説明

ガス検出装置

【課題】導入口への呼気導入の確実性を向上させる。
【解決手段】視線ターゲット26を目視した状態で呼気を吹き出す。視線ターゲット26と導入口20Aとの位置は、視線ターゲット26を目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が導入口20Aから導入されるように定められているため、吹き出された呼気は導入口20Aから呼気導入管20へ導入される。流速センサ30が、導入された呼気の流速を検出し、呼気の流速が予め定めた値(例えば、1m/s)を超えると、流速センサ30は、検出信号を出力し、スピーカ28から呼気が正常に導入されたことを報知するメッセージやブザー音が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に係り、特に人間の呼気に含まれるエタノール等の検出対象ガスを検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管の一端を吸引ポンプに連結し、他端を車室内の運転席近傍に配置して開口し、ドライバ等の被検者の呼気の一部を吸引ポンプにより流路に導入し、流路の途中に配置したガスセンサにより、ドライバの呼気中のエタノールを検出することが行われている。
【0003】
このように、呼気中のエタノールを検出するためには、流路内に一定流量以上の呼気が導入される必要がある。そこで、導入された呼気の風速によって音量や周波数が変化する笛を流路内に設けて、笛から呼気の風速に応じた音を出力することにより、所定量の呼気が導入されたか否かを被検者に報知する酒気帯びチェッカーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−201097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の酒気帯びチェッカーでは、被検者が笛の音を耳によって確認して、導入口に対する呼気吹きかけ量が一定になるように工夫する必要があり、被検者に負担を強いることになる、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために成されたものであり、導入口への呼気導入の確実性を向上させることができるガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明に係るガス検出装置は、導入口から導入された呼気中の対象ガスを検出するためのガス検出手段と、視線の目標となるターゲットとを含んで構成され、前記ターゲットを目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が前記導入口から導入されるように前記ターゲットと前記導入口との位置を定めたことを特徴とする。
【0008】
第1の発明に係るガス検出装置によれば、視線の目標となるターゲットと、呼気の導入口との位置が、ターゲットを目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が導入口から導入されるように定められているため、ターゲットを目視しながら呼気を吹きかけることにより、導入口へ適切に呼気が導入され、導入口への呼気導入の確実性が向上する。
【0009】
また、第1の発明に係るガス検出装置は、前記導入口から導入された呼気の流速または流速に関連した物理量を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された値が予め定めた値を超えた場合に、正常に呼気が導入されたことを報知する報知手段とを含んで構成するようにすることができる。これにより、呼気が正常に導入されたか否かを被検者に報知することができる。
【0010】
また、第2の発明に係るガス検出装置は、導入口から導入された呼気中の対象ガスを検出するためのガス検出手段と、前記導入口から導入された呼気の流速に応じて大きくなる物理量を検出する検出手段と、前記検出手段で検出した物理量に応じた強度で発光する発光手段とを含んで構成され、前記発光手段を目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が前記導入口から導入されるように前記発光手段と前記導入口との位置を定めたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係るガス検出装置によれば、検出手段が、導入口から導入された呼気の流速に応じて大きくなる物理量を検出し、発光手段が、検出手段で検出した物理量に応じた強度で発光する。この発光手段と呼気の導入口との位置が、発光手段を目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が導入口から導入されるように定められているため、発光手段を目視しながら呼気を吹きかけることにより、導入口へ適切に呼気が導入され、導入口への呼気導入の確実性が向上すると共に、呼気が正常に導入されたか否かを被検者に報知することができる。
【0012】
また、前記検出手段を、呼気の流速を検出する流速センサ、空気圧の変化を検出する圧力センサ、または回転体の回転数を検出する回転センサで構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のガス検出装置によれば、導入口への呼気導入の確実性を向上させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係るアルコール検出装置の取付位置を説明するための概略図である。
【図2】第1の実施の形態に係るアルコール検出装置の呼気導入管部分を示す概略図である。
【図3】呼気吹きかけ位置と視線位置との関係を説明するための図である。
【図4】視線ターゲットの位置の定め方の一例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係るアルコール検出装置の構成を示す概略図である。
【図6】第2の実施の形態に係るアルコール検出装置の呼気導入管部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載され、ドライバの呼気からエチルアルコールを検出するアルコール検出装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0016】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るアルコール検出装置10は、運転席に設けられたステアリングコラム12の、ドライバの呼気が到達可能な位置に取り付けられている。
【0017】
アルコール検出装置10は、先端部に拡径した導入口20Aが形成された細長円筒状の呼気導入管20を備えており、呼気導入管20の中間部の内部にはセンサ群24が取り付けられている。また、アルコール検出装置10は、後述する視線ターゲット26、及び音声やブザー音を出力するためのスピーカ28を備えている。
【0018】
図2に示すように、センサ群24は、呼気導入管20の中間部の内部に対向するように取り付けられた、ガスセンサ24A及びガスセンサ24Bとで構成されている。ガスセンサ24A及びガスセンサ24Bは、例えば、アルコールセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、及び湿度センサ等の対象ガスを検出するために必要なガスセンサを用いることができる。なお、ガスセンサの数は2個に限らず、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0019】
また、導入口20Aには、導入された呼気の流速を検出する流速センサ30が備えられている。呼気は、口元をノズルと仮定した場合に、ノズルから噴出する放射状の噴流となることが公知事実として知られている。この場合、噴流の中心部が最大圧力、最大流速分布となる。これを流速センサ30で検出する。
【0020】
流速センサ30は、導入された呼気の流速が予め定めた値(例えば、1m/s)を超えた場合に、検出信号を出力する。この値は、アルコール検出に必要な呼気流量を得るための閾値として予め定めておく。
【0021】
なお、ここでは、流速センサ30を用いる場合について説明したが、流速に関連した物理量を検出できるもの、すなわち、流速によって生じる変化を検出できるものであればよい。例えば、空気圧の変化を検出する圧力センサを用いてもよい。また、導入口20Aに流速によって回転数が変化するインペラを設けて、呼気の導入により回転したインペラの回転数を検出する回転センサを用いてもよい。
【0022】
スピーカ28は、流速センサ30から検出信号が出力されると、呼気が正常に導入されたことを報知するためのメッセージやブザー音などを出力する。なお、呼気が正常に導入されたことを報知するものとして、LEDランプなどを用いてもよい。
【0023】
ここで、視線ターゲット26が配置される位置について説明する。
【0024】
図3(A)に示すように、通常はドライバの口元から導入口20Aへ向けて呼気が吹き出されるように、導入口20Aに向かって呼気を吹きかけるが、図3(B)に示すように、呼気が吹きかけられるべき導入口20A自体を視線ターゲット26として呼気を吹きかけると、視線の目標位置と口元の位置との距離感覚のずれにより、吹きかけた呼気が導入口20Aからずれる現象が生じる場合がある。この現象は、特に、ドライバの口元と導入口20Aとの距離が離れている場合に顕著となる。そこで、視線ターゲット26と導入口20Aとは異なるものとする。すなわち、導入口20A自体を視線ターゲット26とするのではなく、導入口20Aとは別に視線ターゲット26を設ける。
【0025】
視線ターゲット26を設ける位置は、視線ターゲット26を目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が導入口20Aから導入されるように導入口20Aとの位置関係により
定める。
【0026】
具体的には、ドライバがシートに着座したときの、ドラバの口元と導入口20Aとを結ぶ直線と平行であって、ドライバの目元を通る直線上に配置することができる。例えば、図4に示すように、ドライバの正面方向に導入口20Aがあり、ドライバの目元と口元とを結ぶ直線と、導入口20Aと視線ターゲット26が設けられる点とを結ぶ直線が平行の場合には、視線ターゲット26は、ドライバの目元と口元との間隔と、導入口20Aと視線ターゲット26との間隔が等しくなる位置に、視線ターゲット26を配置することができる。
【0027】
また、ドライバの体格や、目元と口元との間隔、及び視線の目標位置と口元の位置との距離感覚のずれ等は個人差があるため、実際に、視線位置と呼気吹きかけ位置の導入口20Aからのずれ量とを実験で測定し、導入口20Aへ呼気が適切に導入される視線ターゲット26と導入口20Aとの位置関係を求めてもよい。
【0028】
なお、視線ターゲット26は、シールやマーキングなどを用いることができるが、注意を向けやすいという点で、LEDランプが適している。
【0029】
次に、第1の実施の形態のアルコール検出装置10の作用について説明する。
【0030】
まず、ドライバは、車両に乗車してシートに着座し、視線ターゲット26を目視する。この状態で、ドライバは呼気を吹き出す。視線ターゲット26と導入口20Aとの位置関係が適切に定められているため、吹き出された呼気は導入口20Aへ向かい、導入口20Aから呼気導入管20へ導入される。
【0031】
流速センサ30は、呼気導入管20へ導入された呼気の流速を検出する。呼気の流速が予め定めた値(例えば、1m/s)を超えると、流速センサ30は、検出信号を出力する。流速センサ30から検出信号が出力されると、スピーカ28から呼気が正常に導入されたことを報知するメッセージやブザー音を出力する。これにより、ドライバは、呼気が正常に導入されたことを確認できる。
【0032】
呼気の流速が予め定めた値を超えない場合には、流速センサ30から検出信号が出力されず、スピーカ28から報知もされない。これにより、ドライバは、スピーカ28から呼気が正常に導入されたことが報知されるまで、呼気の吹き出しを継続する。
【0033】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかるアルコール検出装置10によれば、視線ターゲットを目視することにより、吹きかけられた呼気が導入口からずれることを防止し、導入口への呼気導入の確実性を向上させることができる。また、呼気が正常に導入された場合には、その旨が報知されるため、利便性が向上する。
【0034】
次に、第2の実施の形態に係るアルコール検出装置について説明する。第1の実施の形態に係るアルコール検出装置10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図5に示すように、第2の実施の形態に係るアルコール検出装置210は、ドライバの視線目標位置にLEDランプ226が設けられている。LEDランプ226が配置される位置は、第1の実施の形態における視線ターゲットが配置される位置と同様である。
【0036】
また、図6に示すように、アルコール検出装置210の導入口20Aには、インペラ32及び回転センサ230が設けられている。
【0037】
インペラ32は、導入口20Aに吹きかけられた呼気の流速に応じた回転数で回転する。インペラ32が回転することにより、導入口20Aから導入された呼気が攪拌及び混合され、呼気導入管20内の流速が略均一化される。これにより、ガスセンサ24A及びガスセンサ24Bに呼気が均一に当たり、安定した出力が得られる。
【0038】
なお、インペラ32は呼気の流速によって回転するため、電力供給を必要とする呼気攪拌のためのファンモータと比較して、車載用として適している。
【0039】
回転センサ230は、インペラ32の回転数を検出し、回転数に応じた検出信号を出力する。回転センサ230から検出信号が検出されると、LEDランプ226は、検出信号に応じた強度で発光する。なお、LEDランプ226を検出信号に応じた間隔で点滅させたり、発光色を変化させたりしてもよい。
【0040】
次に、第2の実施の形態のアルコール検出装置210の作用について説明する。
【0041】
まず、ドライバは、車両に乗車してシートに着座し、LEDランプ226を目視する。この状態で、ドライバは呼気を吹き出す。LEDランプ226と導入口20Aとの位置関係が適切に定められているため、吹き出された呼気は導入口20Aへ向かう。
【0042】
吹き出された呼気は、導入口20Aでインペラ32を回転させて、その回転により均一な流速となって呼気導入管20へ導入される。
【0043】
回転センサ230は、インペラ32の回転数を検出し、回転数に応じた検出信号を出力する。LEDランプ226は、検出信号に応じた強度で発光する。これにより、ドライバは、呼気が正常に導入されたか否か、またその程度を確認することができる。
【0044】
以上説明したように、第2の実施の形態にかかるアルコール検出装置によれば、第1の実施の形態における視線ターゲットが報知手段を兼ねることとなり、呼気が正常に導入されたか否かをより直感的に把握することができる。
【0045】
なお、第2の実施の形態では、インペラの回転数に応じてLEDランプを発光させる場合について説明したが、導入口に流速センサまたは圧力センサを設けて、流速センサまたは圧力センサの検出信号の大きさに応じてLEDランプを発光させるようにしてもよい。
【0046】
また、第2の実施の形態では、LEDの発光により呼気が正常に導入されたか否かを報知する場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、スピーカからの出力による報知とあわせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、210 アルコール検出装置
20 呼気導入管
20A 導入口
24 センサ群
26 視線ターゲット
28 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口から導入された呼気中の対象ガスを検出するためのガス検出手段と、
視線の目標となるターゲットと、を含み、
前記ターゲットを目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が前記導入口から導入されるように前記ターゲットと前記導入口との位置を定めたガス検出装置。
【請求項2】
前記導入口から導入された呼気の流速または流速に関連した物理量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された値が予め定めた値を超えた場合に、正常に呼気が導入されたことを報知する報知手段と、
を含む請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】
導入口から導入された呼気中の対象ガスを検出するためのガス検出手段と、
前記導入口から導入された呼気の流速に応じて大きくなる物理量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した物理量に応じた強度で発光する発光手段と、を含み、
前記発光手段を目視しながら呼気を吹きかけたときに、呼気が前記導入口から導入されるように前記発光手段と前記導入口との位置を定めたガス検出装置。
【請求項4】
前記検出手段を、呼気の流速を検出する流速センサ、空気圧の変化を検出する圧力センサ、または回転体の回転数を検出する回転センサで構成した請求項2または請求項3記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175319(P2010−175319A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16586(P2009−16586)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】