説明

ガラス基板の製造方法

【課題】表面状態が良好なガラス基板を簡易に生産性高く製造できるガラス基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ガラス基板の表面に研磨砥粒を含むpH4.0以下の研磨液を供給し、研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を鏡面に研磨する最終研磨工程と、前記最終研磨工程に続けて、pH4.0以下の酸性洗浄液を供給し前記研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を擦り洗いする擦洗工程と、前記擦洗したガラス基板を最終洗浄する最終洗浄工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば磁気ディスク等の情報記録媒体に用いられるガラス基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の記憶装置において、ガラス基板は、その表面に情報記録膜を形成することにより、情報記録媒体として供される。情報記録の高密度化のためには、たとえばハードディスクドライブでは、磁気ヘッドと情報記録媒体との間隔を小さくする必要がある。この間隔は、磁気ヘッド浮上高さ(フライングハイト:frying height)と呼ばれる。フライングハイトを低減するためには、表面に突起が存在せず、平滑性の高いガラス基板が必要とされる。すなわち、表面に存在する突起は、フライングハイトを小さくした場合に、磁気ヘッドと情報記録媒体との衝突の原因の1つとなる。このような衝突はハードディスクドライブの不具合の原因となり好ましくない。
【0003】
ガラス基板の表面の突起は、たとえば表面に付着した異物が原因で形成される。表面の異物として、研磨砥粒を含む研磨剤残渣、ガラス研磨屑等の残留物がある。このような研磨剤残渣、ガラス研磨屑等が付着したガラス基板上に、磁性膜等からなる情報記録膜を形成すると、突起が形成されてしまい、情報記録媒体の欠陥の原因となる。
【0004】
ガラス基板の研磨工程においてガラス基板に付着した研磨砥粒の除去のために、洗浄液による表面洗浄が行われている。一般的に、ガラス基板の表面の洗浄には、酸やアルカリ溶液に界面活性剤を添加した洗浄液が用いられる。また、洗浄作用を促進させるため、スクラブや超音波の併用も行われている。
【0005】
ここで、コロイダルシリカ研磨砥粒を含む研磨液を用いた研磨工程後のガラス基板におけるコロイダルシリカ研磨砥粒の残留状態や、研磨時に発生したガラス研磨屑の付着状態は、研磨工程の後、洗浄を行うまでの管理状態に大きく影響を受けることがわかっている。たとえば、研磨工程から洗浄工程に移行する間の搬送工程において、ガラス基板が乾燥した場合には、コロイダルシリカ研磨砥粒やガラス研磨屑が強固にガラス基板表面に固着してしまう。
【0006】
特許文献1には、ガラス基板の乾燥を防ぐため、搬送工程においてガラス基板を水中に浸漬させる方法が開示されている。しかしながら、水中では、研磨砥粒やガラス研磨屑の組成が変化して凝集作用が変化し、ガラス基板に対する吸着カが高まることがある。このようにしてガラス基板に固着、吸着した研磨砥粒、ガラス研磨屑などの残留物は、除去することが困難であり、結果として最終洗浄の負担が大きくなるうえ、残留物を十分に除去する事ができない場合があるという問題が生じる。
【0007】
これに対して、特許文献2には、研磨後のガラス基板の保管液を研磨砥粒の凝集を抑制する液性にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−141717号公報
【特許文献2】特開2007−294073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の方法を用いても、研磨後のガラス基板表面に研磨砥粒、ガラス研磨屑が残留している点は同じである。したがって、近年の情報記録の高密度化に対応するために必要とされる良好な表面状態を実現するためには、依然として最終洗浄の負担が大きくなるうえ、残留物を十分に除去する事ができない場合があるという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表面状態が良好なガラス基板を簡易に生産性高く製造できるガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガラス基板の製造方法は、ガラス基板の表面に研磨砥粒を含むpH4.0以下の研磨液を供給し、研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を鏡面に研磨する最終研磨工程と、前記最終研磨工程に続けて、pH4.0以下の酸性洗浄液を供給し前記研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を擦り洗いする擦洗工程と、前記擦り洗いしたガラス基板を最終洗浄する最終洗浄工程と、を含む。
【0012】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記擦洗したガラス基板に前記最終洗浄を行う前に当該ガラス基板を保管液に浸漬して保管する保管工程をさらに含む。
【0013】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記保管液はpH4.0以下である。
【0014】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記擦り洗いを0.5分以上行う。
【0015】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記擦り洗いにおいて、前記最終研磨よりも低い押圧力で前記研磨パットを前記ガラス基板に押圧して前記擦り洗いを行う。
【0016】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記擦り洗いにおける押圧力は40g/cm以下である。
【0017】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記研磨液はpH2.0以下である。
【0018】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記酸性洗浄液はpH2.0以下である。
【0019】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記最終洗浄はスクラブ洗浄を含む。
【0020】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法は、上記の発明において、前記最終研磨の後から前記スクラブ洗浄までに前記ガラス基板に供給または当該ガラス基板を浸漬する液体はpH4.0以下である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、研磨後のガラス基板表面の残留物を効果的に除去できるので、表面状態が良好なガラス基板を簡易に生産性高く製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るガラス基板の製造方法のフロー図である。
【図2】図2は、ガラス基板の模式的な平面図である。
【図3】図3は、実施例、比較例の実施条件およびパーティクルカウント数を示す図である。
【図4】図4は、擦り洗い時間とパーティクルカウント数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明に係るガラス基板の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス基板の製造方法のフロー図である。本実施の形態に係るガラス基板の製造方法は、磁気ディスク基板等に用いられるドーナツ状のガラス基板の製造方法であって、図1に示すように、はじめに、ガラス基板を準備する(ステップS101)。つぎに、ガラス基板の第1研磨工程を行う(ステップS102)。つぎに、ガラス基板の最終研磨工程を行う(ステップS103)。最終研磨とは、ガラス基板を製品とする前に最後に行う研磨のことである。つぎに、最終研磨工程に続けて、ガラス基板の擦洗工程を行う(ステップS104)。つぎに、ガラス基板を保管し(ステップS105)、その後に最終洗浄工程を行う(ステップS106)。最終洗浄とは、ガラス基板を製品とする前に最後に行う洗浄のことである。これらの工程によって、最終製品となるガラス基板を製造する。
【0025】
本実施の形態によれば、pH4.0以下の研磨液を用いて最終研磨を行い、この最終研磨に続けて、pH4.0以下の酸性洗浄液を用いて研磨パッドにてガラス基板の表面を擦り洗いし、その後擦り洗したガラス基板を最終洗浄している。このように最終研磨に続けてガラス基板の表面を擦り洗いすることによって、ガラス基板の表面の残留物が最終洗浄工程に持ち込まれることが大幅に抑制される。これによって、従来必要であった最終洗浄の工程段数を大幅に減少しながら、最終製品となるガラス基板の表面の残留物を大幅に減少させることができる。その結果、表面状態が良好なガラス基板を簡易に生産性高く製造できる。
【0026】
以下、各工程について具体的に説明する。まず、ステップS101のガラス基板の準備については、たとえば以下のように行うことができる。すなわち、はじめにたとえば公知のフロート法等を用いて製造した母材ガラス板をリドロー法によって加熱延伸し、所定の厚さおよび面精度のガラス板を準備する。
【0027】
ガラス板の材料としては、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどのガラスセラミックスを用いることができる。なお、成形性や加工性の観点からアモルファスガラスを用いることが好ましく、たとえば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノ珪酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、風冷または液冷等の処理を施した物理強化ガラス、化学強化ガラスなどを用いることが好ましい。
【0028】
その後、公知のコアリング工程、エッジ加工工程、端面ポリッシュ加工工程によって、図2に示すような、主表面1aの中央部に孔1bが形成され、主表面1aの内外縁であるエッジ1cに面取り加工が施されたドーナツ状のガラス基板1を成型する。これによってガラス基板1が準備される。
【0029】
ステップS102の第1研磨工程は、ガラス基板1のエッジ1cの形状を悪化させずに、主表面1aの微小うねりを改善し、かつ傷を除去するためのものである。第1研磨工程は市販の両面研磨装置を用いて実施することができる。両面研磨装置は、研磨パッドを介して上定盤および下定盤によってガラス基板1を所定の押圧力で挟圧し、研磨パッドとガラス基板1との間(すなわち主表面1a)に研磨液を所定の供給量で供給しながら、上定盤と下定盤とを互いに異なる向きに回転させて、ガラス基板1の両主表面1aを研磨する。
【0030】
第1研磨の研磨液としては、たとえば酸化セリウムを用いることができる。研磨パッドとしてはスウェードパッドを用いることができる。スウェードパッドは、所望の微小うねりを実現するために、その硬度等の特性を選択して用いることができる。
【0031】
つぎに、第1研磨工程を終えたガラス基板1を、酸性洗剤、酸性洗剤、純水をそれぞれ満たし、かつ周波数40kHzの超音波を印加した各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄する。
【0032】
つぎに、ステップS103の最終研磨工程を行う。最終研磨工程は、ガラス基板1の主表面1aを鏡面に研磨するためのものである。最終研磨工程は第1研磨工程と同様に市販の両面研磨装置を用いて実施することができる。
【0033】
最終研磨の研磨液としては、研磨砥粒を含み、かつpHが4.0以下、好ましくは2.0以下のものを用いる。研磨砥粒はたとえばコロイダルシリカである。研磨液はたとえばクエン酸および硫酸を含むものである。研磨パッドとしては第1研磨工程と同様にスウェードパッドを用いることができる。スウェードパッドは、所望の鏡面研磨を実現するために、その硬度等の特性を選択して用いることができる。
【0034】
最終研磨工程が終了したら、研磨液の供給を停止し、続けて酸性洗浄液を供給し、研磨パッドを用いてガラス基板1の主表面1aを擦り洗いする(ステップS104)。これによって、ガラス基板1の主表面1aの残留物が大幅に減少する。なお、このように、最終研磨工程が終了した後、ガラス基板1を両面研磨装置から取り出さずに擦り洗いすることが好ましい。
【0035】
擦り洗いのための酸性洗浄液としては、pHが4.0以下、好ましくは2.0以下のものを用いる。酸性洗浄液はたとえば硫酸、塩酸、硝酸、またはりん酸を少なくとも一種含むものである。
【0036】
擦り洗いは、実施時間が長ければ長いほど効果があるが、0.5分以上行えば残留物の減少の効果があるので好ましく、さらには1分以上行うことがより好ましい。ただし、実施時間が長いと生産性が低下することから2.0分以内とすることが好ましい。
【0037】
また、擦り洗いの際は、ガラス基板1と研磨パッドとの間に研磨剤が介在していない状態で主表面1aを擦る事になる。したがって、擦り洗いの際の押圧力が高いと、研磨パッドと主表面1aとの間の摩擦抵抗が高くなり、主表面1aを傷つけたり両面研磨装置に負荷が掛かったりする原因となる場合がある。したがって、擦り洗いの際の研磨パッドの押圧力は、最終研磨の際の研磨パッドの押圧力(加工圧力)よりも低いことが好ましい。たとえば、最終研磨の際の研磨パッドの加工圧力を50g/cm以上とし、擦り洗いの際押圧力を40g/cm以下にすることが好ましい。
【0038】
つぎに、擦り洗いしたガラス基板1を両面研磨装置から取り出し、ガラス基板1を保管液に浸漬して保管する(ステップS104)。なお、この保管とは、擦り洗いの後から最終洗浄の前にガラス基板1が乾燥しないように行われるものである。たとえば、この保管は、ガラス基板1を両面研磨装置から最終洗浄を行うための洗浄機に搬送する際にも行われる。
【0039】
保管液は、pHが4.0以下、好ましくは2.0以下のものを用いることが好ましい。保管液はたとえば硫酸、塩酸、硝酸、またはりん酸を少なくとも一種含むものである。
【0040】
このように、pHが4.0以下、好ましくは2.0以下の酸性保管液を用いることによって、擦り洗いによって大幅に減少したものの、ガラス基板1の主表面1aに残留している残留物が、保管時に固着することが抑制されるため、さらに好ましい。
【0041】
つぎに、保管したガラス基板1を最終洗浄機まで搬送し、最終洗浄機によって最終洗浄を行う。擦り洗いによってガラス基板1の主表面1aの残留物が大幅に減少しているので、最終洗浄は洗浄段数が大幅に少なくてよい。これによって最終工程がより簡易かつ少数段の工程なる。その結果、最終洗浄工程数および時間が大幅に削減されるので、ガラス基板1の生産性が高くなる。
【0042】
最終洗浄工程は、たとえば以下のようにして行うことができる。まず、ガラス基板1を、例えばpH1.8の酸性洗剤を満たしかつ周波数80kHzの超音波を印加した洗浄槽に浸漬して洗浄する。つぎに、ガラス基板1にロール式で4段工程のスクラブ洗浄を行う。このとき、たとえば4段工程の、1、2段目で酸性洗剤+純水を用いて洗浄を行い、その後の3、4段目では純水のみの洗浄を行うことができる。その後、ガラス基板1を、純水、酸性洗剤、純水、超純水をそれぞれ満たした各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄する。これによって、表面1aの残留物が従来よりも大幅に削減されたガラス基板1が製造される。
【0043】
なお、最終研磨工程の後から、最終洗浄工程における少なくとも最初のスクラブ洗浄までは、ガラス基板1に供給またはガラス基板1を浸漬する液体はpH4.0以下であることが好ましい。たとえば、上記実施形態では、擦洗工程、保管工程、最終洗浄工程における超音波を印加した洗浄、および1段目のスクラブ洗浄までである。この一連の工程において使用する液体がpH4.0以下に保たれることによって、ガラス基板1の主表面1aの残留物を安定して減少させることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、表面状態が良好なガラス基板を簡易に生産性高く製造できる。
【0045】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示す。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
外径が65mm、孔の内径が20mmの内外周端面がエッジ加工され、さらに端面ポリッシュされたドーナツ状のガラス基板を準備した。なお、このガラス基板は、SiO:60wt%〜75wt%、Al:12wt%〜22wt%、LiO:2wt%〜9wt%、NaO:1wt%〜5wt%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスであった。
【0047】
このガラス基板に対して、実施の形態に示す各工程を行った。
第1研磨工程については、研磨パッドとしてスウェードパッドを用いて、両面研磨装置によって以下の研磨条件で実施した。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径:0.7μm 研磨剤濃度10wt%)+純水
加工圧力:80g/cm〜150g/cm
研磨時間:20分
研磨によるガラス除去量:片面あたり厚さ10μm
第1研磨工程を終えたガラス基板1を、酸性洗剤、酸性洗剤、純水をそれぞれ満たし、かつ周波数40kHzの超音波を印加した各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0048】
最終研磨工程については、第1研磨工程で使用したタイプと同じ両面研磨装置によって、研磨パッドとしてフジボウ社のノンバフタイプのスウェードパッドを用いて、以下の研磨条件で実施した。
研磨液:コロイダルシリカ(平均粒径:20nm、研磨剤濃度:18wt%)+クエン酸+硫酸+純水
研磨液のpH:1.8
加工圧力:50g/cm〜140g/cm
研磨時間:8分
研磨によるガラス除去量:片面あたり厚さ0.5μm
【0049】
最終研磨工程に続いて、以下の条件で擦り洗いを行った。
酸性洗浄液:硫酸+純水
酸性洗浄液のpH:1.8
押圧力:20g/cm
洗浄時間:1.5分
【0050】
つぎに、擦り洗いしたガラス基板を両面研磨装置から取り出した後、保管液に浸漬して保管しながら洗浄機に搬送した。保管液としてpH1.8に調整した硫酸水溶液を用いた。
【0051】
つぎに、以下のようにして最終洗浄をおこなった。すなわち、保管液から取り出したガラス基板を、pH1.8の酸性洗剤を満たしかつ周波数80kHzを印加した洗浄槽に浸漬して洗浄した。つぎに、ガラス基板にロール式で4段工程のスクラブ洗浄を行った。このとき、4段工程の、1、2段目で酸性洗剤+純水を用いて洗浄を行い、その後の3、4段目では純水のみの洗浄を行った。その後、ガラス基板を、純水、酸性洗剤、純水、超純水をそれぞれ満たした各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0052】
(実施例2)
実施例2として、準備したガラス基板に対して、最終研磨における研磨液、酸性洗浄液、および保管液のpHを1.0とした以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0053】
(実施例3)
実施例3として、準備したガラス基板に対して、最終研磨における研磨液、酸性洗浄液、および保管液のpHを3.9とした以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0054】
(実施例4)
実施例4として、準備したガラス基板に対して、保管液を純水とした以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0055】
(比較例1)
比較例1として、準備したガラス基板に対して、擦り洗いを行わない以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0056】
(比較例2)
比較例2として、酸性洗浄液に代えて純水を用いて擦り洗いを行った以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0057】
(比較例3)
比較例3として、準備したガラス基板に対して、最終研磨における研磨液および保管液をアルカリ性とし、かつ擦り洗いの際の酸性洗浄液をアルカリ性の洗浄液に変更した以外は実施例1と同様の工程を行った。
【0058】
つぎに、実施例1〜4、比較例1〜3の工程で得られた各ガラス基板の表面のパーティクルをパーティクルカウンタ(KLA-Tencor社製OSA-6300)で測定した。なお、パーティクルカウンタにおけるカウントの閾値は、ベースノイズレベルからわずかに0.5%の位置という厳しい条件に設定した。また、測定のサンプル数は各実施例、比較例について30とした。
【0059】
図3は、実施例、比較例の実施条件およびパーティクルカウント数を示す図である。図3に示すように、測定閾値条件が厳しいにもかかわらず、実施例1〜3はパーティクルカウント数の平均、標準偏差(σ)が小さく、表面状態が良好であった。特に、最終研磨における研磨液、擦り洗いの洗浄液、および保管液のpHが2.0以下である実施例1、2はパーティクルカウント数平均、標準偏差がいずれも非常に小さかった。一方、比較例1〜3はパーティクルカウント数の平均、標準偏差がいずれも大きかった。
【0060】
つぎに、実施例1と同様の工程を、擦り洗いの時間を代えて行った。その後、得られた各ガラス基板の表面のパーティクルを実施例1と同様に測定した。
【0061】
図4は、擦り洗い時間とパーティクルカウント数との関係を示す図である。なお、擦り洗い時間が0分のデータは、比較例1のものである。図4に示すように、擦り洗いを0.25分行うだけで、パーティクルカウント数は、擦り洗いしない場合の約1/2となった。さらに、擦り洗いを0.5分行うとパーティクルカウント数はさらに約1/2となり、1分以上行うとパーティクルカウント数は十分に低減された。
【0062】
以上、本発明の実施の形態および実施例により本発明を説明したが、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。たとえば、上記実施の形態では、研磨工程は第1研磨工程と最終研磨工程との2工程であるが、平坦度等の必要なガラス基板の表面特性に応じて研磨工程数を増減させてもよい。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 ガラス基板
1a 主表面
1b 孔
1c エッジ
S101〜S106 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表面に研磨砥粒を含むpH4.0以下の研磨液を供給し、研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を鏡面に研磨する最終研磨工程と、
前記最終研磨工程に続けて、pH4.0以下の酸性洗浄液を供給し前記研磨パッドにて前記ガラス基板の表面を擦り洗いする擦洗工程と、
前記擦り洗いしたガラス基板を最終洗浄する最終洗浄工程と、
を含むことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記擦洗したガラス基板に前記最終洗浄を行う前に当該ガラス基板を保管液に浸漬して保管する保管工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記保管液はpH4.0以下であることを特徴とする請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記擦り洗いを0.5分以上行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記擦り洗いにおいて、前記最終研磨よりも低い押圧力で前記研磨パットを前記ガラス基板に押圧して前記擦り洗いを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記擦り洗いにおける押圧力は40g/cm以下であることを特徴とする請求項5に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記研磨液はpH2.0以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記酸性洗浄液はpH2.0以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記最終洗浄はスクラブ洗浄を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記最終研磨の後から前記スクラブ洗浄までに前記ガラス基板に供給または当該ガラス基板を浸漬する液体はpH4.0以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25841(P2013−25841A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159256(P2011−159256)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】