説明

ガラスアンテナ用フィルタ装置及び車両用窓ガラス

【課題】本発明は、2極タイプのガラスアンテナのアース側給電部が電気的に接続されたデフォッガに、他のメディアのガラスアンテナのアンテナ導体を電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、両ガラスアンテナを共存させることができる、車両用窓ガラス等の提供を目的とする。
【解決手段】双極型ガラスアンテナ22と、単極型ガラスアンテナ21と、ガラスアンテナ22のアンテナ導体14に電気的に接続されたデフォッガ30とを備える車両用窓ガラスであって、デフォッガ30とガラスアンテナ21のアース側給電部17との間に流れる漏洩信号を濾波するフィルタ装置10が、インピーダンスが極大となる共振点を第1の周波数帯に有し、該第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯のインピーダンスが、該第1の周波数帯の前記インピーダンスに比べて低い、車両用窓ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取り付けられた窓ガラスに設けられたデフォッガと車体側のグランドとの間に流れる電気信号を減衰させる、ガラスアンテナ用フィルタ装置及び車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、高周波数帯、特には地上波デジタルテレビ放送帯の電波の受信に適した給電部とアース側給電部とを備える2極タイプの車両用高周波ガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的には、給電部には線状のアンテナ導体が接続され、アース側給電部には線状のアース導体が接続されている。そして、ガラスアンテナで受信した信号を取り出す給電線として同軸ケーブルが用いられ、同軸ケーブルの内部導体が給電部に接続され、同軸ケーブルの外部導体がアース側給電部に接続され、車体側などに設けられたアンプに同軸ケーブルを介して接続されている。同軸ケーブルの外部導体は、アンプのグランドを介して車体のグランドに接続されることになる。特許文献1に記載された2極タイプのガラスアンテナの場合、アース導体として窓ガラスの曇りを除去するためのヒータ線からなるデフォッガがアース側給電部に接続される。アース側給電部とデフォッガとを電気的に接続することによって、アンテナ利得の向上が図られている。
【0003】
一方、車両の後部に取り付けられるリヤガラスには、地上波デジタルテレビ用のガラスアンテナの他にも様々なメディアの、例えばFM帯用のガラスアンテナが設置されている。FM用ガラスアンテナは、給電部のみの単極タイプが多いが、アンテナ利得を向上させるために、アンテナ導体とデフォッガとを電気的に接続することがある。
【0004】
デフォッガには、ヒータ線に給電するための複数のバスバが設けられている。例えば、窓ガラスに設けられた一対のバスバのうち、一方のバスバは直流電源の正極側に電気的に接続され、もう一方のバスバは車体側のグランドに電気的に接続されている。
【0005】
従来、FM用ガラスアンテナをデフォッガに電気的に接続する場合、FMの周波数帯で高インピーダンスになるコイル(例えば、特許文献2参照)をバスバに接続することによって、受信した電波が車体側のグランドに流れることによって生ずるアンテナ利得の低下を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/001798号パンフレット
【特許文献2】特開2001−167937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、2極タイプのガラスアンテナのアース側給電部が電気的に接続されたデフォッガに、FMなどの他のメディアのガラスアンテナを電気的に接続する場合、上述のようなコイルがデフォッガのバスバに電気的に接続されていても、電波の受信により生じた信号が該2極タイプのガラスアンテナのアース側給電部を介して車体側のグランドに漏洩してしまうため、他のメディアのガラスアンテナのアンテナ利得が低下するおそれがある。
【0008】
一方、2極タイプのガラスアンテナで受信される周波数帯の信号は、デフォッガとアース側給電部との間で遮断されると、該2極タイプのガラスアンテナのアンテナ利得が低下するおそれがあり、他のメディアのアンテナ利得のみを考慮すればよいという問題ではない。
【0009】
そこで、本発明は、2極タイプのガラスアンテナのアース側給電部が電気的に接続されたデフォッガに、他のメディアのガラスアンテナのアンテナ導体を電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、同じ窓ガラスに両ガラスアンテナを共存させることができる、ガラスアンテナ用フィルタ装置及び車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るガラスアンテナ用フィルタ装置は、車体に取り付けられた窓ガラスに設けられたデフォッガと車体側のグランドとの間に流れる電気信号の特定の周波数成分を減衰させるガラスアンテナ用フィルタ装置であって、前記電気信号が入出力される第1及び第2の端子と、フィルタ回路とを含み、前記フィルタ回路は、前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を第1の周波数帯またはその近傍に有し、該第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯の前記インピーダンスが、該第1の周波数帯の前記インピーダンスに比べて低いことを特徴とするものである。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る車両用窓ガラスは、第1の周波数帯用のL帯用ガラスアンテナと、給電部とアース側給電部とを有する、前記第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯用のH帯用ガラスアンテナと、前記アース側給電部と電気的に接続されたデフォッガと、が設けられた車両用窓ガラスにおいて、前記L帯用ガラスアンテナと前記デフォッガとが電気的に接続され、前記デフォッガから前記アース側給電部を経由して車体側のグランドに到達する経路中に、該経路中に流れる電気信号の特定の周波数成分を減衰させるガラスアンテナ用フィルタ装置が直列に設けられ、前記ガラスアンテナ用フィルタ装置は、前記電気信号が入出力される第1及び第2の端子と、フィルタ回路とを含み、前記フィルタ回路は、前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を前記第1の周波数帯およびその近傍に有し、該第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯の前記インピーダンスが、該第1の周波数帯の前記インピーダンスに比べて低いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2極タイプのガラスアンテナのアース側給電部と電気的に接続されたデフォッガに、他のメディアのガラスアンテナのアンテナ導体を電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、同じ窓ガラスに両ガラスアンテナを共存させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用窓ガラス100の平面図である。
【図2】本発明に係るガラスアンテナ用フィルタ装置10の構成図である。
【図3】車両用窓ガラス100の具体例である。
【図4】車両用窓ガラス100と同軸ケーブル70との接続例である。
【図5】フィルタ回路の定数を変化させたときの特性図である。
【図6】FM帯の水平偏波のときのアンテナ利得の周波数特性図である。
【図7】FM帯の垂直偏波のときのアンテナ利得の周波数特性図である。
【図8】地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得の周波数特性である。
【図9】車両用窓ガラス100と同軸ケーブル70とフィルタ装置80との接続例である。
【図10】アンプ89と図2に示したフィルタ回路とを内蔵するフィルタ装置80の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、アンテナの形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとする。また、それらの図面は、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視の図であるが、車外視の図として参照してもよい。例えば、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリヤガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。また、本発明は、リヤガラスに限定されず、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスでもよい。また、本発明でいう「電気的に接続する」とは直流的に接続する(導体が直接繋がり、直流的に導通している状態)ことと、交流的に接続する(導体は分離されているが、高周波的には導通している状態)ことのどちらでもよいことを意味する。
【0015】
図1は、本発明に係る車両用窓ガラス100の平面図である。車両用窓ガラス100は、車両の窓開口部の形状に適用できるように成形されたガラス板12と、ガラスアンテナ用フィルタ装置10とを備える。
【0016】
ガラス板12には、第1の周波数帯の電波を所定の要求基準を満たして受信できるようにチューニングされた第1の周波数帯用のガラスアンテナ22(L帯用ガラスアンテナ)と、第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を所定の要求基準を満たして受信できるようにチューニングされた第2の周波数帯用のガラスアンテナ21(H帯用ガラスアンテナ)と、L帯用ガラスアンテナ22のL帯用アンテナ導体14に電気的に接続されたデフォッガ30とが平面的に設けられている。
【0017】
例えば、第1の周波数帯としてVHF帯が設定され、第2の周波数帯としてUHF帯が設定される。30M〜0.3GHzに含まれるVHF帯の電波の用途として、例えば、FMラジオ放送やVHFテレビ放送などが挙げられる。また、0.3G〜3GHzに含まれるUHF帯の電波の用途として、例えば、UHFテレビ放送、地上デジタルテレビ放送などが挙げられる。
【0018】
L帯用ガラスアンテナ22は、車体側に搭載された信号処理装置(例えば、アンプなど)に結線された信号線に導通可能に接続されるL帯用給電部15と、L帯用給電部15に接続されたL帯用アンテナ導体14とを備える。L帯用給電部15は、いわゆる給電点である。L帯用アンテナ導体14は、L帯用ガラスアンテナ22が受信すべき周波数帯の電波の受信に適した形状と寸法によって形成される。すなわち、L帯用アンテナ導体14の形状と寸法は、L帯用ガラスアンテナ22が受信すべき周波数帯の電波を受信するために必要なアンテナ利得の要求値を満たすように設定されていればよい。
【0019】
例えば、第1の周波数帯が日本のFM放送帯76〜90MHzの場合、日本のFM放送帯76〜90MHzの電波の受信に適するようにL帯用アンテナ導体14は形成される。同様に、第1の周波数帯が米国のFM放送帯88〜108MHzの場合、米国のFM放送帯88〜108MHzの電波の受信に適するようにL帯用アンテナ導体14は形成される。もちろん、日本と米国を合わせたFM放送帯76〜108MHzの電波の受信に適するようにL帯用アンテナ導体14は形成されてもよい。
【0020】
また、L帯用ガラスアンテナ22が受信すべき周波数帯の電波の受信に適した位置であれば、L帯用ガラスアンテナ22のガラス板12上の配置位置は、特に限定されない。図1の場合、デフォッガ30とガラス板12の上側縁部との間のガラス板12の空白領域に配置されている。なお、L帯用ガラスアンテナ22は、アース側給電部を備えていない単極タイプのガラスアンテナであるが、アース導体とアース側給電部とを備える2極タイプのガラスアンテナであってもよく、その場合でもL帯用アンテナ導体14がデフォッガに電気的に接続される。
【0021】
L帯用ガラスアンテナ22は、ダイバーシティアンテナを構成する複数のガラスアンテナのうちの一つであってもよい。例えば、L帯用ガラスアンテナ22と、ガラスアンテナ22と同じガラス板12に設けられた同じ周波数帯用の第2L帯用ガラスアンテナ23(図1に点線で表示)とによって、ダイバーシティガラスアンテナが構成される。デフォッガ30に電気的に非接続な又は容量的に接続された第2L帯用ガラスアンテナ23は、車体側に搭載された信号処理装置(例えば、アンプなど)に結線された信号線に導通可能に接続される第2L帯用給電部19と、第2L帯用給電部19に接続された第2L帯用アンテナ導体20とを備える。第2L帯用ガラスアンテナ23についても、L帯用ガラスアンテナ22と同様に、受信すべき周波数帯の電波を受信するために必要な寸法等の条件を満たすように設定されていればよい。
【0022】
一方、H帯用ガラスアンテナ21は、信号線側の給電部16と、アース線側のアース側給電部17と、給電部16に接続されたアンテナ導体18とを備える2極タイプのガラスアンテナである。給電部16は、車体側に搭載された信号処理装置(例えば、アンプなど)に結線された信号線に導通可能に接続される。アース側給電部17は、車体側のグランド部位に結線された接地線に導通可能に接続される。車体側のグランド部位として、例えば、ボディーアース、給電部16に接続される信号線が結線される信号処理装置のグランドなどが挙げられる。アース側給電部17には、アンテナ利得調整用の導体が接続されてもよい。アンテナ導体18は、H帯用ガラスアンテナ21が受信すべき周波数帯の電波の受信に適した形状と寸法によって形成される。すなわち、アンテナ導体18の形状と寸法は、H帯用ガラスアンテナ21が受信すべき周波数帯の電波を受信するために必要なアンテナ利得の要求値を満たすように設定されていればよい。
【0023】
例えば、第2の周波数帯が地上デジタルテレビ放送帯470〜770MHzの場合、地上デジタルテレビ放送帯470〜770MHzの電波の受信に適するようにアンテナ導体18は形成される。
【0024】
また、H帯用ガラスアンテナ21が受信すべき周波数帯の電波の受信に適した位置であれば、H帯用ガラスアンテナ21のガラス板12上の配置位置は、特に限定されない。図1の場合、デフォッガ30とガラス板12の上側縁部との間のガラス板12の右側空白領域に配置されている。
【0025】
デフォッガ30は、複数の並走するヒータ線(図1では、14本のヒータ線30a〜30nを例示)と該ヒータ線に給電するための複数の帯状のバスバ(図1では、2つのバスバ31A,31Bを例示)とを有する通電加熱式のパターンである。複数のヒータ線は、例えば、窓ガラス12を車両に取り付けた状態で水平面(地平面)に対して平行な方向に並走するように窓ガラス12に配置される。互いに並走するヒータ線は、2本以上あればよい。並走する複数のヒータ線は短絡線32により短絡されている。短絡線32は、ヒータ線の並走方向でのデフォッガ30(又は、窓ガラス12)の中央部に、上下方向に延伸している。なお、短絡線はガラスアンテナのアンテナ利得の調整として利用され、長さは適宜調整され、2本以上あってもよい。また短絡線が無くてもよい。バスバ31A,31Bは、図1の場合、窓ガラス12の左側領域及び右側領域にそれぞれ少なくとも1本ずつ設けられており、窓ガラス12の縦方向又は略縦方向に伸長されている。
【0026】
バスバ31Aは、コイル50Aを介して直流電源60の正極側に接続され、バスバ31Bは、コイル50Bを介して車体等のグランド部位に接続されている。直流電源60によって、ヒータ線に通電が行われる。コイル50A,50Bは、第1の周波数帯以上の周波数(第1の周波数帯内の周波数を含む)でインピーダンスが高くなることによって、当該周波数の電気信号の通過を抑制する。
【0027】
L帯用ガラスアンテナ22のL帯用アンテナ導体14とデフォッガ30の少なくともいずれか一方によって受信された電波の受信信号が、L帯用給電部15に電気的に接続された導電性部材を介して、車両に搭載された信号処理装置に伝達される。
【0028】
導電性部材として、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が用いられる。同軸ケーブルを用いる場合には、同軸ケーブルの内部導体を給電部15に電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体を車体にアース接続すればよい。
【0029】
また、信号処理回路に接続されている導線等の導電性部材とL帯用給電部15とを電気的に接続するための端子を、L帯用給電部15に実装する構成を採用してもよい。このような端子によって、給電線をL帯用給電部15に取り付けることが容易になる。さらにL帯用給電部15に突起状の導電性部材を設置し、ガラス板12が取り付けられる車体のフランジにその突起状の導電性部材が接触、嵌合するような構成としてもよい。
【0030】
ダイバーシティを構成する第2L帯用ガラスアンテナ23についても同様である。
【0031】
一方、H帯用ガラスアンテナ21のアンテナ導体18によって受信された電波の受信信号が、デフォッガ30に後述のフィルタ装置10を介して接続されたアース側給電部17を基準に、給電部16に電気的に接続された導電性部材を介して、車両に搭載された信号処理装置に伝達される。
【0032】
アンテナ導体18に給電部16を介して給電するための給電線として、同軸ケーブルを用いる場合には、同軸ケーブルの内部導体を給電部16に電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体をアース側給電部17に接続すればよい。また、信号処理装置に接続されている導線等の導電性部材と給電部16、アース側給電部17それぞれとを電気的に接続するためのコネクタを、給電部16、アース側給電部17それぞれに実装する構成を採用してもよい。このようなコネクタによって、同軸ケーブルの内部導体を給電部16に取り付けることが容易になるとともに、同軸ケーブルの外部導体をアース側給電部17に取り付けることが容易になる。さらに、給電部16、アース側給電部17それぞれに突起状の導電性部材を設置し、ガラス板12が取り付けられる車体のフランジにその突起状の導電性部材が接触、嵌合するような構成としてもよい。
【0033】
また、L帯用給電部15,給電部16,アース側給電部17,第2L帯用給電部19、L帯用アンテナ導体14,アンテナ導体18,第2L帯用アンテナ導体20及びデフォッガ30は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを窓ガラス板の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラスの車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により貼付してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。
【0034】
各給電部の形状、及び給電部16とアース側給電部17との間隔は、上記の導電性部材又はコネクタの実装面の形状や、それらの実装面の間隔に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。また、給電部16の面積と給電部17の面積は等しくても、異なっていてもよい。
【0035】
また、各アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、各アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0036】
フィルタ装置10は、デフォッガ30のバスバ31Bと車体側のグランド部位に導通可能に接続されたアース側給電部17とを電気的に結ぶ信号経路を内蔵する。フィルタ装置10は、デフォッガ30とアース線側給電部17とを電気的に結ぶ信号経路に流れる微小な電気信号の特定の周波数成分を減衰させる。すなわち、フィルタ装置10は、いわゆるバンドエリミネーションフィルタの特性を有する。デフォッガ30とアース側給電部17とを電気的に結ぶ信号経路に流れる微小な電気信号は、デフォッガ30とデフォッガ30に電気的に接続されたガラスアンテナ22の少なくともいずれか一方が電波を受信することによって発生する。また、ガラスアンテナ21が電波を受信することによっても発生する。
【0037】
図2は、フィルタ装置10の構成図である。フィルタ装置10は、車体に取り付けられた窓ガラスに設けられたデフォッガと車体側のグランドとの間に流れる電気信号(漏洩信号)を濾波するための装置である。フィルタ装置10は、漏洩信号の第1の入出力端子である第1の端子3と、漏洩信号の第2の入出力端子である第2の端子4と、第1の端子3と第2の端子4との間の信号経路を伝達する漏洩信号を特定の周波数で濾波するフィルタ回路とを備える。
【0038】
第1及び第2の端子3,4は、フィルタ装置10の取り付け位置と電気的に接続するための接点部である。例えば、第1の端子3が、図1のバスバ31Bの上端部33Bにハンダ等によって接合され、第2の端子4が、図1のアース側給電部17にハンダ等によって接合される。逆に、第1の端子3が、アース側給電部17にハンダ等によって接合され、第2の端子4が、バスバ31Bの上端部33Bにハンダ等によって接合されてもよい。
【0039】
フィルタ回路は、デフォッガから流れ出る直流電流の通過を遮断する第1のフィルタとして、直流遮断部1を備え、漏洩信号の特定の周波数成分の通過を制限する第2のフィルタとして、交流遮断部2を備える、共振回路である。フィルタ回路は、第2の端子4に接続された直流遮断部1と第1の端子3に接続された交流遮断部2とが直列に接続された一端子対回路である。
【0040】
直流遮断部1は、例えば、第1の端子3と第2の端子4との間の信号経路上に直列に挿入されたキャパシタC1を備える。直流電源60から供給される直流電流を遮断しなければ、アース側給電部17に接続された接地線側から車体側に設けられた信号処理装置まで直流電流が流れて信号処理装置の故障の原因となるおそれがある。よって、直列にキャパシタを構成することにより、直流電流を完全に遮断できる。なお、直流遮断部1は必ずしもフィルタ回路に設ける必要はなく、デフォッガから信号処理装置などの故障のおそれのある電子機器までの信号経路に設ければよい。
【0041】
交流遮断部2は、例えば、第1の端子3と第2の端子4との間の信号経路上に直列に挿入された並列LC回路を備え、特定の周波数範囲内の信号の通過を制限する。並列LC回路は、インダクタL1とキャパシタC3とが並列に接続される。
【0042】
図2に示した構成は例示である。上述の例示した構成と同様の機能を有していれば、他の構成によって、フィルタ装置10を実現してもよい。
【0043】
また、バスバ31A,31Bがコイル50A,50Bを介して車体側に接続されているので、L帯用アンテナ導体14がそのアンテナ利得向上のためにヒータ線(図1の場合、最上段のヒータ線30a)に接続点Pで接続されていても、L帯用アンテナ導体14とデフォッガ30の少なくともいずれか一方が電波を受信することにより生じた微小な電気信号が車体側のグランドに漏洩することによって、アンテナ利得が低下することを防ぐことができる。
【0044】
さらに、フィルタ装置10のフィルタ回路が、一端子対3,4から見た内蔵信号経路のインピーダンスが極大となる共振点を第1の周波数帯またはその近傍に有し、第1の周波数帯で高インピーダンスとなる特性を備え且つ第2の周波数帯で低インピーダンスとなる特性を備えることによって、H帯用ガラスアンテナ21のアース側給電部17が電気的に接続されたデフォッガ30に、L帯用ガラスアンテナ22を電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、同じ窓ガラス12に両ガラスアンテナ21,22を共存させることができる。付言すれば、第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯の一端子対3,4から見た内蔵信号経路のインピーダンスが、第1の周波数帯の該インピーダンスに比べて低いことによって、H帯用ガラスアンテナ21のアース側給電部17が電気的に接続されたデフォッガ30に、L帯用ガラスアンテナ22を電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、同じ窓ガラス12に両ガラスアンテナ21,22を共存させることができる。
【0045】
すなわち、アンテナ導体18が電波(例えば、UHF帯の電波)を受信することにより生じた微小な電気信号は、フィルタ装置10内蔵のフィルタ回路によってほとんど減衰されずにそのまま通過するので、H帯用ガラスアンテナ21のアンテナ利得の低下を抑制することができる。一方、L帯用アンテナ導体14とデフォッガ30の少なくともいずれか一方が電波(例えば、VHF帯の電波)を受信することにより生じた微小な電気信号は、フィルタ装置10内蔵のフィルタ回路によって大きく減衰されるので、デフォッガ30とアース側給電部17とがフィルタ装置10を介して電気的に接続されていても、アース側給電部17を通じて電波が車体側のグランドに漏洩することを防ぎ、L帯用ガラスアンテナ22のアンテナ利得の低下を抑制することができる。
【0046】
第1の周波数帯がFM帯である場合は、フィルタ回路が、一端子対3,4から見た内蔵信号経路のインピーダンスが極大となる共振点を68MHz以上124MHz以下の周波数帯(好ましくは、76MHz以上100MHz以下の周波数帯)に有するインピーダンス特性を備えることによって、FM用のガラスアンテナ22のアンテナ利得の低下を抑制することができる。
【0047】
また、フィルタ装置10のフィルタ回路が、一端子対3,4から見た内蔵信号経路のインピーダンス特性が単一共振であることによって、第1の周波数帯よりも高域の第2の周波数帯でのインピーダンスを低インピーダンスにすることが容易となる。通常は2共振以上のインピーダンス特性を有すると、広い周波数帯において高インピーダンスとなるため、単一共振である方が第2の周波数帯を低インピーダンスの特性にすることが容易となる。なお、第1の周波数帯が広帯域である場合には、2共振以上のインピーダンス特性を有することにより、第1の周波数帯の全域でアンテナ利得の低下を抑制することができるので、共振の数は周波数の帯域幅によって選択される。
【0048】
車両に対する窓ガラスの取り付け角度は、水平面(地平面)に対し、15〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0049】
また、図9,10を用いて他の実施形態について説明する。図9は、車両用窓ガラス100と同軸ケーブル70とフィルタ装置80との接続例である。図10は、アンプ89と図2に示したフィルタ装置10内のフィルタ回路とを内蔵するフィルタ装置80の構成図である。
【0050】
図9において、アース側給電部17とバスバ31Bとは電気的に接続され、アース側給電部17とバスバ31Bとが直流的に接続されている例を示している。アース側給電部17とバスバ31Bは、直流的に接続されることによって、一つの導体として一体化している。
【0051】
図10において、給電部16とアース側給電部17に、フィルタ装置80が実装される。フィルタ装置80は、直流遮断部1と交流遮断部2とを備えるフィルタ回路と、H帯用ガラスアンテナ21によって受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路89とを内蔵する。また、フィルタ装置80は、窓ガラス12上の給電部16に設置可能な端子構造を有する給電部端子86と、窓ガラス12上のアース側給電部17に設置可能な端子構造を有するアース側給電部端子87と、同軸ケーブル70と嵌合可能な嵌合部88とを備える。嵌合部88は、同軸ケーブル70と着脱可能な構成を備える。なお、同軸ケーブルの先端に嵌合部88と容易に着脱可能なプラグを備えていることが好ましい。また、嵌合部88には同軸ケーブル70の内部導体に接続され得る内部導体端子88aと、同軸ケーブル70の外部導体に接続され得る外部導体端子88bとを有している。
【0052】
給電部端子86及びアース側給電部端子87は、例えば、窓ガラス12との接触面を備える電極構造を有する。接触面が平面であることによって、フィルタ装置80を窓ガラス12に安定して設置することができる。
【0053】
アンプ回路89は、給電部端子86と内部導体端子88aとを接続する信号経路に直列に設けられる。アンプ回路89が不要な場合、給電部端子86と内部導体端子88aとを信号経路で直接接続すればよい。
【0054】
給電部端子86は、アンプ回路89の入力端子89aに接続される。アンプ回路89の出力端子89bは、嵌合部88の内部導体端子88aと接続され、アンプ回路89のグランド端子89cは、嵌合部88の外部導体端子88bと接続される。フィルタ回路の第1の端子3がアース側給電部端子87に接続され、フィルタ回路の第2の端子4が外部導体端子88b(アンプ回路89のグランド端子89c)に接続される。逆に、フィルタ回路の第2の端子4がアース側給電部端子87に接続され、フィルタ回路の第1の端子3が外部導体端子88bに接続されてもよい。
【0055】
図9に示されるように、給電部端子86は給電部16にはんだ付けなどで電気的に導通した状態で固定され、アース側給電部端子87はアース側給電部17にはんだ付けなどで電気的に導通した状態で固定される。また、同軸ケーブル70が嵌合部88に嵌合することによって、アンプ回路89の出力端子89bに同軸ケーブル70の内部導体71が接続され、アンプ回路89のグランド端子89cに同軸ケーブル70の外部導体72が接続される。すなわち、フィルタ装置80を窓ガラスに直接設置することにより、アンテナ導体で受信した信号が同軸ケーブルなどの給電線を通る前にアンプによって増幅されるため、信号が減衰する前に増幅できる。
【0056】
このように構成することによって、アース側給電部17から流れてくる第1の周波数帯の信号をアンプ回路89のグランドに漏洩する前に制限することが可能であり、前述の実施形態と同様の効果が得られる。また、フィルタ回路がキャパシタC1等の直流遮断部1を有していれば、直流電源60から供給される直流電流を遮断できる。
【0057】
以上より、アンプ回路が実装されたコネクタ内に、図2に示すフィルタ装置10内のフィルタ回路を実装することにより、アンプ内蔵のコネクタとフィルタ装置10とを一体化することが可能で部品点数を削減できて好ましい。また、このフィルタ装置80により、同軸ケーブル70と給電部及びアース側給電部との接続も容易となる。なお、アンプ回路は必ずしも必要ではなく、フィルタ回路のみ内蔵のコネクタとしても、同軸ケーブル70との接続が容易となり好ましい。
【実施例】
【0058】
上述のガラスアンテナ用フィルタ装置と車両用窓ガラスの形態を実際の車両のリヤガラスの車内視上側に取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、そのアンテナ利得の周波数特性などの実測結果について説明する。
【0059】
図3は、車両用窓ガラス100の具体例である。図4は、車両用窓ガラス100と同軸ケーブル70とガラスアンテナ用フィルタ装置との接続例である。図3,4に示された形態において、L帯用ガラスアンテナ22及びH帯用ガラスアンテナ21Bのアンテナ利得の実測確認を行った。
【0060】
図3において、ガラスアンテナ22は、日本と米国を合わせたFM放送帯76〜108MHzの電波の受信に適したアンテナである。H帯用ガラスアンテナ21Bは、地上デジタルテレビ放送帯470〜770MHzの電波の受信に適したアンテナである。H帯用ガラスアンテナ21Bは、アース側給電部17Bと、アース側給電部17Bに接続された調整エレメント24B、25とを備える。H帯用ガラスアンテナ21Bは、ガラスアンテナ21Aとの組み合わせによって、ダイバーシティ方式を実現できる。
【0061】
図4において、同軸ケーブル70の信号線(内部導体)71が給電部16Bに接続され、同軸ケーブル70の接地線(外部導体)72の一端がアース側給電部17Bに接続され、同軸ケーブル70の接地線72の他端が車体側にアース接続される。また、図2に示すフィルタ装置10は、図4のように、3つの脚部5,6,7により窓ガラスに実装される。フィルタ装置10の両端には、第1の端子3と通電可能に接続されている第1の脚部5及び第2の脚部6があり、実質的にこの2つの脚部5,6でフィルタ装置10を窓ガラスに固定する。もう一つの第3の脚部7は窓ガラスとの対抗面の中央付近に設けられ、第2の端子4に接続される。そして、脚部5が、アース側給電部17Bの下端部13Bの下方に位置するバスバ31B上にハンダ等によって実装される。脚部6がバスバ31Bの上端部33B上にハンダ等によって実装される。脚部7が、アース側給電部17の下端部13B上にハンダ等によって実装される。
【0062】
【表1】

図5は、表1に示したインダクタL1のインダクタンスとキャパシタC3のキャパシタンスとを変化させたときのフィルタ装置10の特性図である。図5には、インダクタL1とキャパシタC3との定数違いによる組み合わせa〜h毎にネットワークアナライザーで測定されたデータが示されている。キャパシタC1は1200pFに固定している。目標周波数F1は、図2に示したフィルタ装置10の第1の端子3と第2の端子4との間のインピーダンスが極大となる共振点の周波数(共振周波数)の設計値である。F特共振点測定周波数F2は、インダクタL1とキャパシタC3を各定数に調整したフィルタ装置10の供試品に関して、端子3と端子4との間の通過特性が極小となる共振点の共振周波数について実際に測定された測定値である。通過特性を表す縦軸の値が小さくなるほど、電気信号が通過しにくいことを表す。Z特共振点測定周波数F3は、インダクタL1とキャパシタC3を各定数に調整したフィルタ装置10の供試品に関して、端子3と端子4との間のインピーダンスが極大となる共振点の共振周波数について実際に測定された測定値である。インピーダンス特性を表す縦軸の値が大きくなるほど、電気信号が通過しにくいことを表す。
【0063】
図5に示されるように、組み合わせa〜hでインダクタL1とキャパシタC3の定数が調整されたフィルタ装置10は、インピーダンスが極大となる共振点が一つある信号減衰帯域を68MHz以上124MHz以下の周波数帯に有するとともに、周波数の増加に応じてインピーダンスが低下する信号通過帯域を信号減衰帯域より高域に有する、インピーダンス特性を備えている。
【0064】
図6〜8は、a〜hの8個の組み合わせ、並びに直結i及びオープンkの各測定条件について、L帯用ガラスアンテナ22のFM帯(76MHz〜108MHz)とH帯用ガラスアンテナ21の地上デジタルテレビ放送帯(473MHz〜713MHz)のそれぞれにおいてアンテナ利得の測定結果を示している。「直結」とは、フィルタ装置10を実装せずに、アース線側給電部17とバスバ31Bとを導体で直結した場合を示す。「オープン」とは、フィルタ装置10の実装や導線接続を行わずに、アース線側給電部17とバスバ31Bとが離間した場合を示す。
【0065】
FM帯のアンテナ利得の測定は、水平面に対して15°傾斜させて取り付けられた窓ガラスに対して電波(周波数76〜108MHzの垂直偏波又は水平偏波)を照射しながら、水平面に配置されたターンテーブルによって当該窓ガラスを360°回転させて行われる。アンテナ利得の測定データは、回転角度3°毎に、照射周波数帯76〜108MHzにおいて1MHz毎に測定される。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、L帯用給電部15で測定される端子電圧によって評価した。
【0066】
地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得の測定は、水平面に対して15°傾斜させて取り付けられた窓ガラスに対して電波(周波数473〜713MHzの水平偏波)を照射しながら、水平面に配置されたターンテーブルによって当該窓ガラスを360°回転させて行われる。アンテナ利得の測定データは、回転角度3°毎に、照射周波数帯473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定される。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナを基準とし、半波長ダイポールアンテナが0dBとなるように標準化した。
【0067】
図6は、FM帯の水平偏波のときのアンテナ利得の周波数特性図である。図7は、FM帯の垂直偏波のときのアンテナ利得の周波数特性図である。図8は、地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得の周波数特性である。アンテナ利得の周波数特性図において、縦軸のアンテナ利得は、窓ガラスを360°回転させることにより3°毎に測定されたアンテナ利得の平均値を示している(電波を照射した周波数帯における1MHz毎のアンテナ利得の平均値)。
【0068】
【表2】

表2は、図6に示したFM帯の水平偏波のときのアンテナ利得の76〜108MHzの平均値と、図7に示したFM帯の垂直偏波のときのアンテナ利得の76〜108MHzの平均値と、図8に示した地上デジタルテレビ放送帯(DTV帯)のアンテナ利得の473〜713MHzの平均値とを示している。
【0069】
FM帯の場合、バスバ31Bとアース線側給電部17とを導体で単に接続すると、アンテナ導体14等が電波を受信することにより生じた電気信号がその接続部から車体側に漏れてしまうことから、理論的には「オープン」のときが最もアンテナ利得が高いと考えられる。アンテナ利得を今回あらためて実測しても、表2に示されるように、「オープン」のときが最もアンテナ利得が高く、「直結」のときが最もアンテナ利得が低い。
【0070】
一方、地上デジタルテレビ放送帯の場合、上述の特許文献1に記載の通り、バスバ31Bとアース線側給電部17とを導体等で「直結」したときが最もアンテナ利得が高い。アンテナ利得を今回あらためて実測しても、表2に示されるように、「直結」のときが最もアンテナ利得が高く、「オープン」のときが最もアンテナ利得が低い。
【0071】
つまり、従来の考えでは、FM帯のアンテナ利得を高めようとすると地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得が低下し、地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得を高めようとするとFM帯のアンテナ利得が低下してしまうという、トレードオフの関係があることが障害となっていた。
【0072】
しかしながら、図6〜8、表2に示されるように、インピーダンスが極大となる共振点が一つある信号減衰帯域を68MHz以上124MHz以下の周波数帯に有するとともに、周波数の増加に応じてインピーダンスが低下する信号通過帯域を信号減衰帯域より高域に有するインピーダンス特性(組み合わせa〜h)を備えたフィルタ装置10を使用することによって、上述のトレードオフの関係を解消し、FM帯と地上デジタルテレビ放送帯の両方のアンテナ利得を向上させることができる。
【0073】
特に、表2に示されるように、組み合わせb〜eで定まるインピーダンス特性を備えたフィルタ装置10をアース側給電部17とバスバ31Bとの間に実装することによって、FM帯のアンテナ利得を、最大利得が得られる「オープン」の場合に近づけることができる。さらに、組み合わせeの場合であれば、表2に示されるように、地上デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得を、最大利得が得られる「直結」の場合に同等にすることができる。
【0074】
このように、上述の構成によれば、H帯用ガラスアンテナのアース側給電部が電気的に接続されるデフォッガに、L帯用ガラスアンテナを電気的に接続しても、これらの両ガラスアンテナのアンテナ利得の低下を抑えられ、同じ窓ガラスに両ガラスアンテナを共存させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば、地上波デジタルテレビ放送、UHF帯のアナログテレビ放送及び米国のデジタルテレビ放送、欧州連合地域のデジタルテレビ放送又は中華人民共和国のデジタルテレビ放送を受信する自動車用ガラスアンテナに利用されると好適である。その他、日本のFM放送帯(76〜90MHz)、米国のFM放送帯(88〜108MHz)、テレビVHF帯(90〜108MHz、170〜222MHz)、車両用キーレスエントリーシステム(300〜450MHz)にも利用できる。
【0076】
また、自動車電話用の800MHz帯(810〜960MHz)、自動車電話用の1.5GHz帯(1.429〜1.501GHz)、GPS(Global Positioning System)、人工衛星のGPS信号1575.42MHz)、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System:2.5GHz)にも利用できる。
【0077】
さらに、ETC通信(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金収受システム、路側無線装置の送信周波数:5.795GHz又は5.805GHz、路側無線装置の受信周波数:5.835GHz又は5.845GHz)、専用狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication、915MHz帯、5.8GHz帯、60GHz帯)、マイクロ波(1GHz〜3THz)、ミリ波(30〜300GHz)、及び、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service (2.34GHz、2.6GHz))の通信に利用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 直流遮断部
2 交流遮断部
3,4 端子
5,6,7 脚部
10 フィルタ装置
12 ガラス板
13A,13B アース線側給電部の下端部
14,20 L帯用アンテナ導体
18 H帯用アンテナ導体
15,19 L帯用給電部
16 給電部
17 アース側給電部
21,21A,21B H帯用ガラスアンテナ
22,23 L帯用ガラスアンテナ
24B,25 調整エレメント
30 デフォッガ
30a〜30n ヒータ線
31A,31B バスバ
32 短絡線
33A,33B バスバの上端部
40 中央線
50A,50B コイル
60 直流電源
70 同軸ケーブル
71 信号線
72 接地線
80 フィルタ装置
86 給電部端子
87 アース側給電部端子
88 嵌合部
88a 内部導体端子
88b 外部導体端子
89 アンプ回路
100 車両用窓ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた窓ガラスに設けられたデフォッガと車体側のグランドとの間に流れる電気信号の特定の周波数成分を減衰させるガラスアンテナ用フィルタ装置であって、
前記電気信号が入出力される第1及び第2の端子と、フィルタ回路とを含み、
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を第1の周波数帯またはその近傍に有し、該第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯の前記インピーダンスが、該第1の周波数帯の前記インピーダンスに比べて低いことを特徴とするガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1の周波数帯はFM帯であり、
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を68MHz以上124MHz以下の周波数帯に有するインピーダンス特性を備える請求項1に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンス特性が単一共振である請求項1または2に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、
前記デフォッガから流れ出る直流電流の通過を遮断する第1のフィルタと、
前記電気信号の交流成分の通過を制限する第2のフィルタと、を備え、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとが直列に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項5】
前記第2のフィルタは、並列LC共振回路である、請求項4に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項6】
同軸ケーブルと着脱可能に構成され、
窓ガラス上の給電部に設置され得る給電端子と、窓ガラス上のアース側給電部に設置され得るアース側給電端子と、前記同軸ケーブルの内部導体に接続され得る内部導体端子と、前記同軸ケーブルの外部導体に接続され得る外部導体端子とを含み、
前記給電端子は、前記内部導体端子に信号経路を介して接続され、
前記アース側給電端子は、前記第1の端子に接続され、
前記外部導体端子は、前記第2の端子に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項7】
前記第2の周波数帯用のアンプ回路が前記信号経路に設けられ、
前記アンプ回路の入力端子が前記給電端子に接続され、
前記アンプ回路の出力端子が前記内部導体端子に接続され、
前記アンプ回路のグランドは、前記外部導体端子に接続される、請求項6に記載のガラスアンテナ用フィルタ装置。
【請求項8】
第1の周波数帯用のL帯用ガラスアンテナと、給電部とアース側給電部とを有する、前記第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯用のH帯用ガラスアンテナと、前記アース側給電部と電気的に接続されたデフォッガと、が設けられた車両用窓ガラスにおいて、
前記L帯用ガラスアンテナと前記デフォッガとが電気的に接続され、
前記デフォッガから前記アース側給電部を経由して車体側のグランドに到達する経路中に、該経路中に流れる電気信号の特定の周波数成分を減衰させるガラスアンテナ用フィルタ装置が直列に設けられ、
前記ガラスアンテナ用フィルタ装置は、
前記電気信号が入出力される第1及び第2の端子と、フィルタ回路とを含み、
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を前記第1の周波数帯およびその近傍に有し、該第1の周波数帯より高域の第2の周波数帯の前記インピーダンスが、該第1の周波数帯の前記インピーダンスに比べて低いことを特徴とする車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記第1の周波数帯はFM帯であり、
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンスが極大となる共振点を68MHz以上124MHz以下の周波数帯に有するインピーダンス特性を備える請求項8に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記フィルタ回路は、
前記第1の端子と前記第2の端子との間のインピーダンス特性が単一共振である請求項8または9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記フィルタ回路は、
前記デフォッガから流れ出る直流電流の通過を遮断する第1のフィルタと、
前記電気信号の交流成分の通過を制限する第2のフィルタと、を備え、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとが直列に接続される、請求項8から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記第2のフィルタは、並列LC共振回路である、請求項11に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記デフォッガと前記アース側給電部とは直流的に分離して設けられ、
前記第1の端子は、前記デフォッガに電気的に接続され、
前記第2の端子は、前記アース側給電部に電気的に接続される、請求項8から12のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記ガラスアンテナ用フィルタ装置は、
同軸ケーブルと着脱可能に構成され、
窓ガラス上の給電部に設置される給電端子と、窓ガラス上のアース側給電部に設置されるアース側給電端子と、前記同軸ケーブルの内部導体に接続され得る内部導体端子と、前記同軸ケーブルの外部導体に接続され得る外部導体端子とを含み、
前記給電端子は、前記内部導体端子に信号経路を介して接続され、
前記アース側給電端子は、前記第1の端子に接続され、
前記外部導体端子は、前記第2の端子に接続される、請求項8から12のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記第2の周波数帯用のアンプ回路が前記信号経路に設けられ、
前記アンプ回路の入力端子が前記給電端子に接続され、
前記アンプ回路の出力端子が前記内部導体端子に接続され、
前記アンプ回路のグランドは、前記外部導体端子に接続される、請求項14に記載の車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−101190(P2011−101190A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254395(P2009−254395)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】