説明

サイクロ減速機

【課題】ケース部材内での外側歯車のがたを抑制してサイクロ減速機の効率を向上させることのできるサイクロ減速機を提供する。
【解決手段】クランプ用歯車68は、外側歯車58の回転軸心と平行な軸心まわりに回転可能にケース部材50の取付部材64に支持され、クランプ用歯車68のピッチ面と外側歯車58の複数の歯58bのピッチ面とはテーパー状であり、クランプ用歯車68をその軸心L3方向であって外側歯車58を押圧する方向に移動させてその外側歯車58の外周部の一部をそのクランプ用歯車68と取付部材64との間に挟圧して固定するクランプ装置56を含むことから、そのクランプ装置56によって挟圧され外側歯車58が固定されるので、外側歯車58の外周部の歯58bとクランプ用歯車68の歯68aとのバックラッシュが大幅に減少し、ケース部材50内での外側歯車58のがたが抑制させられてサイクロ減速機48の効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロ減速機に関し、特にサイクロ減速機の性能が向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクロ減速機は、たとえば特許文献1に示すように、(a) 第1軸心回りに回転するとともに、その第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、(b) その第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部と外周歯とを備え、その入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、(c) その内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、(d) その外側歯車をその第1軸心回り回転可能に収容するとともに前記外側歯車の外周部に設けられた複数の歯と噛み合う螺旋状の歯を有するウォームとを収容するケース部材と、(e) 前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを含み、(f) 前記ウォームによって前記外側歯車の回転が拘束されることによって前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するとともに、前記入力軸の回転停止中に前記ウォームを回転することによって前記出力軸を回転させるものである。
【0003】
上記のようなサイクロ減速機において、上記外側歯車は、上記ウォームの螺旋状の歯にその外側歯車の外周部の歯が当接しその外側歯車の回転が拘束され、上記ケース部材内においてその外側歯車の位置が固定され前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−247680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように上記外側歯車の位置を上記ウォームによって固定するとそのウォームの螺旋状の歯とその外側歯車の外周部の歯との隙間であるバックラッシュによって、上記外側歯車が上記ケース部材内でがたが生じてしまいサイクロ減速機の効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ケース部材内での外側歯車のがたを抑制してサイクロ減速機の効率を向上させることのできるサイクロ減速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 第1軸心回りに回転するとともに、その第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、(b) その第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部と外周歯とを備え、その入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、(c) その内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、(d) その外側歯車をその第1軸心回り回転可能に収容するとともに前記外側歯車の外周部に設けられた複数の歯と噛み合うクランプ用歯車とを収容するケース部材と、(e)前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを含み、(f) 前記クランプ用歯車の回転を拘束することによって前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するとともに、前記入力軸の回転停止中に前記クランプ用歯車を回転することによって前記出力軸を回転させるサイクロ減速機であって、(g) 前記クランプ用歯車は、前記外側歯車の回転軸心と平行な軸心まわりに回転可能に前記ケース部材に支持され、(h) 前記クランプ用歯車のピッチ面と前記複数の歯のピッチ面とはテーパー状であり、(i) 前記クランプ用歯車をその軸心方向であって前記外側歯車を押圧する方向に移動させてその外側歯車の外周部の一部をそのクランプ用歯車と前記ケース部材との間に挟圧して固定するクランプ装置を含むものである。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記クランプ装置は、前記クランプ用歯車を支持して前記ケース部材を貫通する支持軸と、前記ケース部材の外側においてその支持軸に螺合されたロックナットとを備えるものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、(a) 前記入力軸は、電動機により回転駆動されるものであり、(b) 前記出力軸の出力は、車輪と一体的に回転させられるディスクロータの外周部の両側面に配設された一対のブレーキパッドの間を接近させるブレーキピストンを駆動させるものであって、(c) 前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介して前記一対のブレーキパッドが前記ディスクロータを挟圧し、ディスクブレーキが制動するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明のサイクロ減速機によれば、(g) 前記クランプ用歯車は、前記外側歯車の回転軸心と平行な軸心まわりに回転可能に前記ケース部材に支持され、(h) 前記クランプ用歯車のピッチ面と前記複数の歯のピッチ面とはテーパー状であり、(i) 前記クランプ用歯車をその軸心方向であって前記外側歯車を押圧する方向に移動させてその外側歯車の外周部の一部をそのクランプ用歯車と前記ケース部材との間に挟圧して固定するクランプ装置を含むことから、そのクランプ装置によって前記外側歯車が挟圧されて固定されるので、前記外側歯車の外周部の歯と前記クランプ用の歯車の歯とのバックラッシュが大幅に減少し、前記ケース部材内での前記外側歯車のがたが抑制させられて前記サイクロ減速機の効率が向上する。
【0010】
請求項2に係る発明のサイクロ減速機によれば、前記クランプ装置は、前記クランプ用歯車を支持して前記ケース部材を貫通する支持軸と、前記ケース部材の外側においてその支持軸に螺合されたロックナットとを備えるものであるため、前記ロックナットを回転することにより前記支持軸を介して前記クランプ用歯車が前記外側歯車を押圧する方向に移動させられ、前記外側歯車の外周部の一部がそのクランプ用歯車と前記ケース部材との間に挟圧されて前記外側歯車が固定される。
【0011】
請求項3に係る発明のサイクロ減速機によれば、(a) 前記入力軸は、電動機により回転駆動されるものであり、(b) 前記出力軸の出力は、車輪と一体的に回転させられるディスクロータの外周部の両側面に配設された一対のブレーキパッドの間を接近させるブレーキピストンを駆動させるものであって、(c) 前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介して前記一対のブレーキパッドが前記ディスクロータを挟圧し、ディスクブレーキが制動するものであるため、同じ出力の電動機を使用した場合、前記サイクロ減速機を使用するディスクブレーキの制動力を従来のサイクロ減速機を使用するに比べ向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例の車両用ディスクブレーキ10の要部を説明する断面図であり、ディスクブレーキ10は、図示されてないブレーキペダルが操作されることにより発生する油圧によって制動状態が得られるとともに、図示されていないパーキングレバーが操作されることによりそのディスクブレーキ10に備えられた電動機12が駆動し制動状態が得られるものである。
【0014】
ディスクブレーキ10は、図1に示すように、車輪と一体的に回転させられる略円板状のディスクロータ14と、車体側の非回転部材に固定されるとともにキャリパ16をディスクロータ14の回転軸心方向と平行に移動可能に支持するブラケット18とを備えている。ブラケット18にはディスクロータ14の回転軸心と平行な軸心を有する略円柱形状の一対のスライドピン20,22が備えられ、キャリパ16にはその一対のスライドピン20,22を摺動可能に貫通された図示されいないガイド穴が備えられているため、キャリパ16は一対のスライドピン20,22によってディスクロータ14の回転軸心方向と平行に移動可能且つその回転軸心回り回転が不能にブラケット18に支持される。
【0015】
キャリパ16は、図1に示すように、略有底円筒状のブレーキピストン24をディスクロータ14の回転軸心と平行に移動可能に設ける略円柱形状の穴26を有するシリンダ部16aと、ディスクロータ14の外周部14aをシリンダ部16aとで挟むようにシリンダ部18と反対側に配置される爪部16bと、その爪部16bとシリンダ部16aとを連結する連結部16cとによって構成されている。ブレーキピストン24とディスクロータ14の外周部14aとの間には、ディスクロータ14の外周部14aのブレーキピストン24側の側面14bを押圧するインナパッド28が配設されているとともに、爪部16bとディスクロータ14の外周部14aとの間には、ディスクロータ14の外周部14aの爪部16c側の側面14cを押圧するアウタパッド20が配設されている。
【0016】
インナパッド28およびアウタパッド30は、図1に示すように、ディスクロータ14の外周部14aを押圧することによってディスクブレーキ10に制動力を発生させる摩擦材32と、その摩擦材32を固定する略長方形状の金属製裏板34とによってそれぞれ構成されるものである。また、図2に示すように、インナパッド28およびアウタパッド30の裏板34にはその裏板34の両側面の一部からブラケット18側に延びる一対の耳部34aが備えられており、ブラケット18にはその一対の耳部34aを摺接することによってインナパッド28およびアウタパッド30をブレーキピストン24の軸心方向に移動可能且つそのブレーキピストン24の軸心回りの回転を不能に支持する一対のガイド溝18aが備えられている。
【0017】
また、インナパッド28の裏板34とブレーキピストン24とが係合する一対の係合面34b,24aには、ブレーキピストン24の径方向に掘られた略長方形状の係合溝24bと、裏板34の係合面34bの一部からブレーキピストン24の係合溝24bに伸長された断面が略四角形状の係合突起34cとが備えられており、その裏板34の係合突起34cとブレーキピストン24の係合溝24bとによってインナパッド28の裏板34とブレーキピストン24とが相対回転不能に係合され、ブレーキピストン24はシリンダ部16aの穴26内においてその軸心回りの回転が拘束される。
【0018】
図3に示すように、キャリパ16のシリンダ部16aには、ブレーキピストン24の内周面およびシリンダ部16aの穴26の内周面によって囲まれた油圧室36と連通する油圧路38が備えられており、前記ブレーキペダルの操作により発生した油圧をその油圧路38を介して油圧室36に発生することによって、ブレーキピストン24がディスクロータ14側に移動する。
【0019】
また、図3に示すように、シリンダ部16aの穴26の内周面とブレーキピストン24の外周面との間には、油圧室36に供給された作動油の漏れを防止する弾性変形可能なゴム製のオイルシール40が備えられている。また、オイルシール40は、油圧室36に油圧が発生させられブレーキピストン24がシリンダ部16aの開口部16dからディスクロータ14に向かって突き出されるとそのブレーキピストン24によって引きずられて弾性変形し、油圧室36に油圧が作用されなくなるとそのオイルシール40の弾性復元力によって突き出されたブレーキピストン24がシリンダ部16aの穴26内に引き込まれる。
【0020】
また、図3に示すように、シリンダ部16aの開口部16dとブレーキピストン24の外周面との間には、弾性変形可能なゴム製であって円環形状のダストブーツ42が備えられており、そのダストブーツ42によって油圧室36内への泥水や砂塵などの異物の侵入が防止される。
【0021】
上記のように構成されたディスクブレーキ10によれば、図示されていないブレーキペダルが操作されることによって油圧路38を介して油圧室36に油圧が発生させられると、ブレーキピストン24がディスクロータ14側に突き出されるとともにインナパッド28がディスクロータ14の外周部14aを押圧する。インナパッド28がディスクロータ14の外周部14aを押圧するとその押圧する力によって、キャリパ16の爪部16cがブラケット18の一対のスライドピン20、22を介してディスクロータ14の外周部14a側に移動しアウタパッド30をディスクロータ14の外周部14aに押圧するので、ディスクロータ14の外周部14aの両側面は、インナパッド28とアウタパッド30とによって挟圧されディスクブレーキ10に制動力が発生する。
【0022】
上記ブレーキペダルの操作が解除されると前記オイルシール40の弾性復帰力によってブレーキピストン24がシリンダ穴26内に引き込まれインナパッド28およびアウタパッド30がディスクロータ14の外周部14aから離れてディスクブレーキ10の制動状態が解除される。
【0023】
また、ディスクブレーキ10は、図1および図4に示すように、図示されていないパーキングレバーの操作に応答して駆動され回転軸12aが回転される電動機12と、その電動機12の回転駆動によって入力軸44が回転されるとともに、その入力軸44に入力された回転が減速され且つトルクが高められて出力軸46から出力されるサイクロ減速機48と、キャリパ16のシリンダ部16aに固設され、サイクロ減速機48が収容されるとともに電動機12が取り付けられるケース部材50と、出力軸46が回転することによってブレーキピストン24がディスクロータ14の回転軸心と平行な方向に移動させられるピストン移動機構52とをさらに備えている。
【0024】
サイクロ減速機48は、図4乃至図6に詳しく示すように、電動機12の回転軸12aの軸心と同軸である第1軸心L1回りに回転するとともに、その第1軸心L1から所定の偏心量eだけ偏心した第2軸心L2を中心とする外周面44aが形成された偏心部44bを有する入力軸44と、厚み方向に突設された円柱状の突部54aを備えて外周面44aに嵌合されることにより入力軸44の偏心部44bに相対回転可能に支持される内側歯車54と、ケース部材50に収容されたクランプ装置56によって第1軸心L1と同軸に位置固定に設けられ、内側歯車54の外周歯54bと噛み合う内周歯58aを有する環状の外側歯車58と、内側歯車54の突部54aが遊嵌される円形の穴部46aを備えて第1軸心L1回りに回転する出力軸46とを備えるものである。
【0025】
上記入力軸44には、電動機12の回転軸12aを相対回転不能且つその軸心方向移動可能に嵌合する嵌合穴44cが備えられており、入力軸44および回転軸12aは、第1軸心L1回りに相対回転不能に連結するものである。
【0026】
上記内側歯車54は、図6に示すように、外側歯車58の内周歯58aに噛み合わされる外周歯54bと、第2軸心L2回りの一円周上に位置する複数個(本実施例では4個)出力軸46側に突設された突部54aと、それら突部54aの外周面にその突部54aに対して相対回転可能に嵌合された図示されていないメタルベアリングとを備えるものであり、入力軸44の偏心部44bの外周面44a上に嵌合されたボールベアリング60を介して、入力軸44に対して相対回転可能に第2軸心L2回りに相対回転可能に偏心部44bにより支持されている。
【0027】
ケース部材50は、図4乃至図6に示すように、サイクロ減速機48を収容するための略円柱形状の収容穴62aを有する略有底円筒形状の減速機用ケース62と、電動機12をサイクロ減速機48に取り付けるための略円柱形状の取付穴64aを有する平板状の取付部材64とによって構成されており、減速機用ケース62と取付部材64とは図2に示す4本の六角穴付きボルト66によって固定されるものである。上記収容穴62aの内周面には、外側歯車58を第1軸心L1回り回転可能に収容するために上記収容穴62aの径が一部拡大された大径部62bと、外側歯車58の外周部の一部と隣り合いクランプ装置56を収容する収容部62cとが備えられている。
【0028】
クランプ装置56は、図7に示すように、外側歯車58の回転軸心と平行な第3軸心L3回りに回転可能且つ歯すじがその第3軸心L3に向かう複数の歯68aを有するクランプ用歯車68と、そのクランプ用歯車68をその第3軸心L3回り回転可能に支持してケース部材50の取付部材64に備えられた貫通穴64aを挿通する略円柱形状の支持軸68bと、支持軸68bの外周面に螺刻されたねじ部68cにケース部材50の取付部材64の外側で螺合するロックナット70と、支持軸68bの先端部においてたとえばプライヤー等の工具71によって挟まれその工具71を回転することによってクランプ用歯車68を回転させる断面が略四角形状の工具係合部68dとを備えるものである。
【0029】
外側歯車58の外周部には、図5に示すように、歯すじが第1軸心L1に向かい且つクランプ用歯車68の歯68aと噛み合う複数の歯58bが備えられており、その外側歯車58の歯58bは、図7に示すように、ロックナット70が矢印F1方向に回転させられることによりクランプ用歯車68が、第3軸心方向におけるケース部材50の取付部材64側すなわち矢印F2方向に移動させられてクランプ用歯車68の歯68aとケース部材50の取付部材64との間で挟圧される。また、図4乃至図7に示すように、クランプ用歯車68のピッチ面と外側歯車58の複数の歯58bのピッチ面とはテーパー状である。
【0030】
上記ように構成されたクランプ装置56によれば、ロックナット70を矢印F1方向に回転されてクランプ用歯車68が取付部材64側に移動すると、外周歯車58の歯58bがクランプ用歯車68の歯68aに押圧される。すなわち、外周歯車58の外周部がクランプ用歯車68とケース部材50の取付部材64とによって挟圧されて外側歯車58が固定される。クランプ装置56によって外側歯車の外周部がクランプ用歯車68と取付部材64とに挟まれるとその外側歯車58の歯58bとクランプ用歯車68の歯68aとの隙間であるバックラッシュが大幅に減少されるので、外側歯車58はケース部材50内でがたが抑制された状態で固定される。また、図8に示すように、ロックナット70を支持軸68bのねじ部68cから取り外し、クランプ用歯車68の歯68aを外側歯車58の歯58bに噛み合わせて、支持軸68bの工具係合部68dを工具71によって第3軸心まわりに回転するとクランプ用歯車68を介して外側歯車58を第1軸心L1まわりに回転することができる。
【0031】
上記クランプ装置56が備えられたサイクロ減速機48によれば、クランプ装置56によって外側歯車58が固定された状態で電動機50の回転軸50aから入力軸44に回転が入力されると、入力軸44が第1軸心L1回りに回転するとともに内側歯車54はその入力軸44の偏心部44bを介して突部44aを出力軸46の穴部46aの内周面に摺動させて第2軸心L2回りに回転してその回転を突部46aを介して出力軸46に伝達する。また、電動機12が駆動していないすなわち入力軸44の回転停止中に、ロックナット70を取り外し工具71を用いてクランプ用歯車68を回転させると、外側歯車58が第1軸心L1回りに回転するとともに外側歯車58の内周歯58bから内側歯車54の外周歯54bに回転が伝達され内側歯車54が回転する。そして、内側歯車54が回転することによって、突部54aを介してその回転が出力軸46に伝達する。
【0032】
上記のように構成されるサイクロ減速機48によれば、ケース部材50内において外側歯車58はクランプ装置56によってがたを大幅に抑制した状態で固定されるため、外側歯車58の複数の歯を螺旋状の歯を有したウォームに噛み合わせることによって固定する従来のサイクロ減速機に比べ、内側歯車54の外周歯54bと外側歯車58の内周歯58aとの噛み合いの精度が上がるので、従来のサイクロ減速機に比べサイクロ減速機の効率を向上することができる。
【0033】
ピストン移動機構52は、図3および図4に示すように、ディスクロータ14側の端部の外周面に螺刻されたねじ部72aと出力軸46に備えられた略六角形状の貫通穴46bに相対回転不能に嵌合するその貫通穴46bと略同形状の嵌合部72bとを有し、出力軸46の回転を伝達するため減速機ケース62およびシリンダ部16aに設けられた貫通穴62d,16dを挿通する略円柱形状の回転伝達軸72と、先端部にブレーキピストン24の内周面と相対回転不能に係合する係合部74aを有し、回転伝達軸72のねじ部72aに螺合する略円筒形状のナット部材74とを備えており、出力軸46が回転することによって回転伝達軸72が回転させられると、ナット部材74がねじの作用によってディスクロータ14側に移動するとともにブレーキピストン24がそのナット部材74に押されディスクロータ14側に移動させられる。また、ピストン移動機構52は、回転伝達軸72が上記回転と反対方向に回転することでナット部材74は電動機12側すなわちもとの位置に移動させられる。
【0034】
ナット部材74の係合部74aは、図9に示すように、略四角形状の外周を有するものであり、有底円筒状であるブレーキピストン24の内周面の一部には、その係合部74aの外周形状に対応するとともに相互に位相を45度ずらせた2つの正四角形を重ねたような略星形形状の断面である係合面24aが備えられているため、その係合部74aと係合面24aとを介してナット部材74とブレーキピストン24とは相対回転不能に係合されるものである。
【0035】
上記のように構成されたディスクブレーキ10によれば、図示されていないパーキングレバーが操作されることにより電動機12が駆動し入力軸44に回転が入力されると、サイクロ減速機48およびピストン移動機構52を介してブレーキピストン24がディスクロータ14側に突き出されるとともにインナパッド28がディスクロータ14の外周部14aを押圧する。インナパッド28がディスクロータ14の外周部14aを押圧するとその押圧する力によって、キャリパ16の爪部16cがブラケット18の一対のスライドピン20、22を介してディスクロータ14の外周部14a側に移動されアウタパッド30がディスクロータ14の外周部14aを押圧するので、ディスクロータ14の外周部14aの両側面は、インナパッド28とアウタパッド30とによって挟圧されディスクブレーキ10に制動力が発生する。また、ディスクブレーキ10は、前記のように従来のサイクロ減速機に比べサイクロ減速機の効率が向上されたサイクロ減速機48を使用しているため、同じ出力の電動機を使用した場合ディスクブレーキの制動力を上記従来のサイクロ減速機を使用するに比べ向上することができる。
【0036】
また、上記パーキングレバーの操作が解除されると電動機12の回転軸12aは上記回転とは反対方向に回転しサイクロ減速機48および回転伝達軸72を介してナット部材76が電動機12側すなわちもとに位置に移動する。ナット部材76がもとに位置に移動するとブレーキピストン24は前記オイルシール40の弾性復帰力によってブレーキピストン24がシリンダ穴26内に引き込まれインナパッド28およびアウタパッド30がディスクロータ14の外周部14aから離れてディスクブレーキ10の制動状態が解除される。
【0037】
また、ディスクブレーキ10に制動力が発生した状態で電動機12が故障すなわち電動機12が停止した場合、作業者はロックナット70を取り外して工具係合部68dを工具71によってクランプ用歯車68と外側歯車58とを噛み合わせてクランプ用歯車68を回転させると、出力軸46が回転しピストン移動機構52を介してナット部材74を電動機12側にすなわちもとの位置に移動させられて、上記のようにブレーキピストン24は前記オイルシール40の弾性復帰力によってブレーキピストン24がシリンダ穴26内に引き込まれインナパッド28およびアウタパッド30がディスクロータ14の外周部14aから離れてディスクブレーキ10の制動状態が解除される。
【0038】
本実施例のサイクロ減速機48によれば、(a) クランプ用歯車68は、外側歯車58の回転軸心と平行な軸心まわりに回転可能にケース部材50の取付部材64に支持され、(b) クランプ用歯車68のピッチ面と外側歯車58の複数の歯58bのピッチ面とはテーパー状であり、(c) クランプ用歯車68をその軸心L3方向であって外側歯車58を押圧する方向に移動させてその外側歯車58の外周部の一部をそのクランプ用歯車68とケース部材50の取付部材64との間に挟圧して固定するクランプ装置56を含むことから、そのクランプ装置56によって挟圧され外側歯車58が固定されるので、外側歯車58の外周部の歯58bとクランプ用歯車68の歯68aとのバックラッシュが大幅に減少し、ケース部材50内での外側歯車58のがたが抑制させられてサイクロ減速機48の効率が向上する。
【0039】
また、本実施例のサイクロ減速機48によれば、クランプ装置56は、クランプ用歯車68を支持してケース部材50の取付部材64を貫通する支持軸68bと、ケース部材50の取付部材64の外側においてその支持軸68bのねじ部68cに螺合されたロックナット70とを備えるものであるため、ロックナット70を回転することにより支持軸68bを介してクランプ用歯車68が外側歯車58を押圧する方向に移動させられ、外側歯車58の外周部の一部がそのクランプ用歯車68とケース部材50の取付部材64との間に挟圧されて外側歯車58が固定される。
【0040】
また、本実施例のサイクロ減速機48によれば、(a) 入力軸44は、電動機12により回転駆動されるものであり、(b) 出力軸46の出力は、車輪と一体的に回転させられるディスクロータ14の外周部14aの両側面に配設されたインナパッド28とアウタパッド30との間を接近させるブレーキピストン24を駆動させるものであって、(c) 電動機12を駆動することによりサイクロ減速機48を介してインナパッド28とアウタパッド30とがディスクロータ14の外周部14aを挟圧し、ディスクブレーキ10が制動するものであるため、同じ出力の電動機を使用した場合、サイクロ減速機48を使用するディスクブレーキ10の制動力を外側歯車58の複数の歯を螺旋状の歯を有したウォームに噛み合わせることによって固定する従来のサイクロ減速機を使用するに比べ向上することができる。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0042】
たとえば、本実施例のサイクロ減速機48は、内側歯車54および外側歯車58を有する1段歯車のサイクロ減速機48であったがサイクロ減速機48は1段に限定されるものではなく何段であっても良い。
【0043】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のサイクロ減速機が使用されたディスクブレーキを説明する断面図である。
【図2】図1におけるII-II視面図である。
【図3】ピストン移動機構を説明する図1の拡大図である。
【図4】サイクロ減速機を説明する図1の拡大図である。
【図5】図4におけるV-V視断面図である。
【図6】図4におけるVI-VI視断面図である。
【図7】クランプ装置による外側歯車の固定方法を説明する図4の拡大図である。
【図8】クランプ装置による外側歯車の回転方法を説明する図4の拡大図である。
【図9】図3におけるIX-IX視断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10:ディスクブレーキ
12:電動機
14:ディスクロータ
14a:外周部
28,30:一対のブレーキパッド(インナパッド,アウタパッド)
44:入力軸
44a:外周面
44d:偏心部
46:出力軸
46a:穴部
48:サイクロ減速機
50:ケース部材
54:内側歯車
54a:突部
54b:外周歯
56:クランプ装置
58:外側歯車
58a:内周歯
58b:歯
68:クランプ用歯車
68b:支持軸
70:ロックナット
L1:第1軸心
L2:第2軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸心回りに回転するとともに、該第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、該第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部と外周歯とを備え、該入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、該内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、該外側歯車を該第1軸心回り回転可能に収容するとともに前記外側歯車の外周部に設けられた複数の歯と噛み合うクランプ用歯車とを収容するケース部材と、前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを含み、前記クランプ用歯車の回転を拘束することによって前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するとともに、前記入力軸の回転停止中に前記クランプ用歯車を回転することによって前記出力軸を回転させるサイクロ減速機であって、
前記クランプ用歯車は、前記外側歯車の回転軸心と平行な軸心まわりに回転可能に前記ケース部材に支持され、
前記クランプ用歯車のピッチ面と前記複数の歯のピッチ面とはテーパー状であり、
前記クランプ用歯車をその軸心方向であって前記外側歯車を押圧する方向に移動させて該外側歯車の外周部の一部を該クランプ用歯車と前記ケース部材との間に挟圧して固定するクランプ装置を含むことを特徴とするサイクロ減速機。
【請求項2】
前記クランプ装置は、前記クランプ用歯車を支持して前記ケース部材を貫通する支持軸と、前記ケース部材の外側において該支持軸に螺合されたロックナットとを備えることを特徴とする請求項1のサイクロ減速機。
【請求項3】
前記入力軸は、電動機により回転駆動されるものであり、
前記出力軸の出力は、車輪と一体的に回転させられるディスクロータの外周部の両側面に配設された一対のブレーキパッドの間を接近させるブレーキピストンを駆動させるものであって、
前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介して前記一対のブレーキパッドが前記ディスクロータを挟圧し、ディスクブレーキが制動するものである請求項1または2のサイクロ減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−222089(P2009−222089A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64742(P2008−64742)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】