説明

ゴム製筒体の製造方法、空気ばねの製造方法、未加硫ゴム筒の成型装置、及び空気ばね

【課題】大径、あるいは太鼓状や鼓状などの不定径で、かつ中心軸を通る平面に沿う方向に短繊維を配向させることのできるゴム製筒体の製造方法の提供。
【解決手段】ガイド棒8の周りに未加硫ゴムチューブ9を押出成形し、含有する短繊維4をチューブ中心軸方向に配向させる。未加硫ゴムチューブ9を押出成形しながら、カッター11を周回させて未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断して未加硫ゴムテープ10を形成する。これと同時に、成型ドラム12を、未加硫ゴムチューブ9の押出方向に移動させつつ、自転させながらカッター11の周回と同じ回転数で未加硫ゴムチューブ9の周りを周回させる。成型ドラム12の周りに未加硫ゴムテープ10が巻き付いて未加硫ゴム筒3が成型される。短繊維4は、ほぼ未加硫ゴム筒3の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒3の表面に沿う方向に配向する。その後、未加硫ゴム筒3を加硫成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維を含有するゴム製筒体の製造方法、そのゴム製筒体をダイヤフラムとして備えた空気ばねの製造方法、ゴム製筒体に加硫成形する前の未加硫ゴム筒の成型装置、及び短繊維を含有するゴムからなる筒状のダイヤフラムを備えた空気ばねに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気ばねのダイヤフラムやゴム配管継手、タイヤ、ゴムホースなどのゴム製筒体は、未加硫ゴムを筒状に成型してなる未加硫ゴム筒を加硫成形することにより製造される。未加硫ゴム筒の成型には、未加硫ゴムをチューブ状に押し出して成型ドラムに被せる方法や、クロスヘッド方式によって未加硫ゴムを成型ドラムに直接被覆する方法、成型ドラムに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付ける方法などが用いられる。
【0003】
これらの成型方法のうち、未加硫ゴムをチューブ状に押し出す方式やクロスヘッド方式は、ゴムホースなどの比較的に小径でかつ中心軸方向に沿って径が一定の未加硫ゴム筒の成型に用いられ、空気ばねのダイヤフラムやタイヤなどの比較的に大径の未加硫ゴム筒や、太鼓状や鼓状の未加硫ゴム筒の成型には、成型ドラムに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付ける方法が採用される。
【0004】
また、ゴムの剛性や強度、耐摩耗性などの物性を高める目的で、ゴム製筒体に短繊維を含有させることがある(例えば特許文献1)。このような短繊維を含有させたゴム製筒体は、未加硫ゴム筒を成型する未加硫ゴムに短繊維を含有させることにより製造することができる。
【0005】
さらに、空気ばねなどは、その端部を締結金具で他部材に締結すると共に、締結によって圧縮された端部ゴムの弾性力でシールするようになっており、短繊維を含有させてゴムの剛性を高めることによるシール性の向上が期待できる。具体的には、締結によって厚さ方向に圧縮された端部ゴムは、ゴム製筒体の中心軸を通る平面に沿って伸びようとするので、この伸びを短繊維で抑えることによってゴムの剛性を高めることができる。
【特許文献1】特開2000−297533
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゴムが含有する短繊維は、その配向方向の剛性や強度に寄与するものの、配向方向と直交する方向の剛性や強度には寄与しないので、ゴム製筒体の中心軸を通る平面に沿う方向のゴムの伸びを抑えるには、その伸びの方向に短繊維を配向させる必要がある。そのため、未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒を成型する場合、図5(a)に示すように、未加硫ゴムテープ101のテープ幅方向に短繊維102を配向させておく必要がある。
【0007】
しかし、未加硫ゴムテープをカレンダーや押し出しによって形成する際、その引出方向あるいは押出方向であるテープ長さ方向に短繊維が配向するため、このような未加硫ゴムテープを巻き付けて成型した未加硫ゴム筒は、その中心軸を通る平面に沿うことなく周方向に短繊維が配向する。
【0008】
一方、未加硫ゴムをチューブ状に押し出す方式やクロスヘッド方式による成型を採用することにより、短繊維を中心軸方向に配向させることができるが、これらの成型方法は、前述のように、大径かつ不定径である空気ばねのダイヤフラムやタイヤなどの未加硫ゴム筒の成型に採用することができない。
【0009】
これに対して、図5(b)に示すように、カレンダーなどで形成したテープ長さ方向に短繊維102が配向する未加硫ゴムテープ103を断続的に切断し、その向きを変えて再度テープ状に配置することにより、テープ幅方向に短繊維102が配向する未加硫ゴムテープ101を形成する方法が考えられるが、この方法は、未加硫ゴムテープ101の形成に2工程を要し、しかも、未加硫ゴムテープ103を断続的に切断するので、未加硫ゴム筒の成型も断続的になる。
【0010】
また、図5(c)に示すように、中心軸方向に短繊維102が配向するよう未加硫ゴムチューブ104を押出成形し、これを螺旋状に切断してテープ幅方向に短繊維102が配向する未加硫ゴムテープ101を形成する方法も考えられるが、この方法は、図5(c)に示すように、未加硫ゴムチューブ104から引き出す際、未加硫ゴムテープ101がねじれることになる。
【0011】
本発明は、大径、あるいは太鼓状や鼓状などの不定径で、かつ中心軸を通る平面に沿う方向に短繊維を配向させることのできるゴム製筒体の製造方法、そのゴム製筒体をダイヤフラムとして備えた空気ばねの製造方法、ゴム製筒体に加硫成形する前の未加硫ゴム筒の成型装置、及び短繊維を含有するゴムからなる筒状のダイヤフラムを備えた空気ばねの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、短繊維を含有するゴム製筒体の製造方法を提供するものである。具体的には、まず、短繊維を含有する未加硫ゴムを押出成形することにより、短繊維がチューブ中心軸方向に配向する未加硫ゴムチューブを形成する。さらに、未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して短繊維を含有する未加硫ゴムテープを形成すると共に、成型ドラムを、その中心軸を回転軸として自転させながら未加硫ゴムチューブの周りを周回させることにより、未加硫ゴムテープを成型ドラムの周りに螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒を成型しつつ、短繊維を未加硫ゴム筒の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒の表面に沿う方向に配向させ、その後、未加硫ゴム筒を加硫成形する。
【0013】
上記構成によれば、未加硫ゴムテープを成型ドラムの周りに螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒を成型するので、大径、あるいは太鼓状や鼓状などの不定径のゴム製筒体であっても、その未加硫ゴム筒を容易かつ精度よく成型することができる。しかも、未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断することによって、テープ幅方向に短繊維が配向する未加硫ゴムテープを形成するので、ゴム製筒体の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒の表面に沿う方向に短繊維を配向させることができる。
【0014】
さらに、成型ドラムが未加硫ゴムチューブの周りを周回するので、未加硫ゴムチューブから未加硫ゴムテープをねじれさせることなく取り出すことができる。しかも、成型ドラムを自転させるので、未加硫ゴム筒及び未加硫ゴムチューブの径が異なる場合であっても、未加硫ゴム筒からの未加硫ゴムテープの取り出し長さと成型ドラムへの巻き付け長さとを一致させることができる。
【0015】
ここで、短繊維は、これを含有する未加硫ゴムを押出成形することにより、その押出方向に配向してゴムの剛性や強度を高めるものであればよく、その素材や寸法を限定するものではないが、その剛性、強度及び未加硫ゴムへの分散性を考慮して、ナイロン短繊維やアラミッド短繊維で、平均繊維径が1μm〜20μm、平均繊維長さが3mm〜20mmのものを例示できる。また、未加硫ゴムへの短繊維の配合量としては、ハンドリング性及び加硫後のゴム特性を考慮して、未加硫ゴム100重量部に対して短繊維を0.5重量部〜5重量部混合するのが好ましい。
【0016】
また、ゴム製筒体は、未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けて成型した未加硫ゴム筒のみを加硫成形しただけのものであってもよいが、成型した未加硫ゴム筒を内面ゴムあるいは外面ゴムとして、さらに補強層を設けたものであってもよい。
【0017】
すなわち、成型ドラムに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付け成型した未加硫ゴム筒を内面ゴムとし、その外側に補強層及び外面ゴムを配置し、その後、未加硫ゴム筒としての内面ゴム、補強層及び外面ゴムの積層体を加硫成形することもできる。あるいは、成型ドラムの外側に内面ゴム及び補強層を配置し、その外側に未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けて成型した未加硫ゴム筒を外面ゴムとし、その後、内面ゴム、補強層及び未加硫ゴム筒としての外面ゴムの積層体を加硫成形することもできる。
【0018】
未加硫ゴムチューブの押出成形、未加硫ゴムテープへの切断、及び成型ドラムへの未加硫ゴムテープの巻き付けは、それぞれ別工程にすることもできるが、これらを同時に行うようにしてもよい。
【0019】
具体的には、未加硫ゴムチューブをガイド棒の周りに、かつガイド棒の中心軸方向に押出成形しながら、未加硫ゴムチューブを切断するカッターをガイド棒の周りを周回させることにより、未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して未加硫ゴムテープを形成する。この未加硫ゴムテープの形成と同時に、成型ドラムを未加硫ゴムチューブの押出方向に移動させつつ、その成型ドラムを自転させながらカッターと同じ回転数で周回させて、成型ドラムの周りに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付ける。
【0020】
この構成によれば、未加硫ゴムチューブの押出成形、未加硫ゴムテープへの切断、及び成型ドラムへの未加硫ゴムテープの巻き付けを同時に行うので、未加硫ゴム筒の成型時間の短縮及び自動化を図ることができる。また、未加硫ゴムチューブを押出成形しながら螺旋状に切断するので、ガイド棒の長さを短く設定することができる。
【0021】
ところで、未加硫ゴムテープのテープ幅、及びテープ幅方向に対する短繊維の配向方向が同じであっても、これを巻き付けて成型する未加硫ゴム筒の径が異なれば、その中心軸方向に対する短繊維の配向方向も異なる。これに対し、任意の径の未加硫ゴム筒を成型する際、中心軸に対する短繊維の配向方向を所望の方向に設定するには、未加硫ゴムチューブの押出速度及びカッターの周回の回転数のうちの少なくとも一方を調節することにより、未加硫ゴムテープの幅を調節すればよい。
【0022】
つまり、未加硫ゴム筒の中心軸に対する短繊維の配向方向を所望の方向に設定するには、未加硫ゴムテープのテープ幅、あるいはテープ幅方向に対する短繊維の配向方向を調節すればよい。しかも、未加硫ゴムチューブから切り出すテープ幅を調節することにより、そのテープ幅方向に対する短繊維の配向方向を所望の方向に設定することができるので、未加硫ゴムテープの幅を調節することにより、短繊維の配向方向を所望の方向に設定することができる。
【0023】
さらに、未加硫ゴムチューブから螺旋状に切り出す未加硫ゴムテープは、その短繊維の配向方向が未加硫ゴムチューブの径に対応して変化するが、テープ幅を調節することにより、テープ幅方向に対する短繊維の配向方向を所望の方向に設定することができるので、任意の径の未加硫ゴムチューブから所望の未加硫ゴムテープを切り出すことができる。
【0024】
また、中心軸方向に沿って内径の変化する未加硫ゴム筒を成型するには、中心軸方向に沿って外径の変化する成型ドラムを使用すると共に、その径に対応して未加硫ゴムテープのテープ幅を変化させればよい。すなわち、未加硫ゴムチューブの押出速度、カッターの周回の回転数、及びガイド棒の中心軸方向におけるカッターの位置のうちの少なくともいずれかを調節してテープ幅を変化させながら、未加硫ゴム筒の中心軸方向に沿ってその内径を変化させればよい。
【0025】
成型ドラムを片持ち支持することにより、その支持部材をガイド棒に干渉させることなく成型ドラムを支持することができ、さらに、未加硫ゴム筒の中心軸方向長さ(L)と内径(D)との比(L/D)を10以下に設定することにより、成型ドラムのたわみを抑えて、未加硫ゴム筒の成型精度を高めることができる。
【0026】
成型ドラムに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付ける際、この未加硫ゴムテープの巻き付け部分の側縁を、先に巻き付けた部分に重ねることにより、成型する未加硫ゴム筒の厚さを調節すれば、押出成形する際に未加硫ゴムチューブの肉厚を変更することなく、所望の肉厚の未加硫ゴム筒を成型することができる。
【0027】
また、上記の方法によって製造したゴム製筒体をダイヤフラムとし、このダイヤフラムの少なくとも一方の端部に締結金具を取り付けることにより、空気ばねを製造することができる。なお、上記の製造方法は、空気ばね以外に、ゴム配管継手やタイヤ、ゴムホースなどを製造することもできる。
【0028】
また、本発明は、ゴム製筒体に加硫成形する前の未加硫ゴム筒の成型装置を提供する。具体的には、ダイスと、このダイスの内側からダイス穴を貫通して押出方向に突出するガイド棒と、未加硫ゴムを加圧しつつダイスに供給してダイス穴の周縁及びガイド棒の隙間からガイド棒の周りに未加硫ゴムチューブを押出成形する押出機と、ガイド棒の周りを周回して未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して未加硫ゴムテープを形成するカッターと、未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒とするための成型ドラムとを備えている。さらに、成型ドラムは、押出方向に移動しつつ、その中心軸を回転軸として自転しながらガイド棒の周りをカッターと同じ回転数で周回することにより、その周りに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けるものである。
【0029】
この構成によれば、上記のゴム製筒体の製造方法と同様、大径、あるいは太鼓状や鼓状などの不定径のゴム製筒体であっても、その未加硫ゴム筒を容易かつ精度よく成型することができる。なお、押出機は、そのヘッドをスピンドルとダイスから構成された直押出機であってもよく、ヘッドとスクリューとが交差するクロスヘッド押出機であってもよい。
【0030】
また、カッターをガイド棒の中心軸方向における位置を調節自在とすれば、未加硫ゴムチューブの押出速度やカッター及び成型ドラムの周回速度を変化させることなく、未加硫ゴムテープのテープ幅を変化させることができるので、不定径の未加硫ゴム筒の成型を容易にすることができる。
【0031】
この成型装置は、短繊維を含有しない通常の未加硫ゴム筒の成型に使用することもできるが、短繊維を含有する未加硫ゴムから未加硫ゴム筒を成型すれば、ゴム製筒体に短繊維を含有させると共に、ゴム製筒体の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒の表面に沿う方向に短繊維を配向させることができ、上記のゴム製筒体の製造方法と同じ効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明は、短繊維を含有するゴムからなる筒状のダイヤフラムの少なくとも一方の端部に締結金具を取り付けてなり、短繊維がダイヤフラムの中心軸を含む平面及びダイヤフラムの表面に沿う方向に配向されたことを特徴とする空気ばねを提供する。
【0033】
この構成によれば、ダイヤフラムの中心軸を含む平面及びダイヤフラムの表面に沿う方向に短繊維を配向させるので、締結金具による厚さ方向の圧縮に対する端部ゴムの剛性を高めることができ、これにより、ダイヤフラムの内圧シール性能を高めて、空気ばねの高圧かつ大変位化による小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のとおり、本発明によると、成型ドラムを未加硫ゴムチューブの周りを周回させることによって、未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して形成した未加硫ゴムテープを成型ドラムに巻き付けるので、大径、あるいは太鼓状や鼓状などの不定径のゴム製筒体の未加硫ゴム筒を容易かつ精度よく成型することができる。
【0035】
しかも、未加硫ゴムに含有させた短繊維をゴム製筒体の中心軸を通る平面に沿う方向に配向させることができるので、その端部ゴムの締結に対する剛性を高めることができ、これにより、空気ばねのダイヤフラムなどの内圧シール性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るゴム製筒体の製造方法、空気ばねの製造方法、未加硫ゴム筒の成型装置、及び空気ばねを実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
まず、未加硫ゴム筒の成型装置の構成について説明する。図1は本発明に係る未加硫ゴム筒の成型装置を示す模式図である。
【0038】
成型装置1は、例えば空気ばねのダイヤフラムとしてのゴム製筒体2に加硫成形する前の未加硫ゴム筒3を成型しつつ、この未加硫ゴム筒3に短繊維4を含有させるためのものであり、短繊維4を含有する未加硫ゴム5を加圧しつつ先端のヘッド6aに取り付けられたダイス7に供給する押出機6と、ダイス7のダイス穴7aを貫通して押出方向に突出するガイド棒8と、ガイド棒8の周りに押出成形された未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断して未加硫ゴムテープ10を形成するカッター11と、未加硫ゴムテープ10を螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒3を成型するための成型ドラムと12とを備えている。
【0039】
押出機6は、筒状のヘッド6aを管状の押出機本体6bの先端に設けてなり、押出機本体6bに内装されたスクリュー6cが回転することにより、未加硫ゴム5をヘッド6aに向けて圧送するようになっている。これにより、ヘッド6aに取り付けられたダイス7のダイス穴7aの内周縁と、ダイス穴7aを貫通するガイド棒8の外周面と、の隙間から未加硫ゴム5が押し出され、押出方向に突出するガイド棒8の周りに未加硫ゴムチューブ9が押出成形される。
【0040】
ダイス7は、その中央にダイス穴7aを有する板状とされ、ヘッド6aの中央穴を一側(押出方向側)から覆うよう、ヘッド6aの中心軸方向一側端にボルト締結されている。ダイス穴7aは、未加硫ゴムチューブ9を所望の外径に押出成形する大きさに設定されている。
【0041】
ガイド棒8は、ヘッド6aの中央穴に内装され、その先端がダイス穴7aを貫通して押出方向に突出すると共に、基端がヘッド6aの中心軸方向他側端にボルト締結されてヘッド6aの中央穴を他側から覆っている。ガイド棒8の外径は、例えばφ100mm程度で、未加硫ゴムチューブ9を所望の内径に押出成形する大きさに設定されている。ガイド棒8のうち、ヘッド6aに内装される部位は、押し出される未加硫ゴム5が全周に行き渡るよう、中心軸方向長さが外径よりも長く設定されている。また、押出方向に突出する部位は、未加硫ゴムチューブ9を押し出しやすいように、先端ほどわずかに細いテーパ状に形成されている。
【0042】
カッター11は、ガイド棒8を取り巻くように配置されたカッター周回装置13に支持され、このカッター周回装置13がその周方向に回転することにより、カッター11がガイド棒8の周りを周回して未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断する。このカッター11は、ガイド棒8の中心軸方向における位置を調節自在とされ、これにより、未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断してなる未加硫ゴムテープ10のテープ幅を調節するようになっている。
【0043】
成型ドラム12は、ガイド棒8と平行に配置されると共に、その一側端を、ガイド棒8の先端よりも一側に配置された成型ドラム周回装置14に片持ち支持され、この成型ドラム周回装置14が押出方向に移動しつつカッター周回装置13と同じ回転数で周方向に回転するようになっている。
【0044】
これにより、成型ドラム12が、押出方向に移動しつつガイド棒8の周りをカッター11と同じ回転数で周回し、成型ドラム12の周りに未加硫ゴムテープ10を螺旋状に巻き付けて、未加硫ゴム筒3を成型する。さらに、成型ドラム12がその中心軸を回転軸として自転することにより、未加硫ゴムチューブ9からの未加硫ゴムテープ10の切り出し速度と、成型ドラム12への巻き付け速度とを一致させるようになっている。
【0045】
成型ドラム12の外径は、例えばφ142mm程度で、成型ドラム12の中心軸方向長さは、中心軸方向長さ(L)と内径(D)との比(L/D)が10までの未加硫ゴム筒4を成型するのに必要な長さに設定されている。これにより、片持ち支持された状態でガイド棒8の周りを周回する成型ドラム12の撓みを十分に抑えて、未加硫ゴム筒4の成型精度を高めるようにしている。
【0046】
次に、ゴム製筒体の製造方法を説明する。まず、短繊維4を含有する未加硫ゴム5を押出機6で加圧してダイス穴7aからガイド棒8の中心軸方向に沿って押し出すことにより、ガイド棒8の周りに、短繊維4がチューブ中心軸方向、すなわち押出方向に配向する未加硫ゴムチューブ9を押出成形する。この押出成形として、例えば、押出速度が2m/min程度で、厚さ1.5mm程度の未加硫ゴムチューブ9を押出成形するのを例示できる。ここで、未加硫ゴム5に含有させる短繊維4は、例えば平均繊維径が1μm〜20μm、平均繊維長さが3mm〜20mmのナイロン短繊維であり、未加硫ゴム5の押出方向に配向する。
【0047】
また、ガイド棒8の周りに未加硫ゴムチューブ9を連続的に押出成形しつつ、カッター11をガイド棒8の周りを周回させることにより、未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断して、例えば39mm程度のテープ幅で短繊維4を含有する未加硫ゴムテープ10を形成する。このとき、短繊維4は、未加硫ゴムテープ10のテープ幅方向に対してわずかに傾斜する方向に配向する。この短繊維4の配向方向の傾斜角度は、テープ幅が大きいほど大きくなり、テープ幅が小さいほど0°に近づくので、所望の傾斜角度が得られるようテープ幅を設定すればよい。すなわち、未加硫ゴムチューブ9の押出速度及びカッター11の周回の回転数のうちの少なくとも一方を調節することにより、未加硫ゴムテープ10の幅を調節すればよい。
【0048】
さらに、未加硫ゴムチューブ9の押出成形、及び未加硫ゴムテープ10の形成と同時に、成型ドラム12を、未加硫ゴムチューブ9の押出速度と同じ速度で押出方向に移動させつつ、その中心軸を回転軸として自転させながらカッター11と同じ回転数で未加硫ゴムチューブ9の周りを周回させる。これにより、成型ドラム12の周りに未加硫ゴムテープ10が螺旋状に巻き付くと共に、未加硫ゴムテープ10の側縁が順に接合されて未加硫ゴム筒3が成型される。このとき、短繊維4は、ほぼ未加硫ゴム筒3の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒3の表面に沿う方向に配向する。
【0049】
ここで、例えば、成型ドラム12として、円錐台や太鼓状、鼓状などの複雑な形状のものを使用して、これらの形状の未加硫ゴム筒3を成型する場合、未加硫ゴム筒3の中心軸方向に沿うその内径の変化に対応させて、未加硫ゴムテープ10のテープ幅を変化させることにより、短繊維4をほぼ一定の方向に配向させるのがよい。具体的には、未加硫ゴムチューブ9の押出速度、カッター11の周回の回転数、及びガイド棒8の中心軸方向におけるカッター11の位置のうちの少なくともいずれかを調節して未加硫ゴムテープ10のテープ幅を変化させると共に、成型ドラム12の自転の回転数及び移動速度を調節する。
【0050】
次いで、未加硫ゴム筒3を内面未加硫ゴムとして、その外側に補強層及び外面未加硫ゴムを配置し、その後、未加硫ゴム筒3としての内面未加硫ゴム、補強層及び外面未加硫ゴムの積層体を加硫成形することにより、ゴム製筒体2が得られる。
【0051】
さらに、上記の方法で製造したゴム製筒体2をダイヤフラムとして、その少なくとも一方の端部に締結金具を取り付けることにより、空気ばねを製造することができる。この空気ばねは、ダイヤフラムが短繊維4を含有するゴムからなり、その短繊維4がダイヤフラムの中心軸を含む平面及びダイヤフラムの表面に沿う方向に配向されている。これにより、ダイヤフラムの端部に取り付ける締結金具による厚さ方向の圧縮に対するゴムの剛性が高められ、内部の空気圧に対するシール性が向上する。
【0052】
ここで、短繊維の配向方向がゴムの剛性に与える影響について説明する。図2は一定方向に配向する短繊維を含有するゴムの伸びと引張り応力との関係を示す図である。図2において、Aは、ゴムをその短繊維の配向方向に引っ張ったときの関係を示し、Bは、ゴムをその短繊維の配向方向と直交する方向に引っ張ったときの関係を示す。
【0053】
図2に示すように、短繊維4がその配向方向の伸びを規制することにより、通常のゴム製品の引張率である15%〜40%の引張率の範囲では、短繊維4の配向方向に引っ張ったとき、配向方向に直交する方向に引っ張ったときよりも、同一の伸び(%)において、2.5倍〜3倍の引張り応力を示すことがわかる。
【0054】
このように、短繊維4が配向方向の伸びを規制するので、短繊維4をダイヤフラムの中心軸を含む平面及びダイヤフラムの表面に沿う方向に配向させることにより、すなわち、図3に示すように、ダイヤフラムの端部のゴムの折り返し部において、短繊維4を放射状に配向させることにより、締結金具で圧縮することによる配向方向(図3における矢印方向)の伸びが規制されて端部ゴムの剛性が高められ、内部の空気圧に対するシール性が向上する。
【0055】
上記構成によれば、未加硫ゴムテープ10を成型ドラム12に螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒3を成型するので、成型ドラム12の形状を適宜設定することにより、φ200mm程度以上の大径、あるいは、円錐台状や太鼓状、鼓状などの不定径の未加硫ゴム筒3をも成形することができる。これにより、空気ばねのダイヤフラムなど、大径で複雑な形状のゴム製筒体2であっても精度よく製造することができる。
【0056】
つまり、例えば押出成形した未加硫ゴムチューブをそのまま成型ドラムに被せるという方法では、実用上φ200mmを上回る大きさに押出成形することができず、しかも、長いチューブ状に押し出す際や、これを成型ドラムに被せる際に寸法変動を生じやすい。これに対し、未加硫ゴムテープ10の巻き付けによる成型は、未加硫ゴムテープ10を形成する際、あるいはこれを成型ドラムの周りに巻き付ける際に寸法変動することがない。
【0057】
また、大径の未加硫ゴム筒3を成型する場合であっても、クロスヘッド方式での直接被覆のように、その成型が難しくなったり設備費用が極端に増加したりすることがなく、数mm程度の薄い肉厚のものをも成型することができる。
【0058】
しかも、未加硫ゴムテープ10の巻き付けによる成型は、短尺な未加硫ゴム筒3を成型する場合であっても、チューブ方式あるいはクロスヘッド直接被覆のように、材料ロスが多くなることもない。
【0059】
さらに、短繊維4を含有する未加硫ゴム5を押出成形してなる未加硫ゴムチューブ9を螺旋状に切断して未加硫ゴムテープ10を形成するので、未加硫ゴムテープ10のほぼテープ幅方向に短繊維4を配向させることができる。これにより、短繊維4をゴム製筒体2の中心軸を含む平面及びゴム製筒体2の表面に沿う方向に配向させることができ、締結金具による厚さ方向の圧縮に対する端部ゴムの剛性を高めて、内圧シール性能を高めることができる。また、変形の繰り返しによるシール圧の低下も少なく、長期間にわたって高圧シールすることができ、例えば空気ばねの高圧かつ大変位化による小型化を図ることができる。
【0060】
また、未加硫ゴムチューブ9を押出成形して直ぐのホットな状態のまま、これを切断して未加硫ゴムテープ10を形成し、成型ドラム12に巻き付けるので、未加硫ゴムテープ10の側縁同士を強力に接合することができる。
【0061】
成型装置1は、一台で、種々の厚さ及び幅の未加硫ゴムテープ10を形成することができ、しかも、その押出機6は、ガイド棒8の長さを従来よりも延長するだけで、従来から用いられる押出機をほぼそのまま用いることができる。
【0062】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、図4に示すように、成型ドラム12は、ガイド棒8と平行に配置する代わりに、ガイド棒8に対して傾斜させて配置することもでき、これにより、未加硫ゴムテープ10の巻き付け角度を調節するようにしてもよい。
【0063】
また、成型ドラム12に未加硫ゴムテープ10を螺旋状に巻き付ける際、この未加硫ゴムテープ10の巻き付け部分の側縁を、先に巻き付けた部分に重ねることにより、成型する未加硫ゴム筒3の厚さを調節することもできる。
【0064】
成型装置1は、短繊維4を含有する未加硫ゴム筒3の成型に好適に使用することができるが、短繊維4を含有しない未加硫ゴム筒の成型に使用してもよい。また、製造するゴム製筒体2は、空気ばねのダイヤフラムだけでなく、ゴム配管継手、タイヤ、ゴムホースなどであってもよい。
【0065】
未加硫ゴム筒3は、これを内面未加硫ゴムとして、その外側に補強層及び外面未加硫ゴムを配置し、これらの積層体を加硫成形してゴム製筒体2とするものに限定されない。すなわち、未加硫ゴム筒3のみを加硫成形してゴム製筒体2としてもよく、あるいは、内面未加硫ゴム及び補強層の外側に外面未加硫ゴムとしての未加硫ゴム筒3を配置し、これらの積層体を加硫成形してゴム製筒体2としてもよく、内面未加硫ゴム及び外面未加硫ゴムの両者を未加硫ゴム筒3としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る未加硫ゴム筒の成型装置を示す模式図
【図2】一定方向に配向する短繊維を含有するゴムの伸びと引張り応力との関係を示す図
【図3】短繊維が放射状に配向するダイヤフラム端部を示す模式図
【図4】本発明に係る未加硫ゴム筒の成型装置の別の形態を示す模式図
【図5】従来の未加硫ゴムテープの形成方法を示す図
【符号の説明】
【0067】
1 成型装置
2 ゴム製筒体
3 未加硫ゴム筒
4 短繊維
5 未加硫ゴム
6 押出機
7 ダイス
8 ガイド棒
9 未加硫ゴムチューブ
10 未加硫ゴムテープ
11 カッター
12 成型ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維を含有するゴム製筒体の製造方法であって、
短繊維を含有する未加硫ゴムを押出成形することにより、前記短繊維がチューブ中心軸方向に配向する未加硫ゴムチューブを形成し、さらに、前記未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して短繊維を含有する未加硫ゴムテープを形成すると共に、成型ドラムを、その中心軸を回転軸として自転させながら前記未加硫ゴムチューブの周りを周回させることにより、前記未加硫ゴムテープを成型ドラムの周りに螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒を成型しつつ、前記短繊維を未加硫ゴム筒の中心軸を含む平面及び未加硫ゴム筒の表面に沿う方向に配向させ、その後、前記未加硫ゴム筒を加硫成形することを特徴とするゴム製筒体の製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴムチューブをガイド棒の周りにかつ該ガイド棒の中心軸方向に押出成形しながら、未加硫ゴムチューブを切断するカッターを前記ガイド棒の周りを周回させることにより、前記未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して前記未加硫ゴムテープを形成し、該未加硫ゴムテープの形成と同時に、前記成型ドラムを、未加硫ゴムチューブの押出方向に移動させつつ、自転させながら前記カッターと同じ回転数で周回させて、成型ドラムの周りに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けることを特徴とする請求項1に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項3】
前記未加硫ゴムチューブの押出速度及び前記カッターの周回の回転数のうちの少なくとも一方を調節することにより、前記未加硫ゴムテープの幅を調節することを特徴とする請求項2に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項4】
前記未加硫ゴムチューブの押出速度、前記カッターの周回の回転数、及び前記ガイド棒の中心軸方向における前記カッターの位置のうちの少なくともいずれかを調節してテープ幅を変化させながら、前記未加硫ゴム筒の中心軸方向に沿ってその内径を変化させることを特徴とする請求項2又は3に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項5】
前記成型ドラムを片持ち支持すると共に、前記未加硫ゴム筒の中心軸方向長さ(L)と内径(D)との比(L/D)を10以下に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項6】
前記成型ドラムに未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付ける際、該未加硫ゴムテープの巻き付け部分の側縁を、先に巻き付けた部分に重ねることにより、成型する未加硫ゴム筒の厚さを調節することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によってゴム製筒体としてのダイヤフラムを製造し、該ダイヤフラムの少なくとも一方の端部に締結金具を取り付けることを特徴とする空気ばねの製造方法。
【請求項8】
ゴム製筒体に加硫成形する前の未加硫ゴム筒の成型装置であって、
ダイスと、該ダイスの内側からダイス穴を貫通して押出方向に突出するガイド棒と、未加硫ゴムを加圧しつつ前記ダイスに供給してダイス穴の周縁及びガイド棒の隙間から前記ガイド棒の周りに未加硫ゴムチューブを押出成形する押出機と、前記ガイド棒の周りを周回して未加硫ゴムチューブを螺旋状に切断して未加硫ゴムテープを形成するカッターと、前記未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けて未加硫ゴム筒とするための成型ドラムとを備え、
前記成型ドラムは、押出方向に移動しつつ、その中心軸を回転軸として自転しながらガイド棒の周りをカッターと同じ回転数で周回することにより、その周りに前記未加硫ゴムテープを螺旋状に巻き付けることを特徴とする未加硫ゴム筒の成型装置。
【請求項9】
前記カッターは、ガイド棒の中心軸方向における位置を調節自在とされたことを特徴とする請求項8に記載の未加硫ゴム筒の成型装置。
【請求項10】
短繊維を含有する未加硫ゴムから前記未加硫ゴム筒を成型することを特徴とする請求項8又は9に記載の未加硫ゴム筒の成型装置。
【請求項11】
短繊維を含有するゴムからなる筒状のダイヤフラムの少なくとも一方の端部に締結金具を取り付けてなり、前記短繊維がダイヤフラムの中心軸を含む平面及びダイヤフラムの表面に沿う方向に配向されたことを特徴とする空気ばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−168492(P2008−168492A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2860(P2007−2860)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】