説明

ゲート絶縁層用樹脂組成物

【課題】ゲート絶縁層を形成する材料を改良することにより有機電界効果トランジスタのヒステリシスを小さくする有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物と、(B)架橋剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層を形成するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果トランジスタは、無機半導体より低温プロセスで製造できるため、基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を作製することができる。また、有機材料を含む溶液の塗布や印刷法を用いた成膜により素子作製が可能な場合があり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。さらに、トランジスタの検討に用いることができる材料の種類が豊富であるため、分子構造の異なる材料を検討に用いれば、容易に材料特性を根本的に変化させることが可能である。そのため、異なる機能を有する材料を組み合わせることで、無機半導体では不可能なフレキシブルな機能、素子等を実現することも可能である。
【0003】
電界効果トランジスタでは、ゲート電極に印加される電圧がゲート絶縁層を介して半導体層に作用して、ドレイン電流のオン、オフを制御する。そのため、有機電界効果トランジスタに用いられるゲート絶縁膜材料には、絶縁性及び薄膜にしたときの絶縁破壊強度に優れた特性が要求される。また、特にボトムゲート型の電界効果トランジスタでは半導体層がゲート絶縁層に重ねて形成される。そのため、ゲート絶縁膜材料には、有機半導体と良好な界面を形成するための有機半導体との親和性、半導体との界面を形成する膜表面の平坦さ等の特性も要求される。
【0004】
これまで、有機電界効果トランジスタに用いられるゲート絶縁膜材料については、種々の材料について検討が行われてきたが、近年では、層形成に高温条件や複雑な設備を必要としない有機材料を利用する技術が注目されている。
【0005】
特許文献1には、有機薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁膜材料としてエポキシ樹脂とシランカップリング剤とを組み合わせて用いることが記載されている。ゲート絶縁膜材料の吸湿性が高いとトランジスタ性能の安定性に問題があることから、この課題を解決するために、エポキシ樹脂の硬化反応の際に生成する水酸基とシランカップリング剤を反応させたものである。
【0006】
非特許文献1には、ポリビニルフェノールとメラミン化合物とを熱架橋させた樹脂をゲート絶縁膜に用いることが記載されている。メラミン化合物で架橋することによってポリビニルフェノールに含まれる水酸基を除去し、同時に膜強度を高めたものである。このゲート絶縁膜を有するペンタセンTFTはヒステリシスが小さく、ゲートバイアス応力に対して耐久性を示す。
【0007】
非特許文献2には、ポリビニルフェノール及びビニルフェノールとメチルメタクリレートとを共重合させたコポリマーをゲート絶縁膜に用いることが記載されている。ビニルフェノールの水酸基をメチルメタクリレートのカルボニル基と相互作用させて膜全体の極性を低下させたものである。このゲート絶縁膜を有するペンタセンTFTはヒステリシスが小さく、安定した電気特性を示す。
【0008】
しかしながら、有機ELのような発光素子を駆動するなど実用化を考慮すると、有機薄膜トランジスタの動作精度はより向上される必要があり、上記従来のゲート絶縁膜ではヒステリシスの低下効果が未だ不十分である。
【特許文献1】特開2007−305950
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.89,093507(2006)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.92,183306(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ゲート絶縁層を形成する材料を改良することにより有機電界効果トランジスタのヒステリシスを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の事に鑑み、種々検討を行った結果、フッ素を含む特定の樹脂組成物でゲート絶縁層を形成することにより、有機薄膜トランジスタの特性、特にヒステリシスを改良できることを見出し、本発明に到った。
【0011】
即ち、本発明は第一に、(A)下記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物と、(B)架橋剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。Rは、水素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rcは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、eおよびgは、同一又は相異なり、1〜5の整数を表し、fは、0〜20の整数を表す。R、R、Rc、gが各々複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0014】
本発明は第二に、高分子化合物が、下記一般式(2−1)で表される基及び下記一般式(2−2)で表される基を含むことを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Raは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、bは、0〜20の整数を表す。Raが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Rbは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、dは、0〜20の整数を表す。R、R、Rc、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。Rbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0019】
本発明は第三に、高分子化合物が、下記一般式(2−3)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2−4)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R1、R〜R、Ra、bは、前述と同じ意味を表す。)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R、R、R、Rb、Rc、d、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。)
【0024】
本発明は第四に、高分子化合物が、式(2−3)で表される繰り返し単位及び式(2−4)で表される繰り返し単位からなることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0025】
本発明は第五に、高分子化合物が、ポリオルガノシロキサン樹脂であることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0026】
本発明は第六に、架橋剤が、メラミン化合物、ユリア化合物および電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を2個以上含有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0027】
本発明は第七に、電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基が、下記一般式(3)で表される基および下記一般式(4)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の基であることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁膜用樹脂組成物を提供する。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
(式(3)および(4)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、R10〜R14は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【0031】
本発明は第八に、メラミン化合物が、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R15〜R20は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【0034】
【化9】

【0035】
(式中、R21〜R24は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。nは2以上の整数を表す。)
【0036】
本発明は第九に、ユリア化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、R25〜R28は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【0039】
本発明は第十に、前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物をゲート絶縁層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタを提供する。
【0040】
本発明は第十一に、前記有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を含むディスプレイ用部材を提供する。
【0041】
本発明は第十二に、前記記載のディスプレイ用部材を含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明のゲート絶縁層用樹脂組成物は、フェノール性水酸基がエーテル結合に変換され、同時にフッ素原子が導入された構造の基を有している。更に、組成物中に存在する活性水素含有基は架橋剤との反応に供されて除去される。そのために、ゲート絶縁層は全体として極性が低下し、ゲート電圧が印加されてもゲート絶縁層の分極が抑制される。その結果、有機電界効果トランジスタのヒステリシスが低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数個繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。一方、「低分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位を繰り返し有していない化合物を意味する。
【0044】
本発明のゲート絶縁層用樹脂組成物は、(A)前記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物と、(B)架橋剤とを含有してなることが特徴である。高分子化合物(A)は分子中に架橋剤(B)の官能基と反応する官能基、例えば、水酸基のような活性水素含有基を複数有している。
【0045】
高分子化合物(A)
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物において、式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。ある一形態では、Rは水素原子である。Rは水素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。ある一形態では、Rは水素原子である。R及び/又はRが一価の有機基である場合、この一価の有機基中の水素原子は一部又は全部フッ素原子で置換されていてもよい。また、一価の有機基の炭素数は3〜20であってよく、3〜6であってよい。
【0046】
Rcは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。ある一形態では、Rcはメチレン基である。eおよびgは、同一又は相異なり、1〜5の整数を表す。ある一形態ではeは1であり、gは5である。fは、0〜20の整数を表し、ある一形態では1である。
【0047】
該炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基は、これらの基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基は、基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0048】
炭素数1〜20の一価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、エテニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基などが挙げられる。
炭素数炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0049】
該炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0050】
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピルレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基などが挙げられる。
【0051】
本発明に用いられる高分子化合物が有していてもよい式(2−1)で表される基において、式(2−1)中のR〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。ある一形態では、R〜Rは水素原子である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、ある一形態では、水素原子又はメチル基である。Raは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、bは、0〜20の整数を表す。ある一形態では、bは0である。ここで、炭素数1〜20の一価の有機基としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられ、炭素数1〜20の二価の有機基としては、前述のRcで表される炭素数1〜20の二価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる高分子化合物が有していてもよい式(2−2)で表される基において、式(2−2)中のRは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、ある一形態では、水素原子又はメチル基である。Rbは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、dは、0〜20の整数を表す。ある一形態では、dは0である。R、R、Rc、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。ここで、炭素数1〜20の一価の有機基としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられ、炭素数1〜20の二価の有機基としては、前述のRcで表される炭素数1〜20の二価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0053】
本発明に用いられる高分子化合物が有していてもよい式(2−3)で表される繰り返し単位において、式(2−3)中のR、R〜R、Ra、bは、前述と同じ意味を表す。
【0054】
本発明に用いられる高分子化合物が有していてもよい式(2−4)で表される繰り返し単位において、式(2−4)中のR、R、R、Rb、Rc、d、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。
【0055】
本発明に用いられる高分子化合物の好ましい一つの態様は、式(2−3)で表される繰り返し単位および式(2−4)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物である。
【0056】
本発明に用いられる高分子化合物は、式(2−3)で表される繰り返し単位、式(2−4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。式(2−3)で表される繰り返し単位、式(2−4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、式(2−5)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R'は水素原子又はメチル基を表す。R''は、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。)
【0059】
R''で表される炭素数1〜20の一価の有機基としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0060】
本発明に用いられる高分子化合物の他の好ましい態様としては、式(2−3)で表される繰り返し単位、式(2−4)で表される繰り返し単位および式(2−5)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物である。
【0061】
本発明に用いられる高分子化合物の数平均分子量は、5×10〜1×10が好ましい。ある一形態では、標準ポリスチレンから求めた高分子化合物の重量平均分子量が5×10〜5×10、好ましくは5×10〜1×10である。高分子化合物の分子量が小さすぎると耐溶剤性が低くなる傾向があり、大きすぎると高分子化合物の溶解性が低下する傾向がある。
【0062】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物は、分子内にフェノール性水酸基有する高分子化合物をアルカリ触媒存在下、フッ素化ベンジルハロゲン化物と反応させる方法、分子内にフェノール性水酸基を有する重合性モノマーをアルカリ触媒存在下、フッ素化ベンジルハロゲン化物と反応させた後、分子内にフェノール性水酸基を有する重合性モノマーと共重合する方法、分子内にフェノール性水酸基を有する重合性モノマーをアルカリ触媒存在下、フッ素化ベンジルハロゲン化物と反応させた後単独重合し、部分的にフッ素化ベンジル基を脱離させる方法等により製造することができる。
該分子内にフェノール性水酸基有する高分子化合物としては、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(4−アリルフェノール)等が挙げられる。
該アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムエトキサイド等が挙げられる。
【0063】
該フッ素化ベンジルハロゲン化物としては、2−フルオロベンジルクロライド、3−フルオロベンジルクロライド、4−フルオロベンジルクロライド、2,3−ジフルオロベンジルクロライド、2,4−ジフルオロベンジルクロライド、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルクロライド、2−フルオロベンジルブロマイド、3−フルオロベンジルブロマイド、4−フルオロベンジルブロマイド、2,3−ジフルオロベンジルブロマイド、2,4−ジフルオロベンジルブロマイド、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルブロマイド、2−フルオロベンジルアイオダイド、3−フルオロベンジルアイオダイド、4−フルオロベンジルアイオダイド、2,3−ジフルオロベンジルアイオダイド、2,4−ジフルオロベンジルアイオダイド、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルアイオダイド等が挙げられる。
該分子内にフェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、4−ビニルフェノール、4−アリルフェノール、2,4−ジヒドロキシスチレン、2,4−ジヒドロキシアリルベンゼン等が挙げられる。
【0064】
前記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物としては、例えば、ポリ[4−ビニルフェノール−コ−4−(4'−フルオロベンジルオキシ)スチレン]、ポリ[4−ビニルフェノール−コ−4−(ペンタフルオロベンジルオキシ)スチレン]等が挙げられる。
【0065】
一般式(1)で表される基は、フェノール性水酸基がエーテル結合に変換されて遊離の水酸基が除去され、同時に骨格にフッ素原子が導入されている。更に、組成物中に存在する活性水素含有基は架橋剤との反応に供されて除去される。そのために、ゲート絶縁層は全体として極性が低く、ゲート電圧が印加されても分極し易い成分が少なく、ゲート絶縁層の分極が抑制されると考えられる。ゲート絶縁層の分極が抑制されると、有機電界効果トランジスタのヒステリシスが低下して、動作精度が向上する。
【0066】
高分子化合物に導入されるフッ素の量は、高分子化合物の質量に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%になるように調節される。フッ素の量が1質量%未満であると有機電界効果トランジスタのヒステリシスを低下させる効果が不十分となることがあり、60質量%を超えると有機半導体材料との親和性が悪化して活性層をその上に積層することが困難になることがある。
【0067】
高分子化合物の分子内に、フェノール性水酸基のような活性水素含有基と一般式(1)で表される基とが共存している場合、活性水素含有基と一般式(1)で表される基との割合はモル比で、好ましくは10/90〜95/5、より好ましくは20/80〜95/5、さらに好ましくは30/70〜95/5である。この割合が95/5を超えるとヒステリシスを低下させる効果が不十分となり、10/90未満であると有機半導体材料との親和性が悪化して活性層を絶縁層上に積層することが困難となることがある。
【0068】
架橋剤(B)
本発明に用いられる架橋剤は、メラミン化合物、ユリア化合物および電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を2個以上含有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。
【0069】
該電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基としては、ブロック化剤でブロックされたイソシアネート基またはブロック化剤でブロックされたイソチオシアネート基等が挙げられる。
前記ブロック化剤でブロックされたイソシアネート基またはブロックされたイソチオシアネート基は、イソシアネート基またはイソチオシアネート基と反応しうる活性水素を1分子中に1個だけ有するブロック化剤とイソシアネート基またはイソチオシアネート基とを反応させることにより製造すること出来る。
【0070】
前記ブロック剤としては、イソシアネート基またはイソチオシアネート基と反応してブロック化剤でブロックされたイソシアネート基またはブロック化剤でブロックされたイソチオシアネート基が生成した後でも、170℃以下の温度で解離するものが好ましい。
【0071】
前記のブロック化剤としては、例えば、アルコ−ル系化合物、フェノ−ル系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミド系化合物、重亜硫酸塩、ピリジン系化合物、ピラゾール系化合物等が挙げられる。これらを単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。好ましくは、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物が挙げられる。
【0072】
具体的なブロック化剤としては、アルコ−ル系化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。活性メチレン系化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、メルカプタン系としてブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。酸アミド系化合物としては、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等が挙げられる。酸イミド系化合物としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。アミン系化合物としては、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等が挙げられる。イミン系化合物としては、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。ピリジン系化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。オキシム系化合物としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。ピラゾール系化合物としては、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等が挙げられる。
【0073】
本発明に用いられるブロックされたイソシアネート基またはブロックされたイソチオシアネート基としては、式(3)で表されるブロックされたイソシアネート基および式(4)で表されるブロックされたイソチオシアネート基が好ましい。
【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
式(3)および(4)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、R10〜R14は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。R10〜R14で表される炭素数1〜20の一価の有機基としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0077】
ブロックされたイソシアネート基としては、例えば、O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ基、(N−3,5−ジメチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−メチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3,5−ジエチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−プロピル−5−メチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−プロピルピラゾリルカルボニル)アミノ基等が挙げられる。
【0078】
ブロックされたイソチオシアネート基としては、例えば、O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ] チオカルボキシアミノ基、(N−3,5−ジメチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3,5−ジエチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−プロピル−5−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−プロピルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基等が挙げられる。
【0079】
本発明に用いることができる電磁線もしくは熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を分子内に2つ以上含有する化合物は、前記ブロックされたイソシアネート基もしくはブロックされたイソチオシアネート基と不飽和二重結合を分子内に有するモノマーを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて、単独重合もしくは他の重合しうるモノマーと共重合させることにより製造することができる。
【0080】
該ブロックされたイソシアネート基もしくはブロックされたイソチオシアネート基と不飽和二重結合を分子内に有するモノマーとしては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2'−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、2−(2'−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0081】
ブロックするためのブロック剤としては、前記のブロック剤を好適に用いることができ、必要に応じて有機溶媒、触媒等を添加することができる。
【0082】
前記ブロックされたイソシアネート基と不飽和二重結合を分子内に有するモノマーとしては、2−〔O−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート、2−〔N−[1'、3'−ジメチルピラゾリル]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート等が挙げられる。
【0083】
該光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノンまたはチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物等が挙げられる。
【0084】
該熱重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となるものであればよく、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類等が挙げられる。
【0085】
電磁線により脱ブロックするブロック剤としては、オルト−ニトロベンジル基、α、α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル基等が挙げられる。
該電磁線により脱ブロックするブロック剤でブロックされたイソシアネート化合物としては、1,2−ジ(オルト−ニトロベンジルカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3−ジ(オルト−ニトロベンジルカルボニルアミノ)ベンゼン、1,4−ジ(オルト−ニトロベンジルカルボニルアミノ)ベンゼン、1,2−ビス[α−(α、α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ビス[α−(α、α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ビス[α−(α、α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)カルボニルアミノ]ベンゼン、2−(オルト−ニトロベンジルカルボニルアミノ)エチル−メタクリレート、2−[α−(α、α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)カルボニルアミノ]エチル−メタクリレート等が挙げられる。
【0086】
該他の重合しうるモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステルおよびその誘導体、メタアクリル酸エステルおよびその誘導体、スチレンおよびその誘導体、酢酸ビニルおよびその誘導体、アクリロニトリルおよびその誘導体、メタアクリロニトリルおよびその誘導体、有機カルボン酸のビニルエステルおよびその誘導体、有機カルボン酸のアリルエステルおよびその誘導体、フマル酸のジアルキルエステルおよびその誘導体、マレイン酸のジアルキルエステルおよびその誘導体、イタコン酸のジアルキルエステルおよびその誘導体、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、マレイミドおよびその誘導体、末端不飽和炭化水素およびその誘導体、有機ゲルマニウム誘導体等が挙げられる。
【0087】
アクリル酸エステル類およびその誘導体としては、単官能のアクリレートや、使用量に制約は出てくるが多官能のアクリレートをも使用することができ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート等を挙げることができる。
【0088】
メタアクリル酸エステル類およびその誘導体としては、単官能のメタアクリレートや、使用量に制約は出てくるが多官能のメタアクリレートをも使用することができ、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−sec−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジメタアクリレート、プロピレングリコールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパンジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミド2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート、等を挙げることができる。
【0089】
スチレンおよびその誘導体としては、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−
α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン、4−アミノスチレン、4−トリフルオロメチルスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン等が挙げられる。
【0090】
アクリルニトリルおよびその誘導体としては、アクリロニトリル等が挙げられる。メタアクリルニトリルおよびその誘導体としては、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0091】
有機カルボン酸のビニルエステルおよびその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等が挙げられる。
【0092】
有機カルボン酸のアリルエステルおよびその誘導体としては、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0093】
フマル酸のジアルキルエステルおよびその誘導体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等が挙げられる。
【0094】
マレイン酸のジアルキルエステルおよびその誘導体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0095】
イタコン酸のジアルキルエステルおよびその誘導体としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0096】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0097】
マレイミドおよびその誘導体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0098】
末端不飽和炭化水素およびその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0099】
有機ゲルマニウム誘導体としては、アリルトリメチルゲルマニウム、アリルトリエチルゲルマニウム、アリルトリブチルゲルマニウム、トリメチルビニルゲルマニウム、トリエチルビニルゲルマニウム等が挙げられる。
【0100】
これらのうちでは、アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アリルトリメチルゲルマニウムが好ましい。
【0101】
ブロックされたイソシアネート基もしくはブロックされたイソチオシアネート基と不飽和二重結合を分子内に有するモノマーの仕込みモル比は、全ての重合に関与するモノマー中、好ましくは5モル%以上60モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上50モル%以下である。
【0102】
本発明に用いることができる熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を分子内に2つ以上含有する化合物は、高分子化合物であってもよく、重量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、5000〜500000であることがより好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0103】
本発明に用いることができる電磁線もしくは熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を分子内に2つ以上含有する高分子化合物としては、例えば、ポリ(スチレン−コ−[2−〔O−(1'−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−[2−〔1'−(3'、5'−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1'−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1'−(3'、5'−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1'−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1'−(3'、5'−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート] −コ−アリルトリメチルゲルマニウム)等が挙げられる。
【0104】
本発明に用いることができる分子内に電磁線もしくは熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を2つ以上含有する化合物は、低分子化合物であってもよく、分子内にイソシアネート基もしくはイソチオシアネート基を2つ以上有する低分子化合物と前記ブロック化剤を反応させることにより製造することができる。製造する際、適宜有機溶媒、触媒等を加えても良い。
【0105】
前記分子内にイソシアネート基もしくはイソチオシアネート基を2つ以上有する低分子化合物としては、オルト−フェニレンジイソシアネート、メタ−フェニランジイソシアネート、パラ−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0106】
該分子内に電磁線もしくは熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を2つ以上含有する低分子化合物としては、1,2−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3',5'−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3',5'−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ブタン、1,4−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ブタン、1,6−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ヘキサン、1,6−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ヘキサン、1,2−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1'−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ] チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ] チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−[1'−メチルプロピリデンアミノ] チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3',5'−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−エチル−5'−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3',5'−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3',5'−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3',5'−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−プロピル−5'−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1'−(3'−エチル−5'−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ブタン、1,4−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ブタン、1,6−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ヘキサン、1,6−ジ[O−(1'−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ヘキサン等が挙げられる。
【0107】
本発明で用いることができるメラミン化合物としては、下記一般式(5)で表されるメラミン化合物および下記一般式(6)で表されるメラミン化合物が好適である。メラミン化合物を使用すると耐熱性のよい絶縁層が得られる傾向にあるからである。
【0108】
【化14】

【0109】
【化15】

【0110】
式(5)および式(6)中、R15〜R24で表される基が炭素数1〜20の一価の有機基である場合、その具体例としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられる。炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0111】
式(6)中、nは2以上の整数を表す。好ましくは2〜10000である。
【0112】
該メラミン化合物としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ポリ(メラミン−コ−ホルムアルデヒド)メチル化物、ポリ(メラミン−コ−ホルムアルデヒド)メチル化物等が挙げられる。
【0113】
本発明で用いることができるユリア化合物としては、下記一般式(7)で表されるユリア化合物が好適である。ユリア化合物を使用すると保存安定性のよい絶縁層用樹脂組成物が得られる傾向にあるからである。
【0114】
【化16】

【0115】
式(7)中、R25〜R28で表される基が炭素数1〜20の一価の有機基である場合、その具体例としては、前述のRおよびRで表される炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基が挙げられる。炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0116】
該ユリア化合物としては、テトラメトキシメチルグリコルユリア、テトラエトキシメチルグリコルユリア等が挙げられる。
【0117】
ゲート絶縁用樹脂組成物
高分子化合物(A)と架橋剤(B)とを混合することにより本発明のゲート絶縁層用樹脂組成物が得られる。両者の混合割合は、高分子化合物に含まれる架橋剤と反応する官能基(例えば、水酸基のような活性水素含有基)と架橋剤の官能基とがモル比で、好ましくは30/70〜95/5、より好ましくは40/60〜90/10、さらに好ましくは45/55〜85/15となるように調節される。この割合が95/5を超えると耐溶媒性が不十分となることがあり、30/70未満であるとヒステリシス低下の効果が小さいことがある。
【0118】
このゲート絶縁層用樹脂組成物には、混合や粘度調節のための溶媒や、樹脂を架橋させる際に架橋剤と組み合わせて通常用いられる添加剤などを含有させてよい。使用される溶媒はテトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒、ペンテン等の不飽和炭化水素系溶媒、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ブチルアセテートなどのアセテート系溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒またはこれらの混合溶媒である。また、添加剤としては、架橋反応を促進するための触媒、レべリング剤、粘度調節剤などを用いることができる。
【0119】
有機薄膜トランジスタ
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6とが、備えられている。
【0120】
本発明の有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に有機半導体層を形成し、有機半導体層上にソース電極、ドレイン電極を形成することで製造することができる。
【0121】
ゲート絶縁層の形成は、ゲート絶縁用樹脂組成物に更に要すれば溶媒などを添加して絶縁層塗布液を調製し、これをゲート電極上に塗布、乾燥、硬化させることにより行う。該絶縁層塗布液に用いられる有機溶媒としては、高分子化合物ならびに架橋剤を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が100℃〜200℃の有機溶媒である。該有機溶媒としては、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。該絶縁層塗布液には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤、硬化触媒等を添加することができる。
【0122】
該絶縁層塗布液は公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート電極上に塗布することができる。
【0123】
ゲート絶縁層上には、自己組織化単分子膜層を形成しても良い。該自己組織化単分子膜層は、例えば、有機溶媒中にアルキルクロロシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を1〜10重量%溶解した溶液でゲート絶縁膜を処理することにより形成することが出来る。
【0124】
該アルキルクロロシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等が挙げられる。
該アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0125】
基板1、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6及び有機半導体層4は、通常使用される材料及び方法で構成すればよい。例えば、基板の材料には樹脂やプラスチックの板やフィルム、ガラス板、シリコン板などが用いられる。電極の材料には、クロム、金、銀、アルミニウム等を用い、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法等公知の方法で形成する。
【0126】
有機半導体化合物としてはπ共役ポリマーが広く用いられ、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(P−フェニレンビニレン)類などを用いることができる。また、有機溶媒への溶解性を有する低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができる。
【0127】
有機半導体層の形成は、例えば、有機半導体化合物に要すれば溶媒などを添加して有機半導体塗布液を調製し、これをゲート絶縁層上に塗布、乾燥させることにより行う。本発明では、ゲート絶縁層を構成する樹脂がフェノキシ部分を有し、有機半導体化合物と親和性がある。それゆえ、上記塗布乾燥法によって、有機半導体層とゲート絶縁層との間に均一で平坦な界面が形成される。
【0128】
使用される溶媒としては有機半導体を溶解又は分散させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が50℃〜200℃のものである。該溶媒としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。該有機半導体塗布液は、前記絶縁層塗布液と同様に公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート絶縁層上に塗布することができる。
【0129】
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機薄膜トランジスタを保護し、また、表面の平滑性を高める目的で、オーバーコート材でコートしてもよい。
【0130】
本発明の有機トランジスタを用いて、好適に有機トランジスタを有するディスプレイ用部材を作製できる。該有機トランジスタを有するディスプレイ用部材を用いて、ディスプレイ用部材を備えるディスプレイを好適に作製できる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0132】
合成例1
ナトリウムエトキサイド(和光純薬製)1.04g、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬製)30ml、攪拌子を3方コックを取り付けた200ml三つ口フラスコに入れ、マグネチックスタータで攪拌してスラリーを調整した。得られたスラリーにポリビニルフェノール(和光純薬製、Mw=〜8000)7.35gを70mlの脱水テトラヒドロフランに溶解させた溶液を室温で滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌を続けた。得られたスラリーに2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルブロマイド(和光純薬製)7.99gを室温で滴下し、滴下終了後室温で6時間攪拌した。得られた反応混合物を1000mlのイオン交換水に滴下して粘稠な固体を得た。得られた固体を2−ヘプタノンに再溶解し、分液ロート中でイオン交換水で3回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後ロータリーエバポレータで濃縮し、ジエチルエーテル50mlで3回洗浄した後、減圧乾燥して淡黄色固体を得た。得られた固体を高分子化合物1とよぶ。高分子化合物1の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、13000であった(島津製GPC、Tskgel super HM-H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)。高分子化合物1をH1−NMRで解析した結果、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル基の導入量は、15モル%であった。
【0133】
合成例2
9,9-ジ-n- オクチルフルオレン-2,7- ジ(エチレンボロネート)6.40g、5,5'- ジブロモ-2,2'-バイチオフェン4.00gのトルエン(80mL)中の混合物に、窒素下においてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.18g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名Aliquat 336、Aldrich製、(登録商標)) 1.0g 、及び2Mの炭酸ナトリウム水溶液24mL を加えた。この混合物を激しく攪拌し、24時間還流して加熱した。粘稠な反応混合物をアセトン(500mL) に注ぎ、繊維状の黄色のポリマーを沈澱させた。このポリマーを濾過によって集め、アセトンで洗浄し、真空オーブンにおいて60℃で一晩乾燥させた。得られたポリマーを高分子化合物2とよぶ。高分子化合物2の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、61000であった(島津製GPC、Tskgel super HM-H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)。
【0134】
実施例1
高分子化合物1を1.00g、架橋剤としてN,N,N',N',N'',N''−ヘキサメトキシメチルメラミン(住友化学製)0.163g、熱酸発生剤(TAZ-108;みどり化学製)0.113g及び2−ヘプタノン7.00gを10mlのサンプル瓶に入れ、攪拌溶解して均一な塗布液を調製した。
【0135】
得られた塗布液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、クロム電極のついたガラス基板上にスピンコートした後、ホットプレート上で200℃で30分間焼成し、ゲート絶縁層を得た。
次に、高分子化合物2を溶媒であるクロロホルムに溶解して、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。
【0136】
得られた塗布液を、前記ゲート絶縁層上にスピンコート法により塗布し、約60nmの厚さを有する活性層を形成し、次いで、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、活性層上に、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極及びドレイン電極(活性層側から、フラーレン、金の順番で積層構造を有する)を形成することにより、電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0137】
<トランジスタ特性>
こうして作製した電界効果型有機薄膜トランジスタについて、ゲート電圧Vgを0〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて測定した結果を表1に示す。
有機薄膜トランジスタのヒステリシスは、ソース・ドレイン間電圧Vsdが−50Vで、ゲート電圧Vgを0V→−60Vに変化させた際の閾値電圧Vth1とゲート電圧Vgを−60V→0Vに変化させた際の閾値電圧Vth2との電圧差異で表した。
【0138】
比較例1
ポリビニルフェノール(アルドリッチ製、Mw=8000)1.00g、N,N,N',N',N'',N''−ヘキサメトキシメチルメラミン(和光純薬製)0.163g、熱酸発生剤(みどり化学(株)製、商品名:TAZ-108)0.113g、2−ヘプタノン7.00gを10mlのサンプル瓶に入れ、攪拌溶解して均一な塗布液を調製した。
【0139】
ゲート絶縁層の形成にこの塗布液を用いること以外は実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定し、評価した。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例の結果に示されるように、本発明のゲート絶縁用樹脂組成物を用いれば、ヒステリシスの小さい有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の一実施形態であるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0143】
1…基板、
2…ゲート電極、
3…ゲート絶縁層、
4…有機半導体層、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される基を含有する高分子化合物と、(B)架橋剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。Rは、水素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rcは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、eおよびgは、同一又は相異なり、1〜5の整数を表し、fは、0〜20の整数を表す。R、R、Rc、gが各々複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【請求項2】
高分子化合物が、下記一般式(2−1)で表される基及び下記一般式(2−2)で表される基を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【化2】

(式中、R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、水酸基又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Raは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、bは、0〜20の整数を表す。Raが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Rbは、炭素数1〜20の二価の有機基を表し、dは、0〜20の整数を表す。R、R、Rc、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。Rbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【請求項3】
高分子化合物が、下記一般式(2−3)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2−4)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【化4】

(式中、R、R〜R、Ra、bは、前述と同じ意味を表す。)
【化5】

(式中、R、R、R、Rb、Rc、d、e、f、gは、前述と同じ意味を表す。)
【請求項4】
高分子化合物が、式(2−3)で表される繰り返し単位及び式(2−4)で表される繰り返し単位からなることを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【請求項5】
高分子化合物が、ポリオルガノシロキサン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【請求項6】
架橋剤が、メラミン化合物、ユリア化合物および電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基を2個以上含有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【請求項7】
電磁線または熱により活性水素含有基と反応する官能基を生成する官能基が、下記一般式(3)で表される基および下記一般式(4)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の基であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁膜用樹脂組成物。
【化6】

【化7】

(式(3)および(4)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、R10〜R14は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【請求項8】
メラミン化合物が、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【化8】

(式中、R15〜R20は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【化9】

(式中、R21〜R24は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。nは2以上の整数を表す。)
【請求項9】
ユリア化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物。
【化10】

(式中、R25〜R28は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
【請求項10】
請求項1〜9に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物をゲート絶縁層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタ。
【請求項11】
請求項1〜9に記載の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層用樹脂組成物を含むディスプレイ用部材。
【請求項12】
請求項11に記載のディスプレイ用部材を含むディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−37462(P2010−37462A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203323(P2008−203323)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】