説明

コンデンサおよびその製造方法

【課題】ケース及び端子板とコンデンサ素子との間に樹脂層を均一化して耐湿性を高め、端子板の固定強度を向上させ、堅牢なコンデンサを提供する。
【解決手段】少なくとも内壁面に複数のリブ(14A、14B)を備え、コンデンサ素子(81、82)が収納されるケース(2)と、前記リブと係合する凹部(32、34)とともに前記リブを係止する係止部(36)を備えて前記ケースに設置され、前記コンデンサ素子と接続された電極端子(20、22)を備えた端子板(18)と、前記ケース内に充填されて前記ケースと前記コンデンサ素子及び前記端子板とを固定する封止樹脂(58)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば、乾式の金属化フィルムコンデンサ素子を用いたコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力電源などのパワーエレクトロニクス分野では平滑化素子などに金属化フィルムコンデンサが用いられている。この金属化フィルムコンデンサには高耐電圧、大容量のものが求められている。高耐圧化や大容量化のため、金属化フィルムコンデンサではポリプロピレンフィルムにアルミニウムなどを蒸着させた金属化フィルムが使用され、絶縁油を含浸した湿式の金属化フィルムコンデンサ素子が用いられていた。しかしながら、絶縁油を含浸した素子は大型で重く、可燃性の絶縁油を用いたものは燃えやすいという欠点があった。そこで、このような欠点が無い乾式の金属化フィルムコンデンサが使用されている。この乾式の金属化フィルムコンデンサでは、端子板とともにケース内に封止樹脂により素子を固定している。端子板には電極端子が備えられ、ケース内のコンデンサ素子と接続されている。
【0003】
このような乾式の金属化フィルムコンデンサでは、ケース内の端子板及びコンデンサ素子の配置に関し、下記特許文献には樹脂ケースの内側に溝部を設けて端子板を係合させるとともに、端子板を樹脂ケース内の段部によって位置決めすることが記載されている。この特許文献には、充填した封止樹脂が硬化するまでに浮上する気泡を樹脂ケース外に逃がすための脱泡孔を端子板に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−16926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンデンサ素子を湿度から防護するには、ケースに充填された封止樹脂をコンデンサ素子の全面とケース及び端子板との間に回り込ませ、コンデンサ素子の全面を樹脂層で覆うことが必要である。このような封止樹脂の回り込みは、コンデンサ素子とケース及び端子板とを強固に固定する上からも不可欠である。
【0006】
しかしながら、ケースの容積を大きくし、コンデンサ素子との間に広い空間部を形成することは、封止樹脂の流動空間を確保する上で有効であるが、多くの封止樹脂が必要となり、ケースの容積に比較してコンデンサ素子の体積が小さく、体積当たりの静電容量が小さくなるという不都合がある。同一の静電容量では容積が大きくなり、非効率である。
【0007】
ケースに封止樹脂によって固定された端子板には電極端子が設けられており、この電極端子には外部回路が接続される。接続に際し、相当な応力を受けることになり、電車などの移動体に設置された場合には、設置条件に依存するものの、外部からの振動や衝撃による応力も無視できない。このような応力や衝撃が電極端子を通じて作用する端子板は、ケース内の封止樹脂と密着し、強固に固定することが、コンデンサの耐久性や信頼性を維持する上で必要である。
【0008】
そこで、本発明のコンデンサおよびその製造方法の目的は、上記課題に鑑み、ケース及び端子板とコンデンサ素子との間に樹脂層を均一化して耐湿性を高め、端子板の固定強度を向上させ、堅牢なコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサは、少なくとも内壁面に複数のリブを備え、コンデンサ素子が収納されるケースと、前記リブと係合する凹部とともに前記リブを係止する係止部を備えて前記ケースに設置され、前記コンデンサ素子と接続された電極端子を備えた端子板と、前記ケース内に充填されて前記ケースと前記コンデンサ素子及び前記端子板とを固定する封止樹脂とを備える。
【0010】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記端子板が前記係止部を備えていない単一または複数の凹部を備え、該凹部に前記リブを貫通させてもよい。
【0011】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記複数のリブが等間隔に設けられてもよい。
【0012】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記複数のリブは、前記ケースの内底面に中心部から前記内壁面に向かって放射状に形成されてもよい。
【0013】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記端子板は、前記ケースの内部に設置されるベース部と、該ベース部に形成されて前記電極端子が固定されて前記ケースの内壁との間に溝部を生成させるアイランド部とを備え、前記溝部に前記封止樹脂の樹脂層を備えてもよい。
【0014】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記端子板は、一対の電極端子間を結ぶ仮想線と直交方向に前記仮想線を挟んで対称形または非対称形の切欠き部を備え、この切欠き部内に前記封止樹脂の樹脂層を備えてもよい。
【0015】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記端子板は、前記ケースの内壁面との間に一定幅の間隔を設けて立設され、前記電極端子の接続部に接続されたリード線を挿通させるリード線挿通部を備え、前記封止樹脂に固定される立壁部を備えてもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法は、内底面及び内壁面に複数のリブを備えるケースを形成し、前記リブと係合する凹部とともに前記リブを係止する係止部を備えて前記ケースに設置され、コンデンサ素子と接続された電極端子を備えた端子板を形成し、前記ケース内に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記ケースと前記コンデンサ素子との間の空間を満たし硬化させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンデンサおよびその製造方法によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0018】
(1) ケース内壁面のリブと端子板の凹部との係合により、ケースに対する端子板の配置位置が決定されるとともにケースと端子板とを固定でき、ケース載置後の樹脂注入工程においても端子板の移動が阻止されるので、作業性を向上させることができる。
【0019】
(2) 凹部の一部に設けられた係止部にリブの終端部を係止させることができ、この係止により高さ方向の位置合わせを容易に行うことができる。
【0020】
(3) ケース及び端子板とコンデンサ素子との間に樹脂層が均一に形成されるので、コンデンサの耐湿性を高めることができる。
【0021】
(4) 端子板の封止樹脂によるケース内の固定強度を向上させることができ、堅牢なコンデンサを提供できる。
【0022】
(5) ケースの内壁面に複数のリブを備えたので、リブによってケース強度を向上させることができ、複数のリブはケース内壁面に等間隔に配置すれば、ケース強度をより向上させることができる。
【0023】
(6) 端子板がケース開口部に配置され、ケース開口部が端子板で覆われるので、ケース内の耐湿性を向上させることができる。
【0024】
(7) 端子板に立壁を備えれば、この立壁と樹脂との密着により端子板と樹脂との密着性を向上させることができる。
【0025】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態に係るコンデンサケースの一例を示す図である。
【図2】端子板の一例を示す図である。
【図3】端子板を設置したケースを示す図である。
【図4】図3のIVA −IVA 線断面を示す図である。
【図5】図3のVA−VA線断面を示す図である。
【図6】コンデンサの一例を示す縦断面図である。
【図7】図6のVIIA−VIIA線に沿って切断して示す断面図、コンデンサの等価回路を示す図、リード線の通過部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態について、図1を参照する。図1はコンデンサケースの一例を示し、(A)はケース平面を示し、(B)はIB−IB線に沿って切断した断面を示している。
【0028】
ケース2は、本発明のコンデンサに用いられるコンデンサケースの一例である。このケース2は合成樹脂で成形された円筒状の成形体であって、底部4と側壁部6とで構成され、このケース2にはコンデンサ素子81、82(図6)を収納する収納空間10が形成されている。
【0029】
このケース2の内底面には、中央に円柱状のハブ12を備え、このハブ12から放射状に複数のリブ14Aが形成されている。この実施の形態では、8本のリブ14Aがハブ12とケース2の内壁面との間に形成され、この実施の形態の一例である各リブ14A間の角度は45〔度〕に設定されている。このようにリブ14Aを等間隔に配置することにより、ケース2の強度を向上させることができる。
【0030】
ケース2の側壁部6の内壁面には、各リブ14Aの終端を延長してリブ14Bがケース2の開口方向に向かって平行に形成されている。
【0031】
各リブ14Bの終端部は図1の(B)に示すように、開口部16の縁部からケース2の僅かに内側に設定されている。開口部16の縁部と各リブ14Bの終端との間には幅Wが設定され、この幅Wの内壁面はリブ14Bが形成されていない湾曲面となっている。
【0032】
このケース2の開口部16にはリブ14Bに支持される端子板18(図2)が設置され、この端子板18はケース2の開口部16に設置され、この開口部16を閉じる。
【0033】
この端子板18について、図2を参照する。図2は端子板の一例を示し、(A)は端子板の平面、(B)は端子板の一側面、(C)は端子板の背面を示している。
【0034】
この端子板18は図2の(A)に示すように、合成樹脂により電極端子20、22をインサート成形した成形体である。この端子板18には径大な円弧を持つベース部24が備えられ、このベース部24から立ち上がったアイランド部26が形成されている。
【0035】
電極端子20、22は端子板18のベース部24およびアイランド部26を貫通させた端子部材であり、導電性の良い金属で形成されている。各電極端子20、22はベース部24およびアイランド部26で支持されているとともに、アイランド部26の上面に形成された径小な支持部28によって補強支持されている。また、支持部28によって電極端子20、22との縁面距離をとっており、電極端子20、22間の放電を防止することができる。さらには、長期に渡って端子板18を上向きにコンデンサを配置した場合に、埃などが端子板18上に溜まってきても、支持部28により段部になっているため、埃による端子間の通電を防止することができる。各電極端子20、22にはねじ孔30が形成されている。
【0036】
ベース部24は、ケース2の開口部16に挿入可能な直径を持つ円弧を備えている。この円弧の直径は、ケース2の開口部16の内径より僅かに小さく形成されている。このベース部24には、電極端子20、22の中心間を貫く仮想線上にアイランド部26を挟んで一対の凹部32が形成されている。この凹部32は半円状の切欠きであり、既述のリブ14Bが挿入され、リブ14Bと係合する。また、各凹部32からほぼ45〔度〕だけ変移した位置には、同様の凹部34とともに係止部36が形成されている〔図2の(B)〕。凹部34にはリブ14Bが挿入され、このリブ14Bの終端部で係止部36が係止され、端子板の配置位置が定まる。
【0037】
アイランド部26には電極端子20、22の中心間を貫く仮想線と直交する方向に上側分離壁38が形成され、この上側分離壁38は電極端子20、22より高く設定されている。このアイランド部26および既述のベース部24には、上側分離壁38を挟んで一対の切欠き部40が形成されている。この実施形態では、切欠き部40は上側分離壁38の幅方向の縁部を頂点とするU字形であるとともに、ほぼ90〔度〕の広がりを持つ扇形状である。上側分離壁38は電極端子20、22より高く設けられていることが好ましく、更には各電極端子20、22の接続部を超える高さであってもよい。本実施の形態のコンデンサをブスバーなどで複数連結する場合、電極端子20、22に連結したブスバー同士の通電を上側分離壁38で防止することができる。
【0038】
ベース部24の背面側には、図2の(B)および(C)に示すように、貫通させた電極端子20、22の周囲に径小な支持部42が形成され、アイランド部26の上面側と同様に電極端子20、22が補強支持されている。
【0039】
電極端子20、22の間には下側分離壁44が形成され、この下側分離壁44は、電極端子20、22の間に設置された壁部46と、この壁部46から切欠き部40に向かって屈曲させた壁部48とを備えている。ベース部24の周縁側には、リード線を挿通させるための間隔50を設けて一対の立壁52が形成されている。これら下側分離壁44および各立壁52は同一の高さに設定されている。間隔50はリード線挿通部の一例である。
【0040】
次に、ケースと端子板との係合関係について、図3、図4及び図5を参照する。図3は端子板を設置したケース平面を示し、図4は図3のIVA −IVA 線断面、図5は図3のVA−VA線断面を示している。
【0041】
ケース2の開口部16に端子板18を設置すると、図3に示すように、端子板18はケース2の開口部16にリブ14Bおよび凹部32、34により嵌合させることができる。リブ14Bと端子板18の各凹部32、34とが係合し、各係止部36はリブ14Bの端部に係止される。端子板18は、ケース2の既述の幅Wの湾曲面内に設置され、バランスよく支持される。
【0042】
図4の(A)は図3のIVA −IVA 線で切断した断面を示しており、これはリブ14Bと凹部32との係合状態を示している。この係合状態を拡大すると、図4の(B)に示すように、ケース2の内壁部と端子板18のアイランド部26との間にはベース部24の幅分の空間部54が形成されている。凹部32側では、空間部54が凹部32側に係止部36の無い分だけ、つまり係止部36の厚み分だけ拡大されている。この空間部54は、ベース部24でケース2内と底面側で分離されているものの、ベース部24の外径とケース2の内径との間に形成された隙間56を貫通路としてケース2の内部に通じ、さらには、切欠き部40(図2の(A))によりケース2内と通じている。これは封止樹脂58(図6)の通流ポートとなる。
【0043】
また、図5の(A)は図3のVA−VA線で切断した断面を示しており、これはリブ14Bと凹部34との係合状態を示している。この係合状態は図5の(B)に示すように、凹部34上に張り出している係止部36はリブ14Bの上端に係止されている。このような端子板18の係止は、90〔度〕の間隔で、電極端子20側の2箇所、電極端子22側の2箇所、計4箇所に設定され、安定した支持状態が得られる。
【0044】
また、本実施の形態においては、リブが45〔度〕毎と等間隔に設けられており、かつ、凹部32及び34も同じく45〔度〕毎に設けられている。このため、ケース2の何れの位置においても、ケース2と端子板18の位置合わせが可能となり、作業性が向上する。
【0045】
次に、既述のケース及び端子板を用いたコンデンサについて、図6および図7を参照する。図6はコンデンサの縦断面を示し、図7は各部の断面および等価回路を示している。
【0046】
このコンデンサ60では、図6に示すように、ケース2に2つのコンデンサ素子81、82がリード線62、64により並列に電極端子20、22に接続され、端子板18と一体化されてケース2に実装される。各リード線62、64はコンデンサ素子81、82の端面にメタリコンで形成された電極部66に接続されている。
【0047】
ケース2には端子板18の切欠き部40から流動状態にある封止樹脂58が充填される。封止樹脂58には熱可塑性の絶縁性樹脂である。ケース2内は封止樹脂58で満たされるとともに、既述の空間部54も満たす。これにより、端子板18のベース部24は充填された封止樹脂58内に没し、封止樹脂58から端子板18のアイランド部26の頂部、支持部28および電極端子20、22および上側分離壁38が露出した状態となるので、封止樹脂58を媒介としてコンデンサ素子81、82とともにケース2と端子板18とを強固に固定することができる。この結果、ケース2および端子板18で包囲されるコンデンサ素子81、82の収容空間に高い耐湿性を維持することができる。
【0048】
このように封止樹脂58を充填し、該封止樹脂58を硬化させたことにより、図7の(A)に示すように、ケース2の側壁部6の内面とコンデンサ素子81、82との間には封止樹脂58で満たされる。この実施の形態ではコンデンサ素子81、82の外径が側壁部6の内径により小さくされているので、封止樹脂58の充填量、側壁部6とコンデンサ素子81、82との間の介在量(回り込み量)が多くなっている。しかし、コンデンサ素子81、82の外径を大きく形成した場合にも、リブ14Bの立上り分だけの空間を確保できる。この結果、側壁部6とコンデンサ素子81、82との間の介在量を確保でき、コンデンサ素子81、82の周面を封止樹脂58で覆うことができるとともに、ケース2とコンデンサ素子81、82との間に十分な封止樹脂58を介在させ、両者を固定することができる。
【0049】
このコンデンサ60において、各コンデンサ素子81、82はリード線62、64により並列に接続されている。電極端子20、22間には図7の(B)に示すように、コンデンサ素子81、82の並列回路が構成されている。本実施の形態のように素子を2つにすることにより、幅を広くした1つの素子と比べて、ESR(等価直列抵抗)などの抵抗が低いフィルムコンデンサを作成できる。
【0050】
また、端子板18に形成されている下側分離壁44および立壁52を備えているので、封止樹脂58の充填空間を確保し、電極端子20、22とコンデンサ素子81の端面にある電極部との間を確実に絶縁することができる。しかも、下側分離壁44および立壁52で確保された空間内に封止樹脂58で満たされ、その封止樹脂58が硬化するので、電極端子20、22を接続するリード線62、64を保持し、絶縁することができる。さらに、アンカー効果で樹脂と端子板との密着性が向上する。
【0051】
そして、各電極端子20、22を接続するリード線62、64は、図7の(C)に示すように、端子板18の立壁52の間隔50を通過させることができる。端子板18の立壁52は絶縁間隔を確保するための手段であり、これをリード線62、64の挿通に利用しているのであるから、リード線62、64を設置するための空間の設定が不要になることは勿論のこと、ケース2内の空間利用率が高められる。これにより、コンデンサ60の体積当たりの静電容量の向上が図られる。
【0052】
つぎに、コンデンサ60の製造工程に言及すると、コンデンサ素子81、82はたとえば、金属フィルムのみまたは金属フィルムと非金属フィルムとを巻回し、素子端面にメタリコンによって形成された各電極部66を形成する。
【0053】
このコンデンサ素子81、82の形成工程とは別に、ケース2および端子板18を形成する。ケース2および端子板18は樹脂成形によって形成する。端子板18は良導体金属のたとえば、削出し加工により形成された電極端子20、22のインサート成形により形成する。
【0054】
端子板18の各電極端子20、22にはケース2に封入されるコンデンサ素子81、82をリード線62、64により並列にはんだにより接続し、端子板18とコンデンサ素子81、82とを一体化する。
【0055】
端子板18と一体化されたコンデンサ素子81、82をケース2に入れ、このケース2の開口部16に端子板18を収める。この場合、端子板18はケース2の係合位置に合わせ、既述の係止状態で安定した状態を維持する。
【0056】
この状態で、端子板18にある切欠き部40から所定量の封止樹脂58をケース2に充填し、硬化させる。これにより、製品としてのコンデンサ60が得られる。
【0057】
斯かる構成では、ケース2の底面4および側壁部6の各リブ14A、14Bによケース2の内壁とコンデンサ素子81、82の面部との間隔が自動的に決定されるので、封止樹脂58の充填のための、つまり、封止樹脂58の回り込みを気づかう必要がない。コンデンサ素子81、82の配置が容易であり、作業性が高められる。
【0058】
ケース2に対し、端子板18の位置決め性がよく、封止樹脂58を充填した後も封止樹脂58の硬化前に端子板18をケース2の方向に向かって加圧することで、ケース2内の端子板18の位置設定が行えるなど、作業性とともにコンデンサ60の外観精度を高めることができる。
【0059】
上記実施の形態によれば、つぎの効果が得られる。
【0060】
(1) ケースと端子板の配置位置をケース内壁面のリブと端子板の凹部との係合により固定できるので、載置後の樹脂注入工程においても端子板が移動せず、作業性が向上する。
【0061】
(2) 凹部の一部に係止部があるので、リブの終端部と係止し、高さ方向での位置合わせが容易となる。
【0062】
(3) ケース2及び端子板18とコンデンサ素子81、82との間に封止樹脂58による樹脂層が均一に形成されるので、コンデンサ素子81、82の耐湿性を高め、信頼性の高いコンデンサ60を実現できる。
【0063】
(4) 端子板18の封止樹脂58によるケース2内の固定強度を向上させることができ、堅牢なコンデンサ60を実現でき、耐振性の高いコンデンサ60を提供できる。
【0064】
(5) リブ14Bを配置することによりケース2の強度を向上させることができる。また、リブ14Bを等間隔に配置することにより、その強度をより向上させることができる。
【0065】
(6) 樹脂より耐湿性に優れた端子板18をケース2の開口部を覆うように配置するため、開口部全面を樹脂のみで覆う場合より、耐湿性を向上させることができる。
【0066】
(7) 立壁52を配置することにより、樹脂と端子板との密着性を向上させることができる。
【0067】
(8) アイランド部26を設けることでケース2との間に形成される空間部54に樹脂が充填されることにより、端子板18を樹脂で挟み込む状態を作り出すので、樹脂と端子板との密着性を向上させることができる。
【0068】
〔他の実施の形態〕
【0069】
(1) 上記実施の形態では、リブ14A、14Bの断面形状を半円形としているが、これに限定されない。各リブ14A、14Bは、断面正方形または長方形であってもよい。
【0070】
(2) 上記実施の形態では、2つのコンデンサ素子を備えるコンデンサを例示したがこれに限定されない。ケース2の内部に単一のコンデンサ素子を実装してもよく、3以上のコンデンサ素子を実装してもよい。
【0071】
(3) 上記実施の形態では、ケース2側のリブ14Bに係合する凹部32を中間に備え、この凹部32の両脇に係止部36を備える凹部34を端子板18に形成しているが、これに限定されない。係止部を備える凹部を中間にし、その両脇にリブを貫通させる凹部を端子板に形成してもよい。
【0072】
(4) リブ14Aは放射状に形成しているが、渦巻き状であってもよい。
【0073】
(5) 上記実施の形態のコンデンサ素子は、電解コンデンサ素子であってもよい。
【0074】
(6) 各リブ14Bおよび各凹部32の間隔を同間隔としているが、各凹部32の間隔を各リブ14Bの間隔より細かくして各凹部32にリブ14Bが係合可能にしてもよい。このようにすれば、対応する凹部32とリブ14Bとの組み合わせを選択する作業が軽減され、組立時の作業性を向上させることができる。
【0075】
(7) 各切欠き部40の広がり幅を凹部32の間隔より大きく設定しているが、凹部32より狭くしてもよい。このようにすることで、対応する凹部32とリブ14Bとの組み合わせが容易になり、組立時の作業性が向上する。
【0076】
(8) 切欠き部40は、一例として90〔度〕の範囲で広がる開口部を形成しているが、切欠き部40の角度は任意であり、それ以下でもそれ以上でもよく、少なくとも封止樹脂58を注入可能な開口面積を備えていればよい。角度が狭ければ端子板18の表面積を大きくでき、切欠き部40の開口面積を塞ぐ樹脂面積が小さくなるので、ケース内の耐湿性が向上させることができる。
【0077】
(9) 切欠き部40は、2箇所設けたが、1箇所としてもよい。
【0078】
(10)電極端子20、22間の距離を拡大して直接的な放電のおそれがなければ、支持部28や上側分離壁38を省略してもよく、支持部28や上側分離壁38の設置の有無は適宜選択すればよい。
【0079】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態などについて説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明はケースに樹脂ケースや樹脂封止を用いたコンデンサなどに広く用いることができ、耐湿性を高めることができるなど、有用である。
【符号の説明】
【0081】
2 ケース
4 底部
6 側壁部
81 コンデンサ素子
82 コンデンサ素子
10 収納空間
12 ハブ
14A、14B リブ
16 開口部
18 端子板
20、22 電極端子
24 ベース部
26 アイランド部
38 上側分離壁
40 切欠き部
42 支持部
44 下側分離壁
46 壁部
48 壁部
50 間隔
52 立壁
54 空間部
56 隙間
58 封止樹脂
60 コンデンサ
62、64 リード線
66 電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内壁面に複数のリブを備え、コンデンサ素子が収納されるケースと、
前記リブと係合する凹部とともに前記リブを係止する係止部を備えて前記ケースに設置され、前記コンデンサ素子と接続された電極端子を備えた端子板と、
前記ケース内に充填されて前記ケースと前記コンデンサ素子及び前記端子板とを固定する封止樹脂と、
を備えることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記端子板が前記係止部を備えていない単一または複数の凹部を備え、該凹部に前記リブを貫通させていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記複数のリブが等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記複数のリブは、前記ケースの内底面に中心部から前記内壁面に向かって放射状に形成されていることを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記端子板は、前記ケースの内部に設置されるベース部と、該ベース部に形成されて前記電極端子が固定されて前記ケースの内壁との間に溝部を生成させるアイランド部とを備え、
前記溝部に前記封止樹脂の樹脂層を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記端子板は、一対の電極端子間を結ぶ仮想線と直交方向に前記仮想線を挟んで対称形または非対称形の切欠き部を備え、この切欠き部内に前記封止樹脂の樹脂層を備えることを特徴とする請求項1または3に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記端子板は、前記ケースの内壁面との間に一定幅の間隔を設けて立設され、前記電極端子の接続部に接続されたリード線を挿通させるリード線挿通部を備え、前記封止樹脂に固定される立壁部を備えることを特徴とする請求項1、3、4または5の何れかに記載のコンデンサ。
【請求項8】
内底面及び内壁面に複数のリブを備えるケースを形成し、
前記リブと係合する凹部とともに前記リブを係止する係止部を備えて前記ケースに設置され、コンデンサ素子と接続された電極端子を備えた端子板を形成し、
前記ケース内に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記ケースと前記コンデンサ素子との間の空間を満たし硬化させる、
ことを特徴とするコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256638(P2012−256638A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127465(P2011−127465)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】