説明

ガラスフリット複合材料およびそれを用いた半導体装置

【課題】乗用車やトラック等に搭載されるパワー半導体装置は、エポキシ樹脂、シリカやアルミナ、フェライト複合体等の無機充填材からなる封止材により封止されているが、近年半導体装置の発熱が増加し、封止材が250℃の連続加熱または−50℃〜250℃の熱衝撃により半導体素子と封止材、および半導体素子が実装されているパッケージ内壁と封止材が剥離および封止するための封止材の厚みが1mm以上でもクラックが生じないガラスフリット複合材料およびそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり無機材料で耐熱性、絶縁性に優れた鉛を含有しないガラスフリット1〜30wt%、コージライト30〜90wt%、熱硬化性のシリコーン3〜40wt%、1〜1000ppmのアルカリ金属を含むシリカ1〜20wt%を含有する事を特徴とするガラスフリット複合材料。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なガラスフリット複合材料およびそれを用いた封止型半導体装置に関し、特には、封止材料により被覆または封止を行う乗用車やトラック等に搭載される封止型パワー半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車やトラック等に搭載されるパワー半導体装置は、パワー半導体素子がパッケージ内に被覆あるいは封止され、信頼性保証のためには250℃の高温での耐熱性と、−50℃〜200℃に対して半導体装置が正常に作用するようにパッケージ内壁と封止材や半導体素子と封止材が剥離したり、封止材にクラックが入らないことが要求される。
【0003】
この半導体素子の被覆あるいは封止材料として、エポキシ樹脂、シリカやアルミナやフェライト複合体等の無機充填剤からなるエポキシ樹脂複合材料による封止材が、特開2008−270455公報、特開2001−104032、に報告されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2008−270455公報、特開2001−104032によるエポキシ樹脂を含む封止材料は、信頼性の保証のための250℃以上の高温では、エポキシ樹脂が変質したり、−50℃〜200℃の熱サイクルの際に封止材料と半導体素子の熱膨張係数差や高温化と低温化での封止材の弾性率の差により封止材にクラックが生じたり、剥離したりすることがある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、250℃以上の耐熱性と絶縁性を保持し、−50℃〜200℃の熱サイクルでも、半導体素子と封止材、および半導体素子が実装されているパッケージ内壁と封止材が剥離したり、封止するために封止材が1mm以上の厚さの場合でもクラックが生じないガラスフリット複合材料およびそれを用いた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
▲1▼少なとも熱硬化性のシリコーン3〜40wt%と少なくとも1〜1000ppmのアルカリ金属を含むシリカ1〜20wt%と鉛を含有しないガラスフリット1〜30wt%とコージライト30〜90wt%を含有する事を特徴とするガラスフリット複合材料、
▲2▼前記熱硬化性のシリコーンはポリエステルシリコーンである事を特徴とする▲1▼記載のガラスフリット複合材料、
▲3▼前記ガラスフリットは少なくともBiとSnOを含むBi系のフリットである事を特徴とする▲1▼記載のガラスフリット複合材料、
▲4▼半導体素子の少なくとも一部が、▲1▼から▲3▼記載のガラスフリット複合材料により被覆または封止されていることを特徴とする封止型半導体装置
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガラスフリット複合材料は、無機材料で耐熱性・絶縁性に優れるガラスフリットとコージライトと弾性な熱硬化性のポリエステルシリコーンとシリコーンと付加反応を起こすアルカリ金属を含むシリカを含有するガラスフリット複合材料により、250℃以上の耐熱性と絶縁性を保持し、−50℃〜200℃の熱サイクルでも、クラックが生じる事はなく、熱衝撃に優れている。また本発明のガラスフリット複合材料により被覆または封止した半導体装置は、50℃以上の耐熱性と絶縁性を保持し、−50℃〜200℃の熱サイクルでも半導体素子と封止材、あるいは半導体素子が実装されているパッケージ内壁と封止材も剥離したり、封止材を1mm以上の厚さで封止した場合でも封止材にクラックが生じる事はないため、信頼性に優れる。
かつ、鉛を含まないので環境にやさしく、作業者の健康面においても好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるガラスフリット複合材料は、熱硬化性のシリコーン3〜40wt%と少なくとも1〜1000ppmのアルカリ金属を含むシリカ1〜20wt%と鉛を含有しないガラスフリット1〜30wt%とコージライト30〜90wt%を均一に混ぜ合わせることにより作製出来る。
本発明は、上記熱硬化性のシリコーンとしてポリエステルシリコーン、上記Pbを含有しないガラスフリットとして少なくともBiとSnOを含むBi系のフリットが好ましい。
なお、上記、Bi系ガラスフリットは、軟化点を下げる目的で、適宜アルカリ金属酸化物として、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、アルカリ土類金属酸化物として、MgO、CaO、SrO、BaO、BeOを添加しても良い。
上記シリカはアルカリ金属を1〜1000ppmあれば良いが、10〜100ppmの範囲の方が好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記ガラスフリット複合材料を、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、アルコール系、グリコールエーテル系、などの有機溶剤に混ぜ合わせて液状にすることで、扱いやすくできる。上記溶媒としての有機溶剤は、適宜選択可能だが、ポリエステルシリコーンが溶解しやすいN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。
【0010】
本発明のガラスフリット複合材料は、例えば、以下のようにして使用する。
(第一の工程)平均粒径200μm以下のシリカ10gにNaOH0.01mgを加える。
(第二の工程)次に平均粒径200μm以下熱硬化性シリコーン10g、平均粒径200μm以下Bi系のフリット10g、平均粒径200μm以下コージライト70gをそれぞれ加え、混ぜ合わせる。
(第三の工程)(第二の工程)で混ぜ合わせた粉体を220℃で10分間、攪拌しながら熱処理し、ペースト状にする。
(第四の工程)熱処理後、さらに80℃で12時間、熱処理し、ペースト状のガラスフリット複合材料にする。
(第五の工程)熱処理後、室温まで冷却してガラスフリット複合材料を作製する。
(第六の工程)作製したガラスフリット複合材料を再度80℃まで加熱し、ペースト状にした後、予め実装されたパワー半導体素子に塗布した後、210℃30分熱処理し、室温まで冷却し、ガラスフリット複合材料を硬化させて封止する。
【0011】
本発明は、上記(第二の工程)で混ぜ合わせた粉体に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを加えて攪拌するとより均一に混合出来るため、好ましい。その後は、(第三の工程)以降の工程を同様に行い封止する。
また、(第四の工程)の後に(第六の工程)を行っても構わない。
また、(第四の工程)の際に攪拌するとさらに均一に混合出来るので好ましい。
【0012】
(第一の工程)と(第二の工程)の際の粒径は数ミリ程度でもそれぞれが混ざり合えば構わないが、平均粒径200μm以下、より好ましくは、10μm以下が好ましい。それぞれの比率は、半導体素子の各材料、配線材料、パッケージの材質と内壁の材質等に合わせて適宜設定する。
【0013】
(第一の工程)は、シリカに不純物としてアルカリ金属が1〜1000ppm含んでいる場合は行う必要はなく、(第二の工程)から行ってもよい。
【0014】
(第三の工程)の熱処理は、使用した熱硬化性シリコーンが溶融し、熱硬化性シリコーンとアルカリ金属を含有したシリカが付加反応する温度以上で完全に硬化する温度以下、時間は完全に硬化する以内で、使用する材料の比率に合わせ適宜設定する。180℃〜250℃、30秒〜120分が好ましく、より好ましくは200℃〜230℃、3分〜10分の範囲で使用する材料の比率に合わせ適宜設定する。
【0015】
(第四の工程)の熱処理は、シリコーンとアルカリ金属を含有したシリカが反応・重合の促進と、その際に発生するガス・水の脱ガスや、NMP等の溶媒を用いた場合はNMP等の溶媒が蒸発する際に発生するガス・水が脱ガス出来る温度以上で、使用した熱硬化性シリコーンが硬化しない温度以下であればよく、50℃〜180℃、1時間〜24時間が好ましい。脱ガスが不十分でガスが気泡として内在した状態で硬化・封止すると、熱サイクル試験の際、内在した気泡からクラックが生じるので、出来るだけ十分脱ガスするのが好ましいので、80℃〜100℃、で使用する材料の比率に合わせ適宜設定が、4時間以上行うのがより好ましい。
【0016】
(第六の工程)の熱処理は、熱硬化性シリコーンが硬化する温度以上で、半導体素子、半導体装置の耐熱温度以下で適宜設定するが、180℃〜300℃以下が好ましく、200℃〜250℃の温度範囲がより好ましい。
【実施例】
【0017】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更、工程順の変更がなされたものをも包含する。
【実施例1】
【0018】
(第二の工程)アルカリ金属を不純物として10ppm含まれている平均粒径2μm以下のシリカ7gに、平均粒径2μm以下の熱硬化性シリコーンであるポリエステルシリコーン10g、平均粒径10μm以下のBi系のフリット9g、平均粒径10μm以下のコージライト74gをそれぞれ加え、攪拌する。
(第三の工程)(第二の工程)で混ぜ合わせた粉体を220℃まで加熱し、220℃で5分間、攪拌しながら熱処理し、ペースト状にする。
(第四の工程)熱処理後、さらに80℃で12時間、熱処理し、ペースト状のガラスフリット複合材料にする。
(第五の工程)熱処理後、室温まで冷却した。
以上より、本発明の第一のガラスフリット複合材料を作製した。
【実施例2】
【0019】
実施例1の(第二の工程)のあとの混合した粉体100gに、N−メチル−2ピロリドン(NMP)100gを加え、液状にした以外は、実施例1と同様にして、本発明、第二のガラスフリット複合材料を作製した。
【実施例3】
【0020】
本発明の半導体装置を図1に示す。実装基板1に半導体素子2が実装され、ガラスフリット複合材料3により封止されている半導体装置4をそれぞれ示す。
以下のそうの製造方法を説明する。
まず、実施例2の(第四の工程)の工程まで行い、ペースト状のガラスフリット複合材料を作製する。
その後、(第六の工程)の工程として、予め実装基板1に実装された半導体素子2を80℃に加熱し、半導体素子2上に、ガラスフリット複合材料3を約2mmの高さに塗布し、半導体素子2の全体を覆い、その後、210℃で30分熱処理し、室温まで冷却し、ペースト状のガラスフリット複合材料3を硬化し、封止して、本発明の半導体装置4を作製する。
【実施例4】
【0021】
本発明の半導体装置41を図2に示す。パッケージ52に複数の半導体素子21を複数の半導体素子を実施例2のガラスフリット複合材料31を用いて、予め個々のパッケージ61に実装した半導体素子21を封止した実施例を図2に示す。
まず、実施例2の(第四の工程)の工程まで行い、ペースト状のガラスフリット複合材料31を作製する。
その後、(第六の工程)の工程としての個々のパッケージ51にそれぞれをあらかじめ実装された半導体素子21を80℃に加熱し、それぞれの半導体素子21上に、ガラスフリット複合材料31を約5mmの高さに塗布し、それぞれの半導体素子21の全体を覆い、その後、210℃で30分熱処理し、室温まで冷却し、ペースト状のガラスフリット複合材料31を硬化し、封止し、本発明の半導体装置41を作製する。
【0022】
耐熱試験
実施例3,4、ポリイミド樹脂厚さ2mmを比較例1、熱可塑性のシリコーン厚さ2mmを比較例2の封止材を使用して作製した半導気装置を、250℃で100時間大気雰囲気化で熱処理し、封止材の変色をチェックした。その結果、本発明のガラスフリット複合材料は変色も絶縁性も確認されなかった。比較例1、2は、封止材が絶縁性不良で導通が確認され、変色していた。
本発明のガラスフリット複合材料は高温条件下でも優れた耐熱性が保持されていることが確認できた。
【0023】
熱サイクル試験
実施例3,4、ポリイミド樹脂を比較例1、熱可塑性のシリコーンを比較例2の封止材を使用して作製した半導気装置を、−50℃〜200℃の熱サイクル試験を1,000回繰り返し行った。その結果、本発明のガラスフリット複合材料を用いた実施例3,4の半導体装置は、封止材が2mm、5mmの厚さがあっても、半導体素子と封止材、および半導体素子が実装されているパッケージ内壁と封止材が剥離したり、クラックが生じなていなかった。また、その後の半導体素子の特性も問題なかった。一方、比較例1,2はともにパッケージ内壁と封止材が剥離し、封止材にもクラックが生じており、半導体装置の特性も絶縁不良を起こし、駆動できなかった。
本発明のガラスフリット複合材料は低温・高温が繰り返さる厳しい熱環境化での熱酎性に優れ、半導体装置の特性を保持できることが確認できた。
【0024】
上記評価結果を表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のガラスフリット複合材料およびそれを用いた封止型半導体装置は、耐熱性と絶縁性を保持し、低温、高温が繰り返される厳しい熱環境化での耐性に優れるだけでなく、塗布の作業性に優れ、環境に優しく取り扱いが容易であり、広範な用途の被覆・封止に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】半導体装置の断面図である。
【図2】(a)(c)は、半導体装置の断面図、(b)(d)は、半導体装置の上面図である。
【符号の説明】
【0027】
1:実装基板に実装され、により封止されてが
2、21:半導体素子
3、31:ガラスフリット複合材料
4、41:半導体装置
51、52:パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱硬化性のシリコーン3〜40wt%と少なくとも1〜1000ppmのアルカリ金属を含むシリカ1〜20wt%と鉛を含有しないガラスフリット1〜30wt%とコージライト30〜90wt%を含有する事を特徴とするガラスフリット複合材料
【請求項2】
前記熱硬化性のシリコーンはポリエステルシリコーンである事を特徴とする請求項1記載のガラスフリット複合材料
【請求項3】
前記ガラスフリットは少なくともBiとSnOを含むBi系のフリットである事を特徴とする請求項1記載のガラスフリット複合材料
【請求項4】
半導体素子の少なくとも一部が、請求項1から3記載のガラスフリット複合材料により被覆または封止されていることを特徴とする封止型半導体装置

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184670(P2011−184670A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68836(P2010−68836)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(502383281)有限会社ソフィアプロダクト (10)
【Fターム(参考)】