コアードワイヤ
本発明に係るコアードワイヤは、少なくとも1つの断熱層を有し、この層が、溶鋼などの溶融金属浴との接触に際して熱分解を開始する材料からなることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧密化された粉体又は粒子状の材料を収納した筒状外包であって、これらの芯入り外包は熔融金属、特に鋼の処理に使用され、一般的に「コアードワイヤ(“cored wire”」と称されているものの技術分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
これらのコアードワイヤを熔融金属浴に導入することは、特に、これらの浴の組成物に対する精製、脱酸、ガス抜き、沈静(キリング)及び/又は改質を可能にする。
【0003】
従って、例えば鋼に転換される高炉銑鉄の脱硫では、Mg及びC2Ca或いは更にNa2CO3、CaCO3、CaO、MgOさえ含有するコアードワイヤを用いることが知られている。
【0004】
コアードワイヤは、通常、鋼の二次冶金処理、中でも取鍋(取鍋)攪拌、粉体注入、CAS(シール下での組成調整)、取鍋アーク炉、RH(Ruhstahl Heraeus)脱ガス、真空処理に使用される。
【0005】
コアードワイヤは、銑鉄の脱硫、GS銑鉄の獲得、鋳鉄の接種(inoculation)に用いられる。
【0006】
銑鉄の接種は、セメンタイトを犠牲にして、グラファイトの発生を促進する元素、例えば、アルカリ、アルカリ土類(Ca)またはビスマスの珪素合金を銑鉄に導入することからなる。一般的な原則として、脱硫、ノジュール化、及び接種が順番に行われる。マグネシウムと炭化珪素がしばしば用いられ、浴温は鋼鍋よりも低い1300〜1400℃の範囲である。
【0007】
コアードワイヤの鋼に対する主な作用は、脱酸、脱硫、不純物制御、及び、鋼の色調調整である。
【0008】
脱酸操作は、転炉又は電気アーク炉からの溶鋼中に溶解している酸素(約500ppm以上の酸素)を、脱酸剤(その一部は溶湯中に溶けた形で残る)と結合させる工程からなる。種々の酸化成分と平衡状態にある、1600℃の熔融金属中に溶解している酸素の活性曲線を調べると、比較的穏やかなアルミニウムの添加によって残留酸素含有量の大幅な低減が可能で、それによって純粋なアルミナが形成されることが理解される、したがって、均一な製品のためにはアルミニウムが脱酸剤として非常に有効である。
【0009】
電気アーク炉の鍋からは、多かれ少なかれ脱炭、脱硫された、しかし、沸騰性(effervescent)の金属が得られる。その溶解酸素の含有率を考慮すると、CO%×O%の積の値のために、或る温度では、溶鋼浴中でCO形成が自発的となる。
【0010】
以後、一次溶鋼浴の沸騰性を鑑みて脱酸をキリングと称する。
【0011】
コアードワイヤ中に含まれる脱酸剤は鉄系合金であり、多くの場合(フェロシリコン、フェロマグネシウム、アルミニウム)である。これらの脱酸剤が酸化物(シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ)の形成をもたらし、これらの酸化物は、取鍋の適度な攪拌によってスラグ中に吸収される。
【0012】
あらゆる予防策にも拘らず、アルミナの残留含有物によって、鋳造ノズルの詰まりや、薄型スラブ連続鋳造装置からの製品のような小さな断面の最終製品へのキズなどが発生し得る。
【0013】
また、コアードワイヤは従来からアルミニウムキルド鋼用のカルシウムを含む。アルミニウムキルド鋼にカルシウム合金を添加すると、カルシウムによる部分還元によって、アルミナ介在物が改質される。約1600℃付近の溶鋼温度ではカルシウムアルミネートは液状であるため、それらのCaO含有率が40%から60%の範囲である場合は製品上で球状となる。介在物の改質を得るのに必要な溶液中のカルシウム量は、金属浴のアルミニウム含有率に依存する。従って、コアードワイヤによって導入されるカルシウムの大部分は、熔融金属中では、アルミネートの液状介在物の形態で見られ、数ppmを超えない。
【0014】
実際には、コアードワイヤに含有されるカルシウムの急激な揮発によって引き起こされる溶鋼の激しい沸騰を回避することは困難である。事実、カルシウムの蒸気圧は1600℃で約1.8atmである。もしも沸騰が余りにも激しければ、鋼浴中へのコアードワイヤの浸透条件が擾乱され、鋼浴の汚染を伴い、鋼浴が酸化或いは再窒化される可能性がある。同時に、スラグ層を貫通する溶鋼の飛散が生じて、再落下前に空気と接触して酸化される。さらに、溶鋼が取鍋の外に飛散する危険性がある。
【0015】
その結果、得られた鋼中のO2、N2更にはH2の含有量が増大する可能性がある。沸騰は、カルシウムを非合金としてではなくCaSiの形態として投入することによって減少するが、深絞り用など或る種の鋼には好ましくない珪素を溶鋼に導入するという不都合がある。
【0016】
この不都合を解決するために、カルシウムをCaNi合金として、場合によって少量のCaSi合金に混合して、導入する方法が提案されている。その他の解決法が刊行物EP−0,190,089に提示されている。
【0017】
この不都合を解決するために、窒素含有量の低い溶鋼の場合、金属表面と取鍋との間の空間をアルゴンの注入によってパージングすることが考えられる。実際には、炉は気密性ではなく、アルゴンの流れが強いと空気の吸引をもたらし、アルゴンの流れが弱いと溶鋼の取鍋の上方の気体容積に望ましくない不活性化時間をもたらす。
【0018】
また、ポーラスプラグを介したアルゴンによって取鍋を攪拌又は発泡すると、スラグの表面が隆起し、それによって、コアードワイヤを同時に導入する際に、同隆起が熔融金属と空気との直接接触を引き起こし、蒸発又は酸化によってカルシウムの損失が更に増大する。
【0019】
カルシウム添加の見掛けの回収率は鋼の介在物の反映に過ぎない。コアードワイヤによって添加されるカルシウムの最大部分は、蒸発及び/又は大気、スラグ、及び耐火物との酸化によって失われるので、この回収率は低い。
【0020】
従って、これらの二次反応を最小化するには、介在物を注意深くパージングした後でカルシウムを添加すること、及び、その添加を、これら介在物にとって望ましい速度に調節することが非常に重要である。
【0021】
すなわち、タンディッシュ中の耐火物及び/又は粉体とのカルシウムの接触から生じる外生介在物(酸化物)を、金属の固化前に除去することは実際には困難である。これらのアルミナ介在物は固体であり、例えば連続鋳造ノズルを閉塞させることからカルシウムアルミネートよりも有害である。
【0022】
カルシウムコアードワイヤによってアルミニウムキルド溶鋼を処理すると、アルミニウム含有率が低く硫黄含有率が高い鋼の場合、連続鋳造ノズルに硫化カルシウムが形成される可能性がある。
【0023】
コアードワイヤ中に閉じ込められた化学成分の添加による介在物状態の制御は本質的に酸化物と硫化物に関連する。
【0024】
硫黄の添加はマンガン硫化物の量と鋼の加工性を増大させる。
【0025】
カルシウム、セレニウム、テルルを添加すると、組成、及び、後の変形時における介在物の形態学的特性又はレオロジー学的挙動の改質が可能になる。
【0026】
介在物特性の制御は、特にロール用鋼、丸削り用鋼、圧縮空気アーマチュア用の鋼にとって非常に重要である。
【0027】
したがって、鋼の脱酸と介在物状態の制御は、コアードワイヤの作用のために、鋼メーカのノウハウに属する複雑な操作であり、コアードワイヤの品質、特に、組成の均一性と圧密化の均一性が非常に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
コアードワイヤの製造と使用方法は、実に多くの実地的課題を提供するが、そのうちの一部について以下に記載する。
【0029】
不十分又は不均一な圧密化
コアードワイヤに含まれる材料の不均一な圧密化は、単位時間当たりに、鋼浴又は金属液中に導入される材料の量の不均一性をもたらす。
コアードワイヤに含まれる材料の不十分な圧密化は、単位時間当たりに、鋼浴又は金属液中に導入される材料の量を減少させる。
もしも、圧密化が不十分であれば、粉末状の材料がコアードワイヤ内に進入する可能性がある。
【0030】
巻き戻し時における過剰な機械力
もしも圧密化処理において金属製外包の著しい塑性変形を必要とするならば、コアードワイヤの外包の冷間加工による剛性の増大が、特に曲率の小さい小半径ドラムからの巻き戻し力を大幅に増加させる。
ここでドラムという用語は、ダイナミックと呼ばれる調整用リール、及び、スタティックと呼ばれる調整ケージの壁部の双方を指す。
【0031】
コアードワイヤの不十分な剛性
一部のコアードワイヤ、特に矩形断面のものは、ある種の高密度金属浴に深く導入するには、特にこれらの浴が高粘度のスラグによってカバーされている場合、剛性が不十分である。
【0032】
巻き戻し中の螺旋状変形
スタティックケージ上に調整されたコアードワイヤの巻き戻し中に、ワイヤが螺旋状に変形することが観察されており、これにより、このコアードワイヤは、熔融金属浴に入り込まず、湾曲して浴の表面に残る。
【0033】
コアードワイヤの外包破損
格納リール又はケージからのコアードワイヤの巻き戻し中、又は、液浴へ導入前のワイヤの癖取り処理中において、コアードワイヤの外包の剥がれ落ちが見られる場合がある。
コアードワイヤの外包を閉鎖する他の技術(縁部どうしの近接、オーバーラップ、溶接)では別の不都合が起きる。外包が厚過ぎると粉末/シース比率が下がり、溶接時の粉末劣化の危険性が生じる。
【0034】
所定量の添加物の浴への導入に必要な時間の減少
ワイヤの浴中への導入速度が増加すると、ワイヤが容器の底部に衝突する、或いは、溶解するための十分な時間がたつ前に浴から戻る場合にアクシデントが発生する可能性がある。
ワイヤ径の増大によって巻き取り径が増大すると、ワイヤを巻き取るためのスプールがあまりにも大きくなり、鋼ミル内の小さな利用可能空間では容易に使用できなくなる。
因みに、150トンの取鍋にCaSiを鋼のトン当り1kgで導入するには、密度が240g/mのコアードワイヤ中に収められた150kgのCaSiの粉末、すなわち625mの長さのコアードワイヤが必要であり、このようなキロメートル級のワイヤを2m/sで導入するには5分間以上の作業時間を要する。
【0035】
コアードワイヤの早期破壊
もしもコアードワイヤの外包が早期に破壊されるならば、金属浴中への侵入直後に急速に溶解することによって、ワイヤの中身が浴の表面近傍へと放出される。
【0036】
熔融金属浴中でのワイヤのU形状変形
更に、或る公知文献には、コアードワイヤがその剛性を失い、熔融金属浴中に次第にU状に変形し、ワイヤの中身が放出される前にその端部が表面へと上昇する可能性があると記載されており、この上昇作用は、特に、一般的にワイヤの見掛け上の密度が金属浴のそれよりも低いために生じる静止した鉄からの浮力によるものである。
もしもコアードワイヤがCa,Mgを含有していれば、これらの元素が、熔融金属浴中の浅いところで放出され、例えば、鋳物の脱硫において歩留まりの非常に大きな低下をもたらす。
熔融金属浴の表面近くでカルシウムの大きな放出があると、それによって、溶融金属の激しい反応と飛散が起こる。
【0037】
熔融金属浴へのコアードワイヤの不十分な侵入深さ
例えば、米国文献4,085,252には、ワイヤの侵入深さ:L、金属外包の厚さ:eと、セリウムのバーの直径:dとの以下の関係が記載されている。
【0038】
L=1.7(e+0.35d)v.10-2
【0039】
ここで、vはワイヤの導入速度であり、これは安全性の理由から3〜30m/分以内とされる。
もしも深さLが例えば30cm等と小さければ、コアードワイヤに含有される製品がスラグと接触し、それによって失われる可能性が高くなる。
深さLが小さすぎると、熔融金属浴中における、コアードワイヤに含有される化学成分(または元素)の分布が不均質になる可能性もある。
【0040】
ワイヤに含有される粉体の反応性と、連続鋳造設備の詰まり
米国文献4,143,211に記載されているように、希土類、Al、Ca、Ti、の酸素に対する化学的親和性によって酸化物が形成され、これらが連続鋳造設備に使用される流量制限ノズルの内壁に付着し、それによって、それらを部分的又は完全に詰まらせる可能性がある。
従って、所望の結果(脱酸、介在物形態制御、機械抵抗、等)のために丁度必要な量の反応物の均質導入を容易にするコアードワイヤを鋼製造業者に提供することが求められている。
これらの技術問題のうちの少なくとも1つを解決するために、下記の文献によって例示されるように、コアードワイヤに関して非常に多数の構造と製造方法とが提案されている。
【0041】
ヨーロッパ特許出願公開番号:0.032.874,0.034.994,0.044.183,0.112.259,0.137.618,0.141.760,0.187.997,0.236.246,0.273.178,0.277.664,0.281.485,0.559.589;
【0042】
フランス特許出願公開番号:2.235.200,2.269.581,2.359.661,2.384.029,2.392.120,2.411,237,2.411.238,2.433.584,2.456.781,2.476.542,2.479.266,2.511.039,2.576.320,2.610.331,2.612.945,2.630.131,2.688.231;
【0043】
米国特許公開番号:2.705.196,3.056.190,3.768.999,3.915.693,3.921.700,4.085.252,4.134.196,4.147.962,4.163.827,4.035.892,4.097.267,4.235.007,4.364.770,4.481.032,4.486.227,4.671.820,4.698.095,4.708.897,4.711.663,4.738.714,4.765.599,4.773.929,4.816.068,4.832.742,4.863.803,4.906.292,4.956.010,6.053.960,6.280.497,6.346.135,6.508.857。
【0044】
上述の文献のうちの少数を簡潔に示すことによっても、導入部に記載した種々の技術的問題に対応するために多種多様な技術的解決手段が考慮されていることがわかる。
【0045】
EP−B2−0.236.246に記載されたコアードワイヤが備える金属外包は、その周部が折返し仕上げされ、そこで閉じられ、そのエッジがコアードワイヤのコアを形成する圧密化されたマス内に係止されている。
【0046】
縫合(シーミング)は、コアードワイヤ外包の母線に沿って行われるが、場合によって、縫合帯の全幅に亘って横断方向のギザギザでロック−シームを形成することによって補強できる。コアードワイヤの圧密化は、前記縫合帯の反対側に開放折り目を形成し、その後、この折り目を径方向の圧力によって閉じることによって得られる。
【0047】
前記コアードワイヤの外包は、鋼又はアルミニウムから成り、例えば、Ca30重量%のCaSiの粉体状合金を含有する。
【0048】
文献US−4.163.827に記載されたコアードワイヤは、樹脂又はポリウレタンなどのバインダーポリマーに浸漬された、粉体状の、Ca、Alからなるフェロシリコンベースを備えるコアを有し、前記コアは、0.025mm〜0.15mmの厚さの、金属、プラスチック又は紙の単層又は複数の螺旋ロールによって封入される前に押出される。このタイプのコアードワイヤは多くの欠点を有する。第1に、前記樹脂を形成する材料は、熔融金属浴にとって許容不能な汚染源となる。第2に、ワイヤの機械的強度と剛性は極めて不十分である。
【0049】
第3に、前記フェロシリコン粉体は、熔融金属に対して事実上、保護されていない。
【0050】
文献EP−0.032.874に記載されたコアードワイヤは、少なくとも部分的に、100ミクロン以下の厚さのシート形状である有機合成材料又は金属材料の外包によって包囲された、添加物を含有する薄いシート状の金属溶接シースを有する。前記ワイヤは平坦な形状である。前記薄いシートは、ポリエチレン、ポリエステル又は塩化ポリビニールから成り、シール手段を形成し、必要に応じて熱収縮可能とすることができる。この平坦ワイヤについてその製造工程は記載されておらず、そのコンセプトは、工業的な発見というより空想的なものであるように思える。
【0051】
本出願人の文献FR−2.610.331は、中間金属筒状壁に取り囲まれた、第1粉体状又は粒状材を含む軸方向領域と、この中間壁とコアードワイヤの外包との間に位置し、第2粉体状又は粒状材を含有する環状領域とを有するコアードワイヤを記載している。前記軸方向領域は、好ましくは、処理される浴に対して最も反応性の高い材料を含有している。
【0052】
このコアードワイヤの外側金属製外包が破壊されない限り、前記環状領域を満たす前記材料が断熱材として作用し、前記中間壁の温度上昇を低減し、これによってワイヤが曲がる虞を低減し、それによって、中間壁がある程度の剛性を維持するので、ワイヤが浴に入ることを防止する。
【0053】
文献US−3.921.700は、鋼製外包を備えるコアードワイヤを記載し、これは、軸芯のマグネシウムワイヤと、鉄紛とを含む。鉄粉は低熱伝導率で高熱容量性のため、コアードワイヤが液状鋼中に浸されたときに、マグネシウムがあまりも急激に加熱されることを保護する断熱材を形成する。変形例として、前記鉄紛には、グラファイト又はカーボンが混合される。
【0054】
コアードワイヤの使用によって生じる技術的な問題のうちの幾つかは、このワイヤが、1600℃の鋼取鍋などの熔融金属浴に浸された時にこのワイヤに何が起こるかを正確に判断することが事実上不可能という事実から生じる。特に、次の疑問は微妙なものである。浴中におけるワイヤの形状はどのようなものか(真っ直ぐが、それともU状に湾曲しているか)。そして、どの深さまで、それは溶解によって分解されるか。従来技術においては、断片的で、時として矛盾する情報以外、この点について何も判っていない。
【0055】
文献FR−2.384.029は、珪素含有率が65重量%以上の突き固められた粉末状フェロシリコンの混合物を覆う鋼製外包からなる接種ワイヤについて記載している。この先行文献によれば、珪素は、その熔融金属への導入中に、以下のような状態で、ワイヤの鋼製シースに向かって拡散する。
−ワイヤに含有される接種剤の溶解温度が低下する、
−ワイヤのシース用鋼の溶解温度が低下する。
ワイヤのシースの外表面を貫通してカーボンが拡散する。
【0056】
この先行文献によれば、75%珪素のフェロシリコン(溶解温度1300℃)を含む軟鋼製シース(溶解温度1538℃)を含むコアードワイヤは例えば、1400℃のネズミ鋳鉄に浸漬された場合、約1200℃で溶解し、この溶解は、シース中の珪素の拡散によって軟鋼の溶解温度が低下するという事実によって、前記シースの内側部分から生じる。
【0057】
文献US−4.174.962は、この珪素の溶解のほかに、たとえそのシースの溶解温度が熔融金属浴の温度よりも高い場合においても、腐食と拡散とによって、コアードワイヤのシースの外壁が分解することについて記載している。
【0058】
文献US−4.297.133は、複層に巻回された紙製のチューブについて記載し、このチューブは金属膜シールによって封止されている。前記紙製の燃焼時間は、前記チューブが1600−1700℃の熔融金属浴に入れられた場合、三秒間であると記載されている。
【0059】
本出願人は、文献Fr−2.821.626及びFR−2.810.919において、可燃性で断熱性である、花火用(pyrotechnical)の紙として知られている紙から形成されているので、有害な残滓を残すことなく、ワイヤの中心部に向かう熱の伝播を一時的に遅延させる紙からなる外包を備えるコアードワイヤについて記載した。
【0060】
本出願人によるこれら二つの先行文献によれば、紙層の数を増加させることによって、カルシウムを含むコアードワイヤの爆発、または、このカルシウムの揮発が遅延され、従って、ワイヤ中の内容物との浴の表面反応、更に、それから生じるリスク、即ち、浴の酸化及び/又は再窒化、熔融金属の飛散、煙の発散、コアードワイヤによって導入される添加物の処理の非常に低い回収率を回避するのに十分な深さでコアードワイヤを熔融金属浴中に注入することができる。
【0061】
これらの先行文献によれば、前記花火用紙がゆっくりと燃焼することによって、熔融金属浴の組成物に影響を与える燃焼残滓が発生せず、それが流れる浴の挙動に変化を与える介在物を発生することがない。文献FR−2.821.626によって記載されている実施例では、熔融金属浴中に有害な痕跡を残すことのない燃焼性花火用紙のシースの上方に、花火用紙がコアードワイヤリールに巻き付けられる時、又は、コアードワイヤがこのリールから巻き戻される時に、花火用紙の層がダメージを受けることを防止するべく、金属保護層を設けている。
【0062】
本出願人は、又、なぜ、文献FR−2.821.626又はFR−2.810.919に記載されているコアードワイヤは、螺旋状に巻回された帯状紙を剥ぎ取られたものよりも必ずしも良好な回収率を提供しないかについて疑問をもった。
【0063】
本出願人は、更に、その熔融金属浴中での寿命が、従来のワイヤと比較して長く、それが熔融金属浴中で所定の温度にまで達することが可能なコアードワイヤを提供することによって上記の技術問題を解決することに努めた。
【0064】
本出願人は、多岐に渡りかつ長期に渡るテストの結果、特に以下の事柄を発見した。
【0065】
1)コアードワイヤが熔融金属浴(コアードワイヤの自由移動領域)に入る前に、文献FR−2.821.626又はFR−2.810.919に記載されているコイル状紙が全部燃焼することを回避することが重要であるということ。
【0066】
2)この燃焼を回避するための幾つかの手段、
【0067】
3)コアードワイヤが熔融金属浴に入る前に紙の燃焼が起こらないようにすれば、コアードワイヤの寿命が確実に増加すること、文献Fr−2.821.626又はFr−2.810.919の記載内容とは異なり、紙は必ずしも、花火用、M1クラス、又は燃焼に対して抵抗を有するものである必要はないこと、その紙は熔融金属浴中では燃焼せず、むしろ熱分解して、現時点において本出願人にとって未知である熱物理的特性を有する物質へと変化し、この熱分解は後に詳述する或る種の手段によってのみ達成されること。
【0068】
すなわち、本出願人は、熔融金属浴中におけるコアードワイヤの寿命を増加させる安価で確実な手段を見出したのであり、これらの手段は、コアードワイヤに関して従来開示されているすべての構造体に適用可能であり、これらの手段は、種々のタイプの公知のコアードワイヤの個々の利点を超える有利な技術的作用を奏するものである。
【課題を解決するための手段】
【0069】
そこで、本発明に係るコアードワイヤは、少なくとも一層の断熱層を有し、この外部断熱層は溶鋼などの熔融金属浴との接触に際して熱分解する材料から形成されている。
【0070】
種々の実施例の方法によれば、前記コアードワイヤは、次の特徴を、場合によっては互いに組み合わせた形で有する。
【0071】
−当該コアードワイヤは、金属シースを取り囲む外部断熱層を有し、この外部断熱層は熔融金属浴との接触に際して熱分解する材料から形成されている。
【0072】
− 前記熱分解性材料は、クラフト紙、アルミナイズド紙、又は、少なくとも1枚のクラフト紙片と少なくとも1層のアルミナイズド紙とを含む多層紙である。
【0073】
− 前記熱分解性材料は、薄い金属シートによってカバーされている。
【0074】
− 前記薄い金属シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。
【0075】
− 前記熱分解性材料は熱分解の前に0.15〜4W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する。
【0076】
− 前記熱分解性材料は熱分解の前に0.025mm〜0.8mmの範囲の径方向厚さを有する。
【0077】
− 前記熱分解性材料は約500℃での熱分解開始温度を有する。
【0078】
− 前記熱分解性材料は、水または気化潜熱の高い、特に、2MJ/kgを超える気化潜熱を有する化合物を含む。
【0079】
− 前記熱分解性材料は、湿潤紙層を有する。
【0080】
− 前記熱分解性材料は、内側の金属シースへの接着を介してコアードワイヤに固定されている。
【0081】
− 前記熱分解性材料は、ワイヤの内側の金属製シースと外側の金属製外包との間に配置される。
【0082】
− 前記外側の金属製シースは、縫合帯部内での金属/金属どうしの直接接触が全て防止されるように、前記熱分解性物質を縫合帯部内で間に配置させて綴じられている。
【0083】
− 前記内側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有し、前記外側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有する。
【0084】
− 前記熱分解性材料は厚さが0.1〜0.8mmの範囲の単層又は複層のクラフト紙である。
【0085】
− 前記コアードワイヤは、粉末、或いは、圧密化された又は樹脂内に浸漬された粒子の形態で、Ca、Bi、Nb、Mg、CaSi、C、Mn、Si、Cr、Ti、B、S、Se、Te、Pb、CaC2、Na2CO3、CaCO3、CaO、MgO、希土類で構成されたグループから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0086】
本発明のその他の課題及び利点は、貼付の図面を参照して記載される、以下の実施例の方法の記載から明らかになるであろう。
【0087】
ここで、図1は、液状鋼浴へのコアードワイヤの導入の原理を示し、図2〜12は、数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線であり、図13〜21は、出願人が実施したテストプログラムから得られた時間−温度曲線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
図1を参照すると、これはコアードワイヤの溶鋼取鍋への導入の原理を示している。
【0089】
コアードワイヤ(1)は、本出願人による文献FR−2.703.334に記載されているようにケージ(2)から取り出されるか、若しくは、リール(3)から取り出されて、インジェクタ(4)に導入される。
【0090】
このインジェクタ(4)はワイヤをガイドチューブ(5)に送り込み、コアードワイヤは、このガイドチューブ(5)から、取鍋(7)に貯留された溶鋼(6)の表面から約1.00〜1.40メートルだけ上方の高さに出る。
【0091】
コアードワイヤ(1)は、このようにして、熱的に非常に異なる3つの環境に置かれることになる。即ち、
【0092】
− コアードワイヤがガイドチューブ内に位置する第1の環境、
− コアードワイヤが溶鋼の上方に位置し、周囲の雰囲気と直接接触する第2の環境、
− 前記鋼浴又は熔融金属自身である第3の環境。
【0093】
装着されたコアードワイヤを用いたテストの回数を制限するために、出願人は先ずコアードワイヤの行程を熱的にシミュレートすることに努めた。
【0094】
このモデル化においては、平坦で不透明で灰色で拡散した表面の間の三次元的熱輻射交換が形状係数及び伝達係数の計算によってシミュレートされた。
【0095】
形状係数は平坦束(flat flux method)法によって計算され、伝達係数はマルチ反射拡散を考慮に入れた被覆法(coating method)によって計算された。
【0096】
前記ガイドチューブ内では、受け取られる熱束(flux)は、形状係数1のコアードワイヤを包囲するガイドチューブから来る輻射であると想定される。
【0097】
ガイドチューブ5を出て熔融金属浴6に入る前のコアードワイヤの行程に関しては、熱束は熔融金属浴6と取鍋7の壁から来る輻射と考えられる。
【0098】
熔融金属浴6の内部では、表面温度が課される場合、伝達は交換率が約50,000W/m2Kの対流と考えられる。
【0099】
コアードワイヤの外表面の総放射率は0.8に等しいと見なされ、ガイドチューブのそれは1に等しく、浴のそれは0.8に等しいと考えられる。
【0100】
交換される輻射熱フラックスは、ステファン・ボルツマンの法則に従って下記の式によって表される。
【0101】
Φ=εxFxσx(Τ41−Τ42)
ここで、
Φ:二つの表面間で交換される熱束W/cm2
ε:二つの表面の放射率を考慮に入れた係数
F:二つの表面どうしの表面積、形状及び配向を考慮に入れた形状係数
σ:ステファン・ボルツマン定数で5.67x10-8W/m2Kに等しい
Τ1及びΤ2:二つの表面の絶対温度ケルビン、Τ1はΤ2より大。
【0102】
図2は、熔融金属浴の上方距離に対する、コアードワイヤと熔融金属浴との間の伝達係数(εxF)の変化を示し、横軸上のゼロの値は熔融金属浴の表面に対応する。
【0103】
コアードワイヤは、三つの同心円筒状層、すなわち、鋼によってシースされたカルシウムのコアを備え、この鋼製シースは紙によって被覆されていると考える。
【0104】
数値シミュレーションにおいては、カルシウムのコアの直径は7.8mmで、鋼製シースの厚さは0.6mmであり、紙の厚さは、例えば8層の積層紙の場合は0.6mm等、様々な値に設定できる。
【0105】
前記シミュレーションにおいては、コアードワイヤは、中実なカルシウムのコアで形成され、鋼製シースと接触しており、この鋼製シース自体も中実で紙と接触していると考える。
【0106】
ガイドチューブ5は、
T1=L1/v
によって示される時間T1中にコアードワイヤにエネルギを与える温度一定の鋼製中空円筒によって表される。
ここで、L1はガイドチューブ5の長さ、vはコアードワイヤのチューブ5内での通過速度である。
【0107】
前記数値モデル中において、熔融金属浴と取鍋7の壁とは、ワイヤが浴6の上方に位置するか、熔融金属浴6内に位置するかによって、輻射及び対流でコアードワイヤに向かう1600°に等しい温度の容積によって表される。
【0108】
熱交換は、コアードワイヤが熔融金属浴6に入る時間T2から始まる、非常に高い交換係数(50,000W/m2K)を備えた対流である。
【0109】
T2は下記のように計算される:
T2=L1+L2/v:
ここで、L2はガイドチューブ5の下端部と熔融金属浴6の表面との間の距離である。
【0110】
コアードワイヤの送り速度は2m/sに等しく、コアードワイヤの初期温度は50℃である。
【0111】
ガイドワイヤ5を超え熔融金属浴内へ導入される前のコアードワイヤの自由移動は1.4mに等しい長さであると考えられる。
【0112】
ワイヤは、計算によれば、カルシウムからなるコアの表面が1400℃を超える温度の時に破壊されると考えられる。
【0113】
図3に図示されるように、前記モデル化は、熱保護無しの参照用コアードワイヤでは前記カルシウムからなるコアの表面温度が自由移動中には70℃しか上昇せず、2m/sの速度で熔融金属浴中へ僅か30cmの移動した後には0.15秒間で1400℃の閾値に達することを示している。
【0114】
鋼製シースとカルシウムからなるコアとの間の温度勾配は、計算によれば65℃を超えない。
【0115】
従って、カルシウムらなるコアの表面の温度が1400℃の時、鋼製シースの外表面上の温度は1465℃であり、鋼製シースはコアードワイヤの破壊前には溶解しないため、この数値シミュレーションでは、鋼製シースの溶融潜熱は考慮に入れていない。
【0116】
図4は、コアードワイヤのカルシウムからなるコアの表面温度の時間に対する変化を示す4つの曲線を与えており、これら4つの曲線のそれぞれは保護紙の種々の厚さに対応している。即ち、
【0117】
曲線4aは0.025mm、
曲線4bは0.05mm、
曲線4cは0.1mm、
曲線4dは0.6mm
【0118】
図3と図4との比較は、数値シミュレーションによって、鋼製シースを包囲する前記紙の保護作用を示し、この紙の作用が紙厚の増加に従って増加することを示している。
【0119】
図4に示されている曲線は、紙層が燃焼されずそのままの状態であると考慮することによって得られた。
【0120】
この仮説によれば、コアードワイヤが熔融金属浴の底に達するまでは、このコアードワイヤを保護するためには0.025mmの断熱で十分であろう。
【0121】
しかし、紙の燃焼温度は約550℃の付近にある。
【0122】
自由移動中における紙の表面温度の上昇の研究が、実際には優位である対流の影響を無視して実施された。
【0123】
図5には、紙の厚さが0.6mmでコアードワイヤの巻き戻し速度が2m/sである場合における、コアードワイヤの自由移動の最初の一秒間中における、紙の伝導率に応じた、紙の表面温度の変化が示されている。
【0124】
曲線5aは、0.1W/m・Kの伝導率に対応し、曲線5bは0.15W/m・Kの伝導率に対応し、曲線5cは0.2W/m・Kの伝導率に対応している。
【0125】
図5は、紙の燃焼の可能性が高く、コアードワイヤの自由移動中の紙の破壊を排除すべきではないということを示している。
【0126】
図6は、紙の熱伝導率が0.15W/m・Kで、コアードワイヤの注入速度が0.2m/sである場合の紙の表面温度の進展を図示し、曲線6aでの紙の厚さは0.6mm、曲線6bでは0.2mm、曲線6cでは0.1mmである。
【0127】
図6は、紙の厚さを減らすことにより、この紙の表面温度が低下し、従って、熔融金属浴上方でコアードワイヤが自由移動する際の燃焼のリスクも減少することを示唆している。
【0128】
当業者にとって周知のように、鋼などの熔融金属浴の表面は熱スクリーンを形成するスラグ層によって被覆されており、図7は、コアードワイヤを被覆している紙の温度が、輻射源の温度変動の影響を著しく受けることを示している。
【0129】
曲線7a,7b,7c及び7dは、それぞれ、1500,1400,1300及び1200℃の放射面の温度に対応している。
【0130】
図7に図示されているシミュレーションでは、コアードワイヤの注入速度は2m/sであり、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kであった。
【0131】
実験的なテストにおいて確認されたこれら数値シミュレーションによって、本出願人は、文献FR2.810.919中に記載されたような構造を用いた時に得られた結果の不定性は、コアードワイヤが熔融金属浴の上方で自由移動する時の紙の燃焼に基づいており、それ以後、熔融金属浴の内部では、この紙は最早コアードワイヤに対して熱保護の作用を果たさないという仮説を得ることができた。
【0132】
本出願人は、紙は溶鋼浴中で燃焼せず熱分解するという補足的な仮説を得た。
【0133】
次に、本出願人は、紙が温度によって二つの異なる熱伝導率を有する物体であると考慮することによって数値シミュレーションを行った。即ち:
−当初の紙が持つ第1の伝導率(0.15W/m・K)。この第1の伝導率は熱分解が開始される約500℃の温度まで維持される;
−熱分解した紙の温度が600℃の時に達するものと推定される第2の伝導率(300W/m・K)。この600℃の温度に到達する時に熱分解は完了すると推定される。
【0134】
500℃と600℃との間では、0.15W/m・Kから300W/m・Kまでの伝導率の変化はリニアであると推定される。
【0135】
図8は、コアードワイヤ中に含まれるカルシウムの表面温度に対する数値シミュレーションの結果を示し、紙は熱分解された直後に熔融金属浴中に溶解されると推定されている。
【0136】
曲線8aは、保護紙が無い従来のコアードワイヤに対応する。
曲線8bは、厚さが0.6mmの保護紙を備えたコアードワイヤに対応する。
曲線8cは、厚さが1.2mmの保護紙を備えたコアードワイヤに対応する。
【0137】
図8は、もしも紙が熱分解後に消滅するのであれば、例え紙の厚さを二倍にした場合でも、コアードワイヤを、それが鋼浴の底に到達するように保護することは不可能であることを示唆している。
【0138】
工業的なテストに際して、本出願人は保護紙で被覆されたコアードワイヤは浴の底に到達する場合があることを確認した。
【0139】
従って、恐らく、紙は分解後に熔融金属浴中において消滅するものではない。
【0140】
酸素の不在下で紙シートの温度を増加させることによって、クラフト紙の熱分解を約600℃の温度まで行い、熱分解の前後における紙の熱伝導率の測定を行った。
【0141】
この研究から紙の熱伝導率は熱分解の後でほとんど変化しないことになる。
【0142】
従って、本出願人は、今回は図8に対応する仮説とは対照的に、紙は熱分解後に消滅しないと考慮し、熱分解後の紙の伝導率を曲線9a,9b,9c,9dにおいて各々0.15,1,2,4W/m・Kと考えて、数値シミュレーションを再度行った。このシミュレーションは後述するようにテスト結果をより良く反映している。
【0143】
コアードワイヤの鋼製シースを包囲する紙の燃焼を全て回避するために、本出願人は、この紙を湿潤させるか、もしくは、それをアルミニウムによってコーティングすることによって輻射または反射を吸収することを考えた。
【0144】
図10は、時間に対する紙の表面温度の変化に関する数値シミュレーションの結果を示し、曲線10a,10b,10c及び10dは、それぞれ0%,59%,89%及び118%の含水率に対応している。
【0145】
図10に図示されているシミュレーションでは、コアードワイヤの注入速度は2m/sであり、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kである。
【0146】
図11は、コアードワイヤの鋼製シースを包囲する紙の被覆として非常に薄いアルミ層を追加した場合に得られる輻射計算の結果を示している。
【0147】
この図11は、輻射率が0.8である紙と比較すると、輻射輸送係数が係数8だけ少ないことを示している。
【0148】
図12では、アルミニウムの被覆が有る場合と無い場合での、時間に対する紙の表面温度の変化を比較することができ、ここで、コアードワイヤの注入速度は2m/sに維持され、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kである。
【0149】
この数値シミュレーションによれば、コアードワイヤの自由移動中、紙の表面温度の増大は非常に少なく、アルミニウムが、コアードワイヤの紙に対して非常に有効な熱保護を保証している。
【0150】
上述したシミュレーション中に本出願人が作った仮説を実証するために、本出願人は設備に装着されたコアードワイヤを用いたテストを行った。
【0151】
この装着されたコアードワイヤは、以下の三つの段階で製造される:
−コアードワイヤを空にする;
−シームから180度の角度で、コアードワイヤの内部の鋼製シースと接触する状態で熱電対を配置;
−コアードワイヤを粉体で満たす。
【0152】
電気接続部と熱電対の導線は鋼製チューブによって保護されている。
【0153】
前記装着されたワイヤを、製鋼設備の溶鋼取鍋に導入し、所定時間が経過した後に取り出す。
【0154】
前記浴をアルゴンで継続的に攪拌することで、溶鋼浴の表面の上方の自由行程に不活性雰囲気が形成され、これによって、コアードワイヤ上の紙が不用意に燃焼するリスクが制限される。
【0155】
図13〜21において、Iで示す地点がコアードワイヤの溶鋼取鍋への導入箇所に対応している。
【0156】
最初、紙による被覆のないコアードワイヤを用いて参照テストが行われ、この参照用コアードワイヤ内の温度の時間経過に応じた変化が図13に示されている。
【0157】
図13中のD地点での温度の低下は熱電対の破損に関連するものである。
【0158】
図14は、前記参照用ワイヤ(参照符号14a)で得られた結果と、カルシウムからなるコアと鋼製シースとの間に配置されたクラフト紙の層を有するコアードワイヤ(参照符号14d)で得られた結果とを比較している。
【0159】
図14を見ると、コアードワイヤの内部にクラフト紙を使用すると、温度上昇を0.4秒間だけ遅延させ、したがって、破壊までの合計時間を0.7秒だけ遅延させ得ることが分かる。
【0160】
図15は、参照用ワイヤで得られた結果(曲線15a)と、クラフト紙の二つの外層を備えた二つの装着されたワイヤで得られた結果(曲線15b,15c)とを比較している。
【0161】
得られる温度上昇の遅延は0.8秒間と1.2秒間であり、コアードワイヤが取鍋の底に到達可能となる。
【0162】
曲線15b及び15cにおける温度の急激な上昇は、コアードワイヤの鋼製シースが溶鋼浴に直接接触して、クラフト紙が完全に破損される瞬間に対応している。
【0163】
図16によって、参照用ワイヤで得られた結果(曲線16a)と、二層のクラフト紙と二層のアルミナイズド紙とによって保護されたコアードワイヤによって得られた結果(二つのテスト曲線16b,16c)とを比較することが可能である。
【0164】
図16の曲線は、2層のクラフト紙と2層のアルミナイズド紙との存在が、従来の参照用ワイヤに対して、温度上昇を約1秒間遅延させることを示している。
【0165】
図17には、3層のクラフト紙と2層のアルミナイズド紙とによって保護された2つのサンプルで得られた結果(曲線17b及び17c)の、参照用ワイヤの値(曲線17a)との比較が示されている。
【0166】
図18は、6層のクラフト紙によって得られた結果と2層のアルミナイズド紙とによって得られた結果(曲線18b及び18c)を参照用ワイヤ(曲線18a)と比較することを可能にする。
【0167】
この場合における温度上昇は1.2秒間以上遅延されている。
【0168】
図19の曲線19bは、4層のクラフト紙と1層のアルミニウムとによって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示しており、参照用ワイヤ、曲線19aに対する温度上昇の遅延は0.6秒間である。
【0169】
図20の曲線20bは、8層のクラフト紙と1層のアルミニウムとによって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示し、参照用ワイヤ、曲線20aに対する温度上昇の遅延は0.8秒間である。
【0170】
曲線20cは、コアードワイヤをスラグ内に横方向に浸漬させ、溶融鋼に浸透させなかったテストに対応しており、このテストはスラグの温度を1200℃であると間接的に示している。
【0171】
図21の曲線21b及びcは、2層のアルミナイズド紙によって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示しており、温度上昇の遅延は、参照用ワイヤ、曲線21aに対して約0.7秒間であり、これらの結果は図18の結果と対比される。
【0172】
図2〜12を参照しつつ記された上述の数値的及び実験的結果からは、コアードワイヤに設けられたを外側の紙層は断熱材を構成し、この断熱材は、従来のコアードワイヤに対して、場合に応じて0.6秒〜1.6秒の間、コアードワイヤを保護することができるということが確認できる。
【0173】
本出願人は、この保護作用が熔融金属浴中における紙の熱分解によって得られること、その場合、紙が特に取鍋内の熔融金属浴上で自由移動する際にあらゆる燃焼から保護される必要のあることを知見として見出した。
【0174】
燃焼のリスクは、熔融金属取鍋の上方でアルゴンを吹き込むことによって、又は、前記紙を水に浸漬することによって、又は、紙を金属の帯で被覆することによって、低減することができる。
【0175】
本出願人の文献FR2,810,919は、鋼製外包と粉末状又は粒子状添加物を含む鋼製シースとの間に断熱紙を用いることを記載している。
【0176】
前記鋼製外包は、コアードワイヤの操作中に紙がダメージを受けることを防止する役目を有する。
【0177】
本出願人は、文献FR−2,810,919に記載されているような「ハイブリッド」ワイヤでは、縫合帯(綴じ領域)内において全ての金属/金属間接触が回避されるように、紙が縫合帯またはオーバーラップ領域に存在し、紙が熔融金属浴中で熱分解しない限り、温度上昇の著しい遅延が可能にならないことを発見した。
【0178】
上記の実験作業は、Concours d’Armines, Centre d’Energetique, Ecole des Mines de Parisの協力で行われた。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】コアードワイヤの液状鋼浴への導入原理を示す図
【図2】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図3】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図4】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図5】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図6】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図7】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図8】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図9】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図10】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図11】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図12】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図13】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図14】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図15】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図16】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図17】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図18】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図19】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図20】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図21】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧密化された粉体又は粒子状の材料を収納した筒状外包であって、これらの芯入り外包は熔融金属、特に鋼の処理に使用され、一般的に「コアードワイヤ(“cored wire”」と称されているものの技術分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
これらのコアードワイヤを熔融金属浴に導入することは、特に、これらの浴の組成物に対する精製、脱酸、ガス抜き、沈静(キリング)及び/又は改質を可能にする。
【0003】
従って、例えば鋼に転換される高炉銑鉄の脱硫では、Mg及びC2Ca或いは更にNa2CO3、CaCO3、CaO、MgOさえ含有するコアードワイヤを用いることが知られている。
【0004】
コアードワイヤは、通常、鋼の二次冶金処理、中でも取鍋(取鍋)攪拌、粉体注入、CAS(シール下での組成調整)、取鍋アーク炉、RH(Ruhstahl Heraeus)脱ガス、真空処理に使用される。
【0005】
コアードワイヤは、銑鉄の脱硫、GS銑鉄の獲得、鋳鉄の接種(inoculation)に用いられる。
【0006】
銑鉄の接種は、セメンタイトを犠牲にして、グラファイトの発生を促進する元素、例えば、アルカリ、アルカリ土類(Ca)またはビスマスの珪素合金を銑鉄に導入することからなる。一般的な原則として、脱硫、ノジュール化、及び接種が順番に行われる。マグネシウムと炭化珪素がしばしば用いられ、浴温は鋼鍋よりも低い1300〜1400℃の範囲である。
【0007】
コアードワイヤの鋼に対する主な作用は、脱酸、脱硫、不純物制御、及び、鋼の色調調整である。
【0008】
脱酸操作は、転炉又は電気アーク炉からの溶鋼中に溶解している酸素(約500ppm以上の酸素)を、脱酸剤(その一部は溶湯中に溶けた形で残る)と結合させる工程からなる。種々の酸化成分と平衡状態にある、1600℃の熔融金属中に溶解している酸素の活性曲線を調べると、比較的穏やかなアルミニウムの添加によって残留酸素含有量の大幅な低減が可能で、それによって純粋なアルミナが形成されることが理解される、したがって、均一な製品のためにはアルミニウムが脱酸剤として非常に有効である。
【0009】
電気アーク炉の鍋からは、多かれ少なかれ脱炭、脱硫された、しかし、沸騰性(effervescent)の金属が得られる。その溶解酸素の含有率を考慮すると、CO%×O%の積の値のために、或る温度では、溶鋼浴中でCO形成が自発的となる。
【0010】
以後、一次溶鋼浴の沸騰性を鑑みて脱酸をキリングと称する。
【0011】
コアードワイヤ中に含まれる脱酸剤は鉄系合金であり、多くの場合(フェロシリコン、フェロマグネシウム、アルミニウム)である。これらの脱酸剤が酸化物(シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ)の形成をもたらし、これらの酸化物は、取鍋の適度な攪拌によってスラグ中に吸収される。
【0012】
あらゆる予防策にも拘らず、アルミナの残留含有物によって、鋳造ノズルの詰まりや、薄型スラブ連続鋳造装置からの製品のような小さな断面の最終製品へのキズなどが発生し得る。
【0013】
また、コアードワイヤは従来からアルミニウムキルド鋼用のカルシウムを含む。アルミニウムキルド鋼にカルシウム合金を添加すると、カルシウムによる部分還元によって、アルミナ介在物が改質される。約1600℃付近の溶鋼温度ではカルシウムアルミネートは液状であるため、それらのCaO含有率が40%から60%の範囲である場合は製品上で球状となる。介在物の改質を得るのに必要な溶液中のカルシウム量は、金属浴のアルミニウム含有率に依存する。従って、コアードワイヤによって導入されるカルシウムの大部分は、熔融金属中では、アルミネートの液状介在物の形態で見られ、数ppmを超えない。
【0014】
実際には、コアードワイヤに含有されるカルシウムの急激な揮発によって引き起こされる溶鋼の激しい沸騰を回避することは困難である。事実、カルシウムの蒸気圧は1600℃で約1.8atmである。もしも沸騰が余りにも激しければ、鋼浴中へのコアードワイヤの浸透条件が擾乱され、鋼浴の汚染を伴い、鋼浴が酸化或いは再窒化される可能性がある。同時に、スラグ層を貫通する溶鋼の飛散が生じて、再落下前に空気と接触して酸化される。さらに、溶鋼が取鍋の外に飛散する危険性がある。
【0015】
その結果、得られた鋼中のO2、N2更にはH2の含有量が増大する可能性がある。沸騰は、カルシウムを非合金としてではなくCaSiの形態として投入することによって減少するが、深絞り用など或る種の鋼には好ましくない珪素を溶鋼に導入するという不都合がある。
【0016】
この不都合を解決するために、カルシウムをCaNi合金として、場合によって少量のCaSi合金に混合して、導入する方法が提案されている。その他の解決法が刊行物EP−0,190,089に提示されている。
【0017】
この不都合を解決するために、窒素含有量の低い溶鋼の場合、金属表面と取鍋との間の空間をアルゴンの注入によってパージングすることが考えられる。実際には、炉は気密性ではなく、アルゴンの流れが強いと空気の吸引をもたらし、アルゴンの流れが弱いと溶鋼の取鍋の上方の気体容積に望ましくない不活性化時間をもたらす。
【0018】
また、ポーラスプラグを介したアルゴンによって取鍋を攪拌又は発泡すると、スラグの表面が隆起し、それによって、コアードワイヤを同時に導入する際に、同隆起が熔融金属と空気との直接接触を引き起こし、蒸発又は酸化によってカルシウムの損失が更に増大する。
【0019】
カルシウム添加の見掛けの回収率は鋼の介在物の反映に過ぎない。コアードワイヤによって添加されるカルシウムの最大部分は、蒸発及び/又は大気、スラグ、及び耐火物との酸化によって失われるので、この回収率は低い。
【0020】
従って、これらの二次反応を最小化するには、介在物を注意深くパージングした後でカルシウムを添加すること、及び、その添加を、これら介在物にとって望ましい速度に調節することが非常に重要である。
【0021】
すなわち、タンディッシュ中の耐火物及び/又は粉体とのカルシウムの接触から生じる外生介在物(酸化物)を、金属の固化前に除去することは実際には困難である。これらのアルミナ介在物は固体であり、例えば連続鋳造ノズルを閉塞させることからカルシウムアルミネートよりも有害である。
【0022】
カルシウムコアードワイヤによってアルミニウムキルド溶鋼を処理すると、アルミニウム含有率が低く硫黄含有率が高い鋼の場合、連続鋳造ノズルに硫化カルシウムが形成される可能性がある。
【0023】
コアードワイヤ中に閉じ込められた化学成分の添加による介在物状態の制御は本質的に酸化物と硫化物に関連する。
【0024】
硫黄の添加はマンガン硫化物の量と鋼の加工性を増大させる。
【0025】
カルシウム、セレニウム、テルルを添加すると、組成、及び、後の変形時における介在物の形態学的特性又はレオロジー学的挙動の改質が可能になる。
【0026】
介在物特性の制御は、特にロール用鋼、丸削り用鋼、圧縮空気アーマチュア用の鋼にとって非常に重要である。
【0027】
したがって、鋼の脱酸と介在物状態の制御は、コアードワイヤの作用のために、鋼メーカのノウハウに属する複雑な操作であり、コアードワイヤの品質、特に、組成の均一性と圧密化の均一性が非常に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
コアードワイヤの製造と使用方法は、実に多くの実地的課題を提供するが、そのうちの一部について以下に記載する。
【0029】
不十分又は不均一な圧密化
コアードワイヤに含まれる材料の不均一な圧密化は、単位時間当たりに、鋼浴又は金属液中に導入される材料の量の不均一性をもたらす。
コアードワイヤに含まれる材料の不十分な圧密化は、単位時間当たりに、鋼浴又は金属液中に導入される材料の量を減少させる。
もしも、圧密化が不十分であれば、粉末状の材料がコアードワイヤ内に進入する可能性がある。
【0030】
巻き戻し時における過剰な機械力
もしも圧密化処理において金属製外包の著しい塑性変形を必要とするならば、コアードワイヤの外包の冷間加工による剛性の増大が、特に曲率の小さい小半径ドラムからの巻き戻し力を大幅に増加させる。
ここでドラムという用語は、ダイナミックと呼ばれる調整用リール、及び、スタティックと呼ばれる調整ケージの壁部の双方を指す。
【0031】
コアードワイヤの不十分な剛性
一部のコアードワイヤ、特に矩形断面のものは、ある種の高密度金属浴に深く導入するには、特にこれらの浴が高粘度のスラグによってカバーされている場合、剛性が不十分である。
【0032】
巻き戻し中の螺旋状変形
スタティックケージ上に調整されたコアードワイヤの巻き戻し中に、ワイヤが螺旋状に変形することが観察されており、これにより、このコアードワイヤは、熔融金属浴に入り込まず、湾曲して浴の表面に残る。
【0033】
コアードワイヤの外包破損
格納リール又はケージからのコアードワイヤの巻き戻し中、又は、液浴へ導入前のワイヤの癖取り処理中において、コアードワイヤの外包の剥がれ落ちが見られる場合がある。
コアードワイヤの外包を閉鎖する他の技術(縁部どうしの近接、オーバーラップ、溶接)では別の不都合が起きる。外包が厚過ぎると粉末/シース比率が下がり、溶接時の粉末劣化の危険性が生じる。
【0034】
所定量の添加物の浴への導入に必要な時間の減少
ワイヤの浴中への導入速度が増加すると、ワイヤが容器の底部に衝突する、或いは、溶解するための十分な時間がたつ前に浴から戻る場合にアクシデントが発生する可能性がある。
ワイヤ径の増大によって巻き取り径が増大すると、ワイヤを巻き取るためのスプールがあまりにも大きくなり、鋼ミル内の小さな利用可能空間では容易に使用できなくなる。
因みに、150トンの取鍋にCaSiを鋼のトン当り1kgで導入するには、密度が240g/mのコアードワイヤ中に収められた150kgのCaSiの粉末、すなわち625mの長さのコアードワイヤが必要であり、このようなキロメートル級のワイヤを2m/sで導入するには5分間以上の作業時間を要する。
【0035】
コアードワイヤの早期破壊
もしもコアードワイヤの外包が早期に破壊されるならば、金属浴中への侵入直後に急速に溶解することによって、ワイヤの中身が浴の表面近傍へと放出される。
【0036】
熔融金属浴中でのワイヤのU形状変形
更に、或る公知文献には、コアードワイヤがその剛性を失い、熔融金属浴中に次第にU状に変形し、ワイヤの中身が放出される前にその端部が表面へと上昇する可能性があると記載されており、この上昇作用は、特に、一般的にワイヤの見掛け上の密度が金属浴のそれよりも低いために生じる静止した鉄からの浮力によるものである。
もしもコアードワイヤがCa,Mgを含有していれば、これらの元素が、熔融金属浴中の浅いところで放出され、例えば、鋳物の脱硫において歩留まりの非常に大きな低下をもたらす。
熔融金属浴の表面近くでカルシウムの大きな放出があると、それによって、溶融金属の激しい反応と飛散が起こる。
【0037】
熔融金属浴へのコアードワイヤの不十分な侵入深さ
例えば、米国文献4,085,252には、ワイヤの侵入深さ:L、金属外包の厚さ:eと、セリウムのバーの直径:dとの以下の関係が記載されている。
【0038】
L=1.7(e+0.35d)v.10-2
【0039】
ここで、vはワイヤの導入速度であり、これは安全性の理由から3〜30m/分以内とされる。
もしも深さLが例えば30cm等と小さければ、コアードワイヤに含有される製品がスラグと接触し、それによって失われる可能性が高くなる。
深さLが小さすぎると、熔融金属浴中における、コアードワイヤに含有される化学成分(または元素)の分布が不均質になる可能性もある。
【0040】
ワイヤに含有される粉体の反応性と、連続鋳造設備の詰まり
米国文献4,143,211に記載されているように、希土類、Al、Ca、Ti、の酸素に対する化学的親和性によって酸化物が形成され、これらが連続鋳造設備に使用される流量制限ノズルの内壁に付着し、それによって、それらを部分的又は完全に詰まらせる可能性がある。
従って、所望の結果(脱酸、介在物形態制御、機械抵抗、等)のために丁度必要な量の反応物の均質導入を容易にするコアードワイヤを鋼製造業者に提供することが求められている。
これらの技術問題のうちの少なくとも1つを解決するために、下記の文献によって例示されるように、コアードワイヤに関して非常に多数の構造と製造方法とが提案されている。
【0041】
ヨーロッパ特許出願公開番号:0.032.874,0.034.994,0.044.183,0.112.259,0.137.618,0.141.760,0.187.997,0.236.246,0.273.178,0.277.664,0.281.485,0.559.589;
【0042】
フランス特許出願公開番号:2.235.200,2.269.581,2.359.661,2.384.029,2.392.120,2.411,237,2.411.238,2.433.584,2.456.781,2.476.542,2.479.266,2.511.039,2.576.320,2.610.331,2.612.945,2.630.131,2.688.231;
【0043】
米国特許公開番号:2.705.196,3.056.190,3.768.999,3.915.693,3.921.700,4.085.252,4.134.196,4.147.962,4.163.827,4.035.892,4.097.267,4.235.007,4.364.770,4.481.032,4.486.227,4.671.820,4.698.095,4.708.897,4.711.663,4.738.714,4.765.599,4.773.929,4.816.068,4.832.742,4.863.803,4.906.292,4.956.010,6.053.960,6.280.497,6.346.135,6.508.857。
【0044】
上述の文献のうちの少数を簡潔に示すことによっても、導入部に記載した種々の技術的問題に対応するために多種多様な技術的解決手段が考慮されていることがわかる。
【0045】
EP−B2−0.236.246に記載されたコアードワイヤが備える金属外包は、その周部が折返し仕上げされ、そこで閉じられ、そのエッジがコアードワイヤのコアを形成する圧密化されたマス内に係止されている。
【0046】
縫合(シーミング)は、コアードワイヤ外包の母線に沿って行われるが、場合によって、縫合帯の全幅に亘って横断方向のギザギザでロック−シームを形成することによって補強できる。コアードワイヤの圧密化は、前記縫合帯の反対側に開放折り目を形成し、その後、この折り目を径方向の圧力によって閉じることによって得られる。
【0047】
前記コアードワイヤの外包は、鋼又はアルミニウムから成り、例えば、Ca30重量%のCaSiの粉体状合金を含有する。
【0048】
文献US−4.163.827に記載されたコアードワイヤは、樹脂又はポリウレタンなどのバインダーポリマーに浸漬された、粉体状の、Ca、Alからなるフェロシリコンベースを備えるコアを有し、前記コアは、0.025mm〜0.15mmの厚さの、金属、プラスチック又は紙の単層又は複数の螺旋ロールによって封入される前に押出される。このタイプのコアードワイヤは多くの欠点を有する。第1に、前記樹脂を形成する材料は、熔融金属浴にとって許容不能な汚染源となる。第2に、ワイヤの機械的強度と剛性は極めて不十分である。
【0049】
第3に、前記フェロシリコン粉体は、熔融金属に対して事実上、保護されていない。
【0050】
文献EP−0.032.874に記載されたコアードワイヤは、少なくとも部分的に、100ミクロン以下の厚さのシート形状である有機合成材料又は金属材料の外包によって包囲された、添加物を含有する薄いシート状の金属溶接シースを有する。前記ワイヤは平坦な形状である。前記薄いシートは、ポリエチレン、ポリエステル又は塩化ポリビニールから成り、シール手段を形成し、必要に応じて熱収縮可能とすることができる。この平坦ワイヤについてその製造工程は記載されておらず、そのコンセプトは、工業的な発見というより空想的なものであるように思える。
【0051】
本出願人の文献FR−2.610.331は、中間金属筒状壁に取り囲まれた、第1粉体状又は粒状材を含む軸方向領域と、この中間壁とコアードワイヤの外包との間に位置し、第2粉体状又は粒状材を含有する環状領域とを有するコアードワイヤを記載している。前記軸方向領域は、好ましくは、処理される浴に対して最も反応性の高い材料を含有している。
【0052】
このコアードワイヤの外側金属製外包が破壊されない限り、前記環状領域を満たす前記材料が断熱材として作用し、前記中間壁の温度上昇を低減し、これによってワイヤが曲がる虞を低減し、それによって、中間壁がある程度の剛性を維持するので、ワイヤが浴に入ることを防止する。
【0053】
文献US−3.921.700は、鋼製外包を備えるコアードワイヤを記載し、これは、軸芯のマグネシウムワイヤと、鉄紛とを含む。鉄粉は低熱伝導率で高熱容量性のため、コアードワイヤが液状鋼中に浸されたときに、マグネシウムがあまりも急激に加熱されることを保護する断熱材を形成する。変形例として、前記鉄紛には、グラファイト又はカーボンが混合される。
【0054】
コアードワイヤの使用によって生じる技術的な問題のうちの幾つかは、このワイヤが、1600℃の鋼取鍋などの熔融金属浴に浸された時にこのワイヤに何が起こるかを正確に判断することが事実上不可能という事実から生じる。特に、次の疑問は微妙なものである。浴中におけるワイヤの形状はどのようなものか(真っ直ぐが、それともU状に湾曲しているか)。そして、どの深さまで、それは溶解によって分解されるか。従来技術においては、断片的で、時として矛盾する情報以外、この点について何も判っていない。
【0055】
文献FR−2.384.029は、珪素含有率が65重量%以上の突き固められた粉末状フェロシリコンの混合物を覆う鋼製外包からなる接種ワイヤについて記載している。この先行文献によれば、珪素は、その熔融金属への導入中に、以下のような状態で、ワイヤの鋼製シースに向かって拡散する。
−ワイヤに含有される接種剤の溶解温度が低下する、
−ワイヤのシース用鋼の溶解温度が低下する。
ワイヤのシースの外表面を貫通してカーボンが拡散する。
【0056】
この先行文献によれば、75%珪素のフェロシリコン(溶解温度1300℃)を含む軟鋼製シース(溶解温度1538℃)を含むコアードワイヤは例えば、1400℃のネズミ鋳鉄に浸漬された場合、約1200℃で溶解し、この溶解は、シース中の珪素の拡散によって軟鋼の溶解温度が低下するという事実によって、前記シースの内側部分から生じる。
【0057】
文献US−4.174.962は、この珪素の溶解のほかに、たとえそのシースの溶解温度が熔融金属浴の温度よりも高い場合においても、腐食と拡散とによって、コアードワイヤのシースの外壁が分解することについて記載している。
【0058】
文献US−4.297.133は、複層に巻回された紙製のチューブについて記載し、このチューブは金属膜シールによって封止されている。前記紙製の燃焼時間は、前記チューブが1600−1700℃の熔融金属浴に入れられた場合、三秒間であると記載されている。
【0059】
本出願人は、文献Fr−2.821.626及びFR−2.810.919において、可燃性で断熱性である、花火用(pyrotechnical)の紙として知られている紙から形成されているので、有害な残滓を残すことなく、ワイヤの中心部に向かう熱の伝播を一時的に遅延させる紙からなる外包を備えるコアードワイヤについて記載した。
【0060】
本出願人によるこれら二つの先行文献によれば、紙層の数を増加させることによって、カルシウムを含むコアードワイヤの爆発、または、このカルシウムの揮発が遅延され、従って、ワイヤ中の内容物との浴の表面反応、更に、それから生じるリスク、即ち、浴の酸化及び/又は再窒化、熔融金属の飛散、煙の発散、コアードワイヤによって導入される添加物の処理の非常に低い回収率を回避するのに十分な深さでコアードワイヤを熔融金属浴中に注入することができる。
【0061】
これらの先行文献によれば、前記花火用紙がゆっくりと燃焼することによって、熔融金属浴の組成物に影響を与える燃焼残滓が発生せず、それが流れる浴の挙動に変化を与える介在物を発生することがない。文献FR−2.821.626によって記載されている実施例では、熔融金属浴中に有害な痕跡を残すことのない燃焼性花火用紙のシースの上方に、花火用紙がコアードワイヤリールに巻き付けられる時、又は、コアードワイヤがこのリールから巻き戻される時に、花火用紙の層がダメージを受けることを防止するべく、金属保護層を設けている。
【0062】
本出願人は、又、なぜ、文献FR−2.821.626又はFR−2.810.919に記載されているコアードワイヤは、螺旋状に巻回された帯状紙を剥ぎ取られたものよりも必ずしも良好な回収率を提供しないかについて疑問をもった。
【0063】
本出願人は、更に、その熔融金属浴中での寿命が、従来のワイヤと比較して長く、それが熔融金属浴中で所定の温度にまで達することが可能なコアードワイヤを提供することによって上記の技術問題を解決することに努めた。
【0064】
本出願人は、多岐に渡りかつ長期に渡るテストの結果、特に以下の事柄を発見した。
【0065】
1)コアードワイヤが熔融金属浴(コアードワイヤの自由移動領域)に入る前に、文献FR−2.821.626又はFR−2.810.919に記載されているコイル状紙が全部燃焼することを回避することが重要であるということ。
【0066】
2)この燃焼を回避するための幾つかの手段、
【0067】
3)コアードワイヤが熔融金属浴に入る前に紙の燃焼が起こらないようにすれば、コアードワイヤの寿命が確実に増加すること、文献Fr−2.821.626又はFr−2.810.919の記載内容とは異なり、紙は必ずしも、花火用、M1クラス、又は燃焼に対して抵抗を有するものである必要はないこと、その紙は熔融金属浴中では燃焼せず、むしろ熱分解して、現時点において本出願人にとって未知である熱物理的特性を有する物質へと変化し、この熱分解は後に詳述する或る種の手段によってのみ達成されること。
【0068】
すなわち、本出願人は、熔融金属浴中におけるコアードワイヤの寿命を増加させる安価で確実な手段を見出したのであり、これらの手段は、コアードワイヤに関して従来開示されているすべての構造体に適用可能であり、これらの手段は、種々のタイプの公知のコアードワイヤの個々の利点を超える有利な技術的作用を奏するものである。
【課題を解決するための手段】
【0069】
そこで、本発明に係るコアードワイヤは、少なくとも一層の断熱層を有し、この外部断熱層は溶鋼などの熔融金属浴との接触に際して熱分解する材料から形成されている。
【0070】
種々の実施例の方法によれば、前記コアードワイヤは、次の特徴を、場合によっては互いに組み合わせた形で有する。
【0071】
−当該コアードワイヤは、金属シースを取り囲む外部断熱層を有し、この外部断熱層は熔融金属浴との接触に際して熱分解する材料から形成されている。
【0072】
− 前記熱分解性材料は、クラフト紙、アルミナイズド紙、又は、少なくとも1枚のクラフト紙片と少なくとも1層のアルミナイズド紙とを含む多層紙である。
【0073】
− 前記熱分解性材料は、薄い金属シートによってカバーされている。
【0074】
− 前記薄い金属シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。
【0075】
− 前記熱分解性材料は熱分解の前に0.15〜4W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する。
【0076】
− 前記熱分解性材料は熱分解の前に0.025mm〜0.8mmの範囲の径方向厚さを有する。
【0077】
− 前記熱分解性材料は約500℃での熱分解開始温度を有する。
【0078】
− 前記熱分解性材料は、水または気化潜熱の高い、特に、2MJ/kgを超える気化潜熱を有する化合物を含む。
【0079】
− 前記熱分解性材料は、湿潤紙層を有する。
【0080】
− 前記熱分解性材料は、内側の金属シースへの接着を介してコアードワイヤに固定されている。
【0081】
− 前記熱分解性材料は、ワイヤの内側の金属製シースと外側の金属製外包との間に配置される。
【0082】
− 前記外側の金属製シースは、縫合帯部内での金属/金属どうしの直接接触が全て防止されるように、前記熱分解性物質を縫合帯部内で間に配置させて綴じられている。
【0083】
− 前記内側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有し、前記外側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有する。
【0084】
− 前記熱分解性材料は厚さが0.1〜0.8mmの範囲の単層又は複層のクラフト紙である。
【0085】
− 前記コアードワイヤは、粉末、或いは、圧密化された又は樹脂内に浸漬された粒子の形態で、Ca、Bi、Nb、Mg、CaSi、C、Mn、Si、Cr、Ti、B、S、Se、Te、Pb、CaC2、Na2CO3、CaCO3、CaO、MgO、希土類で構成されたグループから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0086】
本発明のその他の課題及び利点は、貼付の図面を参照して記載される、以下の実施例の方法の記載から明らかになるであろう。
【0087】
ここで、図1は、液状鋼浴へのコアードワイヤの導入の原理を示し、図2〜12は、数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線であり、図13〜21は、出願人が実施したテストプログラムから得られた時間−温度曲線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
図1を参照すると、これはコアードワイヤの溶鋼取鍋への導入の原理を示している。
【0089】
コアードワイヤ(1)は、本出願人による文献FR−2.703.334に記載されているようにケージ(2)から取り出されるか、若しくは、リール(3)から取り出されて、インジェクタ(4)に導入される。
【0090】
このインジェクタ(4)はワイヤをガイドチューブ(5)に送り込み、コアードワイヤは、このガイドチューブ(5)から、取鍋(7)に貯留された溶鋼(6)の表面から約1.00〜1.40メートルだけ上方の高さに出る。
【0091】
コアードワイヤ(1)は、このようにして、熱的に非常に異なる3つの環境に置かれることになる。即ち、
【0092】
− コアードワイヤがガイドチューブ内に位置する第1の環境、
− コアードワイヤが溶鋼の上方に位置し、周囲の雰囲気と直接接触する第2の環境、
− 前記鋼浴又は熔融金属自身である第3の環境。
【0093】
装着されたコアードワイヤを用いたテストの回数を制限するために、出願人は先ずコアードワイヤの行程を熱的にシミュレートすることに努めた。
【0094】
このモデル化においては、平坦で不透明で灰色で拡散した表面の間の三次元的熱輻射交換が形状係数及び伝達係数の計算によってシミュレートされた。
【0095】
形状係数は平坦束(flat flux method)法によって計算され、伝達係数はマルチ反射拡散を考慮に入れた被覆法(coating method)によって計算された。
【0096】
前記ガイドチューブ内では、受け取られる熱束(flux)は、形状係数1のコアードワイヤを包囲するガイドチューブから来る輻射であると想定される。
【0097】
ガイドチューブ5を出て熔融金属浴6に入る前のコアードワイヤの行程に関しては、熱束は熔融金属浴6と取鍋7の壁から来る輻射と考えられる。
【0098】
熔融金属浴6の内部では、表面温度が課される場合、伝達は交換率が約50,000W/m2Kの対流と考えられる。
【0099】
コアードワイヤの外表面の総放射率は0.8に等しいと見なされ、ガイドチューブのそれは1に等しく、浴のそれは0.8に等しいと考えられる。
【0100】
交換される輻射熱フラックスは、ステファン・ボルツマンの法則に従って下記の式によって表される。
【0101】
Φ=εxFxσx(Τ41−Τ42)
ここで、
Φ:二つの表面間で交換される熱束W/cm2
ε:二つの表面の放射率を考慮に入れた係数
F:二つの表面どうしの表面積、形状及び配向を考慮に入れた形状係数
σ:ステファン・ボルツマン定数で5.67x10-8W/m2Kに等しい
Τ1及びΤ2:二つの表面の絶対温度ケルビン、Τ1はΤ2より大。
【0102】
図2は、熔融金属浴の上方距離に対する、コアードワイヤと熔融金属浴との間の伝達係数(εxF)の変化を示し、横軸上のゼロの値は熔融金属浴の表面に対応する。
【0103】
コアードワイヤは、三つの同心円筒状層、すなわち、鋼によってシースされたカルシウムのコアを備え、この鋼製シースは紙によって被覆されていると考える。
【0104】
数値シミュレーションにおいては、カルシウムのコアの直径は7.8mmで、鋼製シースの厚さは0.6mmであり、紙の厚さは、例えば8層の積層紙の場合は0.6mm等、様々な値に設定できる。
【0105】
前記シミュレーションにおいては、コアードワイヤは、中実なカルシウムのコアで形成され、鋼製シースと接触しており、この鋼製シース自体も中実で紙と接触していると考える。
【0106】
ガイドチューブ5は、
T1=L1/v
によって示される時間T1中にコアードワイヤにエネルギを与える温度一定の鋼製中空円筒によって表される。
ここで、L1はガイドチューブ5の長さ、vはコアードワイヤのチューブ5内での通過速度である。
【0107】
前記数値モデル中において、熔融金属浴と取鍋7の壁とは、ワイヤが浴6の上方に位置するか、熔融金属浴6内に位置するかによって、輻射及び対流でコアードワイヤに向かう1600°に等しい温度の容積によって表される。
【0108】
熱交換は、コアードワイヤが熔融金属浴6に入る時間T2から始まる、非常に高い交換係数(50,000W/m2K)を備えた対流である。
【0109】
T2は下記のように計算される:
T2=L1+L2/v:
ここで、L2はガイドチューブ5の下端部と熔融金属浴6の表面との間の距離である。
【0110】
コアードワイヤの送り速度は2m/sに等しく、コアードワイヤの初期温度は50℃である。
【0111】
ガイドワイヤ5を超え熔融金属浴内へ導入される前のコアードワイヤの自由移動は1.4mに等しい長さであると考えられる。
【0112】
ワイヤは、計算によれば、カルシウムからなるコアの表面が1400℃を超える温度の時に破壊されると考えられる。
【0113】
図3に図示されるように、前記モデル化は、熱保護無しの参照用コアードワイヤでは前記カルシウムからなるコアの表面温度が自由移動中には70℃しか上昇せず、2m/sの速度で熔融金属浴中へ僅か30cmの移動した後には0.15秒間で1400℃の閾値に達することを示している。
【0114】
鋼製シースとカルシウムからなるコアとの間の温度勾配は、計算によれば65℃を超えない。
【0115】
従って、カルシウムらなるコアの表面の温度が1400℃の時、鋼製シースの外表面上の温度は1465℃であり、鋼製シースはコアードワイヤの破壊前には溶解しないため、この数値シミュレーションでは、鋼製シースの溶融潜熱は考慮に入れていない。
【0116】
図4は、コアードワイヤのカルシウムからなるコアの表面温度の時間に対する変化を示す4つの曲線を与えており、これら4つの曲線のそれぞれは保護紙の種々の厚さに対応している。即ち、
【0117】
曲線4aは0.025mm、
曲線4bは0.05mm、
曲線4cは0.1mm、
曲線4dは0.6mm
【0118】
図3と図4との比較は、数値シミュレーションによって、鋼製シースを包囲する前記紙の保護作用を示し、この紙の作用が紙厚の増加に従って増加することを示している。
【0119】
図4に示されている曲線は、紙層が燃焼されずそのままの状態であると考慮することによって得られた。
【0120】
この仮説によれば、コアードワイヤが熔融金属浴の底に達するまでは、このコアードワイヤを保護するためには0.025mmの断熱で十分であろう。
【0121】
しかし、紙の燃焼温度は約550℃の付近にある。
【0122】
自由移動中における紙の表面温度の上昇の研究が、実際には優位である対流の影響を無視して実施された。
【0123】
図5には、紙の厚さが0.6mmでコアードワイヤの巻き戻し速度が2m/sである場合における、コアードワイヤの自由移動の最初の一秒間中における、紙の伝導率に応じた、紙の表面温度の変化が示されている。
【0124】
曲線5aは、0.1W/m・Kの伝導率に対応し、曲線5bは0.15W/m・Kの伝導率に対応し、曲線5cは0.2W/m・Kの伝導率に対応している。
【0125】
図5は、紙の燃焼の可能性が高く、コアードワイヤの自由移動中の紙の破壊を排除すべきではないということを示している。
【0126】
図6は、紙の熱伝導率が0.15W/m・Kで、コアードワイヤの注入速度が0.2m/sである場合の紙の表面温度の進展を図示し、曲線6aでの紙の厚さは0.6mm、曲線6bでは0.2mm、曲線6cでは0.1mmである。
【0127】
図6は、紙の厚さを減らすことにより、この紙の表面温度が低下し、従って、熔融金属浴上方でコアードワイヤが自由移動する際の燃焼のリスクも減少することを示唆している。
【0128】
当業者にとって周知のように、鋼などの熔融金属浴の表面は熱スクリーンを形成するスラグ層によって被覆されており、図7は、コアードワイヤを被覆している紙の温度が、輻射源の温度変動の影響を著しく受けることを示している。
【0129】
曲線7a,7b,7c及び7dは、それぞれ、1500,1400,1300及び1200℃の放射面の温度に対応している。
【0130】
図7に図示されているシミュレーションでは、コアードワイヤの注入速度は2m/sであり、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kであった。
【0131】
実験的なテストにおいて確認されたこれら数値シミュレーションによって、本出願人は、文献FR2.810.919中に記載されたような構造を用いた時に得られた結果の不定性は、コアードワイヤが熔融金属浴の上方で自由移動する時の紙の燃焼に基づいており、それ以後、熔融金属浴の内部では、この紙は最早コアードワイヤに対して熱保護の作用を果たさないという仮説を得ることができた。
【0132】
本出願人は、紙は溶鋼浴中で燃焼せず熱分解するという補足的な仮説を得た。
【0133】
次に、本出願人は、紙が温度によって二つの異なる熱伝導率を有する物体であると考慮することによって数値シミュレーションを行った。即ち:
−当初の紙が持つ第1の伝導率(0.15W/m・K)。この第1の伝導率は熱分解が開始される約500℃の温度まで維持される;
−熱分解した紙の温度が600℃の時に達するものと推定される第2の伝導率(300W/m・K)。この600℃の温度に到達する時に熱分解は完了すると推定される。
【0134】
500℃と600℃との間では、0.15W/m・Kから300W/m・Kまでの伝導率の変化はリニアであると推定される。
【0135】
図8は、コアードワイヤ中に含まれるカルシウムの表面温度に対する数値シミュレーションの結果を示し、紙は熱分解された直後に熔融金属浴中に溶解されると推定されている。
【0136】
曲線8aは、保護紙が無い従来のコアードワイヤに対応する。
曲線8bは、厚さが0.6mmの保護紙を備えたコアードワイヤに対応する。
曲線8cは、厚さが1.2mmの保護紙を備えたコアードワイヤに対応する。
【0137】
図8は、もしも紙が熱分解後に消滅するのであれば、例え紙の厚さを二倍にした場合でも、コアードワイヤを、それが鋼浴の底に到達するように保護することは不可能であることを示唆している。
【0138】
工業的なテストに際して、本出願人は保護紙で被覆されたコアードワイヤは浴の底に到達する場合があることを確認した。
【0139】
従って、恐らく、紙は分解後に熔融金属浴中において消滅するものではない。
【0140】
酸素の不在下で紙シートの温度を増加させることによって、クラフト紙の熱分解を約600℃の温度まで行い、熱分解の前後における紙の熱伝導率の測定を行った。
【0141】
この研究から紙の熱伝導率は熱分解の後でほとんど変化しないことになる。
【0142】
従って、本出願人は、今回は図8に対応する仮説とは対照的に、紙は熱分解後に消滅しないと考慮し、熱分解後の紙の伝導率を曲線9a,9b,9c,9dにおいて各々0.15,1,2,4W/m・Kと考えて、数値シミュレーションを再度行った。このシミュレーションは後述するようにテスト結果をより良く反映している。
【0143】
コアードワイヤの鋼製シースを包囲する紙の燃焼を全て回避するために、本出願人は、この紙を湿潤させるか、もしくは、それをアルミニウムによってコーティングすることによって輻射または反射を吸収することを考えた。
【0144】
図10は、時間に対する紙の表面温度の変化に関する数値シミュレーションの結果を示し、曲線10a,10b,10c及び10dは、それぞれ0%,59%,89%及び118%の含水率に対応している。
【0145】
図10に図示されているシミュレーションでは、コアードワイヤの注入速度は2m/sであり、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kである。
【0146】
図11は、コアードワイヤの鋼製シースを包囲する紙の被覆として非常に薄いアルミ層を追加した場合に得られる輻射計算の結果を示している。
【0147】
この図11は、輻射率が0.8である紙と比較すると、輻射輸送係数が係数8だけ少ないことを示している。
【0148】
図12では、アルミニウムの被覆が有る場合と無い場合での、時間に対する紙の表面温度の変化を比較することができ、ここで、コアードワイヤの注入速度は2m/sに維持され、紙の熱伝導率は0.15W/m・Kである。
【0149】
この数値シミュレーションによれば、コアードワイヤの自由移動中、紙の表面温度の増大は非常に少なく、アルミニウムが、コアードワイヤの紙に対して非常に有効な熱保護を保証している。
【0150】
上述したシミュレーション中に本出願人が作った仮説を実証するために、本出願人は設備に装着されたコアードワイヤを用いたテストを行った。
【0151】
この装着されたコアードワイヤは、以下の三つの段階で製造される:
−コアードワイヤを空にする;
−シームから180度の角度で、コアードワイヤの内部の鋼製シースと接触する状態で熱電対を配置;
−コアードワイヤを粉体で満たす。
【0152】
電気接続部と熱電対の導線は鋼製チューブによって保護されている。
【0153】
前記装着されたワイヤを、製鋼設備の溶鋼取鍋に導入し、所定時間が経過した後に取り出す。
【0154】
前記浴をアルゴンで継続的に攪拌することで、溶鋼浴の表面の上方の自由行程に不活性雰囲気が形成され、これによって、コアードワイヤ上の紙が不用意に燃焼するリスクが制限される。
【0155】
図13〜21において、Iで示す地点がコアードワイヤの溶鋼取鍋への導入箇所に対応している。
【0156】
最初、紙による被覆のないコアードワイヤを用いて参照テストが行われ、この参照用コアードワイヤ内の温度の時間経過に応じた変化が図13に示されている。
【0157】
図13中のD地点での温度の低下は熱電対の破損に関連するものである。
【0158】
図14は、前記参照用ワイヤ(参照符号14a)で得られた結果と、カルシウムからなるコアと鋼製シースとの間に配置されたクラフト紙の層を有するコアードワイヤ(参照符号14d)で得られた結果とを比較している。
【0159】
図14を見ると、コアードワイヤの内部にクラフト紙を使用すると、温度上昇を0.4秒間だけ遅延させ、したがって、破壊までの合計時間を0.7秒だけ遅延させ得ることが分かる。
【0160】
図15は、参照用ワイヤで得られた結果(曲線15a)と、クラフト紙の二つの外層を備えた二つの装着されたワイヤで得られた結果(曲線15b,15c)とを比較している。
【0161】
得られる温度上昇の遅延は0.8秒間と1.2秒間であり、コアードワイヤが取鍋の底に到達可能となる。
【0162】
曲線15b及び15cにおける温度の急激な上昇は、コアードワイヤの鋼製シースが溶鋼浴に直接接触して、クラフト紙が完全に破損される瞬間に対応している。
【0163】
図16によって、参照用ワイヤで得られた結果(曲線16a)と、二層のクラフト紙と二層のアルミナイズド紙とによって保護されたコアードワイヤによって得られた結果(二つのテスト曲線16b,16c)とを比較することが可能である。
【0164】
図16の曲線は、2層のクラフト紙と2層のアルミナイズド紙との存在が、従来の参照用ワイヤに対して、温度上昇を約1秒間遅延させることを示している。
【0165】
図17には、3層のクラフト紙と2層のアルミナイズド紙とによって保護された2つのサンプルで得られた結果(曲線17b及び17c)の、参照用ワイヤの値(曲線17a)との比較が示されている。
【0166】
図18は、6層のクラフト紙によって得られた結果と2層のアルミナイズド紙とによって得られた結果(曲線18b及び18c)を参照用ワイヤ(曲線18a)と比較することを可能にする。
【0167】
この場合における温度上昇は1.2秒間以上遅延されている。
【0168】
図19の曲線19bは、4層のクラフト紙と1層のアルミニウムとによって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示しており、参照用ワイヤ、曲線19aに対する温度上昇の遅延は0.6秒間である。
【0169】
図20の曲線20bは、8層のクラフト紙と1層のアルミニウムとによって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示し、参照用ワイヤ、曲線20aに対する温度上昇の遅延は0.8秒間である。
【0170】
曲線20cは、コアードワイヤをスラグ内に横方向に浸漬させ、溶融鋼に浸透させなかったテストに対応しており、このテストはスラグの温度を1200℃であると間接的に示している。
【0171】
図21の曲線21b及びcは、2層のアルミナイズド紙によって保護されたコアードワイヤで得られた結果を示しており、温度上昇の遅延は、参照用ワイヤ、曲線21aに対して約0.7秒間であり、これらの結果は図18の結果と対比される。
【0172】
図2〜12を参照しつつ記された上述の数値的及び実験的結果からは、コアードワイヤに設けられたを外側の紙層は断熱材を構成し、この断熱材は、従来のコアードワイヤに対して、場合に応じて0.6秒〜1.6秒の間、コアードワイヤを保護することができるということが確認できる。
【0173】
本出願人は、この保護作用が熔融金属浴中における紙の熱分解によって得られること、その場合、紙が特に取鍋内の熔融金属浴上で自由移動する際にあらゆる燃焼から保護される必要のあることを知見として見出した。
【0174】
燃焼のリスクは、熔融金属取鍋の上方でアルゴンを吹き込むことによって、又は、前記紙を水に浸漬することによって、又は、紙を金属の帯で被覆することによって、低減することができる。
【0175】
本出願人の文献FR2,810,919は、鋼製外包と粉末状又は粒子状添加物を含む鋼製シースとの間に断熱紙を用いることを記載している。
【0176】
前記鋼製外包は、コアードワイヤの操作中に紙がダメージを受けることを防止する役目を有する。
【0177】
本出願人は、文献FR−2,810,919に記載されているような「ハイブリッド」ワイヤでは、縫合帯(綴じ領域)内において全ての金属/金属間接触が回避されるように、紙が縫合帯またはオーバーラップ領域に存在し、紙が熔融金属浴中で熱分解しない限り、温度上昇の著しい遅延が可能にならないことを発見した。
【0178】
上記の実験作業は、Concours d’Armines, Centre d’Energetique, Ecole des Mines de Parisの協力で行われた。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】コアードワイヤの液状鋼浴への導入原理を示す図
【図2】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図3】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図4】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図5】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図6】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図7】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図8】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図9】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図10】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図11】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図12】数値シミュレーションから得られた時間−温度曲線
【図13】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図14】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図15】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図16】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図17】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図18】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図19】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図20】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【図21】出願人実施のテストプログラムから得られた時間−温度曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの断熱層を有し、この層が溶鋼などの金属浴との接触に際して熱分解を開始する材料からなることを特徴とするコアードワイヤ。
【請求項2】
金属シースを包囲する外部断熱層を有し、この外部断熱層が溶融金属浴との接触に際して熱分解を開始する材料からなることを特徴とする請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項3】
前記熱分解性材料は、クラフト紙、アルミナイズド紙、又は、少なくとも1つのクラフト紙片と少なくとも1つのアルミナイズド紙層とを含む多層紙であることを特徴とする請求項2に記載のコアードワイヤ。
【請求項4】
前記熱分解性材料は薄金属シートによってカバーされていることを特徴とする請求項3に記載のコアードワイヤ。
【請求項5】
前記薄金属シートはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコアードワイヤ。
【請求項6】
前記熱分解性材料は熱分解前に0.15〜4W/m・K以内の熱伝導率を有することを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項7】
前記熱分解性材料は熱分解前に0.025mm〜0.8mm以内の径方向厚さを有することを特徴とする請求項1−6のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項8】
前記熱分解性材料は約500℃での熱分解開始温度を有することを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項9】
前記熱分解性材料は、水または気化潜熱の高い、特に、2MJ/kgを超える気化潜熱を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1−8のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項10】
前記熱分解性材料は湿潤紙の層を含むことを特徴とする請求項9に記載のコアードワイヤ。
【請求項11】
前記熱分解性材料は内側の金属製シースへの接着を介してコアードワイヤに固定されていることを特徴とする請求項1−10のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項12】
前記熱分解性材料は、前記ワイヤの内側の金属シースと外側の金属製外包との間に配置されていることを特徴とする請求項1,3−11のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項13】
前記外側の金属製シースは、縫合帯部内での金属/金属どうしの直接接触が全て防止されるように、前記熱分解性物質を縫合帯部内で間に配置させて綴じられていることを特徴とする請求項12に記載のコアードワイヤ。
【請求項14】
前記内側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有し、前記外側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有することを特徴とする請求項12又は13に記載のコアードワイヤ。
【請求項15】
前記熱分解性材料は厚さが0.1〜0.8mmの範囲の単層又は複層のクラフト紙であることを特徴とする請求項14に記載のコアードワイヤ。
【請求項16】
粉末、或いは、圧密化された又は樹脂内に浸漬された粒子の形態で、Ca、Bi、Nb、Mg、CaSi、C、Mn、Si、Cr、Ti、B、S、Se、Te、Pb、CaC2、Na2CO3、CaCO3、CaO、MgO、希土類で構成されたグループから選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項1−15のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項1】
少なくとも1つの断熱層を有し、この層が溶鋼などの金属浴との接触に際して熱分解を開始する材料からなることを特徴とするコアードワイヤ。
【請求項2】
金属シースを包囲する外部断熱層を有し、この外部断熱層が溶融金属浴との接触に際して熱分解を開始する材料からなることを特徴とする請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項3】
前記熱分解性材料は、クラフト紙、アルミナイズド紙、又は、少なくとも1つのクラフト紙片と少なくとも1つのアルミナイズド紙層とを含む多層紙であることを特徴とする請求項2に記載のコアードワイヤ。
【請求項4】
前記熱分解性材料は薄金属シートによってカバーされていることを特徴とする請求項3に記載のコアードワイヤ。
【請求項5】
前記薄金属シートはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコアードワイヤ。
【請求項6】
前記熱分解性材料は熱分解前に0.15〜4W/m・K以内の熱伝導率を有することを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項7】
前記熱分解性材料は熱分解前に0.025mm〜0.8mm以内の径方向厚さを有することを特徴とする請求項1−6のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項8】
前記熱分解性材料は約500℃での熱分解開始温度を有することを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項9】
前記熱分解性材料は、水または気化潜熱の高い、特に、2MJ/kgを超える気化潜熱を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1−8のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項10】
前記熱分解性材料は湿潤紙の層を含むことを特徴とする請求項9に記載のコアードワイヤ。
【請求項11】
前記熱分解性材料は内側の金属製シースへの接着を介してコアードワイヤに固定されていることを特徴とする請求項1−10のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項12】
前記熱分解性材料は、前記ワイヤの内側の金属シースと外側の金属製外包との間に配置されていることを特徴とする請求項1,3−11のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【請求項13】
前記外側の金属製シースは、縫合帯部内での金属/金属どうしの直接接触が全て防止されるように、前記熱分解性物質を縫合帯部内で間に配置させて綴じられていることを特徴とする請求項12に記載のコアードワイヤ。
【請求項14】
前記内側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有し、前記外側金属シースは約0.2〜0.6mmの範囲の径方向厚さを有することを特徴とする請求項12又は13に記載のコアードワイヤ。
【請求項15】
前記熱分解性材料は厚さが0.1〜0.8mmの範囲の単層又は複層のクラフト紙であることを特徴とする請求項14に記載のコアードワイヤ。
【請求項16】
粉末、或いは、圧密化された又は樹脂内に浸漬された粒子の形態で、Ca、Bi、Nb、Mg、CaSi、C、Mn、Si、Cr、Ti、B、S、Se、Te、Pb、CaC2、Na2CO3、CaCO3、CaO、MgO、希土類で構成されたグループから選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項1−15のいずれか一項に記載のコアードワイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−501865(P2008−501865A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526501(P2007−526501)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001447
【国際公開番号】WO2006/000714
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506410305)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001447
【国際公開番号】WO2006/000714
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506410305)
【Fターム(参考)】
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