説明

シリコン基板の加工方法及び液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】ドライエッチングを用いてシリコン基板における凹部の底部に垂直な開口を設けることができるシリコン基板の加工方法を提供する。
【解決手段】第1の開口4の底部に、パターン開口10を有するパターニングマスク14’を用いて、プラズマを用いた反応性イオンエッチングにより第2の開口5を形成するシリコン基板の加工方法であって、前記プラズマに対する前記第1の開口内の露出を妨げる遮蔽構造11’を前記シリコン基板内又は上に形成した状態で前記反応性イオンエッチングを行うシリコン基板の加工方法である。これにより、第2の開口の傾きの原因である、プラズマモールディング効果と呼ばれるシースの歪みを緩和することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の加工方法に関する。より好ましくは、液体吐出ヘッドを製造するために用いるシリコン基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体デバイスの微細加工技術を応用して、液体吐出ヘッド用のシリコン基板の加工が行われている。また、近年の液体吐出記録装置においては、高解像度、高速印字といった印字性能の向上が求められている。そのため、吐出液滴のより正確な着弾と高速な液体のリフィルを実現することが求められている。
【0003】
液体吐出プリント方式に用いられる一般的な液体吐出ヘッドは、特許文献1に記載されるように、シリコン基板上に、液滴を吐出するための微細な吐出口と、該吐出口に連通する液体流路と、該液体流路の一部に設けられる吐出エネルギー発生部と、を備える。また、シリコン基板には液体流路と連通する共通液室が形成されている。
【0004】
これに対して、特許文献2に記載されるような液体吐出ヘッドが開発されている。この特許文献2に記載される液体吐出ヘッドにおいては、一つの吐出口に連通する液体流路が該吐出口に対して対称に配置されている。このような構成とすることにより、発生した気泡が左右の液体流路で均等に成長するため、吐出口から飛翔する液滴の方向を安定的に垂直とすることができ、正確に着弾させることができる。
【0005】
上述のような液体吐出ヘッド、つまり一つの共通液室から複数の供給口が形成されたシリコン基板の形成方法として、特許文献3に記載されるように、シリコン基板に対して2段階エッチング処理を行う方法が挙げられる。特許文献3に記載の方法では、まず、結晶異方性エッチングにより第1のエッチングを行って凹部を形成して共通液室を形成する。次に、ドライエッチングにより凹部の底面に対して第2のエッチングを行うことにより、複数の供給口を形成する。このようにして、凹部からなる共通液室に連通する複数の供給口を有するシリコン基板が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−146979号公報
【特許文献2】特開2009−137155号公報
【特許文献3】米国特許6534247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体吐出ヘッドに用いる供給口の形成方法の一つとして、ドライエッチングが挙げられ、特にボッシュプロセスを用いたドライエッチングが望ましい。ボッシュプロセスを用いたドライエッチングは、デポ膜の形成工程、イオンによる側面以外のデポ膜の除去工程、ラジカルによるエッチング工程、を繰り返し行うことでシリコン基板を垂直形状にエッチングする技術である。しかし、凹部の底面をドライエッチングして供給口を形成する際、凹部の側壁近傍の供給口が、凹部の側壁方向に向かって傾斜してエッチングされるという現象が生じる。これは、プラズマモールディング効果と呼ばれている現象に起因する。通常、プラズマを用いてエッチングを行う場合、基板表面を等電位面として、プラズマシース(あるいは単にシース)と呼ばれる領域が形成される。このシースにはプラズマを基準として負の電位差が生じるため、シースを介してプラズマ中から基板に向かってイオンが加速される。従って、イオンはシースの等電位面に対して垂直に、即ち基板に向かって垂直に加速される。しかし、基板表面に大きな凹部が存在する場合、図8(a)に示すようにシース801は基板802の凹凸に沿って形成される。正イオンは、シースの等電位面に対して垂直に加速されるため、イオンの飛跡は凹部の側壁に向かって曲げられることになる。この現象を、供給口エッチングに適用して考える。「側壁以外のデポ物除去」は前記シースによって加速されたイオンによって行われる。従って、凹部の側壁の近傍ではデポ膜を除去するイオンが影響を受け、所望の位置よりずれた位置のデポ膜が除去されてしまう。このように、凹部を有する基板底面ではデポ膜の除去位置が連続的にずれてしまうため、ラジカルによるエッチングも連続的にずれて形成することになる。その結果、数度の角度を持ってエッチングが進行してしまうという課題があった。このような課題はボッシュプロセスを用いた場合に限定されず、一般的な反応性イオンエッチング(RIE)のドライエッチングによる場合に共通して存在する。
【0008】
また、数度の角度をもってエッチング進行すると、得られる供給口のエッチング開始部の開口と終了部の開口とが水平方向で位置がずれてしまい、シリコン基板の表面において、供給口の開口(エッチング終了部の開口)の位置ずれが発生してしまう。その結果、近傍の配線部がダメージを受ける場合がある。また、供給口が斜めに形成されるため、他の供給口よりも長い供給口が形成されてしまい、供給性能のバラツキが生じる場合がある。さらには、未貫通の供給口が形成されてしまう場合もある。
【0009】
そこで、本発明は、ドライエッチングを用いてシリコン基板における凹部の底部から該凹部が形成されている面と相対する面に向かって垂直な開口を設けることができるシリコン基板の加工方法を提供することを目的とする。より好ましくは、ドライエッチングを用いて、シリコン基板の凹部からなる共通液室の底部を垂直にエッチングし、高い開口位置精度で複数の供給口を形成することができるシリコン基板の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、第1の開口の底部に、パターン開口を有するパターニングマスクを用いて、プラズマを用いた反応性イオンエッチングにより第2の開口を形成するシリコン基板の加工方法であって、前記プラズマに対する前記第1の開口内の露出を妨げる遮蔽構造を前記シリコン基板内又は上に形成した状態で前記反応性イオンエッチングを行うことを特徴とするシリコン基板の加工方法である。
【0011】
また、本発明は、前記第1の開口としての共通液室の底面に前記第2の開口としての供給口を、上述のシリコン基板の加工方法を用いて形成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシリコン基板の加工方法によって、第1の開口に形成する第2の開口をより垂直に形成できる。したがって、第2の開口の開口位置精度を向上でき、高い信頼性を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1により作製される液体吐出ヘッドの構造を説明するための概略模式図である。
【図2】ドライエッチングを用いて第2の凹部を形成する際の従来の課題について説明するための概略模式図である。
【図3】実施形態1の加工方法について説明するための工程図である。
【図4】遮蔽物の好ましい配置位置について説明するための模式図である。
【図5】実施形態2により作製される液体吐出ヘッドの構造を説明するための概略模式図である。
【図6】実施形態2の加工方法について説明するための工程図である。
【図7】実施形態2における第1の凹部のヒサシ形状部分の好ましい位置範囲を説明するための模式図である。
【図8】プラズマモールディング効果を説明するための模式図である。
【図9】遮蔽物が存在する場合のプラズマモールディング効果を説明するための模式図である。
【図10】遮蔽物が存在する場合のプラズマモールディング効果を説明するための模式図である。
【図11】実施形態3の加工方法について説明するための工程図である。
【図12】実施形態3の加工方法について説明するための工程図である。
【図13】実施形態3の加工方法について説明するための工程図である。
【図14】実施例5の加工方法について説明するための工程図である。
【図15】実施形態4の加工方法について説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
シースが発生するメカニズムは、電子とイオンの移動度の差による。チャンバー壁や基板等、プラズマ内に境界領域が存在する場合、質量の小さい電子が先に到達して、プラズマに対して負の電位を形成される。それを遮蔽するように正電荷の多い領域が形成されバランスが保たれる。これがシースであり、境界面を等電位面として、それに平行となるように形成される。さらに、基板にバイアスパワーを印加すると、基板の負の電位は助長され、イオンを引きこむエネルギーも増加する。これを利用したものが反応性イオンエッチングである。
【0015】
ボッシュプロセスは、上記反応性イオンエッチングの一形態である。図2(a)〜(c)に示すように、(1)CF系のデポ膜15の形成、(2)イオンによるデポ膜15の除去、(3)主にF系ラジカルによるエッチング、を連続的に繰り返すことで垂直方向へのエッチングが行われる。
【0016】
この際、(2)では、プラズマ中の+イオンがシースによって基板表面に加速されることにより、デポ膜のエッチングが進む。
【0017】
ここで、図2(d)に示すような底面との角度が鈍角となる側面を有する凹部の底面をエッチングする場合、前述のプラズマモールディング効果により、凹部の形状に沿うようにシースが形成されてしまう。これは、シースというものが、基板表面を等電位面として、そこから一定の距離にある位置を積分して求められる等電位面を形成するからである。これにより、+イオンが基板に対して数度の角度を持って加速されることになる。その結果、側壁のデポ膜15の一部がエッチングされてしまい、(3)のエッチング時に横方向にずれてエッチングが進んでしまう場合がある。これが連続的に繰り返されることで結果的にエッチング方向は数度の角度を持って形成されることとなる(図2(d)〜(f))。
【0018】
共通液室の底面に供給口を形成する場合を例に挙げてより具体的に説明すると、シースは共通液室の形状に沿って形成される。そして、共通液室の側面近傍に形成しようとする供給口では、共通液室の側面に形成されたシースにイオンが影響を受け、基板に対して垂直ではなく、側面の方向に数度の角度を持ってエッチングが進行してしまう場合があった。
【0019】
プラズマモールディング効果は、シースの長さと凹部の開口の寸法との相対関係によって変化し、影響が現れ始めるのはシースの長さ/凹部の開口寸法≦10程度であるという研究結果がある(D.Kim et.al.,IEEE Trans.Plasma Sci.31,691(2003))。即ち、シースの長さが同じであれば、例えば、図8(a)と(b)に比較するように、凹部の開口寸法が小さいほどプラズマモールディング効果による影響が低いと言える。
【0020】
また、同じ開口寸法であれば、側面の傾斜角が開口の内側に向かうほど、プラズマモールディング効果が顕著になる。これは、図8(a)と(c)の比較に示すように、開口の側面と底面とのなす角が鈍角になるほど、シース801が基板802の開口の形状に沿い易くなるからである。この場合は、例えば傾斜した側壁の少なくとも一部を遮蔽することで、プラズマモールディング効果の影響を低減することができる。
【0021】
そこで、本発明では、共通液室がプラズマに対して露出される面積を減少させることにより、プラズマモールディング効果を抑制し、シースの歪みを緩和した状態で第1の凹部の底面に第2の凹部を反応性イオンエッチングにより形成する。これにより、供給口等の第2の凹部を側面付近でもシリコン基板の面方向に対して垂直に形成することができる。前記の傾斜された側面を遮蔽するというのも、共通液室がプラズマに対して露出される面積を減少させるという概念に含むものとする。
【0022】
そこで、本発明は、第1の開口の底部に、パターン開口を有するパターニングマスクを用いて、プラズマを用いた反応性イオンエッチングにより第2の開口を形成するシリコン基板の加工方法である。そして、本発明では、前記反応イオンエッチングを、プラズマに対する前記第1の開口内の露出を妨げる遮蔽構造を前記シリコン基板内又は上に形成した状態で行う。また、前記遮蔽構造は、前記プラズマに対する前記パターン開口の露出を妨げない構造である。
【0023】
なお、上記ではボッシュプロセスを用いたドライエッチングを例に挙げて説明したが、本発明はボッシュプロセスに限定されるものではない。
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態の一つとして、共通液室の斜面が傾斜している構成において、傾斜側面の少なくとも一部を覆うようにシリコン基板に遮蔽物を形成する方法が挙げられる。つまり、共通液室の傾斜側面に沿ったシースが形成されることを阻害する遮蔽物を基板に形成することで、ドライエッチングを用いて、共通液室(第1の凹部)の底面に垂直に供給口(第2の凹部)を形成できることができる。この方法では、基板に遮蔽物を形成するため、高い位置精度で開口部を確保できるため、遮蔽する部分をより制御し易い。また、基板と遮蔽物の間の隙間が少ないため、遮蔽効果が高い。
【0025】
より具体的に説明すると、上記(2)のプロセス中で共通液室の傾斜側面の少なくとも一部を覆うように遮蔽物が形成されていると、この遮蔽物が基板と等電位面となる。プラズマの条件によるが、一般的にシースの長さは数百μmから数mmの間で形成される。共通液室の深さは例えば0.2mm〜0.9mmであり、遮蔽物の長さもこれより少し短い程度である。よって、共通液室の深さ、及び遮蔽物の長さとシースの長さは同程度の大きさであるため、図9(a)に示すように遮蔽物901の直下に入り込むようにシースが形成されることは難しい。即ち、図9に(b)示すように、遮蔽物の位置を間口とした垂直な凹部があるのとほぼ同じシースの状態を形成する。これにより、シースの歪みが緩和され、イオンが凹部の側面方向に引き寄せられず、供給口エッチングの際、側壁の堆積膜の一部をエッチングする割合が低くなる。したがって、上記(3)のプロセスで横方向にずれてエッチングが進まなくなり、共通液室の底面に垂直に供給口を形成することが可能となる。なお、本発明では傾斜側面の少なくとも一部を遮蔽することができれば効果を有することになる。
【0026】
シリコン基板は、第1の面と該第1の面と反対側の第2の面とを有し、該第2の面に共通液室などの第1の凹部が形成されている。第2の面に第1の凹部を形成する方法としては、結晶異方性エッチングを用いることが好ましい。
【0027】
第1の凹部は傾斜を有する側面を有し、該側面と底面との角度は鈍角(90°<θ<180°)である。
【0028】
ドライエッチングは、シリコン基板にバイアスを印加するための高周波を発生させながら行い、例えばECRやICP等をプラズマ源とした一般的なRIEのドライエッチングを用いることが可能である。
【0029】
ドライエッチングは、シリコン基板に形成した遮蔽物と、第1の凹部の底面に形成されたパターン開口を有するパターニングマスクと、を用いて行う。例えば、パターン開口は供給口を形成する位置に設けることができる。
【0030】
遮蔽物は、例えば、第1の凹部の開口面に延展するように第2の面上に形成されたレジストマスクにより構成されることができる。
【0031】
また、遮蔽物は、第1の凹部への第2の面に垂直な光の照射により形成される陰影が凹部側面の少なくとも一部を覆いかつ前記パターン開口には形成されないようにシリコン基板に形成される。
【0032】
本実施形態において、遮蔽物は、前記陰影が凹部側面の少なくとも一部を覆うように形成されていれば効果を奏すが、前記陰影が凹部側面の全てを覆うように形成されていることが好ましい。
【0033】
遮蔽物は、例えば、フィルム状の感光性レジストを第2の面に貼り付けた後に、フォトリソグラフィ法によってパターニングして形成されることができる。また、遮蔽物は、パターニングして遮蔽物の形状を作製した構造物を第2の面に貼り合わせることにより形成されることができる。
【0034】
また、遮蔽物の形状は、ヒサシ状や突起形状や崖形状のものが有効であるが、プラズマモールディング効果を抑制し得るものであれば、これらの形状に限られるものではない。例えば、第1の凹部を橋渡し状に横切る形状も遮蔽物のゆがみを防止する上で効果的な形状である。また、共通液室がプラズマに露出される面積を極力減少させるという視点に拡張すれば、例えば図10に示すように、供給口を形成する部分を含んだ最小限の領域のみを開口し、その他の領域には全て遮蔽物1001が残っていても構わない。これにより、共通液室上のシースは、基板とほぼ平行となるため、イオンは基板に垂直に加速される。傾斜した側面の少なくとも一部を遮蔽する状態から、供給口上の遮蔽物のみを開口した状態の間の状態は、全て本実施形態の用例に含まれる。
【0035】
遮蔽物を形成する方法としては、例えば、共通液室等の第1の凹部の底面におけるエッチング部を遮蔽しないように開口が形成されたフィルム状の樹脂を貼りあわせる方法が挙げられる。また、例えば、フィルム状の樹脂を貼りあわせた後にエッチング等の方法により開口を形成する方法も挙げられる。しかし、凹部側面を遮蔽する形状を形成することが可能な製法であれば、これらの方法に限られるものではない。
【0036】
遮蔽物の材料は、特に限定されるものではないが、レジストを用いることができ、感光性レジストを用いることが好ましい。
【0037】
以下、遮蔽物の形成方法について具体例を説明する。
【0038】
共通液室の底面にレジストパターンを形成した後に遮蔽物を形成する際には、パターン形成や基板への貼り合わせの容易さからドライフィルムレジストに代表される有機膜で遮蔽物を形成することが好ましい。市販のドライフィルムレジストとしては、例えば、東京応化工業社製ORDIL(商品名)、デュポンMRCドライフィルム社製MPFシリーズ、旭化成エレクトロニクス社製サンフォート(商品名)、化薬マイクロケム社製SU−8(商品名)などを挙げることができる。
【0039】
ドライフィルムレジストで形成する場合、まず、共通液室が形成されたシリコン基板の裏面(第2の面)にドライフィルムレジストをテンティングラミネートする。そして、露光及び現像することにより、共通液室の側面を遮蔽しかつパターニングマスクのパターン開口を遮蔽しないように遮蔽物を形成する。露光には、プロキシミティー露光およびプロジェクション露光を用いることができる。また、遮蔽物は、予め共通液室の側面を遮蔽し、パターニングマスクのパターン開口を遮蔽しないように形成したフィルムを基板に貼り合わせる方法により形成することもできる。
【0040】
また、遮蔽物の第1の凹部への張り出しが小さくなって共通液室の傾斜側面にシースが形成されるほど、イオンが傾斜側面に形成されたシースの影響を受けるようになり、供給口が傾いて形成されるようになる。ここで、第1の凹部を形成するために掘り込んだ基板の厚さをt、開口面と傾斜側面の角度をθとすると、結晶異方性エッチングを用いて形成した共通液室の底面に遮蔽物を用いないで供給口を形成した場合、共通液室の側面から最も近い、底面端部から0.15tの所に位置する供給口の傾きは2°であった。また、遮蔽物が共通液室の側面を全て覆い、供給口を形成した場合、共通液室の側面から最も近い供給口の傾きは0°であった。遮蔽物が共通液室の側面を遮蔽する範囲と共通液室の側面近傍に位置する供給口の傾きの関係より、底面端部から0.15t以上の距離にある供給口が90°±0.5°の垂直に形成されるには、共通液室の開口面端部から3/4・t/tanθ〜t/tanθの範囲に遮蔽物の少なくとも一端が入っていれば垂直に形成される(図4)。さらに、供給口のパターンは共通液室の中央寄りに形成されることが好ましい。つまり、結晶異方性エッチングにより開口面が矩形状に形成された共通液室(第1の凹部)において、下記の式を満たすような遮蔽物をシリコン基板に形成することが好ましい。すなわち、シリコン基板の面方向に垂直であって共通液室(第1の凹部)の一辺に平行な面による断面のいずれにおいて、遮蔽物は、前記第2の面の前記開口面の端部から面方向に下記式で表されるAの範囲に亘って形成されていることが好ましい。
【0041】
3t/4tanθ ≦ A ≦ t/tanθ ・・・(1)
(A:前記開口面の端部から前記遮蔽物の端部までの距離、t:前記第1の凹部の深さ、θ:前記開口面と前記側面との角度(0°<θ<90°))。
【0042】
以下、本実施形態を用いて製造される液体吐出ヘッドの構成について説明する。
【0043】
図1は、本発明に係るシリコン基板の加工方法を用いて製造することができるヘッド用基板を備える液体吐出ヘッドの構成を示す概略図である。図1(a)は、上方から見た模式図である。図1(b)は図1(a)のA−A’における概略断面図である。図1(c)は図1(a)のB−B’における概略断面図である。
【0044】
図1において、液体吐出ヘッドは、シリコン基板から構成されるヘッド用基板1と、流路形成部材7と、を少なくとも含んで構成される。
【0045】
流路形成部材7は、液体を吐出する吐出口2と、吐出口2と連通する液体流路3と、を構成する。流路形成部材7の上面には吐出性能を向上するために撥液層8が形成されている。
【0046】
ヘッド用基板1は、液体流路3に液体を供給するための第2の凹部としての供給口5と、供給口5に連通する第1の凹部としての共通液室4と、を構成する。第2の凹部としての供給口5は、第1の凹部としての共通液室4の底面に複数形成されている。また、第1の凹部としての共通液室4は、流路形成部材7が配置される面(第1の面)と反対側の面(第2の面)に形成されている。第2の凹部としての供給口5は第1の凹部としての共通液室4の底面にヘッド用基板1を貫通して形成されている。
【0047】
ヘッド用基板1と流路形成部材7は、供給口5と液体流路3が連通するように、接着剤18を介して接着されている。また、ヘッド用基板1の上面(第1の面とも称す)にはシリコン酸化膜12が形成されている。
【0048】
ヘッド用基板1は、液体を吐出するための電気熱変換素子等の吐出エネルギー発生素子16を有し、また該吐出エネルギー発生素子を駆動させるための配線等(不図示)を含むことができる。吐出エネルギー発生素子16は吐出口2の位置に対応するようにヘッド用基板1に形成されている。
【0049】
また、共通液室4の底面と側面との角度α(図1(b)及び(c)参照)は90°<α<180°の範囲であり、鈍角である。
【0050】
共通液室4は、特に制限されるものではないが、例えば結晶異方性エッチングにより形成することができる。結晶異方性エッチングを用いることにより、生産性良く、効率的にヘッド用基板に共通液室(第1の凹部)を形成することができる。共通液室4を結晶異方性エッチングにより形成した場合、αは約54.7°である。また、ヘッド用基板は、<100>面の結晶方位を有するシリコン基板を用いて構成されることができる。この場合、共通液室4の底面はシリコン基板の結晶異方性エッチングより形成された<100>面となる。また、シリコン基板の厚さは、例えば0.3mm〜1.0mmとすることができる。また、共通液室の深さは、例えば0.2mm〜0.9mmとすることができる。
【0051】
以下、図1に示す液体吐出ヘッドの製造方法について図3を用いて説明する。
【0052】
まず、図3(a)及び(b)に示すように、<100>面の結晶方位を有し、まだ共通液室が形成されていないシリコン基板1を用意する。このシリコン基板1は吐出エネルギー発生素子16を有し、第1の面としての上面側に、液体流路の流路型材(又は流路型構造とも称す)6と該流路型材6を覆うように形成された流路形成部材7とを有する。流路形成部材7の上面には撥液層8が形成されており、さらに撥液層8の上面はエッチング耐性のある保護膜9により保護されている。また、ヘッド用基板1の第2の面側には第1の耐エッチング膜13が形成されている。第1の耐エッチング膜13は例えばポリエーテルアミドを用いて形成することができる。
【0053】
なお、図3(a)は、図1(a)のA−A’線における断面に相当する。また、図3(b)は、図1(a)のB−B’線における断面に相当する。また、図3(b)において、流路型材6は省略されている。
【0054】
次に、図3(c)に示すように、第1の耐エッチング膜13をパターニングして、共通液室を形成するための第1のエッチングマスク13’を形成する。
【0055】
次に、図3(d)に示すように、第1のエッチングマスク13’を用いてヘッド用基板1の裏面(第二の面)に結晶異方性エッチングを用いて第1の凹部としての共通液室4を形成する。また、共通液室4を形成する方法としては、特に結晶異方性エッチングに限定されるものではなく、他にも、例えばレーザ加工、ドライエッチングなどを用いることができる。
【0056】
次に、図3(e)に示すように、共通液室4の底面に、第2の耐エッチング膜14を形成する。そして、図3(f)に示すように、第2の耐エッチング膜14をパターニングして、共通液室4の底面に供給口を形成するための第2のエッチングマスク14’を形成する。第2のエッチングマスク14’は供給口の形成位置に合わせてパターン開口10を有する。
【0057】
第2のエッチングマスク14’は、例えば、エッチング耐性の優れたレジストを塗布し、露光、現像することにより形成することができる。レジストとしては、例えば、ノボラック樹脂誘導体やナフトキノンジアジド誘導体を用いることができる。ノボラック樹脂誘導体やナフトキノンジアジド誘導体は、シリコンのエッチング液やエッチングガスに対する耐性に優れ、且つ、共通液室である凹み形状の側面に対しても薄膜で均一に被覆可能な材料であるため、好ましく用いることができる。
【0058】
第2のエッチングマスク14’の厚さは、特に制限されるものではなく、数μmの厚みでも耐エッチング膜として機能するものであれば特に問題なく使用することができる。
【0059】
また、レジストの塗布方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等を用いて成膜することができる。これらの中でも、傾斜のある凹部側面に対する被覆性を考慮すると、スプレーコート法を用いて成膜することが好ましい。スプレーコート法ではレジスト液を霧状に噴霧することで傾斜面へ均一に被覆することが可能である。さらに、シリコン基板を加熱しながらレジスト液をスプレーすることで、レジスト液が傾斜面に付着後瞬時に溶媒が蒸発し、傾斜面における液ダレや液溜まりを発生させることなくレジストを均一に塗布することが可能である。
【0060】
レジストが塗布された共通液室の底面へのパターンの露光には、例えば、プロキシミティー露光、プロジェクション露光又はステッパ露光等を用いることができる。
【0061】
パターンを現像する際には、例えばディッピング方式やパドル方式、スプレー方式等を用いて現像液に浸漬させることができる。
【0062】
次に、図3(g)に示すように、共通液室4が形成されたシリコン基板の裏面(第2の面)にドライフィルムレジストをテンティングラミネートする。
【0063】
次に、図3(h)に示すように、ドライフィルムレジストを露光及び現像することにより、共通液室4の側面を遮蔽しかつ第2のパターニングマスクのパターン開口10を遮蔽しないような遮蔽物11’を形成する。露光には、プロキシミティー露光およびプロジェクション露光を用いることができる。図3(i)は、図3(h)の第2の面側(裏面側)から見た模式図である。図3(h)及び(i)において、遮蔽物11’は、共通液室4へのシリコン基板に垂直な光の照射により形成される陰影が凹部側面を覆いかつパターン開口10は覆わないように第2の面に形成されている。
【0064】
次に、図3(j)に示すように、パターン開口10を有するレジストパターンが形成された共通液室4の底面に対してドライエッチングを行い、複数の供給口5を形成する。
【0065】
ドライエッチングとしては、例えば、ECRやICP等をプラズマ源としたRIEのドライエッチングを用いることができる。また、垂直に例えば100μm以上の供給口を形成するためにはSF6ガスによるエッチングとC48ガスによるデポジションを繰り返すボッシュプロセスでICP等のエッチャーを用いることが好ましいが、これに限られるものではない。
【0066】
遮蔽物11’と第2のパターニングマスク14’は必要に応じて取り除くことができる。なお、この際、基板表面の液体流路壁7および撥液層8をエッチング液から保護する目的で、保護層として、エッチング液耐性を有する樹脂等を基板表面に形成しても良い。
【0067】
次に、図3(k)に示すように、供給口5の底面に露出するシリコン酸化膜12の除去を行う。シリコン酸化膜12のエッチングとしてはフッ酸によるウェットエッチングを行うことができる。
【0068】
その後、流路型構造6を除去し、液体流路3を形成する。この工程では、例えば、流路型構造6に電離放射線を照射し、流路型構造6の分解反応を起こすことで、除去液に対する溶解性を向上させることができる。電離放射線としては、流路型構造6のパターニングの際に使用したものと同様のものを使用できる。ただし、本工程では流路型構造6を除去して液体流路3を形成することが目的であるため、電離照射線はマスクを介さずに全面に照射することができる。その後、流路型構造6のパターニングの際に使用した現像液と同様のものを用いて、流路型構造6を完全に除去することができる。
【0069】
以上の工程により、液体吐出ヘッドを作製することができる。
【0070】
また、本実施形態のシリコン基板の加工方法を液体吐出ヘッドの製造に応用することにより、高い液体のリフィル性能を有する液体吐出ヘッドを製造することができる。また、第2の凹部としての供給口を位置精度高く形成できるため、供給口の位置公差を小さくすることが可能となり、ヘッド用基板の大きさを小さくすることができる。その結果、コストダウンを図ることができる。
【0071】
(実施形態2)
また、本発明の実施形態の一つとして、側面にシースが沿うように形成されることを阻害する形状となるように共通液室等の第1の凹部を形成することにより、側面に沿うようなシースが形成されないようにドライエッチングを行うことができる。
【0072】
つまり、本実施形態では、図6(e)に示すような形状を有する共通液室4等の第1の凹部に対してドライエッチングを行う。本実施形態における第1の凹部の形状は、面方向と平行な面によるシリコン基板の第1の凹部部分の断面のうち、開口面積が第1の凹部の開口面より大きくかつ最大となる第1の断面を有する。また、該第1の断面は開口面と底面との間にあり、底面と該底面から前記第1の断面までの第1の側面との角度は鈍角をなす。本実施形態では、前記第1の断面から前記開口面までの第2の側面を構成するシリコン基板部分が遮蔽構造として機能する。
【0073】
本実施形態における方法では、シリコン基板に形成する第1の凹部自体が側壁を遮蔽する形状に加工するため、別途に遮蔽物を形成する必要がない。
【0074】
また、本実施形態における第1の凹部は、第1の凹部への第2の面と垂直な光の照射により形成される陰影が前記第1の側面の少なくとも一部を覆いかつレジストパターンのパターン開口には形成されない形状である。
【0075】
また、第1の凹部は、前記陰影が前記第1の側面の全てを覆うように形成されていることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0076】
第1の凹部の底面にドライエッチングを用いて第2の凹部を形成する工程において、前記第1の凹部が図6(e)に示すようなヒサシ形状に形成されていると、実施形態1の遮蔽物と同じ理由により、側面の傾きの影響をほとんど受けず、ヒサシの位置を間口とした垂直な凹部があるのとほぼ同じシースの状態が形成される。これにより、シースの歪みが緩和され、イオンが凹部の側面方向に引き寄せられず、供給口エッチングの際、側壁の堆積膜の一部をエッチングする割合が低くなる。したがって、横方向にずれたエッチングが進まなくなり、垂直にシリコン基板をエッチングすることが可能となる。
【0077】
また、ヒサシ形状部分で前記第1の側面が遮蔽されない面積が大きくなると、前記第1の側面に形成されるシースにイオンが影響を受けながらエッチングが進行し、供給口等の第2の凹部が傾いて形成されるようになる。ここで、第1の凹部の深さをt、開口面と前記第1の側面との角度をθとすると、遮蔽物を形成しないで供給口を形成した時、共通液室の側面から最も近い、底面端部から0.15tの所に位置する供給口の傾きは2°であった。また、ヒサシ形状部分が第1の側面を全て覆い、供給口を形成した場合、共通液室の側面から最も近い供給口の傾きは0°であった。ヒサシ形状部分が共通液室の側面を遮蔽する範囲と共通液室の側面近傍に位置する供給口の傾きの関係より、底面端部から0.15t以上の距離にある供給口が90°±0.5°の垂直に形成されるには、共通液室の底面端部からt/4tanθの範囲に開口面端部が入っていれば垂直に形成される。つまり、第1の凹部の開口面は矩形状であり、面方向に垂直であって前記開口面の辺に平行な面による断面のいずれにおいても、下記範囲となれば垂直(90°±0.5°)に第2の凹部を第1の凹部の底面に形成することができる。つまり、前記第1の側面に形成される前記陰影の端部が、前記底面の端部から面方向にt/4tanθ(t:前記第1の凹部の深さ、θ:前記開口面と前記第1の側面との角度)までの範囲にあることが好ましい。さらに、供給口のパターンは第1の凹部の中央寄りに形成されることが好ましい。
【0078】
本実施形態における第1の凹部は、例えば、シリコン基板の第2の面側に先導孔を形成した後、結晶性異方性エッチングを行うことにより形成することができる。先導孔は、レーザを用いて形成することができる。また、先導孔は、シリコン基板の第2の面をドライエッチングを用いてエッチングすることにより形成することができる。
【0079】
前述の範囲を遮蔽するにはドライエッチングやレーザ加工によりシリコン基板の第2の面側に先導孔をあけ、異方性エッチングの時間を調整して共通液室を形成すればよい。エッチング時間が長くなる程遮蔽されない面積が大きくなってしまうので、前述の範囲内で遮蔽するためには、先導孔の幅と深さ、結晶異方性エッチングの時間を制御してエッチングを行って共通液室を形成する。遮蔽面積を大きくするためにエッチングマスクの内周に近接するように先導孔を形成するのが好ましい。
【0080】
以下、本実施形態の製造方法により作製される液体吐出ヘッドの構成について説明する。
【0081】
図5(a)は、本実施形態により製造される液体吐出ヘッドの上面模式図である。図5(b)は、図5(a)の点線A−A’における概略断面図である。図5(c)は、図5(a)の点線B−B’における概略断面図である。
【0082】
図5において、液体吐出ヘッドは、シリコン基板から構成されるヘッド用基板1と、流路形成部材7と、を少なくとも含んで構成される。
【0083】
流路形成部材7は、液体を吐出する吐出口2と、吐出口2と連通する液体流路3と、を構成する。流路形成部材7の上面には吐出性能を向上するために撥液層8が形成されている。
【0084】
ヘッド用基板1は、液体流路3に液体を供給するための第2の凹部としての供給口5と、供給口5に連通する第1の凹部としての共通液室4と、を構成する。第2の凹部としての供給口5は、第1の凹部としての共通液室4の底面に複数形成されている。また、第1の凹部としての共通液室4は、流路形成部材7が配置される面(第1の面)と反対側の面(第2の面)に形成されている。第2の凹部としての供給口5は第1の凹部としての共通液室4の底面にヘッド用基板1を貫通して形成されている。
【0085】
共通液室4の形状は、面方向と平行な面によるシリコン基板の共通液室部分の断面のうち、開口面積が開口面より大きくかつ最大となる第1の断面を有する。また、該第1の断面は開口面と底面との間にあり、底面と該底面から前記第1の断面までの第1の側面との角度は鈍角をなす。共通液室がこのようなヒサシ形状に形成されていると、側面の傾きの影響をほとんど受けず、ヒサシの位置を間口とした垂直な凹部があるのとほぼ同じシースの状態が形成される。
【0086】
ヘッド用基板1と流路形成部材7は、供給口5と液体流路3が連通するように、接着剤6を介して接着されている。また、ヘッド用基板1の上面(第1の面とも称す)にはシリコン酸化膜12が形成されている。
【0087】
ヘッド用基板1は、液体を吐出するための電気熱変換素子等の吐出エネルギー発生素子16を有し、また該吐出エネルギー発生素子を駆動させるための配線等(不図示)を含むことができる。吐出エネルギー発生素子16は吐出口2の位置に対応するようにヘッド用基板1に形成されている。
【0088】
また、共通液室4の底面と前記第1の側面との角度β(図5(b)及び(c)参照)は90°<α<180℃の範囲であり、鈍角である。
(実施形態3)
実施形態1において、遮蔽物を供給口を形成する部分を含んだ最小限の領域のみを開口し、その他の領域には全て残すという例を記載した。これをシリコン基板の一部を用いて同様の効果を得るのが、本実施形態である。
【0089】
即ち、ヘッド用基板に、共通液室を形成したもう一枚のシリコン基板を開口部が内側になるように接合し、シリコン基板自身をシースの歪みを抑制する遮蔽物として使用するという考え方である。
【0090】
まず、図11(a)に示すように、第1の面と該第1の面と反対側の第2の面を有する第1のシリコン基板1101に、予め第1の凹部1102(共通液室)を、第一のシリコン基板1101が貫通しないように第2の面側に形成する。第1の凹部は熱酸化処理によってシリコン酸化膜を設けてもよい。シリコン酸化膜を設けることによりインク耐久性を向上することができる。
【0091】
次に、図11(b)に示すように、第2のシリコン基板1103に中間層1104を形成し、供給口のパターン開口(第1のパターン開口)1105を中間層1104に形成する。
【0092】
次に、図11(c)に示すように、第2のシリコン基板1103と、第1のシリコン基板1101の第1の凹部1102が開口している側の面(第2の面)を、中間層1104を介して接合する。
【0093】
次に、第1のシリコン基板の中間層1104と反対側の面(第1の面)上に、第2のパターニングマスクを形成する。該第2のパターニングマスクの第2のパターン開口は、第1のパターン開口の面方向と垂直な位置を含む開口パターンで形成されている。
【0094】
次に、図11(d)に示すように、第1のシリコン基板1101側から、第2のパターニングマスクを用いて貫通孔1106をシリコンエッチングにより形成する。前記中間層の第1のパターン開口に対応する領域に貫通孔1106が形成される。
【0095】
次に、図11(e)に示すように、第1のパターン形状1105が形成された中間層1104をマスクとして、第2のシリコン基板1103に供給口1107を反応性イオンエッチングにより形成する。この際、第1のシリコン基板の第1の面が遮蔽構造として機能し、プラズマモールディング効果の影響を低減することができる。
【0096】
以上の工程により、共通液室1102はシリコン基板によってふたをされ、供給口エッチングの最中、プラズマ中にほとんど露出しない状態となる。これにより、シース1108の歪みは大幅に抑制され、垂直な供給口エッチングを実施することが出来る。
【0097】
中間層の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、樹脂材料、シリコン酸化物(SiO)、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸窒化物(SiON)、シリコン炭化物(SiC)等が挙げられる。つまり、中間層としては、例えば、樹脂層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭化シリコン膜等が挙げられる。樹脂層としては例えば感光性樹脂層が挙げられる。これらの中でも、中間層として、形成が容易であることから、感光性樹脂層やシリコン酸化膜を用いることが好ましい。
【0098】
接合の方法に関しては、樹脂材料等による接着、活性化させた表面同士を接触させて自発的に接合が進むフュージョン接合、共晶接合、拡散接合等がある。
【0099】
第2のシリコン基板として、液体吐出エネルギー発生素子を有する基板そのものを用いることが出来る。基板の厚みは、例えば50〜800μmである。供給口の形状の観点から、100〜200μmとすることが好ましい。所望の厚みにするために、接合前に基板を薄板化することも出来る。薄板化する方法としては、バックグラインド等の機械的研磨、CMP、ウェットエッチング又はドライエッチング、あるいはそれらの組み合わせ等が挙げられる。必要に応じて、目の細かい機械的研磨、化学的研磨、あるいはそれらの組み合わせ等によって、表面を鏡面状に仕上げることができる。流路型構造6、液体流路壁7を用いて形成された吐出口2と撥液層8を有する流路形成層1109は、供給口エッチングの前、即ち図11(c)と(d)の間に形成することが望ましい。流路形成層を含んだプロセス完了後の斜視図を図11(f)に示す。
【0100】
また、図12に示すように、第2のシリコン基板として液体吐出エネルギー発生素子を有する基板以外のものを用いて、更に薄板化した液体吐出エネルギー発生素子を有する基板を接合するという方法もある。薄板化した後の基板に中間層の形成を行うのは、プロセス装置の搬送系の制限により難しい場合もある。それに対して、例えば第1のシリコン基板1101と第2のシリコン基板1103を接合(図12(a))した後、第2のシリコン基板を薄板化し(図12(b))、その後に同じく薄板化された液体吐出エネルギー発生素子を有する基板1201と接合する(図12(c))という方法が考えられる。この第2のシリコン基板1103と、液体吐出エネルギー発生素子を有する基板との板厚合計が、50〜800μmで、望ましくは100〜200μmとなるように形成する。第2のシリコン基板とヘッド基板との接合は、直接接合も可能であるが、中間層を用いても構わない。流路形成層は、同じく、供給口エッチングの前に形成することが望ましい。
【0101】
第1のシリコン基板は、第1の凹部1102(共通液室)を形成後に内部にシリコン酸化膜を形成しておくことも出来る。これにより、供給口エッチング時に共通液室内部が多少なりともエッチングされてしまう懸念を排除することが出来る。また酸化膜でシリコンの表面をコーティングすることにより、インク耐性が向上するという利点もある。シリコン酸化膜の形成は、熱酸化、CVD等が挙げられる。
【0102】
以下に、接合方法や中間層について更に詳しく説明する。
【0103】
中間層として樹脂材料を選択した場合、例えば以下の方法によりシリコン基板を接着することができる。まず、シリコン基板に樹脂を塗布、パターニングして中間層を形成した後、該中間層を挟んでシリコン基板を積層させる。そして、ガラス転移温度以上に昇温した状態で圧力を印加し、接着することができる。一般的な樹脂材料は、ほぼ全てがその対象である。樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルアミド系樹脂等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂が挙げられる。シリコン系樹脂としては、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)樹脂が挙げら得る。エポキシ系樹脂としては、例えば、化薬マイクロケム製のSU−8(商品名)が具体的に挙げられる。ポリエーテルアミド系樹脂としては、例えば、日立化成製のHIMAL(商品名)、BCB(Benzocyclobutene)、HSQ(HydrogensSlises−Quioxane)等が具体的に挙げられる。
【0104】
第1のパターン形状を形成する方法については、感光性を有する樹脂材料の場合はリソグラフィー法を用いてパターニングすることができる。感光性を有しない樹脂材料の場合は、エッチングによって行うことができる。シリコンを含まない樹脂層であれば、例えばO2、O2/CF4、O2/Ar、N2、H2、N2/H2,NH3等のガスを用いたプラズマ法にてエッチングできる。シリコンを含有する樹脂層に関しては、それらのガスにCF4、CHF3等のフルオロカーボン系のガスを添加することでエッチングできる。
【0105】
また、他の接合方法として、接合する表面をプラズマ処理することによってダングリングボンドを形成して接合する、フュージョン接合と呼ばれる方法がある。このフュージョン接合には、大きく分けて2つの方法がある。
【0106】
第一の方法は、中間層の表面をプラズマ処理した後、大気中に曝してOH基を形成し、シリコン基板表面と水素結合を介して接合するものである。OH基は、大気中の水分と反応することにより形成されるが、積極的に水分を付加しても良い。この方法を適用できる中間層の材料としては、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、炭化シリコン等が挙げられる。また、その他、表面に酸化膜を形成し易い金属材料や金属酸化物、一部の樹脂材料などが挙げられる。常温で仮接合を行った後、200〜300℃程度のアニール処理をすることにより、OH基同士の脱水反応によりH2Oが脱離して、O原子を仲介とした強固な接合を得ることができる。ただし、分子間力が及ぶ範囲にまで表面同士を接近させなければならないため、表面粗さにして1nm以下の値を有することが望ましい。
【0107】
第2の方法は、水素結合を介さず、真空中でそのままダングリングボンド同士を接合させるものである。この方法も、表面粗さにして1nm以下の値が必要と言われているが、研磨等によりそれを実現できれば、理論上あらゆる材料で接合が可能である。シリコン系の材料では、少なくとも、シリコン酸化膜同士、シリコン窒化膜同士、あるいは、それぞれの膜とシリコンとの接合が確認されている。シリコン酸化膜、シリコン窒化膜のパターニングは、CF4、CHF3、C26、C38、C48、C58、C46等のフルオロカーボン系のガスを用いたプラズマによって実施することができる。また、シリコン酸化膜は、例えば、フッ酸をベースとしたウェットエッチングによってもパターニングできる。また、シリコン窒化膜は、例えば、熱リン酸を用いたウェットエッチングによってもパターニングできる。また、中間層の材料が金属材料や金属酸化物の場合も、接合前にパターニングを施せるものであれば、本発明に適用できる。
【0108】
また、他の接合方法として、共晶接合や拡散接合を用いることもできる。共晶接合であれば、例えば、金と金、金とシリコン、金と錫、金とゲルマニウム、銅と錫、パラジウムとインジウム等の組み合わせが知られている。拡散接合であれば、例えば、金と金、銅と銅、アルミニウムとアルミニウム等の組み合わせが知られている。
【0109】
次に、中間層とシリコン基板とドライエッチングの関係について説明する。
【0110】
例えば、ボッシュプロセスを用いた場合、通常のレジストマスクにて50以上のエッチングレート比を容易に得ることができる。例えば中間層に樹脂材料を用いる場合は、材料の組成がレジストマスクに近いため、ほとんどの樹脂材料で同程度の結果が得られる。中間層としての樹脂材料の成膜厚は、例えば数百nm〜数十μm程度であるが、これはシリコンを例えば深さ50〜800μmエッチングするためのマスクやストッパーとしては十分な数値である。
【0111】
シリコン酸化膜では、シリコンに対して少なくとも100以上のエッチングレート比が得られることが知られている。シリコン酸化膜は、熱酸化法を用いた場合、例えば25μm以上の膜厚まで形成できることが知られており、膜質やプロセス難易度を考慮すると好ましくは2μm以下の膜厚が望ましい。また、プラズマCVD法を用いた場合、例えば50μm以上の膜厚まで形成できることが知られており、膜質やプロセス難易度を考慮すると好ましくは10μm以下の膜厚が望ましい。これらの膜厚はシリコン酸化膜をマスクとして用いてシリコンを例えば深さ50〜800μmエッチングするには十分な数値である。
【0112】
シリコン以外の金属や金属酸化物には、シリコンに対してさらに高い選択比が得られるものもある。Fラジカルとの反応性が低い材料が特に好適であり、例えばクロム、アルミ等では1000を超えるエッチングレート比を得られる場合もある。金属又は金属酸化物等の成膜厚は、一般的に数μm程度である。所望のエッチング深さを得るためには、その材料のシリコンとのエッチングレート比を考慮して、成膜厚を適宜選択することが望ましい。
【0113】
また、本実施形態の方式を用いると、基板裏面からの液体の導入口を、供給口と二次元的に重ならない位置に配置することが出来る。液体吐出エネルギー発生素子を有する基板と液体供給タンク(図示無し)を接続する中間体として、例えばアルミナの板を加工したものを用いている。アルミナ板の加工精度は、フォトリソを用いた半導体プロセスには遠く及ばないため、共通液室のサイズやチップサイズの縮小によって、その位置に対応したアルミナの加工が困難になる場合がある。
【0114】
本実施例では、共通液室が予め基板内部に形成されている。そのため、後から共通液室に接続可能な任意の位置に開口1301を設けることが出来る(図13(a))。これにより、共通液室と液体供給タンクとの接続口を、任意の位置に再配置することが可能となる。なお、供給口のエッチングのため第1のシリコン基板に形成した開口1301は、例えばアルミナ板1302によってふたをすることにより、封止することが出来る(図13(b))。
【0115】
本実施形態において、図11(d)には、第2のシリコン基板と、該第2のシリコン基板の上に設けられた前記パターニングマスクとしての中間層と、該中間層の上に設けられ、前記パターン開口が露出する第1の開口と該第1の開口及び前記中間層と反対側の面に連通する貫通孔とを有する第1のシリコン基板と、を含む積層構造が示されている。貫通孔は、前記パターン開口の面方向と垂直な位置を含む開口パターンで形成されている。そして本実施形態では、貫通孔側から反応性イオンエッチングを行い、前記第2のシリコン基板に前記第2の開口を形成している。第1のシリコン基板の第1の面が遮蔽構造として機能することがわかる。
(実施形態4)
実施形態3と同様にシリコン基板の一部を用いてプラズマモールディング効果の抑制効果を得る、別の例を本実施形態に示す。
【0116】
即ち、ヘッド用基板に、共通液室を形成するためのもう一枚のシリコン基板を接合し、共通液室を形成するパターンの中にダミーパターンを入れて実質的な開口幅を減少させ、シースの歪みを抑制するという考え方である。
【0117】
まず、図15(a)に示すように、第1のシリコン基板1501の表面にある中間層1503に、供給口のパターンを有する第1のパターン開口1504を形成する。
【0118】
次に、図15(b)に示すように、第2のシリコン基板1502と第1のシリコン基板1501を、中間層1503を介して接合する。
【0119】
その後、図15(c)に示すように、第1のシリコン基板1501側に、共通液室を形成するための第2のパターン開口1505を有する第2のパターニングマスクを形成する。この第2のパターニングマスクのパターンの中には、プラズマモールディング効果を抑制するためのダミー構造を形成するための第3のパターン1506が含まれる。
【0120】
次に、図15(d)に示すように、第2のパターニングマスク用いて共通液室1507をシリコンエッチングにより形成する。シリコンエッチングとしては、反応性イオンエッチングを用いることが好ましい。
【0121】
次に、第1のパターン開口1504を有する中間層1503をマスクとして、反応性イオンエッチングにより供給口1508を形成する。
【0122】
ダミーパターン1506により形成されるダミー構造の配置としては、インクの供給を妨げない範囲であれば任意の形状を取ることができ、例えば図15(e)に示すようにドット状のアレイ構造等が適している。
【0123】
つまり、前記第1のシリコン基板の第1の面上に形成された前記第2のパターニングマスクは、共通液室の外壁(側壁)を形成するための側壁パターンと、前記ダミー構造を形成するためのダミーパターンを含む。そして、該ダミーパターンは前記側壁パターン内であって、かつ前記中間層に設けられているパターン開口の面方向と垂直な位置以外の領域に配置されている。
【0124】
ダミー構造は、共通液室内であって中間層1503の第1のパターン開口1504以外の領域に設けられる。例えば、ダミー構造は、共通液室内に柱状に複数設けることができる。該共通液室内に形成されたダミー構造が遮蔽構造として機能し、プラズマモールディング効果の影響を低減することができる。
【0125】
接合工程、中間層の材料、エッチングの方法等に関しては、実施形態3に準ずる。
【0126】
以上の工程により、共通液室1507のエッチングは、実質的に本来の開口幅よりも狭い開口幅でエッチングすることになり、シース1509の歪みは大幅に抑制され、垂直な供給口エッチングを実施することが出来る。
【0127】
(実施例1)
実施形態1における実施例として、図3で示す液体吐出ヘッドの製造方法によって液体吐出ヘッドを製造した。
【0128】
表面に(100)面を持ち、液体吐出エネルギー発生素子16、流路型構造6、液体流路壁7を用いて形成された吐出口2と撥液層8が形成されているヘッド用基板1を用意する。
【0129】
まず、撥液層8上に、保護層9としてOBC(商品名、東京応化製)を全面に塗布した(図3(a、b))。次いで、ヘッド用基板1の裏面にポリエーテルアミド樹脂(日立化成製HIMAL(商品名))からなる耐エッチング膜13を形成した。
【0130】
次いで、耐エッチング膜13上に感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いてスリットの状供給口パターンを形成した。次に、CF4とO2の混合ガスを用い、ポジ型レジスト上からケミカルドライエッチングにより耐エッチング膜13をスリット状の供給口パターンに形成し、第1のエッチングマスク13’を形成した(図3(c))。
【0131】
次に、供給口パターンが形成された第1のエッチングマスク13’をマスクとして、80℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液中に浸漬することでシリコン基板に対して異方性エッチングを行い、共通液室4を形成した(図3(d))。なお、異方性エッチングは、形成される共通液室4の深さが475μmになるように、エッチングレートを計算し浸漬を行った。なお、エッチングマスクは基板を用意する際に、あらかじめ形成されていてもよい。
【0132】
次いで、第1のエッチングマスク13’を除去した。
【0133】
次に、異方性エッチングを行った表面に対して、スプレーコータ(イーヴィーグループ社製)を用いて感光性のポジ型レジスト層14を形成した(図3(e))。感光性ポジ型レジストとしてはAZ−P4620(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名)を用いた。スプレーコート時に基板が60℃に保つように基板チャックを加熱しながら塗布を行うことで、傾斜およびエッジ部に均一に塗布した。
【0134】
次いで、感光性ポジ型レジスト14に対してウシオ電機製投影露光装置UX−4023(商品名)を用いて1000mJ/cm2の露光量で供給口パターンのマスクを通して露光を行った。この際、露光する箇所は、先に異方性エッチングで形成した供給口の底部であるため、露光フォーカス位置を異方性エッチングした深さ分だけ下に設定した。次いで、2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて現像を行い、共通液室の底面に微細な供給口のパターン開口10が形成された第2のエッチングマスク14’を形成した(図3(f))。
【0135】
次いで、基板裏面にネガ型感光性ドライフィルムレジスト11(東京応化工業社製、AR−340(商品名))をラミネートした(図3(g))。そして、ウシオ電機製投影露光装置UX−4023(商品名)を用いて、得られる遮蔽物11’が共通液室の開口面端部から336μm張り出したヒサシ形状となるようにパターニングを行った。この開口面端部から336μmのヒサシ状の遮蔽物は、共通液室4の深さが475μmの時、共通液室の開口面端部から共通液室4の底面と側面の境界線までを遮蔽することができる。
【0136】
次いで、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像を行い、共通液室の斜面をヒサシ状に遮蔽する遮蔽物11を形成した(図3(h))。遮蔽物11’を形成した後の平面模式図が図3(i)である。
【0137】
次いで、第2のエッチングマスク14’上よりAMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにて基板1を上面のエッチングストップ層であるシリコン酸化膜12までエッチングを行うことで供給口5を形成した(図3(j))。共通液室の斜面に最も近い供給口から6つ目の供給口までの角度は89.7°〜90.3°の範囲であり、平均値は90.0°であった。次いで、エッチングストップ層であるシリコン酸化膜12は、バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)により、ウェットエッチングし、除去した(図3(k))。
【0138】
次いで、第2のエッチングマスク14’及び遮蔽物11’は、酸素プラズマによるアッシングで除去し、保護層9であるOBC(商品名)をキシレンにて除去した。その後、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いて撥液層8上から7000mJ/cm2の露光量で全面に露光し、液体流路パターンを形成する流路型構造6を可溶化した。そして、乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬することで、流路型構造6を除去し、図3(a),(b)に示すような液体吐出ヘッドを作製した。
【0139】
(実施例2)
実施例1では共通液室の傾斜側面のみを遮蔽したが、本実施例では共通液室の傾斜側面に加え、底面まで遮蔽するヒサシ状の遮蔽物を形成した。ヒサシ状の遮蔽物は実施例1と同様の方法で形成し、共通液室の底面にあるレジストパターンのパターン開口は遮蔽しないように共通液室の開口面端部から600μm張り出した形状とした。次いで、実施例1と同様にボッシュプロセスにてエッチングを行うことで供給口5を形成した。
【0140】
傾斜側面から3つ目の供給口の角度は89.5°〜89.6°の範囲であり、平均値は89.5°であった。この結果より、遮蔽膜はレジストパターンのパターン開口を遮蔽しなければ、共通液室の底面を遮蔽するまで遮蔽範囲を広げても90°±0.5°の範囲に供給口を形成することができる。
【0141】
(実施例3)
本実施例においては、図3で示す製造方法によって、液体吐出ヘッドを製造した。基板1を準備してから、パターン開口10を有する第2のエッチングマスク14’を形成する工程まで、実施例1と同じ工程で形成した(図3(f))。
【0142】
遮蔽物は以下のように形成した。
【0143】
まず、ネガ型感光性ドライフィルムレジスト11(東京応化工業社製、AR−340)をフィルム上に配置し、フィルム状のレジストに対してウシオ電機製露光装置UX−4023(商品名)を用いて、開口が形成されたマスクを通して露光を行った。次いで、1%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像を行い、開口が形成された感光性ネガ型レジストフィルムを作製した。この開口が形成された感光性ネガ型レジストフィルムを第2のエッチングマスク14’が形成されたヘッド用基板1の第2の面上に、アライメントを行ってロール式ラミネーターで接着させることにより、遮蔽物11’を形成した。
【0144】
次いで、第2のエッチングマスク14’上よりAMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにて基板1をエッチングストップ層であるシリコン酸化膜12までエッチングを行うことで供給口5を形成した。
【0145】
次いで、保護層9であるOBC(商品名)をキシレンにて除去した。その後、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いて撥インク層上から7000mJ/cm2の露光量で全面に露光し、流路型構造6を可溶化した。そして、乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬することで、流路型構造6を除去し、液体吐出ヘッドを作製した。
【0146】
(実施例4)
実施形態2における実施例として、図7で示す液体吐出ヘッドの製造方法によって液体吐出ヘッドを製造した。
【0147】
表面に(100)面を持ち、液体吐出エネルギー発生素子16、流路型構造6、液体流路壁7を用いて形成された吐出口2と撥液層8が形成されているヘッド用基板1を用意する。
【0148】
まず、撥液層8上に、保護層9としてOBC(商品名、東京応化製)を全面に塗布した(図6(a、b))。次いで、基板の裏面にポリエーテルアミド樹脂(日立化成製HIMAL(商品名))からなる耐エッチング膜13を形成した。
【0149】
次いで、耐エッチング膜13上に感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いてスリット状の供給口パターンを形成した。次に、CF4とO2の混合ガスを用い、ポジ型レジスト上からケミカルドライエッチングにより第1のエッチングマスク13’を形成した(図7(c))。
【0150】
次に、図6(d)に示すように、直径50μm、ピッチ間隔50μm、深さ400μmの先導孔17をレーザを用いて格子状に形成した。
【0151】
次に、第1のエッチングマスク13’をマスクとし、80℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液中に浸漬することでシリコン基板に対して異方性エッチングを行い、共通液室4を形成した(図6(e))。なお、異方性エッチングは共通液室下部の基板の残り厚みが130μmの深さになるように、エッチングレートを計算し浸漬を行った。
【0152】
次いで、第1のエッチングマスク13’を除去した。次に、異方性エッチングを行った表面に対して、スプレーコータ(イーヴィーグループ社製)を用いて感光性ポジ型レジスト層14を形成した。感光性ポジ型レジストとしてAZ−P4620(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名)を用いた。スプレーコート時に基板が60℃に保つように基板チャックを加熱しながら塗布した(図6(f))。
【0153】
次いで、感光性ポジ型レジスト14に対してウシオ電機製投影露光装置UX−4023(商品名)を用いて1000mJ/cm2の露光量で供給口パターンのマスクを通して露光を行った。この際、露光する箇所は、先に異方性エッチングで形成した供給口の底部であるため、露光フォーカス位置を異方性エッチングした深さ分だけ下に設定した。次いで、2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて現像を行い、共通液室の底面上に微細な供給口のパターン開口10が形成された第2のエッチングマスク14’を形成した(図4(g))。
【0154】
次いで、第2のエッチングマスク14’の上よりAMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにてヘッド用基板1をシリコン酸化膜12までドライエッチングを行うことで供給口5を形成した(図4(h))。
【0155】
次いで、エッチングストップ層であるシリコン酸化膜12は、バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)を用いて除去した(図4(i))。
【0156】
次いで、第2のエッチングマスク14’を酸素プラズマによりアッシングした後、剥離液にて除去した。次いで、保護層9であるOBC(商品名)をキシレンにて除去した後、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いて撥液層8上から7000mJ/cm2の露光量で全面に露光し、流路型構造6を可溶化した。そして、乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬することで、流路型構造6を除去し、液体吐出ヘッドを作製した。
【0157】
(実施例5)
実施形態3における実施例として、図14で示す液体吐出ヘッドの製造方法によって液体吐出ヘッドを製造した。
【0158】
まず、基板厚500μmの第1のシリコン基板1101に、感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて共通液室のパターンを形成した。次に、AMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにて第1のシリコン基板1101をエッチングし、共通液室1102を形成した。共通液室の深さは、第1のシリコン基板1101を貫通させないよう、最深部で400μmとした。
【0159】
次に、表面に熱酸化膜7000Å(0.7μm)を有する厚み625μmの第2のシリコン基板1103に、感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて供給口パターンを形成した。次に、バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)を用いて熱酸化膜をエッチングし、供給口パターンのマスクを形成した。
【0160】
次に、第2のシリコン基板1103の、供給口パターンの形成された熱酸化膜を中間層として、第2のシリコン基板1101と第1のシリコン基板1103の接合を行った(図14(a))。第1のシリコン基板1101は、共通液室1102の開口した側を接合面とした。接合は、EVG製の接合装置(商品名:EVG520IS)を用いて、シリコンと熱酸化膜間のフュージョン接合により行った。その後、第2のシリコン基板1103側の研削研磨を行い、第2のシリコン基板1103の厚みが50μmとなるようにした(図14(b))。さらに、接合された基板全体を熱酸化し、厚み2000Åの熱酸化膜1401を形成した(図14(c))。
【0161】
液体吐出エネルギー発生素子を有する基板1201を、厚みが100μmとなるように、素子の形成されていない側の面より研削研磨を行った。そして、液体吐出エネルギー発生素子を有する第3のシリコン基板1201の研磨面と、第2のシリコン基板1103の研磨面を、EVG製の接合装置(商品名:EVG520IS)を用いて、フュージョン接合にて接合した(図14(d))。その後、液体吐出エネルギー発生素子を有する第3のシリコン基板1201側に、流路形成層1109を形成した(図14(e))。
【0162】
次に、第1のシリコン基板側1101に、感光性ポジ型レジスト1402(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて供給口を含むパターンを形成した。バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)を用いて熱酸化膜1401をエッチングし、続いてAMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにてまず、第1のシリコン基板1101を貫通させた。引き続き、第2のシリコン基板に供給口を、同じくボッシュプロセスにて形成した(図14(f))。
【0163】
第2のシリコン基板と液体吐出エネルギー発生素子を有する基板の間に存在する熱酸化膜を、バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)を用いて除去し、さらにボッシュプロセスにて、液体吐出エネルギー発生素子を有する基板に供給口を形成した(図14(g))。プロセス完了後の斜視図を図14(h)に示す。
【0164】
液体吐出エネルギー発生素子を有する基板の表面保護や、エッチングストップ層の除去、保護層の除去に関しては、実施例1〜4と同様のため割愛する。
【0165】
(実施例6)
実施形態4における実施例として、図15に示す液体吐出ヘッドの製造方法によって液体吐出ヘッドを製造した。
【0166】
まず、表面に熱酸化膜7000Åを有する厚み500μmの第1のシリコン基板1501に、感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて供給口パターンを形成した。次に、バッファードフッ酸110U(ダイキン工業社製、商品名)を用いて熱酸化膜をエッチングし、供給口パターンのマスク1504を形成した(図15(a))。
【0167】
次に、液体吐出エネルギー発生素子を有する第2のシリコン基板1502を厚み200μmに薄加工した後、表面を研削研磨した。次に、供給口パターンの形成された熱酸化膜1503を中間層として、第1のシリコン基板1501と第2のシリコン基板1502との接合を行った(図15(b))。接合の方法は実施例5に準ずる。その後、液体吐出エネルギー発生素子を有する第2のシリコン基板1502側に、流路形成層1510を形成した。
【0168】
次に、第1のシリコン基板側1501に、感光性ポジ型レジスト(東京応化製OFPR−800(商品名))を全面に塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて共通液室1505のパターンを形成した。そこには、ダミーパターン1506も含まれる(図15(c))。
【0169】
次に、AMS200(ALCATEL社製、商品名)を用いてボッシュプロセスにてまず、第1のシリコン基板1501に共通液室1506を形成した。引き続き、第2のシリコン基板に供給口1507を、同じくボッシュプロセスにて形成した(図15(d))。プロセス完了後の斜視図を図15(e)に示す。
【0170】
液体吐出エネルギー発生素子を有する基板の表面保護や、エッチングストップ層の除去、保護層の除去に関しては、実施例1〜5と同様のため割愛する。
【符号の説明】
【0171】
1 ヘッド用基板(シリコン基板)
2 吐出口
3 液体流路
4 共通液室(第1の凹部)
5 供給口(第2の凹部)
6 流路型構造
7 流路形成部材
8 撥液層
9 保護膜
10 パターン開口
11’ 遮蔽物
12 シリコン酸化膜
13 第1のエッチングマスク
14 第2のエッチングマスク
15 デポ膜
17 先導孔
18 接着剤
801 シース
901 遮蔽物
1001 遮蔽物
1101 第1のシリコン基板
1102 共通液室(第1の凹部)
1103 第2のシリコン基板
1104 中間層
1105 第1のパターン形状
1106 第2のパターン
1107 供給口(第2の凹部)
1108 シース
1109 流路形成層
1301 第1の凹部に連通する開口部
1501 第1のシリコン基板
1502 第2のシリコン基板
1503 中間層
1504 第1のパターン形状
1505 第2のパターン
1506 第3のパターン
1507 共通液室(第1の凹部)
1508 供給口(第2の凹部)
1509 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口の底部に、パターン開口を有するパターニングマスクを用いて、プラズマを用いた反応性イオンエッチングにより第2の開口を形成するシリコン基板の加工方法であって、
前記プラズマに対する前記第1の開口内の露出を妨げる遮蔽構造を前記シリコン基板内又は上に形成した状態で前記反応性イオンエッチングを行うことを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項2】
前記遮蔽構造は、前記プラズマに対する前記パターン開口の露出を妨げない構造である請求項1に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項3】
第1の面と該第1の面と反対側の第2の面とを有するシリコン基板の加工方法であって、
(1)前記第2の面側に前記第1の開口としての第1の凹部を形成する工程と、
(2)前記第1の凹部の底面に前記パターニングマスクを形成する工程と、
(3)前記第2の面側から前記反応性イオンエッチングを行い、前記第2の開口としての第2の凹部を形成する工程と、
を有する請求項1又は2に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項4】
前記第1の凹部は側面と底面の角度が鈍角となるように前記第2の面側に形成され、
前記遮蔽構造は前記シリコン基板の上に形成された遮蔽物からなり、前記第1の凹部への前記第2の面に垂直な光の照射により形成される前記遮蔽物の陰影が前記第1の凹部の側面の少なくとも一部を覆いかつ前記パターン開口を覆わない請求項3に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項5】
前記遮蔽物は、前記陰影が前記第1の凹部の側面の全てを覆うように形成されている請求項4に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項6】
前記遮蔽物は、前記陰影が前記第1の凹部の側面の一部を覆うように形成されている請求項4に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項7】
前記第1の凹部は結晶異方性エッチングにより形成されている請求項3乃至6のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項8】
前記第1の凹部の開口面は矩形状であり、
前記シリコン基板の面方向に垂直であって前記第1の凹部の一辺に平行な面による断面のいずれにおいて、
前記遮蔽物は、前記第2の面の前記開口面の端部から面方向に下記式で表されるAの範囲に亘って形成されている請求項6又は7に記載のシリコン基板の加工方法
3t/4tanθ ≦ A ≦ t/tanθ
(A:前記開口面の端部から前記遮蔽物の端部までの距離、t:前記第1の凹部の深さ、θ:前記開口面と前記側面との角度(0°<θ<90°))。
【請求項9】
前記遮蔽物は、前記開口面に延展するように前記第2の面上に形成されたレジストマスクにより構成されている請求項4乃至8のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項10】
前記遮蔽物は、フィルム状の感光性レジストを前記第2の面に貼り付けた後に、フォトリソグラフィ法によってパターニングして形成される請求項9に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項11】
前記遮蔽物は、パターニングして該遮蔽物の形状を作製した構造物を前記第2の面に貼り合わせることにより形成される請求項9に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項12】
前記第1の凹部は、面方向と平行な面による前記シリコン基板の前記第1の凹部部分の断面のうち、開口面積が前記第1の凹部の開口面より大きくかつ最大となる第1の断面を有し、
該第1の断面は前記開口面と前記底面との間にあり、
前記底面と該底面から前記第1の断面までの第1の側面との角度は鈍角であり、
前記第1の断面から前記開口面までの第2の側面を形成するシリコン基板部分が前記遮蔽構造として機能する請求項3に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項13】
前記第1の凹部は、前記第2の面側に先導孔を形成した後、結晶性異方性エッチングを行うことにより形成される請求項12に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項14】
前記第1の凹部は、前記第1の凹部への前記第2の面と垂直な光の照射により形成される陰影が前記第1の側面の少なくとも一部を覆いかつ前記パターン開口を覆わない形状を有する請求項12又は13に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項15】
前記第1の凹部は、前記陰影が前記第1の側面の全てを覆うように形成されている請求項14に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項16】
前記開口面は矩形状であり、
面方向に垂直であって前記開口面の辺に平行な面による断面のいずれにおいて、
前記第1の側面に形成される前記陰影の端部が、前記底面の端部から面方向にt/4tanθ(t:前記第1の凹部の深さ、θ:前記開口面と前記第1の側面との角度)までの範囲にある請求項14に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項17】
前記先導孔は、レーザを用いて形成される請求項13乃至16のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項18】
前記先導孔は、ドライエッチングにより形成される請求項13乃至16のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項19】
前記シリコン基板は<100>面の結晶方位を有する請求項1乃至18のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項20】
前記反応性イオンエッチングは、ボッシュプロセスを用いて行われる請求項1乃至19のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項21】
前記第1の凹部としての共通液室の底面に前記第2の凹部としての供給口を、請求項3乃至20のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法を用いて形成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項22】
第2のシリコン基板と、該第2のシリコン基板の上に設けられた前記パターニングマスクとしての中間層と、該中間層の上に設けられ、前記パターン開口が露出する第1の開口と該第1の開口及び前記中間層と反対側の面に連通する貫通孔とを有する第1のシリコン基板と、を含む積層構造を形成する工程と、ここで、前記貫通孔は、前記パターン開口の面方向と垂直な位置を含む開口パターンで形成されており、
前記貫通孔側から前記反応性イオンエッチングを行い、前記第2のシリコン基板に前記第2の開口を形成する工程と、
を有する請求項1又は2に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項23】
(1)第1の面と該第1の面と反対側の第2の面とを有する前記第1のシリコン基板に第1の凹部を前記第2の面側に形成する工程と、
(2)前記中間層を表面に有する前記第2のシリコン基板を用意する工程と、
(3)前記第1のシリコン基板と前記第2のシリコン基板とを、前記第2の面側と前記中間層とで接合する工程と、
(4)前記第1のシリコン基板の前記第1の面上に、前記貫通孔を形成するための第2のパターニングマスクを形成する工程と、ここで、前記第2のパターニングマスクは、前記中間層に設けられている前記パターン開口の面方向と垂直な位置を含むように配置された第2のパターン開口を有し、
(5)前記第2のパターニングマスクを用いて前記第1のシリコン基板に前記第1の凹部に到達する前記貫通孔を形成する工程と、ここで、前記第1の凹部は前記第1の開口となり、
(6)前記中間層をマスクとして用いて、前記第2の開口としての第2の凹部を前記反応性イオンエッチングによって形成する工程と、
を有する請求項22に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項24】
前記工程(3)の後に、前記第2のシリコン基板に第3のシリコン基板を接合する工程を含む請求項23に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項25】
前記工程(3)の後であって、前記第2のシリコン基板と前記第3のシリコン基板とを接合する前に、前記第2のシリコン基板を薄板化する工程を含む請求項24に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項26】
前記工程(1)の後であって前記工程(3)の前に、前記第1の凹部にシリコン酸化膜を形成する工程と含む請求項23乃至25のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項27】
前記工程(6)の後、前記第1の開口に連通する開口部を、前記第1のシリコン基板の前記第1の面に形成する工程を含む請求項23乃至26のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項28】
前記反応性イオンエッチングとしてボッシュプロセスを用いる請求項22乃至27のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項29】
前記中間層は、樹脂層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭化シリコン膜の少なくとも1つである請求項22乃至28のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項30】
請求項22乃至29のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法を含む液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項31】
前記第2のシリコン基板の前記第1のシリコン基板と反対の面側に、液体を吐出するための吐出口と該吐出口に連通する液体流路とを構成する流路形成層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の開口は共通液室であり、前記第2の開口は前記共通液室と前記液体流路とに連通する供給口である請求項30に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項32】
(1)前記パターニングマスクとしての中間層を介して第1のシリコン基板と第2のシリコン基板を接合する工程と、
(2)前記第1のシリコン基板の前記中間層との接合面と反対の面側に、前記第1の開口及びダミー構造を形成するための第2のパターンニングマスクを形成する工程と、ここで、前記第2のパターニングマスクは、前記第1の開口の外壁を形成するための側壁パターンと、前記ダミー構造を形成するためのダミーパターンを含み、前記ダミーパターンは前記側壁パターン内であって、前記中間層に設けられている前記パターン開口の面方向と垂直な位置以外の領域に配置されており、
(3)前記第2のパターンニングマスクを用いて前記中間層に到達するまでドライエッチングを行い、前記第1の開口及び前記ダミー構造を形成する工程と、
(4)前記中間層をマスクとして用いて前記反応性イオンエッチングにより第2の開口を形成する工程と、
を有する請求項1又は2に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項33】
前記中間層は、樹脂層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭化シリコン膜、シリコン以外の金属膜又はその酸化膜若しくは窒化膜である請求項32に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のシリコン基板の加工方法を含む液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項35】
前記第2のシリコン基板の前記中間層との接合面と反対の面側に、液体を吐出するための吐出口と該吐出口に連通する液体流路とを構成する流路形成層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の開口は共通液室であり、前記第2の開口は前記共通液室と前記液体流路とに連通する供給口である請求項34に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−45924(P2012−45924A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140644(P2011−140644)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】