コイルばね、流体機器におけるフィルタの取付け構造、圧力調整弁および機能液供給機構、並びに液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法および電気光学装置
【課題】簡単な構成で、流入継手の拡開内周部に対し、傾いて装着されてしまうのを防止することができるコイルばねを提供することを課題としている。
【解決手段】圧力調整弁本体166に形成した流入ポート175と流入ポート175に接合される流入コネクタ161との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタ181を、下流に向かって拡開形成した流入コネクタ161の拡開開口部161aを受けとして押圧するコイルばね182であって、流入コネクタ161の拡開開口部161aに接触する先端接触部232の螺旋形状が、拡開開口部161aに倣う形状に形成されている。
【解決手段】圧力調整弁本体166に形成した流入ポート175と流入ポート175に接合される流入コネクタ161との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタ181を、下流に向かって拡開形成した流入コネクタ161の拡開開口部161aを受けとして押圧するコイルばね182であって、流入コネクタ161の拡開開口部161aに接触する先端接触部232の螺旋形状が、拡開開口部161aに倣う形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器本体に形成した流入ポートと流入ポートに接合した流入継手との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した流入継手の拡開内周部を受けにして押えるコイルばね、流体機器におけるフィルタの取付け構造、圧力調整弁および機能液供給機構、並びに液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法および電気光学装置に関するものである。
【0002】
従来、この種のコイルばねではないが、圧縮コイルばねとして、螺旋形状が円筒状を成すいわゆる円筒コイルばねが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−169730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような円筒コイルばねを、上記の流入継手とフィルタとの間に介在させると、拡開した形状を成す流入継手の拡開内周部と円筒コイルばね端部との当たりが安定せず、圧縮コイルばねが傾いて装着されてしまうこともある。これにより、フィルタへの押圧力が不均一になるという問題や、圧縮コイルばねの一部に偏った圧力がかかり、円筒コイルばねを塑性変形してしまうという問題(再使用不可)があった。また、当該問題を解決すべく、円筒コイルばねの内周面もしくは外周面をガイドするガイド部材を設けることも考えられるが、かかる場合、円筒コイルばねの取付け構造が複雑となってしまう。
【0004】
本発明は、簡単な構成で、流入継手の拡開内周部に対し傾いて装着されてしまうのを防止することができるコイルばね、流体機器におけるフィルタの取付け構造、圧力調整弁および機能液供給機構、並びに液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法および電気光学装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコイルばねは、流体機器本体に形成した流入ポートと流入ポートに接合される流入継手と、の接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した流入継手の拡開内周部を受けとして押圧するコイルばねであって、流入継手の拡開内周部に接触する先端接触部の螺旋形状が、拡開内周部に倣う形状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、先端接触部が拡開内周部に倣う螺旋形状を有することにより、拡開内周部とコイルばね端部(先端接触部)との当たりが安定し、コイルばねが傾いて装着されることを防止することができる。すなわち、拡開内周部がガイドとして機能するため、コイルばねの取り付けの際に、コイルばねの装着姿勢が拡開内周部の拡開中心にガイドされ、傾くことなく装着される。したがって、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばねの一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばねの塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばねがセットされ、拡開中心に合わせてコイルばねを装着することができる。またさらに、流入継手および流入ポートに特段の加工を必要とせず、コイルばねの取付け構造を簡単な構成にすることができる。なお、コイルばねの製造方法から、螺旋形状の変更が容易であることは、いうまでもない。
【0007】
この場合、先端接触部の螺旋形状が、拡開内周部に対し相補的な形状に形成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、拡開内周部の先端接触部に対する相補的なガイド機能により、コイルばね端部(先端接触部)を更に安定させることができ、コイルばねが傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。なお、拡開内周部に対し、コイルばねの先端接触部は、自由状態で相補的形状であってもよいし、装着時(圧縮状態)で相補的形状であってもよい。
【0009】
この場合、拡開内周部は、凹形テーパ状に形成されており、先端接触部の螺旋形状は、凸形テーパ状に形成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、凹形テーパ状を成す拡開内周部に、凸形テーパ状を成す先端接触部が嵌合することで、拡開内周部とコイルばね端部(先端接触部)との当たりを更に安定させることができ、コイルばねが傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。また、凹形テーパ状を成す拡開内周部の拡開中心軸にコイルばねがガイドされ、拡開中心軸にコイルばねを合わせることができる。例えば、拡開中心軸が、流路の中心軸と同一であれば、コイルばねを流路の中心軸に合わせて取り付けることができる。
【0011】
本発明の流体機器におけるフィルタの取付け構造は、流入継手が接合される流入ポートの継手接合部と、継手接合部に連なる流体機器本体の内部流路との間に位置して、流体機器本体にザグリ穴状のフィルタ収容部を形成し、フィルタ収容部に収容したフィルタを、上記のコイルばねにより押えて成ることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フィルタが、流入継手によりコイルばねを介して押えられる形で、ザグリ穴状のフィルタ収容部に取り付けられる。このように、流入継手の接合を利用してフィルタを押さえ、取り付ける。そのため、流入継手の接合を解除することで、フィルタを容易に取り外すことができると共に、コイルばねを容易に取り外すことができる。これにより、フィルタの着脱を容易に行うことができる。また、フィルタの取付構造を簡単な構成にすることができる。さらに、簡単な構成で、拡開内周部に対し、傾いて装着されるのを防止することができるコイルばねを用いることで、フィルタを適切に取り付けることができる。
【0013】
本発明の圧力調整弁は、上記の流体機器におけるフィルタの取付構造を備え、流入ポートから1次室に導入した機能液を、2次室を介して流出ポートに供給すると共に、大気に面し2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより、大気圧を調整基準圧力として、1次室と2次室とを連通する連通流路を開閉することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、機能液の流入端に、簡単な構成でフィルタを適切に取り付けることができるフィルタの取付構造を備えることにより、圧力調整弁内に異物が入り込むことを防止することができる。これにより、リーク不良を起こすことがなく、圧力調整の安定性を向上させることができる。また、圧力調整弁を大きく設計変更することなく、フィルタを組み込むことができる。
【0015】
本発明の機能液供給機構は、機能液を貯留する機能液タンクと、機能液滴吐出ヘッドに接続する上記の圧力調整弁と、上流端を機能液タンクに接続すると共に下流端を圧力調整弁に接続する機能液供給流路を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、圧力調整弁により、機能液の供給にかかる圧力制御を精度良く行うことができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、上記の機能液供給機構と、ワークに対し機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドと、ワークを機能液滴吐出ヘッドに対してX軸方向およびY軸方向に相対移動させるX・Y移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドにかかる圧力制御を精度良く行うことができるため、機能液滴吐出ヘッドによる描画処理を精度良く行うことができる。
【0019】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記の液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の電気光学装置は、上記の液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、高品質の電気光学装置を効率良く製造することができる。なお、機能材料としては、有機EL装置の発光材料(Electro-Luminescence発光層・正孔注入層)は元より、液晶表示装置に用いるカラーフィルタのフィルタ材料、電子放出装置(Field Emission Display, FED)の蛍光材料(蛍光体)、PDP(plasma Display Panel)装置の蛍光材料(蛍光体)、電気泳動表示装置の泳動体材料(泳動体)等であって、機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)により吐出可能な液体材料を言う。また、電気光学装置(Flat Panel Display, FPD)としては、有機EL装置、液晶表示装置、電子放出装置、PDP装置、電気泳動表示装置等がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明のコイルばねを適用した圧力調整弁を搭載する液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0023】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17が搭載された10個のキャリッジユニット51と、から成り、10個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ6と、チャンバ6を貫通して、チャンバ6の外部から、内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。なお、請求項にいうX・Y移動機構は、X軸テーブル11およびY軸テーブル12により構成されている。
【0024】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている(厳密には、吐出性能検査ユニット18は、後述するステージユニット77がX軸テーブル11に搭載され、カメラユニット78がY軸支持ベース3に支持されている。)。
【0025】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数の分割吸引ユニット74を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を受ける検査シート83を搭載したステージユニット77と、ステージユニット77上の機能液滴を画像認識により検査するカメラユニット78を有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。
【0026】
次に、液滴吐出装置1の構成要素について簡単に説明する。図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWをセットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ22と、上記のフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ22を介してセットテーブル21(ワークW)をX軸方向に移動させると共に、X軸第2スライダ23を介してフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、X軸リニアモータに並設され、X軸第1スライダ22およびX軸第2スライダ23の移動を案内する一対(2本)のX軸共通支持ベース24と、を備えている。
【0027】
セットテーブル21は、ワークWを吸着セットする吸着テーブル31と、吸着テーブル31を支持し、吸着テーブル31にセットしたワークWの位置をθ軸方向に補正するためのθテーブル32等を有している。また、セットテーブル21のY軸方向と平行な一対の辺には、それぞれ上記の描画前フラッシングユニット71が添設されている。
【0028】
Y軸テーブル12は、10個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート52と、10個のブリッジプレート52を両持ちで支持する10組のY軸スライダ(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、10組のY軸スライダを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15及びワイピングユニット16)に臨ませる。
【0029】
一対のY軸リニアモータを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダが一対のY軸支持ベース3を案内にして同時にY軸方向を平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向を移動し、これと共にキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。なお、この場合、Y軸リニアモータの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、10個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0030】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されており(実際には、ブリッジプレート52上に配設)、このサブタンク121から自然水頭を利用して各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。
【0031】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7(機能液供給装置101)に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0032】
なお、ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列98bが相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列98b同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。
【0033】
チャンバ6は、内部温度及び湿度を一定に保つように構成されている。すなわち、液滴吐出装置1によるワークWへの描画は、温度および湿度が一定値に管理された雰囲気中で行われる。そして、チャンバ6の側壁の一部には、タンクユニット122を収納するためのタンクキャビネット84が設けられている。なお、有機EL装置等を製造する場合には、チャンバ6内を、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気で構成することが好ましい。
【0034】
次に、図1および図6を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置(機能液供給機構)101を備えている。また、機能液供給ユニット7は、後述するメインタンク151等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備85と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備86と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備87と、後述する気泡除去ユニット135に接続された真空設備89と、を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0035】
図6に示すように、各色の機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク151,151を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた10個のサブタンク(機能液タンク)121と、タンクユニット122と10個のサブタンク121を接続する上流側機能液流路126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する10組の下流側機能液流路127と、を備えている。
【0036】
各メインタンク151,151内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して10個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、ガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。
【0037】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク151,151と、一対のメインタンク151,151の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置152,152と、一対のメインタンク151,151に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切換え機構153と、を備えている。各メインタンク151には、窒素ガス供給設備85に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。
【0038】
上流側機能液流路126は、上流側から、上流側をタンクユニット122に接続したタンク側主流路131と、分岐部132を介してタンク側主流路131から10方に分流し、下流側をサブタンク121に接続した10本の枝流路133と、を備えている。タンクユニット122から供給された機能液は、分岐部132により10方に分流して各サブタンク121に供給される。
【0039】
また、タンク側主流路131には、上流側から気泡除去ユニット135、第1開閉弁136、エアー抜きユニット137、第2開閉弁138がそれぞれ介設されている。また、各枝流路133には、各サブタンク121の近傍に位置して第3開閉弁139がそれぞれ介設されている。
【0040】
各下流側機能液流路127は、上流側から、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、上流側をヘッド側主流路146に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数のヘッド側枝流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17の接続されている。すなわち、上流側機能液流路126の10分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、10×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路146には、第4開閉弁149と、機能液滴吐出ヘッド17への圧力調整を行う圧力調整弁(流体機器)150と、が介設されている。なお、請求項にいう機能液供給流路は、サブタンク121から圧力調整弁150にかかるヘッド側主流路146により構成されている。
【0041】
サブタンク121は、各4個の機能液滴吐出ヘッド17に供給する機能液を貯留するものである。サブタンク121は貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構を有し、機能液の液位を一定の高さに維持しつつ供給を行う。機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動により、機能液の液位が下限液位まで下降すると(減液状態)、第3開閉弁139を開放してメインタンク151から機能液を供給し、メインタンク151からの供給により機能液の液位が上限液位まで上昇すると、第3開閉弁139を閉弁してメインタンク151からの供給を停止する。
【0042】
次に、図7ないし図14を参照して、圧力調整弁150廻りについて説明する。図7および図8に示すように、圧力調整弁150は、ヘッド側主流路146に介設されており、ヘッド側主流路146の上流側からの継手であると共に、流入ポート175に連なる流入コネクタ(流入継手)161(ユニオン継手)と、ヘッド側主流路146の下流側の継手であると共に、流出ポート190に連なる流出コネクタ162(ユニオン継手)と、に接続されている。
【0043】
圧力調整弁150は、圧力調整弁本体(流体機器本体)166と、圧力調整弁本体166と共に内部に1次室167を形成した蓋体168と、圧力調整弁本体166と共に内部に2次室169を形成し圧力調整弁本体166にダイヤフラム171を固定するリングプレート170との3部材で構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、圧力調整弁本体166には、1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。
【0044】
蓋体168およびリングプレート170は、圧力調整弁本体166に対し、前後からリングプレート170および蓋体168を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム171の中心を通る軸線と同心円となる多角形(8角形)あるいは円形の外観を有している。そして、蓋体168および圧力調整弁本体166は、パッキン172を介して相互に気密に突合せ接合され、圧力調整弁本体166およびリングプレート170は、ダイヤフラム171の縁部およびパッキン172を挟込み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0045】
圧力調整弁本体166と蓋体168とで形成された1次室167は、ダイヤフラム171と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋体168により閉蓋されている。また、圧力調整弁本体166の1次室側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室167から径方向斜めに延びる流入ポート175が形成されている。流入ポート175には上記の流入コネクタ161が接続されている。
【0046】
図9に示すように、流入ポート175は、圧力調整弁本体166の外周面に開口した流入口(継手接合部)176と、フィルタ181を収容するフィルタ収容部177と、フィルタ収容部177と1次室167の内周面とを連通する流入経路(内部流路)178とから成り、流入口176に対し流入経路178は、1次室167側に偏心して形成されている。流入口176には、流入コネクタ161が螺合(テーパネジ)される。なお、詳細は後述するが、フィルタ収容部177には、フィルタ181が収容され、フィルタ181と螺合した流入コネクタ161との間には、フィルタ181を押えるコイルばね182が収容される。
【0047】
流入コネクタ161の内部流路は、下流端で拡開形成された(テーパ形状の)拡開開口部(拡開内周部)161aを有しており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。同様に、流入経路178の上流端は、テーパ形状を為している。
【0048】
図9および図10に示すように、2次室169は、ダイヤフラム171と、圧力調整弁本体166に形成した内面壁185とによって、全体としてダイヤフラム171を底面とする円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム171は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室169の1つの面を構成している。また、内面壁185は、2次室169のダイヤフラム171の面(1つの面)を除いた各面で構成されている。
【0049】
また、内面壁185のうち円錐台形状の頂面となる端壁185aには、ダイヤフラム171と同心となる2次室側開口部186が開口し、内面壁185のうち円錐台形状のテーパ面となる周壁185bの下側斜面における上下中間部には、後述する流出流路193の流出開口部187が形成されている。この場合、2次室側開口部186は、後述する受圧板付勢ばね208を収容するばね室を兼ねており、連通流路173の主流路196より太径に形成されている。
【0050】
図10に示すように流出ポート190は、圧力調整弁本体166の下部に位置する傾斜ボス部191に形成されており、傾斜ボス部191の下部に開口した流出口192と、2次室169の流出開口部187と、これらを連通する流出流路193とで構成されている。流出流路193は、内面壁185の周壁185bから斜めに延びて下向きの流出口192に連通している。流出口192には、流出流路193の軸線方向から流出コネクタ162が螺合している。流出コネクタ162の内部に形成された流路は、上流端で拡開形成されており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。2次室169から流出する機能液は、流出開口部187から流出流路193の傾きに従って斜めに流れ、機能液滴吐出ヘッド17側に流出する。
【0051】
図9および図10に示すように、圧力調整弁本体166には、1次室167と2次室169とを連通する連通流路173が形成されている。連通流路173は、主流路196と、これに連なる2次室側開口部186とで構成されている。これら1次室167、2次室169および連通流路173は、いずれもダイヤフラム171と同心の円形断面を有している。ただし、主流路196は、後述する弁体201の軸部203がスライド自在に収容される円形断面の軸遊挿部197と、軸遊挿部197から径方向四方に延びる十字状断面の流路部198とで構成されている(図8(b)参照)。
【0052】
ダイヤフラム171は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体206と、ダイヤフラム本体206の内側に貼着した樹脂製の受圧板207とで構成されている。受圧板207は、ダイヤフラム本体206と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体206に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体201の軸部203が当接する。ダイヤフラム本体206は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、圧力調整弁本体166の前面と同径の円形に形成されている。
【0053】
弁体201は、円板状の弁体本体202と、弁体本体202の中心から断面横「T」字状を為すように一方向に延びる軸部203と、軸部203の基端部側(弁体本体202側)に設けた(取り付けた)環状のOリング204とで構成されている。弁体本体202および軸部203は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング204は、例えば軟質のシリコンゴムで環状に形成されている。このため、弁体201の閉弁時には、弁座となる連通流路173の開口縁にOリング204が強く当接して、連通流路173が1次室167側から液密に閉塞される。
【0054】
軸部203は、連通流路173(の主流路196)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム171の受圧板207に当接する。すなわち、ダイヤフラム171が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部203の前端と受圧板207との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム171がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部203の前端と受圧板207が当接し、さらにダイヤフラム171のマイナス変形がすすむと、受圧板207が軸部203を介して弁体本体202を押し開弁させることになる。したがって、2次室169の容積のうち、ダイヤフラム171がプラス変形から中立状態となる容積分は、1次室167側の圧力を一切受けることなく、機能液の供給が為される。
【0055】
弁体201の背面と1次室167の壁体206との間には、弁体201を2次室169側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね207が介設されている。同様に、受圧板207と内面壁185の間には、受圧板207を介してダイヤフラム本体206を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね208が介設されている。この場合、弁体付勢ばね207は、弁体201の背面に加わるサブタンク121の水頭を補完するものであり、サブタンク121の水頭とこの弁体付勢ばね207のばね力により、弁体201が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね208は、ダイヤフラム171のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室169が負圧になるように作用する。
【0056】
圧力調整弁150は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド17に連なる2次室169との圧力バランスによりダイヤフラム171(およびこれが当接する弁体201)が変形(進退)することで開閉し、2次室169側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね207および受圧板付勢ばね208に力が分散して作用し、且つ軟質シリコンゴムのOリング204(の弾性力)により、弁体201は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体201の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、サブタンク121側(1次室167側)で発生する脈動等も、弁体201で縁切りされるため、これを吸収する(ダンパー機能)ことができる。
【0057】
次に、図11を参照して流入ポート175廻りについて説明する。上記したように、流入ポート175は、流入口176、フィルタ収容部177および流入経路178により構成されている。流入口176の内周面に形成されたネジ部に、ユニオン継手である流入コネクタ161を螺合して接続することにより、サブタンク121からの流路が接続される。フィルタ収容部177には、上流側からの機能液に混入した異物を除去(濾過)するフィルタ181が収容されており、フィルタ181と流入コネクタ161との間には、フィルタ181を押えるコイルばね182が収容されている。なお、フィルタ181は、表裏両面において取付け可能に構成されている。すなわち、フィルタ181は、通液方向性の無い構成となっている。
【0058】
フィルタ収容部177は、圧力調整弁本体166に形成したザグリ穴状のものであり、円筒状のフィルタ181が係合するように円筒状に形成されている。すなわち、円筒状のフィルタ181の外周面が、フィルタ収容部177の内周面に係合すると共に、円筒状のフィルタ181の一端の周縁部が当接するよう、流入経路178に対し段部となる周縁当接部(座面)177aが形成されている。詳細は後述するが、コイルばね182の押圧によって、フィルタ181が周縁当接部177aに当接され、押圧固定される。
【0059】
図12および図13に示すように、フィルタ181は、円形シート状のフィルタエレメント211と、フィルタエレメント211を挟持するリング状のエレメントホルダ212と、を備えている。エレメントホルダ212は、フィルタエレメント211をセットする凹側の受けホルダ213と、セットされたフィルタエレメント211を押える凸側の押えホルダ214とから成り、フィルタエレメント211をセットした状態で、受けホルダ213に対し、押えホルダ214を圧入することでフィルタ181が一体化される。
【0060】
フィルタエレメント211は、複数の開口部(孔)が形成されたステンレス製の金属シートで構成されている。フィルタエレメント211は、厚さ15μm程度であり、各開口部は、30μm以上の異物が補足可能なよう、その外接円の直径が30μm以下となるように形成されている。なお、フィルタエレメント211は、ステンレスの金属繊維を編み込んだものでも良いし、耐薬液性の樹脂性のものであってもよい。
【0061】
受けホルダ213は、環状に形成されており、内周面の押えホルダ214側端部には、フィルタエレメント211のセット面を有するエレメント装着段部216が周設されている。すなわち、受けホルダ213は、凹形段付の環状に形成されている。フィルタエレメント211は、エレメント装着段部216により環状に形成されたセット面にて、セットされる。
【0062】
押えホルダ214は、環状に形成されており、受けホルダ213側に、エレメント装着段部216に係合する圧入部217を有すると共に、外周面に、受けホルダ213と面一となる鍔部218を有している。すなわち、押えホルダ214は、凸形段付の環状に形成されている。圧入部217が圧入されると、セット面と圧入部217の端面に当る押圧面とにより、フィルタエレメント211が押圧固定される。すなわち、フィルタエレメント211は、周縁部が受けホルダ213および押えホルダ214に固定され、保持される。
【0063】
受けホルダ213および押えホルダ214は、環状に形成されているため、受けホルダ213は、内周面により受け側流路219を形成し、押えホルダ214は、内周面により押え側流路220を形成して機能液を通液する。すなわち、受け側流路219と押え側流路220の一方の流路から流入した機能液は、フィルタエレメント211を通過して、他方の流路から流出する。これにより、機能液中の異物が除去される。また、受け側流路219および押え側流路220は、フィルタエレメント211に臨む通液口221がフィルタエレメント211側に拡開するテーパ状に形成されている。このように、通過する機能液に対し、フィルタエレメント211の接触面積が大きくなるように形成することにより、異物の除去性能を向上するように構成されている。なお、受けホルダ213および押えホルダ214は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0064】
また、受けホルダ213の軸方向外側の端面および押えホルダ214の軸方向外側の端面は、同一の平面度で仕上げられており、各ホルダ213,214の外側の各端面(エレメントホルダ212の両端面)と、フィルタ181を受けるフィルタ収容部177の周縁当接部177aとは、相互に液漏れを阻止可能な平面度を有している。
【0065】
さらに、受けホルダ213および押えホルダ214の通液口221を除く各角部は、他の部材を破損して異物を発生させないよう、面取りされていることが好ましい(図12および図13参照)。またさらに、上記と同様の要請から受けホルダ213および押えホルダ214は、それぞれマシンカットで荒仕上げした後、電解研磨で仕上げたものであることが好ましい。
【0066】
図11に示すように、コイルばね182は、一端が流入コネクタ161の拡開開口部161aに接触し、他端がフィルタ181の一端面に接触する。流入コネクタ161をねじ接合すると、コイルばね182を介して、フィルタ181が周縁当接部177aに押圧され、フィルタ収容部177にセットされる。
【0067】
このように、フィルタ181が、流入コネクタ161によりコイルばね182を介して押えられる形で、ザグリ穴状のフィルタ収容部177に取り付けられる。すなわち、流入コネクタ161の接合を利用してフィルタ181を押さえ、取り付ける。そのため、流入コネクタ161の接合を解除することで、フィルタ181を容易に取り外すことができると共に、コイルばね182を容易に取り外すことができる。これにより、フィルタ181の着脱を容易に行うことができる。また、フィルタ181の取付構造を簡単な構成にすることができる。
【0068】
ところで、コイルばね182は、一端がテーパ状を成す拡開開口部161aに接触することになるため、仮にコイルばね182として螺旋形状が円筒状を成す円筒コイルばねを用いると、テーパ状の拡開開口部161aに、円筒コイルばねの円形端部が接触して押圧されることになる。かかる場合、拡開開口部161aと、円形端部との当たりが安定せず、円形端部が傾いてセットされてしまい、また、円筒コイルばね全体が傾いてセットされてしまう。さらに、一旦傾いて接触してしまった円形端部は、直径上一対の接触部で内側に押圧され、楕円形に変形する形で拡開開口部161aに嵌り込んでしまう。そのため、流入コネクタ161を締めこんで螺合する際にも、円形端部が拡開開口部161aに固定され、傾きが解放されることがない。このような問題を解決すべく、本実施形態においては、次のような形状のコイルばね182を用いる。
【0069】
図11および図14(a)に示すように、コイルばね182は、円筒状の螺旋形状を有するコイルばね本体231と、コイルばね本体231の先端部に位置し、テーパ状の螺旋形状を有すると共に、拡開開口部161aに接触する先端接触部232と、を備えている。なお、コイルばね182は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0070】
拡開開口部161aは、凹形テーパ状に形成されているのに対し、それに接触する先端接触部232は、拡開開口部161aに相補的な形状となる凸形テーパ状の螺旋形状を有している。流入コネクタ161をねじ接合すると、凸形テーパ状を成す先端接触部232が、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aの拡開中心、すなわち、流入コネクタ161の中心軸(流路の中心軸)にガイドされ、先端接触部232の外周全体が接触する安定姿勢にセットされる(図14(a)および(b)参照)。これにより、拡開開口部161aに対し、先端接触部232が傾くことなくセットされると共に、コイルばね182全体が流路の中心軸にガイドされる。その後、更にねじ接合が進むと、コイルばね本体231が縮む形で、拡開開口部161aを受けとして、フィルタ181を押圧する(先端接触部232は伸縮しない)。
【0071】
このように、コイルばね182の先端接触部232が拡開開口部161aに倣う螺旋形状を有することにより、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりが安定し、コイルばね182が傾いて装着されることを防止することができる。これにより、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばね182の一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばね182の塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばね182がセットされ、拡開中心に合わせてコイルばね182を取り付けることができる。またさらに、流入コネクタ161および流入ポート175に特段の加工を必要とせず、コイルばね182の取付け構造を簡単な構成にすることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、先端接触部232が、拡開開口部161a(の内周面)に相補的な形状を成す凸形テーパ状の螺旋形状に形成されたものを使用したが、拡開開口部161a(の内周面)に倣う形状であれば、例えば、図15(c)および(d)に示すように、凸テーパ状が外側、内側に湾曲したような形状等でも良い。しかしながら、本実施形態のように、先端接触部232が拡開開口部161a(の内周面)に相補的な形状を成すことで、拡開開口部161aの先端接触部232に対する相補的なガイド機能により、コイルばね182端部(先端接触部232)を更に安定させることができ、コイルばね182が傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。
【0073】
また、凹形テーパ状の拡開開口部161aに対し、凸形テーパ状の先端接触部232を有することにより、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aに、凸形テーパ状を成す先端接触部232が嵌合することで、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりを更に安定させることができ、コイルばね182が傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。また、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aの拡開中心軸(流路の中心軸)にコイルばね182がガイドされ、拡開中心軸(流路の中心軸)にコイルばね182を合わせることができる。特に本実施形態においては、コイルばね182の端部(先端接触部232に対する他端)を、フィルタ181のリング状を成す端面に接触させることができる(内部流路を避けた位置に接触)。
【0074】
なお、本発明は、拡開開口部161aが凹形テーパ状を成す場合でなくとも、拡開開口部161aが拡開形状であれば適用可能である。例えば、拡開開口部161aが断面V字状に拡開した形状である場合、先端接触部232は、相補的形状を成す断面V字状(もしくはそれに倣う形状)の螺旋形状を有する必要がある。
【0075】
以上のような構成により、コイルばね182の先端接触部232が拡開開口部161aに倣う螺旋形状を有することにより、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりが安定し、コイルばね181が傾いて装着されることを防止することができる。これにより、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばね182の一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばね182の塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばね182がセットされ、拡開中心に合わせてコイルばね182を装着することができる。またさらに、流入コネクタ161および流入ポート175に特段の加工を必要とせず、コイルばね182の取付け構造を簡単な構成にすることができる。
【0076】
そして、このように圧力調整弁150(の流入側接合部分)にフィルタ181を設けることにより、圧力調整弁150の主機能を奏するOリング204と連通流路173の開口縁との当接部分(接触部分)に異物が咬み込むことを防止することができる。これにより、圧力調整弁150を安定動作させることができ、ひいては、機能液滴吐出ヘッド17における液滴吐出量の精度向上を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、10個のキャリッジユニット51を備えた液滴吐出装置1を備えたものを使用しているが、キャリッジユニット51の個数は任意である。
【0078】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
【0079】
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図15は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図16は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図16(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0080】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図16(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図16(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド17により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0081】
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
【0082】
次に、着色層形成工程(S103)では、図16(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド17によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド17を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0083】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図16(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0084】
図17は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図16に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0085】
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0086】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図17において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0087】
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0088】
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0089】
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。
【0090】
図18は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0091】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
【0092】
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0093】
図19は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0094】
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
【0095】
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0096】
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0097】
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0098】
次に、図20は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
【0099】
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0100】
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
【0101】
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
【0102】
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
【0103】
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
【0104】
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
【0105】
バンク部618は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
【0106】
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0107】
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
【0108】
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0109】
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0110】
次に、上記の表示装置600の製造工程を図21〜図29を参照して説明する。
この表示装置600は、図21に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、および対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0111】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図22に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図23に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
【0112】
表面処理工程(S112)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド17を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0113】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図1に示した液滴吐出装置1のセットテーブル21に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)および発光層形成工程(S114)が行われる。
【0114】
図24に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド17から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図25に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
【0115】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
【0116】
そして次に、図26に示すように、各色のうちのいずれか(図26の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
【0117】
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図27に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
【0118】
同様に、機能液滴吐出ヘッド17を用い、図28に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0119】
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0120】
対向電極形成工程(S115)では、図29に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0121】
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
【0122】
次に、図30は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0123】
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
【0124】
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
【0125】
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0126】
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図1に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のセットテーブル21に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド17により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0127】
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
【0128】
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド17から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
【0129】
次に、図31は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
【0130】
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0131】
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0132】
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0133】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
【0134】
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図32(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図32(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0135】
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】ヘッド群を構成する機能液滴吐出ヘッドの図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】圧力調整弁の外観斜視図である。
【図8】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図9】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図10】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図11】流入ポート廻りについて示した断面図である。
【図12】フィルタの断面図である。
【図13】フィルタの分解斜視図である。
【図14】コイルばねおよびコイルばねの変形例の模式図である。
【図15】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図16】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図17】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図18】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図19】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図20】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図21】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図22】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図23】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図24】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図25】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図26】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図27】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図28】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図29】陰極の形成を説明する工程図である。
【図30】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図31】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図32】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0137】
1:液滴吐出装置、 11:X軸テーブル、 12:Y軸テーブル、 17:機能液滴吐出ヘッド、 101:機能液供給装置、 121:サブタンク、 146:ヘッド側主流路、 150:圧力調整弁、 161:流入コネクタ、 161a:拡開開口部、 166:圧力調整弁本体、 167:1次室、 169:2次室、 171:ダイヤフラム、 173:連通流路、 175:流入ポート、 176:流入口、 177:フィルタ収容部、 178:流入経路、 181:フィルタ、 182:コイルばね、 190:流出ポート、 232:先端接触部、 W:ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器本体に形成した流入ポートと流入ポートに接合した流入継手との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した流入継手の拡開内周部を受けにして押えるコイルばね、流体機器におけるフィルタの取付け構造、圧力調整弁および機能液供給機構、並びに液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法および電気光学装置に関するものである。
【0002】
従来、この種のコイルばねではないが、圧縮コイルばねとして、螺旋形状が円筒状を成すいわゆる円筒コイルばねが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−169730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような円筒コイルばねを、上記の流入継手とフィルタとの間に介在させると、拡開した形状を成す流入継手の拡開内周部と円筒コイルばね端部との当たりが安定せず、圧縮コイルばねが傾いて装着されてしまうこともある。これにより、フィルタへの押圧力が不均一になるという問題や、圧縮コイルばねの一部に偏った圧力がかかり、円筒コイルばねを塑性変形してしまうという問題(再使用不可)があった。また、当該問題を解決すべく、円筒コイルばねの内周面もしくは外周面をガイドするガイド部材を設けることも考えられるが、かかる場合、円筒コイルばねの取付け構造が複雑となってしまう。
【0004】
本発明は、簡単な構成で、流入継手の拡開内周部に対し傾いて装着されてしまうのを防止することができるコイルばね、流体機器におけるフィルタの取付け構造、圧力調整弁および機能液供給機構、並びに液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法および電気光学装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコイルばねは、流体機器本体に形成した流入ポートと流入ポートに接合される流入継手と、の接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した流入継手の拡開内周部を受けとして押圧するコイルばねであって、流入継手の拡開内周部に接触する先端接触部の螺旋形状が、拡開内周部に倣う形状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、先端接触部が拡開内周部に倣う螺旋形状を有することにより、拡開内周部とコイルばね端部(先端接触部)との当たりが安定し、コイルばねが傾いて装着されることを防止することができる。すなわち、拡開内周部がガイドとして機能するため、コイルばねの取り付けの際に、コイルばねの装着姿勢が拡開内周部の拡開中心にガイドされ、傾くことなく装着される。したがって、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばねの一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばねの塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばねがセットされ、拡開中心に合わせてコイルばねを装着することができる。またさらに、流入継手および流入ポートに特段の加工を必要とせず、コイルばねの取付け構造を簡単な構成にすることができる。なお、コイルばねの製造方法から、螺旋形状の変更が容易であることは、いうまでもない。
【0007】
この場合、先端接触部の螺旋形状が、拡開内周部に対し相補的な形状に形成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、拡開内周部の先端接触部に対する相補的なガイド機能により、コイルばね端部(先端接触部)を更に安定させることができ、コイルばねが傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。なお、拡開内周部に対し、コイルばねの先端接触部は、自由状態で相補的形状であってもよいし、装着時(圧縮状態)で相補的形状であってもよい。
【0009】
この場合、拡開内周部は、凹形テーパ状に形成されており、先端接触部の螺旋形状は、凸形テーパ状に形成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、凹形テーパ状を成す拡開内周部に、凸形テーパ状を成す先端接触部が嵌合することで、拡開内周部とコイルばね端部(先端接触部)との当たりを更に安定させることができ、コイルばねが傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。また、凹形テーパ状を成す拡開内周部の拡開中心軸にコイルばねがガイドされ、拡開中心軸にコイルばねを合わせることができる。例えば、拡開中心軸が、流路の中心軸と同一であれば、コイルばねを流路の中心軸に合わせて取り付けることができる。
【0011】
本発明の流体機器におけるフィルタの取付け構造は、流入継手が接合される流入ポートの継手接合部と、継手接合部に連なる流体機器本体の内部流路との間に位置して、流体機器本体にザグリ穴状のフィルタ収容部を形成し、フィルタ収容部に収容したフィルタを、上記のコイルばねにより押えて成ることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フィルタが、流入継手によりコイルばねを介して押えられる形で、ザグリ穴状のフィルタ収容部に取り付けられる。このように、流入継手の接合を利用してフィルタを押さえ、取り付ける。そのため、流入継手の接合を解除することで、フィルタを容易に取り外すことができると共に、コイルばねを容易に取り外すことができる。これにより、フィルタの着脱を容易に行うことができる。また、フィルタの取付構造を簡単な構成にすることができる。さらに、簡単な構成で、拡開内周部に対し、傾いて装着されるのを防止することができるコイルばねを用いることで、フィルタを適切に取り付けることができる。
【0013】
本発明の圧力調整弁は、上記の流体機器におけるフィルタの取付構造を備え、流入ポートから1次室に導入した機能液を、2次室を介して流出ポートに供給すると共に、大気に面し2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより、大気圧を調整基準圧力として、1次室と2次室とを連通する連通流路を開閉することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、機能液の流入端に、簡単な構成でフィルタを適切に取り付けることができるフィルタの取付構造を備えることにより、圧力調整弁内に異物が入り込むことを防止することができる。これにより、リーク不良を起こすことがなく、圧力調整の安定性を向上させることができる。また、圧力調整弁を大きく設計変更することなく、フィルタを組み込むことができる。
【0015】
本発明の機能液供給機構は、機能液を貯留する機能液タンクと、機能液滴吐出ヘッドに接続する上記の圧力調整弁と、上流端を機能液タンクに接続すると共に下流端を圧力調整弁に接続する機能液供給流路を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、圧力調整弁により、機能液の供給にかかる圧力制御を精度良く行うことができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、上記の機能液供給機構と、ワークに対し機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドと、ワークを機能液滴吐出ヘッドに対してX軸方向およびY軸方向に相対移動させるX・Y移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドにかかる圧力制御を精度良く行うことができるため、機能液滴吐出ヘッドによる描画処理を精度良く行うことができる。
【0019】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記の液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の電気光学装置は、上記の液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、高品質の電気光学装置を効率良く製造することができる。なお、機能材料としては、有機EL装置の発光材料(Electro-Luminescence発光層・正孔注入層)は元より、液晶表示装置に用いるカラーフィルタのフィルタ材料、電子放出装置(Field Emission Display, FED)の蛍光材料(蛍光体)、PDP(plasma Display Panel)装置の蛍光材料(蛍光体)、電気泳動表示装置の泳動体材料(泳動体)等であって、機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)により吐出可能な液体材料を言う。また、電気光学装置(Flat Panel Display, FPD)としては、有機EL装置、液晶表示装置、電子放出装置、PDP装置、電気泳動表示装置等がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明のコイルばねを適用した圧力調整弁を搭載する液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0023】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17が搭載された10個のキャリッジユニット51と、から成り、10個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ6と、チャンバ6を貫通して、チャンバ6の外部から、内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。なお、請求項にいうX・Y移動機構は、X軸テーブル11およびY軸テーブル12により構成されている。
【0024】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている(厳密には、吐出性能検査ユニット18は、後述するステージユニット77がX軸テーブル11に搭載され、カメラユニット78がY軸支持ベース3に支持されている。)。
【0025】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数の分割吸引ユニット74を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を受ける検査シート83を搭載したステージユニット77と、ステージユニット77上の機能液滴を画像認識により検査するカメラユニット78を有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。
【0026】
次に、液滴吐出装置1の構成要素について簡単に説明する。図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWをセットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ22と、上記のフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ22を介してセットテーブル21(ワークW)をX軸方向に移動させると共に、X軸第2スライダ23を介してフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、X軸リニアモータに並設され、X軸第1スライダ22およびX軸第2スライダ23の移動を案内する一対(2本)のX軸共通支持ベース24と、を備えている。
【0027】
セットテーブル21は、ワークWを吸着セットする吸着テーブル31と、吸着テーブル31を支持し、吸着テーブル31にセットしたワークWの位置をθ軸方向に補正するためのθテーブル32等を有している。また、セットテーブル21のY軸方向と平行な一対の辺には、それぞれ上記の描画前フラッシングユニット71が添設されている。
【0028】
Y軸テーブル12は、10個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート52と、10個のブリッジプレート52を両持ちで支持する10組のY軸スライダ(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、10組のY軸スライダを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15及びワイピングユニット16)に臨ませる。
【0029】
一対のY軸リニアモータを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダが一対のY軸支持ベース3を案内にして同時にY軸方向を平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向を移動し、これと共にキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。なお、この場合、Y軸リニアモータの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、10個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0030】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されており(実際には、ブリッジプレート52上に配設)、このサブタンク121から自然水頭を利用して各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。
【0031】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7(機能液供給装置101)に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0032】
なお、ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列98bが相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列98b同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。
【0033】
チャンバ6は、内部温度及び湿度を一定に保つように構成されている。すなわち、液滴吐出装置1によるワークWへの描画は、温度および湿度が一定値に管理された雰囲気中で行われる。そして、チャンバ6の側壁の一部には、タンクユニット122を収納するためのタンクキャビネット84が設けられている。なお、有機EL装置等を製造する場合には、チャンバ6内を、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気で構成することが好ましい。
【0034】
次に、図1および図6を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置(機能液供給機構)101を備えている。また、機能液供給ユニット7は、後述するメインタンク151等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備85と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備86と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備87と、後述する気泡除去ユニット135に接続された真空設備89と、を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0035】
図6に示すように、各色の機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク151,151を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた10個のサブタンク(機能液タンク)121と、タンクユニット122と10個のサブタンク121を接続する上流側機能液流路126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する10組の下流側機能液流路127と、を備えている。
【0036】
各メインタンク151,151内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して10個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、ガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。
【0037】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク151,151と、一対のメインタンク151,151の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置152,152と、一対のメインタンク151,151に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切換え機構153と、を備えている。各メインタンク151には、窒素ガス供給設備85に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。
【0038】
上流側機能液流路126は、上流側から、上流側をタンクユニット122に接続したタンク側主流路131と、分岐部132を介してタンク側主流路131から10方に分流し、下流側をサブタンク121に接続した10本の枝流路133と、を備えている。タンクユニット122から供給された機能液は、分岐部132により10方に分流して各サブタンク121に供給される。
【0039】
また、タンク側主流路131には、上流側から気泡除去ユニット135、第1開閉弁136、エアー抜きユニット137、第2開閉弁138がそれぞれ介設されている。また、各枝流路133には、各サブタンク121の近傍に位置して第3開閉弁139がそれぞれ介設されている。
【0040】
各下流側機能液流路127は、上流側から、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、上流側をヘッド側主流路146に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数のヘッド側枝流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17の接続されている。すなわち、上流側機能液流路126の10分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、10×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路146には、第4開閉弁149と、機能液滴吐出ヘッド17への圧力調整を行う圧力調整弁(流体機器)150と、が介設されている。なお、請求項にいう機能液供給流路は、サブタンク121から圧力調整弁150にかかるヘッド側主流路146により構成されている。
【0041】
サブタンク121は、各4個の機能液滴吐出ヘッド17に供給する機能液を貯留するものである。サブタンク121は貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構を有し、機能液の液位を一定の高さに維持しつつ供給を行う。機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動により、機能液の液位が下限液位まで下降すると(減液状態)、第3開閉弁139を開放してメインタンク151から機能液を供給し、メインタンク151からの供給により機能液の液位が上限液位まで上昇すると、第3開閉弁139を閉弁してメインタンク151からの供給を停止する。
【0042】
次に、図7ないし図14を参照して、圧力調整弁150廻りについて説明する。図7および図8に示すように、圧力調整弁150は、ヘッド側主流路146に介設されており、ヘッド側主流路146の上流側からの継手であると共に、流入ポート175に連なる流入コネクタ(流入継手)161(ユニオン継手)と、ヘッド側主流路146の下流側の継手であると共に、流出ポート190に連なる流出コネクタ162(ユニオン継手)と、に接続されている。
【0043】
圧力調整弁150は、圧力調整弁本体(流体機器本体)166と、圧力調整弁本体166と共に内部に1次室167を形成した蓋体168と、圧力調整弁本体166と共に内部に2次室169を形成し圧力調整弁本体166にダイヤフラム171を固定するリングプレート170との3部材で構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、圧力調整弁本体166には、1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。
【0044】
蓋体168およびリングプレート170は、圧力調整弁本体166に対し、前後からリングプレート170および蓋体168を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム171の中心を通る軸線と同心円となる多角形(8角形)あるいは円形の外観を有している。そして、蓋体168および圧力調整弁本体166は、パッキン172を介して相互に気密に突合せ接合され、圧力調整弁本体166およびリングプレート170は、ダイヤフラム171の縁部およびパッキン172を挟込み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0045】
圧力調整弁本体166と蓋体168とで形成された1次室167は、ダイヤフラム171と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋体168により閉蓋されている。また、圧力調整弁本体166の1次室側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室167から径方向斜めに延びる流入ポート175が形成されている。流入ポート175には上記の流入コネクタ161が接続されている。
【0046】
図9に示すように、流入ポート175は、圧力調整弁本体166の外周面に開口した流入口(継手接合部)176と、フィルタ181を収容するフィルタ収容部177と、フィルタ収容部177と1次室167の内周面とを連通する流入経路(内部流路)178とから成り、流入口176に対し流入経路178は、1次室167側に偏心して形成されている。流入口176には、流入コネクタ161が螺合(テーパネジ)される。なお、詳細は後述するが、フィルタ収容部177には、フィルタ181が収容され、フィルタ181と螺合した流入コネクタ161との間には、フィルタ181を押えるコイルばね182が収容される。
【0047】
流入コネクタ161の内部流路は、下流端で拡開形成された(テーパ形状の)拡開開口部(拡開内周部)161aを有しており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。同様に、流入経路178の上流端は、テーパ形状を為している。
【0048】
図9および図10に示すように、2次室169は、ダイヤフラム171と、圧力調整弁本体166に形成した内面壁185とによって、全体としてダイヤフラム171を底面とする円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム171は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室169の1つの面を構成している。また、内面壁185は、2次室169のダイヤフラム171の面(1つの面)を除いた各面で構成されている。
【0049】
また、内面壁185のうち円錐台形状の頂面となる端壁185aには、ダイヤフラム171と同心となる2次室側開口部186が開口し、内面壁185のうち円錐台形状のテーパ面となる周壁185bの下側斜面における上下中間部には、後述する流出流路193の流出開口部187が形成されている。この場合、2次室側開口部186は、後述する受圧板付勢ばね208を収容するばね室を兼ねており、連通流路173の主流路196より太径に形成されている。
【0050】
図10に示すように流出ポート190は、圧力調整弁本体166の下部に位置する傾斜ボス部191に形成されており、傾斜ボス部191の下部に開口した流出口192と、2次室169の流出開口部187と、これらを連通する流出流路193とで構成されている。流出流路193は、内面壁185の周壁185bから斜めに延びて下向きの流出口192に連通している。流出口192には、流出流路193の軸線方向から流出コネクタ162が螺合している。流出コネクタ162の内部に形成された流路は、上流端で拡開形成されており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。2次室169から流出する機能液は、流出開口部187から流出流路193の傾きに従って斜めに流れ、機能液滴吐出ヘッド17側に流出する。
【0051】
図9および図10に示すように、圧力調整弁本体166には、1次室167と2次室169とを連通する連通流路173が形成されている。連通流路173は、主流路196と、これに連なる2次室側開口部186とで構成されている。これら1次室167、2次室169および連通流路173は、いずれもダイヤフラム171と同心の円形断面を有している。ただし、主流路196は、後述する弁体201の軸部203がスライド自在に収容される円形断面の軸遊挿部197と、軸遊挿部197から径方向四方に延びる十字状断面の流路部198とで構成されている(図8(b)参照)。
【0052】
ダイヤフラム171は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体206と、ダイヤフラム本体206の内側に貼着した樹脂製の受圧板207とで構成されている。受圧板207は、ダイヤフラム本体206と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体206に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体201の軸部203が当接する。ダイヤフラム本体206は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、圧力調整弁本体166の前面と同径の円形に形成されている。
【0053】
弁体201は、円板状の弁体本体202と、弁体本体202の中心から断面横「T」字状を為すように一方向に延びる軸部203と、軸部203の基端部側(弁体本体202側)に設けた(取り付けた)環状のOリング204とで構成されている。弁体本体202および軸部203は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング204は、例えば軟質のシリコンゴムで環状に形成されている。このため、弁体201の閉弁時には、弁座となる連通流路173の開口縁にOリング204が強く当接して、連通流路173が1次室167側から液密に閉塞される。
【0054】
軸部203は、連通流路173(の主流路196)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム171の受圧板207に当接する。すなわち、ダイヤフラム171が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部203の前端と受圧板207との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム171がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部203の前端と受圧板207が当接し、さらにダイヤフラム171のマイナス変形がすすむと、受圧板207が軸部203を介して弁体本体202を押し開弁させることになる。したがって、2次室169の容積のうち、ダイヤフラム171がプラス変形から中立状態となる容積分は、1次室167側の圧力を一切受けることなく、機能液の供給が為される。
【0055】
弁体201の背面と1次室167の壁体206との間には、弁体201を2次室169側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね207が介設されている。同様に、受圧板207と内面壁185の間には、受圧板207を介してダイヤフラム本体206を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね208が介設されている。この場合、弁体付勢ばね207は、弁体201の背面に加わるサブタンク121の水頭を補完するものであり、サブタンク121の水頭とこの弁体付勢ばね207のばね力により、弁体201が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね208は、ダイヤフラム171のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室169が負圧になるように作用する。
【0056】
圧力調整弁150は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド17に連なる2次室169との圧力バランスによりダイヤフラム171(およびこれが当接する弁体201)が変形(進退)することで開閉し、2次室169側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね207および受圧板付勢ばね208に力が分散して作用し、且つ軟質シリコンゴムのOリング204(の弾性力)により、弁体201は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体201の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、サブタンク121側(1次室167側)で発生する脈動等も、弁体201で縁切りされるため、これを吸収する(ダンパー機能)ことができる。
【0057】
次に、図11を参照して流入ポート175廻りについて説明する。上記したように、流入ポート175は、流入口176、フィルタ収容部177および流入経路178により構成されている。流入口176の内周面に形成されたネジ部に、ユニオン継手である流入コネクタ161を螺合して接続することにより、サブタンク121からの流路が接続される。フィルタ収容部177には、上流側からの機能液に混入した異物を除去(濾過)するフィルタ181が収容されており、フィルタ181と流入コネクタ161との間には、フィルタ181を押えるコイルばね182が収容されている。なお、フィルタ181は、表裏両面において取付け可能に構成されている。すなわち、フィルタ181は、通液方向性の無い構成となっている。
【0058】
フィルタ収容部177は、圧力調整弁本体166に形成したザグリ穴状のものであり、円筒状のフィルタ181が係合するように円筒状に形成されている。すなわち、円筒状のフィルタ181の外周面が、フィルタ収容部177の内周面に係合すると共に、円筒状のフィルタ181の一端の周縁部が当接するよう、流入経路178に対し段部となる周縁当接部(座面)177aが形成されている。詳細は後述するが、コイルばね182の押圧によって、フィルタ181が周縁当接部177aに当接され、押圧固定される。
【0059】
図12および図13に示すように、フィルタ181は、円形シート状のフィルタエレメント211と、フィルタエレメント211を挟持するリング状のエレメントホルダ212と、を備えている。エレメントホルダ212は、フィルタエレメント211をセットする凹側の受けホルダ213と、セットされたフィルタエレメント211を押える凸側の押えホルダ214とから成り、フィルタエレメント211をセットした状態で、受けホルダ213に対し、押えホルダ214を圧入することでフィルタ181が一体化される。
【0060】
フィルタエレメント211は、複数の開口部(孔)が形成されたステンレス製の金属シートで構成されている。フィルタエレメント211は、厚さ15μm程度であり、各開口部は、30μm以上の異物が補足可能なよう、その外接円の直径が30μm以下となるように形成されている。なお、フィルタエレメント211は、ステンレスの金属繊維を編み込んだものでも良いし、耐薬液性の樹脂性のものであってもよい。
【0061】
受けホルダ213は、環状に形成されており、内周面の押えホルダ214側端部には、フィルタエレメント211のセット面を有するエレメント装着段部216が周設されている。すなわち、受けホルダ213は、凹形段付の環状に形成されている。フィルタエレメント211は、エレメント装着段部216により環状に形成されたセット面にて、セットされる。
【0062】
押えホルダ214は、環状に形成されており、受けホルダ213側に、エレメント装着段部216に係合する圧入部217を有すると共に、外周面に、受けホルダ213と面一となる鍔部218を有している。すなわち、押えホルダ214は、凸形段付の環状に形成されている。圧入部217が圧入されると、セット面と圧入部217の端面に当る押圧面とにより、フィルタエレメント211が押圧固定される。すなわち、フィルタエレメント211は、周縁部が受けホルダ213および押えホルダ214に固定され、保持される。
【0063】
受けホルダ213および押えホルダ214は、環状に形成されているため、受けホルダ213は、内周面により受け側流路219を形成し、押えホルダ214は、内周面により押え側流路220を形成して機能液を通液する。すなわち、受け側流路219と押え側流路220の一方の流路から流入した機能液は、フィルタエレメント211を通過して、他方の流路から流出する。これにより、機能液中の異物が除去される。また、受け側流路219および押え側流路220は、フィルタエレメント211に臨む通液口221がフィルタエレメント211側に拡開するテーパ状に形成されている。このように、通過する機能液に対し、フィルタエレメント211の接触面積が大きくなるように形成することにより、異物の除去性能を向上するように構成されている。なお、受けホルダ213および押えホルダ214は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0064】
また、受けホルダ213の軸方向外側の端面および押えホルダ214の軸方向外側の端面は、同一の平面度で仕上げられており、各ホルダ213,214の外側の各端面(エレメントホルダ212の両端面)と、フィルタ181を受けるフィルタ収容部177の周縁当接部177aとは、相互に液漏れを阻止可能な平面度を有している。
【0065】
さらに、受けホルダ213および押えホルダ214の通液口221を除く各角部は、他の部材を破損して異物を発生させないよう、面取りされていることが好ましい(図12および図13参照)。またさらに、上記と同様の要請から受けホルダ213および押えホルダ214は、それぞれマシンカットで荒仕上げした後、電解研磨で仕上げたものであることが好ましい。
【0066】
図11に示すように、コイルばね182は、一端が流入コネクタ161の拡開開口部161aに接触し、他端がフィルタ181の一端面に接触する。流入コネクタ161をねじ接合すると、コイルばね182を介して、フィルタ181が周縁当接部177aに押圧され、フィルタ収容部177にセットされる。
【0067】
このように、フィルタ181が、流入コネクタ161によりコイルばね182を介して押えられる形で、ザグリ穴状のフィルタ収容部177に取り付けられる。すなわち、流入コネクタ161の接合を利用してフィルタ181を押さえ、取り付ける。そのため、流入コネクタ161の接合を解除することで、フィルタ181を容易に取り外すことができると共に、コイルばね182を容易に取り外すことができる。これにより、フィルタ181の着脱を容易に行うことができる。また、フィルタ181の取付構造を簡単な構成にすることができる。
【0068】
ところで、コイルばね182は、一端がテーパ状を成す拡開開口部161aに接触することになるため、仮にコイルばね182として螺旋形状が円筒状を成す円筒コイルばねを用いると、テーパ状の拡開開口部161aに、円筒コイルばねの円形端部が接触して押圧されることになる。かかる場合、拡開開口部161aと、円形端部との当たりが安定せず、円形端部が傾いてセットされてしまい、また、円筒コイルばね全体が傾いてセットされてしまう。さらに、一旦傾いて接触してしまった円形端部は、直径上一対の接触部で内側に押圧され、楕円形に変形する形で拡開開口部161aに嵌り込んでしまう。そのため、流入コネクタ161を締めこんで螺合する際にも、円形端部が拡開開口部161aに固定され、傾きが解放されることがない。このような問題を解決すべく、本実施形態においては、次のような形状のコイルばね182を用いる。
【0069】
図11および図14(a)に示すように、コイルばね182は、円筒状の螺旋形状を有するコイルばね本体231と、コイルばね本体231の先端部に位置し、テーパ状の螺旋形状を有すると共に、拡開開口部161aに接触する先端接触部232と、を備えている。なお、コイルばね182は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0070】
拡開開口部161aは、凹形テーパ状に形成されているのに対し、それに接触する先端接触部232は、拡開開口部161aに相補的な形状となる凸形テーパ状の螺旋形状を有している。流入コネクタ161をねじ接合すると、凸形テーパ状を成す先端接触部232が、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aの拡開中心、すなわち、流入コネクタ161の中心軸(流路の中心軸)にガイドされ、先端接触部232の外周全体が接触する安定姿勢にセットされる(図14(a)および(b)参照)。これにより、拡開開口部161aに対し、先端接触部232が傾くことなくセットされると共に、コイルばね182全体が流路の中心軸にガイドされる。その後、更にねじ接合が進むと、コイルばね本体231が縮む形で、拡開開口部161aを受けとして、フィルタ181を押圧する(先端接触部232は伸縮しない)。
【0071】
このように、コイルばね182の先端接触部232が拡開開口部161aに倣う螺旋形状を有することにより、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりが安定し、コイルばね182が傾いて装着されることを防止することができる。これにより、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばね182の一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばね182の塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばね182がセットされ、拡開中心に合わせてコイルばね182を取り付けることができる。またさらに、流入コネクタ161および流入ポート175に特段の加工を必要とせず、コイルばね182の取付け構造を簡単な構成にすることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、先端接触部232が、拡開開口部161a(の内周面)に相補的な形状を成す凸形テーパ状の螺旋形状に形成されたものを使用したが、拡開開口部161a(の内周面)に倣う形状であれば、例えば、図15(c)および(d)に示すように、凸テーパ状が外側、内側に湾曲したような形状等でも良い。しかしながら、本実施形態のように、先端接触部232が拡開開口部161a(の内周面)に相補的な形状を成すことで、拡開開口部161aの先端接触部232に対する相補的なガイド機能により、コイルばね182端部(先端接触部232)を更に安定させることができ、コイルばね182が傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。
【0073】
また、凹形テーパ状の拡開開口部161aに対し、凸形テーパ状の先端接触部232を有することにより、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aに、凸形テーパ状を成す先端接触部232が嵌合することで、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりを更に安定させることができ、コイルばね182が傾いて装着されてしまうことを更に防止することができる。また、凹形テーパ状を成す拡開開口部161aの拡開中心軸(流路の中心軸)にコイルばね182がガイドされ、拡開中心軸(流路の中心軸)にコイルばね182を合わせることができる。特に本実施形態においては、コイルばね182の端部(先端接触部232に対する他端)を、フィルタ181のリング状を成す端面に接触させることができる(内部流路を避けた位置に接触)。
【0074】
なお、本発明は、拡開開口部161aが凹形テーパ状を成す場合でなくとも、拡開開口部161aが拡開形状であれば適用可能である。例えば、拡開開口部161aが断面V字状に拡開した形状である場合、先端接触部232は、相補的形状を成す断面V字状(もしくはそれに倣う形状)の螺旋形状を有する必要がある。
【0075】
以上のような構成により、コイルばね182の先端接触部232が拡開開口部161aに倣う螺旋形状を有することにより、拡開開口部161aとコイルばね182端部(先端接触部232)との当たりが安定し、コイルばね181が傾いて装着されることを防止することができる。これにより、押圧力を均一にすることができ、また、コイルばね182の一部に偏った圧力がかかることがないため、コイルばね182の塑性変形を防止することができる。さらに、拡開中心に合わせてコイルばね182がセットされ、拡開中心に合わせてコイルばね182を装着することができる。またさらに、流入コネクタ161および流入ポート175に特段の加工を必要とせず、コイルばね182の取付け構造を簡単な構成にすることができる。
【0076】
そして、このように圧力調整弁150(の流入側接合部分)にフィルタ181を設けることにより、圧力調整弁150の主機能を奏するOリング204と連通流路173の開口縁との当接部分(接触部分)に異物が咬み込むことを防止することができる。これにより、圧力調整弁150を安定動作させることができ、ひいては、機能液滴吐出ヘッド17における液滴吐出量の精度向上を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、10個のキャリッジユニット51を備えた液滴吐出装置1を備えたものを使用しているが、キャリッジユニット51の個数は任意である。
【0078】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
【0079】
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図15は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図16は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図16(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0080】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図16(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図16(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド17により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0081】
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
【0082】
次に、着色層形成工程(S103)では、図16(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド17によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド17を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0083】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図16(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0084】
図17は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図16に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0085】
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0086】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図17において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0087】
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0088】
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0089】
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。
【0090】
図18は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0091】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
【0092】
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0093】
図19は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0094】
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
【0095】
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0096】
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0097】
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0098】
次に、図20は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
【0099】
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0100】
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
【0101】
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
【0102】
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
【0103】
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
【0104】
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
【0105】
バンク部618は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
【0106】
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0107】
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
【0108】
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0109】
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0110】
次に、上記の表示装置600の製造工程を図21〜図29を参照して説明する。
この表示装置600は、図21に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、および対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0111】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図22に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図23に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
【0112】
表面処理工程(S112)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド17を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0113】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図1に示した液滴吐出装置1のセットテーブル21に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)および発光層形成工程(S114)が行われる。
【0114】
図24に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド17から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図25に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
【0115】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
【0116】
そして次に、図26に示すように、各色のうちのいずれか(図26の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
【0117】
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図27に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
【0118】
同様に、機能液滴吐出ヘッド17を用い、図28に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0119】
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0120】
対向電極形成工程(S115)では、図29に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0121】
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
【0122】
次に、図30は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0123】
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
【0124】
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
【0125】
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0126】
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図1に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のセットテーブル21に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド17により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0127】
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
【0128】
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド17から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
【0129】
次に、図31は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
【0130】
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0131】
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0132】
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0133】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
【0134】
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図32(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図32(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0135】
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】ヘッド群を構成する機能液滴吐出ヘッドの図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】圧力調整弁の外観斜視図である。
【図8】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図9】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図10】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図11】流入ポート廻りについて示した断面図である。
【図12】フィルタの断面図である。
【図13】フィルタの分解斜視図である。
【図14】コイルばねおよびコイルばねの変形例の模式図である。
【図15】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図16】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図17】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図18】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図19】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図20】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図21】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図22】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図23】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図24】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図25】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図26】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図27】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図28】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図29】陰極の形成を説明する工程図である。
【図30】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図31】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図32】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0137】
1:液滴吐出装置、 11:X軸テーブル、 12:Y軸テーブル、 17:機能液滴吐出ヘッド、 101:機能液供給装置、 121:サブタンク、 146:ヘッド側主流路、 150:圧力調整弁、 161:流入コネクタ、 161a:拡開開口部、 166:圧力調整弁本体、 167:1次室、 169:2次室、 171:ダイヤフラム、 173:連通流路、 175:流入ポート、 176:流入口、 177:フィルタ収容部、 178:流入経路、 181:フィルタ、 182:コイルばね、 190:流出ポート、 232:先端接触部、 W:ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機器本体に形成した流入ポートと前記流入ポートに接合される流入継手との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した前記流入継手の拡開内周部を受けとして押圧するコイルばねであって、
前記流入継手の拡開内周部に接触する先端接触部の螺旋形状が、前記拡開内周部に倣う形状に形成されていることを特徴とするコイルばね。
【請求項2】
前記先端接触部の前記螺旋形状が、前記拡開内周部に対し相補的な形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルばね。
【請求項3】
前記拡開内周部は、凹形テーパ状に形成されており、
前記先端接触部の前記螺旋形状が、凸形テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコイルばね。
【請求項4】
前記流入継手が接合される前記流入ポートの継手接合部と、前記継手接合部に 連なる前記流体機器本体の内部流路との間に位置して、前記流体機器本体にザグリ穴状のフィルタ収容部を形成し、
前記フィルタ収容部に収容した前記フィルタを、請求項1ないし3のいずれかに記載のコイルばねにより押えて成ることを特徴とする流体機器におけるフィルタの取付け構造。
【請求項5】
請求項4に記載の流体機器におけるフィルタの取付構造を備え、
前記流入ポートから1次室に導入した機能液を、2次室を介して流出ポートに供給すると共に、大気に面し前記2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより、大気圧を調整基準圧力として、前記1次室と前記2次室とを連通する連通流路を開閉することを特徴とする圧力調整弁。
【請求項6】
機能液を貯留する機能液タンクと、
機能液滴吐出ヘッドに接続する請求項5に記載の圧力調整弁と、
上流端を前記機能液タンクに接続すると共に下流端を前記圧力調整弁に接続する機能液供給流路を備えたことを特徴とする機能液供給機構。
【請求項7】
請求項6に記載の機能液供給機構と、
ワークに対し機能液滴を吐出する前記機能液滴吐出ヘッドと、
前記ワークを前記機能液滴吐出ヘッドに対してX軸方向およびY軸方向に相対移動させるX・Y移動機構と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワークに前記機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワークに前記機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項1】
流体機器本体に形成した流入ポートと前記流入ポートに接合される流入継手との接合部分に着脱自在に収容されるフィルタを、下流に向かって拡開形成した前記流入継手の拡開内周部を受けとして押圧するコイルばねであって、
前記流入継手の拡開内周部に接触する先端接触部の螺旋形状が、前記拡開内周部に倣う形状に形成されていることを特徴とするコイルばね。
【請求項2】
前記先端接触部の前記螺旋形状が、前記拡開内周部に対し相補的な形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルばね。
【請求項3】
前記拡開内周部は、凹形テーパ状に形成されており、
前記先端接触部の前記螺旋形状が、凸形テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコイルばね。
【請求項4】
前記流入継手が接合される前記流入ポートの継手接合部と、前記継手接合部に 連なる前記流体機器本体の内部流路との間に位置して、前記流体機器本体にザグリ穴状のフィルタ収容部を形成し、
前記フィルタ収容部に収容した前記フィルタを、請求項1ないし3のいずれかに記載のコイルばねにより押えて成ることを特徴とする流体機器におけるフィルタの取付け構造。
【請求項5】
請求項4に記載の流体機器におけるフィルタの取付構造を備え、
前記流入ポートから1次室に導入した機能液を、2次室を介して流出ポートに供給すると共に、大気に面し前記2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより、大気圧を調整基準圧力として、前記1次室と前記2次室とを連通する連通流路を開閉することを特徴とする圧力調整弁。
【請求項6】
機能液を貯留する機能液タンクと、
機能液滴吐出ヘッドに接続する請求項5に記載の圧力調整弁と、
上流端を前記機能液タンクに接続すると共に下流端を前記圧力調整弁に接続する機能液供給流路を備えたことを特徴とする機能液供給機構。
【請求項7】
請求項6に記載の機能液供給機構と、
ワークに対し機能液滴を吐出する前記機能液滴吐出ヘッドと、
前記ワークを前記機能液滴吐出ヘッドに対してX軸方向およびY軸方向に相対移動させるX・Y移動機構と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワークに前記機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワークに前記機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする電気光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2009−127657(P2009−127657A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300302(P2007−300302)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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