説明

ゴム組成物ならびにそれを用いた複合材料およびホース

【課題】本発明は、耐熱性、加]牲および耐圧縮永久歪み性に優れ、有機繊維を劣化させにくいゴム組成物を提供する。
【解決手段】クロロスルホン化ポリエチレンと、酸化マグネシウムと、水酸化カルシウムと、マレイミド化合物とを含有し、前記酸化マグネシウムおよび前記水酸化カルシウムの合計の含有量が、前記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部であり、前記水酸化カルシウムと前記酸化マグネシウムとの質量比が、15/85〜45/55であるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた複合材料、特に、有機繊維補強ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーステアリングホースは、油圧の伝達および油圧ポンフ駆動ノイズの低減を目的として、パワーステアリング回路に用いられるホースである。特に、エンジンルーム内に配置される自動車用パワーステアリングホースは、エンジンルームのコンパクト化やエンジンの高出力化等に起因するエンジンルーム内の高温化により140℃程度の高温環境に曝されることもあり、高い耐熱性が要求される。
そのため、パワーステアリングホースには、耐熱性が高いクロロスルホン化ポリエチレン(以下「CSM」ともいう。)を鉛加硫したゴム組成物が使用されてきた。しかしながら、近年、環境問題に対する意識が高まる中で、脱鉛化が要請されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鉛加硫したゴム組成物と同等の耐熱性を実現する方法としては、CSMをマレイミド化合物で加硫する方法が考えられる。
しかしながら、135〜150℃程度の高温下でCSMから発生する塩酸によって、ホースの補強層に用いられる有機繊維が劣化する。マレイミド化合物を用いて加硫した場合、鉛を用いて加硫した場合に比べて、有機繊維の劣化が激しく、ホースの耐久性が劣るという問題が生じる。
【0004】
塩酸による有機繊維の劣化を防ぐために、金属酸化物や合成ハイドロタルサイト等の受酸剤を配合することが考えられる。
しかしながら、加硫剤としてマレイミド化合物を使用する場合、受酸剤を多量に配合する必要がある。受酸剤の配合量を増やすと、ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化したり、圧縮永久歪みが増加するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐熱性、加工性および耐圧縮永久歪み性に優れ、有機繊維を劣化させにくいゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐熱性および耐久性に優れる複合材料およびホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、クロロスルホン化ポリエチレンと、酸化マグネシウムと、水酸化カルシウムと、マレイミド化合物とを含有し、上記酸化マグネシウムおよび上記水酸化カルシウムの合計の含有量が、上記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部であり、上記水酸化カルシウムと上記酸化マグネシウムとの質量比が、15/85〜45/55であるゴム組成物が、耐熱性、加工性および耐圧縮永久歪み性に優れ、有機繊維を劣化させにくいことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記(1)〜(8)を提供する。
(1)クロロスルホン化ポリエチレンと、酸化マグネシウムと、水酸化カルシウムと、マレイミド化合物とを含有し、
前記酸化マグネシウムおよび前記水酸化カルシウムの合計の含有量が、前記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部であり、
前記水酸化カルシウムと前記酸化マグネシウムとの質量比が、15/85〜45/55であるゴム組成物。
【0008】
(2)前記酸化マグネシウムおよび前記水酸化カルシウムの合計の含有量が、前記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して20〜30質量部である上記(1)に記載のゴム組成物。
【0009】
(3)前記水酸化カルシウムと前記酸化マグネシウムとの質量比が、18/82〜40/60である上記(1)または(2)に記載のゴム組成物。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物と、有機繊維とを含む複合材料。
【0011】
(5)前記有機繊維がポリアミド繊維である上記(4)に記載の複合材料。
【0012】
(6)少なくとも、内管と、前記内管の外周側に隣接して配置される有機繊維を含む補強層と、前記補強層の外周側に隣接して配置される外管とを有するホースであって、
前記内管および/または前記外管が、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物で構成されているホース。
【0013】
(7)少なくとも前記外管が、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物で構成されている上記(6)に記載のホース。
【0014】
(8)前記有機繊維が、ポリアミド繊維である上記(6)または(7)に記載のホース。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム組成物は、耐熱性、加工性および耐圧縮永久歪み性に優れ、有機繊維を劣化させにくい。
また、本発明の複合材料は、耐熱性および耐久性に優れる。
また、本発明のホースは、而撚性および耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のゴム組成物(以下「本発明の組成物」という。)は、クロロスルホン化ポリエチレンと、酸化マグネシウムと、水酸化カルシウムと、マレイミド化合物とを含有し、上記酸化マグネシウムおよび上記水酸化カルシウムの合計の含有量が、上記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部であり、上記水酸化カルシウムと上記酸化マグネシウムとの質量比が、15/85〜45/55であるゴム組成物である。
【0017】
本発明の組成物に用いられるクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)は、特に限定されず、従来公知の直鎖状または分岐状のCSMであり、プロピレンその他のオレフィンを含有するクロロスルホン化エチレンコポリマーを含む。CSMを用いることにより、本発明の組成物は、耐油性、耐熱性等に優れる。
【0018】
上記CSMの100℃におけるムーニー粘度は、20〜100であるのが好ましく、30〜80であるのがより好ましい。ムーニー粘度がこの範囲であると、ゴム組成物として押出し性および混合加工性に優れる。
【0019】
上記CSMの塩素含有量は、20〜50質量%であるのが好ましく、25〜40質量%であるのがより好ましい。塩素含有量がこの範囲であると耐油性と低温特性とのバランスに優れる。
【0020】
上記CSMは、例えば、直鎖状または分岐状のポリエチレン(またはプロピレンその他のオレフィンとのエチレンコポリマー)を塩化スルポニルまたは二酸化硫黄および塩素と反応させることにより製造される。
本発明においては、市販のCSMを用いることもできる。例えばデュポンパフォーマンスエラストマー社製のハイパロン(登録商標)が好適に用いられる。
【0021】
本発明の組成物は、CSMから発生する塩酸を補足する受酸剤として、酸化マグネシウム(MgO)および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を含有する。
【0022】
本発明の組成物における酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムの合計の含有量は、上記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部である。酸化マグネシウムと水酸化カルシウムの合計の含有量が、17質量部未満であると、有機繊維の劣化が激しくなる。30質量部を超えると、組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する。
有機繊維の劣化を抑制する効果(耐繊維劣化性)と加工性とのバランスが良好となる点から、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムの合計の含有量は、18〜27質量部であることが好ましく、20〜25質量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明の組成物に含有される水酸化カルシウムと酸化マグネシウムとの質量比は、15/85〜45/55である。水酸化カルシウムの割合がこの範囲より小さいと、有機繊維の劣化が激しくなり、また、圧縮永久歪みが大きくなる。水酸化カルシウムの割合がこの範囲より大きいと、圧縮永久歪みが大きくなる。
耐繊維劣化性と圧縮永久歪みとのバランスが良好となる点から、本発明の組成物に含有される水酸化カルシウムと酸化マグネシウムとの質量比は、18/82〜40/60であるのが好ましく、18/82〜35/55であるのがより好ましく、20/80〜30/70であるのが更に好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムの合計の含有量と、水酸化カルシウムと酸化マグネシウムとの質量比とが上述した範囲であることにより、加工性、耐圧縮永久歪み性および耐繊維劣化性という3つの課題全てを解決できるのである。
なお、本明細書において、圧縮永久歪みの生じ難さを「耐圧縮永久歪み性」という。
【0025】
本発明の組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウム以外の他の受酸剤を含有してもよいが、他の受酸剤を含有しないことが好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、加硫剤としてマレイミド化合物を含有する。従来、マレイミド化合物で加硫した場合、耐熱性に優れるが受酸剤を多量に配合すると加工性が悪化する上、更に圧縮永久歪みも大きくなるという問題があったが、本発明の組成物は加硫後の耐熱性、加工性および耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0027】
上記マレイミド化合物としては、マレイミド基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されない。上記マレイミド化合物としては、例えば、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレン−2−メチルジマレイミド、N,N′−(1,1′−ビフェニル−4,4′−ジイル)ビスマレイミド、N,N′−(3,3′−ジメチル−1,1′ビフェニル−4,4′一ジイル)ビスマレイミド、4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N′−(メチレンビス(2−クロロ−4,1−フェニレン))ビスマレイミド、ビス(3−工チル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N′−(スルホニルビス(1,3−フェニレン))ジマレイミド、N,N′−(4,4′−トリメチレングリコールジベンゾエート)ビスマレイミド等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記マレイミド化合物の含有量は、上記CSM100質量部に対して、1〜5質量部が好ましく、1.3〜4質量部がより好ましく、1.5〜3質量部が更に好ましい。マレイミド化合物の含有量がこの範囲であると、耐熱性および物性等に優れる。
【0029】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を逸脱しない範囲で、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0030】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0031】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NBC)等が挙げられる。
【0032】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料}等が挙げられる。
【0033】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0034】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0035】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルボスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した各成分を、オープンロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、バッチ式混練機等により混合(混練)する方法が挙げられる。
また、混合温度は、使用する装置により異なるため特に限定されないが、バッチ式混練機を用いた場合は、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましい。
同様に、混合時間も、使用する装置により異なるため特に限定されないが、バッチ式混練機を用いた場合は、1〜15分間程度であるのが好ましい。
【0037】
上述した本発明の組成物は、耐熱性、加工性および耐圧縮永久歪み性に優れ、有機繊維を劣化させにくい。
したがって、本発明の組成物は、プリプレグ、有機繊維を含むホース、コンベヤベルト、防舷材、タイヤ等に好適に用いることができる。
【0038】
次に、本発明の複合材料について説明する。
本発明の複合材料は、上述した本発明のゴム組成物と、有機繊維とを含む複合材料である。本発明の複合材料には、未加硫のものおよび加硫したものが含まれる。
本発明の複合材料としては、具体的には、例えば、プリプレグ、後述するホース、コンベヤベルト、防舷材、タイヤ等が挙げられる。
【0039】
本発明の複合材料に使用される有機繊維は、特に限定されず、糸状のものだけでなく、繊維を編んだもの、不織布、カットファイバー等も含まれる。
上記有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリケトン繊維、ポリアリレート繊維、ポリケトン繊維等が挙げられる。中でも、寸法安定性、耐熱性および耐疲労性に優れるポリエステル繊維、ポリアミド繊維であるのが好ましい。特に、ポリアミド繊維は酸により劣化しやすいが、本発明の組成物と組み合わせて用いることにより劣化が抑制されるため、好適に使用できる。
また、上記で例示した各種の繊維材料は、レゾルシン・ホルマリン/ゴムラテックス(RFL)等の処理液で接着処理を行ってもよい。
【0040】
本発明の複合材料の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0041】
上述した本発明の複合材料は、本発明の組成物を用いているため、耐熱性に優れ、更に、有機繊維の劣化が抑制されているため耐久性にも優れる。
【0042】
次に、本発明のホースについて説明する。
本発明のホースは、少なくとも、内管と、上記内管の外周側に隣接して配置される有機繊維を含む補強層と、上記補強層の外周側に隣接して配置される外管とを有するホースであって、上記内管および上記外管の少なくとも一方が、上述した本発明の組成物で構成されているホースである。
【0043】
以下、本発明のホースの好適な実施態様の一例を図1を用いて説明する。図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
図1に示すように、ホース1は、内管2と、内管2の外周側に隣接して配置される補強層3と、補強層3の外周側に隣接して配置される外管4とを有する。
【0044】
内管2および外管4は、補強層3と隣接して設けられる。本発明は、内管2および外管4のうち少なくとも一方を本発明の組成物を用いて形成するものであり、ホースの耐候性および耐熱性の点から、少なくとも外管4を本発明の組成物を用いて形成するのが好ましい。また、内管2および外管4を共に本発明の組成物を用いて形成した場合、補強層に用いられる有機繊維の劣化が抑制され、耐久性に優れる点から好ましい。
また、ホース端部の内外周側を圧着して取り付けた金具を介してホースを油圧の伝達回路に組み込んだ場合に、その圧着力はゴム組成物の耐圧縮永久歪み性が優れるほど持続され耐久性に優れる。そのため、本発明のホース1は、圧着力が持続され耐久性に優れる。
このように本発明の組成物を用いて内管2および外管4の一方または両方を形成することにより、耐熱性および耐久性に優れるホースとなる。
【0045】
内管2の厚みは、0.2〜4.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましい。
外管4の厚みは、0.2〜4.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましい。
【0046】
補強層3は、ブレード状に形成されたものでもスパイラル状に形成されたものでもよい。また、上記補強層3を構成する有機繊維としては、上述したものを使用することができ、特に、ポリアミド繊維を好適に使用できる。
【0047】
本発明のホースは、上述した3層構造のもの以外に、例えば、上記補強層を2層設けて、これらの補強層の間に層間ゴム層を設けた5層構造のものでもよい。この場合、層間ゴム層は、本発明の組成物で構成されているのが耐久性に優れる点から好ましい。
【0048】
本発明のホースの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、マンドレル上に、内管、補強層および外管をこの順に積層させた後に、それらの層を140〜190℃下、30〜180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法等が好適に例示される。
【0049】
上述した本発明のホースは、本発明の組成物を用いているので、耐熱性に優れ、更に、有機繊維の劣化が抑制されているため耐久性にも優れる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜5および比較例1〜8)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す割合(質量部)で、混合機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた各組成物について、下記の方法により、ムーニー粘度、加硫後の基本物性(破断強度、破断伸び、50%モジュラス、100%モジュラス、硬さ)、圧縮永久歪み、および有機繊維の劣化を評価した。
結果を下記第1表に示す。
【0051】
(ムーニー粘度)
JIS K6300−1−2001に準じて、未加硫のゴム組成物について、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、ムー二一粘度を測定した。
なお、ムーニー粘度は100以下であることが好ましい。
【0052】
(破断強度、破断伸び、50%モジュラス、100%モジュラス)
JIS K6251−2004に準じて、各組成物を153℃で60分間加硫させた加硫ゴムを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出し試験片とし、試験温度23℃、引張速度500mm/minの条件で、破断強度、破断伸び、50%モジュラス(M50)および100%モジュラス(M100)を測定した。
【0053】
(硬さ Hs)
JIS K6253−2006に準じて、各組成物を153℃で60分間加硫させて厚さ6mmの試験片を作製し、デュロメータ(タイプA)を用いて測定した。
【0054】
(圧縮永久歪み)
JIS K6262−2006に準じて、各組成物を153℃で60分間加硫させて直径13.0mm、厚さ6.3mmの試験片を作製した。次に、得られた試験片を150℃で72時間、25%の圧縮歪みで圧縮した。圧縮をやめて30分間放置した後の試験片の厚みを測定し、圧縮永久歪みを算出した。
なお、圧縮永久歪みは、55%以下であることが好ましい。
【0055】
(有機繊維劣化試験)
得られたゴム組成物をロールにて厚さ1mmのシートと厚さ2mmのシート状にした。
次に、30cm×30cmの鉄板の上に上記で得られた厚さ1mmのシートを敷き、その上にポリアミド繊維(長さ40cm以上、6,6−ナイロン、旭化成社製、抗張力180N、切断伸率20.8%)を10本並べた。その上に上記で得られた厚さ2mmのシートを置いた後、154℃で90分間プレス加硫した。
その後、150℃のオーブン内に168時間放置して熱老化させた。次に、熱老化させた試験片をゴムが十分膨潤するまでトルエンに浸漬させた後、繊維を取り出した。取り出した繊維について、JIS L1017−2002(化学繊維タイヤコード試験方法)に準じて抗張力と切断伸び率を測定した。
JIS L1017−2002(化学繊維タイヤコード試験方法)に準じて測定した初期のポリアミド繊維の抗張力(180N)と切断伸び率(20.8%)をそれぞれ100%として熱老化後の各保持率を算出した。
なお、熱老化後の抗張力の保持率は50%以上であることが好ましく、熱老化後の切断伸率は65%以上であることが好ましい。
【0056】
【表1】

【0057】
上記第1表中の各成分は下記のとおりである。
・クロロスルホン化ポリエチレン1:ハイパロン(登録商標)40、デュポンパフォーマンスエラストマー社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)56、塩素含有量35質量%
・クロロスルホン化ポリエチレン2:ハイパロン(登録商標》45、デュポンパフォーマンスエラストマー社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)37、塩素含有量24質量%
・酸化マグネシウム:キョーワマグ150、協和化学社製
・水酸化カルシウム:消石灰、入交産業社製
・FEFカーボンブラック:HTC #100、新日化カーボン社製
・FTFカーボンブラック:アサヒサーマル、旭カーボン社製
・ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル:ノクラックNBC、大内新興化学社製
・トリ(2−エチルヘキシル)トリメリット酸:アデカサイザー C−8、ADEKA社製
・6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン:ノクラックAW、大内新興化学社製
・N,N′−m−フェニレンジマレイミド:バルノックPM−P、大内新興化学社製
【0058】
上記第1表に示す結果から明らかなように、比較例1〜2は、有機繊維の劣化が激しかった。比較例3は、有機繊維の劣化と圧縮永久歪みが大きかった。比較例4は、ムーニー粘度が高く、加工性が悪い上、圧縮永久歪みと有機繊維の劣化が大きかった。比較例5は、ムーニー粘度が高く、加工性が悪い上、圧縮永久歪みも大きかった。比較例6〜7は、
圧縮永久歪みが大きかった。比較例8は、有機繊維の劣化が大きかった。
一方、実施例1〜5は、ムーニー粘度と圧縮永久歪みが小さく、繊維の劣化も少なかっ
た。
【0059】
(実施例6〜10および比較例9〜16)
上記で得られた各ゴム組成物を用いて、パワーステアリングホースの製造を行った。
予め離型剤を塗布した外径10mmのマンドレル上に、第2表の内管の欄に示す上記で得られたゴム組成物を押出し、厚さ2mmの内管を形成した。この内管の外側に、ポリアミド繊維(6,6−ナイロン、旭化成社製)をブレード編みし、その外側に第2表の外管の欄に示すゴム組成物を押出して、厚さ1.5mmの外管を形成した。次に、154℃で90分加熱して加硫させた後、マンドレルを引き抜いて、パワーステアリングホースを得た。
得られた各パワーステアリングホースについて以下の試験を行った。
結果を第2表に示す。
【0060】
(ホースインパルス試験)
得られたパワーステアリングホースを、150℃下、1.17Hzの周期で3.43MPaの圧力を繰返し加えるホースインパルス試験に供し、耐久性を評価した。ホースインパルス試験において50万回以上稼動するホースを耐久性に優れるものとして「○」とし、50万回未満しか稼動しないホースを耐久性が劣るものとして「×」とした。
【0061】
(熱老化後の金具部からの油漏れ試験)
得られたパワーステアリングホース内に油(ダフニースーパーハイドロ、出光社製)を封入して150℃で240時間オーブン内に放置した後取り出し、常温にて3MPaの圧力をかけ、金具部からの油漏れの有無を目視で確認した。
オイル漏れが無かったものを「○」、オイル滲みがあったものまたはオイル漏れがあったものを「×」とした。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ホース
2 内管
3 補強層
4 外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロスルホン化ポリエチレンと、酸化マグネシウムと、水酸化カルシウムと、マレイミド化合物とを含有し、
前記酸化マグネシウムおよび前記水酸化カルシウムの合計の含有量が、前記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して17〜30質量部であり、
前記水酸化カルシウムと前記酸化マグネシウムとの質量比が、15/85〜45/55であるゴム組成物。
【請求項2】
前記酸化マグネシウムおよび前記水酸化カルシウムの合計の含有量が、前記クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して20〜30質量部である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記水酸化カルシウムと前記酸化マグネシウムとの質量比が、18/82〜40/60である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物と、有機繊維とを含む複合材料。
【請求項5】
前記有機繊維がポリアミド繊維である請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
少なくとも、内管と、前記内管の外周側に隣接して配置される有機繊維を含む補強層と、前記補強層の外周側に隣接して配置される外管とを有するホースであって、
前記内管および/または前記外管が、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物で構成されているホース。
【請求項7】
少なくとも前記外管が、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物で構成されている請求項6に記載のホース。
【請求項8】
前記有機繊維が、ポリアミド繊維である請求項6または7に記載のホース。

【図1】
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【公開番号】特開2009−126877(P2009−126877A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300259(P2007−300259)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】