サスペンションメンバ
【課題】 乗り心地や振動、騒音が改善されるとともに、スタビライザが取付けられている場合であってもロールが効果的に防止されたサスペンションメンバを提供する。
【解決手段】 サスペンションメンバ10のロール中心の車輪接地面からの高さLzを設定するにあたり、車両の定常旋回時に車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、車体を支持するコイルスプリング23R,23Lおよびスタビライザ31が発生する弾性力に対して接地面にて生じる上下反力のモーメントとが等しくなるように、高さLzを設定する。これによりサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを実質的に0にすることができ、車両旋回時にサスペンションメンバ10が大きくロールすることが効果的に防止される。また、クッション40によってサスペンションメンバ10が車体に弾性支持されることにより、乗り心地や振動、騒音も改善される。
【解決手段】 サスペンションメンバ10のロール中心の車輪接地面からの高さLzを設定するにあたり、車両の定常旋回時に車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、車体を支持するコイルスプリング23R,23Lおよびスタビライザ31が発生する弾性力に対して接地面にて生じる上下反力のモーメントとが等しくなるように、高さLzを設定する。これによりサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを実質的に0にすることができ、車両旋回時にサスペンションメンバ10が大きくロールすることが効果的に防止される。また、クッション40によってサスペンションメンバ10が車体に弾性支持されることにより、乗り心地や振動、騒音も改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置を構成するサスペンションメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
車体に対して車輪を懸架するサスペンション装置は、サスペンションアームやサスペンションメンバを備える。サスペンションアームはその一端である車両外方端が車輪側の部材に連結され、その他端である車両内方端がサスペンションメンバに連結される。サスペンションメンバはクロスメンバなどの車体側(ボデー側)の部材に連結される。
【0003】
サスペンションメンバは、弾性部材を有するクッションなどを介して車体側の部材に連結されることがある。このクッションは、例えば、内筒と外筒との間に円筒状の弾性体(例えばゴム)を配設したブッシュにより構成することができる。そして、外筒側にサスペンションメンバを、内筒側に車体側の部材をそれぞれ連結することにより、サスペンションメンバが車体に弾性支持される。
【0004】
サスペンションメンバが上記したように車体に弾性支持されている場合、車体の防振化を図ることができる。特に上記した円筒状のブッシュは軸方向に伸び縮みし易い。このため、軸方向が車体の上下方向に一致した状態で配設された円筒状のブッシュを介してサスペンションメンバを車体に連結することにより、車体の上下方向における振動低減効果を改善することができる。これにより路面の凹凸による車輪の振動がサスペンションメンバを介して車体側に伝達されることを効果的に防止することができ、乗り心地や、振動、騒音の改善がなされる。
【0005】
一方で、サスペンションメンバを弾性支持することは、サスペンションメンバのロール剛性の低下を招く。このため車両が旋回したときにサスペンションメンバがロールし易くなり、キャンバー方向へのサスペンションアライメント、例えばキャンバー角も変化し易くなる。旋回状態に応じてサスペンションアライメントが変化すると車両の運動性能上に悪影響を及ぼす。したがって、車両の旋回中にサスペンションアライメントを一定に保って車両の運動性能を維持するためにはサスペンションメンバのロール剛性を向上しなければならない。すなわちサスペンションメンバを弾性支持して乗り心地や振動、騒音を改善することと、サスペンションメンバのロール剛性を高めて車両の運動性能を維持することの両立は困難である。
【0006】
特許文献1には、サスペンションメンバを弾性支持するクッション(インシュレータ)の上端を下端に対して車両内方に傾けることによって、サスペンションメンバのロール中心である弾性中心の位置をロールセンタ軸の位置に一致させたサスペンションメンバが記載されている。このサスペンションメンバによれば、ロール中心位置が車体のロールセンタ軸の位置に一致しているので、車両旋回時にサスペンションメンバに作用するロールモーメントが0になる。このため車体に弾性支持されたサスペンションメンバのロールを効果的に防止することができる。
【特許文献1】特開2007−203833号公報
【発明の開示】
【0007】
上記特許文献1に記載されたサスペンションメンバでは、車両の旋回状態が変化する場合に常にサスペンションメンバのロール挙動を抑制できるわけではない。また、車両には、ロール挙動を抑制するためのスタビライザが取付けられることもあり、このスタビライザは車両搭載上の理由からサスペンションメンバに支持されることもある。上記特許文献1に記載されたサスペンションメンバにスタビライザが取付けられている場合には、車両旋回時にスタビライザが発生する弾性力に対する反力によりサスペンションメンバがロールしてしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、車体に弾性支持されることにより乗り心地や振動、騒音が改善されるとともに、スタビライザが取付けられている場合であっても車両旋回時のロールが効果的に防止されたサスペンションメンバを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の特徴は、サスペンションアームを支持するとともに弾性部材を介して車体に弾性支持され、かつスタビライザが取付けられたサスペンションメンバにおいて、前記サスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に左右の車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、前記定常旋回時に車体を支持するコイルスプリングおよび前記スタビライザが発生する力に対して前記接地面にて生じる上下反力のモーメントに基づいて、前記接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さが設定されたサスペンションメンバ、またはそのようなサスペンションメンバの取付け構造とすることにある。この場合、横力のモーメントと上下反力のモーメントとの和が0になるように、すなわち横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるように、接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さを設定するとよい。
【0010】
上記発明によれば、サスペンションメンバのロール中心の車輪接地面からの高さは、サスペンションメンバに作用するロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に車輪接地面にて生じる横力のモーメントと上下反力のモーメントに基づいて設定される。ここで、上記車輪接地面は、サスペンションメンバがサスペンションアームなどを介して連結している左右の車輪の接地面である。また、上下反力は、車両旋回時にコイルスプリングおよびスタビライザが発生する力に対する反力である。車両旋回時にサスペンションメンバに働くロールモーメントは上記横力のモーメントと上下反力のモーメントによるものが支配的である。よって、これらのモーメントに基づいてサスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さを設定することにより、サスペンションメンバのロールを防止することができる。具体的には、上記横力のモーメントと上記上下反力のモーメントとの和が0となるようにサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を設定する。この場合、横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるようにサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を設定する。これにより、サスペンションメンバに作用するロールモーメントが実質的に0となり、サスペンションメンバのロールが防止される。なお、本発明は、サスペンションメンバに作用するロールモーメントを正確に0にするようにロール中心の高さ位置を設定するものでなくてもよい。車両旋回中に車両のサスペンションアライメントの変化による運動性能の変化が運転者に感じられない程度にサスペンションメンバのロールを抑えるように、すなわちロールモーメントが略0となるように上記ロール中心の高さ位置を設定するものであれば、本発明に含まれるものとする。
【0011】
つまり、本発明では、サスペンションメンバに作用するロールモーメントを横方向の力のモーメントと上下方向の力のモーメントに分けて考え、上下方向の力のモーメントにスタビライザが発生する力に対する反力のモーメントを含ませている。そして、これらのモーメントの合計である総合的なロールモーメントが略0となるような高さ位置にサスペンションメンバのロール中心を設定する。このようにロール中心の高さ位置を設定してサスペンションメンバに作用するロールモーメントを略0にすることによって、スタビライザが取付けられているサスペンションメンバであってもそのロールが防止される。このためサスペンションメンバを車体に弾性支持した場合であっても、車両旋回時にサスペンションメンバが大きくロールしてキャスタ角などのサスペンションアライメントが大きく変化することが効果的に防止される。そして、弾性支持によって乗り心地や振動、騒音も改善される。すなわち本発明のサスペンションメンバを用いることにより、車体への弾性支持により乗り心地や振動、騒音を改善することと、サスペンションメンバをロールし難くして車両の運動性能を維持することの両立が可能となる。
【0012】
なお、サスペンションメンバにスタビライザが取付けられているものにおいては、旋回時にサスペンションメンバに働くロールモーメントのうち、コイルスプリングが発生する弾性力に対する上下反力のモーメントの回転方向と、スタビライザが発生する弾性力に対する上下反力のモーメントの回転方向は反対となる。このためコイルスプリングおよびスタビライザの弾性力を調整することにより、上下反力のモーメントの回転方向と横力のモーメントの回転方向を反対方向にすることができる。この場合には、上下反力のモーメントと横力のモーメントの大きさを等しくすることにより、サスペンションメンバに働くロールモーメントを略0とすることが可能になる。
【0013】
上記サスペンションメンバに作用するロールモーメントとは、サスペンションメンバを車両前後方向軸回りに回転させる力のモーメントである。また、サスペンションメンバのロール中心とは、サスペンションメンバが車両前後方向軸周りに回転するときの回転中心である。ここで、サスペンションメンバが複数の弾性部材によって車体の複数の位置にて弾性支持されている場合は、これらの弾性部材の弾性主軸の交点である弾性中心がロール中心となる。したがって、この場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントとの和が0となるような高さ位置に弾性中心を設定するとよい。また、横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるような高さ位置に弾性中心を設定するとよい。また、上記弾性中心の高さ位置と、弾性部材の重心の高さ位置とが等しい場合、あるいは上記弾性中心の高さ位置と弾性部材の重心の高さ位置とに相関関係がある場合は、横力のモーメントと上下反力のモーメントとが等しくなるように弾性部材の高さ位置を設定するとよい。なお、弾性主軸とは、弾性部材に特定の軸に沿って力を加えたときに、力の方向と弾性変位の方向が一致し、かつ、角変位を生じないような軸をいう。
【0014】
上記上下反力は、旋回時にコイルスプリングおよびスタビライザが発生する力に対して車輪接地面にて上下方向に生じる反力である。コイルスプリングはサスペンションを構成する部品の一つであり、一般に車輪から入力される上下振動を弾性変形によって吸収する機能を有する。スタビライザは車両の旋回時に捩れに対する弾性力(反力)を発生して車体のロールを抑制するための装置である。本発明においてはこのスタビライザはサスペンションメンバに連結している。
【0015】
上記横力のモーメントは、上記横力と車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さとから求められ、上記上下反力のモーメントは、上記上下反力と左右車輪間のトレッド長により求められるものであるとよい。この場合、定常旋回時における旋回内輪の接地面および旋回外輪の接地面にて生じる横力をFy、上下反力をFz、前記トレッド長をLy、前記接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さをLzとすると、Lzは下記式1により求められるものであるとよい。
【数1】
これによれば、上記(1)式により、サスペンションメンバのロールを防止するためのロール中心高さを簡単に求めることができる。なお、サスペンションメンバのロール中心の高さ位置と、弾性部材の重心の高さ位置とが等しい場合は、上記(1)式により弾性部材の車輪接地面からの高さ位置を算出することもできる。
【0016】
なお、上記発明はサスペンションメンバに適用したものであるが、サスペンションメンバの取付け構造やサスペンションメンバの取付け方法にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態におけるサスペンション装置を車両後方から見た図であり、図2は、図1のサスペンション装置を簡略化して描いた図である。図に示されたサスペンション装置1は、例えば車両の左右後輪に連結される。サスペンション装置1は、サスペンションメンバ10と、左右一対のアッパーアーム21R,21Lと、左右一対のロアアーム22R,22Lと、左右一対のコイルスプリング23R,23Lと、左右一対のショックアブソーバ24R,24Lとを備えて構成される。
【0018】
サスペンションメンバ10は、車両後方から見て左右に羽を広げたような形状をなしている。サスペンションメンバ10は一般には左右一対のサイドメンバと、これらのサイドメンバを連結するクロスメンバからなる。サスペンションメンバ10の左右端部には、それぞれクッション40R,40L(以下、クッションを総称する場合はクッション40という)が組み込まれている。図3は、サスペンションメンバ10の図2における左端側の部分の拡大断面図であり、サスペンションメンバ10にクッション40が組み込まれた状態を示している。図3に示されるように、サスペンションメンバ10には上下方向に貫通した孔10aが形成されており、クッション40は孔10a内に嵌め込まれている。
【0019】
クッション40は、外筒401と、内筒402と、本発明の弾性部材であるゴム部材403とを有する。外筒401はその外周壁がサスペンションメンバ10に形成された孔10aの内壁に固着されている。また外筒401の内周壁には円筒形状をなしたゴム部材403が固着されている。この円筒状のゴム部材403は、外周面が外筒401の内周壁に固着し、内周面が内筒402の外周壁に固着している。内筒402の内周側には、車体側の部材BDに連結したスタットボルトSBが挿通されている。このスタットボルトSBとナットNTとの締め付けにより、内筒402と車体側の部材BDとが固定される。このように、ゴム部材403を介して外筒401側にサスペンションメンバ10が、内筒402側に車体側の部材BDが固着されることによって、サスペンションメンバ10は車体側の部材の下方に弾性支持されていることになる。
【0020】
図2に示されるように左右一対のアッパーアーム21R,21Lは湾曲した棒形状を呈しており、車両の左右方向に延設されている。アッパーアーム21R,21Lは、その一端である車両外方端が車輪を回転可能に支持するキャリア(またはナックル)25R,25Lにそれぞれ連結され、その他端である車両内方端がサスペンションメンバ10に連結されている。左右一対のロアアーム22R,22Lも車両の左右方向に延設されており、その車両外方端がキャリア(またはナックル)25R,25Lにそれぞれ連結され、その車両内方端がサスペンションメンバ10に連結されている。このようにしてサスペンションアーム(アッパーアームおよびロアアーム)はサスペンションメンバ10に支持されている。
【0021】
コイルスプリング23R,23Lは、図1および図2に示されるように下端がロアアーム22R,22Lにそれぞれ載置されている。コイルスプリング23R,23Lの上端は車体側の部材に当接している。このコイルスプリング23R,23Lは、車輪から入力される上下振動を弾性変形により吸収する。ショックアブソーバ24R,24Lはその下端がロアアーム22R,22Lにそれぞれ連結され、その上端が車体側の部材に連結されている。ショックアブソーバ24R,24Lは、車輪から入力される上下振動を減衰する。
【0022】
また、本実施形態のサスペンション装置1はスタビライザ31を備えている(図2参照)。スタビライザ31は、車両左右方向に延びたスタビライザバーおよびこのスタビライザバーの両端から車両後方側へ延びたアーム部を備える棒状部材である。このスタビライザ31は、左右輪が逆位相に上下変位したときや車体がロールしたときにスタビライザバーの部分が捩られて、その復元力(弾性力)により車体のロールを抑制する。スタビライザ31は、左右一対のロアアーム22R,22Lにそれぞれ装着された一対のスタビライザリンク32R,32Lにボールジョイント(図示省略)を介してその両端(アーム部の端部)が結合されている。また、スタビライザ31は、車両左右方向に離間してサスペンションメンバ10に取付けられている一対のスタビライザブッシュ33R,33Lによってサスペンションメンバ10にも取付けられ、このサスペンションメンバ10に連結支持された構成となっている。
【0023】
上記のような構成のサスペンション装置1を備えた車両が旋回する場合には、図4に示されるように車体STに遠心力が作用し、この遠心力により車体STがロールする。また、各車輪にはタイヤ横力(コーナリングフォース)が作用する。これらのタイヤ横力は力のモーメントとしてサスペンションメンバ10にも作用する。
【0024】
図5は、車両が右回りに旋回している時に発生するタイヤ横力がサスペンションメンバ10にモーメントとして働く状態を車両後方側から見て表した概念図である。タイヤ横力は左右各車輪の接地面にて発生する。ここで、旋回外輪WHout側にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する横力の大きさは、実際には車両旋回時の重心移動によって異なる大きさとなる。しかし、ここでは説明を簡便にするために、旋回中の車両重心の移動を考慮せず(または非常に小さいと考え)、旋回中であっても車両重心が車体の中心にあるものと仮定する。このように仮定すると、旋回外輪WHoutの接地面にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する横力の大きさは等しくなる。同様に、後述する上下反力についても、上記仮定の下では旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0025】
図5に示されるように、旋回外輪WHoutの接地面および旋回内輪WHinの接地点にて発生するタイヤ横力はFyとして表されている。このようなタイヤ横力により、アッパーアーム21R,21Lおよびロアアーム22R,22Lを介してサスペンションメンバ10にロールモーメントが働く。また、サスペンションメンバ10のロール中心(弾性中心)は、右側のクッション40Rの弾性主軸R1と左側のクッション40Lの弾性主軸L1の交点Oである。
【0026】
ここで、両車輪の接地面からロール中心Oまでの高さをLzとする。この場合に、サスペンションメンバ10は、旋回外輪WHout側からFy・Lzの大きさのモーメントを受け、旋回内輪WHin側からFy・Lzの大きさのモーメントを受ける。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。したがって、タイヤ横力によってサスペンションメンバ10が受けるモーメントMtireは、(2)式により表される。
【数2】
図5からわかるように、Mtireは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を左周り(反時計回り)に回転させるモーメントである。
【0027】
また、車両旋回時にコイルスプリング23R,23Lおよびスタビライザ31が変形することにより、サスペンションメンバ10には車両の上下方向にも力のモーメントが働く。図6は、右方向への車両旋回による車体STのロール時に、一対のコイルスプリング23R,23Lが発生する力に対する反力のモーメントがサスペンションメンバ10に働く状態を車両後方側から見て表した概念図である。図に示されるように、車体STがロールすることにより旋回外輪WHout側のコイルスプリング23Lが縮み、旋回内輪WHin側のコイルスプリング23Rが伸びる。これらのコイルスプリング23R,23Lが発生する弾性力に対し、旋回内外輪WHin,WHoutの接地面にて上下方向に反力(上下反力)が発生する。この場合、上述したように旋回中の車両重心の移動を考慮せずに、旋回中に車両重心が車体の中心に位置するという仮定の下では、コイルスプリング23R,23Lの弾性力に対して旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0028】
この上下反力の大きさをFzcoilとすると、旋回外輪WHoutの接地面においては、コイルスプリング23Lの圧縮力に抗して上向きの反力Fzcoilが発生する。この上向きの反力Fzcoilは、キャリア25L、ロアアーム22L、アッパーアーム21Lなどの、旋回外輪WHoutとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印ALで示すように下方に向かう力として働く。また、旋回内輪WHinの接地面においては、コイルスプリング23Rの伸張力に抗して下向きの反力Fzcoilが発生する。この下向きの反力Fzcoilは、キャリア25R、ロアアーム22R、アッパーアーム21Rなどの、旋回内輪WHinとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印ARで示すように上方に向かう力として働く。
【0029】
ここで、旋回外輪WHoutと旋回内輪WHinの接地点間の長さであるトレッド長をLyとし、サスペンションメンバ10のロール中心(弾性中心)Oの車両左右方向位置が旋回外輪WHoutと旋回内輪WHinとの中間位置とする。この場合、旋回外輪WHout側からFzcoil・Ly/2の大きさのモーメントが、旋回内輪WHin側からFzcoil・Ly/2の大きさのモーメントが、サスペンションメンバ10に働くことになる。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。したがって、コイルスプリング23R,23Lの弾性力に対して旋回外輪WHout側および旋回内輪WHin側の双方からサスペンションメンバ10が受けるモーメントMcoilは、(3)式により表される。
【数3】
図6からわかるように、Mcoilは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を左周りに回転させるモーメントである。
【0030】
さらに、車両旋回時には、スタビライザ31が車体のロールを受けて捩られるとともに、この捩れに対する弾性力を発生する。この弾性力に対する反力が車輪の接地面にて上下方向に発生する。この上下反力のモーメントもサスペンションメンバ10に働く。
【0031】
図7は、右方向への車両旋回時にサスペンションメンバ10にスタビライザ31の弾性力に対する反力のモーメントが働いている状態を車両後方側から見て表した概念図である。スタビライザ31の弾性力は、旋回外輪WHout側ではロールによる車体STの沈み込みを戻すように上向きに働き、旋回内輪WHin側ではロールによる車体STの浮き上がりを戻すように下向きに働く。この弾性力に対し、旋回内外輪WHin,WHoutの接地面にて上下方向に反力(上下反力)が発生する。なお、上述のように、旋回時の車両の重心移動を考慮せずに、旋回中に重心が車体中心に位置するとの仮定の下では、スタビライザ31の弾性力に対して旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0032】
この上下反力の大きさをFzstbとすると、旋回外輪WHoutの接地面においては、スタビライザ31の上方向への弾性力に抗して下向きの反力Fzstbが発生する。この下向きの反力Fzstbは、ナックル25L、ロアアーム22L、アッパーアーム21Lなどの、旋回外輪WHoutとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印BLで示されるように上方に向かう力として働く。また、旋回内輪WHinの接地面においては、スタビライザ31の下方向への弾性力に抗して上向きの反力Fzstbが発生する。この上向きの反力Fzstbは、ナックル25R、ロアアーム22R、アッパーアーム21Rなどの、旋回内輪WHinとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には矢印BRで示されるように下方に向かう力として働く。
【0033】
したがって、サスペンションメンバ10には、旋回外輪WHout側からFzstb・Ly/2の大きさのモーメントが働き、旋回内輪WHin側からFzstb・Ly/2の大きさのモーメントが働く。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。よって、この上下反力によってサスペンションメンバ10が受けるモーメントMstbは、(4)式により表される。
【数4】
図7からわかるように、Mstbは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を右周りに回転させるモーメントである。つまり、McoilとMstbは、それぞれサスペンションメンバ10を反対方向に回転させるモーメントである。
【0034】
図6および図7からわかるように、上下反力Fzcoilと上下反力Fzstbは、それぞれの車輪接地面にて上下に反対方向に働く。したがって、各車輪の接地面にて作用する上下反力Fzは、(5)式により表される。
【数5】
【0035】
サスペンションメンバ10には、(5)式で表される上下反力によるロールモーメントが働く。このロールモーメントMzは、(6)式により表される。
【数6】
【0036】
車両旋回時にサスペンションメンバ10に働くロールモーメントは上記タイヤ横力のモーメントMtireおよび上下反力のモーメントMzである。したがって、これらのモーメントが釣り合うことにより、すなわちMtireとMzの和を0とすることにより、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントを実質的に0にすることができる。横力のモーメントMtireと上下反力のモーメントMzがそれぞれサスペンションメンバ10を反対方向に回転させるモーメントと考えると、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントMは、(7)式により表すことができる。
【数7】
ロールモーメントMに0を代入して(7)式を変形すると、次の(8)式が得られる。
【数8】
【0037】
上記(8)式に基づいてLzを設定することにより、タイヤ横力のロールモーメントと上下反力のロールモーメントが等しくなるようなロール中心高さLzが定まる。ロール中心高さLzをこのように設定することにより、サスペンションメンバ10が受けるロールモーメントを0にすることができる。(8)式の計算を行うにあたり、トレッド長Ly、タイヤ横力Fyおよび上下反力Fzを求めておく必要がある。トレッド長Lyは既知であるが、タイヤ横力や上下反力は、車両の旋回状態によって変化する。したがって、対象となる車両が最も頻繁に実行するであろう定常的な旋回状態(例えば旋回半径や旋回時の車速)を予め調べておき、この定常旋回時に発生するタイヤ横力および上下反力の値を(8)式のFzおよびFyとして採用してLzを求めることができる。この場合、コイルスプリング23L,23Rやスタビライザ31の弾性係数を調整することにより、Mtireの回転方向とMzの回転方向とを反対方向とし、且つMが0となるようなLzの値を算出することができる。
【0038】
このように、本実施形態のサスペンションメンバ10においては、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時におけるタイヤ横力Fy、上下反力Fz(具体的にはこれらの比Fz/Fy)およびトレッド長Lyに基づいて、サスペンションメンバ10のロール中心の車輪接地面からの高さLzを設定している。具体的には、タイヤ横力のモーメントMtireと上下反力のモーメントMzとの和が0になるように(MtireとMzが等しくなるように)高さLzを設定している。このように高さLzを設定することにより、図8に示されるように、旋回外輪WHout側にて発生するタイヤ横力Fyと上下反力Fzの合力Foutの方向が、旋回外輪WHoutの接地点とロール中心Oを結ぶ直線の方向と一致し、旋回内輪WHin側にて発生するタイヤ横力Fyと上下反力Fzの合力Finの向きが、旋回内輪WHinの接地点とロール中心Oを結ぶ直線の方向と一致する。よって、サスペンションメンバ10には横力は働くものの、ロールモーメントは働かない。このため、スタビライザ31が取付けられているサスペンションメンバ10であっても車両旋回時のロールを防止することができる。これにより、車両旋回時のサスペンションアライメントの変化が抑制され、車両運動性能を維持することができる。
【0039】
また、クッション40に用いられるゴム部材403の上下方向の特性を軟化させてサスペンションメンバ10を車体に対して上下方向に動きやすくした場合においても、旋回時にサスペンションメンバ10のロールは抑制され、且つ路面からの振動がクッション40によって十分に吸収される。よって、乗り心地感や防振性、静粛性を改善することができる。すなわち本実施形態のサスペンションメンバ10の採用により、乗り心地や振動、騒音の改善と、車両の運動性能の維持の両立が可能となる。
【0040】
サスペンションメンバ10のロール中心の高さ方向位置を接地面からLz+Lz’とした場合における、サスペンションメンバ10に生じるロールモーメントをM’とすると、M’は(9)式により表すことができる。
【数9】
ここで、定常旋回時にはFyは一定である。図9は、クッション40の取付け高さ位置を変化させることによってサスペンションメンバ10のロール中心Oの高さ方向位置を変更した場合における、ロール中心位置とロールモーメントM(図9ではM2により表示している)との関係を示すグラフを、サスペンション装置の模式図ととともに表したものである。図9および(9)式からわかるように、ロール中心Oの高さ位置が(8)式により定まる位置から離れるほど、サスペンションメンバ10にロールモーメントが生じることとなる。
【0041】
なお、上記した方法は、高さLzを求める際に、旋回時の車両重心移動を考慮していない。そのため旋回外輪WHout側にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する横力の大きさが等しく、旋回外輪WHout側にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する上下反力の大きさが等しくなることを前提としてLzが求められている。しかし、実際には旋回時に車両重心移動が起こり、車両重心が車体の中心から左右方向に移動する。旋回時に車両重心位置が車体STの中心から左右方向にΔyだけずれることによって旋回内外輪WHin,WHoutにて発生する横力および上下反力の大きさがそれぞれ異なる場合には、Mtite,Mcoil,Mzは以下の式により算出され、Lzは、以下の式(10)により導出される。
【数10】
ここで、Fyoutは旋回外輪WHout側にて発生する横力、Fyinは旋回内輪WHin側にて発生する横力、Fzcoil_outは旋回外輪WHout側におけるコイルスプリング23Lの弾性力に対する上下反力、Fzcoil_inは旋回内輪WHin側におけるコイルスプリング23Rの弾性力に対する上下反力、Fzstb_outは旋回外輪WHout側におけるスタビライザ31の弾性力に対する上下反力、Fzstb_inは旋回内輪WHin側におけるスタビライザ31の弾性力に対する上下反力、Δyは車両重心の車体中心から左右方向へのずれ量である。
【0042】
ところで、車両の走行状態が直進走行状態から定常旋回状態に至るまでの旋回過渡状態においては、タイヤ横力は車輪接地面のスリップ角の変化と上下反力の変化によって過渡的に変化する。また、車輪接地面の上下反力は旋回時における車体全体のロール角の変化、正確に言えばショックアブソーバの減衰力変化によって過渡的に変化する。さらに、タイヤ横力と上下反力との比率も上記旋回過渡状態においては一定であるわけではない。
【0043】
つまり、定常旋回時に(8)式(車両重心移動を考慮する場合は(10)式、以下同じ)に基づいてサスペンションメンバ10に働くロールモーメントMを0とするようにロール中心の高さ位置Lzを設定したとしても、車両が定常旋回状態に至るまでの旋回過渡状態においては、タイヤ横力Fyと上下反力Fzの比率が変化する。このため(8)式によって算出されるLzの値も過渡的に変化する。したがって、旋回過渡状態においては、ロールモーメントMが0となるようなロール中心の高さ位置を一定に定めることができない。このため旋回過渡時にサスペンションメンバ10にロールモーメントが作用する。また、(8)式に基づいてLzを求めるときに仮定した定常旋回とは異なる旋回状態時においてもサスペンションメンバ10にロールモーメントが作用する。
【0044】
このような旋回過渡状態時や、Lzを求めたときに仮定した定常旋回とは異なる旋回状態時(以下、旋回過渡状態時等という)においては、サスペンションメンバを弾性支持するクッションの構造を工夫してサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を変更可能にすることにより、旋回過渡状態等であってもサスペンションメンバにロールモーメントを作用させないように、あるいは作用するロールモーメントを最小化することができる。図10は、サスペンションメンバのロール中心(弾性中心)を変更することができるクッションの構造の一例を示す図である。図10において、(a)はクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を車両後方から見たときのクッションの構造を示す断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0045】
図10(a)に示されるように、このクッション41は、サスペンションメンバ10に形成された上下方向に貫通した孔内に取付けられている。クッション41は、外筒411と、外筒411の内周に配置された内筒412と、ゴム部材413を備える。外筒411はサスペンションメンバ10に、内筒412は車体側の部材にそれぞれ連結する。ゴム部材413は外筒411と内筒412との間に設けられている。
【0046】
図10(b)からわかるように、ゴム部材413は、円筒状に形成された円筒部413aと、円筒部413aの外周から径外方に伸びた2つの連結部413b,413bおよび2つの凸部413c,413cを有する。円筒部413aの内壁部分は内筒412に固着している。2つの連結部413b,413bは周方向に180°隔てて設けられ、外筒411の内壁に固着している。2つの凸部413c,413cも円筒部413aの周方向に180°隔てて設けられている。2つの連結部413b,413bおよび2つの凸部413c,413cは、円筒部413aの周方向に沿って等間隔(90°間隔)で交互に配置されている。2つの凸部413c、413cは、車両の左右方向に延びており、その先端は外筒411の内壁に接触していない。したがって、2つの凸部413c、413cと外筒411の内壁との間には微小なクリアランスが設けられている。また、図10(a)からわかるように、一方の凸部413cは円筒部413aの軸方向の上方側に設けられており、他方の凸部413cは円筒部413aの軸方向の下方側に設けられている。
【0047】
クッション41は、サスペンションメンバ10の車両左右方向の各端部に取付けられており、2つのクッション41を介してサスペンションメンバ10が車体側の部材に弾性支持される。このようなクッション41を採用したサスペンション装置においては、車両旋回時にタイヤ横力によってサスペンションメンバ10が車体に対して横方向に移動すると、例えば図11に示すように一方の凸部(図において右側の凸部)413cが外筒411に接触する。この接触によって、ゴム部材413の弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示された傾斜角度からQ1,Q2で示された傾斜角度に変化する。なお、弾性主軸の傾斜角度とは、例えば水平線に対する弾性主軸の傾き角度をいう。
【0048】
図12は、凸部413cと外筒411との接触状態の変化を示す図である。左方側の図から右方側の図に進むにつれて、凸部413cと外筒411の内壁との接触面積が大きくなっている。このように凸部413cと外筒411との接触面積が変化すると、ゴム部材413の弾性主軸の傾斜角度も変化する。すなわち上記接触面積と弾性主軸の傾斜角度との間には相関関係がある。また、凸部413cと外筒411の内壁との接触面積の大きさは、車両に作用するタイヤ横力とも関係する。つまり、タイヤ横力が大きければ大きいほどサスペンションメンバ10の横揺れが大きくなって凸部413cと外筒411の内壁との接触面積も大きくなる。したがって、タイヤ横力と弾性主軸の傾斜角度との間には、例えば図13で示されるような相関関係がある。
【0049】
サスペンションメンバ10のロール中心は2つのクッション41のゴム部材413の弾性主軸の交点であるので、このロール中心の高さ位置は弾性主軸の傾斜角度の大きさにより定められる。したがって、図10に示される構造のクッション41を採用し、タイヤ横力の大きさに基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変更することができる。また、タイヤ横力と、タイヤ横力と上下反力との比との間には相関関係がある。よって、凸部413cの形状を工夫し、旋回過渡状態時等であってもロール中心の高さ位置が(8)式によって算出される値Lzとなるように弾性主軸の傾斜角度をタイヤ横力に基づき変化させることで、サスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【0050】
図14は、サスペンションメンバのロール中心の高さ位置を変化させることができるクッションの構造の他の一例を示す図である。このクッション42は、車両旋回時にサスペンションメンバ10に作用する上下反力に基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変化させるものである。図14(a)はこのクッション42がサスペンションメンバ10に取付けられた状態を示す断面図、図14(b)は図14(a)におけるB−B断面のうちクッション42のみを示した断面図である。
【0051】
図14(a)に示されるように、このクッション42は、外筒421と、内筒422と、ゴム部材423と、カラー424と、ストッパ425とを備える。外筒421と内筒422は同心状に配置され、両筒の間にゴム部材423が配設されている。ゴム部材423は円筒形状とされ、その内周壁が内筒422の外周に、外周壁が外筒421の内周に、それぞれ固着されている。内筒422は車体側の部材に連結される。また、内筒422の軸方向長さは外筒421の軸方向長さよりも長くされており、図からわかるように内筒422は外筒421の両端面から図示上下方向に突き出た突出部分を有している。
【0052】
カラー424は外筒421の外周を覆うようにサスペンションメンバ10に上下方向に貫通形成された孔内に配置し、この孔内にてサスペンションメンバ10に固定されている。カラー424は、円筒状の側周部424aおよびこの側周部424aの軸方向両端から径内方に延びたリング状の端面部424b,424bを有している。側周部424aの内周壁側が外筒421の外周面に対面している。また、両端面部424b,424b間に外筒421とゴム部材423の外周寄りの部分が嵌り込んでいて、この嵌り込みによってこれらがカラー424に保持される。
【0053】
内筒422の上下の突出部分には、それぞれ一対のストッパ425が取付けられている。ストッパ425は、平板状のプレート425aと弾性部425bとを有する。プレート425aの中央には孔が設けられている。この孔には内筒422が差し込まれており、所定の軸方向位置でプレート425aが内筒422に固定されている。プレート425aは内筒422の軸方向に直交する方向に延びており、その一端部に弾性部425bが装着されている。弾性部425bは山型形状とされており、山の頂部がカラー424の端面部424bに対面し、両者間に微小のクリアランスを有するように配置されている。また、一対のストッパ425の弾性部425bは、内筒422に対して対称的に配置されている。すなわち、上方のストッパ425の弾性部425bは内筒422の左方側に配置され、下方のストッパ425の弾性部425bは内筒422の右方側に配置されている。
【0054】
クッション42は、サスペンションメンバ10の車両左右方向の各端部に取付けられており、2つのクッション42を介してサスペンションメンバ10が車体側の部材に弾性支持される。このようなクッション42を採用したサスペンション装置において、車両旋回時に上下反力によってサスペンションメンバ10が車体に対して上下方向に移動すると、一方のストッパ425の弾性部425bがカラー424の端面部424bに接触する。この接触によって、例えば図15に示されるように、弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示された傾斜角度からQ1,Q2で示された傾斜角度に変化する。また、弾性主軸の傾斜角度はストッパ425とカラー424とが接触するときに加えられる力の大きさ、すなわち上下反力の大きさによって、例えば図16のグラフに示されるように変化する。
【0055】
サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置は弾性主軸の傾斜角度の大きさにより定められる。したがって、図14に示される構造のクッション42を採用し、上下反力の大きさに基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変更することができる。また、上下反力と、タイヤ横力と上下反力との比との間には相関関係がある。よって、弾性部425bの形状を工夫し、旋回過渡状態時等であってもロール中心の高さ位置が(8)式によって算出される値Lzとなるように主軸傾き角度を上下反力に基づき変化させることで、サスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【0056】
上記したクッション41およびクッション42は、車両旋回時に発生するタイヤ横力や上下反力を利用して弾性主軸の傾斜角度を変化させているが、アクチュエータなどを用いて傾斜角度や傾斜角度の変化特性を積極的に変化させてもよい。例えば、アクチュエータを用いてクッションを傾斜させ、あるいはクッション内のゴム部材を局所的に押圧することにより、傾斜角度を変更することができる。また、ゴム部材とゴム部材に接触する部材との間のクリアランスを調整して、弾性主軸の傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更することができる。アクチュエータの作動は、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段により制御することができる。
【0057】
図17は、アクチュエータの作動を制御するECU等の制御手段が実行する主軸傾斜制御プログラムの一例である。この図によれば、制御手段は、アクチュエータを作動させるか否かを決定するにあたり、まず操舵角センサなどのステアリングホイールの操舵角を検出するためのセンサが出力する検出値に基づいて、ステアリングホイールが操舵操作されているかを判定する(S10)。操舵操作されている場合には、車体に取付けられた横加速度センサが出力する横加速度に基づいて車体がロールしているかを判定する(S12)。車体がロールしている場合には、サスペンションメンバ10に取付けられた横加速度センサが出力する横加速度に基づいてサスペンションメンバ10がロールしているかを判定する(S14)。サスペンションメンバ10がロールしていると判定した場合には、制御手段は上記(8)式に基づいて計算したLzから弾性主軸の目標角度を計算し、アクチュエータを作動させて弾性主軸の傾斜角度を上記目標角度となるように変更させる(S16)。あるいは、制御手段は、アクチュエータを作動させて弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように変化するように、傾斜角度の変化特性を変化させる。それ以外の場合には、アクチュエータを作動させない(S18)。このような制御フローに従って制御手段がアクチュエータの作動を制御することにより、弾性主軸の傾斜角度を変更制御することができる。
【0058】
図18は、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させるためのアクチュエータが組み込まれたクッションの一例を示す断面概略図である。図に示されるようにこのクッション43は、サスペンションメンバ10に上下方向に貫通形成された孔部内に取付けられている。クッション43は、外筒431と、内筒432と、ゴム部材433と、カラー434と、一対のストッパ435,435とを備える。内筒432と外筒431は同心状に配置され、両筒の間にゴム部材433が配設されている。ゴム部材433は円筒形状とされ、その内周壁が内筒432の外周に、外周壁が外筒431の内周に、それぞれ固着されている。
【0059】
カラー434は外筒431の外周を覆うようにサスペンションメンバ10に形成された孔内に配置し、この孔内にてサスペンションメンバ10に固定されている。カラー434は、円筒状の側周部434aおよびこの側周部434aの軸方向両端から径内方に延びたリング状の端面部434b,434bを有している。側周部434aの内周壁側が外筒431の外周面に対面している。また、両端面部434b、434b間に外筒431とゴム部材433が嵌り込んでいて、この嵌り込みによってこれらがカラー434に保持される。
【0060】
内筒432には車体側の部材が連結する。内筒432の軸方向長さは外筒431の軸方向長さよりも長くされており、図からわかるように外筒431の両端面から図示上下方向に突き出た突出部分を有している。この突出部分にストッパ435が取付けられている。図19にこのストッパ435の斜視図を示す。ストッパ435は、リングプレート435aと、4つに分割されたピエゾアクチュエータ435bと、各ピエゾアクチュエータ435b上に載置された弾性部435cとを有する。リングプレート435aはリング状の平板部材であり、内筒432と同軸的に配置するように、その内周壁が内筒432の外周に連結されている。リングプレート435aの面上にピエゾアクチュエータ435bが配設されている。ピエゾアクチュエータ435bはピエゾ素子を積層してなるアクチュエータであって、逆圧電効果により所定方向への長さが変化するものである。
【0061】
図19に示されるように、ピエゾアクチュエータ435bは、リングプレート435aの周方向に沿って均等に四分割されており、個々のピエゾアクチュエータ435bは水平方向の断面が円弧形状となるように形成されている。これらのピエゾアクチュエータ435bは、通電により各々独立して上下方向に伸縮可能とされている。各ピエゾアクチュエータ435bの上部に弾性部435cが取付けられている。この弾性部435cはクッション43内のゴム部材433と同一部材でもよく、異なった弾性係数を有するものでもよい。この弾性部435cは、鉛直方向の断面が台形状とされている。なお、本例では一つのストッパ435に4つのピエゾアクチュエータ435bと各ピエゾアクチュエータ435bに対応する4つの弾性部435cが設けられているが、2つのピエゾアクチュエータと各ピエゾアクチュエータに対応する2つの弾性部を設けるような構成としてもよい。
【0062】
上記構成のストッパ435が内筒432の上下の突出部にそれぞれ取付けられている。両ストッパ435,435は、各々の弾性部435cがカラー434の端面部434bに対面するように向かい合って内筒432に取付けられている。したがって、サスペンションメンバ10が車体に対してロールした場合には、その傾き方向によっていずれかの弾性部435cとそれに対面するカラー434の端面部434bとが当接する。
【0063】
図20は、ピエゾアクチュエータ435bを通電制御した状態を示す図である。この図においては、内筒432の上部側に取付けられたストッパ435Uの左側の弾性部435cULが、対面するカラー434の端面部434bに近づくように、また右側の弾性部435cURが、対面するカラー434の端面部434bから遠ざかるように、それぞれのピエゾアクチュエータ435bが作動制御される。また、内筒432の下部側に取付けられたストッパ435Dの右側の弾性部435cDRが、対面するカラー434の端面部434bに近づくように、また左側の弾性部435cDLが、対面するカラー434の端面部434bから遠ざかるように、それぞれのピエゾアクチュエータ435bが作動制御される。
【0064】
ピエゾアクチュエータ435bが上記のように作動制御されることにより、各弾性部435cとそれに対面するカラー434の端面部434bとの間のクリアランスを調整することができる。例えば、図20に示されるように、ストッパ435Uにおいて左側の弾性部435cULとカラー434との間のクリアランスが小さくされるとともに右側の弾性部435cURとカラー434との間のクリアランスが大きくされる。一方、ストッパ435Dにおいて右側の弾性部435cDRとカラー434との間のクリアランスが小さくされるとともに左側の弾性部435cDLとカラー434との間のクリアランスが大きくされる。これにより、クリアランスが小さくされた部分がクッション43の一方の対角方向に沿って配置され、クリアランスが大きくされた部分は他方の対角方向に沿って配置される。
【0065】
クッション43がこのような状態とされている場合において、サスペンションメンバ10に車体に対して図の時計回り方向にロール力が加えられると、直ちに弾性部435cULと弾性部435cDRがカラー434に接触し、ゴム部材433のそれ以上の回転変位が規制される。またこのとき、弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示す傾斜角度からQ1,Q2で示す傾斜角度に変化する。一方、サスペンションメンバ10に車体に対して図の反時計回り方向にロール力が加えられても、クリアランスの大きい弾性部435cURと弾性部435cDLはカラー434に接触しないために弾性主軸の傾斜角度はなかなか変化しない。このような傾斜角度の変化特性、具体的にはロール力を表す比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性は、上記クリアランスの大きさによって変化する。つまり、この例では、ピエゾアクチュエータ435bへの通電制御によるクリアランス調整によって、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0066】
ピエゾアクチュエータ435bは、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段Contによってその作動が制御される。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近に取付けられた横力センサおよび上下力センサが出力する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてピエゾアクチュエータ435bを作動制御する。図21は、(8)式を満たすようにLzを定めた場合における弾性主軸の傾斜角度と比(Fz/Fy)との関係を表すグラフの一例である。制御手段Contは図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、ピエゾアクチュエータ435bの作動を制御してクリアランスを調整する。制御手段Contはこのようなクリアランス調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0067】
上記した制御手段Contによる弾性主軸の傾斜角度の変化特性の変更制御により、車両の旋回状況に応じて比(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更制御される。よって、旋回過渡状態時等においてもサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0068】
図22は、アクチュエータによって作動する他の構造のストッパを備えたクッションの断面図である。この例において、クッション44は、外筒441と、内筒442と、ゴム部材443と、カラー444と、一対のストッパ445,445を備える。外筒441、内筒442、ゴム部材443、カラー444の構造は、図18に示されるものと同一である。ストッパ445の構造は、図18に示されるストッパ435の構造からピエゾアクチュエータを取り除いた構成とされる。
【0069】
図23は、ストッパ445の斜視図である。この図に示されるように、ストッパ445はリングプレート445aおよび弾性部445cからなる。リングプレート445aの形状は図19に示されたリングプレート435aと同一である。弾性部445cはリングプレート445a上に直接載置されている。この弾性部445cは、リングプレート445aの周方向に均等に4分割して配置されている。弾性部445cの外観形状は図19に示された弾性部435cと同一である。
【0070】
図24は、弾性部445cの内部構造を示した概略断面図である。この図からわかるように、弾性部445cの内部には空間が設けられている。この空間はダイヤフラム446によって上下に仕切られており、上方の部屋は液体が封入された液室447aとされ、下方の部屋は空気が封入された空気室447bとされている。液室447aは、弾性部445cおよびダイヤフラム446により密閉されている。空気室447bは、ダイヤフラム446、弾性部445cおよびリングプレート445aに囲まれている。リングプレート445aに囲まれた部分には孔部445dが形成されており、この孔部445dは空気通路448の一端に連通している。この空気通路448の他端はタンク449に連結されている。したがって、タンク449により空気通路448から空気が圧送されて空気室447b内に流入すると、空気室447b内の圧力が増加してダイヤフラム446が上方に変位する。これにより液室447a内の容積が減少して液室447a内の圧力が増加する。一方、タンク449の作動により空気室447b内の空気が空気通路448を経由してタンク449内に排出されると、空気室447b内の圧力が低下してダイヤフラム446が下方に変位する。これにより液室447a内の容積が増加して液室447a内の圧力が降下する。
【0071】
このようなストッパ445が取付けられたクッション44は、空気室447bへの空気の給排制御により液室447a内の圧力を変化させることで、ストッパ445の弾性部445cの硬さを変化させることができる。図25は、各弾性部445cの硬さを変化した場合におけるクッション44を示す断面図である。この図においては、上側のストッパ445Uの左側の弾性部445cULおよび下側のストッパ445Dの右側の弾性部445cDRが硬くなるようにタンク449から空気が圧送され、上側のストッパ445Uの右側の弾性部445cURおよび下側のストッパ445Dの左側の弾性部445cDLが軟らかくなるようタンク449へ空気が排出される。
【0072】
図25に示されるような状態でクッション44がサスペンションメンバ10に取付けられている場合において、サスペンションメンバ10にロール力が加えられると、サスペンションメンバ10のロール方向によってストッパ445のいずれかの弾性部445cとカラー444が接触する。この接触によってゴム部材433のそれ以上の回転変位が規制されるとともに、弾性主軸の傾斜角度が図のP1,P2で示す傾斜角度からQ1,Q2で示す傾斜角度に変化する。この傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性は、各弾性部445cの硬さによって変化する。すなわち、タンク449の給排制御によって各弾性部445cの硬さを変化させることにより、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0073】
タンク449の給排制御は、例えば車両に搭載されたECU等の制御装置Contによって行われる。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近等に取付けられた横力センサおよび上下力センサが検出する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてタンク449の給排を制御する。そして、図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、タンク449の給排を制御して各弾性部445cの硬さを調整する。制御手段Contはこのような弾性部445cの硬さ調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0074】
この例においては、サスペンションメンバ10にロール力が加えられたときに、制御手段Contがタンク449の給排を制御して各弾性部445cの硬さを調整することにより、弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性が変更される。このため旋回状況に応じて(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更される。よって、旋回過渡状態時等においてサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0075】
図26(a)は、さらに別のストッパを取付けたクッションがサスペンションメンバに取付けられている状態を示す断面図、図26(b)は図26(a)におけるC−C断面図である。この例においては、クッション45は、外筒451と、内筒452と、ゴム部材453と、カラー454と、ストッパ455を備える。内筒452は車体側の部材に連結される。ゴム部材453は、円筒状に形成され内筒452の外周に固着する内周壁を有する円筒部453aと、この円筒部453aの外周から径外方に延びた2つの連結部453b、453bおよび2つの凸部453c、453cを有する。2つの連結部453b、453bは円筒部453aの周方向に180°隔てて設けられるとともに、外筒451の内壁に固着されている。2つの凸部453c,453cも円筒部453aの周方向に180°隔てて設けられている。これらの2つの連結部453bおよび2つの凸部453cは、円筒部453aの周方向に沿って等間隔(90°間隔)で交互に配置している。また、図26(a)に示されるように、一方の凸部453c(図の左側の凸部)は円筒部453aの軸方向の上方側に設けられており、他方の凸部453c(図の右側の凸部)は円筒部453aの軸方向の下方側に設けられている。両凸部453cは、車両の左右方向に延びている。また、図26(b)に示されるように、外筒451には、上記2つの凸部453c,453cに対面する部分に切り欠き451aが形成されている。外筒451の外周に配置されたカラー454も外筒451と同様に、上記2つの凸部453c,453cに対面する部分に切り欠き454cが形成されている。
【0076】
サスペンションメンバ10にはクッション45を組み込むための孔10bが形成されている。この孔10bは、第1凹部空間10b1および対の第2凹部空間10b2,10b2からなる。第1凹部空間10b1は、サスペンションメンバ10を上下方向に貫通する円筒状空間である。対の第2凹部空間10b2は、第1凹部空間10b1の車両左右方向側に連通し、第1凹部空間10b1を挟んで対称的に形成され、矩形形状をなしている。第1凹部空間10b1を形成する壁面にクッション45のカラー454の外周が接続されている。第2凹部空間10b2,10b2内には、一対のストッパ455がそれぞれ取付けられている。
【0077】
ストッパ455は、ピエゾ素子などからなるアクチュエータ455aと、接触部材455bと、上記アクチュエータ455aと接触部材455bとを連結する連結棒455cを備える。アクチュエータ455aは、第2凹部空間10b2を形成するサスペンションメンバ10の壁面に固定されている。連結棒455cは、サスペンションメンバ10の長手方向、すなわち車両左右方向に延びている。接触部材455bは、外筒451およびカラー454に形成された切り欠き451a,454cにより形成される窓状の空間に嵌り込む位置に設けられ、ゴム部材453の凸部453cと対面している。したがって、接触部材455bは、アクチュエータ455aの作動によって図27の模式図に示されるように、連結棒455cの軸方向に変位して切り欠き451aに囲まれた窓状の空間から外筒451内に出入り可能とされている。
【0078】
上記構成において、アクチュエータ455aの作動により接触部材455b,455bが変位すると、接触部材455b,455bとそれに対面しているゴム部材453の凸部453cとの間のクリアランスが変化する。例えばアクチュエータ455aを作動させて、凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスを狭めたり広めたりすることができる。
【0079】
このような状態でクッション45がサスペンションメンバ10に取付けられている場合において、図28に示されるように矢印方向からサスペンションメンバ10に入力があると、図において右側の凸部453cと接触部材455bが接触する。この接触によってゴム部材453のそれ以上の変位が規制されるとともに、弾性主軸の傾斜角度が図のP1,P2で示される傾斜角度からQ1,Q2で示される傾斜角度に変化する。この傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性は、凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスの大きさによって変化する。すなわち、アクチュエータ455aの作動制御による凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスの調整によって、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0080】
アクチュエータ455aの制御は、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段Contにより行うことができる。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近等に取付けられた横力センサおよび上下力センサが出力する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてアクチュエータ455aを作動制御する。そして、図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、アクチュエータ455aの作動を制御してクリアランスの大きさを調整する。制御手段Contはこのようなクリアランス調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0081】
この例においては、サスペンションメンバ10に例えば横力のような外力が加えられたときに、制御手段Contがアクチュエータ455aの作動を制御して凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスを調整することにより、弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性が変更される。このため旋回状況に応じて比(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更される。よって、旋回過渡状態時等においてサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のサスペンションメンバは、作用するロールモーメントが略0となるように、車両の定常旋回時に車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと上下反力のモーメントに基づいて、車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心(弾性中心)までの高さLzを設定している。よって、サスペンションメンバ10にはロールモーメントがほとんど作用せず、車両旋回時にサスペンションメンバが大きくロールしてキャスタ角などのサスペンションアライメントが大きく変化することが効果的に防止される。また、クッションによってサスペンションメンバが車体に弾性支持されることにより、乗り心地や振動、騒音も改善される。
【0083】
また、本実施形態では、弾性主軸の傾斜角度あるいは比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更することによりサスペンションメンバのロール中心を変化させることができるクッションを採用したサスペンションメンバも提案している。これによれば、車両の旋回過渡状態時等においても、サスペンションメンバのロール中心を変化させることでサスペンションメンバに作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施形態に係るサスペンション装置を車両後方から見た図である。
【図2】図1のサスペンション装置を簡略化して描いた図である。
【図3】サスペンションメンバにインシュレータが組み込まれている部分の拡大断面図である。
【図4】車両旋回時に発生する遠心力とタイヤ横力との関係を示す模式図である。
【図5】サスペンションメンバがタイヤ横力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図6】サスペンションメンバがコイルスプリングによる力に対して発生する反力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図7】サスペンションメンバがスタビライザによる復元力に対して発生する反力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図8】タイヤ横力のモーメントと上下反力のモーメントがサスペンションメンバに働く状態を示す概略図である。
【図9】サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置とサスペンションメンバが受けるロールモーメントとの関係を示すグラフを、サスペンションメンバの模式図とともに表した図である。
【図10】(a)は、サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置を変化させることができるクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A断面のうちクッションのみを示した断面図である。
【図11】図10に示されるクッションを用いた場合における、弾性主軸の傾斜角度の変化を示す図である。
【図12】凸部と外筒との接触状態の変化を示す図である。
【図13】タイヤ横力と弾性主軸の傾斜角度との関係を示すグラフである。
【図14】(a)は、サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置を変化させることができる他のクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す断面図であり、(b)は(a)のB−B断面のうちクッションのみを示した断面図である。
【図15】図14に示されるクッションを用いた場合における、弾性主軸の傾斜角度の変化を示す図である。
【図16】上下反力と弾性主軸の傾斜角度との関係を示すグラフである。
【図17】弾性主軸の傾斜角度を変更するアクチュエータを制御する制御手段が実行するプログラムフローチャートの一例である。
【図18】横力と上下反力との比に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させるアクチュエータが組み込まれたクッションの一例を示す概略断面図である。
【図19】図18に示されるクッションのストッパの斜視図である。
【図20】図18に示されるクッションのストッパのピエゾアクチュエータを通電制御した状態を示す図である。
【図21】横力と上下反力との比に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を示すグラフである。
【図22】弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させる他のアクチュエータが組み込まれたインシュレータの一例を示す概略断面図である。
【図23】図22に示されるクッションのストッパの斜視図である。
【図24】図22に示されるクッションのストッパの弾性部の内部構造を示した概略断面図である。
【図25】タンクの作動により弾性部のバネ定数が変化された状態のストッパを示す概略断面図である。
【図26】弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させる更に他のストッパを取付けたクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す概略断面図であり、(a)が車両後方側から見た断面図、(b)が(a)のC−C断面図である。
【図27】接触部材が変位する状態を示す模式図である。
【図28】図26に示されるクッションを用いた場合の弾性主軸の傾斜角度の変化を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…サスペンション装置、10…サスペンションメンバ、10a,10b…孔、21R,21L…アッパーアーム、22R,22L…ロアアーム、23R,23L…コイルスプリング、24R,24L…ショックアブソーバ、31…スタビライザ、32R,32L…スタビライザリンク、33R,33L…スタビライザブッシュ、40R,40L…クッション、40、41,42,43,44,45…クッション、401,411,421,431,441,451…外筒、402,412,422,432,442,452…内筒、403,413,423,433,443,453,…ゴム部材(弾性部材)、424,434,444,454…カラー、425、435,445,455…ストッパ、Fy…タイヤ横力(横力)、Fz…上下反力、Fzcoil…コイルスプリングが発生する弾性力に対して車輪接地面にて発生する上下反力、Fzstb…スタビライザが発生する弾性力に対して車輪接地面にて発生する上下反力、Ly…トレッド長、Lz…サスペンションメンバのロール中止の高さ位置、Mcoil…コイルスプリングが発生する弾性力に対する反力のモーメント、Mstb…スタビライザが発生する弾性力に対する反力のモーメント、Mtire…タイヤ横力のモーメント、O…ロール中心
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置を構成するサスペンションメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
車体に対して車輪を懸架するサスペンション装置は、サスペンションアームやサスペンションメンバを備える。サスペンションアームはその一端である車両外方端が車輪側の部材に連結され、その他端である車両内方端がサスペンションメンバに連結される。サスペンションメンバはクロスメンバなどの車体側(ボデー側)の部材に連結される。
【0003】
サスペンションメンバは、弾性部材を有するクッションなどを介して車体側の部材に連結されることがある。このクッションは、例えば、内筒と外筒との間に円筒状の弾性体(例えばゴム)を配設したブッシュにより構成することができる。そして、外筒側にサスペンションメンバを、内筒側に車体側の部材をそれぞれ連結することにより、サスペンションメンバが車体に弾性支持される。
【0004】
サスペンションメンバが上記したように車体に弾性支持されている場合、車体の防振化を図ることができる。特に上記した円筒状のブッシュは軸方向に伸び縮みし易い。このため、軸方向が車体の上下方向に一致した状態で配設された円筒状のブッシュを介してサスペンションメンバを車体に連結することにより、車体の上下方向における振動低減効果を改善することができる。これにより路面の凹凸による車輪の振動がサスペンションメンバを介して車体側に伝達されることを効果的に防止することができ、乗り心地や、振動、騒音の改善がなされる。
【0005】
一方で、サスペンションメンバを弾性支持することは、サスペンションメンバのロール剛性の低下を招く。このため車両が旋回したときにサスペンションメンバがロールし易くなり、キャンバー方向へのサスペンションアライメント、例えばキャンバー角も変化し易くなる。旋回状態に応じてサスペンションアライメントが変化すると車両の運動性能上に悪影響を及ぼす。したがって、車両の旋回中にサスペンションアライメントを一定に保って車両の運動性能を維持するためにはサスペンションメンバのロール剛性を向上しなければならない。すなわちサスペンションメンバを弾性支持して乗り心地や振動、騒音を改善することと、サスペンションメンバのロール剛性を高めて車両の運動性能を維持することの両立は困難である。
【0006】
特許文献1には、サスペンションメンバを弾性支持するクッション(インシュレータ)の上端を下端に対して車両内方に傾けることによって、サスペンションメンバのロール中心である弾性中心の位置をロールセンタ軸の位置に一致させたサスペンションメンバが記載されている。このサスペンションメンバによれば、ロール中心位置が車体のロールセンタ軸の位置に一致しているので、車両旋回時にサスペンションメンバに作用するロールモーメントが0になる。このため車体に弾性支持されたサスペンションメンバのロールを効果的に防止することができる。
【特許文献1】特開2007−203833号公報
【発明の開示】
【0007】
上記特許文献1に記載されたサスペンションメンバでは、車両の旋回状態が変化する場合に常にサスペンションメンバのロール挙動を抑制できるわけではない。また、車両には、ロール挙動を抑制するためのスタビライザが取付けられることもあり、このスタビライザは車両搭載上の理由からサスペンションメンバに支持されることもある。上記特許文献1に記載されたサスペンションメンバにスタビライザが取付けられている場合には、車両旋回時にスタビライザが発生する弾性力に対する反力によりサスペンションメンバがロールしてしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、車体に弾性支持されることにより乗り心地や振動、騒音が改善されるとともに、スタビライザが取付けられている場合であっても車両旋回時のロールが効果的に防止されたサスペンションメンバを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の特徴は、サスペンションアームを支持するとともに弾性部材を介して車体に弾性支持され、かつスタビライザが取付けられたサスペンションメンバにおいて、前記サスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に左右の車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、前記定常旋回時に車体を支持するコイルスプリングおよび前記スタビライザが発生する力に対して前記接地面にて生じる上下反力のモーメントに基づいて、前記接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さが設定されたサスペンションメンバ、またはそのようなサスペンションメンバの取付け構造とすることにある。この場合、横力のモーメントと上下反力のモーメントとの和が0になるように、すなわち横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるように、接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さを設定するとよい。
【0010】
上記発明によれば、サスペンションメンバのロール中心の車輪接地面からの高さは、サスペンションメンバに作用するロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に車輪接地面にて生じる横力のモーメントと上下反力のモーメントに基づいて設定される。ここで、上記車輪接地面は、サスペンションメンバがサスペンションアームなどを介して連結している左右の車輪の接地面である。また、上下反力は、車両旋回時にコイルスプリングおよびスタビライザが発生する力に対する反力である。車両旋回時にサスペンションメンバに働くロールモーメントは上記横力のモーメントと上下反力のモーメントによるものが支配的である。よって、これらのモーメントに基づいてサスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さを設定することにより、サスペンションメンバのロールを防止することができる。具体的には、上記横力のモーメントと上記上下反力のモーメントとの和が0となるようにサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を設定する。この場合、横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるようにサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を設定する。これにより、サスペンションメンバに作用するロールモーメントが実質的に0となり、サスペンションメンバのロールが防止される。なお、本発明は、サスペンションメンバに作用するロールモーメントを正確に0にするようにロール中心の高さ位置を設定するものでなくてもよい。車両旋回中に車両のサスペンションアライメントの変化による運動性能の変化が運転者に感じられない程度にサスペンションメンバのロールを抑えるように、すなわちロールモーメントが略0となるように上記ロール中心の高さ位置を設定するものであれば、本発明に含まれるものとする。
【0011】
つまり、本発明では、サスペンションメンバに作用するロールモーメントを横方向の力のモーメントと上下方向の力のモーメントに分けて考え、上下方向の力のモーメントにスタビライザが発生する力に対する反力のモーメントを含ませている。そして、これらのモーメントの合計である総合的なロールモーメントが略0となるような高さ位置にサスペンションメンバのロール中心を設定する。このようにロール中心の高さ位置を設定してサスペンションメンバに作用するロールモーメントを略0にすることによって、スタビライザが取付けられているサスペンションメンバであってもそのロールが防止される。このためサスペンションメンバを車体に弾性支持した場合であっても、車両旋回時にサスペンションメンバが大きくロールしてキャスタ角などのサスペンションアライメントが大きく変化することが効果的に防止される。そして、弾性支持によって乗り心地や振動、騒音も改善される。すなわち本発明のサスペンションメンバを用いることにより、車体への弾性支持により乗り心地や振動、騒音を改善することと、サスペンションメンバをロールし難くして車両の運動性能を維持することの両立が可能となる。
【0012】
なお、サスペンションメンバにスタビライザが取付けられているものにおいては、旋回時にサスペンションメンバに働くロールモーメントのうち、コイルスプリングが発生する弾性力に対する上下反力のモーメントの回転方向と、スタビライザが発生する弾性力に対する上下反力のモーメントの回転方向は反対となる。このためコイルスプリングおよびスタビライザの弾性力を調整することにより、上下反力のモーメントの回転方向と横力のモーメントの回転方向を反対方向にすることができる。この場合には、上下反力のモーメントと横力のモーメントの大きさを等しくすることにより、サスペンションメンバに働くロールモーメントを略0とすることが可能になる。
【0013】
上記サスペンションメンバに作用するロールモーメントとは、サスペンションメンバを車両前後方向軸回りに回転させる力のモーメントである。また、サスペンションメンバのロール中心とは、サスペンションメンバが車両前後方向軸周りに回転するときの回転中心である。ここで、サスペンションメンバが複数の弾性部材によって車体の複数の位置にて弾性支持されている場合は、これらの弾性部材の弾性主軸の交点である弾性中心がロール中心となる。したがって、この場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントとの和が0となるような高さ位置に弾性中心を設定するとよい。また、横力のモーメントと上下反力のモーメントがそれぞれサスペンションメンバを反対方向に回転させるモーメントである場合には、横力のモーメントと上下反力のモーメントが等しくなるような高さ位置に弾性中心を設定するとよい。また、上記弾性中心の高さ位置と、弾性部材の重心の高さ位置とが等しい場合、あるいは上記弾性中心の高さ位置と弾性部材の重心の高さ位置とに相関関係がある場合は、横力のモーメントと上下反力のモーメントとが等しくなるように弾性部材の高さ位置を設定するとよい。なお、弾性主軸とは、弾性部材に特定の軸に沿って力を加えたときに、力の方向と弾性変位の方向が一致し、かつ、角変位を生じないような軸をいう。
【0014】
上記上下反力は、旋回時にコイルスプリングおよびスタビライザが発生する力に対して車輪接地面にて上下方向に生じる反力である。コイルスプリングはサスペンションを構成する部品の一つであり、一般に車輪から入力される上下振動を弾性変形によって吸収する機能を有する。スタビライザは車両の旋回時に捩れに対する弾性力(反力)を発生して車体のロールを抑制するための装置である。本発明においてはこのスタビライザはサスペンションメンバに連結している。
【0015】
上記横力のモーメントは、上記横力と車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さとから求められ、上記上下反力のモーメントは、上記上下反力と左右車輪間のトレッド長により求められるものであるとよい。この場合、定常旋回時における旋回内輪の接地面および旋回外輪の接地面にて生じる横力をFy、上下反力をFz、前記トレッド長をLy、前記接地面からサスペンションメンバのロール中心までの高さをLzとすると、Lzは下記式1により求められるものであるとよい。
【数1】
これによれば、上記(1)式により、サスペンションメンバのロールを防止するためのロール中心高さを簡単に求めることができる。なお、サスペンションメンバのロール中心の高さ位置と、弾性部材の重心の高さ位置とが等しい場合は、上記(1)式により弾性部材の車輪接地面からの高さ位置を算出することもできる。
【0016】
なお、上記発明はサスペンションメンバに適用したものであるが、サスペンションメンバの取付け構造やサスペンションメンバの取付け方法にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態におけるサスペンション装置を車両後方から見た図であり、図2は、図1のサスペンション装置を簡略化して描いた図である。図に示されたサスペンション装置1は、例えば車両の左右後輪に連結される。サスペンション装置1は、サスペンションメンバ10と、左右一対のアッパーアーム21R,21Lと、左右一対のロアアーム22R,22Lと、左右一対のコイルスプリング23R,23Lと、左右一対のショックアブソーバ24R,24Lとを備えて構成される。
【0018】
サスペンションメンバ10は、車両後方から見て左右に羽を広げたような形状をなしている。サスペンションメンバ10は一般には左右一対のサイドメンバと、これらのサイドメンバを連結するクロスメンバからなる。サスペンションメンバ10の左右端部には、それぞれクッション40R,40L(以下、クッションを総称する場合はクッション40という)が組み込まれている。図3は、サスペンションメンバ10の図2における左端側の部分の拡大断面図であり、サスペンションメンバ10にクッション40が組み込まれた状態を示している。図3に示されるように、サスペンションメンバ10には上下方向に貫通した孔10aが形成されており、クッション40は孔10a内に嵌め込まれている。
【0019】
クッション40は、外筒401と、内筒402と、本発明の弾性部材であるゴム部材403とを有する。外筒401はその外周壁がサスペンションメンバ10に形成された孔10aの内壁に固着されている。また外筒401の内周壁には円筒形状をなしたゴム部材403が固着されている。この円筒状のゴム部材403は、外周面が外筒401の内周壁に固着し、内周面が内筒402の外周壁に固着している。内筒402の内周側には、車体側の部材BDに連結したスタットボルトSBが挿通されている。このスタットボルトSBとナットNTとの締め付けにより、内筒402と車体側の部材BDとが固定される。このように、ゴム部材403を介して外筒401側にサスペンションメンバ10が、内筒402側に車体側の部材BDが固着されることによって、サスペンションメンバ10は車体側の部材の下方に弾性支持されていることになる。
【0020】
図2に示されるように左右一対のアッパーアーム21R,21Lは湾曲した棒形状を呈しており、車両の左右方向に延設されている。アッパーアーム21R,21Lは、その一端である車両外方端が車輪を回転可能に支持するキャリア(またはナックル)25R,25Lにそれぞれ連結され、その他端である車両内方端がサスペンションメンバ10に連結されている。左右一対のロアアーム22R,22Lも車両の左右方向に延設されており、その車両外方端がキャリア(またはナックル)25R,25Lにそれぞれ連結され、その車両内方端がサスペンションメンバ10に連結されている。このようにしてサスペンションアーム(アッパーアームおよびロアアーム)はサスペンションメンバ10に支持されている。
【0021】
コイルスプリング23R,23Lは、図1および図2に示されるように下端がロアアーム22R,22Lにそれぞれ載置されている。コイルスプリング23R,23Lの上端は車体側の部材に当接している。このコイルスプリング23R,23Lは、車輪から入力される上下振動を弾性変形により吸収する。ショックアブソーバ24R,24Lはその下端がロアアーム22R,22Lにそれぞれ連結され、その上端が車体側の部材に連結されている。ショックアブソーバ24R,24Lは、車輪から入力される上下振動を減衰する。
【0022】
また、本実施形態のサスペンション装置1はスタビライザ31を備えている(図2参照)。スタビライザ31は、車両左右方向に延びたスタビライザバーおよびこのスタビライザバーの両端から車両後方側へ延びたアーム部を備える棒状部材である。このスタビライザ31は、左右輪が逆位相に上下変位したときや車体がロールしたときにスタビライザバーの部分が捩られて、その復元力(弾性力)により車体のロールを抑制する。スタビライザ31は、左右一対のロアアーム22R,22Lにそれぞれ装着された一対のスタビライザリンク32R,32Lにボールジョイント(図示省略)を介してその両端(アーム部の端部)が結合されている。また、スタビライザ31は、車両左右方向に離間してサスペンションメンバ10に取付けられている一対のスタビライザブッシュ33R,33Lによってサスペンションメンバ10にも取付けられ、このサスペンションメンバ10に連結支持された構成となっている。
【0023】
上記のような構成のサスペンション装置1を備えた車両が旋回する場合には、図4に示されるように車体STに遠心力が作用し、この遠心力により車体STがロールする。また、各車輪にはタイヤ横力(コーナリングフォース)が作用する。これらのタイヤ横力は力のモーメントとしてサスペンションメンバ10にも作用する。
【0024】
図5は、車両が右回りに旋回している時に発生するタイヤ横力がサスペンションメンバ10にモーメントとして働く状態を車両後方側から見て表した概念図である。タイヤ横力は左右各車輪の接地面にて発生する。ここで、旋回外輪WHout側にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する横力の大きさは、実際には車両旋回時の重心移動によって異なる大きさとなる。しかし、ここでは説明を簡便にするために、旋回中の車両重心の移動を考慮せず(または非常に小さいと考え)、旋回中であっても車両重心が車体の中心にあるものと仮定する。このように仮定すると、旋回外輪WHoutの接地面にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する横力の大きさは等しくなる。同様に、後述する上下反力についても、上記仮定の下では旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0025】
図5に示されるように、旋回外輪WHoutの接地面および旋回内輪WHinの接地点にて発生するタイヤ横力はFyとして表されている。このようなタイヤ横力により、アッパーアーム21R,21Lおよびロアアーム22R,22Lを介してサスペンションメンバ10にロールモーメントが働く。また、サスペンションメンバ10のロール中心(弾性中心)は、右側のクッション40Rの弾性主軸R1と左側のクッション40Lの弾性主軸L1の交点Oである。
【0026】
ここで、両車輪の接地面からロール中心Oまでの高さをLzとする。この場合に、サスペンションメンバ10は、旋回外輪WHout側からFy・Lzの大きさのモーメントを受け、旋回内輪WHin側からFy・Lzの大きさのモーメントを受ける。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。したがって、タイヤ横力によってサスペンションメンバ10が受けるモーメントMtireは、(2)式により表される。
【数2】
図5からわかるように、Mtireは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を左周り(反時計回り)に回転させるモーメントである。
【0027】
また、車両旋回時にコイルスプリング23R,23Lおよびスタビライザ31が変形することにより、サスペンションメンバ10には車両の上下方向にも力のモーメントが働く。図6は、右方向への車両旋回による車体STのロール時に、一対のコイルスプリング23R,23Lが発生する力に対する反力のモーメントがサスペンションメンバ10に働く状態を車両後方側から見て表した概念図である。図に示されるように、車体STがロールすることにより旋回外輪WHout側のコイルスプリング23Lが縮み、旋回内輪WHin側のコイルスプリング23Rが伸びる。これらのコイルスプリング23R,23Lが発生する弾性力に対し、旋回内外輪WHin,WHoutの接地面にて上下方向に反力(上下反力)が発生する。この場合、上述したように旋回中の車両重心の移動を考慮せずに、旋回中に車両重心が車体の中心に位置するという仮定の下では、コイルスプリング23R,23Lの弾性力に対して旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0028】
この上下反力の大きさをFzcoilとすると、旋回外輪WHoutの接地面においては、コイルスプリング23Lの圧縮力に抗して上向きの反力Fzcoilが発生する。この上向きの反力Fzcoilは、キャリア25L、ロアアーム22L、アッパーアーム21Lなどの、旋回外輪WHoutとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印ALで示すように下方に向かう力として働く。また、旋回内輪WHinの接地面においては、コイルスプリング23Rの伸張力に抗して下向きの反力Fzcoilが発生する。この下向きの反力Fzcoilは、キャリア25R、ロアアーム22R、アッパーアーム21Rなどの、旋回内輪WHinとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印ARで示すように上方に向かう力として働く。
【0029】
ここで、旋回外輪WHoutと旋回内輪WHinの接地点間の長さであるトレッド長をLyとし、サスペンションメンバ10のロール中心(弾性中心)Oの車両左右方向位置が旋回外輪WHoutと旋回内輪WHinとの中間位置とする。この場合、旋回外輪WHout側からFzcoil・Ly/2の大きさのモーメントが、旋回内輪WHin側からFzcoil・Ly/2の大きさのモーメントが、サスペンションメンバ10に働くことになる。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。したがって、コイルスプリング23R,23Lの弾性力に対して旋回外輪WHout側および旋回内輪WHin側の双方からサスペンションメンバ10が受けるモーメントMcoilは、(3)式により表される。
【数3】
図6からわかるように、Mcoilは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を左周りに回転させるモーメントである。
【0030】
さらに、車両旋回時には、スタビライザ31が車体のロールを受けて捩られるとともに、この捩れに対する弾性力を発生する。この弾性力に対する反力が車輪の接地面にて上下方向に発生する。この上下反力のモーメントもサスペンションメンバ10に働く。
【0031】
図7は、右方向への車両旋回時にサスペンションメンバ10にスタビライザ31の弾性力に対する反力のモーメントが働いている状態を車両後方側から見て表した概念図である。スタビライザ31の弾性力は、旋回外輪WHout側ではロールによる車体STの沈み込みを戻すように上向きに働き、旋回内輪WHin側ではロールによる車体STの浮き上がりを戻すように下向きに働く。この弾性力に対し、旋回内外輪WHin,WHoutの接地面にて上下方向に反力(上下反力)が発生する。なお、上述のように、旋回時の車両の重心移動を考慮せずに、旋回中に重心が車体中心に位置するとの仮定の下では、スタビライザ31の弾性力に対して旋回外輪WHoutの接地面にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHinの接地面にて発生する上下反力の大きさは等しくなる。
【0032】
この上下反力の大きさをFzstbとすると、旋回外輪WHoutの接地面においては、スタビライザ31の上方向への弾性力に抗して下向きの反力Fzstbが発生する。この下向きの反力Fzstbは、ナックル25L、ロアアーム22L、アッパーアーム21Lなどの、旋回外輪WHoutとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には図の矢印BLで示されるように上方に向かう力として働く。また、旋回内輪WHinの接地面においては、スタビライザ31の下方向への弾性力に抗して上向きの反力Fzstbが発生する。この上向きの反力Fzstbは、ナックル25R、ロアアーム22R、アッパーアーム21Rなどの、旋回内輪WHinとサスペンションメンバ10との間に介在する部材を介した力の釣り合いによって、サスペンションメンバ10には矢印BRで示されるように下方に向かう力として働く。
【0033】
したがって、サスペンションメンバ10には、旋回外輪WHout側からFzstb・Ly/2の大きさのモーメントが働き、旋回内輪WHin側からFzstb・Ly/2の大きさのモーメントが働く。両モーメントはサスペンションメンバ10を同じ方向に回転させるモーメントである。よって、この上下反力によってサスペンションメンバ10が受けるモーメントMstbは、(4)式により表される。
【数4】
図7からわかるように、Mstbは、車両後方から見てサスペンションメンバ10を右周りに回転させるモーメントである。つまり、McoilとMstbは、それぞれサスペンションメンバ10を反対方向に回転させるモーメントである。
【0034】
図6および図7からわかるように、上下反力Fzcoilと上下反力Fzstbは、それぞれの車輪接地面にて上下に反対方向に働く。したがって、各車輪の接地面にて作用する上下反力Fzは、(5)式により表される。
【数5】
【0035】
サスペンションメンバ10には、(5)式で表される上下反力によるロールモーメントが働く。このロールモーメントMzは、(6)式により表される。
【数6】
【0036】
車両旋回時にサスペンションメンバ10に働くロールモーメントは上記タイヤ横力のモーメントMtireおよび上下反力のモーメントMzである。したがって、これらのモーメントが釣り合うことにより、すなわちMtireとMzの和を0とすることにより、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントを実質的に0にすることができる。横力のモーメントMtireと上下反力のモーメントMzがそれぞれサスペンションメンバ10を反対方向に回転させるモーメントと考えると、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントMは、(7)式により表すことができる。
【数7】
ロールモーメントMに0を代入して(7)式を変形すると、次の(8)式が得られる。
【数8】
【0037】
上記(8)式に基づいてLzを設定することにより、タイヤ横力のロールモーメントと上下反力のロールモーメントが等しくなるようなロール中心高さLzが定まる。ロール中心高さLzをこのように設定することにより、サスペンションメンバ10が受けるロールモーメントを0にすることができる。(8)式の計算を行うにあたり、トレッド長Ly、タイヤ横力Fyおよび上下反力Fzを求めておく必要がある。トレッド長Lyは既知であるが、タイヤ横力や上下反力は、車両の旋回状態によって変化する。したがって、対象となる車両が最も頻繁に実行するであろう定常的な旋回状態(例えば旋回半径や旋回時の車速)を予め調べておき、この定常旋回時に発生するタイヤ横力および上下反力の値を(8)式のFzおよびFyとして採用してLzを求めることができる。この場合、コイルスプリング23L,23Rやスタビライザ31の弾性係数を調整することにより、Mtireの回転方向とMzの回転方向とを反対方向とし、且つMが0となるようなLzの値を算出することができる。
【0038】
このように、本実施形態のサスペンションメンバ10においては、サスペンションメンバ10に働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時におけるタイヤ横力Fy、上下反力Fz(具体的にはこれらの比Fz/Fy)およびトレッド長Lyに基づいて、サスペンションメンバ10のロール中心の車輪接地面からの高さLzを設定している。具体的には、タイヤ横力のモーメントMtireと上下反力のモーメントMzとの和が0になるように(MtireとMzが等しくなるように)高さLzを設定している。このように高さLzを設定することにより、図8に示されるように、旋回外輪WHout側にて発生するタイヤ横力Fyと上下反力Fzの合力Foutの方向が、旋回外輪WHoutの接地点とロール中心Oを結ぶ直線の方向と一致し、旋回内輪WHin側にて発生するタイヤ横力Fyと上下反力Fzの合力Finの向きが、旋回内輪WHinの接地点とロール中心Oを結ぶ直線の方向と一致する。よって、サスペンションメンバ10には横力は働くものの、ロールモーメントは働かない。このため、スタビライザ31が取付けられているサスペンションメンバ10であっても車両旋回時のロールを防止することができる。これにより、車両旋回時のサスペンションアライメントの変化が抑制され、車両運動性能を維持することができる。
【0039】
また、クッション40に用いられるゴム部材403の上下方向の特性を軟化させてサスペンションメンバ10を車体に対して上下方向に動きやすくした場合においても、旋回時にサスペンションメンバ10のロールは抑制され、且つ路面からの振動がクッション40によって十分に吸収される。よって、乗り心地感や防振性、静粛性を改善することができる。すなわち本実施形態のサスペンションメンバ10の採用により、乗り心地や振動、騒音の改善と、車両の運動性能の維持の両立が可能となる。
【0040】
サスペンションメンバ10のロール中心の高さ方向位置を接地面からLz+Lz’とした場合における、サスペンションメンバ10に生じるロールモーメントをM’とすると、M’は(9)式により表すことができる。
【数9】
ここで、定常旋回時にはFyは一定である。図9は、クッション40の取付け高さ位置を変化させることによってサスペンションメンバ10のロール中心Oの高さ方向位置を変更した場合における、ロール中心位置とロールモーメントM(図9ではM2により表示している)との関係を示すグラフを、サスペンション装置の模式図ととともに表したものである。図9および(9)式からわかるように、ロール中心Oの高さ位置が(8)式により定まる位置から離れるほど、サスペンションメンバ10にロールモーメントが生じることとなる。
【0041】
なお、上記した方法は、高さLzを求める際に、旋回時の車両重心移動を考慮していない。そのため旋回外輪WHout側にて発生する横力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する横力の大きさが等しく、旋回外輪WHout側にて発生する上下反力の大きさと旋回内輪WHin側にて発生する上下反力の大きさが等しくなることを前提としてLzが求められている。しかし、実際には旋回時に車両重心移動が起こり、車両重心が車体の中心から左右方向に移動する。旋回時に車両重心位置が車体STの中心から左右方向にΔyだけずれることによって旋回内外輪WHin,WHoutにて発生する横力および上下反力の大きさがそれぞれ異なる場合には、Mtite,Mcoil,Mzは以下の式により算出され、Lzは、以下の式(10)により導出される。
【数10】
ここで、Fyoutは旋回外輪WHout側にて発生する横力、Fyinは旋回内輪WHin側にて発生する横力、Fzcoil_outは旋回外輪WHout側におけるコイルスプリング23Lの弾性力に対する上下反力、Fzcoil_inは旋回内輪WHin側におけるコイルスプリング23Rの弾性力に対する上下反力、Fzstb_outは旋回外輪WHout側におけるスタビライザ31の弾性力に対する上下反力、Fzstb_inは旋回内輪WHin側におけるスタビライザ31の弾性力に対する上下反力、Δyは車両重心の車体中心から左右方向へのずれ量である。
【0042】
ところで、車両の走行状態が直進走行状態から定常旋回状態に至るまでの旋回過渡状態においては、タイヤ横力は車輪接地面のスリップ角の変化と上下反力の変化によって過渡的に変化する。また、車輪接地面の上下反力は旋回時における車体全体のロール角の変化、正確に言えばショックアブソーバの減衰力変化によって過渡的に変化する。さらに、タイヤ横力と上下反力との比率も上記旋回過渡状態においては一定であるわけではない。
【0043】
つまり、定常旋回時に(8)式(車両重心移動を考慮する場合は(10)式、以下同じ)に基づいてサスペンションメンバ10に働くロールモーメントMを0とするようにロール中心の高さ位置Lzを設定したとしても、車両が定常旋回状態に至るまでの旋回過渡状態においては、タイヤ横力Fyと上下反力Fzの比率が変化する。このため(8)式によって算出されるLzの値も過渡的に変化する。したがって、旋回過渡状態においては、ロールモーメントMが0となるようなロール中心の高さ位置を一定に定めることができない。このため旋回過渡時にサスペンションメンバ10にロールモーメントが作用する。また、(8)式に基づいてLzを求めるときに仮定した定常旋回とは異なる旋回状態時においてもサスペンションメンバ10にロールモーメントが作用する。
【0044】
このような旋回過渡状態時や、Lzを求めたときに仮定した定常旋回とは異なる旋回状態時(以下、旋回過渡状態時等という)においては、サスペンションメンバを弾性支持するクッションの構造を工夫してサスペンションメンバのロール中心の高さ位置を変更可能にすることにより、旋回過渡状態等であってもサスペンションメンバにロールモーメントを作用させないように、あるいは作用するロールモーメントを最小化することができる。図10は、サスペンションメンバのロール中心(弾性中心)を変更することができるクッションの構造の一例を示す図である。図10において、(a)はクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を車両後方から見たときのクッションの構造を示す断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0045】
図10(a)に示されるように、このクッション41は、サスペンションメンバ10に形成された上下方向に貫通した孔内に取付けられている。クッション41は、外筒411と、外筒411の内周に配置された内筒412と、ゴム部材413を備える。外筒411はサスペンションメンバ10に、内筒412は車体側の部材にそれぞれ連結する。ゴム部材413は外筒411と内筒412との間に設けられている。
【0046】
図10(b)からわかるように、ゴム部材413は、円筒状に形成された円筒部413aと、円筒部413aの外周から径外方に伸びた2つの連結部413b,413bおよび2つの凸部413c,413cを有する。円筒部413aの内壁部分は内筒412に固着している。2つの連結部413b,413bは周方向に180°隔てて設けられ、外筒411の内壁に固着している。2つの凸部413c,413cも円筒部413aの周方向に180°隔てて設けられている。2つの連結部413b,413bおよび2つの凸部413c,413cは、円筒部413aの周方向に沿って等間隔(90°間隔)で交互に配置されている。2つの凸部413c、413cは、車両の左右方向に延びており、その先端は外筒411の内壁に接触していない。したがって、2つの凸部413c、413cと外筒411の内壁との間には微小なクリアランスが設けられている。また、図10(a)からわかるように、一方の凸部413cは円筒部413aの軸方向の上方側に設けられており、他方の凸部413cは円筒部413aの軸方向の下方側に設けられている。
【0047】
クッション41は、サスペンションメンバ10の車両左右方向の各端部に取付けられており、2つのクッション41を介してサスペンションメンバ10が車体側の部材に弾性支持される。このようなクッション41を採用したサスペンション装置においては、車両旋回時にタイヤ横力によってサスペンションメンバ10が車体に対して横方向に移動すると、例えば図11に示すように一方の凸部(図において右側の凸部)413cが外筒411に接触する。この接触によって、ゴム部材413の弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示された傾斜角度からQ1,Q2で示された傾斜角度に変化する。なお、弾性主軸の傾斜角度とは、例えば水平線に対する弾性主軸の傾き角度をいう。
【0048】
図12は、凸部413cと外筒411との接触状態の変化を示す図である。左方側の図から右方側の図に進むにつれて、凸部413cと外筒411の内壁との接触面積が大きくなっている。このように凸部413cと外筒411との接触面積が変化すると、ゴム部材413の弾性主軸の傾斜角度も変化する。すなわち上記接触面積と弾性主軸の傾斜角度との間には相関関係がある。また、凸部413cと外筒411の内壁との接触面積の大きさは、車両に作用するタイヤ横力とも関係する。つまり、タイヤ横力が大きければ大きいほどサスペンションメンバ10の横揺れが大きくなって凸部413cと外筒411の内壁との接触面積も大きくなる。したがって、タイヤ横力と弾性主軸の傾斜角度との間には、例えば図13で示されるような相関関係がある。
【0049】
サスペンションメンバ10のロール中心は2つのクッション41のゴム部材413の弾性主軸の交点であるので、このロール中心の高さ位置は弾性主軸の傾斜角度の大きさにより定められる。したがって、図10に示される構造のクッション41を採用し、タイヤ横力の大きさに基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変更することができる。また、タイヤ横力と、タイヤ横力と上下反力との比との間には相関関係がある。よって、凸部413cの形状を工夫し、旋回過渡状態時等であってもロール中心の高さ位置が(8)式によって算出される値Lzとなるように弾性主軸の傾斜角度をタイヤ横力に基づき変化させることで、サスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【0050】
図14は、サスペンションメンバのロール中心の高さ位置を変化させることができるクッションの構造の他の一例を示す図である。このクッション42は、車両旋回時にサスペンションメンバ10に作用する上下反力に基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変化させるものである。図14(a)はこのクッション42がサスペンションメンバ10に取付けられた状態を示す断面図、図14(b)は図14(a)におけるB−B断面のうちクッション42のみを示した断面図である。
【0051】
図14(a)に示されるように、このクッション42は、外筒421と、内筒422と、ゴム部材423と、カラー424と、ストッパ425とを備える。外筒421と内筒422は同心状に配置され、両筒の間にゴム部材423が配設されている。ゴム部材423は円筒形状とされ、その内周壁が内筒422の外周に、外周壁が外筒421の内周に、それぞれ固着されている。内筒422は車体側の部材に連結される。また、内筒422の軸方向長さは外筒421の軸方向長さよりも長くされており、図からわかるように内筒422は外筒421の両端面から図示上下方向に突き出た突出部分を有している。
【0052】
カラー424は外筒421の外周を覆うようにサスペンションメンバ10に上下方向に貫通形成された孔内に配置し、この孔内にてサスペンションメンバ10に固定されている。カラー424は、円筒状の側周部424aおよびこの側周部424aの軸方向両端から径内方に延びたリング状の端面部424b,424bを有している。側周部424aの内周壁側が外筒421の外周面に対面している。また、両端面部424b,424b間に外筒421とゴム部材423の外周寄りの部分が嵌り込んでいて、この嵌り込みによってこれらがカラー424に保持される。
【0053】
内筒422の上下の突出部分には、それぞれ一対のストッパ425が取付けられている。ストッパ425は、平板状のプレート425aと弾性部425bとを有する。プレート425aの中央には孔が設けられている。この孔には内筒422が差し込まれており、所定の軸方向位置でプレート425aが内筒422に固定されている。プレート425aは内筒422の軸方向に直交する方向に延びており、その一端部に弾性部425bが装着されている。弾性部425bは山型形状とされており、山の頂部がカラー424の端面部424bに対面し、両者間に微小のクリアランスを有するように配置されている。また、一対のストッパ425の弾性部425bは、内筒422に対して対称的に配置されている。すなわち、上方のストッパ425の弾性部425bは内筒422の左方側に配置され、下方のストッパ425の弾性部425bは内筒422の右方側に配置されている。
【0054】
クッション42は、サスペンションメンバ10の車両左右方向の各端部に取付けられており、2つのクッション42を介してサスペンションメンバ10が車体側の部材に弾性支持される。このようなクッション42を採用したサスペンション装置において、車両旋回時に上下反力によってサスペンションメンバ10が車体に対して上下方向に移動すると、一方のストッパ425の弾性部425bがカラー424の端面部424bに接触する。この接触によって、例えば図15に示されるように、弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示された傾斜角度からQ1,Q2で示された傾斜角度に変化する。また、弾性主軸の傾斜角度はストッパ425とカラー424とが接触するときに加えられる力の大きさ、すなわち上下反力の大きさによって、例えば図16のグラフに示されるように変化する。
【0055】
サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置は弾性主軸の傾斜角度の大きさにより定められる。したがって、図14に示される構造のクッション42を採用し、上下反力の大きさに基づいて弾性主軸の傾斜角度を変更することによって、サスペンションメンバ10のロール中心の高さ位置を変更することができる。また、上下反力と、タイヤ横力と上下反力との比との間には相関関係がある。よって、弾性部425bの形状を工夫し、旋回過渡状態時等であってもロール中心の高さ位置が(8)式によって算出される値Lzとなるように主軸傾き角度を上下反力に基づき変化させることで、サスペンションメンバ10に作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【0056】
上記したクッション41およびクッション42は、車両旋回時に発生するタイヤ横力や上下反力を利用して弾性主軸の傾斜角度を変化させているが、アクチュエータなどを用いて傾斜角度や傾斜角度の変化特性を積極的に変化させてもよい。例えば、アクチュエータを用いてクッションを傾斜させ、あるいはクッション内のゴム部材を局所的に押圧することにより、傾斜角度を変更することができる。また、ゴム部材とゴム部材に接触する部材との間のクリアランスを調整して、弾性主軸の傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更することができる。アクチュエータの作動は、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段により制御することができる。
【0057】
図17は、アクチュエータの作動を制御するECU等の制御手段が実行する主軸傾斜制御プログラムの一例である。この図によれば、制御手段は、アクチュエータを作動させるか否かを決定するにあたり、まず操舵角センサなどのステアリングホイールの操舵角を検出するためのセンサが出力する検出値に基づいて、ステアリングホイールが操舵操作されているかを判定する(S10)。操舵操作されている場合には、車体に取付けられた横加速度センサが出力する横加速度に基づいて車体がロールしているかを判定する(S12)。車体がロールしている場合には、サスペンションメンバ10に取付けられた横加速度センサが出力する横加速度に基づいてサスペンションメンバ10がロールしているかを判定する(S14)。サスペンションメンバ10がロールしていると判定した場合には、制御手段は上記(8)式に基づいて計算したLzから弾性主軸の目標角度を計算し、アクチュエータを作動させて弾性主軸の傾斜角度を上記目標角度となるように変更させる(S16)。あるいは、制御手段は、アクチュエータを作動させて弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように変化するように、傾斜角度の変化特性を変化させる。それ以外の場合には、アクチュエータを作動させない(S18)。このような制御フローに従って制御手段がアクチュエータの作動を制御することにより、弾性主軸の傾斜角度を変更制御することができる。
【0058】
図18は、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させるためのアクチュエータが組み込まれたクッションの一例を示す断面概略図である。図に示されるようにこのクッション43は、サスペンションメンバ10に上下方向に貫通形成された孔部内に取付けられている。クッション43は、外筒431と、内筒432と、ゴム部材433と、カラー434と、一対のストッパ435,435とを備える。内筒432と外筒431は同心状に配置され、両筒の間にゴム部材433が配設されている。ゴム部材433は円筒形状とされ、その内周壁が内筒432の外周に、外周壁が外筒431の内周に、それぞれ固着されている。
【0059】
カラー434は外筒431の外周を覆うようにサスペンションメンバ10に形成された孔内に配置し、この孔内にてサスペンションメンバ10に固定されている。カラー434は、円筒状の側周部434aおよびこの側周部434aの軸方向両端から径内方に延びたリング状の端面部434b,434bを有している。側周部434aの内周壁側が外筒431の外周面に対面している。また、両端面部434b、434b間に外筒431とゴム部材433が嵌り込んでいて、この嵌り込みによってこれらがカラー434に保持される。
【0060】
内筒432には車体側の部材が連結する。内筒432の軸方向長さは外筒431の軸方向長さよりも長くされており、図からわかるように外筒431の両端面から図示上下方向に突き出た突出部分を有している。この突出部分にストッパ435が取付けられている。図19にこのストッパ435の斜視図を示す。ストッパ435は、リングプレート435aと、4つに分割されたピエゾアクチュエータ435bと、各ピエゾアクチュエータ435b上に載置された弾性部435cとを有する。リングプレート435aはリング状の平板部材であり、内筒432と同軸的に配置するように、その内周壁が内筒432の外周に連結されている。リングプレート435aの面上にピエゾアクチュエータ435bが配設されている。ピエゾアクチュエータ435bはピエゾ素子を積層してなるアクチュエータであって、逆圧電効果により所定方向への長さが変化するものである。
【0061】
図19に示されるように、ピエゾアクチュエータ435bは、リングプレート435aの周方向に沿って均等に四分割されており、個々のピエゾアクチュエータ435bは水平方向の断面が円弧形状となるように形成されている。これらのピエゾアクチュエータ435bは、通電により各々独立して上下方向に伸縮可能とされている。各ピエゾアクチュエータ435bの上部に弾性部435cが取付けられている。この弾性部435cはクッション43内のゴム部材433と同一部材でもよく、異なった弾性係数を有するものでもよい。この弾性部435cは、鉛直方向の断面が台形状とされている。なお、本例では一つのストッパ435に4つのピエゾアクチュエータ435bと各ピエゾアクチュエータ435bに対応する4つの弾性部435cが設けられているが、2つのピエゾアクチュエータと各ピエゾアクチュエータに対応する2つの弾性部を設けるような構成としてもよい。
【0062】
上記構成のストッパ435が内筒432の上下の突出部にそれぞれ取付けられている。両ストッパ435,435は、各々の弾性部435cがカラー434の端面部434bに対面するように向かい合って内筒432に取付けられている。したがって、サスペンションメンバ10が車体に対してロールした場合には、その傾き方向によっていずれかの弾性部435cとそれに対面するカラー434の端面部434bとが当接する。
【0063】
図20は、ピエゾアクチュエータ435bを通電制御した状態を示す図である。この図においては、内筒432の上部側に取付けられたストッパ435Uの左側の弾性部435cULが、対面するカラー434の端面部434bに近づくように、また右側の弾性部435cURが、対面するカラー434の端面部434bから遠ざかるように、それぞれのピエゾアクチュエータ435bが作動制御される。また、内筒432の下部側に取付けられたストッパ435Dの右側の弾性部435cDRが、対面するカラー434の端面部434bに近づくように、また左側の弾性部435cDLが、対面するカラー434の端面部434bから遠ざかるように、それぞれのピエゾアクチュエータ435bが作動制御される。
【0064】
ピエゾアクチュエータ435bが上記のように作動制御されることにより、各弾性部435cとそれに対面するカラー434の端面部434bとの間のクリアランスを調整することができる。例えば、図20に示されるように、ストッパ435Uにおいて左側の弾性部435cULとカラー434との間のクリアランスが小さくされるとともに右側の弾性部435cURとカラー434との間のクリアランスが大きくされる。一方、ストッパ435Dにおいて右側の弾性部435cDRとカラー434との間のクリアランスが小さくされるとともに左側の弾性部435cDLとカラー434との間のクリアランスが大きくされる。これにより、クリアランスが小さくされた部分がクッション43の一方の対角方向に沿って配置され、クリアランスが大きくされた部分は他方の対角方向に沿って配置される。
【0065】
クッション43がこのような状態とされている場合において、サスペンションメンバ10に車体に対して図の時計回り方向にロール力が加えられると、直ちに弾性部435cULと弾性部435cDRがカラー434に接触し、ゴム部材433のそれ以上の回転変位が規制される。またこのとき、弾性主軸の傾斜角度がP1,P2で示す傾斜角度からQ1,Q2で示す傾斜角度に変化する。一方、サスペンションメンバ10に車体に対して図の反時計回り方向にロール力が加えられても、クリアランスの大きい弾性部435cURと弾性部435cDLはカラー434に接触しないために弾性主軸の傾斜角度はなかなか変化しない。このような傾斜角度の変化特性、具体的にはロール力を表す比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性は、上記クリアランスの大きさによって変化する。つまり、この例では、ピエゾアクチュエータ435bへの通電制御によるクリアランス調整によって、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0066】
ピエゾアクチュエータ435bは、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段Contによってその作動が制御される。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近に取付けられた横力センサおよび上下力センサが出力する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてピエゾアクチュエータ435bを作動制御する。図21は、(8)式を満たすようにLzを定めた場合における弾性主軸の傾斜角度と比(Fz/Fy)との関係を表すグラフの一例である。制御手段Contは図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、ピエゾアクチュエータ435bの作動を制御してクリアランスを調整する。制御手段Contはこのようなクリアランス調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0067】
上記した制御手段Contによる弾性主軸の傾斜角度の変化特性の変更制御により、車両の旋回状況に応じて比(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更制御される。よって、旋回過渡状態時等においてもサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0068】
図22は、アクチュエータによって作動する他の構造のストッパを備えたクッションの断面図である。この例において、クッション44は、外筒441と、内筒442と、ゴム部材443と、カラー444と、一対のストッパ445,445を備える。外筒441、内筒442、ゴム部材443、カラー444の構造は、図18に示されるものと同一である。ストッパ445の構造は、図18に示されるストッパ435の構造からピエゾアクチュエータを取り除いた構成とされる。
【0069】
図23は、ストッパ445の斜視図である。この図に示されるように、ストッパ445はリングプレート445aおよび弾性部445cからなる。リングプレート445aの形状は図19に示されたリングプレート435aと同一である。弾性部445cはリングプレート445a上に直接載置されている。この弾性部445cは、リングプレート445aの周方向に均等に4分割して配置されている。弾性部445cの外観形状は図19に示された弾性部435cと同一である。
【0070】
図24は、弾性部445cの内部構造を示した概略断面図である。この図からわかるように、弾性部445cの内部には空間が設けられている。この空間はダイヤフラム446によって上下に仕切られており、上方の部屋は液体が封入された液室447aとされ、下方の部屋は空気が封入された空気室447bとされている。液室447aは、弾性部445cおよびダイヤフラム446により密閉されている。空気室447bは、ダイヤフラム446、弾性部445cおよびリングプレート445aに囲まれている。リングプレート445aに囲まれた部分には孔部445dが形成されており、この孔部445dは空気通路448の一端に連通している。この空気通路448の他端はタンク449に連結されている。したがって、タンク449により空気通路448から空気が圧送されて空気室447b内に流入すると、空気室447b内の圧力が増加してダイヤフラム446が上方に変位する。これにより液室447a内の容積が減少して液室447a内の圧力が増加する。一方、タンク449の作動により空気室447b内の空気が空気通路448を経由してタンク449内に排出されると、空気室447b内の圧力が低下してダイヤフラム446が下方に変位する。これにより液室447a内の容積が増加して液室447a内の圧力が降下する。
【0071】
このようなストッパ445が取付けられたクッション44は、空気室447bへの空気の給排制御により液室447a内の圧力を変化させることで、ストッパ445の弾性部445cの硬さを変化させることができる。図25は、各弾性部445cの硬さを変化した場合におけるクッション44を示す断面図である。この図においては、上側のストッパ445Uの左側の弾性部445cULおよび下側のストッパ445Dの右側の弾性部445cDRが硬くなるようにタンク449から空気が圧送され、上側のストッパ445Uの右側の弾性部445cURおよび下側のストッパ445Dの左側の弾性部445cDLが軟らかくなるようタンク449へ空気が排出される。
【0072】
図25に示されるような状態でクッション44がサスペンションメンバ10に取付けられている場合において、サスペンションメンバ10にロール力が加えられると、サスペンションメンバ10のロール方向によってストッパ445のいずれかの弾性部445cとカラー444が接触する。この接触によってゴム部材433のそれ以上の回転変位が規制されるとともに、弾性主軸の傾斜角度が図のP1,P2で示す傾斜角度からQ1,Q2で示す傾斜角度に変化する。この傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性は、各弾性部445cの硬さによって変化する。すなわち、タンク449の給排制御によって各弾性部445cの硬さを変化させることにより、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0073】
タンク449の給排制御は、例えば車両に搭載されたECU等の制御装置Contによって行われる。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近等に取付けられた横力センサおよび上下力センサが検出する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてタンク449の給排を制御する。そして、図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、タンク449の給排を制御して各弾性部445cの硬さを調整する。制御手段Contはこのような弾性部445cの硬さ調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0074】
この例においては、サスペンションメンバ10にロール力が加えられたときに、制御手段Contがタンク449の給排を制御して各弾性部445cの硬さを調整することにより、弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性が変更される。このため旋回状況に応じて(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更される。よって、旋回過渡状態時等においてサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0075】
図26(a)は、さらに別のストッパを取付けたクッションがサスペンションメンバに取付けられている状態を示す断面図、図26(b)は図26(a)におけるC−C断面図である。この例においては、クッション45は、外筒451と、内筒452と、ゴム部材453と、カラー454と、ストッパ455を備える。内筒452は車体側の部材に連結される。ゴム部材453は、円筒状に形成され内筒452の外周に固着する内周壁を有する円筒部453aと、この円筒部453aの外周から径外方に延びた2つの連結部453b、453bおよび2つの凸部453c、453cを有する。2つの連結部453b、453bは円筒部453aの周方向に180°隔てて設けられるとともに、外筒451の内壁に固着されている。2つの凸部453c,453cも円筒部453aの周方向に180°隔てて設けられている。これらの2つの連結部453bおよび2つの凸部453cは、円筒部453aの周方向に沿って等間隔(90°間隔)で交互に配置している。また、図26(a)に示されるように、一方の凸部453c(図の左側の凸部)は円筒部453aの軸方向の上方側に設けられており、他方の凸部453c(図の右側の凸部)は円筒部453aの軸方向の下方側に設けられている。両凸部453cは、車両の左右方向に延びている。また、図26(b)に示されるように、外筒451には、上記2つの凸部453c,453cに対面する部分に切り欠き451aが形成されている。外筒451の外周に配置されたカラー454も外筒451と同様に、上記2つの凸部453c,453cに対面する部分に切り欠き454cが形成されている。
【0076】
サスペンションメンバ10にはクッション45を組み込むための孔10bが形成されている。この孔10bは、第1凹部空間10b1および対の第2凹部空間10b2,10b2からなる。第1凹部空間10b1は、サスペンションメンバ10を上下方向に貫通する円筒状空間である。対の第2凹部空間10b2は、第1凹部空間10b1の車両左右方向側に連通し、第1凹部空間10b1を挟んで対称的に形成され、矩形形状をなしている。第1凹部空間10b1を形成する壁面にクッション45のカラー454の外周が接続されている。第2凹部空間10b2,10b2内には、一対のストッパ455がそれぞれ取付けられている。
【0077】
ストッパ455は、ピエゾ素子などからなるアクチュエータ455aと、接触部材455bと、上記アクチュエータ455aと接触部材455bとを連結する連結棒455cを備える。アクチュエータ455aは、第2凹部空間10b2を形成するサスペンションメンバ10の壁面に固定されている。連結棒455cは、サスペンションメンバ10の長手方向、すなわち車両左右方向に延びている。接触部材455bは、外筒451およびカラー454に形成された切り欠き451a,454cにより形成される窓状の空間に嵌り込む位置に設けられ、ゴム部材453の凸部453cと対面している。したがって、接触部材455bは、アクチュエータ455aの作動によって図27の模式図に示されるように、連結棒455cの軸方向に変位して切り欠き451aに囲まれた窓状の空間から外筒451内に出入り可能とされている。
【0078】
上記構成において、アクチュエータ455aの作動により接触部材455b,455bが変位すると、接触部材455b,455bとそれに対面しているゴム部材453の凸部453cとの間のクリアランスが変化する。例えばアクチュエータ455aを作動させて、凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスを狭めたり広めたりすることができる。
【0079】
このような状態でクッション45がサスペンションメンバ10に取付けられている場合において、図28に示されるように矢印方向からサスペンションメンバ10に入力があると、図において右側の凸部453cと接触部材455bが接触する。この接触によってゴム部材453のそれ以上の変位が規制されるとともに、弾性主軸の傾斜角度が図のP1,P2で示される傾斜角度からQ1,Q2で示される傾斜角度に変化する。この傾斜角度の変化特性、具体的には比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性は、凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスの大きさによって変化する。すなわち、アクチュエータ455aの作動制御による凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスの調整によって、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変化させることができる。
【0080】
アクチュエータ455aの制御は、例えば車両に搭載されたECU等の制御手段Contにより行うことができる。制御手段Contは、サスペンションメンバ10や各車輪付近等に取付けられた横力センサおよび上下力センサが出力する検出値から横力Fyと上下反力Fzとの比(Fz/Fy)を計算し、計算した比に基づいてアクチュエータ455aを作動制御する。そして、図21のグラフを参照し、比(Fz/Fy)に基づいて目標となる弾性主軸の傾斜角度を計算し、弾性主軸の傾斜角度が比(Fz/Fy)に応じて計算した傾斜角度に変化するような変化特性を持つように、アクチュエータ455aの作動を制御してクリアランスの大きさを調整する。制御手段Contはこのようなクリアランス調整により、弾性主軸の傾斜角度の変化特性を制御する。
【0081】
この例においては、サスペンションメンバ10に例えば横力のような外力が加えられたときに、制御手段Contがアクチュエータ455aの作動を制御して凸部453cと接触部材455bとの間のクリアランスを調整することにより、弾性主軸の傾斜角度が(8)式を満たすように比(Fz/Fy)に対する傾斜角度の変化特性が変更される。このため旋回状況に応じて比(Fz/Fy)が変化した場合においてもその変化に追従して(8)式を満たすようにLzが変更される。よって、旋回過渡状態時等においてサスペンションメンバ10に作用するロールモーメントが小さくされ、あるいは実質的に0とされる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のサスペンションメンバは、作用するロールモーメントが略0となるように、車両の定常旋回時に車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと上下反力のモーメントに基づいて、車輪接地面からサスペンションメンバのロール中心(弾性中心)までの高さLzを設定している。よって、サスペンションメンバ10にはロールモーメントがほとんど作用せず、車両旋回時にサスペンションメンバが大きくロールしてキャスタ角などのサスペンションアライメントが大きく変化することが効果的に防止される。また、クッションによってサスペンションメンバが車体に弾性支持されることにより、乗り心地や振動、騒音も改善される。
【0083】
また、本実施形態では、弾性主軸の傾斜角度あるいは比(Fz/Fy)に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更することによりサスペンションメンバのロール中心を変化させることができるクッションを採用したサスペンションメンバも提案している。これによれば、車両の旋回過渡状態時等においても、サスペンションメンバのロール中心を変化させることでサスペンションメンバに作用するロールモーメントを小さくし、あるいは実質的に0にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施形態に係るサスペンション装置を車両後方から見た図である。
【図2】図1のサスペンション装置を簡略化して描いた図である。
【図3】サスペンションメンバにインシュレータが組み込まれている部分の拡大断面図である。
【図4】車両旋回時に発生する遠心力とタイヤ横力との関係を示す模式図である。
【図5】サスペンションメンバがタイヤ横力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図6】サスペンションメンバがコイルスプリングによる力に対して発生する反力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図7】サスペンションメンバがスタビライザによる復元力に対して発生する反力のモーメントを受けている状態を示す概略図である。
【図8】タイヤ横力のモーメントと上下反力のモーメントがサスペンションメンバに働く状態を示す概略図である。
【図9】サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置とサスペンションメンバが受けるロールモーメントとの関係を示すグラフを、サスペンションメンバの模式図とともに表した図である。
【図10】(a)は、サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置を変化させることができるクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A断面のうちクッションのみを示した断面図である。
【図11】図10に示されるクッションを用いた場合における、弾性主軸の傾斜角度の変化を示す図である。
【図12】凸部と外筒との接触状態の変化を示す図である。
【図13】タイヤ横力と弾性主軸の傾斜角度との関係を示すグラフである。
【図14】(a)は、サスペンションメンバのロール中心の高さ方向位置を変化させることができる他のクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す断面図であり、(b)は(a)のB−B断面のうちクッションのみを示した断面図である。
【図15】図14に示されるクッションを用いた場合における、弾性主軸の傾斜角度の変化を示す図である。
【図16】上下反力と弾性主軸の傾斜角度との関係を示すグラフである。
【図17】弾性主軸の傾斜角度を変更するアクチュエータを制御する制御手段が実行するプログラムフローチャートの一例である。
【図18】横力と上下反力との比に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させるアクチュエータが組み込まれたクッションの一例を示す概略断面図である。
【図19】図18に示されるクッションのストッパの斜視図である。
【図20】図18に示されるクッションのストッパのピエゾアクチュエータを通電制御した状態を示す図である。
【図21】横力と上下反力との比に対する弾性主軸の傾斜角度の変化特性を示すグラフである。
【図22】弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させる他のアクチュエータが組み込まれたインシュレータの一例を示す概略断面図である。
【図23】図22に示されるクッションのストッパの斜視図である。
【図24】図22に示されるクッションのストッパの弾性部の内部構造を示した概略断面図である。
【図25】タンクの作動により弾性部のバネ定数が変化された状態のストッパを示す概略断面図である。
【図26】弾性主軸の傾斜角度の変化特性を変更させる更に他のストッパを取付けたクッションがサスペンションメンバに取付けられた状態を示す概略断面図であり、(a)が車両後方側から見た断面図、(b)が(a)のC−C断面図である。
【図27】接触部材が変位する状態を示す模式図である。
【図28】図26に示されるクッションを用いた場合の弾性主軸の傾斜角度の変化を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…サスペンション装置、10…サスペンションメンバ、10a,10b…孔、21R,21L…アッパーアーム、22R,22L…ロアアーム、23R,23L…コイルスプリング、24R,24L…ショックアブソーバ、31…スタビライザ、32R,32L…スタビライザリンク、33R,33L…スタビライザブッシュ、40R,40L…クッション、40、41,42,43,44,45…クッション、401,411,421,431,441,451…外筒、402,412,422,432,442,452…内筒、403,413,423,433,443,453,…ゴム部材(弾性部材)、424,434,444,454…カラー、425、435,445,455…ストッパ、Fy…タイヤ横力(横力)、Fz…上下反力、Fzcoil…コイルスプリングが発生する弾性力に対して車輪接地面にて発生する上下反力、Fzstb…スタビライザが発生する弾性力に対して車輪接地面にて発生する上下反力、Ly…トレッド長、Lz…サスペンションメンバのロール中止の高さ位置、Mcoil…コイルスプリングが発生する弾性力に対する反力のモーメント、Mstb…スタビライザが発生する弾性力に対する反力のモーメント、Mtire…タイヤ横力のモーメント、O…ロール中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアームを支持するとともに弾性部材を介して車体に弾性支持され、かつスタビライザが取付けられたサスペンションメンバにおいて、
前記サスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に左右の車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、前記定常旋回時に車体を支持するコイルスプリングおよび前記スタビライザが発生する力に対して前記接地面にて生じる上下反力のモーメントに基づいて、前記接地面からロール中心までの高さが設定されていることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記横力のモーメントと前記上下反力のモーメントの和が0になるように、前記接地面から前記ロール中心までの高さが設定されていることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記横力のモーメントは、前記横力と前記接地面から前記ロール中心までの高さとから求められ、前記上下反力のモーメントは、前記上下反力と左右車輪間のトレッド長により求められることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記定常旋回時における旋回内輪の接地面および旋回外輪の接地面にて生じる横力をFy、前記上下反力をFz、前記トレッド長をLy、前記接地面から前記ロール中心までの高さをLzとすると、Lzが下記式1により求められることを特徴とするサスペンションメンバ。
【数1】
【請求項1】
サスペンションアームを支持するとともに弾性部材を介して車体に弾性支持され、かつスタビライザが取付けられたサスペンションメンバにおいて、
前記サスペンションメンバに働くロールモーメントが0となるように、車両の定常旋回時に左右の車輪の接地面にて生じる横力のモーメントと、前記定常旋回時に車体を支持するコイルスプリングおよび前記スタビライザが発生する力に対して前記接地面にて生じる上下反力のモーメントに基づいて、前記接地面からロール中心までの高さが設定されていることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記横力のモーメントと前記上下反力のモーメントの和が0になるように、前記接地面から前記ロール中心までの高さが設定されていることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記横力のモーメントは、前記横力と前記接地面から前記ロール中心までの高さとから求められ、前記上下反力のモーメントは、前記上下反力と左右車輪間のトレッド長により求められることを特徴とするサスペンションメンバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサスペンションメンバにおいて、
前記定常旋回時における旋回内輪の接地面および旋回外輪の接地面にて生じる横力をFy、前記上下反力をFz、前記トレッド長をLy、前記接地面から前記ロール中心までの高さをLzとすると、Lzが下記式1により求められることを特徴とするサスペンションメンバ。
【数1】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
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【図27】
【図28】
【公開番号】特開2010−6347(P2010−6347A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171378(P2008−171378)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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