説明

キナーゼタンパク質結合阻害剤

本発明は、タンパク質結合阻害剤化合物およびその同定ならびに使用方法に関する。本発明は、さらに医薬組成物および細胞増殖性疾患、特に癌の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年3月16日出願の米国仮特許出願第60/918,615号および2008年3月12日出願の米国仮特許出願第 (「Kinase Protein Binding Inhibitors」、代理人整理番号67850P2(49163)、国際速達郵便番号EM006537897US)に基づく優先権を主張するものであり、これら出願の全教示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0002】
(連邦政府後援の研究によってなされた発明に対する権利に関する申立て)
本研究は、部分的に米国国立衛生研究所米国国立癌研究所、助成金番号:2−R01−CA65910−09−13の支援を受けた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
焦点接着キナーゼ(FAK)は、広範囲の固形腫瘍で上方制御され、正常組織では非常に低レベルで発現される重要な生存分子である。当研究所[1]や本分野の他の第一人者ら[2、3]により近年示唆されているように、治療窓(therapeutic window)が作られ、このタンパク質を癌治療の非常に魅力的な標的にしている。その内容を参照により本明細書に組み込んだものとする国際公開第2002/049852号パンフレットも参照されたい。我々は、正常細胞では起きないが、癌細胞ではアポトーシスを引き起こす結合部位からFAKとペプチドの重要な結合パートナーを特定した。これらの所見のみならず、相関関係のある構造および機能データに基づいて、FAK−タンパク質の相互作用を遮断することによりアポトーシスおよび腫瘍細胞死を引き起こすことが示唆される。FAK相互作用を標的とすることが細胞生存に重要であるというデータの裏付けがあり、特定の結合部位の原子分解の構造データを用いて小分子の鉛化合物を同定した。小分子ライブラリをスクリーニングし、FAKが主要なシグナル伝達分子に結合するのを阻止して乳癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌のみならずメラノーマ癌の細胞株においてアポトーシスを誘発するいくつかの鉛化合物を同定した。これらの化合物のうちのいくつかは、低ナノモル濃度でアポトーシスを引き起こした。鉛化合物が標準的な化学療法薬に対して癌細胞の感度を増すことも分かった。
【0004】
データによれば、FAKのペプチドおよび小分子阻害剤を鉛化合物として同定し、標的の新規癌治療薬の基礎を提供できることが示唆される。かかる化合物は、生存シグナル伝達に関与している両分子の活性を有効に低下させ、癌細胞死を引き起こし、化学療法に対する感度を高める。我々の方式(FAKタンパク質−タンパク質の相互作用を標的とする)は、チロシンキナーゼのATP結合部位を標的にすることでキナーゼ活性を標的にする従来の方法よりも創薬や薬剤開発の成功率を高める可能性があると考えている。いくつかの大手製薬会社が、他の必須なチロシンキナーゼとの交差反応によりキナーゼ活性を標的とした特定のFAK阻害剤の開発に失敗しているように、FAKの場合には特に困難であることが経験的に分かっている。
【0005】
乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌を標的とした新規の薬物療法に対する市場は広範である。米国癌協会によれば、この国だけで今年、これらの癌について425,000件の新規症例が診断されると予測されている。癌薬物療法はいくつかの製薬会社の既存の主要な製品ラインであり、FAKを標的とする薬剤の開発は、既存製品を天然成分で補完する。
【0006】
FAKは、他のキナーゼ標的と比較して多くの癌型で過剰発現される。FAKを標的とする化合物は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌、およびメラノーマを含む多くの癌型に対して処方することができる。
【0007】
いくつかのグループは、潜在的な癌治療学としてFAKの標的化について調査している。FAKの標的化は、一般に、FAKのキナーゼドメインに集中している。この手法では、キナーゼドメインの破壊がFAKの下流シグナル伝達を特異的に阻害せず、他の関連チロシンキナーゼが薬剤の影響を受けているため、うまくいかないことが分かっている。本明細書に記載されていることは、FAKの下流シグナル伝達に非常に特異的なタンパク質−タンパク質相互作用を詳細に調べる新規手法である。さらに、FAKの異なる結合パートナーを標的にすることは、異なる腫瘍型に関係する場合がある。
【0008】
当研究所は、1993年にヒト焦点接着キナーゼをクローンし、異なるヒト腫瘍の上方制御を示した最初の研究所である[4、5]。正常細胞および腫瘍細胞におけるFAK生物学の知識に基づいて、小分子をベースとする腫瘍治療の標的として、FAKのタンパク質−タンパク質相互作用を同定した。ファージディスプレイ解析により多くの潜在的なFAK結合パートナーが明らかとなった。その一部は異なる方式(例:p53)によりすでに発見されており[6]、ファージディスプレイデータ(例:VEGFR3)に基づいて特徴づけた[7]。選択されたペプチドの多くは、in vitroで、癌細胞の生存率の損失およびアポトーシスを引き起こしたが、正常細胞では起こさなかった。これらの結果から、FAKの主要パートナーの結合部位を模倣することで起こることが示唆される。FAKおよび特定の結合部位の3つの主要な構造的相互作用に主眼を置いている。標的とするFAK相互作用が細胞生存に重要であるという明確なデータを有し、特定の結合部位の原子分解構造データを用いて小分子の鉛化合物を同定している点において、本手法の利点は2倍である[8−10]。これら小分子に結合しているFAKの構造解析に対してこれらのデータを利用している。広範囲の生物医学的に関連する標的タンパク質に適用することができる新規の計算技術も開発した[11、12]。NCIDOCKと呼ばれる本方法は、約140,000個の小分子を特定の構造的特徴に位置付けた大規模の分子ドッキング実験に基づいた標的タンパク質の原子座標を利用している。各化合物は、標的への予測結合エネルギーをスコアリングし、ランク付けして、候補となる鉛化合物のリストを作成した。その後、機能試験用に上位にランク付けられた小分子を要求した。
【0009】
FAK主要パートナーの3つの選択された結合部位の各々に対して、かかる化合物240,000個の化学ライブラリーを予備スクリーニングして、FAK機能の阻害について評価した一連の小分子を同定した。続いて、FAK生物学の豊富な経験やすでに評価されたモデルシステムを応用して、多細胞ベースアッセイ(生存率、増殖、運動性、浸潤、細胞周期、およびアポトーシス)を行い、鉛化合物の生物学的活性を分析した。これらの選択されたFAK阻害剤で癌細胞株(例:乳癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌、またはメラノーマヒト)を調べ、腫瘍細胞生存率の著しい減少やin vitroでの腫瘍細胞死の増加が再現性良く示された。
【発明の概要】
【0010】
一態様において、本発明は、FAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を調節することができる化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。一実施形態において、化合物は、ヒトp53ペプチドとのFAK結合に影響を及ぼす結合ポケットに結合または該ポケットと相互作用することができる。別の実施形態において、化合物は、受容体共役タンパク質(RIP)または血管内皮増殖因子受容体−3(VEGFR−3)とのFAK結合に影響を及ぼす結合ポケットに結合または該ポケットと相互作用することができる。
【0011】
一実施形態において、化合物は、ヒトp53ペプチドの構造座標により定義される結合ポケットに結合または該ポケットと相互作用することができる。別の実施形態において、化合物は、受容体共役タンパク質(RIP)または血管内皮増殖因子受容体−3(VEGFR−3)の構造座標により定義される結合ポケットに結合または該ポケットと相互作用することができる。
【0012】
一態様において、化合物は、ヒトp53とFAK−NTとの間の結合相互作用を調節することができる。一態様において、化合物は、ヒトp53とFAK−NTのアミノ酸206〜405との間の結合相互作用を調節することができる。一態様において、化合物は、以下のFAK残基:R86、E93、V95、W97、R127、F147、Q150、D154、E158、Y251、F253、E256、C257、F258、K259、P332、I336、N339の1つ以上において結合相互作用を調節することができる。
【0013】
一態様において、化合物は、ヒトp53ペプチドまたはその断片である。別の態様において、化合物は、ヒトp53のアミノ酸43〜73であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、化合物は、ヒトp53のアミノ酸65〜71であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、化合物は、アミノ酸配列QMSGAPH(SEQ ID NO:3)を含む。別の態様において、化合物は、アミノ酸配列QMSGAPH(SEQ ID NO:3)を含むp53ペプチド断片である。別の態様において、化合物は、以下のアミノ酸配列:(i)QMSAAPA(SEQ ID NO:4)、(ii)RMPEAAP(SEQ ID NO:5)、または(iii)RVSGAPA(SEQ ID NO:6)の一つを含む。
【0014】
一態様において、化合物は、ヒトp53ペプチドまたはその断片と結合することができる。別の態様において、化合物は、ヒトp53のアミノ酸43〜73であるアミノ酸配列と結合することができる。別の態様において、化合物は、ヒトp53のアミノ酸65〜71であるアミノ酸配列と結合することができる。別の態様において、化合物は、アミノ酸配列QMSGAPH(SEQ ID NO:3)と結合することができる。別の態様において、化合物は、アミノ酸配列QMSGAPH(SEQ ID NO:3)を含むp53ペプチド断片と結合することができる。別の態様において、化合物は、以下のアミノ酸配列:(i)QMSAAPA(SEQ ID NO:4)、(ii)RMPEAAP(SEQ ID NO:5)、または(iii)RVSGAPA(SEQ ID NO:6)の一つを含む化合物と結合することができる。
【0015】
一態様において、本発明は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。本方法は、FAK結合阻害剤化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。本方法は、FAK結合パートナーの結合能力を直接調節することでFAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を調節することができる化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。本方法は、FAK阻害剤化合物またはFAK結合パートナー阻害剤化合物を治療に有効な量でそれを必要とすると同定された対象に投与することを含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、癌を含む細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。本方法は、FAKまたはFAKタンパク質結合パートナーのFATドメインに結合することができる化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、対象を治療するため、FAK結合(FAK−結合パートナーとの結合を含む)を破壊することができる化合物を有効量で対象に投与することを含む、癌を患っているまたは癌に罹り易い対象の治療方法を提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、増殖を調節することができる化合物(該化合物は増殖を刺激する)を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む、疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法を提供する。その他の態様において、本方法は、FAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を刺激することを含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、FAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナー(例:VEGFR−3、RIP、p53)の結晶構造を得るかあるいは、FAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナーの結晶構造に関する情報を得る工程と、試験化合物がFAKタンパク質−タンパク質結合の相互作用を調節するかどうか判断するため、FAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナーの構造内に、あるいは、該構造上で試験化合物をモデリングする工程と、を含むFAKタンパク質−タンパク質の結合相互作用を調節する化合物の同定方法を提供する。ある実施形態において、モデリング工程は、FAKまたはFAKタンパク質結合パートナーのFATドメインの構造座標により定義される結合ポケットに化合物が結合するかまたは該ポケットと会合する能力をモデリングまたは判断することを含む。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、細胞増殖を阻害する化合物の同定方法である。本方法は、焦点接着標的ドメイン(FAT)複合体を試験化合物と接触させる工程と、試験化合物がFAKのFATドメインを調節(例:阻害)する、細胞増殖を阻害する、アポトーシスを誘発する、もしくはFAKタンパク質結合パートナーとのFAK結合を調節する能力を評価する工程と、を含む。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、FAKのFATドメインの原子座標を用いて結合ポケットを含む分子の三次元構造(例:in silico)を生成する工程と、該三次元構造を用いてFAKのFATドメインの活性を調節する、または、FAKタンパク質結合パートナーとのFAK結合を調節する化合物を同定する工程と、を含むFAKの活性を調節する化合物の同定方法である。
【0024】
別の態様において、本発明は、治療に有効な量のFAK阻害剤あるいはFAKタンパク質−タンパク質結合相互作用阻害剤化合物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む包装組成物を提供する。組成物は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療用に調合してもよいし、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療用に使用説明書と一緒に包装してもよい。
【0025】
一態様において、本発明は、対象における細胞増殖性疾患の治療用キットを提供し、該キットには、本明細書に記載の化合物、薬学的に許容されるそのエステル、塩、およびプロドラッグ、および使用説明書を含む。別の態様において、本発明は、細胞増殖を阻害、対象における抗細胞増殖治療の効果を評価、細胞増殖阻害剤により治療を受けている対象の進行をモニタリング、細胞増殖阻害剤により治療するため細胞増殖性疾患をもつ対象を選択、および/または癌を患っているまたは癌に罹り易い対象を治療するためのキットを提供する。ある実施形態において、本発明は、FAK活性またはFAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を調節(例:阻害)することができる化合物を含む、対象における細胞増殖性疾患の治療用キットを提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、FAKのFATドメインまたはFAKタンパク質結合パートナー単独またはその組み合わせの三次元構造に関する。
【0027】
従って、本発明は、これらの結合ポケットを一つあるいは両方含む分子または分子複合体、または同様の三次元形状をもついずれかの結合ポケットのホモログを提供する。
【0028】
本発明は、FAKのFATドメインの活性を調節する、あるいは、薬学的に許容される担体と共にFAKタンパク質結合パートナーまたは薬学的に許容されるそのエステル、塩、あるいはプロドラッグとのFAK結合を調節することができる化合物を含む、本明細書に記載の化合物の医薬組成物も提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、FAKのFATドメインを定義する、またはFAKタンパク質結合パートナーあるいは相同性結合ポケットとのFAK結合を調節する結合ポケットの構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、分子または分子複合体の三次元表示を生成するコンピュータであって、前記分子または分子複合体は、FAKのFATドメインまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナーの構造座標、または、前記アミノ酸の主鎖原子から約2.0オングストローム以下の二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む前記分子または分子複合体のホモログの三次元表示により定義される結合ポケットを含むコンピュータを提供する。コンピュータは、(i)機械読み取り可能データでコード化されたデータ記憶物を含み、前記データはFAKのFATドメインまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナーの構造座標を含む、機械読み取り可能データ記憶媒体と;(ii)前記機械読み取り可能データを処理するための指示を記憶するワーキングメモリと;(iii)前記機械読み取り可能データを前記三次元表示に処理するため、前記ワーキングメモリおよび前記機械読み取り可能データ記憶媒体に接続された中央演算処理装置と;(iv)前記三次元表示を表示するための前記中央演算処理装置に接続されたディスプレイとを含む。
【0031】
本発明は、上記の結合ポケットに結合する化合物の設計方法、評価方法、および同定方法も提供する。本発明の他の実施形態について以下に開示する。
【0032】
以下の非限定的な例および以下の図面を参照しながら、本発明を以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】焦点接着キナーゼ機構経路に焦点を当てた抗癌剤開発を説明するポスターパネルである。
【図2】抗癌組み合わせとしてドキソルビシンと組み合わせた試験化合物C4の結果を示す。
【図3】C4の細胞生存率に対する効果を示す。
【図4】C4のMCF7細胞生存率に対する効果を示す。
【図5】C4のVEGFR−3特異性に対する効果を示す。
【図6】C4の腫瘍増殖(in vivo)に対する効果を示す。
【図7】C4の腫瘍増殖(in vivo)に対する効果を示す。
【図8】ドキソルビシンと組み合わせたC4の細胞生存率に対する効果を示す。
【図9】ドキソルビシンと組み合わせたC4の細胞アポトーシスに対する効果を示す。
【図10】C4の腫瘍増殖(in vivo)に対する効果を示す。
【図11】膵臓癌細胞におけるC4の増感効果を示す。
【図12】膵臓癌細胞におけるC4の増感効果を示す。
【図13】膵臓癌細胞におけるC4の効果(in vivo)を示す。
【図14】膵臓癌細胞におけるC4の効果(in vivo)を示す。
【図15】MCF−7 p53(野生型)細胞株におけるP−化合物のMTT分析結果を示す。
【図16】D−化合物に対するBT474細胞生存率を示す。
【図17】ドキソルビシンとのD−化合物に対するMCF−7細胞生存率を示す。
【図18A】化合物D4(A)およびD7(B)の用量に対するBT474細胞生存率を示す。
【図18B】化合物D4(A)およびD7(B)の用量に対するBT474細胞生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、FAK結合パートナーとのFAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を標的にすることでFAKの阻害に対処する治療方法を発見した。かかる相互作用は、特に、FAK機構が重要な役割を果たす特定の癌型におけるアポトーシスおよび細胞増殖の調節に関連している。
【0035】
本発明は、FAKタンパク質−タンパク質相互作用が腫瘍治療の標的(例:選択的)として有用であることを発見したことに少なくとも部分的に関する。ファージディスプレイ分析により、潜在的なFAK結合パートナーが明らかとなる。これらの結合相互作用を破壊することで、in vitroにおいて正常細胞ではなく癌細胞の生存率の損失およびアポトーシスを引き起こす。
【0036】
1.定義
本発明をさらに説明する前に、本発明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義し、便宜上ここにまとめる。
【0037】
「投与」または「投与する」という用語は、目的の機能を実行するため本発明の化合物を対象に導入する経路のことを言う。使用できる投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内)、経口、吸入、直腸、および経皮が挙げられる。医薬製剤は、投与経路ごとに適切な形にすることができる。例えば、これらの製剤は、錠剤またはカプセル剤で、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐薬;点眼薬、輸液、または吸入による投与;ローション剤または軟膏による局所投与;および坐薬による直腸投与などにより投与される。経口投与が好ましい。注射は、ボーラスであっても持続注入であってもよい。投与経路に応じて、目的の機能を実行するための能力に悪影響を及ぼし得る自然条件から保護するため、本発明の化合物を選択材料でコーティングしても選択材料内に配置してもよい。本発明の化合物は、単独で、または、上述の別の薬剤または薬学的に許容される担体あるいはその両方と組み合わせて投与することができる。本発明の化合物は、他の薬剤の投与前に、該薬剤と同時に、あるいは該薬剤の投与後に投与することができる。さらに、本発明の化合物は、その活性代謝物、またはin vivoでより活性な代謝物に変換されるプロドラッグ形でも投与することができる。
【0038】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基のラジカルのことを言い、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。「アルキル」という用語は、アルキル基をさらに含み、これは、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄、またはリン原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、またはリン原子をさらに含むことができる。好ましい実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格(例:直鎖ではC1〜C30、分枝鎖ではC3〜C30)に30個以下、好ましくは26個以下、より好ましくは20個以下、さらにより好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造に3〜10個の炭素原子、より好ましくは、環構造に3、4、5、6、または7個の炭素を有する。
【0039】
さらに、本明細書全体を通じて使用される「アルキル」という用語は、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むものとし、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素が置換している置換基を有するアルキル部分のことを言う。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上の置換された部分は、それら自身、必要に応じて置換することができることが理解されるであろう。シクロアルキルは、例えば上述の置換基でさらに置換することができる。「アルキルアリール」部分は、アリール(例:フェニルメチル(ベンジル))内で置換されたアルキルである。「アルキル」という用語はまた、上述のアルキルと長さが類似しておりかつ上述のアルキルに置換することができるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれが含む不飽和脂肪族基のことを言う。
【0040】
炭素数が他に指定されない限り、本明細書で使用される「低級アルキル」は、その骨格構造に1〜10個、より好ましくは1〜6個、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有する前述のアルキル基のことを意味し、これは、直鎖または分枝鎖であってもよい。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、tert−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。好ましい実施形態において、「低級アルキル」という用語は、その骨格に4個以下の炭素原子を有する直鎖アルキル、例えばC1〜C4アルキルのことを言う。
【0041】
「アルコキシアルキル」、「ポリアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」という用語は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、または硫黄原子、例えば、酸素、窒素、または硫黄原子をさらに含む上述のアルキル基のことを言う。
【0042】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、上述のアルキルと長さが類似しておりかつ上述のアルキルに置換することができるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれが含む不飽和脂肪族基のことを言う。例えば、本発明では、シアノ基およびプロパルギル基が考えられる。
【0043】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、アリール基のラジカルのことを言い、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどのヘテロ原子を0〜4個含み得る5員および6員単環芳香族基が挙げられる。アリール基としては、多環式縮合芳香族基も挙げられ、例えば、ナフチル、キノリル、インドリルなどである。環構造にヘテロ原子を有するこれらアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれる。芳香族環は、1つ以上の環位置で、上述のかかる置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分で置換することができる。アリール基は、芳香族ではない脂環式環または複素環と縮合または架橋して、多環(例:テトラリン)を形成することもできる。
【0044】
「と会合する」という用語は、化学物質または化合物あるいはその部分と、タンパク質上の結合ポケットまたは結合部位との間の近接条件のことを言う。会合は、非共有結合性(並置は、水素結合またはファン・デル・ワールスあるいは静電相互作用によりエネルギー的に有利である)であっても共有結合性であってもよい。
【0045】
本明細書で使用される「結合ポケット」という用語は、その形状により、別の化学物質または化合物と良好に会合する分子または分子複合体の領域のことを言う。
【0046】
本発明の化合物の「生物活性」という言葉は、応答細胞において本発明の化合物により誘発される全ての活性を含む。これらの化合物より誘発されるゲノム活性および非ゲノム活性を含む。
【0047】
「生物学的組成物」または「生物学的試料」は、細胞または生体高分子を含む、あるいは、それに由来する組成物のことを言う。細胞含有組成物としては、例えば、哺乳類血液、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血液タンパク質、血漿、多血小板血漿、血漿濃縮物、血漿の任意の分別からの沈殿物、血漿の任意の分別からの上清、血漿タンパク質分別、精製または部分精製した血液タンパク質または他の成分(血清、精液、哺乳類初乳、乳汁、唾液、胎盤抽出物、寒冷沈降物、寒冷上清、細胞溶解物、哺乳類細胞培養物、または培地)、発酵生成物、腹水、血球内で誘導されたタンパク質、正常細胞または形質転換細胞により細胞培養物で生成された生成物(例:組み換えDNAまたはモノクローナル抗体の技術経由)が挙げられる。生物学的組成物は、無細胞であってもよい。好ましい実施形態において、適当な生物学的組成物または生物学的試料は、赤血球浮遊液である。いくつかの実施形態において、血球懸濁剤としては哺乳類血球が挙げられる。好ましくは、血球は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、またはブタから得られる。好ましい実施形態において、血球懸濁剤としては、赤血球、および/または血小板、および/または白血球、および/または骨髄細胞が挙げられる。
【0048】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーの非重畳可能性の特性を有する分子のことを言い、「アキラル」という用語は、鏡像パートナーに重畳可能な分子のことを言う。
【0049】
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の非対称中心をもち、その分子は互いに鏡像ではない立体異性体のことを言う。
【0050】
「有効量」という用語は、所望の結果を達成するために必要な投与量および期間にわたって有効な、例えば、細胞増殖性疾患の治療に十分な量のことを含む。
【0051】
本発明の化合物の有効量は、対象において所望の反応を誘発するため、対象の病状、年齢、および重量、本発明の化合物の能力などの要因に応じて変えることができる。投与計画は、最適な治療反応をもたらすように調整することができる。有効量はまた、治療に有効な作用が本発明の化合物のあらゆる毒性作用または有害作用(例:副作用)を上回る量である。
【0052】
本発明の化合物の治療に有効な量(即ち、有効投与量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは、約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは、約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは、約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲であってよい。限定的ではないが、疾病または疾患の重症度、前に行われた治療、対象の全身状態および/または年齢、存在している他の疾病を含む特定の要因が、対象を効果的に治療するのに必要な投与量に影響を及ぼし得ることは当業者であれば分かるであろう。さらに、本発明の化合物の治療に有効な量による対象の治療は、単一の治療であってもよく、好ましくは、一連の治療であってもよい。一例において、対象は、約0.1〜20mg/kg体重の範囲で、週一回で約1〜10週間、好ましくは、2〜8週間、より好ましくは、約3〜7週間、さらにより好ましくは、約4、5、または6週間にわたり本発明の化合物で治療される。治療に使用される本発明の化合物の有効投与量は、特定の治療の経過と共に増減できることが分かるであろう。
【0053】
「鏡像異性体」という用語は、互いに非重畳可能な鏡像である、化合物の2つの立体異性体のことを言う。2つの鏡像異性体の等モル混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ化合物」と呼ばれる。
【0054】
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲンによりモノ−、ジ−、またはポリ置換される前述で定義したアルキル基を含むものであり、例えば、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルである。
【0055】
「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Br、または−Iを示す。
【0056】
「ヒドロキシル」という用語は、−OHを意味する。
【0057】
本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
【0058】
「恒常性」という用語は、当該技術分野において承認されており、内部環境の条件を静的または一定に持続することを意味する。
【0059】
「改善された生物学的特性」という言葉は、in vivoでその有効性を高める、本発明の化合物に固有の任意の活性のことを言う。好ましい実施形態において、この用語は、本発明の化合物の任意の定性的または定量的に改善された治療特性のことを言い、例えば、毒性低減である。
【0060】
「細胞増殖性疾患」という用語は、望ましくないまたは制御されていない細胞増殖を伴う疾患のことを言う。かかる疾患の例としては、限定的ではないが、腫瘍または癌(例:肺癌(小細胞や非小細胞)、甲状腺癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、または結腸癌)、肉腫、またはメラノーマが挙げられる。
【0061】
「FAKタンパク質−タンパク質結合パートナー」という言葉は、FAK(例:全長、N末端、C末端、カルボキシ末端、キナーゼドメイン、FERMドメイン、FATドメイン)と結合するタンパク質(本明細書に示されるものを含む)のことを言う。
【0062】
「任意に置換される」という用語は、未置換基、または、1つ以上の利用可能な位置で、通常、1、2、3、4、または5つの位置において水素以外により1つ以上の適当な基(同一であっても異なっていてもよい)で置換される基を包含するものとする。かかる任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C1−C8アルコキシ、C2−C8アルキルエーテル、C3−C8アルカノン、C1−C8アルキルチオ、アミノ、モノ−またはジ−(C1−C8アルキル)アミノ、ハロC1−C8アルキル、ハロC1−C8アルコキシ、C1−C8アルカノイル、C2−C8アルカノイルオキシ、C1−C8アルコキシカルボニル、−COOH、−CONH、モノ−またはジ−(C1−C8アルキル)アミノカルボニル、−SONH、および/または、モノ−またはジ(C1−C8アルキル)スルホンアミドのみならず、炭素環式および複素環式基が挙げられる。任意の置換は、「0〜X個の置換基で置換される」という字句によっても示され、ここで、Xは可能な置換基の最大数である。ある任意に置換される基は、0〜2、3、または4つの個々に選択された置換基で置換される(即ち、未置換、あるいは、記載の置換基の最大数まで置換される)。
【0063】
「異性体」または「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なっている化合物のことを言う。
【0064】
「調節する」という用語は、例えば、本発明の化合物への暴露に反応して細胞が増殖する能力を増減すること、例えば、所望の最終結果(例:治療結果)が得られるように動物の少なくとも亜集団の細胞増殖の阻害を増減することを言う。
【0065】
「FAKまたはFAKタンパク質−タンパク質相互作用パートナー結合を調節することができる化合物を得る」などの「得る」という用語は、化合物を購入する、合成する、あるいは取得することを含むものとする。
【0066】
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与した」という字句は、腸内投与および局所投与以外の、通常、注射による投与様式を意味し、限定的ではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下内、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内注射ならびに輸液が挙げられる。
【0067】
「ボリシクリル」または「多環式ラジカル」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接環で共通である、例えば、環が「縮合環」である2つ以上の環式環(例:シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)のラジカルのことを言う。非隣接原子を通じて結合している環は、「架橋」環と呼ばれる。多環の各環は、上述のかかる置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分で置換することができる。
【0068】
「プロドラッグ(prodrug)」または「プロドラッグ(pro−drug)」という用語は、in vivoで代謝することができる部分をもつ化合物のことを言う。一般に、プロドラッグは、エステラーゼあるいは他の機構によりin vivoで実薬に代謝される。プロドラッグおよびそれらの使用例は、当業界では周知である(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。プロドラッグは、化合物の最終単離および精製中にin situで調製することができる、あるいは、その遊離酸形態あるいはヒドロキシルの精製化合物を適当なエステル化剤と別々に反応させることで調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による治療を介してエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換および未置換の、分枝または非分枝の低級アルキルエステル部分、(例、プロビオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ−低級アルキルアミノ、低級アルキルエステル(例、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール−低級アルキルエステル(例、ベンジルエステル)、置換(例、メチル、ハロ、またはメトキシ置換基で置換)アリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ−低級アルキルアミド、およびヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロビオン酸エステルおよびアシルエステルである。in vivoで他の機構を通じて活性型に変換されるプロドラッグも含む。
【0069】
化合物の「予防的に有効な量」という言葉は、患者への単回または複数回投与に際し、細胞増殖性疾患の予防または治療に有効な、本明細書のあらゆる式あるいは本明細書に記載の本発明の化合物の量のことを言う。
【0070】
「毒性低減」という言葉は、in vivoで投与する際に、本発明の化合物より誘発されるあらゆる望ましくない副作用の低減を含むものとする。
【0071】
「スルフヒドリル」または「チオール」という用語は、−SHを意味する。
【0072】
「対象」という用語は、細胞増殖性疾患を患い得る、あるいは、本発明の化合物の投与により恩恵を受けることができる有機体のことを含み、例えば、ヒトおよび非ヒト動物である。好ましいヒトとしては、本明細書に記載の細胞増殖性疾患または関連症状を患っているまたは罹り易いヒト患者が挙げられる。本発明の「非ヒト動物」という用語は、哺乳類、齧歯類(例、マウス)、非哺乳類、非ヒト霊長類(例、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ)、両生類、爬虫類などの全脊椎動物を含む。
【0073】
「細胞増殖性疾患に罹り易い」という用語は、細胞増殖の疾患、例えば、癌を発症する危険性のある対象、すなわち、癌ウイルスによるウイルス感染を患っている対象、電離放射線または発癌性化合物に暴露した対象、癌などの家族歴または病歴を有する対象等を含むことを意味する。
【0074】
本明細書で使用される「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」、「末梢に投与した」という字句は、患者の体内に入れることで、代謝や他の同様のプロセスを施すように、本発明の化合物、薬剤、または他の材料を投与することを意味し、例えば、皮下投与である。
【0075】
本発明の化合物の「治療に有効な量」という言葉は、患者に単回または複数回投与する際、細胞増殖および/または細胞増殖性疾患の症状を阻害する、あるいは、かかる治療なしで予想される生存を超えてかかる細胞増殖性疾患をもつ患者の生存を長引かせるのに有効な薬剤量のことを言う。
【0076】
キラル中心の命名に関して、「d」および「l」配置という用語は、IUPAC勧告の定義による。用語の使用について、ジアステレオマー、ラセミ体、エピマー、および鏡像異性体は、製剤の立体化学を説明するため通常の文脈で使用する。
【0077】
2.本発明の化合物
一態様において、本発明は、FAK結合活性を(直接的または間接的に)調節(例、阻害または刺激)することができる化合物を提供する。別の態様では、FAK結合活性を(直接的または間接的に)調節(例、阻害または刺激)することができる化合物と、追加の治療薬(例、化学療法剤)との組み合わせである。
【0078】
一実施形態において、本発明は、FAKタンパク質−タンパク質結合を調節することができる化合物と;薬学的に許容されるそのエステル、塩、およびプロドラッグとを提供する。
【0079】
ある好ましい化合物としては、本明細書に具体的に記載された化合物が挙げられる:
阻害剤:
C1:2−[2−(アニリノカルバモイル)フェニル]安息香酸;
C2:N’−[(4−クロロフェニル)メチル]−N,N−ジメチル−N’−ピリジン−2−イル−エタン−1,2−ジアミン;
C3:ピリジン−2−イルメタンアミン;
C4:N’−[(4−クロロフェニル)メチル]−N,N−ジメチル−N’−ピリジン−2−イル−エタン−1,2−ジアミン(NSC409949;Sigma C1915、スプラスチン;クロロピラミン塩酸塩);
C5:1−(3−フルオロフェニル)−3−ナフタレン−2−イル−尿素(NSC216201);
C6:N−[4−[(3−フルオロフェニル)カルバモイルアミノ]フェニル]アセトアミド;
C7:N−[4−[(4−フルオロフェニル)カルバモイルアミノ]フェニル]アセトアミド;
C8:N−[(6−ニトロベンゾ[l,3]ジオキソール−5−イル)メチリデンアミノ]ベンズアミド;
C10:10−(4−クロロフェニル)−3−メチル−7−(5−メチルピリジン−2−イル)−8−オキサ−1,7,9−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−2,4,9−トリエン;
C11:2−(1,7−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,4,6,8−テトラエン−8−イル)酢酸;
C12:2−(4−メチル−1,7−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,4,6,8−テトラエン−8−イル)酢酸;
C27:ウスニン酸誘導体4,4a−ジヒドロ−4A(フェニルチオ)、ラセミ酸塩(NSC250435);
N2:2−クロロ−10−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]フェノチアジン;
N9:4,6−ジフェニル−1,3,5−チアジアジナン−2−チオン;
N14:(9,9−ジメチルアクリジン−10−イル)−(2−ジメチルアミノエチルスルファニル)メタノン;メタンスルホン酸;
N16:3−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−ナフタレン−1,2−ジオン;
N1:N−ピリジン−4−イルピリジン−4−アミン;
N7:2−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール;
N8:7−オキサ−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−2,4,11−トリエン−9−オン;
N11:1−(3−チエニルメチル)−1.ラムダ.〜5〜,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカン;
N15:N−(ピリジン−4−イルメチリデンアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−アミン;
ペプチド−35(WHWQWTPWSIQP)(SEQ ID NO:1);
ペプチド−AV3(WHWRPWTPCKMF)(SEQ ID NO:2);
刺激薬:
C9:N−[1−(4−クロロフェニル)プロピル]−N−エチル−ピリジン−2−アミン;
P2:1−ベンジル−15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカン;
P4:1−(4−クロロフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
P7:1−(4−メトキシフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
P8:1−(4−ヨードフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノンオキシム;
P10:1−(2−ナフチル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
D4:メチルN−[5−(シクロプロパンカルボニル)−3H−ベンゾイミダゾール−2−イル]カルバミン酸塩;
D5:(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)−(5−ニトロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−アミン;
D6:1−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−3−(5−クロロ−2−メトキシ−フェニル)尿素;
【0080】
本発明は、上述の化合物の薬学的に許容される塩およびエステルにも関する。
【0081】
一態様において、「P」化合物(例:P2、P4、P7、P8、P10)は、ヒトp53、特に詳細には、本明細書に記載の結合部位(例、ヒトp53のアミノ酸65〜71を含むアミノ酸配列;QMSGAPH(SEQ ID NO:3)を含むアミノ酸配列)を標的(例:結合、調節)とする。一態様において、「D」化合物(例:D4、D5、D6)は、p53との相互作用に関与するFAK上の結合ドメイン(例:溝)を標的(例:結合、調節)とする。
【0082】
天然に存在する異性体または合成異性体は、当該技術分野において公知のいくつかの方法で分離することができる。2つの鏡像異性体のラセミ混合物の分離方法としては、キラル固定相を用いたクロマトグラフィーが挙げられる(例:「Chiral Liquid Chromatography」、W.J.Lough,Ed.Chapman and Hall,New York(1989)を参照されたい)。鏡像異性体は、標準的な分解能技術により分解することもできる。例えば、ジアステレオマー塩や分別結晶の生成を用いて、鏡像異性体を分離することができる。カルボン酸の鏡像異性体を分離するために、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネなどの鏡像異性的に純粋なキラル塩基を加えることで、ジアステレオマー塩を生成することができる。あるいは、ジアステレオマーエステルは、メントールなどの鏡像異性的に純粋なキラルアルコールと反応させることに続いて、ジアステレオマーエステルを分離し、加水分解して遊離の鏡像異性的に濃縮されたカルボン酸を得ることにより形成できる。光学異性体をアミノ化合物から分離するために、樟脳スルホン酸、酒石酸、マンデル酸、または乳酸などのキラルカルボン酸またはスルホン酸を加えることにより、ジアステレオマー塩を形成することができる。
【0083】
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の方法により生成または同定されるFAK結合ポケットまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナー結合ポケット(FAKがパートナーと結合する結合部位、あるいは、パートナーの他の結合部位を含む)と会合または結合する化合物を提供する。
【0084】
別の態様において、本発明は、増殖性疾患の治療に有用な化合物のスクリーニングに有用なポリペプチドを提供する。かかるポリペプチドとしては、例えば、FAK、FAKドメイン、FAK結合パートナードメインが挙げられる。かかるポリペプチドは、融合タンパク質であってもよく、例えば、緑色蛍光タンパク質などの検出可能なリポーター部分と融合した結合ポケット部分、または、蛍光標識、放射標識などの検出可能タグで標識された結合ポケット部分である。かかる融合タンパク質は、FAKまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナーを調節することができる化合物のスクリーニングに用いることができる。
【0085】
3.本発明の化合物の用途
一実施形態において、本発明は、FAKタンパク質−タンパク質結合パートナーとのFAK結合を破壊することができる化合物を有効量で対象に投与することにより細胞増殖性疾患をもつ対象の治療方法を提供する。細胞増殖性疾患には、癌が挙げられる。ある実施形態において、対象は、哺乳類、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。
【0086】
本実施形態において、本発明の化合物は、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインを直接的または間接的に調節することができる。制御されていない増殖が起こっている細胞を本発明の化合物と接触させて、細胞増殖を阻害するまたはアポトーシスを誘発することができる。細胞に接触させること、または、本発明の化合物を対象に投与することは、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い細胞または対象を治療する1つの方法である。
【0087】
一実施形態において、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法としては、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの活性を直接的または間接的に調節することができる化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含み、それにより、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療する。例示化合物としては、本明細書に記載の化合物が挙げられる。
【0088】
従って、一実施形態において、本発明は、FAKまたはFAK結合パートナーの結合ポケットに結合することができる化合物を有効量で対象に投与することにより、細胞増殖性疾患を有する対象の治療方法を提供する。
【0089】
ある実施形態において、本発明の方法は、別の医薬活性化合物と組み合わせて本発明の化合物を治療に有効な量で対象に投与することを含む。医薬活性化合物の例としては、細胞増殖性疾患の治療に公知の化合物が挙げられ、例えば、抗癌剤、抗増殖剤、化学療法薬である。使用できる他の医薬活性化合物は、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Thirteenth Edition,Eds.T.R.Harrisonら、McGraw−Hill N.Y.,NY;およびthe physicians Desk Reference 50th Edition 1997,Oradell New Jersey,Medical Economics Co.に記載されており、その全教示内容を参照により本明細書に明確に組み込むものとする。本発明の化合物および医薬活性化合物は、同一の医薬組成物または異なる医薬組成物で(同時にまたは別時間で)対象に投与することができる。
【0090】
ある実施形態において、本発明の化合物は、従来の癌化学療法薬と併用療法で用いることができる。白血病および他の腫瘍に対する従来の治療計画としては、放射線、薬剤、またはそれらの組み合わせが挙げられる。放射線に加えて、以下の薬剤:ビンクリスチン、プレドニゾン、メトトレキサート、メルカプトプリン、シクロホスファミド、およびシタラビンは、通常、互いに組み合わせて急性白血病の治療に使用することが多い。他の例としては、例えば、ドキソルビシン、シスプラチン、タキソール、5−フルオロウラシル、エトポシドなどが挙げられ、本明細書に記載の化合物と組み合わせて有効性(例:細胞の化学増感)を示す。慢性白血病では、例えば、ブスルファン、メルファラン、およびクロラムブシルを併用することができる。従来の抗癌剤のほとんどは、毒性が強く、治療中に患者の体調を非常に悪化させやすい。積極的な治療は、全ての癌性細胞は破壊されない限り、残存細胞が増殖して再発を引き起こすという前提に基づいている。本発明の化合物は、ドキソルビシンまたはゲムシタビンなどの化学療法薬と併用して投与することもできる。特に、化合物C4は、ドキソルビシン、ゲムシタビン、またはその組み合わせとの併用に有用である。
【0091】
本発明の化合物の治療に有効な抗増殖性量または予防に有効な抗増殖性量は、公知技術を用いて、使用と類似環境下で得られた観察結果により、当業者の医師または獣医(「担当医」)により容易に決定することができる。投与量は、担当医の判断による患者の必要条件、治療している症状の重症度、および使用される特定の化合物に応じて変更することができる。治療に有効な抗増殖性量または用量や、予防に有効な抗増殖性量または用量の判断においては、担当医により多くの要因が考えられ、限定的ではないが:発症している特定の細胞増殖性疾患;特定薬剤、その様式、および投与経路の薬力学的特性;所望の治療経過時間;哺乳種;その大きさ、年齢、および全身状態;発症している特定の疾病;疾病の発症度または重症度;個々の患者の反応;投与した特定の化合物;投与様式;投与した製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択された用法;併用療法の種類(即ち、他の併用療法と本発明の化合物の相互作用);およびその他の関連状況が挙げられる。
【0092】
治療は、より少ない投与量で開始することができ、これは、化合物の最適用量には満たない。その後、状況下で最適効果が得られるまで投与量を少しずつ増加することができる。便宜上、1日の総投与量を分割し、必要に応じて1日に部分投与することができる。本発明の化合物の治療に有効な量および予防に有効な抗増殖性量は、約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日に変化すると考えられる。
【0093】
動物、例えば、イヌ、ニワトリ、齧歯類において細胞増殖性疾患の予防または治療に有効であると判断された化合物は、ヒトの腫瘍治療にも有用であり得る。ヒトの腫瘍を治療する当業者であれば、動物研究で得られたデータに基づいて、ヒトへの化合物の投与量および投与経路は分かるであろう。一般に、ヒトにおける投与量および投与経路は、動物のものと同様であると考えられる。
【0094】
細胞増殖性疾患の予防的治療に必要な患者の同定は、当業者の能力および知識の十分な範囲内である。対象方法により治療することができる細胞増殖性疾患を発症する危険性がある患者の特定の同定方法は、医学分野であれば理解され、例えば、家族歴や、対象患者の病状発現に関連しているリスク要因の存在である。当該担当医であれば、例えば、臨床試験、健康診断、および病歴/家族歴を用いることによりかかる候補患者を容易に同定することができる。
【0095】
対象における治療効果の評価方法は、当業界では周知の方法(例:細胞増殖性疾患が癌である場合、腫瘍の大きさを判断するか、または、腫瘍マーカーをスクリーニングする)により治療前の細胞増殖性疾患の程度を判断した後、本発明による細胞増殖の阻害剤(例:本明細書に記載のもの)を治療に有効な量で対象に投与することを含む。化合物の投与後適当な期間の後(例:1日、1週間、2週間、1か月、6か月)、細胞増殖性疾患の程度を再び判断する。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性の調節(例:低下)は、治療効果を示す。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性は、治療中、定期的に判断することができる。例えば、細胞増殖性疾患の程度または侵襲性について、数時間、数日、または数週間ごとにチェックし、さらなる治療効果を評価することができる。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性が低下することは、治療が有効であることを示す。上述の方法を用いて、細胞増殖性疾患の阻害剤による治療から恩恵を受け得る患者をスクリーニングまたは選択することができる。
【0096】
本明細書で使用される「対象から生物学的試料を得ること」は、本明細書に記載の方法で使用される試料を得ることを含む。生物学的試料は、上述のものである。
【0097】
さらに別の態様において、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの相互作用を調節する化合物の同定方法を提供する。本方法は、試験化合物の有無に関わらず、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメイン(アポ形態であっても複合体であってもよい)の結晶構造を得ること、または、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメイン(アポ形態であっても複合体であってもよい)の結晶構造に関する情報を得ることを含む。FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの結晶構造の結合部位内で、あるいは、部位上で化合物をコンピュータモデリングし、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインと試験化合物との相互作用の安定化を予測することができる。潜在的な調節化合物が同定されると、本明細書に記載のものおよび当該技術分野において公知の競合アッセイなどの細胞アッセイを用いて、化合物をスクリーニングすることができる。このようにして同定された化合物は、治療薬として有用である。
【0098】
別の態様において、本発明の化合物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に治療に有効な量で包装される。組成物は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療するために調合し、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療するために使用説明書と一緒に包装してもよい。
【0099】
別の態様において、本発明は、細胞増殖の阻害方法を提供する。一実施形態において、本発明による細胞増殖(または細胞増殖性疾患)の阻害方法は、細胞をFAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインを調節することができる化合物と細胞を接触させることを含む。いずれの実施形態においても、接触は、例えば、細胞を取り囲む液体、例として、細胞が生存または存在している増殖培地に化合物を添加することによりin vitroで行うことができる。接触は、化合物を細胞に直接接触させることでも行うことができる。あるいは、接触は、例えば、対象を通じた化合物の通過によりin vivoで行うことができる。例えば、投与した後、投与経路に応じて、化合物は、消化管または血流を通じて移動してもよく、あるいは、治療が必要な細胞に直接的に適用または投与してもよい。
【0100】
別の態様において、対象における細胞増殖性疾患の阻害方法は、本発明の化合物(即ち、本明細書に記載の化合物)を有効量で対象に投与することを含む。投与は、医薬分野で公知の任意の投与経路であってよい。対象は、細胞増殖性疾患に対する感受性を増加させ得る状態への予想または予想外の暴露、例えば、発癌物質あるいは電離放射線への暴露前に、細胞増殖性疾患を有する、細胞増殖性疾患を発症する危険性がある、あるいは予防的治療を必要とする場合がある。
【0101】
一態様において、本明細書の化合物で治療されている対象の進行を監視する方法は、細胞増殖性疾患の治療前の状況(例:腫瘍のサイズ、増殖速度、または侵襲性)を判断すること、本明細書の化合物を治療に有効な量で対象に投与すること、および、化合物による最初の治療期間の後に細胞増殖性疾患の状況(例:腫瘍のサイズ、増殖速度、または侵襲性)を判断することを含む。ここで、状態が調節されることは、治療の有効性を示す。
【0102】
対象は、細胞増殖性疾患を発症する危険性がある、細胞増殖性疾患の症状を発現している、細胞増殖性疾患に罹り易い、および/または細胞増殖性疾患と診断されている場合がある。
【0103】
状態が調節されることで、対象が治療に良好な臨床反応を示す場合、対象は化合物により治療され得る。例えば、対象には、化合物を治療に効果的な用量で投与することができる。
【0104】
別の態様において、試験化合物の評価方法は、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインを試験化合物(複合体)と接触させる工程と、接触後の結合相互作用を評価する工程とを含み、ここで、基準値に対する複合体の安定性の変化は、試験化合物が複合体の安定性を調節していることを示す。
【0105】
FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの複合体は、in silicoでモデリングしても、または、細胞内で複合体であっても、細胞から単離されても、組み換え技術により発現しても、細胞または組み換え発現システムから精製あるいは単離されても、あるいは、細胞または組み換え発現システムから部分的に精製あるいは単離されてもよい。
【0106】
本発明のキットは、対象における細胞増殖性疾患の治療用キットを含む。キットには、本発明の化合物、例えば、本明細書に記載の化合物、薬学的に許容されるそのエステル、塩、およびプロドラッグと、使用説明書とを含み得る。使用説明書には、投与量情報、送達方法、キットの保存などを含み得る。キットには、試薬、例えば、試験化合物、緩衝剤、培地(例:細胞増殖培地)、細胞なども含み得る。試験化合物は、公知の化合物、または新たに発見された化合物、例えば、化合物のコンビナトリアルライブラリを含み得る。本発明の1つ以上のキットを一緒に包装してもよく、例えば、細胞増殖性疾患の治療効果の評価用キットを、本発明による細胞増殖性疾患を治療している対象の進行のモニタリング用キットと一緒に包装してもよい。
【0107】
本方法は、例えば、in vitroもしくはex vivoで培養中の細胞上で行っても、例えば、in vivoで動物対象内に存在する細胞上で行ってもよい。本発明の化合物は、増殖細胞、例えば、形質転換細胞、腫瘍細胞株などの初代培養を用いてin vitroで初期試験を行ってもよい。
【0108】
本方法は、例えば、in vitroもしくはex vivoで培養中の細胞上で行ってもよく、例えば、in vivoで動物対象内に存在する細胞上で行ってもよい。本発明の化合物は、胚齧歯類(embryonic rodent pups)(例:米国特許第5,179,109号に記載の胎児ラット組織培養を参照されたい)、他の哺乳類(例:米国特許第5,089,517号に記載の胎児マウス組織培養を参照されたい)、または非哺乳動物モデルからの気道細胞を用いてin vitroで初期試験を行ってもよい。
【0109】
あるいは、本発明の化合物の効果は、動物モデルを用いてin vivoで特徴付けることができる。
【0110】
4.医薬組成物
本発明は、有効量の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。別の実施形態において、有効量は、前述のように、細胞増殖性疾患の治療に有効である。
【0111】
一実施形態において、本発明の化合物は、薬学的に許容される製剤、例えば、薬学的に許容される製剤を対象に投与した後、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間、または4週間にわたって本発明の化合物を対象に徐放する薬学的に許容される製剤を用いて対象に投与される。
【0112】
ある実施形態において、これらの医薬組成物は、対象への局所投与または経口投与に適当である。他の実施形態において、以下に詳細を述べるように、本発明の医薬組成物は、以下の投与用に適用されたものを含む、固形または液体形態での投与用に特別に調合してもよい。投与としては、(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性溶液、あるいは懸濁剤)、錠剤、ボーラス剤、粉末剤、顆粒剤、ペースト剤;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液または懸濁剤として、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内注入;(3)局所塗布、例えば、皮膚に塗布されるクリーム剤、軟膏、または噴霧剤;(4)腟内または直腸内、例えば、ペッサリー剤、クリーム剤、または発泡剤;または(5)噴霧剤、例えば、水性噴霧剤、リポソーム製剤、または化合物を含む固体粒子が挙げられる。
【0113】
「薬学的に許容される」という字句は、堅実な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題あるいは合併症を伴わない、妥当な損益比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適している本発明の化合物、かかる化合物を含む組成物、および/または剤形のことを言う。
【0114】
「薬学的に許容される担体」という字句は、ある器官(人体の一部)から別の器官(人体の一部)へ対象化学物質の運搬または輸送に関わる、薬学的に許容される材料、組成物、または賦形剤(例えば、液体または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、または封入材)を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ、患者に害がないという意味で「許容」である。薬学的に許容される担体として利用できる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;(2)コーンスターチおよびジャガイモでんぷんなどのでんぷん類;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油脂;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質なしの水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
【0115】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、着香料および芳香剤、防腐剤ならびに酸化防止剤も組成物中に存在してもよい。
【0116】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ・トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0117】
本発明の化合物を含む組成物としては、経口、鼻腔、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣内、噴霧投与、および/または非経口投与に適当なものが挙げられる。組成物は、便宜上、単位剤形で存在してもよく、製薬業界では周知のあらゆる方法で調製することができる。担体材料と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分量は、治療される宿主および特定の投与様式に応じて変化する。担体材料と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分量は、一般に、治療効果を生む化合物量である。一般に、100%中、活性成分の量は、約1%〜約99%、好ましくは、約5%〜約70%、より好ましくは、約10%〜約30%の範囲である。
【0118】
これらの組成物の調製方法は、本発明の化合物を担体と、必要に応じて、1つ以上の補助成分と会合させる工程を含む。一般に、本発明の化合物を液体担体または微粉化した固体担体もしくはその両方と均一かつ密接に会合させ、必要に応じて、製品に成形することによって、製剤は調製される。
【0119】
経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれが活性成分として本発明の化合物の定義量を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香料基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いて)、粉末剤、顆粒剤、水性または非水性液体における溶液もしくは懸濁剤として、水中油または油中水の液体乳剤として、エリキシル剤またはシロップ剤として、香錠(ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性基剤、またはスクロースおよびアカシアを用いて)として、および/またはマウスウォッシュなどの剤形であってもよい。化合物は、ボーラス剤、舐剤、またはペースト剤として投与してもよい。
【0120】
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、粉末剤、顆粒剤など)において、活性成分をクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または以下のいずれかなどの1つ以上の薬学的に許容される担体と混合する:(1)でんぷん類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカでんぷん、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤;ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。類似のタイプの固体組成物も同様に、ラクトースまたは乳糖と共に、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟および硬ハードゼラチンカプセルにおける充填剤として用いてもよい。
【0121】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分と共に圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムスターチ、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製してもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤によって湿らせた粉末化活性成分の混合物を、適当な機械で成型により作製してもよい。
【0122】
錠剤、および、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの本発明の医薬組成物の他の固体剤形は、必要に応じて、腸溶コーティングおよび製薬技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよび外皮によって作製または調製してもよい。それらは、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために多様な割合のヒドロキシメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、またはミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の放出の遅延または制御を提供するように調製してもよい。それらは、例えば、細菌捕獲濾紙を通して濾過することによって、または滅菌水もしくは他のいくつかの注射用媒体に使用直前に溶解することができる滅菌固体組成物の形で、滅菌剤を組み入れることによって滅菌してもよい。これらの組成物は、必要に応じて、乳白剤も含んでいてよく、なおかつ、活性成分(単数または複数)のみを放出する、あるいは選択的に、消化管の特定部分に必要に応じて遅れて活性成分を放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分は、必要に応じて、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル形態にすることもできる。
【0123】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。活性成分の他に、液体剤形は、例えば水または他の溶媒などの当該技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤、溶解剤、ならびにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油脂(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの乳化剤、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
【0124】
不活性希釈剤の他に、経口組成物には、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味料、着香料、着色料、香料、および防腐剤のような補助剤を含んでもよい。
【0125】
懸濁剤は、本発明の化合物の活性成分の他に、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントなどの懸濁剤、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
【0126】
直腸または膣内投与用の本発明の医薬組成物は、坐薬として提示することができ、これは、1つ以上の本発明の化合物を、1つ以上の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製することができる。該賦形剤または担体は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックス、またはサリチル酸塩を含み、室温では固体であるが、体温では液体になるため、直腸または膣腔で溶けて活性薬剤を放出する。
【0127】
膣内投与に適した本発明の組成物としては、当該技術分野で適当であることが公知のかかる担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、または噴霧製剤も挙げられる。
【0128】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形としては、粉末剤、噴霧剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。本発明の活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および、必要に応じて、任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合してもよい。
【0129】
軟膏、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の化合物の他に、動物性および植物性脂肪、油脂、ワックス、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛などの賦形剤、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0130】
粉末剤および噴霧剤は、本発明の化合物の他に、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末などの賦形剤、またはこれらの物質の混合物を含んでもよい。噴霧剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤や、ブタンおよびプロパンなどの揮発性の未置換炭化水素を含んでいてもよい。
【0131】
また、本発明の化合物は、エアロゾルで投与することができる。これは、化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム調製物、または固体粒子を調製することで達成される。非水性(例:フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用してもよい。音波ネブライザーは、化合物の分解をもたらし得る、薬剤を剪断にさらすのを最小にするので好ましい。
【0132】
一般的に、水性エアロゾルは、従来の薬剤的に許容される担体および安定剤と共に薬剤の水溶液または懸濁液を配合することにより調製される。担体および安定剤は、特定の化合物の必要条件により異なるが、一般的には、非イオン性界面活性剤(ツイーン、プルロニック、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンなどの無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖質または糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは一般的に、アイソトニック溶液から調製される。
【0133】
経皮パッチには、本発明の化合物を制御しながら体に送達するという追加の利点がある。かかる剤形は、薬剤を適切な媒質中に溶解または分散させることにより調製することができる。吸収増強剤を用いて、皮膚を横切る活性成分の流れを増大させることができる。かかる流れの速度は、速度調節膜を提供するか、もしくは高分子マトリクスまたはゲル中に活性成分を分散させるかのいずれかにより制御することができる。
【0134】
眼用製剤、眼用軟膏、粉末剤、溶液等もまた、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0135】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を意図する受容体の血液または懸濁剤あるいは増粘剤と等張性にする溶質を含んでいてもよい、1つ以上の薬学的に許容される無菌な等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、もしくは使用前に無菌注射可能溶液または懸濁液中に再構成してもよい無菌粉末と組み合わせて、1つ以上の本発明の化合物を含む。
【0136】
本発明の医薬組成物に用いてもよい適当な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散の場合には、必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0137】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含んでもよい。微生物の作用は、様々な抗菌性物質および抗真菌性物質、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール(phenol sorbic acid)等を含めることにより確実に阻止することができる。糖質、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物中に含めることも望ましい。さらに、注射可能な医薬形態の持続性吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることにより行うことができる。
【0138】
場合によっては、薬物の効果を延長させるために、皮下注射または筋肉内注射により薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶質または非晶質材料の懸濁液を使用することにより達成され得る。そこで、薬物の吸収速度は、溶解の速度に依存し、これは、結晶サイズおよび結晶質形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクル中に溶解または懸濁させることにより達成される。
【0139】
注射可能なデポー剤形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中で本発明の化合物の微小被包マトリクスを形成することにより調製される。薬物対高分子の比率、および用いられる特定の高分子の性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性高分子の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー剤の注射可能製剤は、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによっても調製される。
【0140】
本発明の化合物をヒトおよび動物に製薬として投与する場合、それらを、それら自体で与えてもよいし、あるいは、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として与えてもよい。
【0141】
選択した投与経路にかかわらず、適当な水和形態で用いてもよい本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法により薬学的に許容される剤形に調合される。
【0142】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルおよび投与の時間経過は、患者にとって毒性ではない限り、特定の患者、組成物および投与様式に対する所望の治療反応を達成するのに効果的な活性成分の量を得るように変更することができる。一例の用量範囲は、1日当たり0.1〜10mgである。
【0143】
本発明の化合物の好ましい用量は、患者が耐えることができ、かつ、重篤な副作用を起こさない最大量である。本発明の化合物は、約0.001mg〜約100mg/kg体重、約0.001〜約10mg/kg体重、あるいは約0.001mg〜約100mg/kg体重の濃度で投与するのが好ましい。前述した値の中間の範囲も本発明の一部であるものとする。
【0144】
6.スクリーニング方法およびシステム
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の結合ポケットまたは同様の形状の相同性結合ポケットのいずれか一つあるいは両方の構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。これらのデータをコード化したかかる記憶媒体は、かかる結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元グラフィック表示をコンピュータ画面または同様の視覚装置上に表示することができる。
【0145】
本発明は、上記の結合ポケットに結合する化合物の設計、評価、および同定方法についても提供する。従って、コンピュータは、結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元グラフィック構造を生成する。
【0146】
別の実施形態において、本発明は、FAK、FAK結合パートナー、またはそのドメインの構造座標により定義される分子または分子複合体の三次元表示、あるいは、前記分子または分子複合体のホモログの三次元表示を生成するコンピュータを提供し、ここで、前記ホモログは、2.0(より好ましくは、1.5以下)オングストローム以下の前記アミノ酸の主鎖原子から二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む。
【0147】
例示実施形態において、コンピュータまたはコンピュータシステムは、例えば、米国特許第5,978,740号および/または同第6,183,121号(参照により本明細書に引用したものとする)に開示されるように、当該技術分野において従来の構成要素を含むことができる。例えば、コンピュータシステムは、中央演算処理装置(「CPU」)、ワーキングメモリ(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)あるいは「コア」メモリであってもよい)、大容量記憶メモリ(1つ以上のディスクドライブまたはCD−ROMドライブなど)、1つ以上の陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)表示端末、1つ以上のキーボード、1つ以上の入力回線、および1つ以上の出力回線を備えるコンピュータを含むことができ、これら全ては、従来のシステムバスにより相互接続される。
【0148】
本発明の機械読み取り可能データは、データ回線で接続されたモデム(単数または複数)の使用を介してコンピュータに入力することができる。あるいは、またはさらに、入力ハードウェアは、CD−ROMドライブ、ディスクドライブ、またはフラッシュメモリを含んでもよい。表示端末と組み合わせて、キーボードは、入力装置としても使用できる。
【0149】
出力回線によってコンピュータに連結された出力ハードウェアは、従来の装置によって同様に実施できる。例として、出力ハードウェアは、QUANTAまたはPYMOLなどのプログラムを用いて本発明の結合ポケットのグラフィック表示を表示するためのCRTあるいはLCD表示端末を含んでもよい。出力ハードウェアはまた、後の使用のためにシステム出力を保存するため、プリンタまたはディスクドライブを含んでもよい。
【0150】
操作において、CPUは、種々の入力および出力装置と連係し、大容量記憶装置からのデータアクセスならびにワーキングメモリとのアクセスと連係し、データ処理工程の順序を決定する。多くのプログラムを用いて、市販のソフトウェアを含む本発明の機械読み取り可能データを処理することができる。
【0151】
本発明による機械読み取り可能データを記憶するための磁気記憶媒体は、従来通りであってもよい。磁気データ記憶媒体は、上述のコンピュータシステムなどのシステムによって実行できる機械読み取り可能データをコード化することができる。媒体は、従来型であってもよい適当な基板と、極性または配向性を磁気的に変更することが可能な磁区を含む従来型であってもよい適当なコーティングを片面あるいは両面に有する、従来型のフロッピーディスクまたはハードディスクであってもよい。また、媒体は、ディスクドライブまたは他のデータ記憶装置のスピンドルを受ける開口部(不図示)を有してもよい。
【0152】
媒体の磁区は、本明細書に記載のコンピュータシステムなどのシステムによる実行のために、従来の方法で、本明細書中に記載されているような機械読み取り可能データをコード化するように、極性化または配向化される。
【0153】
また、光学的に読込み可能なデータ記憶媒体は、機械読み取り可能データまたは一連の指示をコード化することができ、これは、コンピュータシステムによって実行することができる。媒体は、従来のコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、または、光学的に読み取り可能であり、かつ、光磁気的に書き込み可能な光磁気ディスクなどの再書き込み可能媒体であってもよい。
【0154】
周知であるCD−ROMの場合には、ディスクコーティングは、反射的であり、機械読み取り可能データをコード化するため複数のピットで押印(impress)される。ピットの配列は、レーザ光をコーティング表面に反射させることで読み込まれる。好ましくは実質的に透明な保護コーティングを反射コーティングの表面上に設ける。
【0155】
周知である光磁気ディスクの場合には、データ記録用コーティングは、ピットを有さないが、レーザにより一定の温度を超えて加熱された場合にその極性または配向が磁気的に変化され得る、複数の磁区を有する。この区の配向は、コーティングから反射されたレーザ光の偏光を測定することにより読み取ることができる。この区の配列は、上記のようにデータをコード化する。
【0156】
構造データは、結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元構造にこれらの座標を変換させるソフトウェアでプログラム化されたコンピュータと組み合わせて用いる場合、創薬などの種々の目的に使用され得る。
【0157】
例えば、データによりコード化される構造は、化学物質と会合するその能力について、コンピュータ的に評価され得る。FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの結合ポケットと会合する化学物質は、潜在的な薬物候補である。あるいは、データによりコード化される構造は、コンピューター画面上にグラフィック三次元表示で表示され得る。これにより、構造の視覚的検査、ならびに化学物質との構造の会合の視覚的検査が可能になる。
【0158】
従って、別の実施形態によれば、本発明は、化学物質が、a)FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの結合ポケットを含む分子または分子複合体、またはb)前記分子または分子複合体のホモログと会合する潜在力を評価するための方法に関し、ここで、前記ホモログは、2.0(より好ましくは、1.5)オングストローム以下の前記アミノ酸の主鎖原子から二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む。
【0159】
本方法は以下の工程:
i)計算手段を用いて、化学物質と分子もしくは分子複合体の結合ポケットとの間の適合操作を行う工程と;
ii)この適合操作の結果を分析して、化学物質と結合ポケットとの間の会合を定量化する工程とを含む。本明細書で使用される「化学物質」という用語は、化学化合物、少なくとも2つの化学化合物の複合体、かかる化合物または複合体の断片のことを言う。
【0160】
FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの本発明による結合ポケットに結合または該ポケットを阻害する化合物の設計は、一般に、いくつかの要因を考慮する必要がある。第一に、化学物質は、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットの一部または全部と物理的かつ構造的に会合できなければならない。この会合で重要な非共有結合性の分子間相互作用としては、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、および静電相互作用が挙げられる。第二に、化学物質は、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケット(単数または複数)と直接的に会合できる配座を想定できなければならない。化学物質のある部分は、これらの会合に直接的には参加しないが、化学物質のこれらの部分もまた、分子の全体的な配座に影響を及ぼし得る。これは、力価に対して著しい影響をもつ可能性がある。かかる配座要件としては、結合ポケット(すなわち、結合ポケットまたはそのホモログと直接相互作用するいくつかの化学物質を含む物質の官能基間スペーシング)の全部または一部との関連における化学物質の全体的な三次元構造および配向が挙げられる。
【0161】
化学物質がFAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットに及ぼす潜在的な阻害作用または結合効果は、それを実際に合成および試験する前にコンピュータモデリング技術を用いて解析することができる。所与の物質の理論構造が、それと標的の結合ポケット間の相互作用および会合が不十分であると示唆する場合、その物質の試験を回避する。しかしながら、コンピュータモデリングが強い相互作用を示した場合、次にその分子を合成し、その結合ポケットに結合する能力を試験する。これは、例えば、分子がFAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの活性を阻害する能力を試験することで、例えば、本明細書に記載された、あるいは、当該技術分野において公知のアッセイを用いて達成することができる。こうして無効な化合物の合成を避けることができる。
【0162】
FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットの潜在的な阻害剤は、化学物質または断片をスクリーニングして選択する一連の工程により、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットと会合する能力をコンピュータ上で評価することができる。
【0163】
当業者は、いくつかの方法の1つを用いて、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットと会合する能力について化学物質または断片をスクリーニングすることができる。このプロセスは、FAK、FAK結合パートナーまたはその特異的ドメインの本明細書に記載の構造座標、または機械読み取り可能な記憶媒体から作製された類似形状を定義する他の座標に基づいて、コンピュータ画面上で、例えば、FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインに関係する結合ポケットを視覚検査することで開始される。選択された断片または化学物質は、様々な配向に配置し、上記で定義したようにその結合ポケット内でドッキングすることができる。ドッキングは、QuantaおよびDOCKなどのソフトウェアを使用し、続いて、CHARMMやAMBERなどのソフトウェアを用いる基準分子力学力場についてのエネルギー最小化および分子動態により達成することができる。
【0164】
特殊なコンピュータプログラム(例:当該技術分野において公知のもの、および/または市販のもの、および/または本明細書に記載のもの)も、断片または化学物質の選択処理を支援することができる。
【0165】
適切な化学物質または断片が選択されると、それらを組み立てて単一の化合物または複合体にすることができる。組立てに先立って、標的の結合ポケットの構造座標に関して、コンピュータ画面に表示された三次元画像上で互いの断片の関係を視覚検査することができる。
【0166】
上述のように一度に1つの断片または化学物質で段階的に結合ポケットの阻害剤の構築を進行する代わりに、空の活性部位または必要に応じて公知の阻害剤(単数または複数)のある部分(単数または複数)を含むもののいずれかを用いて、阻害化合物または他の結合化合物を全体として、または「デノボ(de novo)」設計することができる。当該技術分野において公知のデノボリガンド設計法は多数あり、そのうちのいくつかは、市販されている(例:Tripos Associates(ミズーリ州セントルイス)から入手可能なLeapFrog)。
【0167】
本発明に従って、他の分子モデリング技術も用いることができる[例えば、N.C.Cohenら、「Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry,J.Med.Chem.,33,pp.883−894(1990)を参照されたい;M.A.Navia and M.A.Murcko,「The Use of Structural Information in Drug Design」,Current Opinions in Structural Biology,2,pp.202−210(1992);L.M.Balbesら、「A Perspective of Modern Methods in Computer−Aided Drug Design」,in Reviews in Computational Chemistry,Vol.5,K.B.Lipkowitz and D.B.Boyd,Eds.,VCH,New York,pp.337−380(1994)も参照されたい;W.C.Guida,「Software For Structure−Based Drug Design」,Curr.Opin.Struct.Biology,4,pp.777−781(1994)も参照されたい]。
【0168】
化合物が設計または選択されると、化学物質が結合ポケットに結合できる効率についてコンピュータ評価により試験し、最適化することができる。
【0169】
化合物の変形エネルギーおよび静電相互作用を評価するための特定のコンピュータソフトウェアを当該技術分野において利用することができる。かかる用途用に設計されたプログラムの例としては、AMBER;QUANTA/CHARMM(Accelrys,Inc.,ウィスコンシン州マディソン)などが挙げられる。これらのプログラムは、例えば、市販のグラフィックスワークステーションを用いて実行することができる。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは、当業者に公知である。
【0170】
別の技術としては、例えば、本明細書に記載の化合物の仮想ライブラリのin silicoスクリーニングが挙げられる。何千もの多くの化合物を迅速にスクリーニングでき、最良の仮想化合物をさらなるスクリーニング用に選択することができる(例:合成およびin vitro試験により)。FAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインの結合ポケットに全体的または部分的に結合することができる化学物質または化合物について、小分子データベースをスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、かかる化学物質が結合部位にフィットする性質は、形状相補性または推定相互作用エネルギーのいずれかにより判断することができる。
【0171】
(実施例)
本発明の範囲を限定することなく説明するためのものである以下の実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0172】
実施例1
小分子データベース
NCI/DTPは、非独占物であり、なおかつ、癌、エイズ、または癌またはエイズを患っている対象を苦しめる日和見感染を治療するための創薬および新薬開発の研究団体に提供されているおよそ240,000個の試料(即ち、プレート化した化合物セット)のリポジトリを保持している。NCI/DTPのプレート化した化合物セットの三次元座標は、MDL SDフォーマット(http://www.chm.tu−dresden.de/edv/vamp65/REFERS/vr_03d.htm)で得られ、DOCKユーティリティプログラムSDF2MOL2によりmol2フォーマットに変換される。リガンドに対する部分原子電荷、溶媒和エネルギー、およびファン・デル・ワールスのパラメータは、SYBDBを用いて算出され、プレート化した化合物セットのmol2ファイルに加えられる。
【0173】
実施例2
FAKの潜在的な小分子阻害剤を同定するためのデータベーススクリーニング
ハイスループットスクリーニングを行う代わりに、分子ドッキングをin silicoで機能試験と組み合わせた、より高速で経済的な、構造に基づく方式を用いる。
公知の三次元構造をもつ化合物の大量の化学ライブラリーは、ヒトFAKの結晶構造(PDBコード1K05)上のSPHGEN(UCSF)により選択された構造ポケットに配置される。この方式は、NCI/DTPを通じて入手可能なリソース(原子座標および小分子)を、改良された分子ドッキングおよびDOCK5.1(UCSF)に課されたスコアリングアルゴリズムと組み合わせる。薬らしい特性をもつ(リピンスキーの法則に従う)20,000個の小分子化合物を、DOCK5.1を用いて、ヒトFAK結晶構造のFATドメインに100個の異なる配向でドッキングさせた。一例として、かかるドッキングリガンドの1つである、スコアリングが最も高い化合物の、2−[2−(アニリノカルバモイル)フェニル]安息香酸を示す(左)。この場合、小分子は、LDパキシリン結合エピトープに近接しているドメインに配置される。各化合物とヒトFAK FATドメイン間の相互作用の予測結合エネルギーは、−17.7kcal/molのドッキングスコアを得たトップスコアの化合物と評価される。最高スコアをもつ20個の化合物については、NCI/DTPから機能試験が要求される。
【0174】
国立癌研究所/治療プログラム開発(NCI/DTP)は、非独占物であり、なおかつ、所外研究機関に無料で提供されるおよそ220,000個の試料(プレート化した化合物セット)のリポジトリを保持している。NCI/DTPのプレート化した化合物セットの三次元座標は、MDL SDフォーマットで入手し、DOCKユーティリティプログラムSDF2MOL2によりmol2フォーマットに変換した。リガンドに対する部分原子電荷、溶媒和エネルギー、およびファン・デル・ワールスのパラメータは、SYBDBを用いて算出し、プレート化した化合物セットのmol2ファイルに加えた。
【0175】
潜在的なFAK−CD小分子阻害剤のIn Silico分子ドッキング
全てのドッキング計算は、DOCK、v5.1.0で行う。DOCKの一般的特徴としては、リガンドの受容体球体への剛体配向、AMBERエネルギースコアリング、GB/SA溶媒和スコアリング、接触スコアリング、内部非結合エネルギースコアリング、リガンドの柔軟性、および剛体およびねじれ双方のシンプレックス最小化が挙げられる。すでに流通しているバージョンとは異なり、このリリース版では、自動マッチング、内部エネルギー(フレキシブルドッキングで用いられる)、スコアリング機能階層、新しいミニマイザ終了基準が組み込まれている。ヒトFAK FATドメインの分子モデルの座標は、分子ドッキング計算で用いられる。ドッキング部位を調製するため、全水分子を除去する。受容体残基のプロトン化は、Sybyl(Tripos、ミズーリ州セントルイス)で行う。一連の球体を用いて構造を探索し、潜在的な結合ポケットを説明する。1分子当たりの配向数は100である。分子間AMBERエネルギースコアリング(vdw+columbic)、接触スコアリング、およびバンプフィルタリングは、DOCK 5.1.0で実施される。SETORおよびGRASPを用いて、分子グラフィック画像を生成する。
【0176】
本明細書に示されるように、これらの化合物は、抗増殖作用を有し、理論と結びつけようとしなくとも、そのように考えられる。
【0177】
実施例3
セルベースアッセイ。選択した小分子は、BT474およびMCF7乳癌細胞と、MCF10正常細胞とのモデルシステムにおいて、セルベースの増殖およびアポトーシスアッセイで評価する。研究に関連する他の細胞株は、MIAPACAおよびPANC−1(膵臓癌)、A375(肺癌)、HCT116 p53(−/−)およびHCT116 p53(+/+)(結腸癌)、なおかつC8186(メラノーマ)である。同じ培養ウェルから1つ以上のパラメータを分析するため、マルチプレックス方式を用いる。
【0178】
CellTiter96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)。本アッセイは、少量の1溶液試薬を培養ウェルに直接添加し、1〜4時間インキュベートし、分光光度計プレート読み出し器を用いて490nmで吸光度を記録することにより行われる。490nmの吸光量で測定されたホルマザン生成物の量は、培養下の生細胞の数に正比例する。
【0179】
CellTiter−Blue Cell Viability Assay(Promega)。CellTiter−Blue試薬を各ウェルに直接添加し(96ウェルフォーマットにおける各100μ培地に20μの試薬)、プレートを37℃でインキュベートし、蛍光信号を測定する(560Ex/590Em)。この試験は、追加のアッセイと組み合わせてもよい。Apo−ONE Homogeneous Caspace−3/7 Assay試薬(Promega)を120μ添加することにより、カスパーゼ活性を同じウェルで測定する。蛍光(485Ex/527Em)を記録する前に、細胞を周囲温度でさらに一時間インキュベートする。
【0180】
FAK特異的効果の測定。in silicoで選択した小分子のFAK特異的効果の読み出しは、腫瘍細胞の接着斑からのFAKの特異的置換である。二色技術を用いてFAKおよびパキシリンで腫瘍細胞を二重染色し、FAKシグナル伝達に対する効果の広範な生化学分析を行う。これは、本質的にすでに刊行されており、Garces,C.A.ら、Vascular Endothelial Growth Factor Receptor−3 and Focal Adhesion Kinase Bind and Suppress Apoptosis in Breast Cancer Cells.Cancer Res %R 10.1158/0008−5472.CAN−05−1661,2006.66(3):p.1446−1454;Xu,L.−h.ら、The focal adhesion kinase suppresses transformation−associated,anchorage−Independent apoptosis in human breast cancer cells.J.Biol.Chem.,2000.275:p.30597−30604;Kurenova,E.ら、Focal Adhesion Kinase Suppresses Apoptosis by Binding to the Death Domain of Receptor−Interacting Protein.Mol.Cell.Biol.,2004.24(10):p.4361−4371を参照されたい。
【0181】
実施例4
最近の独自研究では、FAKのN末端断片(1−423 a.a.)でファージディスプレイアッセイを行い、タンパク質−タンパク質パートナー結合に関するペプチドを同定した。
【0182】
部位特異的突然変異生成を行い、これらのアミノ酸を記録した。その後、ヒト全長のFAKでプルダウンアッセイを行い、野生型p53タンパク質はFAKに結合できるが、突然変異体はFAKとの結合において著しく低いバックグラウンドレベルであることを実証した。そのため、p53の特定領域に結合しているFAKの領域を狭め、この新規結合の結合部位を検出した。これらのペプチドをTATに接合させて、細胞内部に侵入し、生存に関するFAK依存効果を実証した。
【0183】
実施例5
ファージディスプレイ方式により、FAKのカルボキシ末端に結合し、乳癌細胞でアポトーシスを引き起こすペプチドを同定した。これらのペプチドの1つは、血管内皮増殖因子受容体3(VEGFR−3)タンパク質に相同な配列を含んでいた。VEGFR3がFAKに結合することが最近分かった(Cancer Res.2006;66:3:1446−1454)。VEGFR−3は、ヒト乳房の腫瘍および癌細胞株で過剰発現されることを示した。細胞生存との関わりの他に、VEGFR−3は、リンパ血管形成の主因である。FAKとVEGFR−3との物理的会合を初めて示した。ファージディスプレイにより同定されたペプチドを含むVEGFR−3のN末端と、FAKのC末端との間の会合は、in vitroおよびin vivoの結合試験により検出した。次いで、12アミノ酸VEGFR−3ペプチド(AV3)をTAT細胞浸透配列に結合させ、非対照のスクランブルペプチドであるAV3が接着斑からFAKの特異的置換を引き起こし、FAKおよびVEGFR−3の共局在化に影響を及ぼすことを示した。さらに、AV3ペプチドは、増殖を減少させ、乳癌細胞株で細胞分離およびアポトーシスを引き起こしたが、正常な乳腺細胞では起きなかった。従って、FAK−VEGFR−3の相互作用は、ヒト腫瘍におけるFAKとVEGFR−3間のシグナル伝達を標的にする新規の分子療法の開発に利用できる可能性がある。FAK上の結合部位を決定するために、FAKのC末端焦点接着標的配列(FATドメイン)を大腸菌で高レベルで発現させ、95%を超える均一性に精製した。この精製した断片は、in vitroでペプチドに結合する能力を保持している。NMRケミカルシフトマッピング試験により、FAKのFATドメイン上のペプチドの結合エピトープを同定した。これらの試験は、選択したペプチドがパキシリンが結合するのと同一の構造ポケットの部位でFATに結合することを示している。In silicoモデリングは、ケミカルシフトにより定義されたペプチド結合部位が薬のような小分子結合に適当であることを示している。20,000個のかかる化合物の化学ライブラリーについて予備スクリーニングを行い、FAK機能を阻害する一連の小分子を同定した。
【0184】
実施例6
FAKの過剰発現がアポトーシスを抑制することで、ヒト癌細胞に生存シグナルを提供することも示した。FAKは、多数のタンパク質−タンパク質相互作用に関与しており、チロシンキナーゼとしてだけでなく、足場タンパク質としても機能し、かかる相互作用を通じて生存シグナル伝達に影響を及ぼし得る。さらに、FAKのアミノ末端(FAK−NT)が乳癌細胞のアポトーシスを誘発でき、受容体共役タンパク質(RIP)セリンスレオニンキナーゼを含むデスドメインに結合できることをデータは示している。FAK機能に影響を及ぼし、癌細胞のアポトーシスを引き起こすことができるペプチドを見つけるためにファージディスプレイ方式を用いている。FAK−NTに結合した40個以上のペプチド配列を選択した。そのうちのいくつかは、FAK機能に影響を及ぼし、癌細胞の増殖に影響を及ぼすことが分かった。
【0185】
実施例7
種々のアッセイにおける化合物C4の調査により、化合物C4がFAKおよびVEGFR−3を特異的に脱リン酸化し、それらの相互作用を妨害することで、細胞内の共局在化を減少させ(免疫蛍光共焦点顕微鏡およびFRET分析により確認)、細胞増殖を遅らせ、G1/S細胞周期移行を遮断し、最終的には癌細胞のアポトーシスを引き起こすことが示されている。in vitro実験により、C4が乳癌、結腸癌、膵臓癌、メラノーマ、肺癌、骨肉腫を含む多くの異なるタイプの癌細胞の生存率を低下させることが示された。さらに、これらの化合物は、化学療法に対して癌細胞を感作させた。C4をドキソルビシンおよびゲムシタビンと組み合わせることにより、細胞生存率の低下における改善効果を有し、これらの薬剤との組み合わせがかなりの低濃度で機能し得ることを示しているが分かる。ヌードマウスにおける乳癌および膵臓癌の皮下異種移植モデルを用いたin vivoのマウス実験により、C4は強力な抗癌作用があり、濃度60mg/kg(連日腹腔内注射)で、未治療腫瘍と比較して、腫瘍増殖を75%まで減少させることが実証された。C4をゲムシタビンと組み合わせることにより、それぞれの薬剤を別々に用いるよりもはるかに強い抗癌作用を有し、治療離脱後に腫瘍増殖の細胞静止作用を延長した。選択された化合物C4は抗ヒスタミン受容体1薬物スプラスチンとして知られるため、in vivoでの腫瘍増殖に対するスプラスチンの効果を、他の抗ヒスタミン受容体1薬物ベナドリルの効果と比較したが、この選択された対照薬物には抗癌特性は何も見られなかった。これは、あらゆる抗ヒスタミン作用は、意外なことにはっきりと、抗癌作用とは無関係であることを示す。図3〜図14を参照されたい。
【0186】
これらの結果により、C4は:(i)多くのタイプの癌細胞の生存率を低下させ;(ii)in vitroで膵臓癌細胞および乳癌細胞のアポトーシスを引き起こし;(iii)癌細胞の運動性および侵襲性を減少させ;(iv)in vitroでの化学療法治療に対して膵臓癌細胞および乳癌細胞を感作させ;(v)乳癌および膵臓癌のマウスモデルにおいてin vivoで腫瘍増殖を減少させ;(vi)ゲムシタビンとの組み合わせにより、治療離脱後に膵臓腫瘍の増殖における細胞静止作用を延長させ;(vii)乳癌に対する従来の化学療法におけるドキソルビシンよりも腫瘍増殖を減少させ;(viii)癌治療用にゲムシタビンまたはドキソルビシンと組み合わせることで、両方の薬剤の治療に必要な用量を減らすことができることが示される。
【0187】
実施例8
特定のD化合物(例:D4、D5、D6、D7)を検査し、Y397およびD4の脱リン酸化、特に、PARPダウンレギュレーションを引き起こすことが分かった。従って、これらの化合物は、治療薬として有用である。
【0188】
参照文献:
1.Xu,L.H.ら、Attenuation of the expression of the focal adhesion kinase induces apoptosis in tumor cells.Cell Growth Differ,1996.7(4):p.413−8。
2.McLean,G.W.ら、The role of focal adhesion kinase in cancer−a new therapeutic opportunity.Nat Rev Cancer,2005.5(7):p.505−15。
3.van Nimwegen,M.J.and B.van de Water,Focal adhesion kinase: A potential target in cancer therapy.Biochem Pharmacol,2006。
4.Weiner,T.M.ら、Expression of focal adhesion kinase gene and invasive cancer.Lancet,1993.342(8878):p.1024−5。
5.Owens,L.V.ら、Overexpression of the focal adhesion kinase(p125FAK)in invasive human tumors.Cancer Research,1995.55(13):p.2752−5。
6.Golubovskaya,V.M.,R.Finch,and W.G.Cance,Direct interaction of the N−terminal domain of focal adhesion kinase with the N−terminal transactivation domain of p53.J Biol Chem,2005.280(26):p.25008−21。
7.Garces,CA.ら、Vascular endothelial growth factor receptor−3 and focal adhesion kinase bind and suppress apoptosis in breast cancer cells.Cancer Res,2006.66(3):p.1446−54。
【0189】
本明細書に引用した個々の全ての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、参照によってそれらの内容全体を本明細書に引用したものとする。
【0190】
本明細書の変数の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一基またはリストされた基の組み合わせとしての変数の定義を含むものである。本明細書の変数における実施形態の列挙は、任意の単一実施形態、あるいは、任意の他の実施形態またはその一部と組み合わせたものとしての実施形態を含むものである。
【0191】
具体的な実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱せずに本発明の他の実施形態および変形形態を案出できることが明らかであろう。特許請求の範囲は、かかる実施形態および均等な変形形態の全てを包含するものと解釈するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点接着キナーゼ(FAK)と第二のタンパク質との結合相互作用を阻害することができる化合物をそれを必要とすると同定された対象に投与することを含む、前記対象の癌細胞におけるアポトーシスを誘発する方法。
【請求項2】
前記第二のタンパク質がVEGFR−3、RIP、またはp53である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が:
C4:N’−[(4−クロロフェニル)メチル]−N,N−ジメチル−N’−ピリジン−2−イル−エタン−1,2−ジアミン;
C10:10−(4−クロロフェニル)−3−メチル−7−(5−メチルピリジン−2−イル)−8−オキサ−1,7,9−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−2,4,9−トリエン;
C27:ウスニン酸誘導体4,4a−ジヒドロ−4A(フェニルチオ)、ラセミ酸塩(NSC250435);
N2:2−クロロ−10−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]フェノチアジン;
N9:4,6−ジフェニル−1,3,5−チアジアジナン−2−チオン;
N14:(9,9−ジメチルアクリジン−10−イル)−(2−ジメチルアミノエチルスルファニル)メタノン;メタンスルホン酸;
N16:3−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−ナフタレン−1,2−ジオン;
N1:N−ピリジン−4−イルピリジン−4−アミン;
N7:2−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール;
N8:7−オキサ−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−2,4,11−トリエン−9−オン;
N11:1−(3−トリエニルメチル)−1.ラムダ〜5〜,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカン;
N15:N−(ピリジン−4−イルメチリデンアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−アミン;
ペプチド−35(WHWQWTPWSIQP)(SEQ ID NO:1);
ペプチド−AV3(WHWRPWTPCKMF)(SEQ ID NO:2);
P2:1−ベンジル−15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカン;
P4:1−(4−クロロフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
P7:1−(4−メトキシフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
P8:1−(4−ヨードフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノンオキシム;
P10:1−(2−ナフチル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン;
D4:メチルN−[5−(シクロプロパンカルボニル)−3H−ベンゾイミダゾール−2−イル]カルバミン酸塩
D5:(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)−(5−ニトロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−アミン;
D6:1−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−3−(5−クロロ−2−メトキシ−フェニル)尿素である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が焦点接着標的配列(FAT)ドメインでFAK結合を阻害する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二のタンパク質がp53である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物がFAKとヒトp53との結合を調節することができる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物がp53のN末端でFAKの結合を調節することができる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌、またはメラノーマである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
FAKタンパク質−タンパク質結合相互作用を阻害することができると同定された化合物を投与することを含む、かかる治療が必要であると同定された対象におけるFAKタンパク質−タンパク質結合相互作用の阻害方法。
【請求項10】
焦点接着キナーゼ(FAK)と、FAKと相互作用する第二のタンパク質との結合相互作用を阻害することができる化合物をそれを必要とすると同定された対象に投与することを含む、前記対象における癌の治療方法。
【請求項11】
前記第二のタンパク質とFAKとの結合相互作用により、癌細胞のアポトーシスまたは細胞増殖の調節をもたらす請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌、またはメラノーマである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
追加の治療薬をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記追加の治療薬がドキソルビシン、シスプラチン、タキソール、5−フルオロウラシル、エトポシド、またはゲムシタビンである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
FAK結合の相互作用またはFAKタンパク質−タンパク質の結合相互作用を調節する化合物の同定方法であって、
FAK、FAK結合パートナー、またはそのドメインの結晶構造を得るかあるいは、FAK、FAK結合パートナー、またはそのドメインの結晶構造に関する情報を得る工程と、
試験化合物がFAK、FAK結合パートナー、またはそのドメインの相互作用を調節するかどうか判断するため、FAK、FAK結合パートナー、またはそのドメインの結晶構造の結合部位内で、あるいは、結合部位上で該試験化合物をモデリングする工程と、
を含む方法。
【請求項16】
分子または分子複合体の三次元表示を生成するコンピュータであって、
前記分子または分子複合体は、FAKのFATドメインまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナーの構造座標、または、約2.0オングストローム以下の前記アミノ酸の主鎖原子から二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む前記分子または分子複合体のホモログの三次元表示により定義される結合ポケットを含み、該コンピュータは、
(i)機械読み取り可能データでコード化されたデータ記憶物を含み、前記データはFAKのFATドメインまたはFAKタンパク質−タンパク質結合パートナーの構造座標を含む、機械読み取り可能データ記憶媒体と;
(ii)前記機械読み取り可能データを処理するための指示を記憶するワーキングメモリと;
(iii)前記機械読み取り可能データを前記三次元表示に処理するため、前記ワーキングメモリおよび前記機械読み取り可能データ記憶媒体に接続された中央演算処理装置と;
(iv)前記三次元表示を表示するための前記中央演算処理装置に接続されたディスプレイと、
を含むコンピュータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−522697(P2010−522697A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553648(P2009−553648)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/003451
【国際公開番号】WO2008/115443
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(503339524)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】