説明

コレステリック液晶組成物

【課題】植物性の原料を用い、室温や体温付近でコレステリック相を有し、人の唇や皮膚に塗布した際に美的装飾効果を呈する液晶組成物及び該組成物を含む化粧料を提供する。
【解決手段】γ−オリザノールの加水分解物とカルボン酸化合物とのエステル化生成物(1)、γ−オリザノールの加水分解物の水添物とカルボン酸化合物とのエステル化生成物(2)、およびγ−オリザノールの水添物とカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化生成物を含有するコレステリック液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温や体温付近で特定の波長領域の光を反射するコレステリック液晶組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶分子は、その液晶状態で螺旋構造を有する。そのため、コレステリック液晶相に光を照射すると、液晶分子の螺旋の回転方向の向きとピッチの長さに対応した特定の波長領域の円偏光の光を反射する。たとえば、可視光を照射した場合、液晶のピッチの長さに対応した青、緑、黄、赤の波長の光を選択的に反射する。これらの色調は、光の吸収により色を呈する顔料や染料とは異なり、また、見る角度により色調が変わる視角依存性を有する。さらに、コレステリック液晶のピッチの長さは、温度や化合物の種類により制御することができるため、可視光だけではなく、近赤外や紫外領域の光も選択的に反射することができる。
【0003】
こうしたコレステリック液晶の特性を利用して、広い波長域内でさまざまな波長の光を選択的に反射する材料が提供されている。例えば、液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物および装飾品である。また、液晶表示素子やホログラフィー素子などの光学素子における偏光板、補償板、カラーフィルタなどの光学フィルムなどにも提案されている。既存の材料であるコレステリック液晶顔料については、フレーク状のコレステリック液晶ポリマーや、マイクロカプセル化されたコレステリック液晶が使用されている。これらの用途としては自動車用塗料や化粧料などがある。
【0004】
従来、このようなコレステリック材料として、主に羊毛脂から抽出された動物由来の原料(コレステロール)が使用されてきたが、近年、環境や人体に対する配慮から、植物由来の原料が注目されている。植物由来の原料とは、植物の種子や植物体各部から抽出される成分のことであり、例えば米糠、米油、大豆、小麦、とうもろこし、ヤシ、綿実、菜種から得ることができる。液晶性を有する植物由来の原料としては、大豆に多く含まれる植物ステロールや米糠から得られるトリテルペンアルコールの誘導体などが知られている。
【0005】
特許DD252884(特許文献1)には、シトステロール誘導体が150℃以上の領域でコレステリック相を有すること、さらにその組成物が室温付近でコレステリック相を有することが記載されている。この組成物の主な成分はコレステロール誘導体であり、室温付近でコレステリック相を有するというコレステロール誘導体の特性が反映されている。
【0006】
特開平3−99094号公報(特許文献2)には、トリテルペンアルコールのエステル体がコレステリック相を有することが記載されているが、いずれのエステル体もコレステリック相領域が狭く、室温付近の広い範囲でコレステリック相を有する例は開示されていない。また、ここで使用されている各トリテルペンアルコールは、天然物の中に混合物として含まれており、抽出物を単品として使用することは工業的には困難である。
【0007】
特表2004−504291号公報(特許文献3)には、植物性不鹸化物としてステロール、スタノール、トリテルペンアルコールと長鎖脂肪酸とのエステルが記載されている。これらは化粧品や医薬品用途に用いられているが、特許文献3には液晶性に関する示唆はない。
【0008】
特開2006−176422号公報(特許文献4)には、米糠から得られるステロールエステルとして、植物ステロールやトリテルペンアルコールの長鎖脂肪酸エステルが化粧
品や医薬品用途として用いられることが記載されているが、液晶性に関する示唆はない。
【0009】
特開平5−310526号公報(特許文献5)にはステロールやトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルであるγ−オリザノールが記載され、特開昭57−62212号公報(特許文献6)にはトリテルペンアルコールとヒドロキシ安息香酸とのエステル体が記載されているが、いずれも液晶性に関しては何ら記載も示唆もされていない。
【0010】
なお、化粧品分野においては、特に唇や皮膚に塗布する化粧料用途として植物由来の原料から得られたコレステリック材料が用いられる場合、室温もしくは体温付近でコレステリック反射色を呈する材料が要求される。温度範囲としては0〜60℃、特に好ましくは20℃〜40℃付近で赤〜紫、好ましくは赤〜黄の発色が要求される。このように、コレステリック液晶材料が化粧品用途としてその美的装飾の効果を発揮するためには、温度に対する呈色範囲の制御が求められる。
【特許文献1】特許DD252884
【特許文献2】特開平3−99094号公報
【特許文献3】特表2004−504291号公報
【特許文献4】特開2006−176422号公報
【特許文献5】特開平5−310526号公報
【特許文献6】特開昭57−62212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の課題は、植物性の原料を用い、室温や体温付近でコレステリック相を有する液晶組成物を提供することである。第二の課題は、前記組成物の組成を変えることで、室温や体温付近で赤〜緑〜青〜紫の広範囲にわたるコレステリック反射帯域の反射色を制御することである。第三の課題は、化粧料として人の唇や皮膚に塗布した際に美的装飾効果を呈する液晶組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の植物ステロール、トリテルペンアルコール誘導体またはそれらの水添物からなる材料が、特に室温や体温付近の温度範囲で赤〜紫、より好ましくは赤〜青色の選択反射色を呈し、化粧料として人の唇や皮膚に塗布した際に高い美的装飾効果を発現することを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成させたものであり、具体的には、以下の構成が挙げられる。
【0013】
[1]γ−オリザノール(A)の加水分解物とカルボン酸化合物(B1)とのエステル化生成物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物とカルボン酸化合物(B2)とのエステル化生成物(2)、およびγ−オリザノール(A)の水添物とカルボン酸化合物(B3)とのエステル化生成物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化生成物を含有し、前記γ−オリザノール(A)が、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、少なくとも1種の植物ステロールと少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物であることを特徴とするコレステリック液晶組成物。
【0014】
[2] 前記カルボン酸化合物(B1)および(B2)が、それぞれ独立に直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b1)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b2)で表されるカルボン酸化合物であり、前記カルボン酸化合物(B3)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[1]に記載のコレ
ステリック液晶組成物。
【0015】
【化1】

[式(b1)および(b2)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8のアルキルもしくはアルコキシである。]
【0016】
[3] 前記γ−オリザノール(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物であることを特徴とする項[1]または[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0017】
【化2】

[式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。]
【0018】
[4] 前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、下記式(a1−1)〜(a1−5)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の植物ステロールと、下記式(a2−1)〜(a2−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物であることを特徴とする項[1]〜[3]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

[5] 前記エステル化生成物(1)、前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)からなる群より選ばれる2種以上のエステル化生成物を含有することを特徴とする項[1]〜[4]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【0021】
[6] 前記エステル化生成物(1)、前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)を含有し、該エステル化生成物(1)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物であり、該エステル化生成物(2)が、γ−オリザノール(A
)の加水分解物の水添物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物であり、該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物であることを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0022】
[7] 前記エステル化生成物(1)および前記エステル化生成物(3)を含有し、該エステル化生成物(1)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物、およびγ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含み、該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含むことを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0023】
[8] 前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)を含有し、該エステル化生成物(2)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物、およびγ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含み、該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含むことを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0024】
[9] 前記カルボン酸化合物(B1)、前記カルボン酸化合物(B2)および前記カルボン酸化合物(B3)の少なくとも1種が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和も
しくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0025】
[10] 前記カルボン酸化合物(B1)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽
和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0026】
[11] 前記カルボン酸化合物(B2)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0027】
[12] 前記カルボン酸化合物(B3)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[2]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0028】
[13] γ−オリザノール(A)とカルボン酸化合物(B4)とのエステル化生成物(4)をさらに含有することを特徴とする項[1]〜[12]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【0029】
[14] 前記カルボン酸化合物(B4)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする項[13]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0030】
[15] 大豆から抽出された植物ステロールとカルボン酸化合物(B5)とのエステル化生成物(5)をさらに含有することを特徴とする項[1]〜[14]のいずれかに記
載のコレステリック液晶組成物。
【0031】
[16] 前記カルボン酸化合物(B5)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b3)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b4)で表されるカルボン酸化合物であることを特徴とする項[15]に記載のコレステリック液晶組成物。
【0032】
【化5】

[式(b3)および(b4)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8のアルキルもしくはアルコキシである。]
[17] 前記γ−オリザノール(A)が、前記トリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルを60重量%以上の量で含むことを特徴とする項[1]〜[16]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【0033】
[18] 脂肪酸エステル類、炭化水素類、高級アルコール類、低級アルコール類、多価アルコール、シリコーン油類、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸および有機アミンから選ばれる少なくとも1種の溶剤をさらに含有することを特徴とする項[1]〜[17]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【0034】
[19] 項[1]〜[18]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物からなる芯材が、膜材により被覆されていることを特徴とするマイクロカプセル。
[20] 液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物および装飾品から選ばれる用途への、項[1]〜[18]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物の使用。
【0035】
[21] 項[1]〜[18]のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【0036】
[22] 体質顔料、着色剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、保存安定剤、防腐剤、希釈剤、可塑剤、保湿剤、粘度調整剤、感触調整剤、増粘剤、皮膜剤、エステル油、液体油脂、固体油脂、ロウ、水溶性高分子、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸、有機アミン、多価アルコール、多糖類、高分子エマルジョン、pH調整剤、ビタミン類、皮膚栄養剤、香料、抽出エキスおよび水からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする項[21]に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、植物性の原料からなり、室温や体温付近でコレステリック相を有し、組成を変えることにより、室温や体温付近で赤〜緑〜青〜紫の広範囲にわたるコレステリック反射帯域の反射色を制御することができ、人の唇や皮膚に塗布した際に美的装飾効果を呈する液晶組成物および該液晶組成物を含む化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係るコレステリック液晶組成物およびその用途について詳細に説明する。なお、以下においては、式(a1)で表される化合物を「化合物(a1)」と称することがあり、他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。また
、例えば「直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物」という表現は、
・直鎖状の炭素数3〜18の飽和の脂肪族カルボン酸化合物、
・直鎖状の炭素数3〜18の不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、
・分岐状の炭素数3〜18の飽和の脂肪族カルボン酸化合物、または
・分岐状の炭素数3〜18の不飽和の脂肪族カルボン酸化合物
を意味し、他の類似の表現でも同様に解釈する。
【0039】
〔コレステリック液晶組成物〕
本発明のコレステリック液晶組成物(以下、単に「本発明の液晶組成物」ともいう)は、γ−オリザノール(A)の加水分解物とカルボン酸化合物(B1)とのエステル化生成物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物とカルボン酸化合物(B2)とのエステル化生成物(2)、およびγ−オリザノール(A)の水添物とカルボン酸化合物(B3)とのエステル化生成物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化生成物を含有する。
【0040】
本発明の液晶組成物は、室温付近(10〜40℃程度)で広いコレステリック液晶相領域を有し、各構成成分の種類および組成比を変えることで、コレステリック相が反射する光の波長領域を制御することができる。
【0041】
上記γ−オリザノール(A)は、米糠から得られる植物性の原料であり、市販されているその成分は単一ではなく、主成分として、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、より具体的には、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物である。
【0042】
【化6】

式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。
【0043】
上記化合物(a1)としては、たとえば以下に示す化合物などが挙げられる。
【0044】
【化7】

上記化合物(a2)としては、たとえば以下に示す化合物などが挙げられる。
【0045】
【化8】

上記γ−オリザノール(A)は、一般的には、上記化合物(a1)の例示中の2〜3成分と上記化合物(a2)の例示中の2〜3成分とを主成分として含むが、用いる原料の入手先によって構成成分や組成比が異なることがある。なお、少量成分として主成分以外の上記例示化合物を含んでいる場合があり、また、上記例示化合物以外の異性体等を含んでいる場合もある。
【0046】
上記γ−オリザノール(A)は、上記トリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルを、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上の量で、また、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下の量で含むことが望ましい。
【0047】
上記γ−オリザノール(A)としては、市販の試薬を用いることができ、例えば、和光純薬工業社製、築野食品工業社製、築野ライスファインケミカルズ社製、理研ビタミン社製、オリザ油化社製および岡安商店社製のγ−オリザノールが挙げられる。
【0048】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物は、上記γ−オリザノール(A)を加水分解して得られ、かつ、少なくとも1種、好ましくは2種以上の植物ステロールと、少なくとも1種、好ましくは2種以上のトリテルペンアルコールとを含む混合物である。
【0049】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解は、公知の方法および条件で行なうことができる。具体的には、上記γ−オリザノール(A)に、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの水溶液を加えて反応させるか、あるいは前記水溶液とアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフランなどの親水性の溶媒とを同時に加えて反応させるか、あるいはメタノール、エタノール、プロパノールなどに水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどを溶解させた溶液を加えて反応させることで、フェルラ酸塩、植物ステロールおよびトリテルペンアルコールの混合物が生成する。次いで、有機溶媒による抽出を行い、得られた抽出物を中和および水で洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに有機溶媒を留去することにより、目的とする植物ステロールとトリテルペンアルコールの混合物(加水分解物)を得ることができる。
【0050】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物である植物ステロールとしては、たとえば、以下の化合物(a1−1)〜(a1−4)などが挙げられる。
【0051】
【化9】

上記加水分解物には、上記植物ステロールとして、上記化合物(a1−1)〜(a1−4)以外の異性体が含まれていてもよい。
【0052】
また、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物であるトリテルペンアルコールとしては、たとえば、以下の化合物(a2−1)〜(a2−4)などが挙げられる。
【0053】
【化10】

上記加水分解物には、上記トリテルペンアルコールとして、上記化合物(a2−1)〜(a2−4)以外の異性体が含まれていてもよい。
【0054】
上記γ−オリザノール(A)の水添物または上記γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物は、公知の方法および条件で水素添加することにより得ることができる。水素添加方法の具体的な方法および条件としては、γ−オリザノール(A)またはγ−オリザノール(A)の加水分解物を、酢酸エチル、トルエン、ソルミックス等の有機溶媒に溶かし、パラジウム付活性炭を添加し、常圧のもと室温で接触水素化反応を行う。反応後は有機溶媒による抽出を行い、水で洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに有機溶媒を留去することにより、目的とするγ−オリザノール(A)の水添物またはγ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物を得ることができる。
【0055】
上記カルボン酸化合物(B1)および(B2)は、それぞれ独立に、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b1)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b2)で表されるカルボン酸化合物である。これらの中では、組成物のコレステリック相の領域を広げる効果があることから、化合物(b1)が好ましい。また、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物としては、好ましくは炭素数が6〜18であり、より好ましくは8〜13および18である。炭素数が前記範囲であることにより、組成物の結晶化を比較的防ぎ、保存安定化に寄与する。
【0056】
【化11】

式(b1)および(b2)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜6のアルキルもしくはアルコキシである。R’およびR”の炭素数が前記範囲であると、前記範囲外の炭素数の場合と比較し、組成物
の融点をより下げる、あるいは、相溶性をより向上させるという効果が期待できる。
【0057】
上記カルボン酸化合物(B3)は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18、好ましくは6〜18、より好ましくは8〜13および18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物である。炭素数が前記範囲であることにより、組成物の融点をより下げる、あるいは、相溶性をより向上させるという効果が期待できる。
【0058】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物と上記カルボン酸化合物(B1)とのエステル化生成物(1)は、該加水分解物と該化合物(B1)とを公知の方法および条件でエステル化させることにより得ることができる。エステル化の方法としては、一般的には、硫酸またはp−トルエンスルホン酸などの酸触媒やジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤の存在下でカルボン酸とアルコールとを縮合反応させる方法や、酸ハロゲン化物とアルコールとを反応させる方法などが挙げられる。具体的には、上記カルボン酸化合物(B1)の塩素化物に、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの第三級アミンの存在下で、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物である植物ステロールおよびトリテルペンアルコールの混合物を室温で反応させる。次いで、有機溶媒による抽出を行い、得られた抽出物を水洗した後、カラムクロマトグラフィで精製することにより、目的とするエステル化生成物を得ることができる。
【0059】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と上記カルボン酸化合物(B2)とのエステル化生成物(2)、および上記γ−オリザノール(A)の水添物と上記カルボン酸化合物(B3)とのエステル化生成物(3)についても、上記エステル化生成物(1)と同様の方法および条件で得ることができる。
【0060】
本発明の液晶組成物は、上記エステル化生成物(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくは2種以上のエステル化生成物を含有することにより、室温付近(10〜40℃程度)で広いコレステリック液晶相域を有し、目的に応じた螺旋ピッチを発現させることができる。
【0061】
上記エステル化生成物(1)、(2)および(3)の好ましい組み合わせとしては、たとえば、
・γ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(1)、
γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と上記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物(2)、および
γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)
を含む組み合わせ、
・γ−オリザノール(A)の加水分解物と上記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物(1)、
γ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(1)、および
γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)
を含む組み合わせ、
・γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と上記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物(2)、
γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(2)、および
γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしく
は不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)
を含む組み合わせ、
・γ−オリザノール(A)の加水分解物と上記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物(1)、
γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)
を含む組み合わせ、
・γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と上記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物(2)、および
γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物(3)
を含む組み合わせ
などが挙げられる。
【0062】
また、上記カルボン酸化合物(B1)、上記カルボン酸化合物(B2)および上記カルボン酸化合物(B3)の少なくとも1種が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることが好ましい。炭素数が18であることにより、組成物の融点をより下げる、あるいは、結晶化を比較的防ぎ保存安定性をより向上させるという効果が期待できる。
【0063】
本発明の液晶組成物は、上記γ−オリザノール(A)とカルボン酸化合物(B4)とのエステル化生成物(4)をさらに含有してもよい。
上記カルボン酸化合物(B4)は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18、好ましくは6〜18、より好ましくは8〜13および18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物である。炭素数が前記範囲であることにより、組成物の融点をより下げる、あるいは、相溶性をより向上させるという効果が期待できる。
【0064】
上記γ−オリザノール(A)と上記カルボン酸化合物(B4)とのエステル化生成物(4)も、上記エステル化生成物(1)と同様の方法および条件で得ることができる。
本発明の液晶組成物において、上記エステル化生成物(4)は、上記エステル化生成物(1)〜(3)の合計100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲で含有させることができる。上記エステル化生成物(4)を前記範囲の量で含有させることにより、得られた液晶組成物のコレステリック相領域を制御することができる。
【0065】
本発明の液晶組成物は、大豆から抽出された植物ステロールとカルボン酸化合物(B5)とのエステル化生成物(5)をさらに含有してもよい。
上記大豆から抽出された植物ステロールとしては、たとえば、β−シトステロールやカンペステロール、スティグマステロールなどがあり、単体または混合物として入手できる。例えば、タマ生化学株式会社、東京化成工業株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社から購入できる。
【0066】
上記カルボン酸化合物(B5)は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b3)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b4)で表されるカルボン酸化合物であり、化合物(b3)が好ましい。また、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物としては、好ましくは炭素数が6〜18であり、より好ましくは8〜18である。炭素数が前記範囲であることにより、組成物の結晶化を比較的防ぎ、保存安定化に寄与する。
【0067】
【化12】

式(b3)および(b4)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8、好ましくは3〜5のアルキルもしくはアルコキシである。
【0068】
上記大豆から抽出された植物ステロールとカルボン酸化合物(B5)とのエステル化生成物(5)は、公知の方法および条件で、該植物ステロールと該カルボン酸化合物(B5)とをエステル化させることにより得ることができる。
【0069】
本発明の液晶組成物において、上記エステル化生成物(5)は、上記エステル化生成物(1)〜(3)の合計100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲で含有させることができる。上記エステル化生成物(5)を前記範囲の量で含有させることにより、組成物の結晶化を比較的防ぎ、保存安定化に寄与する。
【0070】
本発明の液晶組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、たとえば、上記エステル化生成物(1)〜(5)以外の植物由来の成分(以下「他の植物由来の成分」ともいう。)および溶剤などが挙げられる。
【0071】
上記他の植物由来の成分の具体例として、築野食品工業(株)製「ライステロールエステル」などが挙げられる。
上記溶剤として、たとえば、脂肪酸エステル類(上記エステル化生成物を除く)、炭化水素類、高級アルコール類、低級アルコール類、多価アルコール、シリコーン油類、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸および有機アミンなどが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
〔用途〕
本発明のコレステリック液晶組成物の用途としては、色材一般、たとえば、液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インクなどが挙げられる。また、化粧料、偽造防止用印刷物、装飾品に使用することもできる。これらの中でも、室温や体温付近の温度範囲で赤〜紫、より好ましくは赤〜黄色の選択反射色を呈することから、化粧料として好適に用いることができる。
【0073】
本発明の化粧料は、上述した本発明のコレステリック液晶組成物を含む。また、上記液晶組成物以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、一般的な化粧品に用いられる成分、たとえば、体質顔料、着色剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、保存安定剤、防腐剤、希釈剤、可塑剤、保湿剤、粘度調整剤、感触調整剤、増粘剤、皮膜剤、エステル油、液体油脂、固体油脂、ロウ、水溶性高分子、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸、有機アミン、多価アルコール、多糖類、高分子エマルジョン、pH調整剤、ビタミン類、皮膚栄養剤、香料、種々の抽出エキス、水などを、用途に応じて含有してもよい。
【0074】
体質顔料としては、たとえば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、マイカ、セリサイト、タルクなどが挙げられる。これらの体質顔料は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
着色剤としては、たとえば、溶性アゾ、不溶性アゾ、ポリアゾ、フタロシアニン、アン
スラキノン、チオインジゴ、ペリレン、ペリノン、ジオキサジン、キナクリドン、イソインドリノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ペリノン、キノフタロン、アゾ、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0076】
酸化防止剤としては、たとえば、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)などが挙げられる。
【0077】
紫外線吸収剤としては、たとえば、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類などが挙げられる。
【0078】
保湿剤としては、たとえば、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、低級アルコール類、グリコール類、グリセロール類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、植物ステロール誘導体類等が挙げられる。
【0079】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィシャトロプスワックス等の炭化水素類;モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;ホホバ油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル油類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;シトステロール誘導体;カンペステロール誘導体;スティグマステロール誘導体;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類;ソルビットなどが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
粘度調整剤および感触調整剤として、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体;微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン)が挙げられる。
【0081】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル);ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。
【0082】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコールのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド);ポリエチレンイミン;カチオンポリマーが挙げられる。
【0083】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0084】
本発明の化粧料は、例えば、口紅、リップクリーム、リップグロス、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、液状ファンデーションに好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<合成例1>
(1)岡安商店社製γ−オリザノール50.0g、水酸化カリウム(85%)30g(0.45mol)およびエタノール500mlの混合物を加熱還流下で10時間攪拌した。エタノールを留去し、酢酸エチルによる抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄した。次いで、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することにより茶褐色の固体(γ−オリザノールの加水分解物)を得た。
【0086】
(2)次に、下記化学式(b−i)で表されるtrans-4-ペンチルシクロヘキサンカルボ
ン酸20.0g(0.1mol)、ピリジン0.5mlおよびトルエン300mlの混合物に、塩化チオニル20mlを窒素雰囲気下で滴下し、80℃以下で1時間加熱攪拌した。減圧下で溶媒を蒸留除去し、trans-4-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸クロライドを得た。
【0087】
【化13】

(3)次に、(1)で得られたγ−オリザノールの加水分解物2.2g(5mmol)
、ピリジン0.5ml、少量のジメチルアミノピリジンおよびトルエン50mlの混合物に、(2)で得られたtrans-4-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸クロライド1.2g(5mmol)を室温で滴下し、室温で4時間攪拌した。反応後、析出した不溶物を濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、溶出液:トルエン/ヘプタン(容量比:3/2)]で精製することによりエステル化生成物(1−1)2.0gを得た。
【0088】
<合成例2>
合成例1と同様にしてγ−オリザノールを加水分解した。次いで、合成例1と同様にして下記化学式(b−ii)で表されるオレイン酸を塩素化してオレイン酸クロライドを得た。
【0089】
【化14】

次いで、前記加水分解物4.4g(10mmol)、ピリジン1.0mlおよびトルエン50mlの混合物に、前記オレイン酸クロライド3.6g(12mmol)を室温で滴下し、室温で3時間攪拌した。反応後、析出した不溶物を濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、溶出液:トルエン/ヘプタン(容量比:3/2)]で精製することによりエステル化生成物(1−2)4.0gを得た。
【0090】
<合成例3>
合成例1と同様にしてγ−オリザノールを加水分解した。次いで、得られた加水分解物2.2g(5mmol)、トルエン20ml、ソルミックス5ml、および5%パラジウム付活性炭(5%Pd/C)0.1gの混合物を、水素雰囲気下、室温で6時間攪拌した。反応後、Pd/Cを濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することによりγ−オリザノールの加水分解物の水添物を得た。得られた加水分解物の水添物2.0gと下記化学式(b−i)で表されるtrans-4-ペンチルシクロヘキサン
カルボン酸1.0gとを、合成例1と同様の方法および条件でエステル化させることによりエステル化生成物(2−1)1.8gを得た。
【0091】
【化15】

<合成例4>
合成例3と同様にして得られたγ−オリザノールの加水分解物の水添物4.4g(10mol)と下記化学式(b−ii)で表されるオレイン酸3.3gとを、合成例2と同様の方法および条件でエステル化させることによりエステル化生成物(2−2)を3.6g得た。
【0092】
【化16】

<合成例5>
γ−オリザノール6.2g(10mmol)、トルエン30ml、ソルミックス10m
l、および5%パラジウム付活性炭(5%Pd/C)0.3gの混合物を、水素雰囲気下、室温で6時間攪拌した。反応後、Pd/Cを濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することによりγ−オリザノールの水添物を得た。得られたγ−オリザノールの水添物5.8gと下記化学式(b−ii)で表されるオレイン酸3.1gとを、合成例2と同様の方法および条件でエステル化させることによりエステル化生成物(3−1)4.8gを得た。
【0093】
【化17】

<合成例6>
合成例5と同様にしてγ−オリザノールの水添物を得た。得られたγ−オリザノールの水添物6.2g(10mmol)と下記化学式(b−iii)で表されるデカン酸1.9g
とを、合成例2と同様の方法および条件でエステル化させることによりエステル化生成物(3−2)5.0gを得た。
【0094】
【化18】

〔実施例1〕
エステル化生成物(1−2)30重量部、エステル化生成物(2−1)40重量部、およびエステル化生成物(3−1)30重量部を混合して液晶組成物を調製した。得られた組成物は、室温で緑色の反射色を示し、35℃で緑〜オレンジ色の反射色を示し、40℃でも緑〜オレンジ色の反射色を示した。なお、反射色は目視観察による判断である。結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例2〜9〕
表1に示す組成を有する組成物を調製し、実施例1と同様にして反射色を調べた。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

〔実施例10〕
エステル化生成物(2−1)41重量部、エステル化生成物(3−2)31重量部、および築野食品工業(株)製「ライステロールエステル」の28重量部を混合して液晶組成物を調製した。得られた組成物は、室温で緑色の反射色を示し、35℃でオレンジ色の反射色を示し、40℃でも赤色の反射色を示した。結果を表2に示す。
【0097】
〔実施例11〕
表2に示す組成を有する組成物を調製し、実施例10と同様にして反射色を調べた。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−オリザノール(A)の加水分解物とカルボン酸化合物(B1)とのエステル化生成物(1)、
γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物とカルボン酸化合物(B2)とのエステル化生成物(2)、および
γ−オリザノール(A)の水添物とカルボン酸化合物(B3)とのエステル化生成物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化生成物を含有し、
前記γ−オリザノール(A)が、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、
前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、少なくとも1種の植物ステロールと少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物である
ことを特徴とするコレステリック液晶組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸化合物(B1)および(B2)が、それぞれ独立に直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b1)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b2)で表されるカルボン酸化合物であり、
前記カルボン酸化合物(B3)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物である
ことを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶組成物。
【化1】

[式(b1)および(b2)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8のアルキルもしくはアルコキシである。]
【請求項3】
前記γ−オリザノール(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のコレステリック液晶組成物。
【化2】

[式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。]
【請求項4】
前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、下記式(a1−1)〜(a1−4)で表
される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の植物ステロールと、下記式(a2−1)〜(a2−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【化3】

【化4】

【請求項5】
前記エステル化生成物(1)、前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)からなる群より選ばれる2種以上のエステル化生成物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項6】
前記エステル化生成物(1)、前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)を含有し、
該エステル化生成物(1)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物であり、
該エステル化生成物(2)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物であり、
該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物であることを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項7】
前記エステル化生成物(1)および前記エステル化生成物(3)を含有し、
該エステル化生成物(1)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物、およびγ−オリザノール(A)の加水分解物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含み、
該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含むことを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項8】
前記エステル化生成物(2)および前記エステル化生成物(3)を含有し、
該エステル化生成物(2)が、γ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と前記式(b1)で表されるカルボン酸化合物とのエステル化生成物、およびγ−オリザノール(A)の加水分解物の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含み、
該エステル化生成物(3)が、γ−オリザノール(A)の水添物と直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和のカルボン酸化合物とのエステル化生成物を含むことを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸化合物(B1)、前記カルボン酸化合物(B2)および前記カルボン酸化合物(B3)の少なくとも1種が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項10】
前記カルボン酸化合物(B1)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項11】
前記カルボン酸化合物(B2)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項12】
前記カルボン酸化合物(B3)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項13】
γ−オリザノール(A)とカルボン酸化合物(B4)とのエステル化生成物(4)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項14】
前記カルボン酸化合物(B4)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項11に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項15】
大豆から抽出された植物ステロールとカルボン酸化合物(B5)とのエステル化生成物(5)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項16】
前記カルボン酸化合物(B5)が、直鎖状もしくは分岐状の炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸化合物、下記式(b3)で表されるカルボン酸化合物または下記式(b4)で表されるカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項15に記載のコレステリック液晶組成物。
【化5】

[式(b3)および(b4)中、R’およびR”は、それぞれ独立に直鎖状の炭素数1〜8のアルキルもしくはアルコキシである。]
【請求項17】
前記γ−オリザノール(A)が、前記トリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルを60重量%以上の量で含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項18】
脂肪酸エステル類、炭化水素類、高級アルコール類、低級アルコール類、多価アルコール、シリコーン油類、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸および有機アミンから選ばれる少なくとも1種の溶剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物からなる芯材が、膜材により被覆されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項20】
液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物および装飾品から選ばれる用途への、請求項1〜18のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物の使用。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれかに記載のコレステリック液晶組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項22】
体質顔料、着色剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、保存安定剤、防腐剤、希釈剤、可塑剤、保湿剤、粘度調整剤、感触調整剤、増粘剤、皮膜剤、エステル油、液体油脂、固体油脂、ロウ、水溶性高分子、環状エーテル、ケトン、アミド、アミノ酸、有機アミン、多価アルコール、多糖類、高分子エマルジョン、pH調整剤、ビタミン類、皮膚栄養剤、香料、抽出エキスおよび水からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項21に記載の化粧料。

【公開番号】特開2010−90206(P2010−90206A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259173(P2008−259173)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】