説明

ゲート装置

【課題】本体コストのアップや、メンテナンス等の維持管理にかかる運用コストのアップを抑え、且つ、駅ホームに設置する場合には、乗降客が駅ホームから線路内に落ちるのを十分に防止することができるゲート装置を提供する。
【解決手段】固定支柱11は、入出口の両側のそれぞれに立設している。可動支柱12は、固定支柱11毎に、この固定支柱11に対して上下方向にスライド自在に取り付けている。上側制止バー13、および下側制止バー14を、可動支柱12間に掛け渡している。垂直バー15は、一方の端部を下側制止バー14に取り付けた下側連結部材32に連結し、他方の端部を上側制止バー13に取り付けた上側連結部材31に連結することで、上側制止バー13と下側制止バー14との間に掛け渡している。この下側連結部材32は、下側制止バー14に対して回動自在に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入出口における人や車両等の通行を制限するゲート装置に関し、特に、駅ホームに設置し、乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道会社では、乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止するために、駅ホームの側端部に沿って落下防止柵を設置することを進めている。この落下防止柵として、例えば特許文献1に開示された可動柵がある。
【0003】
特許文献1に開示されている可動柵は、入出口の両側に固定支柱を立設している。また、固定支柱毎に、その固定支柱に対して上下方向にスライド自在に可動支柱を取り付けている。さらに、可動支柱間に、複数本の制止バーを上下方向に並べ、水平方向に掛け渡している。最上段の制止バーは、可動支柱に固定しているが、その他の制止バーは、可動支柱に対して上下方向にスライド自在に掛け渡している。
【0004】
この可動柵は、乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止する閉状態と、駅ホームに停車している列車に乗降する乗降客の通路を確保する開状態と、の間で状態を切り換える開閉動作を行う。閉状態は、可動支柱が固定支柱に対する下限位置に位置し、且つ、最上段以外の制止バーのそれぞれが可動支柱に対する下限位置に位置する状態である。また、開状態は、可動支柱が固定支柱に対する上限位置に位置し、且つ、最上段以外の制止バーのそれぞれが可動支柱に対する上限位置に位置する状態である。
【0005】
この可動柵は、閉状態であるとき、最上段の制止バーが駅ホームの床面から130cm程度の高さに位置し、最下段の制止バーが駅ホームの床面から60cm程度の高さに位置する。最上段の制止バーは、大人の乗降客が乗り越えて駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止する。また、最下段の制止バーは、幼児や車椅子利用者等の乗降客が、最上段の制止バーの下を通って、駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止する。
【0006】
また、この可動柵は、開状態であるとき、最下段の制止バーが駅ホームの床面から200cm程度の高さに位置し、駅ホームに停車している列車に乗降する乗降客の通行を妨げることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/024612号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、乗降客が、可動支柱間に上下方向に並べて掛け渡した隣接する2本の制止バー間を通り抜けて線路内に落下するのを防止するには、制止バーの本数を増やして隣接する2本の制止バー間の間隔を狭くする必要がある。制止バーの本数を増やすと、可動支柱に対して上下方向にスライドさせる制止バーの本数も増えることから、この構成が複雑になり、本体コストのアップや、メンテナンス等の維持管理にかかる運用コストをアップさせるという問題がある。
【0009】
この発明の目的は、本体コストのアップや、メンテナンス等の維持管理にかかる運用コストのアップを抑え、且つ、駅ホームに設置する場合には、乗降客が駅ホームから線路内に落ちるのを十分に防止することができるゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のゲート装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
固定支柱は、入出口の両側のそれぞれに立設している。可動支柱は、固定支柱毎に、この固定支柱に対して上下方向にスライド自在に取り付けている。また、上側制止部材、および下側制止部材を、可動支柱間に掛け渡している。可動支柱駆動部が、可動支柱を固定支柱に対して上下方向にスライドする。
【0012】
さらに、垂直制止部材は、一方の端部を下側制止部材に取り付けた下側連結部材に連結し、他方の端部を上側制止部材に取り付けた上側連結部材に連結することで、上側制止部材と下側制止部材との間に掛け渡している。この下側連結部材は、下側制止部材に対して回動自在に取り付けている。垂直制止部材は、可動支柱間において、適当な間隔(例えば、30cm〜40cmの程度の間隔)で水平方向に複数本並べればよい。
【0013】
このゲート装置は、例えば、閉状態であるとき、上側制止部材が床面から130cm程度の高さに位置し、下側制止部材が床面から60cm程度の高さに位置し、且つ、開状態であるとき、下側制止部材が床面から200cm程度の高さに位置するように構成すればよい。ゲート装置の開閉は、可動支柱駆動部が可動支柱を固定支柱に対して上下方向にスライドすることにより行う。この場合、閉状態であるとき、大人であっても上側制止部材を乗り越えるのを防止できるとともに、子供や車椅子利用者等が上側制止部材の下を通って通過するのを下側制止部材で防止できる。また、上側制止部材と下側制止部材との間の通り抜けについては、垂直制止部材で防止できる。また、開状態であるときは、下側制止部材が固定支柱間を通行する通行者の通行を妨げることもない。
【0014】
また、下側連結部材を下側制止部材に回動自在に取り付けているので、垂直制止部材が押圧されたときに生じる応力が、下側連結部材の回動により緩和され、この垂直制止部材が破損するのを防止できる。
【0015】
したがって、本体コストのアップや、メンテナンス等の維持管理にかかる運用コストのアップが十分に抑えられる。また、駅ホームに設置する場合には、乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止することができる。
【0016】
また、下側制止部材を可動支柱に対して上下方向にスライドする制止部材駆動部を備え、下側連結部材については、連結した垂直制止部材の一方の端部と、下側制止部材との相対的な高さの変化を制限する構成にし、上側連結部材については、連結した垂直制止部材の他方の端部と、上側制止部材との相対的な高さの変化を制限しない構成にするのが好ましい。
【0017】
この構成では、ゲート装置の開閉は、可動支柱駆動部が可動支柱を固定支柱に対して上下方向にスライドする動作と、制止部材駆動部が下側制止部材を可動支柱に対して上下方向にスライドする動作と、で行う。下側制止部材は、上側制止部材の直下までスライドさせて開状態にするので、下側制止部材を床面から200cm程度の高さまで上げるのに必要な固定支柱、および可動支柱の高さが抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、本体コストのアップや、メンテナンス等の維持管理にかかる運用コストのアップが抑えられる。また、駅ホームに設置する場合には、乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】駅ホームにおける落下防止柵の設置例を示す概略図である。
【図2】可動柵を示す概略図である。
【図3】垂直バーを示す概略図である。
【図4】垂直バーと上側制止バーとの連結、および垂直バーと下側制止バーとの連結を示す図である。
【図5】上側連結部材を示す図である。
【図6】下側連結部材を示す図である。
【図7】可動柵の主要部の構成を示すブロック図である。
【図8】可動支柱および下側制止バーを上下方向にスライドさせる機構を説明する概略図である。
【図9】可動柵の開閉動作を説明する図である。
【図10】可動柵の開閉動作を説明する図である。
【図11】可動柵の開閉動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明にかかるゲート装置の実施形態について説明する。ここでは、駅ホームで列車を待っている乗降客が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止する落下防止柵を例にして説明する。
【0021】
図1は、駅ホームにおける落下防止柵の設置例を示す概略図である。図1(A)は、駅ホームを上方から見た平面図であり、図1(B)は、駅ホームの側端部を対向する側から見た平面図である。この落下防止柵は、図1に示すように、駅ホームの側端部に沿って、適当な間隔(2m〜3m間隔)で設置した複数の可動柵1を有している。各可動柵1が、この発明で言うゲート装置に相当する。
【0022】
列車は、その種類によって車両ドアの間隔が異なる。この落下防止柵は、設置した駅ホームに停車する列車の種類に関係なく、各可動柵1を列車の車両ドアに対向させるため、駅ホームに停車する列車の車両ドアの幅よりも広くしている。可動柵1を開状態にすることにより、列車に乗降する乗降客の通路を確保する。また、可動柵1を閉状態にすることにより、駅ホームにいる乗降客等が駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止する。
【0023】
また、駅ホームにいる乗降客等が、隣接する可動柵1間において、駅ホームから落ちる等して線路内に入るのを防止するために、固定バー2を隣接する可動柵1間に掛け渡している。図1では、隣接する可動柵1間に、4本の固定バー2を上下に並べて掛け渡した例を示している。
【0024】
なお、可動柵1は、駅ホームに停車する列車の種類毎に、その列車の車両ドアの全体が対向すればよく、列車ドアでない部分を含んで対向しても特に問題はない。
【0025】
図2は、列車の車両ドアに対向する駅ホーム側から見た可動柵の平面図である。図2は、可動柵が閉している状態(閉状態)である。
【0026】
この可動柵1は、2本の固定支柱11と、2本の可動支柱12と、上側制止バー13、と、下側制止バー14と、7本の垂直バー15と、を備えている。
【0027】
固定支柱11は、駅ホームの側端部に立設している。駅ホームには、固定支柱11の設置位置に台座が取り付けられている。2本の固定支柱11の間が、列車に乗降する乗降客の通路になる。言い換えれば、2本の固定支柱11は、駅ホームに停車する列車の種類に関係なく、各列車の車両ドアが対向する位置をカバーするように設置している。固定支柱11は、その高さが130〜150cm程度である。また、固定支柱11は、100kgf程度のもたれ荷重に耐える鋼材である。
【0028】
2本の可動支柱12は、固定支柱11毎に、その固定支柱11に対して上下方向にスライド自在に取り付けている。可動支柱12は、固定支柱11の背面(線路側)に取り付けている。可動支柱12は、その高さが130cm程度の鋼材である。
【0029】
上側制止バー13は、2本の可動支柱12間に掛け渡している。上側制止バー13は、可動支柱12の上端部付近に固定している。上側制止バー13は、可動柵1が閉状態であるとき、駅ホームの床面から130cm程度の高さに位置する。したがって、閉状態であるとき、大人であっても、上側制止バー13を乗り越えて線路内に入るのは比較的困難である。言い換えれば、閉状態であるとき、乗降客が上側制止バー13を乗り越えて線路内に入るのを防止する。
【0030】
下側制止バー14は、2本の可動支柱12間に、この可動支柱12に対して上下方向にスライド自在に掛け渡して、取り付けている。下側制止バー14は、可動柵1が閉状態であるとき、駅ホームの床面から60cm程度の高さに位置する。したがって、閉状態であるとき、幼児(2歳児の身長80〜90cm)や、車椅子利用者(車椅子の肘掛け高さ60cm程度)が、駅ホーム床面と、下側制止バー14との間を通って、線路内に入るのを防止する。
【0031】
上側制止バー13、および下側制止バー14は、筒状のパイプであり、例えばその外径が48mm、厚さ3.5mmのPC管である。
【0032】
垂直バー15は、上側制止バー13と、下側制止バー14との間に掛け渡している。ここでは、7本の垂直バー15を水平方向に並べた例を示しているが、隣接する垂直バー15の間隔、および両端部に位置する垂直バー15と可動支柱12との間隔が40cm程度になるように、垂直バー15の本数を決めればよい。この垂直バー15により、乗降客が上側制止バー13と下側制止バー14との間を通り抜けて線路内に入るのを防止する。
【0033】
図3は、垂直バーを示す概略図である。垂直バー15は、パイプ21の一方の端部(上端部)にキャップ22を取り付けている。キャップ22は、塵、埃、雨水等がパイプ21内に入るのを防止するとともに、上側制止バー13との連結を保持する部材として機能する。このキャップ22は、樹脂で形成した部材である。
【0034】
この垂直バー15を、上側制止バー13と、下側制止バー14との間に掛け渡す構成について説明する。図4(A)は、上側制止バーと垂直バーとの連結部分を示す図である。また、図4(B)は、下側制止バーと垂直バーとの連結部分を示す図である。
【0035】
上側制止バー13には、垂直バー15を連結する上側連結部材31が取り付けられている。 上側連結部材31は、図5に示すように、固定部31aと連結部31bとを一体形成した部材である。図5(A)は、可動支柱の並び方向(水平方向)の断面図であり、図5(B)は、可動支柱のスライド方向の平面図(上下方向)である。固定部31aは、図示するように水平方向の開口面がリング形状である。このリング形状の開口面の内径は、上側制止バー13の外径と略同じである。この固定部31aは、上側制止バー13をリング形状の開口面に通し、ネジ31c、およびナット31dを利用して、この上側制止バー13に固定する。
【0036】
また、連結部31bは、上下方向の開口面を有する筒状の部材である。連結部31bの内径は、パイプ21の外径よりも大きく、且つこのパイプ21の上端部に取り付けるキャップ22の外径よりも小さい。垂直バー15は、連結部31bの開口面に通すことで、上側制止バー13に連結する。したがって、上側連結部材31は、垂直バー15の上下方向のスライドを制限しない。ただし、垂直バー15が連結部31bの開口面を通って抜け落ちるのをキャップ22により防止している。
【0037】
また、下側制止バー14には、垂直バー15を連結する下側連結部材32が取り付けられている。下側連結部材32は、図6に示すように、下側制止バー14に取り付ける取付部32a、32bと、パイプ21を連結する連結部32cとを一体形成した部材である。図6(A)は、可動支柱の並び方向(水平方向)の断面図であり、図7(B)は、可動支柱のスライド方向の平面図(上下方向)である。取付部32a、32bは、平板であり、水平方向の開口面の径が下側制止バー14の外径よりも少し大きい。取付部32a、32bの開口面は対向している。
【0038】
下側連結部材32は、下側制止バー14を取付部32a、32bの開口面に通すことで、この下側制止バー14に取り付ける。
【0039】
連結部32cは、外径がパイプ21の内径と同じである円柱形状の突起である。垂直バー15は、連結部32cを、パイプ21の下端部(キャップ22を取り付けていない側の端部)に挿入することにより、下側制止バー14に連結する。
【0040】
また、図4に示す33は、下側連結部材32が、下側制止バー14に沿って水平方向にスライドするのを防止するスライド防止部材である。このスライド防止部材33は、上側連結部材31の固定部31aと同様の構成であり、下側連結部材32の取付部32a、32bの間に位置させ、ネジおよびナットを利用して、下側制止バー14に固定する。下側連結部材32は、取付部32a側にスライドするときには、取付部32bがスライド防止部材33に当たり、反対に、取付部32b側にスライドするときには、取付部32aがスライド防止部材33に当たり、水平方向のスライドが防止される。
【0041】
さらに、下側連結部材32は、取付部32a、32bの開口面が下側制止バー14の外径よりも大きいので、下側制止バー14を軸にして回動する。
【0042】
図7は、この可動柵の主要部の構成を示すブロック図である。また、図8は、可動支柱および下側制止バーを上下方向にスライドさせる機構を説明する概略図である。
【0043】
この可動柵1は、制御部50と、可動支柱駆動制御部51と、可動支柱駆動モータ52と、制止バー駆動制御部53と、制止バー駆動モータ54と、通信部55と、報知部56と、を備えている。
【0044】
制御部50は、可動柵1各部の動作を制御する。上述したように、可動柵1は、乗降客の通路の両側に固定支柱11を、設置しているとともに、この固定支柱11に対して上下方向にスライド自在に可動支柱12を取り付けている。可動柵1は、固定支柱11毎に可動支柱駆動モータ52を設けている。可動支柱駆動制御部51は、制御部50からの指示にしたがって、2本の可動支柱12が略同じ高さで変位するように、2本の固定支柱11に設けている可動支柱駆動モータ52を連動して制御する。
【0045】
固定支柱11は、上下方向に回転駆動される無端ベルト52aをその内部に張架している。可動支柱12は、固定支柱11の内部に設けた、無端ベルト52aに連結している。この無端ベルト52aは、可動支柱駆動モータ52の駆動力により回転駆動される。可動支柱12は、無端ベルト52aの回転にともない、固定支柱11に対して上下方向にスライドする。可動支柱駆動モータ52は、正方向(可動支柱12が上昇する方向)、および逆方向(可動支柱12が下降する方向)に回転できる。
【0046】
なお、可動支柱駆動制御部51は、固定支柱11に対する可動支柱12の位置が下限位置にあること、および、固定支柱11に対する可動支柱12の位置が上限位置にあることを検出するセンサ(不図示)を有している。また、可動支柱駆動モータ52に設けたエンコーダにより、可動支柱駆動モータ52の駆動量にともなう可動支柱12の変位量が得られる構成である。
【0047】
また、可動柵1は、2本の固定支柱11に対して上下方向にスライド自在に取り付けた可動支柱12間に、2本の上側制止バー13、14を掛け渡している。上側制止バー13は、上述したように、可動支柱12の上端部付近に固定している。また、下側制止バー14は、可動支柱12に対して上下方向にスライド自在に取り付けている。可動柵1は、可動支柱12毎に制止バー駆動モータ54を設けている。制止バー駆動制御部53は、制御部50からの指示にしたがって、下側制止バー14の両端が可動支柱12に対して略同じ高さで変位するように、2本の可動支柱12に設けている制止バー駆動モータ54を連動して制御する。
【0048】
可動支柱12は、上下方向に回転駆動される無端ベルト54aをその内部に張架している。下側制止バー14は、この無端ベルト54aに連結している。この無端ベルト54aは、制止バー駆動モータ54の駆動力により回転駆動される。下側制止バー14は、無端ベルト54aの回転にともない、可動支柱12に対して上下方向にスライドする。制止バー駆動モータ54は、正方向(下側制止バー14が上昇する方向)、および逆方向(下側制止バー14が下降する方向)に回転できる。
【0049】
なお、制止バー駆動制御部53は、可動支柱12に対する下側制止バー14の位置が下限位置にあること、および、可動支柱12に対する下側制止バー14の位置が上限位置にあることを検出するセンサ(不図示)を有している。また、制止バー駆動モータ54に設けたエンコーダにより、制止バー駆動モータ54の駆動量にともなう下側制止バー14の変位量が得られる構成である。
【0050】
通信部55は、駅ホームに停車した列車や、駅務室に設置された管理装置等の上位装置との間における通信を制御する。列車との通信は、公知のトランスポンダを経由して行う。報知部56は、乗降客や、駅係員等に対して、音声等による警告報知を行う。
【0051】
次に、この可動柵1の開閉動作について説明する。可動柵1は、通常、閉状態であり、駅ホームに列車が到着すると、開状態に移行する。そして、列車に対する乗降客の乗降が完了すると、閉状態に移行する。まず、可動柵1が閉状態から、開状態に移行する動作について説明する。
【0052】
図9(A)は、図2と同様に、閉状態である可動柵を示している。可動柵1は、通信部55において開指示を受信すると、可動支柱駆動制御部51が可動支柱駆動モータ52を駆動し、可動支柱12を上方にスライドする。このとき、可動支柱駆動制御部51は、可動支柱駆動モータ52の回転速度を予め定めた通常速度にする定電力制御を行い、可動支柱12を上方にスライドする。例えば、可動支柱12を、40cm/sで上方にスライドする。このとき、可動支柱駆動モータ52は正回転されている。可動支柱駆動制御部51は、可動支柱12が上限位置に達すると、可動支柱駆動モータ52を停止する(図9(B)参照)。このとき、上側制止バー13は、駅ホームの床面から210cm程度の高さに位置し、下側制止バー14は、駅ホームの床面から140cm程度の高さに位置する。
【0053】
その後、制止バー駆動制御部53が制止バー駆動モータ54を駆動し、下側制止バー14を上方にスライドする。このとき、制止バー駆動制御部53は、制止バー駆動モータ54の回転速度を予め定めた通常速度にする定電力制御を行い、下側制止バー14を上方にスライドする。例えば、下側制止バー14を、40cm/sで上方にスライドする。このとき、制止バー駆動モータ54は正回転されている。
【0054】
下側制止バー14が上昇することにより、下側制止バー14と、上側制止バー13との間隔が狭くなる。垂直バー15は、上側制止バー13と、下側制止バー14とに掛け渡しているので、下側制止バー14の上昇により、垂直バー15が上方に押し上げられる。上側連結部材31の連結部31bの開口面は、パイプ21の外径よりも大きいので、垂直バー15が下側制止バー14とともに上昇し、図10(A)に示すように、垂直バー15の上端が上側制止バー13よりも上方に突出する。
【0055】
制止バー駆動制御部53は、下側制止バー14が上限位置に達すると、制止バー駆動モータ54を停止する(図10(B)参照)。この状態が、開状態である。この開状態であるとき、下側制止バー14は、駅ホームの床面から、200cm程度の高さに位置する。また、垂直バー15の上端部は、駅ホームの床面から、260〜270cm程度の高さに位置する。
【0056】
次に、可動柵1が、図10(B)に示す開状態から、図9(A)(図2)に示す閉状態に移行する動作について説明する。
【0057】
可動柵1は、図10(B)に示す開状態であるときに、通信部55において閉指示を受信すると、可動支柱駆動制御部51が可動支柱駆動モータ52を駆動し、可動支柱12を下方にスライドする。このとき、可動支柱駆動制御部51は、可動支柱駆動モータ52の回転速度を予め定めた通常速度にする定電力制御を行い、可動支柱12を下方にスライドする。例えば、可動支柱12を、40cm/sで下方にスライドする。このとき、可動支柱駆動モータ52は逆回転されている。可動支柱駆動制御部51は、可動支柱12が下限位置に達すると、可動支柱駆動モータ52を停止する(図11(A))。
【0058】
その後、制止バー駆動制御部53が制止バー駆動モータ54を駆動し、下側制止バー14を下方にスライドする。下側制止バー14を下方にスライドすることにより、垂直バー15が下方に引き下げられる。制止バー駆動制御部53は、下側制止バー14が下限位置に達すると、制止バー駆動モータ54を停止する(図11(B)参照)。この状態が、閉状態である。
【0059】
なお、上記の説明では、開状態から閉状態に移行する動作では、可動支柱12に対して下側制止バー14の上昇を開始するタイミングを、可動支柱12が固定支柱11に対して上限位置に達した後としたが、このタイミングについては、可動支柱12が固定支柱11に対して予め定めた高さ(上限位置よりも低い高さ)に達したときにしてもよい。
【0060】
また、閉状態から開状態に移行する動作では、可動支柱12に対して下側制止バー14の下降を開始するタイミングを、可動支柱12が固定支柱11に対して下限位置に達した後としたが、このタイミングについても、可動支柱12が固定支柱11に対して予め定めた高さ(下限位置よりも高い高さ)に達したときにしてもよい。
【0061】
このように、この可動柵1は、垂直バー15を上側制止バー13と、下側制止バー14とに掛け渡しているので、閉状態であるとき、この垂直バー15により、乗降客が上側制止バー13と下側制止バー14との間を通り抜けて線路内に入るのを防止できる。
【0062】
また、下側制止バー14は、可動支柱12に対して上下方向にスライドさせる構成としているので、列車に乗降する乗降客の通路を確保するのに必要な、固定支柱11や可動支柱12の高さが抑えられる。
【0063】
なお、可動柵1は、下側制止バー14を可動支柱12に対して上下方向にスライドしない構成としてもよい。この場合、図9(B)に示す状態が開状態である。ただし、図9(B)に示す状態で、下側制止バー14が駅ホームの床面から200cm程度の高さに位置するように、固定支柱11、および可動支柱12の高さにする必要がある。一方で、下側制止バー14を上下方向にスライドする機構部については、不要にできる。
【0064】
また、垂直バー15は、下側制止バー14の上下方向のスライドにともなって、上下方向に変位するので、可動柵1本体の構成が複雑にならず、可動柵1本体のコストアップが抑えられるとともに、運用時における維持管理にかかるコスト(運用コスト)の増加も抑えられる。
【0065】
また、この可動柵1は、上述したように、下側連結部材32の取付部32a、32bに形成している開口面の径を、下側制止バー14の外径よりも少し大きくしている。したがって、下側連結部材32は、下側制止バー14を軸にして回動する。
【0066】
可動柵1は、閉状態であるとき、垂直バー15が乗降客により線路側に押されたり、ホーム側に引かれたりして、衝撃が加えられると、下側連結部材32が下側制止バー14を軸にして回動する。この回動により、パイプ21(垂直バー15)と下側連結部材32との接続部分にかかる応力が緩和される。したがって、垂直バー15に加えられた衝撃により、パイプ21(垂直バー15)や、下側連結部材32が破損するのを抑えることができる。
【0067】
また、上記の例では、本願発明を駅ホームに設置される可動柵1に適用した場合を例にして説明したが、工事現場等において車両が出入りする出入口等に設けるゲート装置としても利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…可動柵
11…固定支柱
12…可動支柱
13…上側制止バー
14…下側制止バー
15…垂直バー
21…パイプ
22…キャップ
31…上側連結部材
31a…固定部
31b…連結部
31c…ネジ
31d…ナット
32…下側連結部材
32a、32b…取付部
32c…連結部
33…スライド防止部材
50…制御部
51…可動支柱駆動制御部
52…可動支柱駆動モータ
52a…無端ベルト
53…制止バー駆動制御部
54…制止バー駆動モータ
54a…無端ベルト
55…通信部
56…報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出口の両側のそれぞれに立設した固定支柱と、
前記固定支柱毎に、当該固定支柱に対して上下方向にスライド自在に取り付けた可動支柱と、
前記可動支柱間に、上下方向に並べて掛け渡した上側制止部材、および下側制止部材と、
前記可動支柱を前記固定支柱に対して上下方向にスライドする可動支柱駆動部と、
前記上側制止部材と前記下側制止部材との間に掛け渡した垂直制止部材と、を備え、
前記垂直制止部材は、一方の端部を前記下側制止部材に取り付けた下側連結部材に連結し、他方の端部を前記上側制止部材に取り付けた上側連結部材に連結し、
前記下側連結部材は、前記下側制止部材に対して回動自在に取り付けている、ゲート装置。
【請求項2】
前記下側制止部材を前記可動支柱に対して上下方向にスライドする制止部材駆動部を備え、
前記下側連結部材は、連結した前記垂直制止部材の一方の端部と、前記下側制止部材との相対的な高さの変化を制限し、
前記上側連結部材は、連結した前記垂直制止部材の他方の端部と、前記上側制止部材との相対的な高さの変化を制限しない、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記上側連結部材は、前記上側制止部材に固定する固定部、および前記垂直制止部材を挿入する開口面を形成した連結部を有する、請求項1、または2に記載のゲート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6461(P2013−6461A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139021(P2011−139021)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【Fターム(参考)】