最上層に、大気圧中で成膜された第4有機層を有するのが好ましい。
また、隣接して成膜される前記第1有機層および第2有機層の膜厚の合計が0.3〜5μmであり、かつ、前記第2有機層の膜厚が、0.5μm以下、もしくは、前記隣接する前記第1有機層と第2有機層との合計膜厚の50%以下であるのが好ましく、また、隣接して成膜される前記第1有機層、第1有機層および第3有機層の膜厚の合計が0.3〜5μmであり、かつ、その内の第2有機層および第3有機層の膜厚が、0.5μm以下、もしくは、前記隣接する第1〜第3有機層の合計膜厚の25%以下であるのが好ましく、また、前記無機層の膜厚が10〜300nmであるのが好ましい。
また、前記無機層が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、これらの2以上の混合物、および、これらの水素含有物のいずれかであるのが好ましく、また、前記第1有機層および第2有機層は、主成分が同系の材料であるのが好ましく、さらに、水蒸気透過率が1×10-3[g/(m2・day)]以下であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、長尺な基板フィルムを長手方向に搬送しつつ、この基板フィルムの表面に、大気圧中において第1有機層を成膜し、この第1有機層の上に、真空中において第2有機層を成膜し、この第2有機層の上に、真空中において無機層を成膜することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法を提供する。
【0017】
このような本発明のガスバリアフィルムの製造方法において、前記第2有機層を成膜した後、前記無機層を成膜するまで、前記第2有機層表面の製品となる領域に固体が接触しないのが好ましく、また、前記第1有機層、第2有機層および無機層の成膜を1つの工程として、この工程を複数回行なうのが好ましい。
また、前記無機層の上に、さらに、真空中において第3有機層を成膜するのが好ましく、この際において、前記無機層を成膜した後、前記第3有機層を成膜するまで、前記無機層表面の製品となる領域に固体が接触しないのが好ましい。
また、最上層に、大気圧中で第4有機層を成膜するのが好ましく、また、前記第1有機層あるいはさらに第4有機層が、塗布法によって成膜されるのが好ましく、また、前記第2有機層あるいはさらに第3有機層が、フラッシュ蒸着法によって成膜されるのが好ましく、さらに、前記基板フィルムの搬送速度が10m/min以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成を有する本発明によれば、有機層および無機層を成膜してなる積層型のガスバリアフィルムにおいて、塗布法等の大気圧下における成膜方法によって、第1有機層を成膜し、この上に、フラッシュ蒸着等の真空下における成膜方法によって第2有機層を成膜し、この上にプラズマCVD等の真空下における成膜方法によって、無機層を成膜する。好ましくは、この無機層の上に、さらに、フラッシュ蒸着等の真空下における成膜方法によって第3有機層を成膜する。
従って、本発明によれば、成膜速度の早い塗布法等と、フラッシュ蒸着等とを組み合わせることにより、基板フィルムの凹凸を相殺するのに十分な厚さを有する有機層を高い成膜速度で成膜することができ、しかも、フラッシュ蒸着等による平滑性が高く、かつ、表面が清浄な面に無機層を成膜できる。
【0019】
そのため、本発明によれば、高速で基板フィルムを搬送しつつ、十分な厚さの有機層を成膜し、さらに、表面平滑性および清浄性の高い有機層上に無機層を成膜でき、すなわち、高い生産性(高速)で、ディスプレイや太陽電池に用いられるような、高いガスバリア性を発揮するガスバリアフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガスバリアフィルムの製造方法を実施する製造装置の一例を概念的に示す図で、(A)は有機成膜装置、(B)は真空成膜装置である。
【図2】本発明のガスバリアフィルムの一例を概念的に示す図である。
【図3】(A)および(B)は、本発明のガスバリアフィルムの別の例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のガスバリアフィルム、および、ガスバリアフィルムの製造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0022】
図1に、本発明のガスバリアフィルムを製造する、本発明のガスバリアフィルムの製造方法を実施する製造装置の一例を概念的に示す。
【0023】
この製造装置は、図1(A)に示す有機成膜装置24と、図1(B)に示す真空成膜装置26とからなるものである。
有機成膜装置24は、長尺な基板フィルムZ(フィルム原反 以下、基板Zとする)を長手方向に搬送しつつ、この基板Zの表面に第1有機層12を成膜(第1有機層12を形成)する。
他方、真空成膜装置26は、表面に第1有機層12を成膜された基板Zを長手方向に搬送しつつ、第1有機層12の上に、第2有機層14を成膜し、次いで、この第2有機層14の上に無機層16を成膜し、この無機層16の上に第3有機層18を成膜する。
さらに、有機成膜装置24は、第1有機層12〜第3有機層18が成膜された基板Zを、長手方向に搬送しつつ、第3有機層18の上に、第4有機層20を成膜する。
図1に示す装置においては、これにより、図2に示すような、本発明のガスバリアフィルム10(ガスバリアフィルムの中間製品でも可)を製造する。
【0024】
なお、本発明において、基板Zには、特に限定は無く、ガスバリアフィルムの製造に利用される各種の長尺なシート状物の基板が、各種、利用可能である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなるシート状のプラスチックフィルム(樹脂フィルム)が、好適に例示される。
【0025】
また、本発明においては、プラスチックフィルム等を基材として、その上に、保護層、接着層、光反射層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層等の、各種の機能を得るための層(膜)が成膜されている物を基板Zとして用いてもよい。この際においては、基材の上に1層のみの層が成膜された物を基板Zとして用いてもよく、あるいは、基材の上に、複数層の膜が成膜されたものを、基板Zとして用いてもよい。
【0026】
また、本発明においては、第1有機層12、第2有機層14および無機層16、あるいはさらに第3有機層18(以下、便宜的に、この3層あるいは4層をまとめて『ガスバリア積層体』とも言う)が成膜されたフィルム状物を、基板Zとして用いてもよい。すなわち、本発明においては、本発明のガスバリアフィルム(本発明によるガスバリア積層体を有するガスバリアフィルム)を中間体として、この中間体を基板Zとして、さらに、本発明によって、有機層および無機層の成膜を行なって、本発明のガスバリアフィルムを作製してもよい。
この点に関しては、後に詳述する。
【0027】
図1(A)に示す有機成膜装置24は、基板Zの表面に、大気圧中での成膜方法によって、有機物(有機化合物)からなる層である第1有機層12を成膜する部位である。加えて、有機成膜装置24は、後述する真空成膜装置26によって、第2有機層14、無機層16、および、第3有機層18を成膜された基板Zに、有機物からなる層である第4有機層20を成膜して、図2に示すようなガスバリアフィルム10を完成する。
図示例において、有機成膜装置24は、塗布法によって第1有機層12あるいはさらに第4有機層20を成膜するものであり、回転軸28、巻取り軸30、塗布手段32、乾燥手段34、硬化手段36、ガイドローラ38aおよび38bを有して構成される。塗布手段32、乾燥手段34、および硬化手段36は、ガイドローラ38a〜38b間の基板Zの搬送経路に対面して、配置される。
【0028】
この有機成膜装置24は、長尺な基板Zをロール状に巻回してなる基板ロール40から基板Zを送り出し、長手方向に搬送しつつ、第1有機層12または第4有機層20(以下、特に区別や例示が必要な場合を除き、『第4有機層』は省略する)を成膜して、第1有機層12を成膜した基板Z(ガスバリアフィルム10)を、巻取り軸30によって、再度、ロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)による成膜を行なう装置である。
なお、有機成膜装置24には、図示した部材以外にも、各種のセンサ、搬送ローラ対や基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)等、長尺な基板Zに、塗布法による成膜を連続的に行なう装置が有する各種の部材を有してもよい。
【0029】
基板ロール40から送り出された基板Zは、ガイドローラ38aに案内されて、塗布手段32に搬送される。
塗布手段32は、有機物等を溶媒に溶解(分散)して調製された塗料、有機物モノマー等を溶媒に溶解して調製された塗料、有機物モノマーと重合開始剤等を溶媒に溶解して調製された塗料など、第1有機層12となる有機物を含有する塗料を、基板Zの表面(ガスバリア積層体の成膜面)に、塗布するものである。
本発明の製造方法において、塗布手段32における塗布方法には、特に限定はなく、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート、スピンコート等、塗膜の成膜に用いられる公知の方法が、各種、利用可能である。
【0030】
乾燥手段34は、塗布手段32が基板Zの表面に塗布した塗膜(塗料)から溶媒等を蒸発させて、塗膜を乾燥するものである。塗膜の乾燥手段には、特に限定はなく、ヒータによる乾燥や温風乾燥等、塗膜に応じて、公知の乾燥手段を利用すればよい。
なお、塗膜が十分な粘性や揺変性を有し、下流の硬化手段36による硬化のみで第1有機層12が成膜可能である場合には、乾燥手段34は設けなくてもよい。
【0031】
硬化手段36は、乾燥した塗膜を硬化して、第1有機層12あるいは第4有機層20とするものである。ここで、塗料が、前述のように、有機物モノマーを含有するものである場合には、硬化手段36によってモノマーを重合して、第1有機層12とする。
硬化手段36には、特に限定はなく、プラズマ照射手段(プラズマ硬化)、UV(紫外線)照射手段(UV硬化)、電子線照射手段(電子線硬化)、光照射手段(光硬化)、加熱手段(熱硬化)等、第1有機層12となる有機物に応じた硬化手段を、適宜、選択して用いればよい。
なお、乾燥のみで、十分に塗膜を硬化して第1有機層12を成膜できる場合には、硬化手段36は、設けなくてもよい。あるいは、乾燥と硬化とを一緒にできる場合には、いずれか一方のみを設け、乾燥/硬化手段としてもよい。
【0032】
有機成膜装置24において、基板ロール40は、回転軸28に装填される。基板ロール40が回転軸28に装填されると、基板Zは、此処から引き出され、ガイドロール38aおよび38bに案内され、巻取り軸30に巻回される、所定の搬送経路を通される(送通される)。
塗布手段32、乾燥手段34、および硬化手段36による処理の準備が整ったら、基板Zの搬送を開始する。基板ロール40からの基板Zの送り出しと、巻取り軸30における基板Zの巻き取りとを同期して行なって、基板Zを長手方向に搬送しつつ、塗布手段32が第1有機層12となる塗料を塗布し、乾燥手段34が、この塗料を乾燥し、さらに、硬化手段36が硬化して、基板Zの表面に、第1有機層12を成膜する。
【0033】
なお、本発明において、第1有機層12の成膜方法は、塗布法に限定はされず、シート状に成形した第1有機層12を転写する転写法等、大気圧下で有機物からなる層(膜)を成膜できる方法であれば、各種の成膜方法が全て利用可能である。
しかしながら、膜の成膜速度(成膜レート)、基板表面の凹凸の包埋性等を考慮すると、塗布法が、好適に利用される。
【0034】
また、本発明において、第1有機層12は、大気圧中で成膜された1層の有機層からなるものであるのに限定はされず、大気圧中で複数の有機層を成膜することにより、第1有機層12を成膜してもよい。すなわち、本発明においては、第1有機層12が、塗布法等の大気圧中での成膜方法によって成膜された、複数の有機層(複数の膜)からなるものであってもよい。
この点に関しては、後述する第2有機層14、無機層16、第3有機層18、および、第4有機層も同様である。例えば、第2有機層14が、フラッシュ蒸着で成膜された複数の有機層で構成されたものであってもよく、また、無機層16が、プラズマCVDで成膜された複数の無機層で構成されたものであってもよい。
また、この際において、1つの第1有機層12や無機層16等を成膜する複数の層は、同じ化合物からなる層であっても、異なる化合物からなる層であってもよい。
【0035】
本発明において、第1有機層12の形成材料には、特に限定はなく、塗布法などの大気圧中での成膜(膜形成)が可能な有機物が、各種、利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が例示される。
【0036】
このようにして第1有機層20を成膜された基板Zは、ガイドローラ38bによって所定の経路を案内されて、巻取り軸30によってロール状に巻回される。
巻取り軸30によって巻き取られた基板Zは、基板ロール42として、真空成膜装置26に供給される。
【0037】
真空成膜装置26は、第1有機層12が成膜された基板Zに、第2有機層14、無機層16、および、第3有機層18を成膜するものである。
この真空成膜装置26も、同様のロール・ツー・ロールによる装置であって、基板ロール42から送り出した基板Z(第1有機層12が成膜された基板Z)を、長手方向に搬送しつつ、第2有機層14、無機層16、および、第3有機層18を、順次、成膜し、再度、ロール状に巻回する。
【0038】
このような真空成膜装置26は、供給室46と、真空成膜室48と、巻取り室50とを有する。
なお、真空成膜装置26は、図示した部材以外にも、各種のセンサ、搬送ローラ対や基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)等、長尺な基板Zに、塗布法による成膜、フラッシュ蒸着による成膜、気相堆積法による成膜を連続的に行なう装置が有する各種の部材を有してもよい。
【0039】
供給室46は、回転軸52と、ガイドローラ54aと、真空排気手段55とを有する。
基板ロール42は、供給室46の回転軸52に装填される。回転軸52に基板ロール42が装填されると、基板Zは、供給室46から、真空成膜室48を通り、巻取り室50の巻取り軸106に至る所定の搬送経路を通される。
真空成膜装置26においては、基板ロール42からの基板Zの送り出しと、巻取り室50の巻取り軸106における基板Zの巻き取りとを同期して行なって、長尺な基板Zを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、真空成膜室48において、基板Zに、第2有機層14、無機層16および第3有機層18の成膜を、順次、行う。
【0040】
ここで、真空成膜装置26において、基板Zの搬送速度には、特に限定は無いが、10m/min以上とするのが好ましい。
【0041】
前述のように、フラッシュ蒸着による有機層および気相堆積法による無機層を有する従来のガスバリアフィルムでは、有機層の膜厚が厚いために、フラッシュ蒸着による所定膜厚までの成膜が間に合わない場合が有る。この場合には、基板の搬送速度を向上することができす、高速で効率のよいガスバリアフィルムの製造を行なうことができない。
これに対し、本発明においては、塗布法等の大気圧下での成膜と、フラッシュ蒸着等の真空中(減圧下)での成膜とを併用する2層の有機層を有し、その上に無機層を成膜する本発明によれば、有機層の成膜速度を大幅に向上することができる。従って、本発明によれば、ガスバリアフィルムの製造における基板Zの搬送速度を大幅に向上して、高速製造が可能で、かつ、生産効率が良好なガスバリアフィルムを得ることができる。
【0042】
すなわち、基板Zの搬送速度を10m/min以上とすることにより、基板の搬送速度を向上できるという本発明の特性を十分に発現して、高いガスバリア性を発揮するガスバリアフィルムを、高い生産性(高速)で製造することができる。
また、以上の点を考慮すると、基板Zの搬送速度は、30m/min以上とするのが、より好ましい。
【0043】
真空排気手段55は、好ましい態様として設けられるものであり、供給室46内を排気(減圧)して所定の圧力にするものである。
すなわち、供給室46は、後述するスリット58aによって真空成膜室48と連通しているので、真空排気手段55によって供給室46内の圧力を所定圧(真空度)に保つことにより、供給室46が、真空成膜室48の圧力に影響を与えることを防止できる。
なお、本発明においては、供給室46(および後述する巻取り室50)は、真空排気手段を有する構成に限定はされず、両室は、大気圧としてもよい。
【0044】
真空排気手段55には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ、ドライポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。
この点に関しては、後述する他の真空排気手段も、全て、同様である。
【0045】
基板Zは、ガイドローラ54aによって案内され、供給室46から、隔壁56aによって隔てられた真空成膜室48に搬送される。なお、隔壁56aには、基板Zが通過するためのスリット58aが形成される。
【0046】
真空成膜室48は、第1有機層12が形成された基板Zに、第2有機層14を成膜し、次いで、無機層16を成膜し、さらに、第3有機層18を形成するものである。
本発明においては、第2有機層14、無機層16および第3有機層18は、いずれも、真空中(減圧下)での成膜法によって成膜される。
【0047】
図示例において、真空成膜室48は、第2有機層14を成膜する第2有機層成膜部60と、無機層16を成膜する無機層成膜部62と、第3有機層18を成膜する第3有機層成膜部64と、ドラム68と、ガイドローラ54bおよび54cと、真空排気手段70とを有して構成される。
また、第2有機層成膜部60は、真空成膜室48の壁面からドラム68の直近まで延在する隔壁72aおよび72bとドラム68とによって、無機層成膜部62は、同隔壁72bおよび72cとドラム68とによって、第3有機層成膜部64は、同隔壁72cおよび72dとドラム68とによって、それぞれ、他の領域(他の空間)と略機密に隔離されている。
【0048】
真空排気手段70は、ドラム68と隔壁72aおよび72dとによって各成膜部と略機密に隔離されている空間を、所定の真空度に保つためのものである。
真空成膜室48において、この空間は、スリット58bおよび58cによって、供給室46および巻取り室50と連通している。従って、真空排気手段70によって、この空間の真空度を、真空中で有機層を成膜する第2有機層成膜部60および第3有機層成膜部64における成膜圧に応じた圧力に調整することにより、上下流の部屋の圧力が、第2有機層成膜部60および第3有機層成膜部64における成膜圧に影響を与えることを防止できる。
【0049】
なお、図示例の真空成膜室48においては、前記真空排気手段70によって減圧される空間と第2有機層成膜部60、第2有機層成膜部60と無機層成膜部62、無機層成膜部62と第3有機層成膜部64、および、第3有機層成膜部64と前記真空排気手段70によって減圧される空間とは、隔壁72のみによって、略気密に隔離されている。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、隣接する前記空間と成膜部との間、および/または、隣接する成膜部の間に、両者を略気密に隔離する空間を設けて差圧室とし、この差圧室に真空排気手段等の圧力調整手段を設けて圧力を所定の真空度に保つことにより、各空間を、より確実に隔離(分離)するようにしてもよい。
【0050】
ガイドローラ54bおよび54cは、基板Zを所定の搬送経路で案内する通常のガイドローラである。
ドラム68は、中心線を中心に図中反時計方向に回転する円筒状の部材である。ドラム68は、基板Zの幅方向(搬送方向と直交方向)に中心線を一致して配置されて回転し、ガイドローラ54bによって所定の経路に案内された基板Zを、周面の所定領域に掛け回して、所定位置に保持しつつ長手方向に搬送して、第2有機層成膜部60、無機層成膜部62、および、第3有機層成膜部64に、順次、搬送して、ガイドローラ54cに送る。
【0051】
ここで、ドラム68は、後述する無機層成膜部62におけるシャワー電極90の対向電極としても作用(すなわち、ドラム68とシャワー電極90とで電極対を構成)する。そのため、ドラム68には、バイアス電源が接続され、あるいは、接地(アース)されている(共に、図示省略)。もしくは、ドラム68は、バイアス電源の接続と接地とが切り換え可能であってもよい。
また、ドラム68は、第2有機層成膜部60や第3有機層成膜部64における有機物液体の凝集のためや、成膜中の基板温度上昇の抑制など、基板Zの温度調整手段を兼ねてもよい。そのため、ドラム68は、温度調整手段を内蔵するのが好ましい。ドラム68の温度調節手段には、特に限定はなく、冷媒等を循環する温度調節手段、ピエゾ素子等を用いる冷却手段等、各種の温度調節手段が、全て利用可能である。
【0052】
第2有機層成膜部60は、基板Zに成膜された第1有機層12の表面に、真空中での成膜方法によって有機物からなる第2有機層14を成膜する部位である。図示例において、第2有機層成膜部60は、好ましい態様として、フラッシュ蒸着によって第2有機層14を成膜するものであり、蒸着部74と、硬化手段76と、有機原料供給部78と、真空排気手段80とを有して構成される。
周知のように、フラッシュ蒸着は、成膜材料を蒸発させて、その蒸気を基板に付着させて、冷却/凝縮して液体状の膜を形成し、この膜を紫外線や電子線によって硬化することで、成膜を行なうものである。
【0053】
真空排気手段80は、第2有機層成膜部60内、すなわち、隔壁72a、隔壁72bおよびドラム68の周面で成膜される閉空間内を排気して、その圧力を、第2有機層成膜部60におけるフラッシュ蒸着に対応する真空度(成膜圧)とするものである。
このフラッシュ蒸着の成膜圧には、特に限定は無いが、通常、0.1〜100Pa程度である。
【0054】
有機原料供給部78は、液体状の有機物のモノマー(あるいは、有機物のモノマーあるいはさらに重合開始剤等を溶媒に溶解してなる塗料)を送液し、送液した液体状モノマーを加熱や超音波等を利用して気化し、気化したモノマーの蒸気を配管74aを通して蒸着部74に供給するものである。図示例においては、この液体状の有機物のモノマーが、第2有機層14となる。
【0055】
蒸着部74は、原料供給部78から供給された有機層20となる有機物モノマーの蒸気体を、ドラム68に巻き掛けられた基板Zの表面(第1有機層12)に噴射して、凝集させるものである。これにより、第2有機層14となる有機物モノマーの膜が形成される。
なお、有機原料供給部78から蒸着部74への蒸気体の移送、および、蒸着部74からの蒸気体の噴射は、一例として、有機原料供給部78内と有機層成膜部42内との差圧によって行なわれる。
【0056】
図示は省略するが、蒸着部74は、加熱制御手段を備え、周囲が凝集温度以上でかつ蒸発温度以下の温度に加熱される加熱ノズルを有する。
原料供給部78から供給されたモノマーの蒸発体が、加熱ノズルを通過し、基板Z上に一定量凝集される。また、モノマーの凝集効率を向上させるために、ドラム68を冷却するのが好ましい。
【0057】
硬化手段76は、基板Z上に凝集された有機物を硬化して、第2有機層14とする。この硬化手段76は、例えば、UV光をドラム68に巻き掛けられた基板Zに向けて照射するUV照射手段が用いられる。
なお、基板Z上に凝集された有機物の硬化手段76としては、電子線を照射する電子線照射手段、マイクロ波を照射するマイクロ波照射手段、プラズマを照射するプラズマ照射手段等も好適に利用可能である。
【0058】
なお、本発明において、第2有機層14の成膜方法は、フラッシュ蒸着に限定はされず、プラズマ重合法等、真空中で有機層を成膜できる方法が、各種、利用可能である。
しかしながら、第2有機層14の表面平滑性、成膜される膜の膜質(純度)、成膜速度、長時間安定性、メンテナンス性等の点で、フラッシュ蒸着は、より好適に利用される。
【0059】
本発明において、第2有機層14の形成材料には、特に限定はなく、フラッシュ蒸着などの、真空中(減圧下)での成膜(膜形成)が可能な有機物が、各種、利用可能である。
一例として、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が例示される。
【0060】
なお、第1有機層12と第2有機層14は、異なる材料の有機層でも、同じ材料の有機層でもよいが、表面平滑性や密着性等の点で、同系の材料であるのが好ましく、特に、同じ材料の有機層であるのが好ましい。
なお、本発明において、同系の材料とは、第1有機層12がアクリル樹脂であれば第2有機層14もアクリル樹脂、第1有機層12がポリイミドであれば第2有機層14もポリイミドと、有機物を特徴づける官能基や結合基が同じ種類の基である材料を示し、これが主成分であることを示す。密着改良剤などの各種の添加剤(補佐的成分)の有無や、その量に違いがあっても、主成分が同じであれば、同系の材料とする。
【0061】
無機層成膜部62は、真空中での気相成膜法によって、第2有機層14の表面に、無機物(無機化合物)からなる層である無機層16を成膜する部位である。
図示例において、無機層成膜部62は、一例として、CCP(Capacitively Coupled Plasma 容量結合型プラズマ)−CVDによって、無機層16を成膜(成膜)するものであり、シャワー電極90と、原料ガス供給部92と、高周波電源94と、真空排気手段96とを有する。
【0062】
シャワー電極90は、CCP−CVDによる成膜に利用される、公知のシャワー電極である。
図示例において、シャワー電極90は、一例として、中空の略直方体状であり、1つの最大面をドラム68の周面に対面して、この最大面の中心からの垂線がドラム68の法線と一致するように配置される。また、シャワー電極90のドラム68との対向面には、多数の貫通穴が全面的に成膜される。さらに、このドラム68との対向面は、好ましい態様として、ドラム68の周面に沿う様に湾曲している。
【0063】
なお、図示例において、無機層成膜部62には、シャワー電極(CCP−CVDによる成膜手段)が、1個、配置されているが、本発明は、これに限定はされず、基板Zの搬送方向に、複数のシャワー電極を配列してもよい。この点に関しては、CCP−CVD以外のプラズマCVDを利用する際も同様であり、例えば、ICP−CVDによって無機層16を成膜する場合には、誘導電界(誘導磁場)を成膜するためコイルを、基板Zの搬送方向に、複数、配置してもよい。
また、本発明は、を用いてCCP−CVD法による無機層16の成膜において、シャワー電極90を用いるのにも限定はされず、通常の板状の電極と、ガス供給ノズルとを用いるものであってもよい。
【0064】
原料ガス供給部92は、プラズマCVD装置等の真空成膜装置に用いられる公知のガス供給手段であり、シャワー電極90の内部に、原料ガスを供給する。一例として、無機層16として窒化シリコン層(膜)を成膜する場合には、シランガスおよびアンモニアガス、あるいはさらに不活性ガスを、原料ガスとしてシャワー電極90に供給する。
前述のように、シャワー電極90のドラム68との対向面には、多数の貫通穴が供給されている。従って、シャワー電極90に供給された原料ガスは、この貫通穴から、シャワー電極90とドラム68との間に導入される。
【0065】
高周波電源94は、シャワー電極90に、プラズマ励起電力を供給する電源である。高周波電源94も、各種のプラズマCVD装置で利用されている、公知の高周波電源が、全て利用可能である。
さらに、真空排気手段96は、プラズマCVDによるガスバリア膜の成膜のために、無機層成膜部62内、すなわち、隔壁72b、隔壁72cおよびドラム68の周面で成膜される閉空間内を排気して、所定の成膜圧力に保つものである。
【0066】
本発明において、無機層16の成膜方法は、このようなCCP−CVDに限定はされず、ICP(Inductively Coupled Plasma)−CVDやマイクロ波CVDなどの他のプラズマCVD、Cat(Catalytic 触媒)−CVD、熱CVD、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等、無機層16を形成可能な方法であれば、真空中で行なう気相堆積法が、全て利用可能である。
【0067】
また、本発明において、成膜する無機層16には、特に限定はなく、ガスバリアフィルムにおいてガスバリア性を発現するために成膜される無機物が、各種、利用可能である。
具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物; 窒化アルミニウムなどの金属窒化物; 炭化アルミニウムなどの金属炭化物; 酸化窒化シリコン、酸炭化シリコン、酸化窒化炭化シリコンなどのシリコン酸化物; 窒化シリコン、窒化炭化シリコンなどのシリコン窒化物; 炭化シリコン等のシリコン炭化物; これらの水素化物; これら2種以上の混合物; および、これらの水素含有物等が、好適に例示される。
【0068】
本発明の製造方法においては、このように、塗布法等の大気圧中での成膜方法を用いて第1有機層12を成膜し、次いで、フラッシュ蒸着等の真空中での成膜方法を用いて第2有機層14を成膜し、この上に、主にガスバリア性を発現する無機層16を真空中での気相堆積法によって成膜することで、ガスバリア積層体を形成してガスバリアフィルムを製造する。
【0069】
前述の特許文献1や特許文献2にも示されるように、プラスチックフィルム等の基板の上に有機層を形成し、その上に無機層を形成し、あるいはさらに、その上に有機層を形成してなる、積層型のガスバリアフィルムが知られている。
このような積層型のガスバリアフィルムにおいて、無機層の下の有機層は、基板表面の凹凸を相殺/補償して平滑性の高い表面を形成し、この平滑性の高い表面に、ガスバリア性を発現する無機酸化物等の無機層を形成することにより、優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムを得るために、成膜される。
また、表面の清浄性が高い有機層が得られる、表面平滑性が高い有機層が得られる等の理由から、有機層の形成方法としては、フラッシュ蒸着が好適に利用される。
【0070】
一方で、無機層の成膜は、一般的に、プラズマCVD等の気相堆積法によって行なわれる。
ここで、無機層の下層として成膜される有機層の膜厚は、基板Zが有する凹凸等を確実に埋没/相殺して、高い表面平滑性を得るために、無機層よりも大幅に厚くする必要がある。この有機層と無機層の膜厚の差が、生産性向上の妨げになってしまう場合が有る。すなわち、図示例のように、基板Zを搬送しつつ有機層および無機層を連続的に成膜する場合には、フラッシュ蒸着による膜厚の厚い有機層の所定膜厚までの成膜が、気相体積法による膜厚の薄い無機層の所定膜厚までの成膜に追い付かず、無機層の成膜速度を低下させる必要が生じてしまう。
【0071】
そのため、フラッシュ蒸着を利用して有機層を成膜し、その上に無機層を成膜し、あるいはさらに、その上にフラッシュ蒸着を利用して有機層を成膜するガスバリアフィルムの製造においては、フラッシュ蒸着の特性を行かして良好なガスバリア性を有するガスバリアフィルムが得られる反面、フラッシュ蒸着が律速となって、生産性を向上することが困難である。
従って、図示例のようなロール・ツー・ロールによる成膜を行なう装置のように、基板を長手方向に搬送しつつ、有機層や無機層を、順次、成膜する製造方法では、基板Zを高速搬送することができず、生産性や生産効率を向上することができない。
【0072】
これに対し、本発明においては、まず、基板Zの表面に塗布法等の大気圧中での成膜方法で第1有機層12を成膜し、その上に、フラッシュ蒸着等の真空中での成膜方法で第2有機層14を成膜し、この2層からなる有機層を下地層として、真空中での気相堆積法によって無機層16を成膜する。
周知のように、塗布法を代表とする大気圧中での有機層の成膜速度は、プラズマCVD等の気相堆積法による無機層の成膜速度よりも早く、短時間で厚い膜を成膜することができる。一方で、フラッシュ蒸着による有機層は、非常に表面平滑性に優れると共に、真空中での成膜であるが故に、表面清浄性にも優れる。
【0073】
加えて、本発明においては、その上に形成する無機層16も、真空中で成膜するので、図1(B)に一例を示すように、第2有機層14の成膜から無機層16の成膜を終了するまで、真空中で処理を行なうことができる。従って、第2有機層14を成膜した後、ゴミや異物等の付着を好適に防止して、フラッシュ蒸着の特徴の1つである清浄な表面を保った状態で、無機層16を成膜できる。すなわち、無機層16の成膜面にゴミや異物が存在する事に起因する、ガスバリア性の低下を防止できる。
なお、この点を考慮すると、本発明においては、図1(B)に示す真空成膜装置26のように、第2有機層14を成膜した後、この第2有機層14の表面(特に、製品となる領域)に何の部材(固体表面)も接触することなく、無機層16を成膜するのが好ましい。このような構成とすることにより、ゴミや異物の付着抑制に加えて、部材の接触等に起因する第2有機層14の損傷や表面の変形も防止することができ、より、平滑性および清浄性の高い表面に、無機層16を成膜することが可能となる。
【0074】
しかも、第1有機層12および第2有機層14は、共に、有機物からなる膜であるので、適合性は良好であり、特に、同系の材料を用いた場合には、密着性も良好で、1層の膜と同様に見なすことができる。
【0075】
さらに、本発明によれば、基板Zの大きな凹凸を第1有機層12によって、ほぼ、埋没/相殺した後、その後の基板搬送等のハンドリングによって、不可避的に、多少、発生してしまう凹凸(例えば、ロール状に巻回する際に生じる傷や、真空中での搬送中に付着する異物等に起因する凹凸)を第2有機層14によって埋没/相殺できる。
従って、本発明によれば、無機層16を成膜する直前に真空中で成膜する第2有機層14の膜厚も、低減することができる。
【0076】
すなわち、本発明によれば、気相堆積法による無機層16の成膜速度に、十分に対応する速度で、かつ、十分な厚さを有する有機層を形成することができると共に、表面の平滑性や清浄性など、フラッシュ蒸着等の真空中で成膜した有機層の好適な特徴を十分に生かした有機層を成膜して、その上に、無機層16を成膜することができる。
従って、本発明によれば、図1に示す製造装置のようなロール・ツー・ロールによる成膜を行なう装置のように、基板を長手方向に搬送しつつ、有機層および無機層を成膜する製造方法において、高速で基板Zを搬送して、高い生産性および生産効率を実現できると共に、十分な厚さを有し、しかも表面平滑性および清浄性に優れた有機層に無機層16を成膜して、ガスバリア性に優れたガスバリアフィルムを得ることができる。
【0077】
本発明において、第1有機層12および第2有機層14(隣接して成膜される第1有機層12および第2有機層14)の膜厚(層厚)には、特に、限定は無いが、2層の合計で、0.3〜5μmとするのが好ましい。
その上で、さらに、第2有機層14の膜厚を、0.5μm以下、もしくは、第1有機層12および第2有機層14の合計膜厚の50%以下とするのが好ましい。なお、第2有機層14の膜厚は、0.1μm以上、もしくは、前記2層の合計膜厚の20%以上とするのが好ましい。
【0078】
上記構成を有することにより、基板Zの凹凸を相殺/補償するのに十分な膜厚を確保することができる、基板Zの高速搬送を行なって、より高い生産性および生産効率を実現できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0079】
また、無機層16の膜厚にも、特に限定は無く、要求されるガスバリア性や生産性等に応じて、適宜、設定すればよいが、10〜300nmが好ましい。
無機層16の膜厚を上記範囲とすることにより、良好なガスバリア性を得ることができる、良好な可撓性を得ることができる、良好な透明性を得ることができる、十分な耐久性(耐環境性)を得ることができる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0080】
第3有機層成膜部64は、無機層16の上に、有機物からなる膜である第3有機層18を成膜するものである。
図示例において、第3有機層成膜部64は、第2有機層成膜部60と同様に、フラッシュ蒸着によって第3有機層18を成膜する。従って、図示例の第3有機層成膜部64において、蒸着部98は第2有機層成膜部の蒸着部74と、硬化手段100は同硬化手段76と、原料供給部102は同原料供給部78と、真空排気手段104は同真空排気手段80と、それぞれ同じものである。
【0081】
なお、第2有機層14と同様、第3有機層18の成膜方法も、フラッシュ蒸着に限定はされず、真空中で有機層を成膜可能な各種の方法が、全て利用可能である。
しかしながら、第2有機層14と同様の理由で、第3有機層18の成膜にも、フラッシュ蒸着は、好適に利用される。
【0082】
なお、本発明において、この第3有機層18は、好ましい態様として設けられるものである。
図示例(本発明の)のガスバリアフィルム10は、同様に好ましい態様として、最上層に、塗布法等の大気圧中での成膜方法で成膜される第4有機層20を有する。また、後に詳述するが、本発明のガスバリアフィルムは、第1有機層12、第2有機層14および無機層16、あるいはさらに第3有機層18からなるガスバリア積層体を、1つの単位として、このガスバリア積層体を、複数、有してもよい。
すなわち、この第3有機層18を有することにより、塗布法等の大気中での成膜方法で成膜される第1有機層14や第4有機層20の成膜面(言い換えれば、大気圧中で成膜される有機層の下地層)を、有機物とすることができる。このような構成を有することにより、無機層16の上に有機層を成膜する場合に比して、第1有機層14や第4有機層20の密着性を大幅に向上することができ、ガスバリアフィルム10の強度を、大幅に向上することができる。
【0083】
また、第3有機層18も、フラッシュ蒸着等の真空中での成膜方法で形成される。従って、非常に表面平滑性の高い層を下地層として、第1有機層14や第4有機層20を成膜できるので、より高い密着性を得ることができる。
さらに、無機層16の成膜から、第3有機層18の成膜を終了するまで、真空中で処理を行なうことができる。すなわち、無機層16を成膜した後、第3有機層18を成膜した後に、大気圧中に送り出すので、無機層16が大気圧中に曝されることが無い。そのため、無機層16表面へのゴミや異物等の付着を好適に防止でき、また、無機層16の損傷等も好適に防止できる。そのため、無機層16に付着したゴミや異物等に起因するガスバリア性の低下を防止できる。
なお、この点を考慮すると、先と同様、図1(B)に示す真空成膜装置26のように、無機層16を成膜した後は、無機層16の表面(特に、製品となる領域)に何の部材も接触することなく、第3有機層18を成膜するのが好ましい。これにより、より確実に、ゴミや異物の付着抑制に加えて、部材の接触等に起因する無機層16の損傷や表面の変形も防止でき、良好なガスバリア性を実現することができる。
【0084】
本発明において、第3有機層18の形成材料には、特に限定はなく、フラッシュ蒸着等の真空中での成膜(膜形成)が可能な有機物が、各種、利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が例示される。
【0085】
また、第3有機層18の膜厚にも特に限定はないが、0.1〜0.5μm程度が好ましい。
ここで、前述のように、ガスバリア積層体を、複数、成膜する場合には、隣接して形成される第3有機層18、第1有機層12、および第2有機層14(図3(A)の第3有機層18a、第1有機層12bおよび第2有機層14b参照)の合計膜厚が0.3〜5μmであるのが好ましい。また、その上で、さらに、第2有機層14および第3有機層18の膜厚を、0.5μm以下、もしくは、第3有機層18、第1有機層12、および第2有機層14の合計膜厚の25%以下とするのが好ましい。
【0086】
上記構成を有することにより、基板Zの凹凸を相殺/補償するのに十分な膜厚を確保することができる、基板Zの高速搬送を行なって、より高い生産性および生産効率を実現できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0087】
第3有機層成膜部64において第3有機層18を成膜された基板Zは、ガイドローラ54cによって案内されて、真空成膜室48とは隔壁56bによって隔てられた巻取り室50に搬送される。なお、隔壁56bには、基板Zが通過するためのスリット58bが形成される。
巻取り室50に搬送された基板Zは、ガイドローラ54dに案内されて巻取り軸106に搬送され、巻取り軸106によってロール状に巻回され、第1有機層12、第2有機層14、無機層16、および第3有機層18を成膜された基板Zを巻回した基板ロール110とされる。また、巻取り室50も、前述の供給室46と同様、好ましい態様として真空排気手段108が配置され、真空成膜室48の圧力に応じた所定の圧力に減圧されており、これにより、巻取り室50が真空成膜室48の圧力に影響を与えることを防止する。
【0088】
以下、真空成膜装置26の作用を説明する。
前述のように、回転軸42に基板ロール42が装填されると、基板Zは、基板ロール42から引き出され、供給室46からガイドローラ54aによって案内されて真空成膜室48に至り、真空成膜室48において、ガイドローラ54bに案内されて、ドラム68の周面の所定領域に掛け回され、次いで、ガイドローラ54cによって案内されて巻取り室50に至り、ガイドローラ54dに案内されて巻取り軸106に至る、所定の搬送経路を通される。
【0089】
また、第2有機層成膜部60は、真空排気手段80によってフラッシュ蒸着による第2有機層14の成膜に対応する所定の真空度に減圧され、第3有機層成膜部64は、真空排気手段104によってフラッシュ蒸着による第3有機層18の成膜に対応する所定の真空度に減圧され、さらに、供給室46および巻取り室50に連通する領域は、真空排気手段70によってフラッシュ蒸着に対応する所定の真空度に減圧される。
さらに、無機層成膜部62では、原料ガス供給部92からシャワー電極90に、成膜する無機層16に応じた原料ガスが供給され、また、真空排気手段96によってCCP−CVDによる無機層16の成膜に対応する所定の真空度に減圧される。
加えて、供給室46および巻取り室50も、それぞれに配置される真空排気手段55および108によって、真空成膜室48の圧力に応じた所定の真空度に減圧される。
【0090】
原料ガスの供給量および各成膜部の圧力が安定したら、供給室46から巻取り室50に向かう基板Zの搬送が開始され、さらに、第2有機層成膜部60においては、有機原料供給部78から蒸着部74への第2有機層14となるモノマー蒸気の噴射、および、硬化手段76からのUV光の照射が開始され; 無機層成膜部62においては、高周波電源94からシャワー電極90へのプラズマ励起電力の供給が開始され; 第3有機層成膜部64においては、有機原料供給部102から蒸着部98への第3有機層18となるモノマー蒸気の噴射、および、硬化手段100からのUV光の照射が開始される。
【0091】
供給室46から供給され、ガイドローラ54aによって所定の経路に案内された基板Zは、まず、真空成膜室48に搬送される。
真空成膜室48に搬送された基板Zは、ガイドローラ54bによって所定の経路に案内され、ドラム68に巻き掛けられた状態で搬送されつつ、第2有機層成膜部60で第2有機層14を、無機層成膜部62で無機層16を、第3有機層成膜部64で第3有機層18を、順次、成膜され、さらに、ガイドローラ54cによって所定の経路に案内されて、巻取り室50に搬送される。
巻取り室50に搬送された基板Zは、ガイドローラ54dによって所定の経路に案内され、巻取り軸114によってロール状に巻回され、第1有機層12〜第3有機層18を成膜された基板Zを巻回した基板ロール110とされ、再度、有機成膜装置24に供給される。あるいは、基板ロール110をガスバリアフィルムとして、もしくは、ガスバリアフィルムの中間製品として、次の工程に供される。
【0092】
基板ロール110は、第3有機層18の上に第4有機層20を成膜して、図2に示すガスバリアフィルム10を作製するために、再度、有機成膜装置24に供給される。
有機成膜装置24において、基板ロール110が回転軸28に装填されると、第1有機層12と全く同様にして、塗布手段32によって第4有機層20となる塗料が塗布され、乾燥手段34によって、塗料が乾燥され、さらに、硬化手段36によって硬化されて、第4有機層20が成膜される。
第4有機層20が成膜された基板Zすなわちガスバリアフィルム10は、巻取り軸30に巻き取られ、ガスバリアフィルムとして、もしくは、ガスバリアフィルムの中間製品として、次の工程に供される。
【0093】
第4有機層20は、好ましい態様として、最上層に設けられる有機層である。
このような第4有機層20を有することにより、第1有機層12、第2有機層14および無機層16、あるいはさらに第3有機層18からなるガスバリア積層体を保護して、損傷等が入ることを防止することができ、強度や耐久性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる等の点で、好ましい結果を得ることができる。
【0094】
本発明において、第4有機層20の膜厚には、特に、限定はなく、ガスバリアフィルム10に要求される強度や厚さ等に応じて、適宜、設定すればよいが、0.3〜5μmが好ましい。
第4有機層20の膜厚を、上記範囲とすることにより、ガスバリアフィルム10の耐久性や機械的強度等の点で、好ましい結果を得ることができる。
【0095】
本発明において、第4有機層20の形成材料には、特に限定はなく、塗布法等の大気圧中での成膜(膜形成)が可能な有機物が、各種、利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が例示される。
【0096】
本発明のガスバリアフィルムは、第1有機層12、第2有機層14、および、無機層16からなるガスバリア積層体、および/または、第1有機層12、第2有機層14、無機層16、および、第3有機層18からなるガスバリア積層体を、複数、有してもよい。
【0097】
すなわち、図3(A)に一例を示すように、本発明のガスバリアフィルムは、第1有機層12a、第2有機層14a、無機層16a、および、第3有機層18aからなるガスバリア積層体の上に、第1有機層12b、第2有機層14b、無機層16b、および、第3有機層18bからなるガスバリア積層体を有し、その上に、第4有機層20を有してもよい。あるいは、このようなガスバリア積層体を、3以上、有してもよい。
【0098】
このようなガスバリアフィルムを製造する際には、一例として、前述の例と同様にして真空成膜装置26で第3有機層18aまで成膜した後、再度、有機成膜装置24に供給し、有機成膜装置24において、第4有機層20ではなく、再度、第1有機層12bを成膜し、次いで、再度、真空成膜装置26に供給して、第2有機層14b〜第3有機層18bを成膜し、その後、再々度、有機成膜装置24に供給し、有機成膜装置24において、第4有機層20を成膜すればよい。
【0099】
また、前述のように、第3有機層18は、好ましい態様として成膜されるので、本発明のガスバリアフィルムは、図3(B)に示すように、第1有機層12a、第2有機層14a、および、無機層16aからなるガスバリア積層体の上に、第1有機層12b、第2有機層14b、および、無機層16bからなるガスバリア積層体を有し、その上に、第4有機層20を有する構成でもよい。また、同様に、このようなガスバリア積層体を、3以上、有してもよい。
なお、第4有機層20も好ましい態様として設けられるのは、前述のとおりである。
さらに、本発明のガスバリアフィルムは、第1有機層12、第2有機層14、および、無機層16からなるガスバリア積層体と、第1有機層12、第2有機層14、無機層16、および、第3有機層18からなるガスバリア積層体の、両方を有してもよい。
【0100】
すなわち、本発明の製造方法においては、本発明のガスバリアフィルムに、さらに、第1有機層12、第2有機層14および無機層16、あるいはさらに、第3有機層18を成膜してもよく、また、このような有機層および無機層からなるガスバリア積層体の形成を、繰り返し、複数回、行なってもよい。
【0101】
以上の製造装置では、塗布によって有機層を成膜する有機成膜装置24と、真空中での成膜を行なう真空成膜装置26とを、別々の装置としたが、本発明は、これに限定はされず、第1有機層12〜第4有機層20の全層を作製するロール・ツー・ロールによる成膜装置によって、本発明の製造方法で、本発明のガスバリアフィルムを作製してもよい。
この際には、一例として、図1(B)に示す装置において、供給室46と真空成膜室48との間、および、真空成膜室48と巻取り室50との間に、図1(A)に示す有機成膜装置24と同様の成膜室を設ければよい。
しかしながら、図1に示すように、塗布による有機層の成膜装置と、真空中での成膜を行なう成膜装置とを、分けて構成した方が、例えば、成膜レートが非常に高い塗布による成膜装置おける搬送速度を真空での成膜を行なう装置よりも高くする、成膜レートが非常に高い塗布に夜成膜装置は1台で、真空での成膜を行なう装置は3台設ける等、製造設備の操業条件や設備構成の自由度が高くでき、好ましい。
【0102】
以上、本発明のガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法について、詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイ等の製造に利用されるガスバリアフィルム等に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 ガスバリアフィルム
12 第1有機層
14 第2有機層
16 無機層
18 第3有機層
20 第4有機層
24 有機成膜装置
26 真空成膜装置
28,52 回転軸
30,106 巻取り軸
32 塗布手段
34 乾燥手段
36 硬化手段
38,54 ガイドローラ
40,42,110 基板ロール
46 供給室
48 真空成膜室
50 巻取り室
56,72 隔壁
58 スリット
60 第2有機層成膜部
62 無機層成膜部
64 第3有機層成膜部
68 ドラム
70,80,96,104 真空排気手段
74,98 蒸着部
76,100 硬化手段
78、102 有機原料供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧中で成膜された第1有機層と、真空中で成膜された前記第1有機層上の第2有機層と、真空中で成膜された前記第2有機層上の無機層とを有することを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記第1有機層、第2有機層、および無機層の組み合わせを、複数、有する請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記無機層の上に、真空中で成膜された第3有機層を有する請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
最上層に、大気圧中で成膜された第4有機層を有する請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
隣接して成膜される前記第1有機層および第2有機層の膜厚の合計が0.3〜5μmであり、
かつ、前記第2有機層の膜厚が、0.5μm以下、もしくは、前記隣接する前記第1有機層と第2有機層との合計膜厚の50%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
隣接して成膜される前記第1有機層、第2有機層および第3有機層の膜厚の合計が0.3〜5μmであり、
かつ、その内の第2有機層および第3有機層の膜厚が、0.5μm以下、もしくは、前記隣接する第1〜第3有機層の合計膜厚の25%以下である請求項3〜5のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記無機層の膜厚が10〜300nmである請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記無機層が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、これらの2以上の混合物、および、これらの水素含有物のいずれかである請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記第1有機層および第2有機層は、主成分が同系の材料である請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
水蒸気透過率が1×10-3[g/(m2・day)]以下である請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項11】
長尺な基板フィルムを長手方向に搬送しつつ、この基板フィルムの表面に、大気圧中において第1有機層を成膜し、この第1有機層の上に、真空中において第2有機層を成膜し、この第2有機層の上に、真空中において無機層を成膜することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記第2有機層を成膜した後、前記無機層を成膜するまで、前記第2有機層表面の製品となる領域に固体が接触しない請求項11に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記第1有機層、第2有機層および無機層の成膜を1つの工程として、この工程を複数回行なう請求項11または12に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記無機層の上に、さらに、真空中において第3有機層を成膜する請求項11〜13のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記無機層を成膜した後、前記第3有機層を成膜するまで、前記無機層表面の製品となる領域に固体が接触しない請求項14に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項16】
最上層に、大気圧中で第4有機層を成膜する請求項11〜15のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記第1有機層あるいはさらに第4有機層が、塗布法によって成膜される請求項11〜16のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記第2有機層あるいはさらに第3有機層が、フラッシュ蒸着法によって成膜される請求項11〜17のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項19】
真空中での成膜時における前記基板フィルムの搬送速度が10m/min以上である請求項11〜18のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46060(P2011−46060A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195671(P2009−195671)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】