説明

ギアシフト装置

【課題】別途部品を設けることなくストロークセンサの温度による影響を抑制することができる同期噛合機構の制御装置を提供する。
【解決手段】同期噛合機構用のギアシフト装置は、ディテント機構と、アクチュエータと、ストロークセンサと、制御部と、前記ストロークセンサの基準位置を記憶する記憶部とを備える。制御部は、同期噛合機構の状態を切り換えるときに、アクチュエータの作動力を前記フォークの作動に影響を及ぼさない値である所定値に低下させる作動力低下工程を実行した後(STEP1)、ストロークセンサの出力値から変位量の加速度を求めて、得られた変位加速度から変位加速度が減少状態から増加状態に切り替わる変化点を求め(STEP2)、変化点に対して出力値がオーバーシュートしている場合には(STEP4)、変化点を新たな基準位置として記憶させる(STEP5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に設けられた同期噛合機構の状態を切り換えるギアシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同期噛合機構の状態を切り換えることにより、変速機のギアを切り換えるギアシフト装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
同期噛合機構はスリーブを備える。ギアシフト装置は、スリーブに係合するフォークのストローク量を検出するストロークセンサからの信号を受信し、受信した信号に基づいてフォークを介してスリーブを制御する。
【0004】
フォークには、ディテント機構が設けられており、このディテント機構により、変速用の歯車とスリーブとがスプライン結合した結合状態と、この結合が解除されたニュートラル状態とに解除自在に保持される。
【0005】
また、特許文献1のものでは、ストロークセンサが温度の影響を受け易いため、温度センサを設けて対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−144843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の制御装置では、ストロークセンサの温度による影響をなくすために、温度センサを設けているため、部品点数が増加し、コスト増となる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、別途部品を設けることなくストロークセンサの温度による影響を抑制することができるギアシフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、軸に設けられ、該軸と相対回転可能なギアと結合して該ギアを軸に固定する係合状態と、この係合を断つ開放状態とに切換自在な同期噛合機構を作動させるために用いられ、係合状態の噛合位置又は前記開放状態のニュートラル位置で前記同期噛合機構のスリーブと係合するフォークを解除自在に保持するディテント機構と、前記フォークを作動させるアクチュエータと、前記フォークのストローク量を検出するストロークセンサと、前記ストロークセンサからの入力に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、前記ストロークセンサの基準位置を記憶する記憶部とを備えるギアシフト装置において、前記ディテント機構は、複数の凹部と、該凹部に係合自在なボールプランジャとを備え、該ボールプランジャと前記凹部とが係合することにより、噛合位置又はニュートラル位置が保持され、前記制御部は、基準位置学習処理を実行し、該基準位置学習処理は、前記同期噛合機構の状態を切り換えるときに、前記アクチュエータにより、前記ボールプランジャを隣接する前記凹部に移動させた後に、前記アクチュエータの作動力を前記フォークの作動に影響を及ぼさない値である所定値に低下させる作動力低下工程と、前記ストロークセンサの出力値から変位量の加速度を求める演算工程と、得られた変位加速度から変位加速度が減少状態から増加状態に切り替わる変化点を求める変化点工程と、前記変化点工程で求められた変化点から所定時間遡った時点において、前記アクチュエータの作動力が前記所定値であったか否かを確認する変化点作動力確認工程と、前記記憶部に記憶された基準位置に対してオーバーシュートしたか否かを確認するオーバーシュート工程と、前記オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、前記変化点作動力確認工程で、変化点において前記アクチュエータの作動力が前記所定値であった場合には、変化点を前記ストロークセンサの新たな基準位置として記憶させる更新工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ディテント機構の凹部を利用して、ボールプランジャを一旦基準位置を通り過ぎるようにオーバーシュートさせて、変化点を求めることにより、凹部の位置を正確に求めることができる。従って、ストロークセンサが温度等の影響で出力値にドリフトが生じてもディテント機構の凹部の位置を変化点から求めることができ、ストロークセンサの出力値を補正することができる。従って、本発明によれば、従来のように温度センサ等の新たな部品を設けることなく、既存の部品を用いてストロークセンサの出力値の補正を適切に行うことができる。
【0011】
[2]本発明においては、制御部は、アクチュエータの作動力が所定値以下となっている場合にのみ、変化点を新たな基準位置として記憶部に記憶させるようにすることが好ましい。アクチュエータの作動力が所定値以下となっていない場合には、アクチュエータの作動力の影響により、求められた変化点がディテント機構の凹部の最下点と一致していない場合が考えられる。従って、このような場合には、基準位置を更新しないことにより、誤った基準位置が記憶されることを防止できる。
【0012】
[3]本発明においては、制御部は、オーバーシュート工程でオーバーシュートしなかったことを確認した場合には、作動力低下工程で、所定値までアクチュエータの作動力を下げるまでの間のアクチュエータの作動力を増加させることが好ましい。
【0013】
オーバーシュートしなかった場合には、ボールプランジャが凹部の最下点まで到達していない可能性が高い。従って、上述の如くアクチュエータの作動力を増加させれば、次回以降で、オーバーシュートできるようになる。
【0014】
[4]本発明においては、変化点工程で求められた変化点において、アクチュエータの作動力が前記所定値を超えていた場合には、作動力低下工程において、アクチュエータの作動力を前記所定値まで低下させる作業の完了時期を早めることが好ましい。
【0015】
変化点においてアクチュエータの作動力が前記所定値を超えている場合には、変化点が凹部の最下点を通り越している可能性がある。この場合、上述の如く構成すれば、次回以降に実行される作動力低下工程では、アクチュエータの作動力の低下がより早期に完了するため、変化点を凹部の最下点と一致させることができる。
【0016】
[5]本発明においては、ストロークセンサの出力値は電圧であり、演算工程ではストロークセンサの出力電圧から電圧の変位量の加速度を求め、更新工程では、オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、変化点作動力確認工程で、変化点においてアクチュエータの作動力が所定値であった場合には、変化点におけるストロークセンサの出力電圧をストロークセンサの新たな基準位置の電圧として記憶させるようにすることができる。
【0017】
[6]また、本発明は、同期噛合機構のスリーブに係合するフォークに設けられたディテント機構であって、該ディテント機構は、複数の凹部とボールプランジャとからなり、複数の凹部のうち何れか1つの凹部の位置を基準位置として学習させる学習方法において、同期噛合機構の状態を切り換えるときに、アクチュエータにより、前記ボールプランジャを隣接する前記凹部に移動させた後に、前記アクチュエータの作動力をフォークの作動に影響を及ぼさない値である所定値に低下させる作動力低下工程と、記憶部に記憶された基準位置に対してオーバーシュートしたか否かを確認するオーバーシュート工程と、前記フォークのストローク量を検出するストロークセンサの出力値から変位量の加速度を求める演算工程と、得られた変位加速度から変位加速度が減少状態から増加状態に切り替わる変化点を求める変化点工程と、前記変化点工程で求められた変化点から所定時間遡った時点において、前記アクチュエータの作動力が前記所定値であったか否かを確認する変化点作動力確認工程と、前記オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、前記変化点作動力確認工程で、変化点において前記アクチュエータの作動力が前記所定値であった場合には、変化点を前記ストロークセンサの新たな基準位置として記憶させる更新工程とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のギアシフト装置の実施形態を示す模式図。
【図2】本実施形態のディテント機構を示す説明図。
【図3】(a)は本実施形態のディテント機構の動作を示す説明図。(b)は本実施形態のストロークセンサの出力値を示すグラフ。(c)はストロークセンサの出力値の変位速度を示すグラフ。(d)はストロークセンサの出力値の変位加速度を示すグラフ。(e)はアクチュエータの作動力を示すグラフ。
【図4】本実施形態の制御部の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照して、本発明の実施形態のギアシフト装置1を説明する。本実施形態のギアシフト装置1は、自動車の変速機に設けられる同期噛合機構2の状態を切り換えるものである。
【0020】
図1に示すように、同期噛合機構2は、変速機の入力軸や出力軸等の軸3に設けられ、軸方向に摺動自在なスリーブ2aを備えている。軸3には、同期噛合機構2を挟み込むようにして一速歯車4及び三速歯車5が回転自在に軸支されている。同期噛合機構2は、スリーブ2aを一速歯車4側に移動させ、回転を同期させた後、更に移動させることにより、スリーブ2aが一速歯車4に設けられたドグ歯4aとスプライン結合する。これにより、一速歯車4が同期噛合機構2を介して軸3に一体に回転するように固定される。
【0021】
このとき、軸3が例えば変速機の入力軸とすると、出力軸には一速歯車4と噛合する従動歯車が固定されており、入力軸と出力軸との間で一速歯車4を介して駆動力が伝達可能な状態となる。この一速歯車4が軸3に固定された状態を、同期噛合機構2の一速側噛合状態と定義する。
【0022】
また、同期噛合機構2は、スリーブ2aを三速歯車5側に移動させ、回転を同期させた後、更に移動させることにより、スリーブ2aが三速歯車5に設けられたドグ歯5aとスプライン結合する。これにより、三速歯車5が同期噛合機構2を介して軸3に一体に回転するように固定される。
【0023】
このとき、軸3が例えば変速機の入力軸とすると、出力軸には三速歯車5と噛合する従動歯車が固定されており、入力軸と出力軸との間で三速歯車5を介して駆動力が伝達可能な状態となる。この三速歯車5が軸3に固定された状態を、同期噛合機構2の三速側噛合状態と定義する。また、同期噛合機構2のスリーブ2aが、一速歯車4にも三速歯車5にも係合していない状態をニュートラル状態と定義する。
【0024】
スリーブ2aには、フォーク6の先端6aが係合している。フォーク6は、その基端に設けられたシャフト7を介して、アクチュエータ8によって軸方向に移動する。アクチュエータ8は、ECU等の制御部9で制御される。
【0025】
ギアシフト装置1は、シャフト7の位置を検出するストロークセンサ10を備える。制御部9はストロークセンサ10からの出力値(電圧値又は電流値)に基づきアクチュエータ8を制御する。また、制御部9は、ストロークセンサ10からの出力値(図3(b)参照)の変位量を微分して変位速度を求めることができる(図3(c))。また、制御部9は、求められた変位速度を更に微分して変位加速度を求めることができる(図3(d))。また、制御部9は、基準位置を記憶する記憶部を備え、基準位置を基準にアクチュエータ8を制御する。
【0026】
シャフト7には、ディテント機構11が設けられている。図2に示すように、ディテント機構11は、シャフト7の外周面に設けられた3つの凹部12と、この凹部12に当接する1つのボールプランジャ13とで構成される。ボールプランジャ13は、凹部12の間に形成される山部12aを乗り越えられるように構成されている。
【0027】
各凹部12は、同期噛合機構2の一速側噛合状態、ニュートラル状態、三速側噛合状態の3つの状態に対応させて設けられており、各凹部12にボールプランジャ13が解除可能に係合することにより、ディテント機構11は、同期噛合機構2の各状態を解除可能に保持する機能を有している。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態のギアシフト装置1の作動を説明する。ここでは、同期噛合機構2が一速側噛合状態であり、同期噛合機構2を一速側噛合状態からニュートラル状態に移行する場合を例に説明する。尚、図3において、横軸は時間軸であり、図3(b)の縦軸はストロークセンサ10の出力値(例えば電圧[v])、図3(c)の縦軸はストロークセンサ10の出力値の変位速度、図3(d)の縦軸はストロークセンサ10の出力値の変位加速度、図3(e)の縦軸はアクチュエータ8の作動力(例えば油圧)である。
【0029】
制御部9は、基準位置学習処理を備えている。基準位置学習処理は、図4に示すように各処理を実行する。これを詳説すると、基準位置学習処理では、まず、同期噛合機構2を一速側噛合状態からニュートラル状態に移行させる場合には、まず、アクチュエータ8でフォーク6をニュートラル側に移動させ、ボールプランジャ13を一速側噛合状態に対応する凹部12bから離脱させる。
【0030】
そして、ボールプランジャ13が隣接するニュートラル状態に対応する凹部12cに入ったときに(図3(e)のt1)、アクチュエータ8の作動力を所定値(本実施形態では、「0」)よりも少し大きな値である中間値まで下げる。そして、制御部9は、あらかじめ定められたt2でアクチュエータ8の作動力が所定値(本実施形態では、「0」)となるように、中間値から徐々に作動力を低下させる。ここまでの処理が図4のステップ1に該当する。このステップ1の工程が本発明の作動力低下工程に該当する。
【0031】
次で、ステップ2に進み、制御部9で演算された変位加速度が図3(d)において下降状態から上昇状態に切り替わる変化点(ピーク)があるか否かを確認する。このステップ2の工程が本発明の演算工程及び変化点工程に該当する。
【0032】
変化点を確認した場合には、ステップ3に進み、変化点から所定時間遡った時点において、アクチュエータ8の作動力が所定値以下となっていたか否かを確認する。この所定時間は「0」であってもよいが、「0」を超える「正」の時間とすることによって、より正確な変化点を求めることができる。
【0033】
即ち、変化点のときにアクチュエータ8の作動力が所定値以下であるかどうかを確認すると、ボールプランジャ13が凹部12cの最下点を超えた位置で作動力が所定値以下となった場合に直ちに変化点が発生し、変化点と実際の凹部12cの最下点とに誤差が生じる虞がある。上述の如く変化点から「正」の時間たる所定時間遡った時点で確認すれば、このような誤差の発生を防止することができ、より正確な変化点を求めることができる。
【0034】
変化点において、アクチュエータ8の作動力が所定値を超えている場合には、変化点が凹部12の最下点と一致していない可能性がある。このため、ステップ7に進み、次回のアクチュエータ8の作動力を所定値まで下げる処理の完了時期(図3(e)のt2)を早めるように制御する。これにより、次回では、アクチュエータ8の作動力が働いていない状態での変化点を得ることができる。このステップ3が本発明の変化点作動力確認工程に該当する。
【0035】
ステップ3で、変化点において、アクチュエータ8の作動力が所定値以下となっている場合には、ステップ4に進み、オーバーシュートが確認されたか否かを確認する。オーバーシュートが確認されなかった場合には、ボールプランジャ13が凹部12cの最下点まで達していない可能性がある。従って、ステップ8に進み、アクチュエータ8の前記中間値を増加させる。これにより、次回は、ボールプランジャ13が凹部12cの最下点に達することができる。このステップ4が本発明のオーバーシュート工程に該当する。
【0036】
ステップ4でオーバーシュートが確認された場合には、ステップ5に進み、変化点を新たな基準位置として記憶する。このステップ5が本発明の更新工程に該当する。
【0037】
そして、ステップ6に進み、フォーク6のストローク量を次式(1)から求める。
【0038】
ストローク量=感度係数[mm/V]×(出力電圧[V]−基準位置電圧[V])・・・(1)。
【0039】
制御部9は、求められたストローク量に基づきアクチュエータ8を介して同期噛合機構2を制御する。
【0040】
本実施形態のギアシフト装置1によれば、ディテント機構11の凹部12を利用して、ボールプランジャ13を一旦基準位置を通り過ぎるようにオーバーシュートさせて、変化点を求めることにより、凹部12の位置を正確に求めることができる。従って、ストロークセンサ10が温度等の影響で出力値にドリフトが生じてもディテント機構11の凹部12の位置を変化点から正確に求めることができる。
【0041】
そして、現在記憶されている基準位置の出力値と新たに求められた変化点に対応するストロークセンサ10の出力値とを比較することで、両者が相違している場合には、新たに求められた変化点に対応するストロークセンサ10の出力値を新たな基準位置の出力値とすることができる。従って、本発明によれば、従来のように温度センサ等の新たな部品を設けることなく、既存の部品を用いてストロークセンサ10の出力値の補正を適切に行うことができる。
【0042】
また、アクチュエータ8の作動力が所定値以下となっていない場合には、アクチュエータ8の作動力の影響により、求められた変化点がディテント機構11の凹部12の最下点と一致していない場合が考えられる。従って、このような場合には、基準位置を更新しないことにより、誤った基準位置が記憶されることを防止できる。
【0043】
また、オーバーシュートしなかった場合には、ボールプランジャ13が凹部12の最下点まで到達していない可能性が高い。従って、上述の如くアクチュエータ8の作動力を増加させれば、次回以降で、オーバーシュートできるようになる。
【0044】
また、変化点においてアクチュエータ8の作動力が前記所定値を超えている場合には、変化点が凹部12の最下点を通り越している可能性がある。この場合、変化点工程で求められた変化点において、アクチュエータ8の作動力が前記所定値を超えていた場合には、作動力低下工程において、アクチュエータ8の作動力を前記所定値まで低下させる作業の完了時期(図3(e)のt2)を早めれば、次回以降に実行される作動力低下工程では、アクチュエータ8の作動力の低下がより早期に完了するため、変化点を凹部の最下点と一致させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…ギアシフト装置、2…同期噛合機構、2a…スリーブ、3…軸、4…一速歯車、5…三速歯車、6…フォーク、6a…フォークの先端、7…シャフト、8…アクチュエータ、9…制御部、10…ストロークセンサ、11…ディテント機構、12…凹部、12a…山部、12b…一速側噛合状態に対応する凹部、12c…ニュートラル状態に対応する凹部、13…ボールプランジャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に設けられ、該軸と相対回転可能なギアと結合して該ギアを軸に固定する係合状態と、この係合を断つ開放状態とに切換自在な同期噛合機構を作動させるために用いられ、
係合状態の噛合位置又は前記開放状態のニュートラル位置で前記同期噛合機構のスリーブと係合するフォークを解除自在に保持するディテント機構と、
前記フォークを作動させるアクチュエータと、
前記フォークのストローク量を検出するストロークセンサと、
前記ストロークセンサからの入力に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、
前記ストロークセンサの基準位置を記憶する記憶部とを備えるギアシフト装置において、
前記ディテント機構は、複数の凹部と、該凹部に係合自在なボールプランジャとを備え、該ボールプランジャと前記凹部とが係合することにより、噛合位置又はニュートラル位置が保持され、
前記制御部は、基準位置学習処理を実行し、
該基準位置学習処理は、
前記同期噛合機構の状態を切り換えるときに、前記アクチュエータにより、前記ボールプランジャを隣接する前記凹部に移動させた後に、前記アクチュエータの作動力を前記フォークの作動に影響を及ぼさない値である所定値に低下させる作動力低下工程と、
前記ストロークセンサの出力値から変位量の加速度を求める演算工程と、
得られた変位加速度から変位加速度が減少状態から増加状態に切り替わる変化点を求める変化点工程と、
前記変化点工程で求められた変化点から所定時間遡った時点において、前記アクチュエータの作動力が前記所定値であったか否かを確認する変化点作動力確認工程と、
前記記憶部に記憶された基準位置に対してオーバーシュートしたか否かを確認するオーバーシュート工程と、
前記オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、前記変化点作動力確認工程で、変化点において前記アクチュエータの作動力が前記所定値であった場合には、変化点を前記ストロークセンサの新たな基準位置として記憶させる更新工程とを備えることを特徴とするギアシフト装置。
【請求項2】
請求項1記載のギアシフト装置において、
前記制御部は、
前記アクチュエータの作動力が所定値以下となっている場合にのみ、前記変化点を新たな基準位置として前記記憶部に記憶させることを特徴とするギアシフト装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のギアシフト装置において、
前記制御部は、
前記オーバーシュート工程でオーバーシュートしなかったことを確認した場合には、
前記作動力低下工程で、前記所定値まで前記アクチュエータの作動力を下げるまでの間の前記アクチュエータの作動力を増加させることを特徴とするギアシフト装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項記載のギアシフト装置において、
前記変化点工程で求められた前記変化点において、前記アクチュエータの作動力が前記所定値を超えていた場合には、
前記作動力低下工程において、前記アクチュエータの作動力を前記所定値まで低下させる作業の完了時期を早めることを特徴とするギアシフト装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項記載のギアシフト装置において、
前記ストロークセンサの出力値は電圧であり、
前記演算工程では、前記ストロークセンサの出力電圧から電圧の変位量の加速度を求め、
前記更新工程では、前記オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、前記変化点作動力確認工程で、変化点において前記アクチュエータの作動力が前記所定値であった場合には、変化点における前記ストロークセンサの出力電圧を前記ストロークセンサの新たな基準位置の電圧として記憶させることを特徴とするギアシフト装置。
【請求項6】
同期噛合機構のスリーブに係合するフォークに設けられたディテント機構であって、該ディテント機構は、複数の凹部とボールプランジャとからなり、複数の凹部のうち何れか1つの凹部の位置を基準位置として学習させる学習方法において、
同期噛合機構の状態を切り換えるときに、アクチュエータにより、前記ボールプランジャを隣接する前記凹部に移動させた後に、前記アクチュエータの作動力をフォークの作動に影響を及ぼさない値である所定値に低下させる作動力低下工程と、
前記フォークのストローク量を検出するストロークセンサの出力値から変位量の加速度を求める演算工程と、
得られた変位加速度から変位加速度が減少状態から増加状態に切り替わる変化点を求める変化点工程と、
前記変化点工程で求められた変化点から所定時間遡った時点において、前記アクチュエータの作動力が前記所定値であったか否かを確認する変化点作動力確認工程と、
記憶部に記憶された基準位置に対してオーバーシュートしたか否かを確認するオーバーシュート工程と、
前記オーバーシュート工程でオーバーシュートが確認され、前記変化点作動力確認工程で、変化点において前記アクチュエータの作動力が前記所定値であった場合には、変化点を前記ストロークセンサの新たな基準位置として記憶させる更新工程とを備えることを特徴とするディテント機構の基準位置学習方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64469(P2013−64469A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204457(P2011−204457)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】