説明

コークス炉移動機の位置調整方法及び装置

【課題】コークガイド車などの移動体の移動路に沿って設けられた目標体とコークス炉の位置関係に誤差が生じても移動機を簡易に目標とする位置にする。
【解決手段】コークガイド車1の移動路に沿って設けられた目標体9を検出し、目標体検出装置4で目標体9を検出したときのコークガイド車1の規定位置に対し、目標位置検出装置5で目標位置を検出しながら規定位置から目標位置までコークガイド車1を移動し、検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体9を検出した位置から記憶された位置誤差分だけ移動してコークガイド車1を目標位置にすることにより、目標体9とコークス炉7の位置関係に誤差が生じても、一度、目標体9を検出したときの規定位置と目標位置との位置誤差を記憶してしまえば、以降はコークガイド車1を簡易に目標とする位置にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に設けられた移動機の位置を調整する方法及び装置に関し、例えば炉から押し出される赤熱コークスをガイドするコークガイド車を目標停止位置に停止するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このようなコークス炉移動機の位置調整方法や装置は、種々のものが開発されている。例えば下記特許文献1に記載されるコークス炉移動機の位置調整装置では、背面から光が照射されるターゲットの複数のスリット像をCCDラインセンサで検出し、移動機が適正な位置にあるのか誤った位置にあるのか判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2519805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コークス炉は使用期間が20〜30年と長く、その間、コークス押出しの際の応力などを受け続け、経年変化によって炉自体が変形する。炉は煉瓦で形成されているため、位置検出用のターゲットは炉周辺の金物に取付けられることが一般的なので、炉自体が変形するとターゲットと炉の位置関係に誤差が生じる。例えばコークガイド車を所謂窯毎に停止する際、ターゲットとコークス炉、即ち窯の位置関係に誤差があると、窯毎にコークガイド車を適正な位置に停止し直す必要があり、多大な労力を必要とする。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、移動体の移動路に沿って設けられた目標体とコークス炉の位置関係に誤差が生じても移動機を簡易に目標とする位置にすることが可能なコークス炉移動機の位置調整方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のコークス炉移動機の位置調整方法は、コークス炉の炉幅方向に移動する移動機の位置を調整する方法であって、前記移動機の移動路に沿って設けられた目標体と、前記移動機に搭載されて目標体を検出する目標体検出装置と、前記移動体に搭載されて目標位置を検出する目標位置検出装置とを備え、前記目標体検出装置で目標体を検出したときの移動機の規定位置に対し、目標位置検出装置で目標位置を検出しながら前記規定位置から目標位置まで移動機を移動し、目標位置検出装置で検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体検出装置で目標体を検出した位置から前記記憶された位置誤差分だけ移動して移動機を目標位置にすることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のコークス炉移動機の位置調整装置は、コークス炉の炉幅方向に移動する移動機の位置を調整する装置であって、前記移動機の移動路に沿って設けられた目標体と、前記移動機に搭載されて目標体を検出する目標体検出装置と、前記移動体に搭載されて目標位置を検出する目標位置検出装置と、前記目標体検出装置で目標体を検出したときの移動機の規定位置に対し、目標位置検出装置で目標位置を検出しながら前記規定位置から目標位置まで移動機を移動し、目標位置検出装置で検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体検出装置で目標体を検出した位置から前記記憶された位置誤差分だけ移動して移動機を目標位置にする制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
また、前記目標位置検出装置は、コークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状を検出し、前記制御装置は、目標位置検出装置でコークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状を検出しながら移動機を微動して目標位置まで移動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置によれば、移動機の移動路に沿って設けられた目標体を検出し、目標体を検出したときの移動機の規定位置に対し、目標位置を検出しながら規定位置から目標位置まで移動機を移動し、検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体を検出した位置から記憶された位置誤差分だけ移動して移動機を目標位置にすることとしたため、目標体とコークス炉の位置関係に誤差が生じても、一度、目標体を検出したときの規定位置と目標位置との位置誤差を記憶してしまえば、以降は移動機を簡易に目標とする位置にすることができる。
また、コークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状を検出しながら移動機を微動して目標位置まで移動することにより、移動機の目標位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置の一実施形態を示すコークスガイド車の全体構成図である。
【図2】コークス炉及び目標体の説明図である。
【図3】目標体の説明図である。
【図4】目標体検出装置の説明図である。
【図5】目標位置検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置が適用されたコークガイド車の全体構成図である。本実施形態のコークガイド車1は、図の横方向に敷設されたレール20に沿ってコークス炉の炉幅方向に移動する。周知のように、コークガイド車1は、コークス炉から押し出された(窯出しされた)赤熱コークスをコークガイド2で消火台車に導くものである。コークス炉には、70〜80窯程度の窯が炉幅方向に併設されており、コークガイド車1はコークス炉の炉幅方向に移動して赤熱コークスが押し出される(窯出しされる)窯の正面にコークガイド2をセットしなければならない。そのため、コークガイド車1は、赤熱コークスが押し出される(窯出しされる)窯の正面にコークガイド2が位置する位置で停止しなければならない。
【0011】
また、このコークガイド車1には、窯の炉蓋を取る蓋取り装置3が搭載されている。コークス炉は、図1のコークガイド車1の紙面奥方になるので、蓋取り装置3で炉蓋が取られる窯は、コークガイド2がセットされる窯の2窯左隣の窯となる。また、このコークガイド車1には、後述するようにコークガイド車1の移動路に沿って設けられたターゲットと呼ばれる目標体を検出するための目標体検出装置4や、コークス炉又はコークス炉の付帯設備、具体的にはバックステーや炉蓋のコークガイド車側の形状を検出して目標位置を検出する目標位置検出装置5、目標体検出装置4で検出された目標体や目標位置検出装置5で検出されたコークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状からコークガイド車1の移動状態、例えば走行位置や停止位置を制御する制御装置6などを備えている。
【0012】
図2には、本実施形態のコークス炉及びコークス炉に設けられた目標体の説明図である。前述のように、コークス炉7は多数の窯8が炉幅方向に併設されている。本実施形態では、コークス炉7の炉頂部にターゲットと呼ばれる目標体9を窯8のピッチと同じピッチで併設する。つまり、目標体9は移動機であるコークガイド車1の移動路に沿って設けられている。例えば、図2に横線でハッチングされている窯8が赤熱コークス押出窯であるとすると、その2窯左隣の斜線でハッチングされている窯8が炉蓋を取る窯となる。この場合、炉蓋取り窯8から更に2窯分左隣の目標体9、つまり図示左端から5個目の目標体9を検出したらコークガイド2が赤熱コークス押出窯8の前方にセットされ、蓋取り装置3が炉蓋取り窯8の前方にセットされるように設定されている。
【0013】
目標体9は、例えば図3のように構成されている。本実施形態の目標体9は比較的薄い方形の平板状であり、複数のスリットが形成されている。スリットの構成は目標体9全て異なっている。目標体検出装置4は、例えば図4に示すように、目標体9の背面側の光源から発光し、目標体9のスリットを通過した光をカメラ11で撮影する。制御装置6は、カメラ11で撮影された目標体9のスリットの状態から目標体検出装置4がどの目標体9を検出しているかを判定する。このようにして目標体9を識別することができれば、本来は、所定の炉蓋取り窯8の前方に蓋取り装置3がセットされ、所定の赤熱コークス押出窯8の前方のコークガイド2がセットされる。この位置を規定位置と定義する。
【0014】
しかしながら、前述したように、長年の使用によりコークス炉7自体に変形が生じ、特に変形はコークス炉7の炉幅方向に生じやすいため、目標体9と窯8の位置関係に誤差が生じている。つまり、目標体9を検出して規定位置にコークガイド車1を停止しても、炉蓋取り窯8と蓋取り装置3がずれ、赤熱コークス押出窯8とコークガイド2がずれてしまう。このような場合には、制御装置6が目標位置検出装置5で目標位置を検出しながらコークガイド車1を炉幅方向に微動し、目標位置を検出したらその位置でコークガイド車1を停止する。
【0015】
目標位置検出装置5は、例えば図5に示すように、コークス炉7側に向けてレーザ距離計12を備えている。このレーザ距離計12をコークガイド車1と一緒にコークス炉7の炉幅方向に徐行し、例えばバックステー13や炉蓋14までの距離を連続して検出すれば、それらの形状(プロファイル)を検出することが可能となる。例えば、炉蓋14がある場合には炉蓋14のプロファイルから窯8の中心を求めることが可能である。また、炉蓋14がない場合には、窯8の両側のバックステー13を検出し、それらの中央から窯8の中心を求めることができる。
【0016】
このようにして制御装置6が目標位置検出装置5で目標位置を検出しながらコークガイド車1を炉幅方向に微動し、目標位置を検出したらその位置でコークガイド車1を停止する。このとき、規定位置から目標位置までの位置誤差が分かっているので、該当する目標体9に対する規定位置から目標位置までの位置誤差を記憶しておく。そして、次回以降は、目標体検出装置5で目標体9を検出した位置から記憶された位置誤差分だけ移動すればコークガイド車1を目標位置にすることが可能となる。
【0017】
このように本実施形態のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置では、コークガイド車1の移動路に沿って設けられた目標体9を検出し、目標体検出装置4で目標体9を検出したときのコークガイド車1の規定位置に対し、目標位置検出装置5で目標位置を検出しながら規定位置から目標位置までコークガイド車1を移動し、検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体9を検出した位置から記憶された位置誤差分だけ移動してコークガイド車1を目標位置にすることにより、目標体9とコークス炉7の位置関係に誤差が生じても、一度、目標体9を検出したときの規定位置と目標位置との位置誤差を記憶してしまえば、以降はコークガイド車1を簡易に目標とする位置にすることができる。
【0018】
また、バックステー13や炉蓋14などのコークス炉7又はコークス炉7の付帯設備の形状を検出しながらコークガイド車1を微動して目標位置まで移動することにより、コークガイド車1の目標位置を正確に検出することができる。
なお、目標位置の検出はオペレータが行うようにすることも可能である。
また、前記実施形態ではコークス炉の移動機としてコークガイド車についてのみ詳述したが、本発明のコークス炉移動機の位置調整方法及び装置は、消火台車や装炭車など、その他のコークス炉の炉幅方向に移動する何れの移動機について同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1はコークガイド車
2はコークガイド
3は蓋取り装置
4は目標体検出装置
5は目標位置検出装置
6は制御装置
7はコークス炉
8は窯
9は目標体
10は光源
11はカメラ
12はレーザ距離計
13はバックステー
14は炉蓋
20はレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉幅方向に移動する移動機の位置を調整する方法であって、前記移動機の移動路に沿って設けられた目標体と、前記移動機に搭載されて目標体を検出する目標体検出装置と、前記移動体に搭載されて目標位置を検出する目標位置検出装置とを備え、前記目標体検出装置で目標体を検出したときの移動機の規定位置に対し、目標位置検出装置で目標位置を検出しながら前記規定位置から目標位置まで移動機を移動し、目標位置検出装置で検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体検出装置で目標体を検出した位置から前記記憶された位置誤差分だけ移動して移動機を目標位置にすることを特徴とするコークス炉移動機位置調整方法。
【請求項2】
コークス炉の炉幅方向に移動する移動機の位置を調整する装置であって、前記移動機の移動路に沿って設けられた目標体と、前記移動機に搭載されて目標体を検出する目標体検出装置と、前記移動体に搭載されて目標位置を検出する目標位置検出装置と、前記目標体検出装置で目標体を検出したときの移動機の規定位置に対し、目標位置検出装置で目標位置を検出しながら前記規定位置から目標位置まで移動機を移動し、目標位置検出装置で検出された目標位置と規定位置との位置誤差を記憶し、以降、目標体検出装置で目標体を検出した位置から前記記憶された位置誤差分だけ移動して移動機を目標位置にする制御装置とを備えたことを特徴とするコークス炉移動機位置調整装置。
【請求項3】
前記目標位置検出装置は、コークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状を検出し、前記制御装置は、目標位置検出装置でコークス炉又はコークス炉の付帯設備の形状を検出しながら移動機を微動して目標位置まで移動することを特徴とする請求項2に記載のコークス炉移動機位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103989(P2013−103989A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248402(P2011−248402)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】