説明

コリンエステラーゼを阻害し、薬理活性物質を放出するカルバモイルエステル類

カルバモイルエステルはコリンエステラーゼ活性を阻害し、加水分解により薬理活性物質を放出する。ある具体的態様にて、カルバモイルエステルは以下の構造:


[式中、Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択される]を有する。カルバモイルエステルは個体を治療する方法に用いられる。カルバモイルエステルの加水分解により得られる薬理活性物質は、例えば神経系病態、コリン作動性欠乏、およびアセチルコリンなどの薬理活性物質の欠乏を伴う病態または疾患を治療することができる。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願
本出願は、2003年10月21日出願の米国仮出願番号60/512,971の利益を主張する。上記出願のすべての教示は本明細書に引用される。
【0002】
発明の背景
ヒトにおける多くの病態および疾患は、細胞シグナル分子における崩壊を伴うか、またはその結果である。例えば、細胞シグナル分子の不適切な合成、放出もしくは再摂取、または疾患もしくは他の病態を生じるレセプター機序もしくは非レセプター機序による分子の細胞内シグナル伝達の媒介における崩壊があり得る。多くの場合、臨床管理戦略および現在入手可能な薬物は有害な副作用を伴うことが多く、患者を慎重にモニターしなければならない。細胞シグナル分子における崩壊を伴うか、またはその結果である病態および疾患を治療するための薬物を開発する現在の戦略は、化合物の有意の構造活性改変を必要とする。さらに、現在入手可能な薬物は一般に、特定の細胞または組織に薬物を標的せず、持続的効果を有する薬物の送達を生じさせることができない。多くの場合、単一の細胞シグナル分子における崩壊の改善は疾患または病態の症状を有効に治療しない。従って、細胞シグナル分子における崩壊と関連するか、またはこれを伴う疾患または病態の新たな、改善された、有効な治療方法を開発する必要性がある。
【0003】
発明の概要
本発明は、コリンエステラーゼ阻害活性を有し、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含むカルバモイルエステルを目的とする。本発明はまた、カルバモイルエステルを用いる方法およびカルバモイルエステルの医薬組成物を目的とする。
【0004】
ある具体的態様にて、本発明は、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルである。
【0005】
別の具体的態様にて、本発明は、以下の構造:
【化1】

[式中、
Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
およびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
を有するカルバモイルエステルである。
【0006】
さらなる具体的態様にて、本発明は、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・4−ピリジニルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・(2−フェニル)エチルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・[1−(1−ナフチル)エチル]カーバメートエステル、7−ブロモ−(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・ヘプチルカーバメートエステルまたはテトラヒドロイソキノリニルカーバメートエステルではないカルバモイルエステルである。
【0007】
さらなる具体的態様にて、本発明は、以下の基:
【化2】

【化3】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
からなる群から選択されるカルバモイルエステルである。
【0008】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、以下の基:
【化4】

【化5】

からなる群から選択されるカルバモイルエステルである。
【0009】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、個体にカルバモイルエステルを投与することを特徴とする、個体を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、加水分解されて個体の病態のために個体を治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む、方法である。
【0010】
さらなる具体的態様にて、本発明は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体における神経系病態が治療することを特徴とする、個体の神経系病態を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質が個体における神経系病態をさらに治療することができる方法である。
【0011】
さらなる具体的態様にて、本発明は、アセチルコリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体における中枢神経系病態を治療することを特徴とする、個体の中枢神経系病態を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質がアンフェタミン化合物およびメタンフェタミン化合物からなる群から選択され、その薬理活性物質が個体における中枢神経系病態をさらに治療することができる方法である。
【0012】
本発明のさらなる具体的態様は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それによりアセチルコリンを増大させることを特徴とする、個体のアセチルコリンを増大させる方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質が個体におけるアセチルコリンをさらに増大させることができる方法である。
【0013】
さらなる具体的態様にて、本発明は、アセチルコリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体におけるアセチルコリンを増大させることを特徴とする、個体のアセチルコリンを増大させる方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質がアンフェタミン化合物およびメタンフェタミン化合物からなる群から選択される方法である。
【0014】
さらにさらなる具体的態様にて、本発明は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体におけるコリン作動性欠乏を治療することを特徴とする、個体のコリン作動性欠乏を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質が個体におけるコリン作動性欠乏をさらに治療することができる方法である。
【0015】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体における記憶障害を治療することを特徴とする、個体の記憶障害を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質が個体における記憶障害をさらに治療することができる方法である。
【0016】
別の具体的態様にて、本発明は、カルバモイルエステルを組織に投与することを特徴とする、薬理活性物質を組織に送達する方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、それにより薬理活性物質を組織に送達する方法である。
【0017】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを含む医薬組成物であって、該カルバモイルエステルが、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む、医薬組成物である。
【0018】
本明細書に記載の発明は、コリンエステラーゼの活性を阻害し、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるカルバモイルエステルを提供する。カルバモイルエステルを用いる方法は、例えば神経学的病態を治療し、シナプス間隙におけるアミンの量を増大させ、コリン作動性欠乏を治療し、ニューロン間の伝達を増大させ、シナプス間隙にアミンを送達し、薬理的に有効なアミンの中枢神経系への送達を増大させることができる。特許請求されている発明の利点は、薬理活性物質に有意な構造的変更なしで、例えば神経伝達のモジュレータなどの薬理活性物質のシナプスへの送達を含み、これは、神経伝達物質の不均衡と関連する疾患または病態を欠如させるか、または減退させ、それにより治療することができる神経伝達を引き起こす。本発明の方法は、カルバモイルエステルを用いることにより、神経伝達物質などの薬理活性物質の量を増大させ、それにより神経伝達物質の欠乏と関連する疾患または病態を補うことができる。
【0019】
従って、本発明のカルバモイルエステルは、薬理活性物質と関連する疾患または他の病態の治療に用いることができ、それにより疾患もしくは他の病態の進行を中断し、逆転させ、もしくは減退させるか、またはシナプス伝達と関連する病態を治療する薬理活性物質などの薬理活性物質で治療することができる生理的過程を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図は本発明のカルバモイルエステルによるアセチルコリンエステラーゼ阻害の機序を示す。
【0021】
発明の詳述
本発明の特徴および他の詳細は、本発明の工程または本発明の部分の組合せのいずれかとして、特許請求の範囲に、より具体的に記載され、指摘されるであろう。本発明の特定の具体的態様が、本発明の説明を通じて、限定としてではなく示されることは理解されよう。本発明の原則的特徴は、本発明の範囲から逸脱しないで種々の具体的態様にて用いることができる。
【0022】
ある具体的態様にて、本発明は、コリンエステラーゼを阻害し、加水分解されて薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含むカルバモイルエステルである。本明細書において用語「カルバモイルエステル」は、以下の構造式:
【化6】

[式中、RおよびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素または炭化水素であり、Rは炭化水素である]
を有するカルバモイル化合物を意味する。特に、カルバモイルエステルは、コリンエステラーゼに結合する化合物(例えばアセチルコリン(ACh))と競争することによりコリンエステラーゼを阻害する。図に示すように、カルバモイルエステルは、コリンエステラーゼに結合してカルバモイル化酵素を形成する。コリンエステラーゼが神経伝達物質AChなどの化合物の不活性化を防ぐ場合、コリンエステラーゼがカルバモイルエステルの非存在下にて神経伝達物質に作用するであろう程度まで、コリンエステラーゼは阻害される。カルバモイル化酵素の加水分解は、例えばその内因性基質アセチルコリンの加水分解により形成されるアセチル化酵素のものよりもずっと遅い。カルバモイルエステル分子によるコリンエステラーゼの阻害は、カルバモイル化酵素が加水分解されたときに終わる。カルバモイル化酵素の加水分解において、アミンなどの放出される化合物は薬理活性物質の少なくとも一つの成分となる。
【0023】
薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるための、アミン基を含むカルバモイルエステルの加水分解は、酵素(例えばコリンエステラーゼ)、または酵素以外の他のもの、例えば酸(例えば胃酸)による加水分解であることができる。ある具体的態様にて、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルは、コリンエステラーゼとの反応により加水分解されて薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0024】
本明細書において語句「酵素との反応により加水分解されて」は、カルバモイルエステルの酵素との反応によるカルバモイル化酵素の形成と、このカルバモイル化酵素の水との反応による分解の二段階工程を意味する。
【0025】
同様に、本明細書において語句「コリンエステラーゼとの反応により加水分解されて」は、カルバモイルエステルの酵素コリンエステラーゼとの反応によるカルバモイル化酵素の形成と、このカルバモイル化酵素の水との反応による分解の二段階工程を意味する。
【0026】
本発明のカルバモイルエステルにより阻害されるコリンエステラーゼは、例えばアセチルコリンエステラーゼ(AChE)またはブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーであることができる。カルバモイルエステルはAChEのみ、BuChEのみを阻害することができるか、またはAChEとBuChEの両方を同程度もしくは異なる程度にて阻害することができる。
【0027】
AChEは興奮性膜に位置し、AChを不活性化する。興奮性膜はシナプス前ニューロンまたはシナプス後ニューロンであることができる。AChEはまた、特異的コリンエステラーゼとも称される。BuChEは興奮性膜および血球などの非ニューロン組織に位置する(文献(Darvesh, S. et al., Nature Reviews 4: 131-138 (2003))を参照のこと、この教示は本明細書にそのまま引用される)。BuChEはまた、偽コリンエステラーゼまたは非特異的コリンエステラーゼとも称される。AChEおよびBuChEは中枢神経系(脳および脊髄)、末梢神経系および自律神経系(副交感神経系および交感神経系)におけるコリン作動性神経伝達の調整剤である。
【0028】
カルバモイル化酵素のカーバメート結合の加水分解において、アミンを含む化合物などの放出された化合物は、薬理活性物質の少なくとも一つの成分となる。本明細書において用語「薬理活性物質の少なくとも一つの成分となる」は、カルバモイル化酵素の加水分解の結果として、アミン含有化合物などの化合物の放出を意味する。カルバモイル化酵素の加水分解により放出される化合物は、薬理活性物質の少なくとも一部である。ある具体的態様にて、カルバモイル化酵素の加水分解により放出される化合物はプロドラッグである。本明細書において用語「プロドラッグ」は、投与されるが、治療計画に所望される実際の薬物ではなく、代謝過程により治療に所望される実際の薬物に変換される、本発明のカルバモイルエステルなどの化合物を意味する。次いでプロドラッグは改変されて薬理活性物質を放出することができる。別の具体的態様にて、カルバモイル化酵素の加水分解により放出される化合物はそれ自体、薬理活性物質であることができる。従って、本発明のカルバモイルエステルは、コリンエステラーゼの阻害剤として、および薬理活性物質のための送達ビヒクルとしての二重の役割を有する。
【0029】
本明細書において用語「薬理活性物質」は、生物学的過程に直接的または間接的に関与する分子(例えば神経伝達物質、ペプチド、タンパク質)の活性、局在性および/または発現を変化させることにより生物学的過程に影響を与える化合物を意味する。
【0030】
薬理活性物質は、アンフェタミン化合物(l−アンフェタミン、d−アンフェタミン、l−メタンフェタミン、d−メタンフェタミン、またはアンフェタミンおよびメタンフェタミンのd−およびl−異性体のいずれかの混合物)などのフェニルエチルアミンであることができる。薬理活性物質は、デスメチルセレギリン(desmethylselegline)、l−アンフェタミンおよびl−メタンフェタミンに代謝化されるデプレニールなどの薬理活性物質の第一級または第二級アミンを含む化合物に代謝化されるプロドラッグまたは前駆体であることができる。
【0031】
薬理活性物質は好ましくは、例えば生物学的過程を改善し、欠陥もしくは疾患症状を緩和し、または疾患の進行を遅延および/もしくは後進する所望の効果を生じるように生物学的過程を変化させる。例えばカルバモイルエステルの加水分解において、放出されたアミンは、神経伝達物質の崩壊の減退もしくは中断、さらなる神経伝達物質の放出を生じる細胞的事象への関与、神経伝達物質の再摂取の阻害、および/または神経伝達物質の合成の増大により、シナプスにおける神経伝達物質の量を増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となることができる。
【0032】
薬理活性物質は、例えばアルツハイマー病患者においてコリン作動性欠乏を補い、それによりニューロンの伝達を促進し、最終的にアルツハイマー病の症状を緩和または改善することができる中枢神経系ニューロンのシナプスにおけるAChの増大をもたらすことができる。アルツハイマー病は、認知障害、失見当識行動、性格変化、会話困難および理解困難、および歩行障害および運動障害を含む症状を伴う。コリン作動性機能の軽減は、アルツハイマー病の症状に関与することが示唆されている(文献(Benzi, G., et al., European J. Pharmacol. 346:1-13 (1998); Korczyn, A.D., Exp. Opin. Invest. Drugs 9:2259-2267 (2000))を参照のこと)。
【0033】
コリン作動性機能の軽減は、合成または放出されたAChの量の減少、AChに応答するニューロンの不能またはAChEの不活性化であることができる。アルツハイマー病において、現在の治療としては、コリン作動性シグナリングを増大させる化合物の投与が挙げられる(文献(Jann, M.W., Pharmacotherapy 20:1-12 (2000)、Bachurin, S.O., Med. Res. Rev. 23:48-88 (2003))を参照のこと)。しかしこれらの化合物は、適度の有効性、低応答速度(典型的に約30%〜50%)および数多くの副作用、例えば吐き気、胃腸障害および疲労を有する。ある具体的態様にて、本発明のカルバモイルエステルは、AChEを阻害し、加水分解されて、中枢神経系ニューロンのシナプスにおいて、AChなどの神経伝達物質を増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となる。従って、例えば本発明のカルバモイルエステルは、アルツハイマー病患者におけるニューロンのシナプスにおけるAChを低下させるAChEを阻害し、シナプスにおける神経伝達物質をまとめてまたは個々に増大させる薬理活性物質を放出する。
【0034】
コリン作動性欠乏はまた、パーキンソン病、進行性核上麻痺、血管性認知症およびダウン症候群などの他の障害も特徴付ける(文献(Korczyn, A.D., Exp. Opin. Invest. Drugs 9:2259-2267 (2000))を参照のこと)。従って本発明のカルバモイルエステルはまた、これらの障害においてAChを増大させるために用いることもできる。
【0035】
同様に、薬理活性物質は、パーキンソン病患者の中枢神経系における神経伝達物質ドーパミンの増大、それによる神経伝達の促進、それによるパーキンソン病の症状の減退をもたらすことができる。ドーパミンにおける増大は、薬理活性物質としてのドーパミンを送達するためのカルバモイル化酵素の加水分解の直接的な結果であるか、または例えばドーパミンの再摂取を阻害し、ドーパミンの崩壊を予防し、ドーパミンの放出を増大させ、もしくはドーパミンの合成における前駆体(例えばL−DOPA)であることにより、シナプスにおけるドーパミンの増大をもたらす薬理活性物質を送達するためのカルバモイル化酵素の加水分解の間接的な結果であることができる。
【0036】
従って薬理活性物質は、中枢神経系(脳、脊髄)作用物質であることができる。本明細書において用語「中枢神経系型」は、中枢神経系における効果を有する薬理活性物質を意味する。
【0037】
薬理活性物質はまた、末梢神経系作用物質または自律神経系(副交感神経系および交感神経系)作用物質であることもできる。本明細書において用語「末梢神経系型」および「自律神経系型」は、それぞれ末梢神経系および自律神経系における効果を有する薬理活性物質を意味する。
【0038】
薬理活性物質としては、プロドラッグおよび他の構造(例えば異性体、またはd、l、dl、R、SおよびRS立体異性体などの立体異性体)およびその官能基誘導体(functional derivative)を挙げることができ、ここで好ましくは、第一級または第二級アミンが置換のために用いることができる。
【0039】
さらなる具体的態様にて、カルバモイルエステルは以下の構造:
【化7】

[式中、
Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
およびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
を有する。
【0040】
単独で、またはより大きな部分の一部として用いられる用語「アルキル」としては、1〜12炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状の飽和炭化水素鎖のいずれもが挙げられる。
【0041】
本明細書において、ヘテロアルキルは、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子により置き換えられているアルキル基である。
【0042】
単独で、または「アラルキル」または「アラルコキシ」のようなより大きな部分の一部として用いられる用語「アリール」は、5〜約14炭素原子を有する、炭素環式芳香環系(例えばフェニル)、縮合多環式芳香環系(例えばナフチルおよびアントラセニル)および炭素環式非芳香環系に縮合した芳香環系(例えば1,2,3,4−テトラヒドロナフチルおよびインダニル)である。
【0043】
単独で、または「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」のようなより大きな部分の一部として用いられる用語「ヘテロアリール」は、5〜14員環であり、少なくとも一つのヘテロ原子を有する芳香環系を意味する。好ましいヘテロアリールは、1〜約4ヘテロ原子を有する。好ましいヘテロアルキルは、ヘテロ原子が酸素、硫黄、窒素、リンおよびハロゲン原子からなる群から選択されるものである。ヘテロアリール環の例としては、ピラゾリル、フラニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、ピリジル、ピリミジニル、プリニル、ピリダジニル、ピラジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チエニル、4,6−ジヒドロ−チエノ[3,4−c]ピラゾリル、5,5−ジオキシド−4,6−ジヒドロチエノ[3,4−c]ピラゾリル、チアナフテニル、1,4,5,6−テトラヒドロシクロペンタピラゾリル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル、インダゾリル、キノリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、イソインドリル、アクリジニルおよびベンゾイサゾリル(benzoisazolyl)が挙げられる。好ましいヘテロアリール基は、ピラゾリル、フラニル、ピリジル、キノリニル、インドリルおよびイミダゾリルである。
【0044】
本明細書においてアラルキル基は、1〜12炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基により化合物に連結しているアリール置換基である。
【0045】
本明細書においてヘテロシクロアルキル基は、1〜12炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基により化合物に連結しているヘテロ環置換基である。
【0046】
本明細書においてヘテロアラルキル基は、1〜12炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基により化合物に連結しているヘテロアリール置換基である。
【0047】
アリール(アラルキル、アラルコキシなどを含む)またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルコキシなどを含む)は、一つ以上の置換基を含むことができる。適切な置換基の例としては、脂肪族基、アリール基、ハロアルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロおよびヒドロキシが挙げられる。
【0048】
さらなる具体的態様にて、カルバモイルエステルは、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・4−ピリジニルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・(2−フェニル)エチルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・[1−(1−ナフチル)エチル]カーバメートエステル、7−ブロモ−(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・n−ヘプチルカーバメートエステルまたはテトラヒドロイソキノリニルカーバメートエステルではない。
【0049】
芳香族カルバモイルエステルの例は、文献(Brossi, A., et al, Aust. J. Chem. 49:171-181 (1996)、Trabace, L., et al., CNS Drug Reviews 8:53-69 (2992)、DeSarno, P., et al., Neurochem. Res. 14:971-977 (1989))、米国特許番号4,791,107、4,948,807、5,187,165、5,302,721、5,409,948、5,455,354、5,602,176、5,665,880、5,677,457、国際公開番号WO 97/14694およびWO 97/23484に記載され、そのすべての教示は本明細書にそのまま引用される。芳香族カルバモイルエステルのカーバメート結合の窒素は置換することができる。芳香族カルバモイルエステルの特定の例は、ミオチン(miotin)、エセリン(フィゾスチグミンとしても称される)、ゲネゼリン(geneserine)、ネオスチグミン、フェネゼリン(pheneserine)(Brossi, A., et al, Aust. J. Chem. 49:171-181 (1996)、この教示は本明細書にそのまま引用される)、CHF2819(Trabace, L., et al., CNS Drug Reviews 8:53-69 (1992)、この教示は本明細書にそのまま引用される)およびヘプチルフィゾスチグミン(DeSarno, P., et al., Neurochem. Res. 14:971-977 (1989)、この教示は本明細書にそのまま引用される)である。ある具体的態様にて、芳香族カルバモイルエステルは、改変されているスチグミンなどの既知化合物である。改変としては、例えばカーバメート結合の窒素における置換を挙げることができる。これらの化合物は、本明細書にて「置換スチグミン」として総称する。別の具体的態様にて、カルバモイルエステルとしては、異性体または立体異性体(例えばd、l、dl、R、SまたはRS)を挙げることができる。本明細書に示されるすべての構造において、特に記載しなければ、化合物が(+,−)、(±)、dl(DL)または(R)(S)として示されていようとなかろうと、本発明は、ラセミ混合物または該化合物の一つの形態の純粋な組成物、例えば「d」または「l」、「R」または「S」を含むものであると理解されるべきである。
【0050】
芳香族カルバモイルエステルなどの本発明のカルバモイルエステルの製造方法は、当業者の知識の範囲内である(例えば米国特許番号5,665,880、5,677,457および国際公開番号WO 97/14694を参照のこと、その教示は本明細書にそのまま引用される)。
【0051】
ある具体的態様にて、芳香族カルバモイルエステルの合成は、化合物のアミン基を活性化させて活性化アミンを形成させることにより達成することができる。活性化アミンは単離することができ、別の化合物のフェノール基と反応してカルバモイルエステルを形成させることができる。例えば、第一級アミンはイソシアネートに変換することができる。あるいは、アミンはカルバモイルクロリドに変換することができる。アミンはまた、アミンとカルボニルクロリド(例えばホスゲン、トリホスゲン)を含む活性化剤との反応、アミンとニトロフェニルオキシカルボニル基(例えばビス−4−ニトロフェニルカーボネート、4−ニトロフェニルクロロホルメート)を含む活性化剤との反応またはアミンとカルボニルジイミダゾールとの反応などにより、カルバモイルエステルの形成のために系中にて活性化させ、使用することもできる。アミン活性化およびカルバモイルエステルの形成の個々の工程は、酸、塩基および求核剤などの種々の薬剤により別々に、または組み合わせて触媒することができる。
【0052】
別の具体的態様にて、カルバモイルエステルの合成は、化合物のフェノール基を活性化させて活性化フェノールを形成させることにより達成することができる。活性化フェノールは別の化合物のアミン基と反応させる。フェノールの活性化は、フェノールとカルボニルクロリド(例えばホスゲン、トリホスゲン)を含む活性化剤との反応、フェノールとニトロフェニルオキシカルボニル基(例えばビス−4−ニトロフェニルカーボネート、4−ニトロフェニルクロロホルメート)を含む活性化剤との反応、またはフェノールとカルボニルジイミダゾールとの反応などにより、種々の方法で実行することができる。フェノール活性化およびカルバモイルエステルの形成の個々の工程は、酸、塩基および求核剤などの種々の薬剤により別々に、または組み合わせて触媒することができる。
【0053】
カルバモイルエステルはNMRなどのよく知られている分析方法により分析することができる。
【0054】
カルバモイルエステルは、例えば酢酸エチル100mL中エセロリン(eseroline)16gのフェノール性ヒドロキシル基をカルボニルジイミダゾール(CDI)15.1g(94mmol)と反応させた後、酢酸14.8mLおよび芳香族カルバモイルエステルの形成にて得られるアミン90mmolを加えることにより合成することができる(文献(Gao et al., J. Heterocyclic Chem 37:331-333 (2000))、この教示は本明細書にそのまま引用される)。
【化8】

【0055】
エセロリン(eseroline)からの芳香族カルバモイルエステルの形成は、カルバモイルクロリドを用いて記載されている(文献(Marta, et al., Bichimica et Biophysica Acta 1120:262-266 (1992)、Marta, et al., Biomed Biochem Acta 47:285-288 (1998)、Marta, et al., Life Sci. 43:1921-1928 (1988))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される)。
【化9】

【0056】
フェノール性ヒドロキシル基とカルバモイルクロリドとの反応はまた、芳香族カルバモイルエステルの合成について記載されている(文献(Toda, et al., Bioorg Med Chem 11:1935-1955 (2003)、Kogen, et al., Org Lett 4:3359-3362 (2002)、Mustazza, et al., Eur J. Med Chem 37:91-109 (2002)およびSterling, et al., J Med Chem 45:5260-5279 (2002))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される)。
【0057】
フィゾベニン(physovenine)類似体は、乾燥ジエチルエーテル中、微量のナトリウムの存在下、フィゾベノール(physovenol)とアルキルイソシアネートとの反応により製造される(文献(Yu, et al., Helvetica Chimica Acta, 74:761-766 (1991))、この教示は本明細書にそのまま引用される)。
【化10】

【0058】
フェンセリン(phenserine)およびその類似体は、エセロリン(eseroline)とイソシアネート(米国特許番号6,495,700、この教示は本明細書にそのまま引用される)との反応により製造され、アルゴン雰囲気下、触媒量のヘキサン中のn−ブチルリチウムの存在下、ジメトキシエタン中の反応により製造されている。
【化11】

【0059】
イソシアネートはまた、文献(Mustazza, et al., Eur J Med Chem 37:91-109 (2002) and Yuv et al., J Med Chem 44:4062-4071 (2001))により行われ、このすべての教示は本明細書にそのまま引用される。
【0060】
さらに別の具体的態様にて、芳香族カルバモイルエステルは、以下の化合物:
【化12】

【化13】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ、独立してまたは組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
からなる群から選択される。
【0061】
さらに別の具体的態様にて、本発明のカルバモイルエステルは以下の化合物:
【化14】

【化15】

からなる群から選択される。
【0062】
別の具体的態様にて、カルバモイルエステルは以下の化合物:
【化16】

【化17】

【化18】

からなる群から選択される。
【0063】
さらなる具体的態様にて、カルバモイルエステルは以下の化合物:
【化19】

【化20】

からなる群から選択される。
【0064】
ある具体的態様にて、薬理活性物質は記憶促進剤である。別の具体的態様にて、薬理活性物質は認知促進剤である。
【0065】
本明細書において用語「記憶促進剤」は、個体における記憶を促進するか、個体における記憶の減少を予防もしくは最小限にするか、または記憶機能に関係する生物学的過程に関与する化合物を意味する。好ましい具体的態様にて、記憶促進剤はアンフェタミン化合物である。アンフェタミン化合物は、d−アンフェタミン、l−アンフェタミン、またはラセミ混合物などのd−アンフェタミンとl−アンフェタミンの混合物であることができる。別の好ましい具体的態様にて、記憶促進剤はメタンフェタミンである。メタンフェタミン化合物は、d−メタンフェタミン、l−メタンフェタミン、またはラセミ混合物などのd−メタンフェタミンとl−メタンフェタミンの混合物であることができる。
【0066】
記憶促進剤により促進することができる記憶過程は、長期記憶における新しい情報を蓄える過程である記憶の固定(文献(「Neuroscience: Exploring The Brain」Bear, M.F. et al., Williams&Wilkins, Baltimore, Maryland, Ch. 19, pp. 517-545 (1996)、McGaugh, J.L. Science 287: 248-251 (2000))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される); 新たに獲得した情報が短期間維持され、さらなる情報処理に使用できるようにする過程である短期記憶(「作動記憶」としても称される)(文献(「Neuroscience: Exploring The Brain」Bear, M.F. et al., Williams&Wilkins, Baltimore, Maryland, Ch. 19, pp. 517-545 (1996)、McGaugh, J.L. Science 287: 248-251 (2000)、Becker, J.T., et al., Brain and Cognition 41:1-8 (1999))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される); 事実および事象の記憶である陳述記憶(文献(「Neuroscience: Exploring The Brain」Bear, M.F. et al., Williams&Wilkins, Baltimore, Maryland, Ch. 19, pp. 517-545 (1996)、McGaugh, J.L. Science 287: 248-251 (2000)、Tulving, E., et al., Science 247: 301-306 (1990)、Squire, L.R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 13515-13522 (1996))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される); 技術または行動についての記憶である手続記憶(「無意識的知識」または「暗黙の知識」としても称される)(文献(「Neuroscience: Exploring The Brain」Bear, M.F. et al., Williams&Wilkins, Baltimore, Maryland, Ch. 19, pp. 517-545 (1996)、McGaugh, J.L. Science 287: 248-251 (2000))、これらの教示は本明細書にそのまま引用される); または注意、習得、回復もしくは記憶力であることができる。当業者は、記憶促進剤として適切であろう薬剤を同定し、評価することができるであろう。
【0067】
別の具体的態様にて、薬理活性物質は認知促進剤である。本明細書において用語「認知促進剤」は、個体における思考、学習および知識の習得に関連する活動を促進するか、個体における思考、学習および知識の習得の減少を予防もしくは最小限にするか、または思考、学習および知識の習得に関係する生物学的過程に関与する化合物を意味する。思考、学習および知識の習得の減少(認知障害)は、中枢神経系もしくは末梢神経系もしくは自律神経系の別の疾患(例えばアルツハイマー病)もしくは病態の結果であるか、またはこれらに関連し得る。認知促進剤により促進することができる認知過程は、順に思考、学習および知識の習得過程にて、認知促進剤が作用するとさらに定義することができる行動基準および行動アッセイにより評価することができる。当業者は、認知促進剤として適切であろう薬剤を同定し、評価することができよう。
【0068】
好ましい具体的態様にて、認知促進剤はアンフェタミン化合物である。アンフェタミン化合物は、アンフェタミンまたはメタンフェタミンであることができる。アンフェタミンは、d−アンフェタミン、l−アンフェタミン、d−アンフェタミンとl−アンフェタミンのラセミ混合物、またはd−およびl−アンフェタミンの任意の混合物であることができる。別の好ましい具体的態様にて、認知促進剤はメタンフェタミンである。メタンフェタミンは、d−メタンフェタミン、l−メタンフェタミン、d−メタンフェタミンとl−メタンフェタミンのラセミ混合物、またはd−およびl−メタンフェタミンの任意の混合物であることができる。
【0069】
「l−アンフェタミン」および「d−アンフェタミン」を意味するときに用いる用語「アンフェタミン」は、式XXIIで示される化合物を意味し、第一級アミン基が置換に利用できるそのプロドラッグおよび他の構造的誘導体および官能基誘導体を含む。好ましい具体的態様にて、アンフェタミンは式XXII:
【化21】

で示される化合物である。
【0070】
アンフェタミンの右旋性エナンチオマーは、d、(+)、DまたはS異性体と称され、次の構造式:
【化22】

で示される。
【0071】
アンフェタミンの左旋性エナンチオマーは、l、(−)、LまたはRと称され、次の構造式:
【化23】

で示される。
【0072】
d−アンフェタミンとl−アンフェタミンのラセミ混合物は、dl、(+,−)、(±)、DLまたは(R)(S)と称される。
【0073】
本発明の方法に用いる(R)−(−)−アンフェタミンは構造式:
【化24】

で示される。
【0074】
式XXVはまた、左旋性−アンフェタミン硫酸塩またはl−アンフェタミン硫酸塩とも称される。式XXVは分子式C1828Sおよび分子量368.50を有する。式XXVのIUPAC化学名は、(−)−1−メチル−2−フェニルエチルアミン硫酸塩(2:1)であり、CAS化学名は、(−)−α−メチルフェネチルアミン硫酸塩(2:1)である。
【0075】
「l−メタンフェタミン」および「d−メタンフェタミン」を意味するときに用いられる用語「メタンフェタミン」は、式XXVI:
【化25】

で示される化合物を意味する。
【0076】
(R)−(−)−メタンフェタミンは構造式:
【化26】

で示すことができる。
【0077】
式XXVIIはまた、左旋性−メタンフェタミン塩酸塩、l−メタンフェタミン塩酸塩またはレボメタンフェタミン塩酸塩を意味する。式XXVIIは分子式C1016NClを有する。
【0078】
さらに別の具体的態様にて、(R)−(−)−メタンフェタミンは構造式:
【化27】

で示すことができる。
【0079】
式XXVIIIはまた、左旋性−メタンフェタミン、左旋性−デオキシエフェドリン、l−デオキシエフェドリンまたはレボメタンフェタミン(levmetamfetamine)を意味する。式XXVIIIは分子式C1015Nおよび分子量149.24を有する。
【0080】
さらなる具体的態様にて、薬理活性物質は、コリン作動薬(AChとも称される)、アドレナリン作動薬(エピネフリンとも称される)、ノルアドレナリン作動薬(ノルエピネフリンとも称される)、ドーパミン作動薬、セロトニン作動薬(5−ヒドロキシトリプタミンとも称される)、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬(ガンマ−アミノ酪酸)、ヒスタミン作動薬(例えばHTMT、アムサミン(amthamine)、イメピップ(immepip)およびアルファ−メチルヒスタミン(Tocris, Ellisville, MO))、モノアミン酸化酵素阻害剤、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウム・チャネル遮断薬、カルシウム・チャネル遮断薬(例えばニモジピン)、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ(例えばビロダミン(virodhamine))、向知性薬(すなわち認知増強剤)(例えばサフィナミド(safinamide)、ミナプリン、インデロキサジン)、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬(すなわち神経細胞成長を誘発する薬剤)、ホスホジエステラーゼ(PDE)IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、炭酸脱水酵素阻害剤(例えばブリンゾラミド、ドルゾラミド)、レセプター輸送調整剤、微量アミンレセプター・モジュレータ、シグマ・レセプター・モジュレータ、イミダゾリン・レセプター・モジュレータ、ナトリウム/カルシウム交換遮断薬(NaCa+2交換体またはNCXとも称される)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、抗酸化剤およびNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである。
【0081】
薬理活性物質はまた、フェニルエチルアミン、オクトパミン、チラミンおよびトリプタミンなどの微量アミン神経伝達物質であることもできる。フェニルエチルアミンはまた、天然アンフェタミン(文献(Janssen, P.A.J., et.al., Int. J. Neuropsychopharmacol. 2:229-240 (1999))、この教示は本明細書にそのまま引用される)とも称される。フェニルエチルアミンは、モノアミン酸化酵素(文献(Yang, H.-Y.T., et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 187:365-371 (1973))、この教示は本明細書にそのまま引用される)により脱アミノ化される。例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、フェニルエチルアミンとなるカルバモイルエステルは、初期モノアミン酸化を受けにくく、それにより個体の神経系へのフェニルエチルアミンの送達を促進することができる。
【0082】
本明細書において「薬剤」は、刺激性(例えば活性化剤)または阻害性(例えば遮断薬)であることができる物理的、化学的または生物学的効果を産生することができる化合物を意味する。刺激性である薬剤はアゴニストであることができる。阻害性である薬剤はアンタゴニストまたは逆アゴニスト(inverse agonist)であることができる。逆アゴニストは、レセプター活性化作用を下方修正し、それによりレセプターに対してアゴニストと逆に作用する化合物または分子である。従って逆アゴニストの暴露または投与は、アゴニストの暴露または投与と比較して減退した応答を引き起こすことができる。
【0083】
コリン作動薬は例えば、AChの作用を刺激し、それにより二つの細胞間のACh媒介細胞シグナリングを媒介する化合物(コリン作動性アゴニスト)であることができる。刺激は例えば、AChの細胞表面レセプターへの結合の促進、AChの低下との干渉、AChの放出の刺激、AChの合成の刺激、ACh細胞シグナリングを媒介する第二メッセンジャー(例えばホスホリパーゼC、イノシトール 1,4,5−トリホスフェート、プロテインキナーゼC、プロテインキナーゼA)の活性化、標的細胞におけるイオン(例えばナトリウム、カリウム)チャネルの変化の結果であることができる。薬剤はまた、いずれか一つ以上のこれらの効果を阻害または予防することもできる(例えばコリン作動性アンタゴニスト)。
【0084】
本発明のカルバモイルエステルは、二つのAChレセプターサブタイプ、ムスカリン性コリン作動性レセプターおよびニコチン性コリン作動性レセプターに特異的に影響し、それにより特定の生物学的過程を媒介する特定のレセプターサブタイプを標的することができる薬理活性物質となることができる。ある具体的態様にて、コリン作動薬は、ムスカリン性コリン作動性レセプターアゴニスト(文献(Cutler, N.R., et al., CNS Drugs 3:467-481 (1995)、Korczyn, A.D., Drugs 9: 2259-2267 (2000))、これらすべての教示は本明細書にそのまま引用される)、ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニスト、ニコチン性コリン作動性レセプターアゴニスト、ニコチン性コリン作動性レセプターアンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、コリン作動性アンタゴニスト、コリン作動性レセプターのアロステリック・モジュレータおよびオープン・チャネル遮断薬からなる群から選択される。
【0085】
ムスカリン性コリン作動性レセプターアゴニストまたはアンタゴニストは、個体の平滑筋、心筋、外分泌腺および神経系などの種々の組織における効果を媒介することができる。ニコチン性コリン作動性レセプターアゴニストまたはアンタゴニストもまた、自律神経系、末梢または自律神経系の神経筋接合部および中枢神経系における神経節の生物学的、物理学的または化学的成分を変化させることによる効果を媒介することができる。
【0086】
別の具体的態様にて、コリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、RJR2403(メチル−(4−ピリジン−3−イル−ブタ−3−エニル)アミン)(TC2403とも称される)、A85380(3−(アゼチジン−2−イルメトキシ)ピリジン)、アナトキシンA、エピバチジンおよびアナバシン(Tocris, Ellisville, MO)およびTC1734([4−(5−イソプロポキシ−ピリジン−3−イル)−1−メチル−ブタ−3−エニル]メチル−アミン)(文献(Obinu, M.C. et al., Progress in Neuropsychopharmacol.&Biol. Psychiatry 26:913-918 (2002)、Obinu, M.C. et al., Internatl. J. Neuropyschopharamology 3: Suppl 1 (S361) (2003)、Lipiello, P.M. et al., Soc. Neurosci. Abstr 24: 88 (Part 1) (1998)、Gatto, G., et al., CNS Drug Reviews, 10:147-166 (2004)))からなる群から選択されるコリン作動性アゴニストの形成をもたらす。
【0087】
別の具体的態様にて、コリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、アルファ(例えばα、α)レセプターアゴニスト、ベータ(例えばβ、β、β)レセプターアゴニスト、アルファレセプターアンタゴニストおよびベータレセプターアンタゴニストからなる群から選択されるアドレナリン作動薬の形成をもたらす。アドレナリン作動薬は、アドレナリンの作用に関係し、アドレナリンにより媒介されるか、または影響されるいずれかの神経機能またはホルモン機能に関係する、ニューロンおよびレセプターを調節することができる。ノルアドレナリンはまた、アルファおよびベータレセプターを通して作用することができるので、薬理活性物質は、ノルアドレナリンと関連する生物学的、化学的または物理学的過程に影響することができる。好ましい具体的態様にて、アドレナリン作動薬は第一級または第二級アミンである。アドレナリン作動薬としては、オキシメタゾリン、シラゾリン、クロニジン、A61603、アグマチン、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、BRL37344、BRL44408、シマテロール、ドブタミン、エファロキサン、フォルモテロール、HEAT、ICI118551、ICI89406、ICL215001、イダゾキサン、ピンドロール、プラクトロール、プロカテロール、プロネタロール、プロプラノロール、RX821002、SB206606、SR59230A、ソタロール、WB4101、キサモテロール、ZD7114、エファロキサンおよびクレンブテロール(Tocris, Ellisville, MO)、およびアドレナリン、ブリモニジン、ジピベフリン(dipifevrin)およびメチプラノロールからなる群から選択される少なくとも一つの群のメンバーが挙げられる。
【0088】
さらに別の具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、ノルエピネフリン再摂取阻害剤およびノルエピネフリン放出剤からなる群から選択されるノルアドレナリン作動薬の形成をもたらす。ノルエピネフリン再摂取阻害剤は、シナプスからのノルエピネフリンの除去を予防するか、または最小限にし、それによりシナプスにおけるノルエピネフリンの量を増大させることができる。ノルエピネフリン除去の予防は、能動的(例えば再摂取に関係する細胞過程を遮断することによる)または受動的(例えばノルエピネフリンを安定化させることによる)であることができる。ノルエピネフリン薬剤は、細胞(例えば神経細胞、分泌細胞、上皮細胞)からのノルエピネフリンの放出をもたらすことができる。本明細書に「再摂取阻害剤」および「放出剤」と称される他の化合物は、同様の方法で作用するが、神経伝達物質などの特定の薬理活性物質に特異的である。ノルエピネフリン再摂取阻害剤は、例えばヴィロキサジンおよび/またはニソキセチン(Tocris, Ellisville, MO); マプロチリン、アトモキセチン、MCI225(4−(2−フルオロ−フェニル)−6−メチル−2−ピペラジン−1−イル−チエノ[2,3−d]ピリミジン塩酸塩)、オキサプロチリン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラムおよびチオニソキセチン; およびアモキサピン、デシプラミン、メチルフェニデート、ノミフェンシン、ノルトリプチリンおよびプロトリプチリン(Sigma Chemical Co., St., Louis, MO)であることができる。
【0089】
さらなる具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、セロトニン作動性アンタゴニスト、セロトニン作動性アゴニスト、セロトニン作動性再摂取阻害剤およびセロトニン放出剤からなる群から選択されるセロトニン作動薬の形成をもたらす。セロトニン作動薬は、例えば内分泌腺からの神経伝達またはホルモン放出に影響し得る。セロトニン作動薬としては、ピンドロール、キパジン、フルオキセチン、アンピルトリン、N−(4−ブロモベンジル)−5−メトキシトリプタミン、BW723C86、5−カルボキサミドトリプタミン、m−CPP、N−デスメチルクロザピン、デスメチルシタロプラム、イサモルタン、L−694247、MDL72832、MDL73005EF、アルファ−メチル−5−ヒドロキシトリプタミン、2−メチル−5−ヒドロキシトリプタミン、ミアンセリン、MK212、5−ノニルオキシトリプタミン、6−ニトロキパジン、ノルフルオキセチン、パロキセチン、RS67333、RS67506、RS23597−190、RS39604、RU24969、セルトラリン、デスメチルセルトラリン、SR57227、TFMPPおよびフルボキサミン(Tocris, Ellisville, MO); およびMMAI、RS17017(1−(4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ−フェニル)−5−ピペリジン−1−イル−ペンタン−1−オン塩酸塩)、RS66331、SB271046(5−クロロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホン酸(4−メトキシ−3−ピペラジン−1−イル−フェニル)アミド)、SB399885およびSL65.0155((5−(8−アミノ−7−クロロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イル)−3−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イル)−3H−[1,3,4]オキサジアゾール−2−オン塩酸塩)からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーを挙げることができる。
【0090】
さらに別の具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、NMDA(N−メチル−D−アスパルテート)レセプターアゴニスト、NMDAレセプターアンタゴニスト、NMDAグリシン部位アゴニスト、NMDAグリシン部位アンタゴニスト、AMPA(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオネート)レセプターアゴニストおよびAMPAレセプターアンタゴニスト、カイニン酸レセプターアゴニストおよびカイニン酸レセプターアンタゴニストからなる群から選択されるグルタミン酸作動薬の形成をもたらす。さらに、またはあるいは、グルタミン酸作動薬としては、NMDAイオンチャネルモジュレータ、NMDAポリアミン部位アゴニスト、NMDAポリアミン部位アンタゴニスト、AMPA/カイニン酸アゴニスト、AMPA/カイニン酸アンタゴニスト、グループI代謝型グルタミン酸レセプターアゴニスト、グループI代謝型グルタミン酸レセプターアンタゴニスト、グループII代謝型グルタミン酸レセプターアゴニスト、グループII代謝型グルタミン酸レセプターアンタゴニスト、グループIII代謝型グルタミン酸レセプターアゴニスト、グループIII代謝型グルタミン酸レセプターアンタゴニスト、キスカル酸感受性AP6部位アゴニスト、キスカル酸感受性AP6部位アンタゴニストおよび興奮性アミノ酸摂取阻害剤を挙げることができる。代謝型グルタミン酸レセプター化合物の例としては、2−メチル−6−(フェニルエチニル)ピリジン(MPEP)、トランス−ACPD、ACPT−I、ACPT−II、ACPT−III、tADA、AIDA、AP3、AP4、AP5、AP6、(2R,4R)−APDC、APICA、3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニルグリシン、4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニルグリシン、4−カルボキシフェニルグリシン、L−CCG−I、CHPG、CPPG、l−システインスルフィン酸、DCG IV、3,4−DCPG、3,5−DHPG、E4CPG、EGLU、L−3’F2CCG−I、l−グルタミン酸、ホモAMPA、3−ヒドロキシフェニルグリシン、イボテン酸、LY307452、LY341495、LY367385、MAP4、MCCG、MCPG、MPPG、MSOP、MSPG、MTPG、アルファ−メチル−3−カルボキシメチルフェニルグリシン、o−ホスホ−l−セリン、PPG、キスカル酸、s−スルホ−l−システイン、UBP1112およびスパグルム酸(Tocris, Ellisville, MO)が挙げられる。他のグルタミン酸レセプター化合物としては、ラモトリジン、リルゾールおよびサルソリノール−1−カルボン酸(Tocris, Ellisville, MO)が挙げられる。
【0091】
NMDA薬剤としては、アスパラギン酸、D−シクロセリン、ACBC、トランス−ACBD、シス−ACPD、AP4、AP5、AP7、アスパラギン酸(aspartic aicd)、4−カルボキシフェニルグリシン、CGP37849、CGP39551、CGS19755、CGP78608、クロルフェグ(chlorpheg)、CPP、L−システインスルフィン酸、グルタミン酸、グリシン、HA−996、N−(4−ヒドロキシフェニルアセチル)スペルミン、N−(4−ヒドロキシフェニルプロパノール)スペルミン、イボテン酸、L689560、LY235959、MK801、NMDA、SDZ220−040、SDZ220−581、d−セリン、(テトラゾール−5−イル)グリシン、メマンチン、スペルミンおよびスペルミジン(Tocris, Ellisville, MO); およびアマンタジン(Sigma Chemical Co., St., Louis, MO)を挙げることができる。AMPA/カイニン酸薬剤としては、L−キスカル酸、ドウモイ酸、カイニン酸、AMPA、ATPA、CFM−2、(S)−CPW399、5−フルオロウィラルジイン(5-fluorowillardiine)、5−ヨードウィラルジイン、ウィラルジイン、GAMS、GYKI、52466、IDRA21、SYM2081およびSYM2206(Tocris, Ellisville, MO)を挙げることができる。
【0092】
興奮性アミノ酸摂取阻害剤は、ジヒドロカイニン酸、シス−ACBD、L−CCG−II、クロルフェグ(chlorpheg)、ジヒドロカイニン酸、トレオ−3−ヒドロキシアスパラギン酸、トレオ−3−メチルグルタミン酸、MPDC、トランス−2,4−PDC、SYM2081およびTBOA(Tocris, Ellisville, MO)であることができる。
【0093】
NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチン(Tocris, Ellisville, MO)であることができる(文献(Parsons, C.G., et al., Neuropharmacol., 38:735-767 (1999))、この教示は本明細書にそのまま引用される)。NMDAグリシンレセプターアゴニストは、D−シクロセリン(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)であることができる(文献(Land, C., et al., Neurobiol. Learning Mem., 72:158-168 (1999))、この教示は本明細書にそのまま引用される)。
【0094】
さらなる具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、GABA作動性レセプターアンタゴニスト、GABA作動性レセプターアゴニスト、ベンゾジアゼピン部位アゴニスト、ベンゾジアゼピン部位アンタゴニスト、ベンゾジアゼピン部位逆アゴニストおよびGABA摂取阻害剤からなる群から選択されるGABA作動薬の形成をもたらす。GABA作動薬としては、例えばムシモール、バクロフェン、サクロフェン、1−アミノ−5−ブロモウラシル、CACA、CGP35348((3−アミノ−プロピル)ジエトキシメチル−ホスフィン酸)、CGP46381((3−アミノ−プロピル)シクロヘキシルメチル−ホスフィン酸)、CGP52432、CGP54626、CGP55845、GABA、GBLD345、2−ヒドロキシサクロフェン、イソグバシン、ファクロフェン、SB205384、SCH50911、SKF97541、TACA THIP、TPMPAおよびトラカゾラート(Tocris, Ellisville, MO); SR95531およびSGS742((3−アミノ−プロピル)ブチル−ホスフィン酸)(文献(Kerr, D.I.B. et al., J. Ong. Pharmac. Ther. 67: 187-246 (1995)、Froestl, W., et al., Biochem. Pharmacol., 68:1479-1487 (2004))を挙げることができる。
【0095】
別の具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、ドーパミン作動性アンタゴニスト、ドーパミン作動性アゴニスト、ドーパミン作動性再摂取阻害剤、ドーパミン作動性放出剤、ドーパミンおよびL−DOPA(レボドパ)(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、3−ヒドロキシチロシン)からなる群から選択されるドーパミン作動薬の形成をもたらす。ドーパミンはノルアドレナリン、アドレナリンおよびメラニンの合成における中間体であるので、ドーパミンに影響するいずれかの薬剤は、ノルアドレナリン、アドレナリンおよびメラニンと関連するか、またはそれにより媒介される生物学的過程において物理的、化学的または生物学的効果を産生することができる。ドーパミン作動薬はホルモンとしてのドーパミンまたは神経伝達物質としてのドーパミンに影響することができる。ドーパミン作動薬としては、例えばジヒドレキシジン、A68930(1−アミノメチル−3−フェニル−イソクロマン−5,6−ジオール)、SKF38393、AJ76、4−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンおよびリムカゾール(Tocris, Ellisville, MO); およびA77636(3−アダマンタン−1−イル−1−アミノメチル−イソクロマン−5,6−ジオール)、アドロゴリド(adrogolide)およびSKF81297(6−クロロ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7,8−ジオール); ペルゴリド(Sigma Chemical Company, St., Louis, MO)およびプラミペキソール(MIRAPEXTMとしても称される)を挙げることができる。
【0096】
本明細書において、「モジュレータ」は、生物学的経路またはレセプターを介したシグナル伝達経路を調整するか、調節するか、または適合させる化合物を意味する。モジュレータは生物学的経路またはレセプターを介したシグナル伝達経路を刺激するか、または阻害することができる。例えば、アデノシン・レセプター・モジュレータは、レセプターを結合するアデノシンの能力を増大させ、軽減させ、直接レセプター(例えばアゴニストまたは逆アゴニスト)に結合することができ、そしてアデノシンレセプターを介したシグナル伝達経路と関連した生物学的経路を調整するか、調節するか、または適合させる、効果またはそうでなければレセプターとの相互作用を有することができる。
【0097】
別の具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤またはガンマ・セクレターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーの形成をもたらす。
【0098】
阻害剤は、酵素の生物学的過程における関与を予防するか、または生物学的過程における酵素の活性を減退する。例えば、ベータ・セクレターゼ阻害剤またはガンマ・セクレターゼ阻害剤は、ヒトの脳内におけるアミロイド前駆体タンパク質からのベータ・アミロイドタンパク質の形成を予防することができる。ベータ・アミロイドタンパク質の蓄積は、ヒトにおけるアルツハイマー病と関連する。従って、ベータ・アミロイドタンパク質の軽減は、アルツハイマー病の兆候または進行を改善するか、予防するか、または減退することができる。
【0099】
特定の具体的態様にて、モノアミン酸化酵素阻害剤は、デスメチルセレギリン(desmethylselegline)(文献(Heinonen, E.H., et al., J. Clin. Pharmacol. 37:602-609 (1997))、この教示は本明細書にそのまま引用される)、ラサギリン(文献(Kupsch, A., Curr. Opin. Investig. Drugs 3:794-979 (2002))、この教示は本明細書にそのまま引用される)、1−(ベンゾフラン−2−イル)−2−プロピルアミノペンタン、5−ベンジルオキシ−2−インドリルメチルアミン、ラザベミド、CHF3381(2−(インダン−2−イルアミノ)アセトアミド)、ミラセミド、モフェギリン(mofegeline)、ブロファロミン、Ro−41−1049、RS−1636; およびビフェメランおよびテトリンドール(tetrindol)(Tocris, Ellisville, MO)からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである。
【0100】
別の具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼとの反応によるカルバモイルエステルの加水分解は、4−アミノピリジンなどのカリウムイオンチャネル遮断薬の形成をもたらす。カリウムチャネルの選択的透過性は静止細胞膜電位に重要であるので、カリウムイオンチャネルの遮断は膜の脱分極を可能にするか、または延長し、それにより例えばニューロンの細胞内シグナリングを増加させることができる。
【0101】
薬理活性物質は、中枢神経系、末梢神経系、自律神経系、および他の組織(例えば平滑筋、心筋、骨格筋)および器官(例えば内分泌腺、外分泌腺)の細胞に影響することができる。
【0102】
ある具体的態様にて、薬理活性物質は、外因的薬剤(個体の外部に由来するか、またはそこで生成する)であることができる。別の具体的態様にて、薬理活性物質は、個体から得られる生物源から精製される内因的薬剤(個体の内部に由来するか、またはそこで生成する)であることができる。
【0103】
本発明のカルバモイルエステルおよび本発明の薬理活性物質により刺激され得るか、または阻害され得る物理的、化学的または生物学的効果は、二以上の細胞間のものであることができる。ある具体的態様にて、二以上の細胞は二以上の神経細胞(シナプス前ニューロン、シナプス後ニューロン)である。神経細胞は中枢神経系、末梢神経系または自律神経系におけるものであり得る。別の具体的態様にて、二以上の細胞は少なくとも一つの筋細胞(平滑筋、骨格筋、心筋)と少なくとも一つの神経細胞(シナプス前ニューロン、シナプス後ニューロン)であることができる。さらに別の具体的態様にて、二以上の細胞は、少なくとも一つの神経細胞と少なくとも一つの非神経細胞(例えば副腎髄質の分泌細胞、外分泌腺または内分泌腺の細胞、器官または組織の上皮細胞)であることができる。二以上の細胞はインビトロ細胞(例えば細胞培養)またはインビボ細胞(例えば個体における)であることができる。
【0104】
薬理活性物質は、向知性薬(すなわち認知増強剤)、神経栄養薬(すなわち神経細胞の成長を誘発する薬剤)および/または神経保護薬であることができる。
【0105】
さらに別の具体的態様にて、本発明は個体を治療する方法である。該方法は、カルバモイルエステルを個体に投与することを含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体の病態のために個体を治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0106】
カルバモイルエステルにより放出される薬理活性物質は、コリン作動薬、アドレナリン作動薬、ノルアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬、セロトニン作動薬、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬、ヒスタミン作動薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウム・チャネル遮断薬、カルシウム・チャネル遮断薬、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ、向知性薬、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬、PDE IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、レセプター輸送調整剤および微量アミンレセプター・モジュレータからなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである。
【0107】
本発明のカルバモイルエステルは、IC50として発現することができるコリンエステラーゼ活性を阻害することができる。本明細書において用語「IC50」は、例えば記憶喪失もしくは認知喪失などの病態の頻度を50%低減することにより、競合分子のタンパク質(例えばレセプター)への結合を50%低減することにより、または活性(例えばコリンエステラーゼ活性)のレベルを50%低減することにより、活性または効果を50%阻害する薬物、化合物、分子またはカルバモイルエステルの濃度を意味する。
【0108】
本明細書において「個体」はいずれかの哺乳類である。哺乳類は齧歯目(例えばラット、マウスもしくはモルモット)、家畜(例えばイヌもしくはネコ)、反芻動物(例えばウマもしくはウシ)または霊長類(例えばサルもしくはヒト)であることができる。好ましい具体的態様にて、個体はヒトである。
【0109】
薬理活性物質により治療される個体の病態は、中枢神経系病態、末梢神経系病態および自律神経系病態からなる群から選択される少なくとも一つの病態である。
【0110】
特定の具体的態様にて、カルバモイルエステルで治療される個体は、中枢神経系病態を有する。本明細書において「中枢神経系病態」は、個体の脳または脊髄に影響するいずれかの疾病または病気を意味する。本発明のカルバモイルエステルで治療される中枢神経系病態は、例えば遺伝的疾患、化合物への環境暴露、または初期疾病もしくは疾患の続発症の結果であることができる。中枢神経系病態は、不適切な神経伝達物質の放出、合成、処理(processing)、再摂取または細胞シグナリングにより特徴付けられ得るか、またはその結果であることができる。中枢神経系病態は、さらに、またはあるいはイオンチャネルの崩壊に起因する弱った、もしくは不適切な神経伝達により特徴付けられ得るか、またはその結果であることができる。
【0111】
特定の具体的態様にて、中枢神経系病態は、置換スチグミンを含むカルバモイルエステルで治療される。本発明のカルバモイルエステルは、鬱病、不安および精神遅滞などの病態を治療するために用いることができる。本発明のカルバモイルエステルにより治療される個体の中枢神経系病態は、パーキンソン病、記憶障害および認知障害であることができる。
【0112】
記憶障害はヒト個体におけるものであることができる。本発明のカルバモイルエステルにより治療することができる記憶障害としては、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、記憶固定障害、短期記憶障害、軽度認知障害、陳述記憶障害、および多発性硬化症および/またはパーキンソン病と関連する記憶障害またはその結果の記憶障害が挙げられる。
【0113】
本発明のカルバモイルエステルにより治療される記憶障害は、ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニストへの暴露の結果であることができる。ある具体的態様にて、ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニストはアトロピンである。別の具体的態様にて、ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニストはスコポラミンである。さらに別の具体的態様にて、ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニストはホマトロピンである。
【0114】
ムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニストとしては、AChの作用を遮断、減退、減衰、阻害、妨害、限定、軽減、低減、制限するか、またはこれと干渉し、それによりシナプス前ニューロンとシナプス後ニューロン間のAChを介した細胞シグナリングを崩壊させるいずれかの物質が挙げられる。アンタゴニストは、例えばAChが、シナプス後ニューロン上のムスカリン性コリン作動性レセプターに結合し、AChのムスカリン性コリン作動性レセプターへの結合、シナプス間隙におけるアセチルコリンエステラーゼによるACh分解の妨害またはシナプス前ニューロンからのAChの放出の妨害に続いてシナプス後事象を媒介するのを防ぐように作用することによりAChの作用を妨害することができる。
【0115】
さらに別の具体的態様にて、本発明のカルバモイルエステルは、個体における末梢神経系病態を治療するために用いることができる。末梢神経系病態は、例えば骨格筋(例えば重症筋無力症)に神経分布を供給するニューロンの結果であるか、またはこれと関連する疾患または疾病であることができる。末梢神経系の病態は、例えば骨格筋、平滑筋または心筋の神経筋接合部におけるニューロンからのアセチルコリンの放出における欠陥であることができる。
【0116】
本発明のカルバモイルエステルは、個体における自律神経系病態(交感神経系、副交感神経系)を治療するために用いることができる。自律神経系病態は、内臓の平滑筋、腺(内分泌腺、外分泌腺)、血管または心筋に影響する病態であることができる。本発明のカルバモイルエステルを用いて治療される自律神経系病態は、術後膨張および尿閉であることができる。自律神経系病態は、自律神経系と関連する機能障害、例えば器官における細胞(例えば上皮、神経、筋、結合組織)、血管または腺とのシナプスにおける交感神経ニューロンからのノルエピネフリンの放出、または副交感神経ニューロンからのAChの放出における欠陥であることができる。当業者は中枢神経系病態、末梢神経系病態および自律神経系病態を伴う個体の診断が可能であろう。
【0117】
ある具体的態様にて、例えばコリンエステラーゼにより加水分解されて、病態(中枢神経系、末梢神経系、自律神経系)を伴う個体を治療するために用いられるカルバモイルエステルは、アンフェタミン化合物(l−アンフェタミン、d−アンフェタミン)および/またはメタンフェタミン化合物(d−メタンフェタミン、l−メタンフェタミン)となる。
【0118】
本明細書において「記憶障害または認知障害」は、ヒトにおける記憶および/または認知過程における減退した能力を意味する。認知および/または記憶過程および認知および/または記憶過程における欠陥は、従来技術により評価または測定することができる。例えば記憶は、当業者に知られている一つ以上の従来の検査により、本発明のカルバモイルエステルによる個体の治療の前、これと同時またはその後評価することができる。そのような検査としては、受動回避検査(Passive Avoidance Testing)(Principles of Neuropsychopharmacology)(文献(R.S. Feldman, et al., Sinauer Assoc., Inc., Sunderland, MA (1997))、このすべての教示は本明細書にそのまま引用される); レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT); ウェクスラー記憶検査; ウェクスラー記憶検査(修正版)(Wechsler, D., Wechsler Memory Scale-Revised Manual, NY, NY, The Psychological Corp. (1987)); カリフォルニア言語学習検査(第2版)(California Verbal Learning Test-Second Edition)(Delis, D.C., et al., The Californian Verbal Learning Test, Second Edition, Adult Version, Manual, San Antonio, TX: The Psychological Corporation (2000)); 認知薬物研究(Cognitive Drug Research)(CDR)Battery-Wesnesのコンピュータによる評価(Computerized Assessment Battery-Wesnes); Buschkeの選択的想起検査(Buschke's Selective Reminder Test)(Buschke, H., et al., Neurology 24: 1019-1025 (1974)); 一時的な視覚空間記憶検査(修正版)(Brief Visuospatial Memory Test-Revised); および日常注意検査(Test of Everyday Attention)(Perry, R.J., et al., Neuropsychologia 38: 252-271 (2000))が挙げられる。
【0119】
特定の具体的態様にて、本発明のカルバモイルエステルの投与の前、間または後におけるヒトの記憶は、RAVLTなどの単語想起検査により評価または測定される。
【0120】
別の具体的態様にて、本明細書に記載の発明は、個体における神経系病態を治療する方法を提供する。該方法は、カルバモイルエステルの個体への投与を含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それにより個体の神経系病態を治療する。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体における神経系病態をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。薬理活性物質は、例えばカルバモイルエステルにより阻害されたコリンエステラーゼの阻害を持続することができる。薬理活性物質は、例えばニューロンまたはシナプスへの化合物の送達、ニューロンの分極の持続、神経伝達物質の再摂取の予防、神経伝達物質の合成または放出の刺激または維持により、神経系病態をさらに治療することができる。
【0121】
特定の具体的態様にて、カルバモイルエステルの投与は、個体の中枢神経系病態を治療する。カルバモイルエステルはアセチルコリンエステラーゼを阻害し、それにより個体の中枢神経系病態を治療する。カルバモイルエステルは、例えばアセチルコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体の中枢神経系病態をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。薬理活性物質は、アンフェタミン化合物およびメタンフェタミン化合物からなる群から選択される。
【0122】
本発明のさらなる具体的態様は、インビトロサンプルにおけるアセチルコリンを増大させる方法である。該方法は、カルバモイルエステルのインビトロサンプルへの投与を含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それによりインビトロサンプルにおけるアセチルコリンを増大させる。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、インビトロサンプルにおけるアセチルコリンをさらに増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0123】
インビトロサンプルは、細胞不含サンプルまたは細胞含有サンプルであることができる。用いる細胞は、哺乳類細胞(例えばCHO細胞)、昆虫細胞または細菌細胞であることができる。該方法は、カルバモイルエステルの能力を評価するために用いられ、個体における使用前の生物学的、化学的または物理的過程に影響するコリンエステラーゼおよび薬理活性物質を阻害することができる。該方法は、カルバモイルエステルが加水分解されて生成する薬剤のコリンエステラーゼ活性および薬理活性のためにカルバモイルエステルをスクリーニングするためのアッセイとしてキットに包装することができる。
【0124】
本発明の別の具体的態様は、組織におけるアセチルコリンを増大させる方法である。該方法は、組織へのカルバモイルエステルの投与を含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それにより組織におけるアセチルコリンを増大させ、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、組織におけるアセチルコリンをさらに増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0125】
組織は、神経組織、筋組織(心筋、骨格筋、平滑筋)、または神経組織、筋組織、上皮組織および結合組織からなる群から選択されるいずれか一つ以上の組織タイプの集まりであることができる。組織は単離(個体から取り出す)することができる。
【0126】
本発明の別の具体的態様は、個体におけるアセチルコリンを増大させる方法である。該方法は、個体における個体へのカルバモイルエステルの投与を含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼ(例えばAchE、BuChE)を阻害し、それによりアセチルコリンを増大させる。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体におけるアセチルコリンをさらに増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0127】
ある具体的態様にて、薬理活性物質は個体の中枢神経系におけるアセチルコリンを増大させる。別の具体的態様にて、薬理活性物質は個体の末梢神経系におけるアセチルコリンを増大させる。さらに別の具体的態様にて、カルバモイルエステルは個体の自律神経系におけるアセチルコリンを増大させる。インビトロサンプル、組織および個体におけるAChの増大を評価する技術は、当業者によく知られている(例えば文献(Day, J.C., et al. Methods 23:21-39 (2001))を参照のこと、この教示は本明細書にそのまま引用される)。
【0128】
好ましい具体的態様にて、本発明の方法における薬理活性物質は、アンフェタミン化合物および/またはメタンフェタミン化合物である。
【0129】
アセチルコリンにおけるさらなる増大は、カルバモイルエステルにより媒介された増大(AChEの阻害)と同様に媒介された増大、または例えばAChの放出の増大、AChの合成の増大もしくはそうでなければAChの不活性化の予防によるAChにおける増大であることができる。
【0130】
さらなる具体的態様にて、本発明は、二以上のニューロン間の伝達を増大させる方法である。該方法は、ニューロンのカルバモイルエステルへの暴露を含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それにより二以上のニューロン間の伝達を増大させる。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、二以上のニューロン間の伝達をさらに増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0131】
伝達におけるさらなる増大は、例えばカルバモイルエステル(コリンエステラーゼを阻害することによる)と同様の方法によるか、または神経伝達物質の放出または合成を刺激し、神経伝達物質の再摂取を阻害し、ニューロンのイオンチャネルを変更するような薬理活性物質により媒介される他のいずれかの方法によることができる。
【0132】
伝達は、インビトロまたはインビボにおける二以上のニューロン間で増大され得る。インビトロおよびインビボにおける伝達の増大を測定する技術は当業者によく知られている。例えば、シナプス後ニューロンの脱分極における変化は、電気生理学的方法により記録することができる。
【0133】
カルバモイルエステルは、例えばシナプスにおいて神経伝達物質(例えばコリン作動性、アドレナリン作動性、ノルアドレナリン作動性、ドーパミン作動性、セロトニン作動性、グルタミン酸作動性、GABA作動性、ヒスタミン作動性)の量を増大させることにより、または神経伝達物質の分解を減退させ、もしくは予防する(例えばモノアミン酸化酵素、COMTを阻害することによる)ことにより、二以上のニューロン間の伝達を増大させることができる。さらに、またはあるいは、カルバモイルエステルは、神経伝達物質レセプター(例えばアデノシンレセプター、カンナビノイドレセプター、微量アミンレセプター)を調節するか、またはニューロンにおけるチャネル(例えばカリウムチャネル、ナトリウムチャネル)を遮断することにより、二以上のニューロン間の伝達を増大させることができる。さらに、カルバモイルエステルは、PDE IV、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤を阻害するか、またはレセプター輸送分子を調整することにより、ホスホジエステラーゼもしくはホスファターゼを阻害することにより、またはレセプター輸送分子(例えばBARK、アレスチン、ユビキチンE3リガーゼ)を調節することにより二以上のニューロン間の伝達を増大させることができる。
【0134】
個体における伝達の増大は、中枢または末梢神経系病態、例えば記憶障害および認知障害を最小限化するか、または緩和することができる。例えばヒト個体におけるコリン作動性伝達における増大(例えばシナプス後)は、アルツハイマー病と関連する症状を最小限化するか、または緩和することができる。ヒト個体におけるドーパミン作動性伝達における増大(例えばシナプス後)は、パーキンソン病と関連する症状を最小限化するか、または緩和することができる。カルバモイルエステルは、コリンエステラーゼで加水分解されて、パーキンソン病のヒト個体における中枢神経系内の伝達(シナプス前またはシナプス後)を増大させることができるドーパミンまたはドーパミン作動薬となり、それによりL−DOPA(レボドパ)の代替を提供することができる。例えばカルバモイルエステルの脂溶性フェニルカーバメートは、血液脳関門を経たカルバモイルエステルの浸透を促進し、それにより中枢神経系への薬理活性物質、特にドーパミンの送達を可能にすることができる。当業者は、中枢または末梢神経系病態のヒト個体への薬理活性物質の効果を従来の技術を用いて測定することができる。
【0135】
本発明の別の具体的態様は、個体におけるコリン作動性欠乏を治療する方法である。該方法は、カルバモイルエステルを個体に投与することを含む。カルバモイルエステルは、コリンエステラーゼを阻害し、それにより個体におけるコリン作動性欠乏を治療する。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体におけるコリン作動性欠乏をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。さらなる治療は、例えばAChEおよび/またはBuChEの阻害によるか、またはAChの放出もしくは合成の増大によるものであることができる。
【0136】
コリン作動性欠乏は神経系欠乏であることができる。例えば、本発明のカルバモイルエステルは、アルツハイマー病を有するヒト個体を治療するために用いることができる。シナプス前ニューロンは、疾患が進行するにつれてChE阻害の有効性を限定するアルツハイマー病において急速に退化する(文献(Cutler, N.R., et.al. CNS Drugs 3:467-481 (1995))。ChEは、アルツハイマー病の個体におけるニューロンのシナプスに存在し続け、AChがシナプスに存在する限り加水分解する。従って本発明のカルバモイルエステルは、コリン作動性アゴニストとなり、それによりアルツハイマー病、軽度認知障害、加齢性記憶障害、加齢性記憶喪失、自然老化、血管性認知症、レビー小体型痴呆(dementia with Lewis bodies)およびパーキンソン病に苦しむ個体の中枢神経系におけるAChを介するシナプス伝達を増大させることによりコリン作動性欠乏を改善することができる。
【0137】
さらなる具体的態様にて、本発明は、個体における記憶障害を治療する方法である。該方法は、カルバモイルエステルを個体に投与することを含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それにより個体における記憶障害を治療する。カルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体における記憶障害をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。さらなる記憶の治療は、薬理活性物質の特徴であるカルバモイルエステルと同様の治療またはカルバモイルエステルと異なる方法での治療であることができる。
【0138】
記憶障害は、記憶固定障害、長期記憶障害および短期記憶障害からなる群から選択される記憶障害であることができる。当業者は、記憶障害の個体を識別し、欠陥を評価することができるであろう。
【0139】
特定の具体的態様にて、ヒト個体は、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢性記憶喪失、軽度認知障害および多発性硬化症からなる群から選択される病態と関連する記憶障害を有する。
【0140】
別の具体的態様にて、本発明のカルバモイルエステルで治療されるヒト個体は、加齢性認識衰退を有する。
【0141】
本発明のさらなる具体的態様は、組織に薬理活性物質を送達する方法である。該方法は、カルバモイルエステルを組織に投与することを含む。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、それにより組織に薬理活性物質を送達する。
【0142】
組織は、インビトロ組織サンプルまたは(個体における)インビボの組織であることができる。組織は、筋組織、神経組織、または筋組織、神経組織、結合組織もしくは上皮組織の任意の組合せであることができる。カルバモイルエステルは、カルバモイルエステルにより阻害されるコリンエステラーゼを有する組織より近位部であるか、または遠位部である組織に薬理活性物質を送達するために用いることができる。例えばカルバモイルエステルは、コリン作動薬などの薬理活性物質を筋組織に送達するために用いることができる。カルバモイルエステルは、コリンエステラーゼ(アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ)に結合し、それによりコリンエステラーゼの活性を阻害し、加水分解(例えばコリンエステラーゼによる)されてコリン作動薬となることができる。薬理活性物質は、カルバモイルエステルのコリンエステラーゼへの結合部位に近位部の筋細胞または結合部位に遠位部の筋細胞に送達することができる。同様に、カルバモイルエステルは神経系のニューロンにおいてコリンエステラーゼに結合することができ、結合部位の近位部または遠位部にコリン作動薬を送達することができる。
【0143】
カルバモイルエステルはコリンエステラーゼに結合することができ、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、例えばドーパミン作動薬、セロトニン作動薬、アドレナリン作動薬、ノルアドレナリン作動薬、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬、ヒスタミン作動薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ、向知性薬、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬、PDE IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、レセプター輸送調整剤または微量アミンレセプター・モジュレータをカルバモイルエステルの結合部位の近位部または遠位部のニューロンに送達することができる。従って、本発明のカルバモイルエステルは、薬理活性物質を中枢神経系に送達する方法を提供する。薬理活性物質は、脳の変化した領域に拡散し、その効果を媒介することができる。
【0144】
特定の具体的態様にて、本発明は、カルバモイルエステルを個体に投与することにより個体にアンフェタミン化合物またはメタンフェタミン化合物を送達する方法である。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されてアンフェタミン化合物となるアミン基を含み、それにより組織にアンフェタミン化合物を送達する。
【0145】
さらなる具体的態様にて、本発明は、カルバモイルエステルを個体に投与することを特徴とする、個体における緑内障を治療する方法である。カルバモイルエステルはコリンエステラーゼを阻害し、それにより個体における緑内障を治療し、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて、個体における緑内障をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0146】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、本明細書に記載のカルバモイルエステルを含む医薬組成物を含む。医薬組成物は、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを含み、そのカルバモイルエステルは、例えばコリンエステラーゼとの反応により加水分解されて薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む。
【0147】
特定の具体的態様にて、医薬組成物のカルバモイルエステルは次の構造:
【化28】

[式中、
Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;そして
およびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
を有する。
【0148】
別の具体的態様にて、医薬組成物のカルバモイルエステルは、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・4−ピリジニルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・(2−フェニル)エチルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・[1−(1−ナフチル)エチル]カーバメートエステル、7−ブロモ−(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・n−ヘプチルカーバメートエステルまたはテトラヒドロイソキノリニルカーバメートエステルではない。
【0149】
本発明のカルバモイルエステルは、本発明の方法、医薬組成物、キットおよびアッセイにおいて、単回投与または複数回投与にて用いることができる。複数回投与は、一日に複数回投与、二日以上の間毎日単回投与、二日以上の間毎日複数回投与であるか、または数日間の単回投与に続き、もしくはその後、数日間の複数回投与の介入であることができる。複数回投与は、一日投与、数日間投与、一週間投与、数週間投与、一ヶ月間投与、数ヶ月間投与、一年間投与または数年間投与であることができる。
【0150】
本発明のカルバモイルエステルは、本発明の方法にて個体に急性的に(一時的にもしくは短期的に)または慢性的に(持続的にもしくは長期的に)投与することができる。例えば本発明のカルバモイルエステルは、一日一回、一日複数回(例えば2、3、4回)で一日間、数日間、一週間、数週間、一ヶ月間、数ヶ月間または数年間、個体にカルバモイルエステルを投与することにより個体を治療するために本発明の方法にて用いることができる。
【0151】
ある具体的態様にて、カルバモイルエステルの用量は、約0.1mg、約1mg、約2.5mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約40mg、約50mg、約75mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約500mg、約750mgまたは約1000mgであることができる。
【0152】
別の具体的態様にて、カルバモイルエステルの用量は、約1mg〜約100mgの間、約2mg〜約50mgの間または約5mg〜約25mgの間であることができる。
【0153】
さらに別の具体的態様にて、複数回投与の各用量は、約0.1mg、約1mg、約2.5mg、約5mg、約10mg、約20mg、約25mg、約40mg、約50mg、約75mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約500mg、約750mgまたは約1000mgであることができる。
【0154】
さらなる具体的態様にて、複数回投与の各用量は、約1mg〜約100mgの間、約2mg〜約50mgの間または約5mg〜約25mgの間であることができる。
【0155】
カルバモイルエステルおよび薬理活性物質は、有効量にて、本発明の方法にて投与されるか、または本発明のアッセイおよびキットにて用いられる。カルバモイルエステルまたは薬理活性物質の量を意味するときの用語「有効量」、「有効な量」または「治療的有効量」は、治療的有効性に十分であるカルバモイルエステルまたは薬理活性物質の量または用量(例えば個体における神経系病態の治療; インビトロサンプル、組織または個体におけるAChの増大; 二以上のニューロン間の伝達の増大; コリン作動性欠乏の治療; 記憶障害の治療; 認知障害の治療; 薬理活性物質の組織または個体への送達に十分な量)として定義される。
【0156】
カルバモイルエステルは、許容されるキャリアとともに本発明の方法、キットおよびアッセイにて適宜使用することができる。許容されるキャリアの選択は、方法、キットまたはアッセイによるであろう。例えばインビトロ方法、アッセイまたはキットに許容されるキャリアは、生理食塩水、適切な緩衝液または細胞培地であることができる。
【0157】
本発明のカルバモイルエステルは、それのみで投与するか、または従来の賦形剤、例えば本方法に用いられる化合物と悪影響に反応せず、腸内もしくは腸外用途に適切な、医薬的もしくは生理学的に許容される有機もしくは無機キャリア物質との混合物として投与することができる。適切な医薬的に許容されるキャリアとしては、水、塩溶液(リンゲル溶液など)、アルコール、オイル、ゼラチン、およびラクトース、アミロースまたはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリジンが挙げられる。そのような製剤は無菌化することができ、所望ならば本発明の方法に用いられる化合物と悪影響に反応しない、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色剤および/または芳香剤などの助剤と混合することができる。製剤はまた、所望ならば、代謝低下を低減させる他の有効物質と組み合わせることができる。
【0158】
カルバモイルエステルの好ましい投与方法は、経口投与(錠剤またはカプセル剤など)である。カルバモイルエステルは、それのみで、または混合物として組み合わされて、所望の効果(例えば、神経系病態の改善、アセチルコリンの増大、二以上のニューロン間の伝達の増大、コリン作動性欠乏の治療、記憶障害の治療、認知障害の治療、薬理活性物質の送達)を与えるための時間をかけて、単回で、または二以上の投与にて投与することができる。
【0159】
カルバモイルエステルは、個体における標的部位に投与することができる。選択される標的部位は治療される病態によることができる。例えば、骨格筋(標的部位)における局注は、末梢神経系病態を治療するために用いることができ、または脳脊髄液、脳洞もしくは脳室(標的部位)における局注は、中枢神経系病態を治療するために用いることができる。別の実施例にて、カルバモイルエステルを含む点眼液、軟膏、ゲルまたは眼球注入は、個体における緑内障を治療するために用いることができる。
【0160】
非経口用途が必要または所望である場合、カルバモイルエステルの特に適切な混合物は、注射用無菌溶液、好ましくは油性または水性溶液、ならびに懸濁剤、乳剤、または坐剤などの植え込み型(implant)である。特に、非経口投与のためのキャリアとしては、デキストロース、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油、ポリオキシエチレン−ブロック重合体などの水溶液が挙げられる。アンプルは便利な単位投与である。本発明の方法、アッセイまたはキットにて用いられるカルバモイルエステルはまた、リポソームに組み込むか、または経皮ポンプまたは経皮貼付により投与することができる。本発明における使用に適切な医薬混合物は、当業者によく知られており、例えば文献(Pharmaceutical Sciences (17th Ed., Mack Pub. Co., Easton, PA))および国際公開番号WO 96/05309に記載され、これらは本明細書にそのまま引用される。
【0161】
個体に投与される用量および頻度(単回投与または複数回投与)は、例えば治療される神経系病態、個体におけるコリン作動性欠乏のタイプ、神経系病態の期間、記憶障害の程度(例えば記憶固定障害、短期記憶障害)、認知障害の程度(例えば注意、覚醒、実行機能、覚醒状態、喚起、警戒、執行的職能、反応時間)、送達もしくは認知される薬理活性物質; 個体の大きさ、年齢、性別、健康、体重、肥満度指数および食事; 記憶もしくは認知の状態もしくは欠陥の症状の性質および程度、併用療法の種類、病態もしくは欠陥による合併症、または治療されるヒトの他の健康に関連する問題などの種々の因子により変更することができる。
【0162】
他の治療計画または治療薬は、本発明の方法および該方法に用いられるカルバモイルエステルと併せて用いることができる。従来の投与の適合および操作(例えば頻度および期間)は、十分当業者の能力の範囲内である。
【0163】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらにより何ら限定されるものではない。
【0164】
実施例
実施例1.反応式I. カルバモイルエステルの合成:
水素化ナトリウム73mg(鉱油中60%ディスパージョン)を(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)0.3g(1.82mmol)のトルエン15ml溶液に加えた。溶液を室温にて30分間撹拌した後、カルボニルジイミダゾール(CDI)0.33g(2.0mmol)を一度に加え、80℃まで2時間加熱した。次いでdl−アンフェタミン(2)硫酸塩0.335g(1.82mmol)を加え、混合物を室温にて2日間撹拌した。蒸留水20mlおよび1M塩酸溶液15mlを反応混合物に加え、水層および有機層を分離した。水層をクロロホルムで洗浄し、1M水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化し、エーテルで抽出した。エーテル層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルカラム(酢酸エチル中3%メタノールおよび1%トリエチルアミンで溶出)で精製してカルバモイルエステル(3)0.27g(0.83mmol、46%収率)を得た。
カルバモイルエステル(3)はNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.146 (d, 3H, J = 6.6 Hz, CH3), 1.312 (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 2.153 (s, 6H, 2xCH3), 2.721 (dd, 1H, J = 13.4 および7.2 Hz, CHH), 2.866 (dd, 1H, J = 13.4および5.9 Hz, CHH), 3.218 (q, 1H, J = 6.6 Hz, CH), 3.960-4.936 (m, 1H, CH), 4.870 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, NH), 6.943 (bd, 1H, J = 7.2 Hz, CH arom.), 6.993 (bs, 1H, CH arom.), 7.078 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.) 7.156-7.291 (m, 6H, CH arom.).
【化29】

反応式I
【0165】
実施例2.反応式II. カルバモイルエステルの合成
(S)−(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)96mg(0.58mmol)を乾燥酢酸エチル4mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末283mg(1.74mmol)を加え、混合物を室温にて20時間撹拌した。次いで酢酸313mg(5.22mmol)を混合物に加えた後、(−)−アトモキセチン(4)162mg(0.63mmol)を加えた。得られた混合物を室温にて一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム揺曳を混合物に加え、水層および有機層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を集め、炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルカラム(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中25%酢酸エチルで溶出)で精製してカルバモイルエステル(5)101mg(0.23mmol、39.0%収率)を得た。遊離塩基5を実施例14に記載の手順に従い、塩酸塩に変換した。
カルバモイルエステル(5)をNMRにより確認した。
塩酸塩の1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.808および1.825 (d, 3H, J = 6.8 Hz, CH3), 2.090-2.320 (m, 2H), 2.262 (ma)および2.325 (mi) (s, 3H, CH3), 2.506-2.541 (m, 3H, CH3), 2.658-2.698 (m, 3H, CH3), 3.002 (ma)および3.082 (mi) (s, 3H, CH3), 3.520-3.575 (m, 1H, CH), 3.662-3.700および3.892-3.961 (m, 1H, CH), 4.048-4.123 (m, 1H, CH), 5.180-5.252 (m, 1H, CH), 6.535-6.582 (m, 1H, CH arom.), 6.729-6.787および6.902-6.957 (m, 3H, 3xCH arom.), 7.007-7.086 (m, 2H, 2xCH arom.), 7.224-7.428 (m, 7H, 7xCH arom.), 12.620 (bs, 1H, Hcl).
【化30】

反応式II
【0166】
実施例3.反応式III. カルバモイルエステルの合成:
4−ニトロフェニルクロロフォルメート粉末0.179g(0.86mmol)を(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)0.12g(0.72mmol)およびトリエチルアミン0.22g(2.17mmol)の乾燥ジクロロメタン10ml(0.86mmol)溶液に0℃にて加えた。溶液を0℃にて5分間撹拌した後、室温にてさらに30分間撹拌した。次いで1−メタンフェタミン(6)0.107gの乾燥ジクロロメタン2ml溶液を加え、得られた溶液を室温にて2時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムに適用した。1%トリエチルアミンを含む酢酸エチル中3%アセトンでカルバモイルエステル(7)を溶出した。カルバモイルエステル(7)を含むフラクションを集め、濃縮してカルバモイルエステル(7)0.15g(0.44mmol、61%収率)を得た。
カルバモイルエステル(7)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.192 (mi)および1.275 (ma) (d, 3H, J = 6.8 Hz, CH3), 1.305および1.326 (d, 3H, J = 3.0 Hz, CH3), 2.162および2.167 (s, 6H, 2xCH3), 2.746 (dd, 1H, J = 13.7および6.8 Hz, CHH), 2.850 (dd, 1H, J = 13.7および6.8 Hz, CHH), 2.868および2.886(s, 3H, CH3), 3.165-3.217 (m, 1H, CH), 4.558-4.633 (m, 1H, CH), 6.665および6.855 (bd, 1H, J = 7.9 Hz, CH arom.), 6.723および6.928 (bs, 1H, CH arom.), 7.065 (bd, 1H, J = 7.2 Hz, CH arom.), 7.176-7.305 (m, 6H, CH arom.).
【化31】

反応式III
【0167】
実施例4.反応式IV. カルバモイルエステルの合成
室温にて、ジイソプロピルエチルアミン5.16g(40mmol)およびCDI粉末6.48g(40mmol)をl−アンフェタミン硫酸塩(8)7.34g(40mmol)のジクロロメタン140ml懸濁液に加えた。得られた混合物を室温にて1時間撹拌した。乾燥トルエン120ml中水素化ナトリウム0.8g(鉱油中60%ディスパージョン)と30分間混合させた(−)−α−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)3.3g(20mmol)を混合物に加え、ジクロロメタンを減圧留去した。得られた懸濁液を撹拌しながら85℃まで一晩加熱した。反応混合物を0.5M塩酸200mlで抽出した。水層を酢酸エチルで洗浄し、0℃にて炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化し、酢酸エチル(3x100ml)で抽出した。有機層を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムで精製した。ヘキサン中20〜30%酢酸エチルと1%トリエチルアミンの混合物で溶出し、カルバモイルエステル(9)1.53g(4.7mmol、23.5%収率)を得た。
カルバモイルエステル(9)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.179 (d, 3H, J = 6.6 Hz, CH3), 1.331 (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 2.174 (s, 6H, 2xCH3), 2.789 (dd, 1H, J = 13.4および7.2 Hz, CHH), 2.832 (dd, 1H, J = 13.4および5.9 Hz, CHH), 3.228 (q, 1H, J = 6.7 Hz, CH), 3.980-4.062 (m, 1H, CH), 4.856 (bd, 1H, J = 7.2 Hz, NH), 6.955 (bd, 1H, J = 7.4 Hz, CH arom.), 7.018(bs, 1H, CH arom.), 7.095 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.) 7.186-7.303 (m, 6H, CH arom.).
【化32】

反応式IV
【0168】
実施例5: 反応式V. カルバモイルエステルの合成
(S)−(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)1.2g(7.3mmol)を乾燥酢酸エチル20mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末2.37g(14.6mmol)を加え、混合物を85℃にて一晩撹拌した。0℃まで冷却した後、酢酸3.3g(55.0mmol)を加え、次いでl−アンフェタミン(8)2.8g(20.7mmol)を加えた。混合物を室温にて36時間確認した。水20mlおよび1M塩酸20mlを加え、水層および有機層を分離した。有機層を0.5M塩酸で抽出した。水層を集め、エーテルで2回洗浄し、炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11まで塩基性化し、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中25%酢酸エチルと1%トリエチルアミンの混合物による溶出により、カルバモイルエステル(9)0.93g(2.85mmol、39%収率)を得た。
【化33】

反応式V
【0169】
実施例6.反応式VI. カルバモイルエステルの合成:
トリホスゲン85.5mg(0.28mmol)を乾燥ジクロロメタン2mlに溶解させた。この溶液に、乾燥ジクロロメタン1ml中のデスメチルセレギリン(10)145mg(0.84mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)110mg(0.85mol)の混合物を0℃にて加え、10分間反応させた。混合物を室温にて60時間撹拌し、次いで(−)−α−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)92mg(0.55mmol)および水素化ナトリウム68mg(鉱油中60%ディスパージョン)の乾燥アセトニトリル中の懸濁液に加え、これを室温にて1時間撹拌した。得られた混合物を室温にて一晩撹拌した。上記混合物の溶媒を減圧留去した。残渣を0.5M塩酸に溶解させ、エーテルで洗浄した。水層を炭酸水素ナトリウムで塩基性化し、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。有機層を0.5N水酸化ナトリウム200mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中30〜60%酢酸エチルで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(11)185mg(0.508mmol、92.3%収率)を得た。
カルバモイルエステル(11)はNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.339 (d, 3H, J = 6.6 Hz, CH3), 1.327-1.415 (m, 3H, CH3), 2.187 (s, 6H, 2xCH3), 2.215-2.258 (m, 1H, CH), 2.843-2.870 (m, 1H, CH), 3.063 (dd, 1H, J = 13.5および7.5 Hz, CHH), 3.230 (q, 1H, J = 6.6 Hz, CH), 4.043-4.118 (m, 2H, 2xCH), 4.372-4.411 (m, 1H, CH), 6.846-7.024 (m, 2H, 2xCH arom.), 7.108 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.), 7.202-7.313 (m, 6H, CH arom.).
【化34】

反応式VI
【0170】
実施例7.反応式VII. カルバモイルエステルの合成:
トリホスゲン140mg(0.47mmol)は乾燥ジクロロメタン6mlに溶解させた。この溶液に、l−メタンフェタミン(6)204.5mg(1.37mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)177mg(1.37mol)の乾燥ジクロロメタン2ml中の混合物を0℃にて加え、10分間反応させた。混合物を室温にて2日間撹拌し、次いでエセロリン(eseroline)(12)153mg(0.70mmol)および4−ジメチルアミノピリジン268mgの乾燥アセトニトリル5ml溶液に加えた。得られた混合物を室温にて一晩撹拌した。上記混合物の溶媒を減圧留去した。残渣を炭酸水素ナトリウム溶液に溶解させ、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中30〜60%酢酸エチルで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(13)40mg(0.10mmol、14%収率)を得た。
カルバモイルエステル(13)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.177 (mi)および1.261 (ma) (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 1.386 (ma)および1.397 (mi) (s, 3H, CH3), 1.866-1.932 (m, 2H), 2.505 (s, 3H, CH3), 2.542-2.767 (m, 3H), 2.803-2.870 (m, 1H), 2.860 (s, 6H, 2xCH3), 4.078 (s, 1H), 4.050-4.610 (m, 1H, CH), 6.254 (ma)および6.285 (mi) (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH arom.), 6.359 (ma)および6.591 (mi) (d, 1H, J = 2.2 Hz, CH arom.), 6.460 (ma)および6.666 (mi) (dd, 1H, J = 8.4および2.2 Hz, CH arom.), 7.170-7.300 (m, 5H, CH arom.).
【化35】

反応式VII
【0171】
実施例8.反応式VIII. カルバモイルエステルの合成:
エセロリン(eseroline)(12)57mg(0.26mmol)を乾燥酢酸エチル4mlに溶解させた。CDI106mg(0.65mmol)を加え、混合物を室温にて2時間撹拌した。酢酸117mg(1.95mmol)、次いでl−メタンフェタミン(6)85mg(0.57mmol)を加えた。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温にて24時間撹拌した。赤みがかった反応混合物を水で洗浄した。水溶液を酢酸エチルで抽出し、0.5N水酸化ナトリウムでpH〜8に中和し、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。すべての有機層を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン中30%酢酸エチルおよび1%トリエチルアミンで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(13)38.4mg(0.1mmol、38.5%収率)を得た。生成物は実施例7で得られたカルバモイルエステル(13)と一致した。
【化36】

反応式VIII
【0172】
実施例9: 反応式IX. カルバモイルエステルの合成:
エセロリン(eseroline)(12)1.14g(5.2mmol)を乾燥酢酸エチル30mlに溶解させた。CDI1.7g(10.5mmol)を加え、混合物を室温にて2時間撹拌した。酢酸1.26g(21mmol)、次いでl−アンフェタミン(8)酢酸塩1.46g(7.5mmol)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、室温にて24時間撹拌した。反応混合物を0.5N水酸化ナトリウムでpH〜8に塩基性化し、酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。すべての有機層を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン中30%酢酸エチルおよび1%トリエチルアミンで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(14)1.0g(2.64mmol、50.6%収率)を得た。
得られたカルバモイルエステル(14)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.156 (d, 3H, J = 6.5 Hz, CH3), 1.400 (s, 3H, CH3), 1.892-1.939 (m, 2H), 2.513 (s, 3H, CH3), 2.568-2.767 (m, 3H), 2.853-2.890 (m, 1H), 2.885 (s, 3H, CH3), 3.990-4.064 (m, 1H, CH), 4.085 (s, 1H), 4.847 (bd, 1H, J =7.4 Hz, NH), 6.298 (d, 1H, J = 8.3 Hz, CH arom.), 6.699 (bs, 1H, CH arom.), 6.740 (bd, 1H, J = 8.3 Hz, CH arom.), 7.178-7.317 (m, 5H, CH arom.).
【化37】

反応式IX
【0173】
実施例10.反応式X. カルバモイルエステルの合成:
(R)−(+)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(15)95mg(0.57mmol)を乾燥酢酸エチル4mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末250mg(1.54mmol)を加え、混合物を85℃にて一晩撹拌した。0℃まで冷却した後、酢酸250mg(4.17mmol)を加えた後、l−メタンフェタミン(6)158mg(1.06mmol)を加えた。混合物を室温にて36時間撹拌した。水20mlおよび1M塩酸20mlを加え、層を分離した。有機層を0.5M塩酸で抽出した。水層を集め、エーテルで2回洗浄し、炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化した後、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中25%酢酸エチルで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(16)80mg(0.23mmol、41.2%収率)を得た。
カルバモイルエステル(16)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.197および1.276 (d, 3H, J = 6.8 Hz, CH3), 1.314および1.328 (d, 3H, J = 3.0 Hz, CH3), 2.162および2.167 (s, 6H, 2xCH3), 2.752 (dd, 1H, J = 13.6および6.4 Hz, CHH), 2.845 (dd, 1H, J = 13.6および8.8 Hz, CHH), 2.869および2.887 (s, 3H, CH3), 3.170-3.240 (m, 1H, CH), 4.562-4.626 (m, 1H, CH), 6.671および6.854 (bd, 1H, J = 7.8 Hz, CH arom.), 6.751および6.932 (bs, 1H, CH arom.), 7.068 (bd, 1H, J = 7.2 Hz, CH arom.), 7.184-7.301 (m, 6H, CH arom.).
【化38】

反応式X
【0174】
実施例11.反応式XI. カルバモイルエステルの合成:
(S)−(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)145mg(0.88mmol)を乾燥酢酸エチル4mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末356mg(2.20mmol)を加え、混合物を室温にて20時間撹拌した。酢酸395mg(6.58mmol)を加えた後、2−フェニルエチルアミン(17)283mg(2.34mmol)を加えた。混合物を室温にて一晩撹拌した。水10mlおよび1M塩酸10mlを加え、層を分離した。有機層を0.5M塩酸で抽出した。水層を集め、エーテルで2回洗浄し、炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化した後、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製した。1%トリエチルアミンを含むヘキサン中25%酢酸エチルで溶出し、カルバモイルエステル(18)90mg(0.29mmol、32.7%収率)を得た。
カルバモイルエステル(18)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.328 (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 2.169 (s, 6H, 2xCH3), 2.860 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2), 3.231 (q, 1H, J = 6.7 Hz, CH), 3.466-3.532 (m, 2H, CH2), 5.002 (bs, 1H, NH), 6.966 (dd, 1H, J = 8.0および1.4 Hz, CH arom.), 7.030 (bs, 1H, CH arom.), 7.092 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.) 7.183-7.334 (m, 6H, CH arom.).
【化39】

反応式XI
【0175】
実施例12.反応式XII. カルバモイルエステルの合成:
(S)−(−)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(1)81mg(0.49mmol)を乾燥酢酸エチル4mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末199mg(1.23mmol)を加え、混合物を室温にて20時間撹拌した。酢酸184mg(3.07mmol)を加えた後、d−アンフェタミン(19)酢酸塩186mg(0.96mmol)を加えた。混合物を室温にて一晩撹拌した。水5mlおよび1M塩酸5mlを加え、水層および有機層を分離した。有機層を0.5M塩酸で抽出した。水層を集め、エーテルで2回洗浄し、炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化した後、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルカラム(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中25%酢酸エチルで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(20)95mg(0.29mmol、59.4%収率)を得た。
カルバモイルエステル(20)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz):δ 1.192 (d, 3H, J = 6.6 Hz, CH3), 1.367 (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 2.205 (s, 6H, 2xCH3), 2.759 (dd, 1H, J = 13.4および7.2 Hz, CHH), 2.896 (dd, 1H, J = 13.4および5.9 Hz, CHH), 3.295 (q, 1H, J = 6.6 Hz, CH), 3.990-4.044 (m, 1H, CH), 4.847 (bd, 1H, J = 7.2 Hz, NH), 6.966 (bd, 1H, J = 7.4 Hz, CH arom.), 6.976 (bs, 1H, CH arom.), 7.114 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.) 7.191-7.324 (m, 6H, CH arom.).
【化40】

反応式XII
【0176】
実施例13.反応式XIII. カルバモイルエステルの合成:
(R)−(+)−3’−ヒドロキシフェニルエチルジメチルアミン(15)195mg(1.18mmol)を乾燥酢酸エチル7mlに溶解させた。N,N’−カルボニルジイミダゾール粉末250mg(1.54mmol)を加え、混合物を85℃にて一晩撹拌した。0℃まで冷却した後、酢酸177mg(2.95mmol)を加え、次いでl−アンフェタミン(8)硫酸塩276mg(1.50mmol)を加えた。混合物を室温にて36時間撹拌した。水10mlおよび1M塩酸10mlを加え、水層および有機層を分離した。有機層を0.5M塩酸で抽出した。水層を集め、エーテルで2回洗浄し、炭酸水素ナトリウムおよび0.5N水酸化ナトリウムでpH〜11に塩基性化した後、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸水素ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、シリカゲルカラム(1%トリエチルアミンを含むヘキサン中25%酢酸エチルで溶出)で精製し、カルバモイルエステル(21)100mg(0.31mmol、26.0%収率)を得た。
カルバモイルエステル(21)をNMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.179 (d, 3H, J = 6.6 Hz, CH3), 1.342 (d, 3H, J = 6.7 Hz, CH3), 2.183 (s, 6H, 2xCH3), 2.755 (dd, 1H, J = 13.5および7.2 Hz, CHH), 2.896 (dd, 1H, J = 13.5および5.6 Hz, CHH), 3.249 (q, 1H, J = 6.7 Hz, CH), 3.960-4.936 (m, 1H, CH), 4.890 (bd, 1H, J = 7.9 Hz, NH), 6.974 (bd, 1H, J = 7.9 Hz, CH arom.), 7.021 (bs, 1H, CH arom.), 7.102 (bd, 1H, J = 7.7 Hz, CH arom.) 7.190-7.322 (m, 6H, CH arom.).
【化41】

反応式XIII
【0177】
実施例14: カルバモイルエステルの塩酸塩の製造:
カルバモイルエステルをクロロホルム(3ml/mmol)に溶解させた。1M塩酸のエーテル(1.5〜2モル当量)溶液を0℃にて滴加した。塩酸の滴下完了後、混合物を室温まで昇温させた。溶媒を留去し、残渣を真空下乾燥させ、カルバモイルエステルの塩酸塩を白色から灰白色に見える固体として得た。
【0178】
実施例15: カルバモイルエステルはインビトロでアセチルコリンエステラーゼを阻害する:
これらの実験に用いられるすべての試薬は分析用グレードのものであった。ヨウ化アセチルチオコリンおよび5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ)安息香酸(DTNB)およびヒト組換えアセチルコリンエステラーゼ(C1682)をシグマ・ケミカル社(St. Louis, MO)から購入した。
【0179】
カルバモイルエステルのアセチルコリンエステラーゼ活性は、エルマン(Ellmann)らの比色法(文献(Biochem. Pharmacol., 7:88-95 (1961)))の改変により25℃にて測定した。酵素、カルバモイルエステルまたはスチグミンおよび緩衝液を30分間プレインキュベートした。プレインキュベーション期間の終わりに、基質アセチルチオコリンを加えた。最終アッセイ混合物は10mMトリス緩衝液(pH8)、0.3mMアセチルチオコリンおよび0.33mM DTNBおよび0.08U/ml酵素を含有した。少なくとも5つの異なる濃度のカルバモイルエステルまたはスチグミンをIC50実験ごとにアッセイした。
【0180】
アセチルチオコリンの加水分解は、チオコリンとDTNB間のコンジュゲートの形成の測定により間接的にモニターした。マイクロプレート分光光度計(Polarstar, BMG Labtech)を用いて405nmにおける光学密度を5分間記録し、時間に対してプロットした。様々な阻害剤濃度のための初期速度の逆数を濃度に対してプロット(ディクソン・プロット)し、IC50値(酵素活性が50%阻害される濃度)をx切片の逆の値(opposite value)として得た(文献(Burlingham, et al., J.Chem.Ed., 80:214-218 (2003)))。
【0181】
結果を次に概略した:
【表1】

【0182】
これらのデータは、本発明のカルバモイルエステルがアセチルコリンエステラーゼをインビトロにて阻害することを示す。アセチルコリンエステラーゼのカルバモイルエステルによる阻害は、リバスチグミンなどのスチグミンによるアセチルコリンエステラーゼの阻害よりも大きいものであることができる。スチグミンから合成されたカルバモイルエステルはスチグミンと比べて同様のまたは増大された活性をもたらした。例えば、カルバモイルエステル(14)はリバスチグミンと比べて酵素活性において10倍の増大をもたらした。従って、知られている酵素活性を有する、スチグミンの構造的変形、カルバモイルエステルは、スチグミンの酵素活性を軽減せず、または阻害しなかった。
【0183】
実施例16: カルバモイルエステルは脳内にてコリンエステラーゼを阻害する:
雄ウィスター系ラットは、リバスチグミンまたはカルバモイルエステル7および9で腹腔内(i.p.)注射する。リバスチグミンまたはカルバモイルエステルの投与は最小限の副作用でコリン作動性行動的影響をもたらし、動物にとってよく耐えられるものであった。動物は注射後3時間で頭部を除去し、脳を素早く取り出した。脳組織を小片に角切りし、氷上に置き、0.1%トリトンXおよびプロテアーゼ阻害剤を含む氷冷トリス10ml中ポリトロンPT1200(Polytron PT1200)(Kinematic AG)ですぐにホモジナイズした。抽出緩衝液中のプロテアーゼ阻害剤はアンチパイン(10μM)、アプロチニン(5TIU/mgタンパク質)、ベスタチン(60nm)、ロイペプチン(10μM)およびペプスタチン(1μM)であった。最終アッセイ混合物におけるホモジネートの最終希釈は120倍であった。
【0184】
全コリンエステラーゼ活性は上記のように、エルマンらの比色法(Biochem. Pharmacol.,7:88-95 (1961))の改変により測定した。アセチルチオコリンの加水分解は、チオコリンとDTNB間のコンジュゲートの形成の測定により間接的にモニターした。405nmにおける光学密度をマイクロプレート分光光度計(Polarstar, BMG Labtech)を用いて5分間記録し、時間に対してプロットした。初期速度をグラフの直線部の勾配から計算した。
【0185】
コリンエステラーゼ活性をホモジネートのタンパク質含有量について標準化した。相対コリンエステラーゼ活性は、生理食塩水処置ラットにおける標準化コリンエステラーゼ活性に対する対照化合物またはカルバモイルエステルで処置されたラットにおける標準化コリンエステラーゼ活性の割合として計算した。
【0186】
これらのデータを以下に概略した:
【表2】

【0187】
これらのデータは、本発明化合物の全身投与が哺乳類の脳内の全コリンエステラーゼ活性の阻害をもたらすことを示す。カルバモイルエステルは最小限の副作用を伴うリバスチグミンと比べて、脳内のコリンエステラーゼ活性の有意に増大された阻害をもたらす。従って本発明のカルバモイルエステルは、現在入手可能なコリンエステラーゼ阻害剤と比べてほとんど副作用を伴わずにコリンエステラーゼを阻害する方法で用いることができる。
【0188】
実施例17: カルバモイルエステルは複数回試行受動回避アッセイにてスコポラミン誘発記憶喪失を緩和する:
阻害回避は、作業の分離した性質が正確な薬理学的操作を可能にし、習得、固定、または思い出した情報もしくは学んだ知識を選択的に学習する能力を可能にするため、認知パフォーマンススクリーニングとして用いられる。この作業は、正常な未処置動物と、著しい記憶喪失を生み出すムスカリン性コリン作動性レセプターアンタゴニスト、スコポラミンの使用により記憶喪失にされた動物の両方にて中枢作用薬の促進効果を評価するために広く用いられている。
【0189】
これらの実験に用いられる阻害回避装置は、明チャンバー(light chamber)および暗チャンバー(dark chamber)からなり、これらをスライド式ギロチンドアを用いて連結した。トレーニングは、ラットを明チャンバー内に、ドアから見て外方に頭を向けて置くことを含んだ。10秒後、スライド式ドアを開け、暗チャンバーに入るまでの待ち時間を記録(最大100秒)した。ラットを暗チャンバーに入れたとき、明チャンバーに戻すまで金属グリッド床により持続的なフットショック(footshock)(0.4mA)を与えた。ラットが継続して100秒間明チャンバーにとどまるか、または最大5フットショックを受けるまで、この一連の事象を続けた。
【0190】
記憶力試験、すなわち阻害回避装置におけるラットの前事象を覚える能力を初期試験の24時間後に行った。ラットを明チャンバー内に、ドアから見て外方に頭を向けて置いた。10秒後ドアを開け、ラットが暗チャンバーに移動できるようにした。記憶力試験の間フットショックは行わなかった。暗チャンバーに入るまでの待ち時間を記録(最大900秒)し、記憶の指標として用いた。
【0191】
スコポラミン誘発記憶喪失へのカルバモイルエステルの効果を評価するために、阻害回避作業のトレーニングの30分前に生理食塩水またはスコポラミン塩酸塩(0.75mg/kg)をラットに注射した。トレーニング試行の直後に、生理食塩水またはカルバモイルエステルをラットに注射した。
【0192】
24時間後、スコポラミンまたは生理食塩水処置ラットにおける作業の記憶力を上記のように評価した。記憶力試験の前にラットに化合物(薬物)を全く投与せず、記憶力試験の間ショックも与えなかった。記憶力試験のために、ラットを明チャンバー内に置いた。15秒後、ドアを自動的に開け、暗分室に入るまでの待ち時間を測定した。暗チャンバーに入るまでの待ち時間は、この作業における記憶の主な指標である。カルバモイルエステルはこのプロトコールにて評価した。カルバモイルエステルおよびリバスチグミンをラットにi.p.注射した。以下の表は、各化合物の最も有効な量(待ち時間を最も増大させる用量)、最も有効な量における正常な(unimpaired)(生理食塩水)対照群と比較したパフォーマンスならびに正常に機能しない(スコポラミン)群と比較したパフォーマンスを概略する。
【表3】

【0193】
これらの結果は、本発明のカルバモイルエステルの全身投与が記憶喪失の動物モデルにおけるパフォーマンスを増大することを示す。
【0194】
均等
本発明がその好ましい具体的態様に関して特に示され、記載されている場合、形態および詳細における種々の変形が、特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱しないで、本明細書にてなされ得ることを当業者は理解するだろう。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む、コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステル。
【請求項2】
加水分解が酵素との反応により起こる、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項3】
酵素がコリンエステラーゼである、請求項2記載のカルバモイルエステル。
【請求項4】
コリンエステラーゼがアセチルコリンエステラーゼである、請求項3記載のカルバモイルエステル。
【請求項5】
コリンエステラーゼがブチリルコリンエステラーゼである、請求項3記載のカルバモイルエステル。
【請求項6】
加水分解が酸との反応により起こる、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項7】
カルバモイルエステルが以下の構造:
【化1】

[式中、
Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
およびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
を有する、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項8】
カルバモイルが(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・4−ピリジニルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・(2−フェニル)エチルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・[1−(1−ナフチル)エチル]カーバメートエステル、7−ブロモ−(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・n−ヘプチルカーバメートエステルまたはテトラヒドロイソキノリニルカーバメートエステルではない、請求項7記載のカルバモイルエステル。
【請求項9】
カルバモイルエステルが以下の化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
からなる群から選択される、請求項8記載のカルバモイルエステル。
【請求項10】
カルバモイルエステルが以下の化合物:
【化5】

【化6】

【化7】

からなる群から選択される、請求項9記載のカルバモイルエステル。
【請求項11】
カルバモイルエステルが以下の化合物:
【化8】

【化9】

からなる群から選択される、請求項10記載のカルバモイルエステル。
【請求項12】
薬理活性物質が中枢神経系作用物質である、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項13】
中枢神経系作用物質が記憶促進剤および認知促進剤からなる群から選択される、請求項12記載のカルバモイルエステル。
【請求項14】
薬理活性物質がアンフェタミン化合物である、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項15】
アンフェタミン化合物がアンフェタミンである、請求項14記載のカルバモイルエステル。
【請求項16】
アンフェタミン化合物がメタンフェタミンである、請求項14記載のカルバモイルエステル。
【請求項17】
薬理活性物質がコリン作動薬、アドレナリン作動薬、ノルアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬、セロトニン作動薬、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬、ヒスタミン作動薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウム・チャネル遮断薬、カルシウム・チャネル遮断薬、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ、向知性薬、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬、PDE IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、レセプター輸送調整剤、微量アミンレセプター・モジュレータ、ナトリウム/カルシウム交換遮断薬、シグマ・レセプター・モジュレータ、イミダゾリン・レセプター・モジュレータ、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、抗酸化剤および非ステロイド系抗炎症薬からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである、請求項1記載のカルバモイルエステル。
【請求項18】
コリン作動薬がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ブチリルコリンエステラーゼ阻害剤、コリン作動性アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、コリン作動性レセプターのアロステリック・モジュレータおよびオープン・チャネル遮断薬からなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項19】
アドレナリン作動薬がアルファ・レセプター・アゴニスト、ベータ・レセプター・アゴニスト、アルファ・レセプター・アンタゴニストおよびベータ・レセプター・アンタゴニストからなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項20】
ノルアドレナリン作動薬がノルエピネフリン再摂取阻害剤およびノルエピネフリン放出剤からなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項21】
セロトニン作動薬がセロトニン作動性アンタゴニスト、セロトニン作動性アゴニスト、セロトニン作動性再摂取阻害剤およびセロトニン放出剤からなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項22】
グルタミン酸作動薬がNMDAレセプターアゴニスト、NMDAレセプターアンタゴニスト、NMDAグリシン部位アゴニスト、NMDAグリシン部位アンタゴニスト、AMPAレセプターアゴニストおよびAMPAレセプターアンタゴニストからなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項23】
GABA作動薬がGABAレセプターアンタゴニスト、GABAレセプターアゴニスト、ベンゾジアゼピン部位アゴニストおよびベンゾジアゼピン部位アンタゴニストからなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項24】
ドーパミン作動薬がドーパミン作動性アンタゴニスト、ドーパミン作動性アゴニスト、ドーパミン作動性再摂取阻害剤、ドーパミン作動性放出剤、ドーパミンおよびL−DOPAからなる群から選択される、請求項17記載のカルバモイルエステル。
【請求項25】
カルバモイルエステルを個体に投与することを特徴とする、個体を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、加水分解により個体の病態を治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む方法。
【請求項26】
薬理活性物質がコリン作動薬、アドレナリン作動薬、ノルアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬、セロトニン作動薬、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬、ヒスタミン作動薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウム・チャネル遮断薬、カルシウム・チャネル遮断薬、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ、向知性薬、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬、PDE IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、レセプター輸送調整剤および微量アミンレセプター・モジュレータからなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
薬理活性物質により治療される個体の病態が中枢神経系病態、末梢神経系病態および自律神経系病態からなる群から選択される少なくとも一つの病態である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
中枢神経系病態がパーキンソン病、記憶障害および認知障害からなる群から選択される少なくとも一つの病態である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
記憶障害がヒトにおけるアルツハイマー病、加齢性記憶喪失、記憶固定障害、短期記憶障害、軽度認知障害および多発性硬化症からなる群から選択される少なくとも一つの病態と関連する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
コリンエステラーゼを阻害し、それにより個体における神経系病態を治療するカルバモイルエステルを個体に投与することを特徴とする、個体における神経系病態を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、加水分解により個体における神経系病態をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む方法。
【請求項31】
アセチルコリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体における中枢神経系病態を治療することを特徴とする、個体の中枢神経系病態を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質がアンフェタミン化合物およびメタンフェタミン化合物からなる群から選択され、その薬理活性物質が個体における中枢神経系病態をさらに治療することができる方法。
【請求項32】
アンフェタミン化合物がアンフェタミンである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
メタンフェタミン化合物がメタンフェタミンである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
カルバモイルエステルを個体に投与することを特徴とする、個体におけるアセチルコリンを増大させる方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、それによりアセチルコリンを増大させ、加水分解により個体におけるアセチルコリンをさらに増大させる薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む方法。
【請求項35】
アセチルコリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体におけるアセチルコリンを増大させることを特徴とする、個体のアセチルコリンを増大させる方法であって、該カルバモイルエステルが、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質がアンフェタミン化合物およびメタンフェタミン化合物からなる群から選択される方法。
【請求項36】
カルバモイルエステルを個体に投与することを特徴とする、個体におけるコリン作動性欠乏を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、それにより個体におけるコリン作動性欠乏を治療し、加水分解により個体におけるコリン作動性欠乏をさらに治療する薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む方法。
【請求項37】
個体におけるコリン作動性欠乏がアルツハイマー病である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
コリンエステラーゼを阻害するカルバモイルエステルを個体に投与し、それにより個体における記憶障害を治療することを特徴とする、個体の記憶障害を治療する方法であって、該カルバモイルエステルが、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、該薬理活性物質が個体における記憶障害をさらに治療することができる方法。
【請求項39】
個体における記憶障害が記憶固定障害、長期記憶障害および短期記憶障害からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
個体がヒトである、請求項38記載の方法。
【請求項41】
記憶障害がアルツハイマー病、加齢性記憶喪失、軽度認知障害および多発性硬化症からなる群から選択される少なくとも一つの病態と関連する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
薬理活性物質がアンフェタミン化合物である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
アンフェタミン化合物がアンフェタミンである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
メタンフェタミン化合物がメタンフェタミンである、請求項42記載の方法。
【請求項45】
カルバモイルエステルを組織に投与することを特徴とする、薬理活性物質を組織に送達する方法であって、該カルバモイルエステルが、コリンエステラーゼを阻害し、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含み、それにより薬理活性物質を組織に送達する方法。
【請求項46】
組織がヒトにおけるものである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
薬理活性物質がアンフェタミン化合物である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
薬理活性物質が記憶促進剤である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
薬理活性物質が認知促進剤である、請求項45記載の方法。
【請求項50】
薬理活性物質がコリン作動薬、アドレナリン作動薬、ノルアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬、セロトニン作動薬、グルタミン酸作動薬、GABA作動薬、ヒスタミン作動薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、COMT阻害剤、ベータ・セクレターゼ阻害剤、ガンマ・セクレターゼ阻害剤、カリウム・チャネル遮断薬、カルシウム・チャネル遮断薬、アデノシン・レセプター・モジュレータ、カンナビノイド・レセプター・モジュレータ、向知性薬、神経ペプチド経路モジュレータ、神経栄養薬、PDE IV阻害剤、ホスファターゼ/カルシニューリン阻害剤、レセプター輸送調整剤および微量アミンレセプター・モジュレータからなる群から選択される少なくとも一つのメンバーである、請求項45記載の方法。
【請求項51】
コリンエステラーゼを阻害し、加水分解により薬理活性物質の少なくとも一つの成分となるアミン基を含む、カルバモイルエステルからなる医薬組成物。
【請求項52】
カルバモイルエステルが以下の構造:
【化10】

[式中、
Aは非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
およびRはそれぞれ、独立して、または組み合わされて、水素、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アラルキル、置換アラルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアラルキル、置換ヘテロアラルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非置換シクロアルキル、置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される]
を有する、請求項51記載の医薬組成物。
【請求項53】
カルバモイルが(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・4−ピリジニルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・(2−フェニル)エチルカーバメートエステル、(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3,8−トリメチル−ピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・[1−(1−ナフチル)エチル]カーバメートエステル、7−ブロモ−(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オール・n−ヘプチルカーバメートエステルまたはテトラヒドロイソキノリニルカーバメートエステルではない、請求項52記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−509152(P2007−509152A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536710(P2006−536710)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/034548
【国際公開番号】WO2005/042475
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(503077350)センション,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】