説明

ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生方法及びその装置

【課題】 ゴムタイヤ製造工程で発生するピール材やベント材などの廃ゴムを経済的にタイヤ原料にマテリアルリサイクルする再生方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 ゴムタイヤ製造時の加硫工程に加圧媒体として窒素ガスを供給利用するゴムタイヤ製造工程において、ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムを液化窒素を使用した低温微粉砕装置で微粉砕する。この低温微粉砕装置で微粉砕したゴム粉粒体をタイヤ製造用再生原料とし、低温微粉砕装置から導出した気化窒素ガスをタイヤ加硫工程での加圧用ガスとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムタイヤの製造工程で発生する廃ゴムの再生方法及びその装置に関し、特に加硫工程での加圧流体として窒素ガスを使用するゴムタイヤ製造工程で生成される廃ゴムの再生方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内で発生する廃タイヤは年間100万トンに達しており、そのリサイクル率は90パーセント弱と高水準を確保しているが、その内訳は、燃焼等による熱エネルギーとしての利用が中心となっている。資源の有効活用や炭酸ガス排出量削減による地球温暖化防止の観点からすると、炭酸ガス排出に対して低負荷である資源(マテリアル)としてリサイクルすることが望ましい。
【0003】
そして、廃タイヤをマテリアルリサイクルするものとして、従来、廃タイヤ等のゴム成形品を適当なサイズ(一辺が5cm)以下のチップに破砕し、この破砕片を液化窒素で冷却した後、粒径5mm以下の寸法に衝撃破砕するようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11-156225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃タイヤのマテリアルリサイクルとしては、再生ゴムや粉末ゴムとしての利用が一般的であるが、廃タイヤをマテリアルリサイクルの出発原料とした場合、タイヤへの異物付着やタイヤの成分構成が多種多様であることから、粉砕までに多くの手間とエネルギーを要し、利用用途に応じたコスト及び需要に合わないという経緯があった。
【0005】
一方、タイヤ製造工場で更生タイヤ生産時に台タイヤを削り出す際に生じたピール材や新品又は更生タイヤ製造工程における加硫工程で生成され次工程でトリムされたベント材は、その発生する個所がタイヤ製造工場であることから、年間を通じて一定量発生し、かつ回収が容易であり、又、ゴムとしての品質も高く成分構成も安定しているという利点を有しているが、新品タイヤ原料として利用できるサイズに常温から再加工するには、動力(エネルギー)を多量に必要とすることから、一般的には、廃棄物として廃棄物処理業者の手で熱処理されていることが多い。さらに、前記したように再加工する際に多量の動力を必要とすることから、場合によっては、熱加工で発生する二酸化炭素量以上の二酸化炭素を発生させることもある。
【0006】
また、液化窒素等の寒剤を用いて粉砕する低温粉砕は、粉砕対象物をガラス転移温度以下で粉砕を行うものであるが、液化窒素等の寒剤を粉砕のためだけに利用していることから、粉砕に要するコストは高く、粉砕対象物が安価なものについては採算が合わないという一般的課題を有している。
【0007】
本発明はこのような点に着目し、ゴムタイヤ製造工程で発生するピール材やベント材などの廃ゴムを経済的にタイヤ原料にマテリアルリサイクルする再生方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、ゴムタイヤ製造時の加硫工程に加圧媒体として窒素ガスを供給利用するタイヤ製造工程において、ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムを液化窒素を使用した低温粉砕装置で粉砕し、この低温粉砕装置で粉砕生成されたゴム粉粒体をタイヤ製造用再生原料とし、低温粉砕装置から導出した気化窒素ガスをタイヤ加硫工程での加圧用ガスとして使用することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に記載の本発明は、ゴムタイヤ製造工程で発生した廃ゴムを供給する原料供給装置と、原料供給装置から送給された廃ゴムを低温微粉砕する低温微粉砕装置と、低温微粉砕された粉砕製品貯留装置と、低温微粉砕装置に連通接続された液化窒素貯槽と、低温粉砕装置から導出された気化窒素ガス導出路とを具備し、低温粉砕装置に液化窒素貯槽から液化窒素を供給可能に構成するとともに、気化窒素ガス導出路を窒素ガス昇圧装置を介して加硫用金型の加圧媒体供給口に連通接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムを液化窒素の冷熱を利用して粉砕対象物をガラス転移温度以下に冷却して粉砕し、この粉砕に使用した液化窒素の気化ガスを加硫時での加圧媒体として使用するようにしていることから、液化窒素の冷熱エキセルギーを有効に利用することができる。
【0011】
しかも、処理する廃ゴムは、更生タイヤの製造時に発生するピール材や加硫工程のあとでトリムされたベント材であることから、廃ゴム自体への異物混入がないうえ、廃ゴムの成分も安定していることから、タイヤ製造用の再生原料として容易に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図は本発明の一実施形態を示す廃ゴム再生システムの概略図であり、図1は全体のフロー図、図2は要部の機器構成を示す概略流れ図、図3は低温粉砕装置の流れ図である。
この廃ゴム再生システムは、更生タイヤを製造する際に廃タイヤ(R)からその台タイヤを削り出すピール処理(P)により生じたピール材(M)を低温粗粉砕装置(C)で平均粒径5mm程度に粉砕して形成した粗粉砕ピール材と新品タイヤや更生タイヤ製造時の加硫工程で発生し、その後の工程でトリムされることにより生じたベント材(B)とからなる粉砕対象物を再生原料用のストックヤード(T1)に貯留する粉砕原料生成手段(S)と、再生原料用のストックヤード(T1)に貯留されている粉砕対象物を低温粉砕する低温粉砕手段(L)と、低温粉砕手段(L)に粉砕対象物の冷却源として供給される液化窒素を貯蔵している液化窒素貯槽(N)と、低温粉砕手段(L)から導出した気化ガスを回収して精製するガス回収精製手段(G)と、回収精製されたガスをガス加硫設備(A)に供給する窒素ガス送給手段(V)とを具備している。
【0013】
低温粉砕手段(L)は、原料供給装置(1)により移送された粉砕対象物を受け入れる原料ホッパー(2)と、スクリューフィーダ等の粉砕対象物移送装置(3)と、リンレックスミル等の低温微粉砕装置(4)と、サイクロン等の分離装置(5)とを具備して構成されている。そして、分離装置(5)で分離回収された製品用微粉砕ゴムを梱包する梱包装置(6)が分離装置(5)に続けて配設してある。
【0014】
低温粉砕手段(L)における原料ホッパー(2)と低温微粉砕装置(4)には液化窒素貯槽(N)から液化窒素が液体状態で供給され、原料ホッパー(2)に投入された粉砕対象物は液化窒素によって充分に冷却され、粉砕対象物移送装置(3)によって、低温微粉砕装置(4)に導入後、タイヤ原料へリサイクル可能なサイズ(例えば平均粒径が100μm程度)まで微粉砕されるようになっている。なお、この場合の低温微粉砕装置(4)は、ガラス転移温度以下で粉砕するものであることから、衝撃力を用いた粉砕機であることが望ましく、所定の粒度になるまで、繰り返し粉砕される。そして、分離装置(5)で分離回収された製品用微粉砕ゴムは梱包装置(6)で一定重量に梱包され、梱包された製品用微粉砕ゴムは新品タイヤ製造時の製造用原料の一部として利用できるように製造原料用のストックヤード(T2)に保管される。
【0015】
原料ホッパー(2)と低温微粉砕装置(4)に供給され粉砕対象物を充分冷却した後の液化窒素及び気化ガスは、分離装置(5)から低温窒素ガスとして回収精製手段(G)に導出され、回収精製された窒素ガスは、ガス加硫設備(A)に加圧用媒体として供給されるようになっている。この回収精製手段(G)は、集塵フィルタ(7)、気化器に代表される気化設備(8)、圧縮機に代表される圧縮設備(9)、ガス精製設備(10)を順に配置して構成してある。
【0016】
低温粉砕では、液化窒素を粉砕対象物に直接的に接触させて冷却粉砕させるために、低温粉砕に使用した液化窒素又は低温窒素ガスには、表1に示すように、空気成分を代表とする不純物が混入する。
【表1】

【0017】
ガス精製設備(10)は、この混入した不純物を除去するのであるが、その精製の手法としては、分離装置(5)から導出した不純物が混入している窒素ガスを圧縮設備(9)で例えば2.5MPa程度に昇圧し、混入不純物中のメタンガス及び一酸化炭素ガスを触媒(例えば白金触媒)を用いて酸化反応で二酸化炭素及び水へ変化させる。一方、酸素は、触媒(例えばニッケル触媒)を用いて水素添加し、水へと変化させる。二酸化炭素及び水は吸着剤(例えば、モレキュラーシーブス)を用いて吸着除去し、高純度の窒素ガスへ精製する。
【0018】
そして、この精製された窒素ガスは、前記したように、タイヤ製造工程での加硫設備(A)に加圧用媒体として供給されるとともに、その一部は、低温粉砕手段(L)への原料供給装置(1)にパージ用ガスとして供給され、低温粉砕に使用された液化窒素の気化ガスとともに回収されてガス精製設備(10)で精製されることになる。
【0019】
上述の構成からなる廃ゴム再生システムでは、廃ゴムとして、更生タイヤの製造時に発生するピール材や新品又は更生タイヤ製造時に発生するベント材を使用していることから、粉砕対象物としての廃ゴム自体に異物混入がないうえ、廃ゴムの成分も安定していることから、タイヤ製造用の再生原料として容易に利用することができることになる。また、低温粉砕時での冷却源として液化窒素を使用し、この液化窒素の気化ガスをタイヤ製造時の加硫工程での加圧用媒体として使用するため、液体窒素の冷熱エクセルギーを有効に利用することができることになる。
【0020】
また、前記したように、従来は廃棄物として処理されていたゴムタイヤの製造工程で発生するピール材やベント材等の廃ゴムを微粉砕化により自社で有効に利用することができ、タイヤ製造時に生じる廃棄物量を減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、タイヤ製造工場でのタイヤ製造技術に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す廃ゴム再生システム全体のフロー図である。
【図2】要部の機器構成を示す概略流れ図である。
【図3】低温微粉砕装置の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムタイヤ製造時の加硫工程に加圧媒体として窒素ガスを供給利用するゴムタイヤ製造工程において、
ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムを液化窒素を使用した低温粉砕手段で粉砕し、この低温粉砕手段で粉砕生成したゴム粉粒体をタイヤ製造用再生原料とし、低温粉砕手段から導出した気化窒素ガスをタイヤ加硫工程での加圧用ガスとして使用することを特徴とするゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生方法。
【請求項2】
低温粉砕手段から導出した気化窒素ガスをガス精製後にタイヤ加硫工程に送給するようにした請求項1に記載されたゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生方法。
【請求項3】
ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムが更生タイヤ製造時に発生するピール材や加硫工程のあとでトリムされたベント材である請求項1又は請求項2に記載されたゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生方法。
【請求項4】
ゴムタイヤ製造ラインの加硫用金型に加圧媒体としての窒素ガスの供給ラインを接続してなるゴムタイヤ製造装置において、
ゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムを供給する原料供給装置と、原料供給装置から送給された廃ゴムを低温微粉砕する低温微粉砕装置と、低温微粉砕された粉砕製品を貯留する粉砕製品貯留装置と、低温微粉砕装置に連通接続された液化窒素貯槽と、低温微粉砕装置から導出された気化窒素ガス導出路とを具備し、低温微粉砕装置に液化窒素貯槽から液化窒素を供給可能に構成するとともに、気化窒素ガス導出路を窒素ガス昇圧装置を介して加硫用金型の加圧媒体供給口に連通接続したことを特徴とするゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生装置。
【請求項5】
窒素ガス昇圧装置と加硫用金型との間にガス精製設備を配置した請求項4に記載されたゴムタイヤ製造工程で発生する廃ゴムの再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−45776(P2009−45776A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212012(P2007−212012)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】