説明

コラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置

【課題】インストルメントパネルの意匠の制約を受ける場合やテレスコピック機構によってステアリングホイールの位置がコラム軸方向前側へ移動されている場合にも、エアバッグドアを大きく展開させる。
【解決手段】ステアリングコラム装置12のコラムチューブ26には、チルト・テレスコピック駆動機構部40が配設されている。テレスコピック用の駆動モータ42には、ECU80が接続されている。また、ECU80には、プリクラッシュセンサ82が接続されている。プリクラッシュセンサ82によって前面衝突を予知すると、ECU80によってテレスコピック用の駆動モータ42が逆転駆動され、コラムチューブ26のインナチューブ36を乗員側へフルストロークさせる。これにより、エアバッグドア60とインストルメントパネル18の外形線18A、18Bとの干渉(交差)を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時及び衝突予知時にニーエアバッグを膨張展開させて乗員の膝を拘束するコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員の膝部を保護する目的で種々のコラム付けニーエアバッグ装置が提案されている。例えば、下記特許文献1、2には、ステアリングコラムのコラムカバー内にエアバッグモジュールが配設された所謂コラム付けニーエアバッグ装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−104317号公報
【特許文献2】特開平9−123862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、側面視でインストルメントパネルの外形線(後面)とエアバッグモジュールとがオーバーラップする車両搭載構造になる場合、コラムカバーの下面から両側面に跨って大きく展開するエアバッグドアを設定することができないという課題がある。また、乗降性の観点から、平面視でインストルメントパネルの外形線がコンソールボックスに向かうにつれて大きくラウンドしている場合において、エアバッグモジュールとインストルメントパネルの外形線とがオーバーラップする車両搭載構造になる場合、車両内側におけるインストルメントパネルの外形線とエアバッグモジュールとのオーバーラップ量が大きくなるため、エアバッグドアを大きく展開させることがより一層困難になるという課題がある。さらに、テレスコピック機構が搭載されたステアリングコラム装置において、ステアリングホイールの位置がコラム軸方向前側へ移動された調整となっている場合も、上記と同様の課題が生じる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、インストルメントパネルの意匠の制約を受ける場合やテレスコピック機構によってステアリングホイールの位置がコラム軸方向前側へ移動されている場合にも、エアバッグドアを大きく展開させることができるコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係るコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置は、テレスコピック機構を備えたステアリングコラムと、このステアリングコラムの後端側を覆うコラムカバーと、このコラムカバー内に配置され、作動することによりガスを発生するガス発生手段及びこのガス発生手段によって発生したガスによって折り畳み状態から膨張展開されるニーエアバッグを含んで構成されたエアバッグモジュールと、コラムカバーに設けられ、ニーエアバッグのバッグ膨張圧を受けて展開するエアバッグドアと、衝突体との衝突を予知する衝突予知手段と、この衝突予知手段によって衝突体との衝突が予知された場合にテレスコピック機構を作動させて、コラムカバー及びエアバッグモジュールを最後端位置に移動させる制御手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置において、前記テレスコピック機構は、テレスコピックモータによって駆動する電動式とされている、ことを特徴としている。
【0007】
請求項1記載の本発明によれば、衝突予知手段によって衝突体との衝突が予知されると、制御手段によってテレスコピック機構が作動される。これにより、ステアリングコラムの後端側を覆うコラムカバー及びこのコラムカバー内に配置されたエアバッグモジュールが最後端位置まで移動される。従って、インストルメントパネルの意匠との関係でエアバッグモジュールとインストルメントパネルの外形線とが交差する場合やテレスコピック機構によってステアリングホイールの位置がコラム軸方向前側に移動された状態で調整されていた場合にも、エアバッグドアをインストルメントパネルに全く干渉させることなく、或いは殆ど干渉させることなく展開させることが可能になる。
【0008】
請求項2記載の本発明によれば、テレスコピック機構がテレスコピックモータによって駆動する電動式とされているので、衝突予知手段によって衝突体との衝突を予知してからテレスコピック機構を作動させる制御を比較的簡単に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1記載のコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置は、インストルメントパネルの意匠の制約を受ける場合やテレスコピック機構によってステアリングホイールの位置がコラム軸方向前側へ移動されている場合にも、エアバッグドアを大きく展開させることができるという優れた効果を有する。
【0010】
請求項2記載の本発明に係るコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置は、制御手段によるテレスコピックモータの駆動制御によって本発明の目的を達成することができるので、制御対象が少なく、ステアリングコラム(エアバッグドアの展開領域)の後退作動を迅速に行わせることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係るコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0012】
図1には、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置10を備えたステアリングコラム装置12の全体構成の側面図が示されている。また、図2には、当該コラム付けニーエアバッグ装置10を備えたステアリングコラム装置12の平面図が示されている。さらに、図3には、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置10を備えたステアリングコラム装置12が作動した状態の側面図が示されている。なお、この実施形態では、左ハンドル車にコラム付けニーエアバッグ装置10を備えたステアリングコラム装置12が搭載されている。
【0013】
図1及び図2に示されるように、ステアリングコラム装置12は、ステアリングコラム本体14と、このステアリングコラム本体14の後端側を覆うコラムカバー16と、ステアリングコラム本体14の後端部に配置されるステアリングホイール17と、によって構成されている。ステアリングコラム装置12は、そのステアリングコラム本体14がインストルメントパネル18の運転席側に形成されたステアリングコラム挿通用の開口部(図示省略)内へ前傾した状態で挿入され、かつインストルメントパネル18内に車両幅方向を長手方向として左右のフロントピラー間に架け渡された高強度・高剛性のインパネリインフォースメント(図示省略)にステアリングサポートを介して支持されることにより、車体に取り付けられている。
【0014】
ステアリングコラム装置12の組付状態では、コラムカバー16の前端部がインストルメントパネル18内に配置され、残りの部分がキャビン19内へ突出した状態で配置されている。また、コラムカバー16は、上下二分割構造とされており、コラムアッパカバー20とコラムロアカバー22とによって構成されている。
【0015】
(ステアリングコラム本体14の概略構造)
ステアリングコラム本体14は、円筒状のコラムチューブ26を備えており、このコラムチューブ26の軸芯部にステアリングメインシャフト28が回転自在に支持されている。ステアリングメインシャフト28はコラム軸方向に二分割されており、アッパ側のシャフト28Aとロア側のシャフト(図示省略)とはスプライン嵌合によって連結されている。従って、アッパ側のシャフト28Aはロア側のシャフトに対して所定ストロークの範囲内で相対移動可能であるが、アッパ側のシャフト28Aはロア側のシャフトに対して相対回転不能である。また、アッパ側のシャフト28Aの後端部には、ドライバの操舵力が付与されるステアリングホイール17がナットで締結固定されている。
【0016】
ステアリングメインシャフト28を覆うコラムチューブ26もコラム軸方向に二分割(二重管構造と)されており、乗員側に配置されるインナチューブ36と反乗員側(ステアリングギヤボックス側)に配置されるアウタチューブ38とはスプライン嵌合によって連結されている。また、アウタチューブ38はインナチューブ36よりも径が大きく設定されており、乗員のステアリングホイール17への二次衝突時にはインナチューブ36がアウタチューブ38内へスライドして収縮することにより、二次衝突時のエネルギーを吸収するようになっている。さらに、アウタチューブ38は、前述したようにインストルメントパネル18内に車両幅方向に沿って延在する高強度・高剛性部材である図示しないパイプ状のインパネリインフォースに固定されたステアリングサポートにブラケットを介して支持されている。
【0017】
上述したコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置12は、電動式とされており、ステアリングコラム本体14のアウタチューブ38の所定位置には、チルト・テレスコピック駆動機構部40が配設されている。チルト機構は、ステアリングホイール17をコラム軸線に対して直交する上下方向へ支点回りに回動させることにより、ステアリングホイール17の上下位置(高さ)を調整する機構である。また、テレスコピック機構は、ステアリングコラム本体14の収縮動作によりステアリングホイール17をコラム軸線方向へ移動させることにより、ステアリングホイール17の前後位置を調整する機構である。なお、図1及び図2に示す符号「42」がテレスコピック機構を駆動させる駆動モータである。また、チルト機構用の駆動モータは別途設けられている。
【0018】
(コラム付けニーエアバッグ装置10の構成)
上述したステアリングコラム本体14の後端側下方には、前面衝突時及び前面衝突予知時に作動するコラム付けニーエアバッグ装置10が配設されている。コラム付けニーエアバッグ装置10の配設位置について補足すると、ステアリングコラム本体14のインナチューブ36の後端部にはコンビネーションスイッチ66が配設されており、更にそのコラム軸方向前側には電動式のステアリングロック68が配設されている。コラム付けニーエアバッグ装置10は、インナチューブ36におけるステアリングロック68の近傍に溶接等により固定された取付ブラケット70を介してインナチューブ36に取り付けられている。
【0019】
上記コラム付けニーエアバッグ装置10は、コラムロアカバー22側に配設されたエアバッグモジュール54と、コラムロアカバー22の下面部22A及び両側部22Bに亘って形成されたエアバッグドア60と、によって構成されている。
【0020】
エアバッグモジュール54は、作動することによりガスを発生するインフレータ50と、このインフレータ50から発生したガスによって膨張展開するニーエアバッグ52と、を備えている。インフレータ50はエアバッグモジュール54の後部側(ステアリングホイール17側)に配置されており、図示しないスタッドボルトがインナチューブ36側へ向けて立設されている。このスタッドボルトが取付ブラケット70にナットで固定されることにより、エアバッグモジュール54がインナチューブ36に支持されている。また、ニーエアバッグ52は、折り畳み状態でエアバッグモジュール54の前部側に配置されている。ニーエアバッグ52は、蛇腹折り、ロール折り、又は両者の組み合わせによって折り畳まれている。
【0021】
また、エアバッグドア60は、コラムロアカバー22の内側に所定のティアライン62(図1参照)及びティアライン64(図2参照)を設定することにより、バッグ膨張圧が所定値以上になると破断して展開するようになっている。なお、図1にはエアバッグドア60の内、コラムロアカバー22の両側部22Bに形成された側部前方ドア60A及び側部後方ドア60Bが図示されており、図2にはコラムロアカバー22の下面部に形成された下面前方ドア60C及び下面後方ドア60Dが図示されている。また、エアバッグドア60は前記の如くコラムロアカバー22に一体形成してもよいが、コラムロアカバー22の下面にバッグ膨出用開口部を形成して、別体のエアバッグドアで閉止するようにしてもよい。さらに、本実施形態のエアバッグドア60は6分割構造になっているが、4分割構造(側部ドアが前後に分割されていないタイプ)にしてもよいし、他の分割構造を採用してもよい。
【0022】
ここで、図1に示されるように、上述したステアリングコラム装置12は、テレスコピック操作をしていない通常の場合(標準位置の場合)には、側面視でエアバッグドア60の側部後方ドア60Bはインストルメントパネル18の外形線(意匠ライン)18Aに干渉しないが、側部前方ドア60Aはインストルメントパネル18の外形線18Aに干渉する位置関係にある。なお、側面視でのインストルメントパネル18の外形線18Aは、ステアリングホイール17側に頂点を向けた山型になっている。
【0023】
また、図2に実線で示されるように、テレスコピック操作をしていない通常の場合(標準位置の場合)には、平面視で下面後方ドア60Dはインストルメントパネル18の外形線(意匠ライン)18Bに干渉しないが、下面前方ドア60Cはインストルメントパネル18の外形線18Bに干渉する位置関係にある。なお、平面視でのインストルメントパネル18の外形線18Bは、乗降性を考慮して、コンソールボックスに向けて滑らかに湾曲したラウンド形状とされている。
【0024】
さらに、図1及び図2に示されるように、上述したテレスコピック用の駆動モータ42は制御手段としてのECU80に接続されており、その作動が制御されている。また、ECU80には、図示しないフロントバンパの中央部付近に配設された衝突予知手段としてのプリクラッシュセンサ82が接続されている。
【0025】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0026】
通常の車両走行時には、チルト・テレスコピック駆動機構部40を操作することにより、乗員の体格に最適となる前後位置及び上下位置にステアリングホイール17が保持される。従って、この場合には、エアバッグドア60の側部前方ドア60Aがインストルメントパネル18の側面視での外形線18Aに干渉(交差)すると共に、エアバッグドア60の下面前方ドア60Cがインストルメントパネル18の平面視での外形線18Bに干渉(交差)する位置関係にある。
【0027】
この状態から、前面衝突予知時になると、即ちプリクラッシュセンサ82によって衝突体との前面衝突が予知されると、その検知信号がECU80に送られる。ECU80では、衝突体と前面衝突すると判断すると、チルト・テレスコピック駆動機構部40のテレスコピック用の駆動モータ42に所定の駆動信号を出力する。これにより、図3及び図2に二点鎖線で示されるように、テレスコピック用の駆動モータ42が逆転駆動され、ステアリングホイール17及びインナチューブ36が乗員側へフルストロークされる。これにより、エアバッグドア60の側部前方ドア60Aがインストルメントパネル18の側面視での外形線18Aと干渉(交差)しない位置まで退避されると共に、エアバッグドア60の下面前方ドア60Cがインストルメントパネル18の平面視での外形線18Bと干渉(交差)しない位置まで退避される。
【0028】
その結果、本実施形態によれば、インストルメントパネル18の意匠の制約を受ける場合やチルト・テレスコピック駆動機構部40によってステアリングホイール17の位置がコラム軸方向前側へ移動されている場合にも、エアバッグドア60を大きく展開させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、チルト・テレスコピック駆動機構部40がテレスコピック用の駆動モータ42によって駆動する電動式とされているので、衝突体との衝突を予知してからチルト・テレスコピック駆動機構部40を作動させる制御を比較的簡単に実現することができる。すなわち、ハード的には何も変更することなく、ソフトのみを変更するだけで、エアバッグドア60とインストルメントパネル18との干渉を抑制又は防止することができる。その結果、本実施形態によれば、ECU80によるテレスコピック用の駆動モータ42の作動制御によって目的を達成することができるので、制御対象が少なく、ステアリングコラム本体14(エアバッグドア60の展開領域)の後退作動を迅速に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されるコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置の平面図である。
【図3】図1に示されるコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置が作動した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 コラム付けニーエアバッグ装置
12 ステアリングコラム装置
14 ステアリングコラム本体
16 コラムカバー
18 インストルメントパネル
18A 外形線
18B 外形線
40 チルト・テレスコピック駆動機構部
42 駆動モータ
50 インフレータ(ガス発生手段)
52 ニーエアバッグ
54 エアバッグモジュール
60 エアバッグドア
60A 側部前方ドア
60C 下面前方ドア
80 ECU(制御手段)
82 プリクラッシュセンサ(衝突予知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレスコピック機構を備えたステアリングコラムと、
このステアリングコラムの後端側を覆うコラムカバーと、
このコラムカバー内に配置され、作動することによりガスを発生するガス発生手段及びこのガス発生手段によって発生したガスによって折り畳み状態から膨張展開されるニーエアバッグを含んで構成されたエアバッグモジュールと、
コラムカバーに設けられ、ニーエアバッグのバッグ膨張圧を受けて展開するエアバッグドアと、
衝突体との衝突を予知する衝突予知手段と、
この衝突予知手段によって衝突体との衝突が予知された場合にテレスコピック機構を作動させて、コラムカバー及びエアバッグモジュールを最後端位置に移動させる制御手段と、
を有することを特徴とするコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記テレスコピック機構は、テレスコピックモータによって駆動する電動式とされている、
ことを特徴とする請求項1記載のコラム付けニーエアバッグ装置を備えたステアリングコラム装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−221926(P2008−221926A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60202(P2007−60202)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】