説明

シフトショック低減構造を備える車両

【課題】シフトショック低減構造を備える車両において、車体環境の変化に応じてシフトショックを低減できるようにすることを目的とする。
【解決手段】変速機構としてのAMT10を備えるエンジンEと、変速段を検知するギヤポジションセンサ30と、エンジンEの回転数を検出するエンジン回転数センサ29とを備え、各変速段に応じてシフトショックを低減できるよう変速時にエンジンEの回転数制御を行うシフトショック低減構造を備える車両において、AMT10は、運転者の変速操作に応じてクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッションであり、変速段の変更後に各変速段に応じた回転数制御を行い、クラッチ11を自動で接続し、且つ、二人乗りを検出するパッセンジャー検出手段を備えており、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトショック低減構造を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機を備えた車両において、シフトダウン時に、変速段及びスロットル開度や車速等の走行状態に応じてエンジンの出力を操作してシフトショックを低減するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−284039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マニュアルトランスミッションを備える車両においても、上記従来技術のように、シフトダウン時にエンジン出力調整装置によって一時的にエンジン回転数を上昇させることでシフトショックを低減することができる。しかし、従来のシフトショック低減方法で考慮されているスロットル開度や車速等以外にも、他の車体環境が変化することでもシフトショック低減に影響が出るという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シフトショック低減構造を備える車両において、車体環境の変化に応じてシフトショックを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、変速機構(10)を備えるエンジン(E)と、変速段を検知する変速段検出手段(30)と、エンジン(E)の回転数を検出する回転数検出手段(29)とを備え、各変速段に応じてシフトショックを低減できるよう変速時にエンジン(E)の回転数制御を行うシフトショック低減構造を備える車両において、前記変速機構(10)は、運転者の変速操作に応じてクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッションであり、前記変速段の変更後に各変速段に応じた回転数制御を行い、クラッチ(11)を自動で接続し、且つ、二人乗りを検出するパッセンジャー検出手段(142C)を備えており、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味することを特徴とする。
この構成によれば、変速機構は、運転者の変速操作に応じてクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッションであり、変速段の変更後に各変速段に応じた回転数制御を行い、クラッチを自動で接続し、且つ、二人乗りを検出するパッセンジャー検出手段を備えており、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味し、変速の際に乗車人数に適したスロットル開度にすることができるため、車体環境の変化に応じてシフトショックを低減できる。
【0006】
また、上記構成において、二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ接続を行い、所定回転数でのクラッチ接続とする構成としても良い。
この場合、二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ接続を行い、所定回転数でのクラッチ接続とするため、二人乗りに適した回転数でクラッチ接続でき、シフトショックを低減できる。
また、前記目標スロットル開度は、シフトダウンに伴うクラッチ(11)の切断から接続までの間に設定され、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を大きく設定する構成としても良い。
この場合、目標スロットル開度は、シフトダウンに伴うクラッチの切断から接続までの間に設定され、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を大きく設定するため、二人乗りでシフトダウンした後に適正なエンジン回転数でクラッチを接続でき、シフトショックを低減できる。
【0007】
さらに、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも前記目標スロットル開度を維持する時間を長くしても良い。
この場合、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を維持する時間を長くし、エンジン回転数を適正な回転数に調節することができるため、シフトショックを低減できる。
また、パッセンジャー検出手段は、シート(142)に設けた着座センサ(142C)であっても良い。
この場合、パッセンジャー検出手段はシートに設けた着座センサであるため、簡単な構成で二人乗りの状態を検出してシフトショックを低減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るシフトショック低減構造を備える車両では、二人乗りを検出するパッセンジャー検出手段を備えており、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味し、変速の際に乗車人数に適したスロットル開度にすることができるため、車体環境の変化に応じてシフトショックを低減できる。
また、二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ接続を行い、所定回転数でのクラッチ接続とするため、二人乗りに適した回転数でクラッチ接続でき、シフトショックを低減できる。
【0009】
また、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を大きく設定するため、二人乗りでシフトダウンした後に適正なエンジン回転数でクラッチを接続でき、シフトショックを低減できる。
さらに、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を維持する時間を長くし、エンジン回転数を適正な回転数に調節することができるため、シフトショックを低減できる。
また、パッセンジャー検出手段はシートに設けた着座センサであるため、簡単な構成で二人乗りの状態を検出してシフトショックを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】エンジンの自動変速機構及びその周辺装置のシステム構成図である。
【図3】AMT制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】変速時のスロットルグリップ開度、エンジン回転数、クラッチの接続状態、及び、シフトショックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、車両の運転者から見た方向をいう。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
自動二輪車100の車体フレーム111は、車体前部に位置するヘッドパイプ112と、このヘッドパイプ112から車体中央まで後方に延びる左右一対のメインフレーム114と、メインフレーム114の後端部から下方に延びる左右一対のピボットプレート115と、メインフレーム114の後端部から車両後部まで延びるリヤフレーム(不図示)とを備えている。
ヘッドパイプ112には、フロントフォーク116が回動自在に取り付けられ、このフロントフォーク116の下端に前輪117が回転自在に支持されている。また、ヘッドパイプ112の上部には、操舵用ハンドル118が取り付けられ、操舵用ハンドル118には、運転者が回動操作するスロットルグリップ(不図示)が設けられている。
【0012】
メインフレーム114、及びピボットプレート115には、パワーユニットPが懸架、搭載され、パワーユニットPから出力される回転動力は、車体前後に延びるドライブシャフト123を介して後輪131へと伝達される。
パワーユニットPは、前後V型4気筒のエンジンEを備え、該エンジンEは、左右のメインフレーム114内に配置されている。該エンジンEは、クランクシャフト2(図1参照)を左右水平方向に指向し横置き配置であって、OHC型の水冷式で、クランクケース3を備え、該クランクケース3から2気筒ずつ前後に傾いたフロントバンクBfと、リヤバンクBrとがV型に構成され、互いのバンク角が90度よりも小さい狭角V型エンジンである。
【0013】
フロントバンクBfの排気口には、図1に示すように、左右一対の排気パイプ119の一端が接続され、排気口から下側に延びた後に、車体後方に向かって引き回され、リヤバンクBrの排気口から延びる左右一対の排気パイプ120に接続されて集合され、一本の排気管(不図示)を介して、エンジンEの後方に設けられたマフラー(不図示)に連結されている。
【0014】
パワーユニットPの後方には、ピボット軸121が設けられ、このピボット軸121には、スイングアーム122がピボット軸121を中心に上下方向に揺動自在に取り付けられている。スイングアーム122の後端部には、後輪131が回転自在に支持されている。後輪131とパワーユニットPとは、上述したように、スイングアーム122内に設けられたドライブシャフト123によって連結されている。
また、スイングアーム122と車体フレーム111との間には、リヤクッション124が掛け渡されている。
【0015】
メインフレーム114の上部には、パワーユニットPの上方を覆うようにして燃料タンク141が搭載されている。この燃料タンク141の後方には、乗員用のシート142が位置し、該シート142は上記リヤフレームに支持されている。シート142は、運転者用の前部シート142Aと、同乗者(パッセンジャー)が着座する後部シート142Bとが設けられている。ピボットプレート115には後方に延びるブラケット125が設けられ、ブラケット125には、後部シート142Bに着座した同乗者が足を載せる折り畳み式のピリオンステップ126が設けられている。後部シート142Bには、後部シート142Bへの同乗者の着座を検出する着座センサ142C(パッセンジャー検出手段)が設けられている。
【0016】
シート142の後方には、テールランプ143が配置されており、テールランプ143の下方には、後輪131の上方を覆うリヤフェンダ144が配置されている。自動二輪車100は、車体を覆う樹脂製の車体カバー150を有し、該車体カバー150は、車体フレーム111の前方からパワーユニットPの前部までを連続的に覆うフロントカバー151と、シート142の下方を覆うリヤカバー152とを備え、フロントカバー151の上部には、左右一対のミラー153が取り付けられている。フロントフォーク116には、前輪117の上方を覆うフロントフェンダ146が取り付けられている。
【0017】
図2は、エンジンEの自動変速機構及びその周辺装置のシステム構成図である。
エンジンEは、運転者の変速操作に応じてクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッション(以下、AMTと呼ぶ)を備え、このAMT10(変速機構)では、クラッチ11の切替え及び変速段の切替えが自動で行われる。
また、エンジンEは、スロットル・バイ・ワイヤ(TBW)形式のスロットルボディ12を有し、このスロットルボディ12には、スロットルボディ12のスロットルの開閉用のモーター12Aが備えられている。
【0018】
AMT10は、前進6段の変速機Tと、クランクシャフト2と変速機Tとの間の接続を切り替えるクラッチ11と、クラッチ11を油圧で駆動するクラッチ用油圧装置18と、回転することで変速機Tを変速するシフトドラム13と、シフトドラム13を回転させるシフト制御モーター14と、クラッチ用油圧装置18及びシフト制御モーター14を含むAMT10の各部を制御するAMT制御ユニット15とを有している。AMT制御ユニット15は、自動二輪車100を制御するECU(不図示)の一部として設けられる。
【0019】
変速機Tを構成する複数のギヤ列19は、クランクシャフト2と平行に延びる主軸20、カウンタ軸21及び出力軸22にそれぞれ結合または遊嵌されている。詳細には、ギヤ列19は、各変速段に対応する駆動ギヤm1〜m6と従動ギヤn1〜n6とが常に噛み合った常時噛み合い式である。駆動ギヤm1〜m6及び従動ギヤn1〜n6の内の一部のギヤは、軸方向に移動可能なスライドギヤとなっており、スライドギヤを移動させることで、主軸20及びカウンタ軸21間で1速〜6速の何れかの変速ギヤ対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
各スライドギヤの一端には、シフトドラム13へ接続されるシフトフォーク23が接続される。各シフトフォーク23の他端はシフトドラム13に形成された複数のガイド溝にそれぞれ係合される。
クラッチ11は主軸20に設けられている。
【0020】
クランクシャフト2には、プライマリ駆動ギヤ24が結合されており、プライマリ駆動ギヤ24は、主軸20のプライマリ従動ギヤ25に噛み合わされている。プライマリ従動ギヤ25は、クラッチ11を介して主軸20に連結される。
カウンタ軸21に結合されたカウンタ軸出力ギヤ26は、出力軸22の出力側従動ギヤ27に噛み合わされており、出力軸22の出力ギヤ28にはドライブシャフト123が連結されている。出力軸22には、出力軸22に作用するトルク変動の一部を吸収するトルクダンパ(不図示)が設けられる。
【0021】
変速機T内には、プライマリ従動ギヤ25の外周に対向配置されるエンジン回転数センサ29(回転数検出手段)と、シフトドラム13の回転位置に基づいて現在の変速段を検出するギヤポジションセンサ30(変速段検出手段)とが設けられている。上記スロットルグリップにはスロットルグリップの開度を検出するスロットル開度センサ(不図示)が接続され、スロットルボディ12には、スロットルボディ12の開度信号を出力するスロットルセンサ31が設けられている。上記スロットル開度センサで検出されたスロットルグリップの開度は、AMT制御ユニット15で処理され、AMT制御ユニット15は、スロットルグリップの開度に基づいてモーター12Aを駆動し、スロットルボディ12の開度を調整することでエンジン回転数を制御する。また、自動二輪車100には、自動二輪車100の車速を検出する車速センサ(不図示)が設けられている。
【0022】
クラッチ用油圧装置18は、オイルタンク32と、オイルタンク32とクラッチ11とを繋ぐ管路33とを備え、管路33上には、オイルをクラッチ11に送るポンプ34、及び、クラッチ11へのオイルの供給を切り替えるバルブ35が設けられている。ポンプ34の下流側には、管路33の油圧の上限を規定するレギュレータ36が設けられ、レギュレータ36を流れるオイルは戻り管路33Aを通ってオイルタンク32に戻る。また、バルブ35にもオイルの戻り管路33Bが設けられている。
【0023】
AMT制御ユニット15の指示によってバルブ35が開かれると、クラッチ11に油圧が供給され、プライマリ従動ギヤ25がクラッチ11を介して主軸20に結合され、クランクシャフト2の回転が主軸20に伝達されるようになる。また、バルブ35が閉じられると、クラッチ11に油圧が供給されなくなり、クラッチ11は、クラッチ11に内蔵されている戻りばね(不図示)によって、クラッチ11と主軸20との結合が切断される方向に移動させられる。また、クラッチ11では、クラッチ11に供給する油圧を調整することで半クラッチ状態を作り出すことができる。クラッチ11は湿式の多板クラッチである。
【0024】
シフト制御モーター14は、AMT制御ユニット15の指示によってシフトドラム13を回転させる。シフトドラム13が回転すると、シフトドラム13の外周に形成されたガイド溝の形状に従ってシフトフォーク23がシフトドラム13の軸方向に変位することで、主軸20及びカウンタ軸21のスライドギヤの噛み合い状態が変化し、変速機Tがシフトアップまたはシフトダウンされる。
【0025】
AMT制御ユニット15には、自動変速(AT)モードと手動変速(MT)モードとの切り替えを行うモードスイッチ40と、シフトアップ(UP)またはシフトダウン(DN)を指示するシフトセレクトスイッチ41とが接続されている。AMT10は、AMT制御ユニット15の制御により、上記各センサやモードスイッチ40及びシフトセレクトスイッチ41の出力信号に応じてバルブ35及びシフト制御モーター14を制御し、変速機Tの変速段を自動的または半自動的に切り換えることができるように構成されている。
【0026】
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてバルブ35及びシフト制御モーター14の制御が行われ、変速機Tが自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチ41が運転者によって操作されることで変速が行われ、シフトセレクトスイッチ41が操作されると、AMT制御ユニット15は、まず、バルブ35を切り替えてクラッチ11を切断状態にし、次いで、シフト制御モーター14を駆動して変速を行い、その後、バルブ35を駆動してクラッチ11を接続状態にする。
【0027】
図3は、AMT制御ユニット15の構成を示すブロック図である。
AMT10は、エンジン回転数センサ29及びギヤポジションセンサ30の出力に基づいて、選択されている変速段に応じてシフトショックを低減できるように、変速時にAMT制御ユニット15によってエンジンEの回転数制御を行うシフトショック低減構造を備えている。
AMT制御ユニット15は、上記スロットルグリップの開度に応じてスロットルボディ12の目標開度を演算する基本目標スロットル開度演算部50と、エンジン回転数等の車両の状態に基づいてスロットルボディ12の開度の補正量を演算するスロットル開度補正演算部51と、基本目標スロットル開度演算部50で演算された基本開度にスロットル開度補正演算部51で演算された補正値を加味してスロットルボディ12の目標開度を決定する目標スロットル開度決定部52と、目標スロットル開度決定部52で決定された目標スロットル開度に基づいて駆動信号を送り、スロットルボディ12のモーター12Aを駆動するスロットル開度制御部53とを備えている。
【0028】
基本目標スロットル開度演算部50には、上記スロットルグリップの開度に対応したスロットルボディ12の基本の開度マップが格納されている。
スロットル開度補正演算部51は、スロットル開度センサ、エンジン回転数センサ29、車速センサ、ギヤポジションセンサ30、及び、着座センサ142Cに接続されており、スロットルグリップの開度、車速、変速段に加えて、後部シート142Bに同乗者が着座しているか否かの情報に基づいてスロットル開度の補正値を演算する。
スロットル開度制御部53には、スロットルボディ12の実際の開度がモーター12Aからフィードバックされる。
【0029】
図4は、変速時のスロットルグリップ開度、エンジン回転数、クラッチの接続状態、及び、シフトショックを示す図である。ここで、図4では変速機Tを3速から2速にシフトダウンする際の状態を例に挙げて説明するが、他の変速段でシフトダウンを行う場合についても以下の説明と同様に行われる。また、図4では、一人乗り状態に対応するグラフを破線で示し、二人乗り状態に対応するグラフを実線で示している。
変速機Tでは、3速よりも2速の方が減速比が大きいため、エンジン回転数を示すグラフに示すように、同一速度で走行する場合、3速と2速のエンジン回転数には回転数差Ndが生じ、2速で走行する場合には、3速で走行する場合よりも高いエンジン回転数が要求される。
【0030】
手動変速モードで走行中に3速から2速にシフトダウンする場合、運転者は3速での走行時にスロットルグリップの開度を小さく変更するとともに、シフトセレクトスイッチ41を操作してAMT制御ユニット15に対してシフトダウンの指示を行う。図4に示すように、運転者は、3速では略一定の開度でスロットルグリップを操作し、2速への移行中、及び2速への変更後にも略一定の開度を保っている。
【0031】
2速へのシフトダウンの指示を受けると、AMT制御ユニット15は、スロットル開度補正演算部51にスロットル開度補正要求を出すとともに、着座センサ142Cの検出値に基づいて、自動二輪車100が二人乗り状態であるのか否かを判別する。
自動二輪車100が二人乗り状態でなく一人乗り状態であると判別された場合、スロットルグリップの開度に基づいて、基本目標スロットル開度演算部50によってスロットルボディ12の基本目標開度が設定されるとともに、スロットルボディ12の開度の補正値が、スロットル開度補正演算部51によって、エンジン回転数、車速、及び変速段数に基づいて設定され、目標スロットル開度決定部52は、これら基本目標開度及び補正値に基づいて、一人乗り状態のシフトダウンに対応したスロットルボディ12の目標スロットル開度P1を決定する。目標スロットル開度P1は、スロットル開度補正演算部51の補正値に基づいて開度が増やされており、運転者の操作によるスロットルグリップの開度よりも大きな開度となっている。また、目標スロットル開度P1は、時期t1から時期t1より後の時期t2までの間に連続して一定の大きさで設定される。
【0032】
AMT制御ユニット15は、目標スロットル開度P1の制御が開始される時期t1に、クラッチ用油圧装置18のバルブ35の切替えを開始してクラッチ11を切断状態とし、次いで、シフト制御モーター14を駆動してシフトドラム13を回転させて変速機Tを3速から2速にシフトダウンし、時期t2より後の時期t3でスロットルボディ12の開度の増量を終了させるとともにクラッチ11の接続を開始し、時期t3でクラッチ11の接続を完了する。
このように、3速からのシフトダウンに伴ってAMT制御ユニット15がスロットルボディ12の開度を補正して増量し、2速に対応するようにエンジン回転数を増加させた後にクラッチ11を接続するため、回転数差Ndによるシフトショックを低減できる。一人乗り状態では、回転数差Ndの略半分を埋める分だけエンジン回転数が上昇され、その後にクラッチ11を接続することでエンジン回転数が増加され、このクラッチ11の接続時に多少のシフトショックが発生する。
【0033】
自動二輪車100が二人乗り状態であると判別された場合、スロットルグリップの開度に基づいて、基本目標スロットル開度演算部50によってスロットルボディ12の基本目標開度が設定されるとともに、スロットルボディ12の開度の補正値が、スロットル開度補正演算部51によって、エンジン回転数、車速、及び変速段数に基づいて設定され、目標スロットル開度決定部52は、これら基本目標開度及び補正値に基づいて、二人乗り状態のシフトダウンに対応したスロットルボディ12の目標スロットル開度P2を決定する。目標スロットル開度P2は、スロットル開度補正演算部51の補正値に基づいて開度が増やされており、一人乗り状態の目標スロットル開度P1よりも大きな開度となっている。また、目標スロットル開度P2は、時期t1から時期t3よりも後の時期t4までの間に連続して一定の大きさで設定される。
【0034】
AMT制御ユニット15は、目標スロットル開度P2の制御が開始される時期t1に、クラッチ用油圧装置18のバルブ35の切替えを開始してクラッチ11を切断状態とし、次いで、シフト制御モーター14を駆動してシフトドラム13を回転させて変速機Tを3速から2速にシフトダウンし、時期t4でスロットルボディ12の開度の増量を終了させ、時期t4の僅か後の時期t5でクラッチ11の接続を開始し、時期t5より後の時期t6でクラッチ11の接続を完了する。
このように、二人乗り状態では、3速からのシフトダウンに伴ってAMT制御ユニット15がスロットルボディ12の開度を補正して一人乗り状態の目標スロットル開度P1よりも大きな目標スロットル開度P2に増量し、2速に対応するようにエンジン回転数を増加させた後にクラッチ11を接続するため、回転数差Ndによるシフトショックを低減できる。二人乗り状態では、回転数差Ndの略全部を埋める分だけエンジン回転数が上昇され、その後にクラッチ11を接続するため、クラッチ11の接続時にシフトショックがほとんど発生しなくなる。
また、二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ11の接続を行い、エンジン回転数を調整する時間を長く確保し、回転数差Ndの略全部を埋める所定回転数でのクラッチ接続とするため、シフトショックを低減できる。
また、一人乗りを検出した場合、二人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも早いタイミングでクラッチ11の接続を行うため、多少のシフトショックは発生するが、速やかに変速することができる。
【0035】
また、自動変速モードにおいても手動変速モードと同様であり、AMT制御ユニット15は、車速等に基づいてシフトダウンすることを判断した場合、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味し、シフトダウンの際に乗車人数に適したスロットルボディ12の開度、及び、クラッチ11の接続タイミングを選択する。
【0036】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、AMT10は、運転者の変速操作に応じてクラッチ11の操作が自動化されたマニュアルトランスミッションであり、変速段の変更後に各変速段に応じた回転数制御を行い、クラッチ11を自動で接続し、且つ、二人乗りを検出する着座センサ142Cを備えており、目標スロットル開度を決定する際におけるスロットル開度補正演算部51のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味し、変速の際に乗車人数に適した開度にスロットルボディ12の開度を調整できるため、車体環境の変化に応じてシフトショックを低減できる。
また、二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ11の接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ11の接続を行い、所定回転数でのクラッチ接続とするため、二人乗りに適したエンジン回転数でクラッチ11を接続でき、シフトショックを低減できる。
【0037】
また、スロットルボディ12の目標スロットル開度は、シフトダウンに伴うクラッチ11の切断から接続までの間に設定され、二人乗りを検出した場合、一人乗りを検出した場合の目標スロットル開度P1よりも大きな目標スロットル開度P2に設定するため、二人乗りでシフトダウンした後に適正なエンジン回転数でクラッチ11を接続でき、シフトショックを低減できる。
さらに、二人乗りを検出した場合、一人乗りを検出した場合よりも目標スロットル開度P2を維持する時間を長く確保し、エンジン回転数を適正な回転数に調節することができるため、シフトショックを低減できる。
また、パッセンジャー検出手段は、後部シート142Bに設けた着座センサ142Cであるため、簡単な構成で二人乗りの状態を検出してシフトショックを低減できる。
【0038】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、パッセンジャー検出手段は、後部シート142Bに設けた着座センサ142Cであるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、パッセンジャー検出手段は、ピリオンステップ126が開かれたことを検出するセンサや、リヤクッション124の沈み込み量に基づいて二人乗りを検出するセンサであっても良い。
また、上記実施の形態では、クラッチ11は、時期t2及び時期t5で接続が開始されるものとして説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、クラッチ11は、エンジン回転数に基づいて接続されても良く、スロットルボディ12の開度の増量後に、シフトショックを低減させることができるエンジン回転数に達したことを検出し、この検出結果に基づいてクラッチ11の接続を開始しても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 AMT(変速機構)
11 クラッチ
15 AMT制御ユニット
29 エンジン回転数センサ(回転数検出手段)
30 ギヤポジションセンサ(変速段検出手段)
100 自動二輪車(車両)
142 シート
142C 着座センサ(パッセンジャー検出手段)
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機構(10)を備えるエンジン(E)と、変速段を検知する変速段検出手段(30)と、エンジン(E)の回転数を検出する回転数検出手段(29)とを備え、各変速段に応じてシフトショックを低減できるよう変速時にエンジン(E)の回転数制御を行うシフトショック低減構造を備える車両において、
前記変速機構(10)は、運転者の変速操作に応じてクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッションであり、前記変速段の変更後に各変速段に応じた回転数制御を行い、クラッチ(11)を自動で接続し、且つ、二人乗りを検出するパッセンジャー検出手段(142C)を備えており、目標スロットル開度を決定する際のスロットル開度補正演算に乗車人数を加味することを特徴とするシフトショック低減構造を備える車両。
【請求項2】
二人乗りを検出した場合、一人乗りの際のクラッチ接続タイミングよりも遅いタイミングでクラッチ接続を行い、所定回転数でのクラッチ接続とすることを特徴とする請求項1記載のシフトショック低減構造を備える車両。
【請求項3】
前記目標スロットル開度は、シフトダウンに伴うクラッチ(11)の切断から接続までの間に設定され、二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも目標スロットル開度を大きく設定することを特徴とする請求項1または2記載のシフトショック低減構造を備える車両。
【請求項4】
二人乗りを検出した場合、一人乗りの場合よりも前記目標スロットル開度を維持する時間を長くすることを特徴とする請求項3記載のシフトショック低減構造を備える車両。
【請求項5】
パッセンジャー検出手段は、シート(142)に設けた着座センサ(142C)であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシフトショック低減構造を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237346(P2012−237346A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105572(P2011−105572)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】