ケーブル用クランプ
【課題】クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法を小さくする。
【解決手段】相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備えたケーブル用クランプであって、クランプ本体10の他端部にロック用ソケット16が設けられ、蓋体12の他端部にロック用挿入部28が設けられ、ロック用ソケットの内部は、ロック用挿入部の挿入が可能な第1空間18と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間22とに分けられ、第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁26が設けられている。両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片20,24がそれぞれ設けられ、第1空間のロック片は、クランプ本体の内周面10aに連なる側の壁に設けられ、かつ、ロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されている。
【解決手段】相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備えたケーブル用クランプであって、クランプ本体10の他端部にロック用ソケット16が設けられ、蓋体12の他端部にロック用挿入部28が設けられ、ロック用ソケットの内部は、ロック用挿入部の挿入が可能な第1空間18と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間22とに分けられ、第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁26が設けられている。両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片20,24がそれぞれ設けられ、第1空間のロック片は、クランプ本体の内周面10aに連なる側の壁に設けられ、かつ、ロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に用いるケーブル用クランプに関し、特にワイヤハーネスを挿通させたコルゲートチューブなどの外周を把持し、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のケーブル用クランプは、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、クランプ本体と蓋体とにおける相互の一端部がヒンジで連結されているとともに、クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられている。ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所(車体)から突出したブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられている。第1空間には、ロック用挿入部をロック用ソケットの上方側から挿入することで、該ロック用挿入部とロックするロック片が設けられている。また第2空間には、ブラケットをロック用ソケットの下方側から挿入することで、該ブラケットとロックするロック片が設けられている。
ワイヤハーネスなどのケーブルを車体側に配線するときは、ケーブルを挿通させたコルゲートチューブなどの外周をクランプ本体と蓋体との半円環状の内周面によって把持し、蓋体のロック用挿入部をロック用ソケットの第1空間に挿入してロックする。この状態において、ロック用ソケットの第2空間にケーブル配線箇所のブラケットを挿入してロックすることにより、クランプがケーブル配線箇所に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−143309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、ロック用ソケット内を第1空間と第2空間とに分けている隔壁の一部によって第1空間のロック片が構成されている。そして、このロック片は、第1空間に対して蓋体のロック用挿入部が挿入されることによって第2空間の側に撓むようになっている。このため、第1空間のロック片の撓み量を考慮して第1空間と第2空間との間隔を設定しなければならず、特に第2空間にブラケットを導くための案内壁が両空間の境界部に設けられている場合、第2空間がクランプ本体から大きく離れることになる。この結果、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法(オフセット量)が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ケーブル配線箇所に設けられたブラケットをロック用ソケットの第2空間に導くための案内壁が両空間の境界部に設けられたタイプであっても、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備え、これらの半円環状の内周面によってケーブルの外周を把持した状態で相互の他端部同士をロックし、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプであって、クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられている。
ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられている。これらの第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁が設けられている。両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片がそれぞれ設けられている。第1空間のロック片は、ロック用ソケットにおいてクランプ本体の内周面に連なる側の壁に設けられ、かつ、第1空間に対するロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されている。
【0007】
この構成においては、ロック用ソケットにおける第1空間のロック片を第2空間とは反対方向へ撓むようにしたことにより、該ロック片の撓み量を考慮して第1空間と第2空間との距離を大きく確保する必要がない。したがって、ブラケットを第2空間に導くための案内壁が両空間の境界部に設けられたタイプであっても、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法を小さく設定できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、第1空間のロック片が、蓋体のロック用挿入部に係合する係合爪を備えている。また、この係合爪の両側において、抜き取り方向の荷重を受けたときのロック用挿入部に接触してロック片の反り返りを防止するストッパーを備えている。
【0009】
このように、第1空間のロック片が係合爪の両側においてストッパーを備えていることにより、例えばストッパーを係合爪の先端側に設けた場合と比較して、ロック片の撓み動作に伴うストッパーの移動軌跡がコンパクトとなり、クランプ自体も小型になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ケーブル用クランプを表した斜視図。
【図2】ケーブル用クランプを表した平面図。
【図3】ケーブル用クランプを表した左側面図。
【図4】ケーブル用クランプを表した右側面図。
【図5】図2のA-A矢視方向の断面図。
【図6】図5の一部を拡大して表した断面図。
【図7】図5のB-B矢視方向の断面図。
【図8】図5のC-C矢視方向の断面図。
【図9】ケーブル用クランプにより大径ケーブルを把持した状態の断面図。
【図10】ケーブル用クランプにより小径ケーブルを把持した状態の断面図。
【図11】ロック構造の変更例を図6と対応させて表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面で示すケーブル用クランプは、車両のボデー等に対して配線されるケーブルの一例としてワイヤハーネス等を挿通させたコルゲートチューブ30を把持し(図9あるいは図10)、その状態で車両のボデー側に装着される形式のものである。
クランプは、合成樹脂による一体成形品であって、それぞれ半円環状の内周面10a,12aを有するクランプ本体10と蓋体12とを備えている。これらクランプ本体10および蓋体12における相互の一端部は、可撓性を有する薄肉のヒンジ14で連結されている。そして、クランプ本体10の他端部にはロック用ソケット16が成形され、蓋体12の他端部にはロック用挿入部28が成形されている。
【0012】
クランプ本体10および蓋体12における半円環状の内周面10a,12aは、コルゲートチューブ30の外周を分担して挟み込む部分であり、これらの内周面10a,12aには、係止リブ10b,12bがそれぞれ3列ずつ設けられている(図1および図2)。これらの各係止リブ10b,12bは、図9あるいは図10で示すようにクランプ本体10および蓋体12によってコルゲートチューブ30の外周を挟み込んで把持したときに、該コルゲートチューブ30の外周の環状溝に噛み合う。これにより、クランプとコルゲートチューブ30とが長さ方向へ相対的にずれ動くのを防止することができる。
【0013】
クランプ本体10のロック用ソケット16は、例えば図5および図6で示すように上下両面で開口した中空形状をしており、その内部は第1空間18と第2空間22とに分かれている。第1空間18に対しては、蓋体12のロック用挿入部28がロック用ソケット16の上側から挿入される。また、第2空間22に対しては、ケーブル配線箇所である車両ボデー等に固定されたブラケット32(例えば図1)がロック用ソケット16の下側から挿入される。
第1空間18と第2空間22との境界部には、ブラケット32の挿入を第2空間22に導くための案内壁26が位置している。この案内壁26は、ロック用ソケット16の少なくとも下部側では両空間18,22の幅方向の全域にわたって連続している(図8)。
【0014】
第1空間18の内部において、クランプ本体10の内周面10aに連なる側の壁の一部にはロック片20が構成されている。このロック片20は、図5および図6の下側が自由端になっているとともに、図面の左方向、つまり第2空間22とは反対方向へ撓むことができる。また、ロック片20は、その自由端側において第1空間18の内部側に張り出した下向きの係合爪20aと、この係合爪20aの両側に位置するストッパー20bとを有する。
第2空間22の内部において、ロック用ソケット16の外方側の壁はロック片24となっている。このロック片24は、図5および図6の上側が自由端になっているとともに、図面の右方向、つまりロック用ソケット16の外方向へ撓むことができる。そして、ロック片24の自由端寄りには、第2空間22の内部側に張り出した上向きの係合爪24aが設けられている。
【0015】
蓋体12のロック用挿入部28には、ロック用ソケット16の第1空間18に対する挿入方向に沿って2個の係合孔28a,28bが開けられている。そこで、ロック用ソケット16の第1空間18にロック用挿入部28が挿入されると、最初に先端寄りの係合孔28aがロック片20の係合爪20aに係合し(図9)、さらにロック用挿入部28が挿入されると、つぎの基端寄りの係合孔28bが係合爪20aに係合する(図10)。
なお、ロック用ソケット16の第2空間22にブラケット32が挿入されると、このブラケット32に開けられている係合孔32aがロック片24の係合爪24aに係合する(図9および図10)。
【0016】
つづいて、クランプの使用手順を該クランプで把持しようとするコルゲートチューブ30が比較的大径の場合を例にとって説明する。
まず、クランプ本体10の内周面10aにコルゲートチューブ30をセットした後、蓋体12をヒンジ14回りに閉じるように操作し、そのロック用挿入部28をロック用ソケット16の第1空間18に上側から挿入する。このときのロック用挿入部28は、第1空間18のロック片20を第2空間22とは反対方向へ押し撓めながら進行する。そして、ロック用挿入部28の先端寄りの係合孔28aがロック片20の係合爪20aと合致したところで、前述のように係合爪20aと係合孔28aとが互いに係合し、ロック用挿入部28がその挿入位置でロック用ソケット16側にロックされる(図9)。この結果、コルゲートチューブ30はクランプ本体10および蓋体12の内周面10a,12aで把持された状態に保持される。
【0017】
なお、コルゲートチューブ30が比較的小径の場合には、蓋体12のロック用挿入部28がロック用ソケット16の第1空間18に対して図9の状態よりも多く挿入される。これにより、前述の場合と同様にロック用挿入部28がロック片20を押し撓めながら進行し、今度はロック用挿入部28の基端寄りの係合孔28bがロック片20の係合爪20aに係合する。したがって、ロック用挿入部28は図10で示す挿入位置でロック用ソケット16側にロックされ、小径のコルゲートチューブ30もクランプ本体10および蓋体12の内周面10a,12aで適正に把持される。
【0018】
つぎに、図9および図10で示すように車両ボデー等のブラケット32がロック用ソケット16の第2空間22に下側から挿入される。これにより、前述のようにブラケット32の係合孔32aが第2空間22におけるロック片24の係合爪24aに係合し、該ブラケット32がその挿入位置でロック用ソケット16側にロックされる。この結果、クランプが車両ボデー等に装着され、コルゲートチューブ30(ワイヤハーネス)が所定の配線状態に保持される。
また、ロック用ソケット16における両空間18,22の境界部に設けられた案内壁26により、ブラケット32は第2空間22に向けて適正に導かれ、ロック用ソケット16の第1空間18にブラケット32が誤って挿入されるのを防止することができる。
【0019】
例えば図9で示すようにクランプ本体10および蓋体12でコルゲートチューブ30を把持した状態において、ロック用挿入部28に抜き取り方向の荷重が作用すると、第1空間18のロック片20は、係合爪20aと係合孔28aとの係合部を通じて第2空間22側へ撓む方向の力を受ける。これを許容すると、ロック片20が反り返って係合爪20aと係合孔28aとの係合(ロック)が外れ、ロック用挿入部28が第1空間18から抜けることになる。このことは、図10で示す把持状態においても同様である。
しかし、本実施の形態においては、ロック用挿入部28が抜き取り方向の荷重を受けると、ロック片20のストッパー20bがロック用挿入部28の係合孔28a(あるいは係合孔28b)の両側に接触し、ロック片20が反り返るのを防止する。そして、このストッパー20bは、係合爪20aの両側に位置していることから、該ロック片20の先端側にストッパーが設けられた構成と比較して、ロック片20の撓み動作に伴うストッパー20bの回動半径が小さく、その移動軌跡がコンパクトに収まる。
【0020】
既に述べたように、第1空間18のロック片20を第2空間22とは反対方向へ撓むようにしているので、該ロック片20の撓みが第2空間22側に影響を及ぼすことはない。このため、第1空間18と第2空間22との距離は、ロック片20の撓み量を考慮することなく、可能な限り小さく設定することができる。これにより、第1空間18と第2空間22との境界部に案内壁26が設けられているタイプであっても、図9あるいは図クランプ本体10におけるコルゲートチューブ30の軸心とブラケット32との間の寸法を小さくすることが可能になる。
【0021】
第1空間18のロック片20については、図11で示すようにクランプ本体10の内周面10aに連なる側の壁の一部において、図面上側が自由端になった構成に代えることも可能である。この構成のロック片20も、第2空間22の反対方向へ撓むことができるとともに、第1空間18の内部側に張り出した下向きの係合爪20aを有する。
【符号の説明】
【0022】
10 クランプ本体
10a 内周面
12 蓋体
12a 内周面
14 ヒンジ
16 ロック用ソケット
18 第1空間
20 ロック片
22 第2空間
24 ロック片
26 案内壁
28 ロック用挿入部
32 ブラケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に用いるケーブル用クランプに関し、特にワイヤハーネスを挿通させたコルゲートチューブなどの外周を把持し、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のケーブル用クランプは、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、クランプ本体と蓋体とにおける相互の一端部がヒンジで連結されているとともに、クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられている。ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所(車体)から突出したブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられている。第1空間には、ロック用挿入部をロック用ソケットの上方側から挿入することで、該ロック用挿入部とロックするロック片が設けられている。また第2空間には、ブラケットをロック用ソケットの下方側から挿入することで、該ブラケットとロックするロック片が設けられている。
ワイヤハーネスなどのケーブルを車体側に配線するときは、ケーブルを挿通させたコルゲートチューブなどの外周をクランプ本体と蓋体との半円環状の内周面によって把持し、蓋体のロック用挿入部をロック用ソケットの第1空間に挿入してロックする。この状態において、ロック用ソケットの第2空間にケーブル配線箇所のブラケットを挿入してロックすることにより、クランプがケーブル配線箇所に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−143309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、ロック用ソケット内を第1空間と第2空間とに分けている隔壁の一部によって第1空間のロック片が構成されている。そして、このロック片は、第1空間に対して蓋体のロック用挿入部が挿入されることによって第2空間の側に撓むようになっている。このため、第1空間のロック片の撓み量を考慮して第1空間と第2空間との間隔を設定しなければならず、特に第2空間にブラケットを導くための案内壁が両空間の境界部に設けられている場合、第2空間がクランプ本体から大きく離れることになる。この結果、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法(オフセット量)が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ケーブル配線箇所に設けられたブラケットをロック用ソケットの第2空間に導くための案内壁が両空間の境界部に設けられたタイプであっても、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備え、これらの半円環状の内周面によってケーブルの外周を把持した状態で相互の他端部同士をロックし、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプであって、クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられている。
ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられている。これらの第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁が設けられている。両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片がそれぞれ設けられている。第1空間のロック片は、ロック用ソケットにおいてクランプ本体の内周面に連なる側の壁に設けられ、かつ、第1空間に対するロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されている。
【0007】
この構成においては、ロック用ソケットにおける第1空間のロック片を第2空間とは反対方向へ撓むようにしたことにより、該ロック片の撓み量を考慮して第1空間と第2空間との距離を大きく確保する必要がない。したがって、ブラケットを第2空間に導くための案内壁が両空間の境界部に設けられたタイプであっても、クランプ本体と蓋体とで把持されたケーブルの軸心とブラケットとの間の寸法を小さく設定できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、第1空間のロック片が、蓋体のロック用挿入部に係合する係合爪を備えている。また、この係合爪の両側において、抜き取り方向の荷重を受けたときのロック用挿入部に接触してロック片の反り返りを防止するストッパーを備えている。
【0009】
このように、第1空間のロック片が係合爪の両側においてストッパーを備えていることにより、例えばストッパーを係合爪の先端側に設けた場合と比較して、ロック片の撓み動作に伴うストッパーの移動軌跡がコンパクトとなり、クランプ自体も小型になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ケーブル用クランプを表した斜視図。
【図2】ケーブル用クランプを表した平面図。
【図3】ケーブル用クランプを表した左側面図。
【図4】ケーブル用クランプを表した右側面図。
【図5】図2のA-A矢視方向の断面図。
【図6】図5の一部を拡大して表した断面図。
【図7】図5のB-B矢視方向の断面図。
【図8】図5のC-C矢視方向の断面図。
【図9】ケーブル用クランプにより大径ケーブルを把持した状態の断面図。
【図10】ケーブル用クランプにより小径ケーブルを把持した状態の断面図。
【図11】ロック構造の変更例を図6と対応させて表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面で示すケーブル用クランプは、車両のボデー等に対して配線されるケーブルの一例としてワイヤハーネス等を挿通させたコルゲートチューブ30を把持し(図9あるいは図10)、その状態で車両のボデー側に装着される形式のものである。
クランプは、合成樹脂による一体成形品であって、それぞれ半円環状の内周面10a,12aを有するクランプ本体10と蓋体12とを備えている。これらクランプ本体10および蓋体12における相互の一端部は、可撓性を有する薄肉のヒンジ14で連結されている。そして、クランプ本体10の他端部にはロック用ソケット16が成形され、蓋体12の他端部にはロック用挿入部28が成形されている。
【0012】
クランプ本体10および蓋体12における半円環状の内周面10a,12aは、コルゲートチューブ30の外周を分担して挟み込む部分であり、これらの内周面10a,12aには、係止リブ10b,12bがそれぞれ3列ずつ設けられている(図1および図2)。これらの各係止リブ10b,12bは、図9あるいは図10で示すようにクランプ本体10および蓋体12によってコルゲートチューブ30の外周を挟み込んで把持したときに、該コルゲートチューブ30の外周の環状溝に噛み合う。これにより、クランプとコルゲートチューブ30とが長さ方向へ相対的にずれ動くのを防止することができる。
【0013】
クランプ本体10のロック用ソケット16は、例えば図5および図6で示すように上下両面で開口した中空形状をしており、その内部は第1空間18と第2空間22とに分かれている。第1空間18に対しては、蓋体12のロック用挿入部28がロック用ソケット16の上側から挿入される。また、第2空間22に対しては、ケーブル配線箇所である車両ボデー等に固定されたブラケット32(例えば図1)がロック用ソケット16の下側から挿入される。
第1空間18と第2空間22との境界部には、ブラケット32の挿入を第2空間22に導くための案内壁26が位置している。この案内壁26は、ロック用ソケット16の少なくとも下部側では両空間18,22の幅方向の全域にわたって連続している(図8)。
【0014】
第1空間18の内部において、クランプ本体10の内周面10aに連なる側の壁の一部にはロック片20が構成されている。このロック片20は、図5および図6の下側が自由端になっているとともに、図面の左方向、つまり第2空間22とは反対方向へ撓むことができる。また、ロック片20は、その自由端側において第1空間18の内部側に張り出した下向きの係合爪20aと、この係合爪20aの両側に位置するストッパー20bとを有する。
第2空間22の内部において、ロック用ソケット16の外方側の壁はロック片24となっている。このロック片24は、図5および図6の上側が自由端になっているとともに、図面の右方向、つまりロック用ソケット16の外方向へ撓むことができる。そして、ロック片24の自由端寄りには、第2空間22の内部側に張り出した上向きの係合爪24aが設けられている。
【0015】
蓋体12のロック用挿入部28には、ロック用ソケット16の第1空間18に対する挿入方向に沿って2個の係合孔28a,28bが開けられている。そこで、ロック用ソケット16の第1空間18にロック用挿入部28が挿入されると、最初に先端寄りの係合孔28aがロック片20の係合爪20aに係合し(図9)、さらにロック用挿入部28が挿入されると、つぎの基端寄りの係合孔28bが係合爪20aに係合する(図10)。
なお、ロック用ソケット16の第2空間22にブラケット32が挿入されると、このブラケット32に開けられている係合孔32aがロック片24の係合爪24aに係合する(図9および図10)。
【0016】
つづいて、クランプの使用手順を該クランプで把持しようとするコルゲートチューブ30が比較的大径の場合を例にとって説明する。
まず、クランプ本体10の内周面10aにコルゲートチューブ30をセットした後、蓋体12をヒンジ14回りに閉じるように操作し、そのロック用挿入部28をロック用ソケット16の第1空間18に上側から挿入する。このときのロック用挿入部28は、第1空間18のロック片20を第2空間22とは反対方向へ押し撓めながら進行する。そして、ロック用挿入部28の先端寄りの係合孔28aがロック片20の係合爪20aと合致したところで、前述のように係合爪20aと係合孔28aとが互いに係合し、ロック用挿入部28がその挿入位置でロック用ソケット16側にロックされる(図9)。この結果、コルゲートチューブ30はクランプ本体10および蓋体12の内周面10a,12aで把持された状態に保持される。
【0017】
なお、コルゲートチューブ30が比較的小径の場合には、蓋体12のロック用挿入部28がロック用ソケット16の第1空間18に対して図9の状態よりも多く挿入される。これにより、前述の場合と同様にロック用挿入部28がロック片20を押し撓めながら進行し、今度はロック用挿入部28の基端寄りの係合孔28bがロック片20の係合爪20aに係合する。したがって、ロック用挿入部28は図10で示す挿入位置でロック用ソケット16側にロックされ、小径のコルゲートチューブ30もクランプ本体10および蓋体12の内周面10a,12aで適正に把持される。
【0018】
つぎに、図9および図10で示すように車両ボデー等のブラケット32がロック用ソケット16の第2空間22に下側から挿入される。これにより、前述のようにブラケット32の係合孔32aが第2空間22におけるロック片24の係合爪24aに係合し、該ブラケット32がその挿入位置でロック用ソケット16側にロックされる。この結果、クランプが車両ボデー等に装着され、コルゲートチューブ30(ワイヤハーネス)が所定の配線状態に保持される。
また、ロック用ソケット16における両空間18,22の境界部に設けられた案内壁26により、ブラケット32は第2空間22に向けて適正に導かれ、ロック用ソケット16の第1空間18にブラケット32が誤って挿入されるのを防止することができる。
【0019】
例えば図9で示すようにクランプ本体10および蓋体12でコルゲートチューブ30を把持した状態において、ロック用挿入部28に抜き取り方向の荷重が作用すると、第1空間18のロック片20は、係合爪20aと係合孔28aとの係合部を通じて第2空間22側へ撓む方向の力を受ける。これを許容すると、ロック片20が反り返って係合爪20aと係合孔28aとの係合(ロック)が外れ、ロック用挿入部28が第1空間18から抜けることになる。このことは、図10で示す把持状態においても同様である。
しかし、本実施の形態においては、ロック用挿入部28が抜き取り方向の荷重を受けると、ロック片20のストッパー20bがロック用挿入部28の係合孔28a(あるいは係合孔28b)の両側に接触し、ロック片20が反り返るのを防止する。そして、このストッパー20bは、係合爪20aの両側に位置していることから、該ロック片20の先端側にストッパーが設けられた構成と比較して、ロック片20の撓み動作に伴うストッパー20bの回動半径が小さく、その移動軌跡がコンパクトに収まる。
【0020】
既に述べたように、第1空間18のロック片20を第2空間22とは反対方向へ撓むようにしているので、該ロック片20の撓みが第2空間22側に影響を及ぼすことはない。このため、第1空間18と第2空間22との距離は、ロック片20の撓み量を考慮することなく、可能な限り小さく設定することができる。これにより、第1空間18と第2空間22との境界部に案内壁26が設けられているタイプであっても、図9あるいは図クランプ本体10におけるコルゲートチューブ30の軸心とブラケット32との間の寸法を小さくすることが可能になる。
【0021】
第1空間18のロック片20については、図11で示すようにクランプ本体10の内周面10aに連なる側の壁の一部において、図面上側が自由端になった構成に代えることも可能である。この構成のロック片20も、第2空間22の反対方向へ撓むことができるとともに、第1空間18の内部側に張り出した下向きの係合爪20aを有する。
【符号の説明】
【0022】
10 クランプ本体
10a 内周面
12 蓋体
12a 内周面
14 ヒンジ
16 ロック用ソケット
18 第1空間
20 ロック片
22 第2空間
24 ロック片
26 案内壁
28 ロック用挿入部
32 ブラケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備え、これらの半円環状の内周面によってケーブルの外周を把持した状態で相互の他端部同士をロックし、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプであって、
クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられ、ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられ、これらの第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁が設けられ、両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片がそれぞれ設けられ、第1空間のロック片は、ロック用ソケットにおいてクランプ本体の内周面に連なる側の壁に設けられ、かつ、第1空間に対するロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されているケーブル用クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたケーブル用クランプであって、
第1空間のロック片が、蓋体のロック用挿入部に係合する係合爪を備えているとともに、この係合爪の両側において、抜き取り方向の荷重を受けたときのロック用挿入部に接触してロック片の反り返りを防止するストッパーを備えているケーブル用クランプ。
【請求項1】
相互の一端部がヒンジで連結されたクランプ本体と蓋体とを備え、これらの半円環状の内周面によってケーブルの外周を把持した状態で相互の他端部同士をロックし、その状態でケーブル配線箇所のブラケットに装着されるケーブル用クランプであって、
クランプ本体の他端部にロック用ソケットが設けられ、蓋体の他端部にロック用挿入部が設けられ、ロック用ソケットの内部は、蓋体のロック用挿入部の挿入が可能な第1空間と、ケーブル配線箇所のブラケットの挿入が可能な第2空間とに分けられ、これらの第1空間と第2空間との境界部に、ブラケットの挿入を第2空間に導くための案内壁が設けられ、両空間には、ロック用挿入部およびブラケットを個々の挿入位置でロックするロック片がそれぞれ設けられ、第1空間のロック片は、ロック用ソケットにおいてクランプ本体の内周面に連なる側の壁に設けられ、かつ、第1空間に対するロック用挿入部の挿入によって第2空間とは反対方向へ撓むように設定されているケーブル用クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたケーブル用クランプであって、
第1空間のロック片が、蓋体のロック用挿入部に係合する係合爪を備えているとともに、この係合爪の両側において、抜き取り方向の荷重を受けたときのロック用挿入部に接触してロック片の反り返りを防止するストッパーを備えているケーブル用クランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−147309(P2011−147309A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8083(P2010−8083)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]