説明

クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン

【課題】対象表面までの距離測定用で改善された範囲対分解能比を持った小型のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンを提供すること。
【解決手段】光学ペン220は測定範囲対分解能比を拡張する多段の光学的構造を含み、該光学的構造は少なくとも第一および最後の軸方向分散合焦要素250A,250Bを含む。軸方向合焦要素は光学的に結合して光学ペン全体での軸方向色分散量の増加に貢献する。第一の軸方向分散合焦要素は光源放射光を受けてこれを多段の光学的構造内の第一の焦点領域に合焦する。最後の軸方向分散合焦要素は多段の光学的構造内の最後の焦点領域から放射光を受けて測定ビームMBを出力する。中間の焦点領域を形成する中間合焦要素を設けてもよい。このような光学的構造によって今までにない拡張された測定範囲R2、小さいレンズ径、および高い開口数を結合した光学ペンを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な精密測定機器に関し、特に、測定範囲を拡張するための多段の光学的構造を備えたクロマティックポイントセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色収差の制御技術は、距離検出の測定工学分野に利用され得る。非特許文献1に記載されているように、制御された長手方向の色収差(ここでは、別名、軸方向の色分散とも呼ぶ。)を光学イメージング装置に導入することができる。その理由は、イメージング装置の焦点長さが波長によって変化するからであり、これによって、光学イメージング装置が光学測定用の手段として提供される。特に、レンズを、その背面焦点距離(BFL)が波長の単調関数であるように設計することができる。白色光の動作では、そのようなレンズは、軸方向に焦点が分散した虹を示すので、距離検出分野の分光プローブとして用いることができる。
【0003】
更に、特許文献1に記載されている例では、軸方向色収差(軸方向又は長手方向色分散とも称する)を有する光学要素を、その焦点までの軸方向距離が波長により変化するようにして、広帯域光源の焦点を合わせることに用いることができる。このように、唯一つの波長の光の焦点が表面上に正確に合うとともに、表面までの光軸方向の距離または高さにより、最も良く焦点が合う光の波長が決まる。表面からの反射光の焦点は、ピンホールおよび/または光ファイバの端部のような小さな検出用アパーチャで再び合う。表面からの反射光の中で、表面で十分に焦点が合った波長の光のみが、ピンホールおよび/またはファイバで十分に焦点が合う。他の全ての波長の光は、ファイバでの焦点が不完全となり、その光のパワーはファイバとほとんど結合しない。従って、対象の高さに対応する波長において信号レベルが最大になる。距離検出器の分光計が各波長の信号レベルを測定し、この信号レベルが対象の高さを効率良く示すことができる。
【0004】
あるメーカーは、「クロマティック共焦点ポイントセンサ」及び/又は「光学ペン」として、実用的で小型の光学アセンブリに言及している。この光学アセンブリは、工業上の据付作業用のクロマティック共焦点式の照準器に適している。Z方向の高さを測定する光学ペン機器の一例には、フランス国のエクサンプロバンス(Aix-en-Provence)のSTIL, S.A.社が製造した物がある。特に、Z方向の高さ測定用のSTIL光学ペン(モデル番号OP300NL)は、300μmの測定範囲を有する。
【0005】
他の構成のクロマティック共焦点ポイントセンサおよび光学ペンは、同一出願人による特許文献2に記載されている。特許文献2に開示されたレンズ形状によれば、光学的な処理能力とスポットサイズが改善され、結果として、様々な商業的に入手可能な機器構成のものと比較して、測定分解能を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,477,401号公報
【特許文献2】米国特許第7,626,705号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジー モレジーニ(G.Molesini)、エス クエルチオーリ(S.Quercioli)、「長手方向の色収差の擬似カラー効果(Pseudocolor Effects ofLongitudinal Chromatic Aberration)」、ジェイ オプティクス(パリ)(J.Optics (Paris))、1986年、第17巻、第6号、p.279−282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光学ペンの一つの性能指標は範囲対分解能比である。ここで範囲とは光学ペンの測定可能な寸法範囲、すなわち測定範囲を示す。例えば、多用途光学ペンは、長い寸法範囲に渡って高い分解能で測定できるべきである。一般的に言えば、既知の光学ペンにおいて、高分解能測定には相対的に大きい開口数が必要であり、与えられた開口数において測定範囲を拡張するにはペン径を大きくする必要がある。しかし、様々な用途において、クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンは小型であることが望ましい。従って、改善された範囲対分解能比を持つ、小型の光学ペンが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、拡張された測定範囲を提供する光学ペンを提供し、その光学ペンにはコンパクトな出力レンズ径と大きな開口数の光学部品を用いることを目指している。
すなわち、対象表面までの距離を測定するために利用できる信号を提供するように作用するクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンであって、この光学ペンは、
筐体と、
光源放射光を出力し反射放射光を受光する開口部と、
前記クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンの光軸に沿って配置されて、前記開口部から光源放射光を受け取り、合焦によって軸方向色分散を示す測定ビームとしてその光源放射光を前記対象表面へ向けて出力し、前記対象表面からの反射放射光を受け取り、この反射放射光を前記開口部の直近で軸方向色分散を伴って合焦させるように設けられた多段の光学的構造と、を備える。
この多段の光学的構造は、複数の軸方向分散合焦要素を備える。
複数の軸方向分散合焦要素は、
前記光源放射光を受けて該光源放射光を前記多段の光学的構造内の第一の焦点領域に合焦させる第一の軸方向分散合焦要素と、
前記多段の光学的構造内の最後の焦点領域から放射光を受けて前記測定ビームを出力する最後の軸方向分散合焦要素と、を備える。
そして、少なくとも前記第一の軸方向分散合焦要素および前記最後の軸方向分散合焦要素は、それぞれ放射光の軸方向色分散を促し、前記測定ビーム全体での軸方向色分散量を増加させることに寄与する。
【0010】
また、本発明において前記第一の焦点領域と前記最後の焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分に広がっていてもよい。この場合は、二つの軸方向分散合焦要素により構成される。他の実施例においては、複数の軸方向分散合焦要素が、少なくとも一つの中間の軸方向分散合焦要素を含むことができる。中間の軸方向分散合焦要素は、多段の光学的構造内の隣接した焦点領域からの放射光を受け、その放射光を多段の光学的構造内の対応する中間の焦点領域に合焦させる。そのような実施例では、少なくとも三つの軸方向分散合焦要素により構成される。いくつかの実施例においては、それぞれの中間の焦点領域と最後の焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分に広がっていてもよい。
【0011】
また、本発明において前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、軸方向分散合焦要素のそれぞれにおいて等しい少なくとも一つの光学部品を備えていてもよい。また、本発明において前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、同一としてもよい。
【0012】
また、本発明において各軸方向分散合焦要素は、単一の光学部品を備えていてもよい。
【0013】
また、本発明において前記軸方向分散合焦要素の少なくとも一つは、少なくとも一つの回折光学要素を備えていてもよい。また、本発明において前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、少なくとも一つの回折光学要素を備えていてもよい。
【0014】
また、本発明において前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、65未満のアッベ数を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明において前記軸方向分散合焦要素は、1.5を超える屈折率をもつ屈折レンズを備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明において前記クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンは、最大で5mmの出力開口を備えることが好ましい。そのような場合、各軸方向分散合焦要素は、最大で直径5mmのレンズだけで構成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明において合焦された前記測定ビームは、この測定ビームを構成する波長帯域に対応する開口数の範囲を持ち、その開口数の範囲は、0.15を超える開口数を含んでいることが好ましい。そのような場合、最小で500μmの測定範囲を提供することができる。そのような場合、最大で5mmの直径を持つ多段の光学的構造により、上記の開口数の範囲で、かつ、上記の測定範囲を有する組み合わせの光学ペンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術として一段の光学的構造の光学ペンを備えた代表的なクロマティック共焦点ポイントセンサの構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る多段の光学的構造の光学ペンを模式的に示したクロマティック共焦点ポイントセンサの構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る多段の光学的構造の光学ペンを示したクロマティック共焦点ポイントセンサの構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る多段の光学的構造の光学ペンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、一段の光学的構造の光学ペン120を含む代表的なクロマティック共焦点ポイントセンサ装置100を示すブロック図である。クロマティックポイントセンサ装置100は、同時係属中の米国特許出願11/940,214号、米国特許出願12/463,936号、および、米国特許出願12/946,747号(以降では、それぞれ出願‘214号、出願‘936号、および、出願‘747号と呼ぶ。)にも記載されている。図1に示すように、クロマティックポイントセンサ装置100は光学ペン120と電子機器部分160を含む。光学ペン120は、光ファイバコネクタ107と、筐体130と、軸方向分散光学要素150とを含む。この光学的構造は「一段」として特徴付けられるが、それは一つの軸方向分散光学要素150だけを備えるからである。軸方向分散光学要素150内には焦点面も焦点領域もない。つまり、図2から図4を参照して記載される実施例と対比して、図1の光学ペン120の唯一の焦点面や焦点領域は、ファイバ開口部195の直近と測定範囲R1にある。
【0020】
図1に示す従来例において、軸方向分散光学要素150は第一のレンズ151と第二のレンズ152から構成される。光ファイバコネクタ107は筐体130の端部に取り付けられている。光ファイバコネクタ107は、光ファイバケーブル112に包まれた詳細には示していない入出力光ファイバを、その光ファイバケーブル112を介して受け止めている。入出力光ファイバはファイバ開口部195を通して光源放射光を出力し、ファイバ開口部195を通して反射された測定信号放射光を受け取る。軸方向分散光学要素150は、光学ペン120の光軸OAに沿って配置されて、ファイバ開口部195を通して光源放射光を受け取り、合焦によって軸方向色分散を示す測定ビームMBとしてその放射光をワークの表面190へ向けて出力するとともに、ワークの表面190から反射された放射光を受け取り、その反射放射光をファイバ開口部195の直近で軸方向色分散を伴って合焦させる。
【0021】
動作中、ファイバ端部からファイバ開口部195を通って放射された広周波数帯域の光源放射光(例えば白色光)は、軸方向分散光学要素150により焦点を合わせられる。この軸方向分散光学要素150は、放射光の軸方向の色分散を促す光学要素を含む。軸方向の色分散とは、共焦型のクロマティックポイントセンサ装置で既知のように、光軸OAに沿った焦点が、放射光の波長に応じて異なった距離に生じる現象をいう。光源放射光は、光学ペン120に相対して‘Z軸方向の位置にあるワークの表面190上に焦点が合うような波長を含んでいる。ワーク表面190からの反射については、その反射放射光は軸方向分散光学要素150によりファイバ開口部195上で再び焦点が合う。最適な光原放射光および反射放射光は、限定光線LR1,LR2によって、その境界が限られている。軸方向の色分散により、1つの波長のみが、光学ペン120からワーク表面190までの測定距離に一致する前方の焦点距離FFを有する。ワーク表面190で最も良く焦点が合う波長が、反射放射光においてもファイバ開口部195で最も良く焦点が合う波長になるように、光学ペン120が構成されている。ファイバ開口部195は、最も良く焦点の合う波長が主にファイバ開口部195を通過して光ファイバケーブル112の芯部へ入るように、反射放射光を空間的にフィルタリングしている。以下の詳細な記載および参考文献の記載にあるように、光ファイバケーブル112は、反射された信号放射光を波長検出器162に伝搬する。この波長検出器162は、ワーク表面190までの測定距離に対応する主強度(dominant intensity)を有する波長を決定するために利用される。光学ペン120は、最小測距距離Z1MINと最大測距距離Z1MAXとにより区切られた測定範囲R1を有する。
【0022】
電子機器部分160は、ファイバ・カップラ161と波長検出器162と光源164と信号演算器166と記憶部168とを含む。様々な実施形態では、波長検出器162は分光計または分光器アレンジメントを含んでいる。その波長検出器162の中の例えば回折格子のような分散素子が、光ファイバケーブル112を通る反射放射光を受光し、さらに、その分散素子が、結果として生じるスペクトル強度プロファイルを検出器アレイ163へ伝達するようになっている。波長検出器162は、関連する信号演算処理機能(例えば、いくつかの実施形態では信号演算器166により提供される機能)も備えていてもよい。その機能とは、プロファイルデータから所定の検出器に関する誤差成分を取り除いたり、または補償したりする機能である。このように、いくつかの実施形態では、波長検出器162および信号演算器166における特定の態様を統合してもよく、または区別をなくしてもよい。
【0023】
白色光源164は、信号演算器166によって制御されており、光学カップラ161(例えば、2×1光学カップラ)によってファイバケーブル112に接続されている。上述したように、放射光が光学ペン120を通過するとき、光学ペン120は長軸方向の色収差を生成する。これは、放射光の波長に応じてその焦点長さが変化するためである。光ファイバを逆方向に通過する際に最も効率よく伝達される放射光の波長は、Z軸位置においてワーク表面190上に焦点の合った波長である。その後、波長依存の反射放射光の強度は、再びファイバ・カップラ161を通過して、放射光の約50%が波長検出器162に向けられるようになっている。波長検出器162は、検出器アレイ163の測定軸に沿ったピクセル配列上に分布するスペクトル強度プロファイルを受け取り、対応するプロファイルデータを提供するように動作する。手短に言えば、例えばピーク位置座標のような、プロファイルデータのサブピクセル分解能距離指示座標(DIC:sub pixel-resolution distance indicating coordinate)が、信号演算器166により計算される。そして、波長ピークに対応する距離指示座標(DIC)により、距離の校正用ルックアップテーブルを介して表面190までの測定距離が決まる。校正用ルックアップテーブルはメモリ部168に記憶されている。距離指示座標(DIC)は、様々な方法で(例えば、プロファイルデータのピーク領域に含まれるプロファイルデータの重心の決定によって)決定されるようになっている。
【0024】
図1に示す軸方向分散光学要素150は特に単純な例であると理解されたい。実際には、高い範囲対分解能比を示す既知の光学ペンは、一般には複雑な複合レンズなどを含む軸方向分散光学要素を備える。または、回折光学要素(DOE)を用いて比較的高い範囲対分解能比を持つ既知の光学ペンもある。しかし、そのような既知の一段の光学的構造は、実質的な設計限界にほぼ押しやられている。レンズ(またはDOE)の直径を大きくすることにより、測定範囲および/または範囲対分解能比を大きくすることは可能であるが、それは光学ペンの直径を大きくすることになり、多くの応用においては実用的ではない。
【0025】
図2はクロマティック共焦点ポイントセンサ200のブロック図で、これは第1の典型的な光学ペン中の多段の光学的構造250を模式的に表現している。多段の光学的構造250を利用する以外は、クロマティック共焦点ポイントセンサ200の設計と動作は、図1のクロマティック共焦点ポイントセンサ100についての上述の記載に基づいて理解できる。2XXという番号の構成要素は、図1の類似の構成要素1XX(例えば、同じXXという接尾辞をもつ構成要素)と同一または類似であり得る。従って、多段の光学的構造250の特有の特長だけを以下に詳述する。
【0026】
多段の光学的構造250は、図1を参照して上述した一段の光学的構造150の代わりに利用できる。その目的は、範囲対分解能と小さな直径との今までになかった組み合わせを提供することである。図2に示す実施例において、多段の光学的構造250は、第一の軸方向分散合焦要素250Aと第二(または最後)の軸方向分散合焦要素250Bとを含んで構成される。これらの軸方向分散合焦要素250A,250Bのそれぞれの焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分で重なっている。この場合、第二の軸方向分散合焦要素250Bは最後の軸方向分散合焦要素でもある。第二の軸方向分散合焦要素250Bが測定ビームMBを出力する軸方向分散合焦要素だからである。ある実施例においては、軸方向分散合焦要素250Aと250Bのそれぞれは、図1を参照して上述した軸方向分散合焦要素150などによって構成されていてもよい。より一般的には、要素250A,250Bとして使用できる様々な軸方向分散合焦要素として、以下に詳述するように、より複雑なレンズの組み合わせ、より複雑なDOE、またはその両者を挙げることができる。
【0027】
動作において、第一の軸方向分散合焦要素250Aは、ファイバ開口部295からの光源放射光を受け、その放射光を多段の光学的構造250内の第一の焦点領域FFRに合焦させる。この場合、この焦点領域は多段の光学的構造250内の最後の焦点領域LFRでもあるが、それは軸方向分散合焦要素が二つしかないからである。最後の軸方向分散合焦要素250Bは、多段の光学的構造250内の最後の焦点領域LFRから放射光を受け、測定ビームMBを出力する。図2に示す実施例において、第一の軸方向分散合焦要素250Aの第一の焦点領域FFRと最後の軸方向分散合焦要素250Bの最後の焦点領域LFRは、光軸OAに沿った共有する寸法部分に広がっていることを理解すべきである。この共有する寸法部分は、最大位置の平面SFRMAXと最小位置の平面SFRMINを境界としており、共有の焦点領域SFRを規定している。光学ペンで最適な波長は共有の焦点領域SFRにおいて合焦する。第一の軸方向分散合焦要素250Aと最後の軸方向分散合焦要素250Bは、それぞれ軸方向の色分散を促し、測定ビームMB全体での軸方向色分散量が増加することに寄与する。光学ペン220は、(最小測距距離Z2MINと最大測距距離Z2MAXを境界とする)測定範囲R2を有するが、これは同様の直径をもつ光学ペンにおける一段の光学的構造が提供しうる測定範囲(例えば、図1の測定範囲R1)を超える。
【0028】
一般に、クロマティック共焦点ポイントセンサは、三つ以上の軸方向分散合焦要素を用いて、前述と類似の方法で構成することができ、例えば図4に示すように、軸方向分散合焦要素の各ペアの間に共有の焦点領域SFRを設けることができる。それぞれの軸方向分散距離範囲Riを持ったN個の軸方向分散合焦要素によって構成されているクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンについて説明する。横方向倍率が−1である合焦要素からなる多段の光学的構造250を得るため、複数の軸方向分散合焦要素を上記に概要を示した方法と類似の方法を使って光学ペン内で組み合わせる場合、そのようなクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンの総測定範囲R(つまり、測定ビーム全体での軸方向色分散)は、それぞれの軸方向分散距離範囲Riの合計で近似できる。
【0029】
【数1】

より一般的には、多段の光学的構造から構成されるクロマティック共焦点ポイントセンサにおいて、総測定範囲Rは次式で与えられる。ここで、開口数NAbackを持つ光源の光を用いた場合とし、多段の光学的構造は、ワークの表面と共有の焦点領域のどちらにも開口数NAiで結像することができる様々な倍率の合焦要素を利用している場合とする。
【0030】
【数2】

簡単のために、図3と図4に示す実施例では、式(1)のパラメメータに従うものとする。
【0031】
様々な実施例において、上記の原理を用いれば、小さい直径(例えば、5mm以下)を持つレンズを利用して、少なくとも500μmの測定範囲R2を提供する光学ペン220を構成できる。しかし、これらの数値は単に例示であり、これには限定されない。
【0032】
クロマティック共焦点ポイントセンサ200は、小さな出力開口径Dと、高い範囲対分解能比を示し拡大された測定範囲R2とを持つという点で(例えば、クロマティック共焦点ポイントセンサ100と比較して)特に有利である。いくつかの実施例において、クロマティック共焦点ポイントセンサ200は、次のような測定ビームMBを提供可能である。すなわち、クロマティック共焦点ポイントセンサ200は、測定ビームMBの中のいくつかの波長の放射光を、その波長光に対応する開口数が少なくとも0.15以上となるように合焦させることができる。また、いくつかの実施例においては、測定ビームの中のいくつかの波長の放射光を高い開口数0.35で合焦させることができる。また、いくつかの実施例においては、光学ペンに5mm未満の出力開口径Dを持たせることができる。
【0033】
様々な実施例において、クロマティック共焦点ポイントセンサ200で用いる第一の軸方向分散合焦要素250Aと最後の軸方向分散合焦要素250Bは、例えば、図3と図4に示すように、類似する構造で用いることができる。様々な実施例において、各軸方向分散合焦要素はひとつ、またはいくつかの光学部品(例えば、出願‘214号、出願‘936号、出願‘747号と特許‘705号に開示される構造のひとつ)を含んでいてもよい。いくつかの実施例において、軸方向分散合焦要素のそれぞれは、少なくともひとつの光学部品を含んでおり、その光学部品は、軸方向分散合焦要素のそれぞれにおいて同一とする。いくつかの実施例において、軸方向分散合焦要素のそれぞれは完全に同一である。多段の光学的構造250やそれに類似する構造には、屈折レンズを含めてもよいが、そのような構造は屈折レンズに限定されないことを理解すべきである。いつくかの実施例においては、軸方向分散合焦要素の少なくとも一つは、少なくとも一つの回折光学要素(DOE)を含む。いくつかの実施例においては、軸方向分散合焦要素のそれぞれは回折光学要素を含む。屈折レンズを含む実施例において、屈折率が高い軸方向分散合焦要素ほど、一般的には、低いレベルの球面収差を持つ。従って、屈折率が高いほど、より信頼性の高い位置測定がクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにより可能となるだろう。このように、いくつかの実施例においては、軸方向分散合焦要素の少なくとも一つは、1.5を超える屈折率をもつ屈折レンズを含む。
【0034】
一般に、多段の光学的構造は、アッベ数がより小さい軸方向分散合焦要素を備えることが望ましいが、これにより、クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンはより少ない数の合焦要素を備えることで所望の測定範囲を達成できる。アッベ数の小さい各合焦要素が軸方向色分散に対してより大きな程度で寄与するからである。このように、いくつかの実施例においては、軸方向分散合焦要素のそれぞれが65以下のアッベ数を持つことが望ましい。また、いくつかの実施例においては、軸方向分散合焦要素のそれぞれが20以下という小さいアッベ数を持つことがさらに望ましい。既知の解析方法および/または実験方法に基づき、そのようなアッベ数を持つ軸方向分散合焦要素を当業者は識別できる。
【0035】
図3はクロマティック共焦点ポイントセンサ300のブロック図で、これは第2の典型的な光学ペン中の多段の光学的構造350を示している。多段の光学的構造350は、図2を参照して上に記載した多段の光学的構造250の特別なひとつの実現例ということができる。クロマティック共焦点ポイントセンサ300の設計と動作は、図2のクロマティック共焦点ポイントセンサ200についての上述の記載に基づいて概略を理解できる。3XXという番号の構成要素は、図2の類似の構成要素2XX(例えば、同じXXという接尾辞をもつ構成要素)と同一または類似であり得る。従って、多段の光学的構造350の使用に関連する特有の特長だけを以下に詳述する。
【0036】
多段の光学的構造350は、第一の軸方向分散合焦要素350Aと第二(または最後)の軸方向分散合焦要素350Bとを含んで構成される。これらの軸方向分散合焦要素350A,350Bのそれぞれの焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分、すなわち多段の光学的構造350内の共有焦点領域SFRにおいて、重なっている。この場合、第二の軸方向分散合焦要素350Bは最後の軸方向分散合焦要素でもある。第二の軸方向分散合焦要素350Bが測定ビームMBを出力する軸方向分散合焦要素だからである。ある特別な実施例においては、軸方向分散合焦要素350Aと350Bのそれぞれは、図1を参照して上述した軸方向分散合焦要素150などから構成することができる。相対的に単純な光学要素を使用しつつ、小さな直径で、大きな範囲対分解能比を達成できることが、この多段の光学的構造350の強みである。いくつかの実施例では、要素350Aと350Bは同一とすることができる。いくつかの実施例では、要素350Aを構成するレンズ351Aと352A(および/または要素350Bを構成するレンズ351Bと352B)を同一とすることができる。しかし、より一般的には、軸方向分散合焦要素350Aと350Bはどちらも、図1や図2を参照して上述した種類の軸方向分散合焦要素などで構成することができる。
【0037】
図3に示すように、光学ペン320は測定範囲R3を持つが、その測定範囲R3は最小測距距離Z3MINと最大測距距離Z3MAXを境界とするもので、同様の直径をもつ光学ペンにおける一段の光学的構造が提供しうる測定範囲(例えば、図1の測定範囲R1)を超える。多段の光学的構造350の軸方向分散は、例えば式(1)で示すように、累積されるため、第一の軸方向分散合焦要素350Aと第二または最後の軸方向分散合焦要素350Bがそれぞれ図1の軸方向分散合焦要素150と類似の場合、式(1)によると測定範囲R3は、2´R1にほぼ等しい。図1のクロマティック共焦点ポイントセンサ100の実際的な一つの実施例においては、測定範囲R1は約270μmであり得るが、図3のクロマティック共焦点ポイントセンサ300は、高分解能で約540μmの測定範囲R3、および、クロマティック共焦点ポイントセンサ100よりも大きくはない筐体径を持ち得る。
【0038】
図4は、第3の典型的な光学ペン420中の多段の光学的構造450を示した図である。光学ペン420は、図3の光学ペン320の要素と類似の要素から構成される。4XXという同じように番号付けされた要素は、図3の要素3XXと同一または類似であり、異なる要素だけを図4について概説する。光学ペン420内の多段の光学的構造450の設計と動作は、図2の多段の光学的構造250と図3の多段の光学的構造350についての上述の記載に基づいて概略を理解できる。3XXという番号の要素は、図2の類似の要素2XX(例えば、同じXXという接尾辞をもつ要素)と同一または類似であり得る。従って、多段の光学的構造450の使用に関連する特有の特長だけを以下に詳述する。
【0039】
多段の光学的構造250および/または350と比較して、多段の光学的構造450は4つの軸方向分散合焦要素から構成されるが、それらは第一の軸方向分散合焦要素450A、第二の軸方向分散合焦要素450B、第三の軸方向分散合焦要素450C、と第四または最後の軸方向分散合焦要素450Dである。この場合、第四の軸方向分散合焦要素450Dは最後の軸方向分散合焦要素でもある。第四の軸方向分散合焦要素450Dは測定ビームMBを出力する軸方向分散合焦要素だからである。第二と第三の軸方向分散合焦要素450Bと450Cはそれぞれ、多段の光学的構造450内で、第一と最後の軸方向分散合焦要素の間に位置する中間要素として記述できる。
【0040】
第一の軸方向分散合焦要素450Aと第二の軸方向分散合焦要素450Bのそれぞれの焦点領域は、第一の共有焦点領域SFR1において、光軸に沿った共有する寸法部分で重なっている。第二の軸方向分散合焦要素450Bと第三の軸方向分散合焦要素450Cのそれぞれの焦点領域は、第二の共有焦点領域SFR2において、光軸に沿った共有する寸法部分で重なっている。第三の軸方向分散合焦要素450Cと第四または最後の軸方向分散合焦要素450Dのそれぞれの焦点領域は、第三または最後の共有焦点領域SFR3において、光軸に沿った共有する寸法部分で重なっている。
【0041】
ある実施例においては、軸方向分散合焦要素450Aと450Bのそれぞれは、図1を参照して上述した軸方向分散合焦要素150などから構成することができる。相対的に単純な光学要素を使用しつつ、小さな直径で、大きな範囲対分解能比を達成できることが、この多段の光学的構造450の強みである。いくつかの実施例では、要素450Aと450Bは同一とすることができる。いくつかの実施例では、要素450Aを構成するレンズ451Aと452A(および/または要素450Bを構成するレンズ451Bと452B)を同一とすることができる。しかし、より一般的には、軸方向分散合焦要素450Aから450Dはどれも、図1や図2を参照して上述した種類の軸方向分散合焦要素などで構成することができる。
【0042】
多段の光学的構造450は4つの軸方向分散合焦要素から構成されるため、式(1)の原理によれば、2つの軸方向分散合焦要素から構成されている多段の光学的構造350よりさらに大きい測定範囲となる。動作において、第一の軸方向分散合焦要素450Aは、ファイバ開口部495からの光源放射光を受け、その放射光を多段の光学的構造450内の第一の共有焦点領域SFR1に合焦させる。第二の軸方向分散合焦要素450Bは、隣接した第一の共有焦点領域SFR1からの放射光を受け、その放射光を多段の光学的構造450内の隣接した第二の共有焦点領域SFR2に合焦させる。第三の軸方向分散合焦要素450Cは、多段の光学的構造450内の隣接した第二の共有焦点領域SFR2からの放射光を受け、その放射光を多段の光学的構造450内の隣接した第三の共有焦点領域SFR3に合焦させる。それは最後の共有焦点領域LFRでもある。第四または最後の軸方向分散合焦要素450Dは、多段の光学的構造450内の最後の共有焦点領域LFRからの放射光を受け、測定ビームMBを出力する。第二と第三の共有焦点領域SFR2とSFR3は、多段の光学的構造450内で、第一と最後の軸方向分散合焦要素の間に位置する中間焦点領域として記述できる。
【0043】
図4に示すように、光学ペン420は測定範囲R4を持つが、その測定範囲R4は最小測距距離Z4MINと最大測距距離Z4MAXを境界とするもので、同様の直径をもつ光学ペンにおける一段の光学的構造が提供しうる測定範囲(例えば、図1の測定範囲R1)を超える。多段の光学的構造450の軸方向分散は、例えば式(1)で示すように、累積されるため、軸方向分散合焦要素450A、450B、450C,450Dがそれぞれ軸方向分散合焦要素150と類似の場合、式(1)によれば、測定範囲R4は、4´R1にほぼ等しい。図1のクロマティック共焦点ポイントセンサ100の実際的な一つの実施例においては、測定範囲R1は約270μmであり得るが、図4の光学ペン420を使用したクロマティック共焦点ポイントセンサは、高分解能で約1.1mmの測定範囲R4、および、クロマティック共焦点ポイントセンサ100よりも大きくはない筐体径を持ち得る。
【0044】
多段の光学的構造はここに開示されているように、2つまたは4つの軸方向分散合焦要素に限定される必要がなく、所望の複数の軸方向分散合焦要素から構成され得ることは、前述の技術的記載に基づいて理解されるだろう。本発明の好適な実施例を説明し記載してきたが、この開示に基づいて、特長と動作の順序について説明し記載した組み合わせに対して多数の変形が可能なことは当業者に明白であろう。このように、本発明の趣旨と範囲から離れることなく、様々な変更が可能であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0045】
190,290,390 ワーク表面(対象表面)
200,300 クロマティック共焦点ポイントセンサ装置
220,320,420 光学ペン(クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン)
230,330,430 筐体
250,350,450 多段の光学的構造
250A,250B 軸方向分散合焦要素
295,395,495 ファイバ開口部(開口部)
350A,350B 軸方向分散合焦要素
450A〜450D 軸方向分散合焦要素
MB 測定ビーム
R1〜R4 測定範囲
SFR 共有の焦点領域(焦点領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象表面までの距離測定のために利用可能な信号を提供するように作用するクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、
筐体と、
光源放射光を出力し反射放射光を受光する開口部と、
前記クロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンの光軸に沿って配置されて、前記開口部から光源放射光を受け取り、合焦によって軸方向色分散を示す測定ビームとしてその光源放射光を前記対象表面へ向けて出力し、前記対象表面からの反射放射光を受け取り、この反射放射光を前記開口部の直近で軸方向色分散を伴って合焦させるように設けられた多段の光学的構造と、を備え、
前記多段の光学的構造は、前記光源放射光を受けて該光源放射光を前記多段の光学的構造内の第一の焦点領域に合焦させる第一の軸方向分散合焦要素、および、前記多段の光学的構造内の最後の焦点領域から放射光を受けて前記測定ビームを出力する最後の軸方向分散合焦要素を含む、複数の軸方向分散合焦要素を有し、
少なくとも前記第一の軸方向分散合焦要素および前記最後の軸方向分散合焦要素は、それぞれ放射光の軸方向色分散を促し、前記測定ビーム全体での軸方向色分散量を増加させることに寄与することを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項2】
請求項1記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、前記第一の焦点領域および前記最後の焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分に広がっていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項3】
請求項1記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、複数の前記軸方向分散合焦要素は、前記多段の光学的構造内の隣接した焦点領域からの放射光を受けて、その放射光を前記多段の光学的構造内の対応する中間の焦点領域に合焦させるように設けられた少なくとも一つの中間の軸方向分散合焦要素を含むことを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項4】
請求項3記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、それぞれ隣接する前記中間の焦点領域接と最後の焦点領域は、光軸に沿った共有する寸法部分に広がっていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、軸方向分散合焦要素のそれぞれにおいて等しい少なくとも一つの光学部品を備えていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、同一であることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、各軸方向分散合焦要素は、単一の光学部品を備えていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、前記軸方向分散合焦要素の少なくとも一つは、少なくとも一つの回折光学要素を備えていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、前記軸方向分散合焦要素のそれぞれは、少なくとも一つの回折光学要素を備えていることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンにおいて、合焦された前記測定ビームは、この測定ビームを構成する波長帯域に対応する開口数の範囲を持ち、該開口数の範囲は、0.15を超える開口数を含んでいることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンは、最大で5mmの出力開口を備えることを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペンは、最小で500μmの測定範囲を提供することを特徴とするクロマティック共焦点ポイントセンサ光学ペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173294(P2012−173294A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34649(P2012−34649)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】