説明

シリコン構造体の製造方法

【課題】内部に段差を有する高アスペクト比の凹部を高い加工精度で容易に形成することができるシリコン構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】寸法Wまたは形状が異なる複数の開口部21a〜21f,22を備えたマスクパターン2を形成するマスクパターン形成工程と、複数の開口部21a〜21f,22に露出された基材1を同時に深さd1,d2方向に異方性ドライエッチングして、深さd1,d2の異なる初期凹部11,12を形成するエッチング工程と、複数の初期凹部11,12の内表面を酸化することにより、初期凹部11,12の各々の間に隔壁1wとして残存した基材1の全体を酸化して酸化部を形成する酸化部形成工程と、酸化部を除去して、凹部4を形成する酸化部除去工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコン構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、微小機械部品と電子部品との融合による新しい機能のデバイス(Micro Electro Mechanical System:MEMS)が知られている。MEMSでは、主にシリコン(Si)のウェーハに微小な機械構造物を形成することで、例えば自動車部品(エアーバッグセンサ等)、インクジェットヘッド、画像投影装置等の市場向けの製品が量産されている。MEMSでは、これらのデバイスのさらなる小型・高性能化が求められている。
例えば、加速度センサや角速度センサの力学的検出部は、主に基板上に形成された櫛歯状の梁構造体から構成されている。これらのセンサを小型・高性能化するためには、Si基板のエッチングにより形成される溝の幅や穴の径と深さとのアスペクト比(深さ/溝幅、深さ/穴径)を高くする必要がある。
【0003】
Si基板にエッチングによって高いアスペクト比の穴や溝を形成するための方法としては、チャンバーに供給する材料ガスをエッチングプロセス毎に切り替える方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、(1)異方性の高いプラズマエッチングと、(2)ポリマー系の薄膜堆積と、の2ステップを交互に行うドライエッチング技術が開示されている。
【特許文献1】米国特許第5501893号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、高いアスペクト比を有する多段の溝(トレンチ)や多段の穴(ホール)や、トレンチとホールとを組み合わせた多段構造の凹部を形成する場合には、以下のような課題がある。上記従来の技術では、(1)のエッチング工程と上記の(2)の薄膜堆積工程のバランスの調整が極めて困難である。そのため、製造工程における各種パラメータの調整幅(プロセスマージン)が非常に狭くなり、製造工程の最適化が極めて困難になる。
例えば、Siの基材にエッチングによってホールやトレンチ等の凹部を形成する際に、深さの異なる底面を形成して凹部の内側に段差を形成する場合には、基材の表面からの深さが異なると到達するラジカルやイオンの量が異なってしまう。そのため、(1)の工程におけるエッチングレートや(2)の工程において堆積するポリマー系の薄膜の量は場所(深さ方向の位置)によって異なり、凹部の深さ方向の深い位置に最適な量の薄膜を堆積させるのは極めて困難である。
【0005】
また、発明者らは、このような凹部の段差を形成する際に、次のような課題が発生することを見出した。
(2)の工程で凹部の内側面に堆積した薄膜の膜厚が薄過ぎる場合には、(1)の工程でその部分の側壁がテーパ状に形成されてしまう。反対に、(2)の工程で堆積した薄膜の厚さが厚過ぎる場合には、凹部の段差に基材が突起状に残存してしまう。また、(1)の工程で凹部の最深部の底面が荒れた状態になった場合には、(2)の工程で薄膜を堆積させると、凹部の最深部の角の近傍において薄膜が均一に堆積されず、凹部の内側面も(1)の工程で荒れた状態になってしまう。
したがって、従来の方法では、高アスペクト比の凹部に高い加工精度で段差を形成することが困難であった。
【0006】
そこで、この発明は、内部に段差を有する高アスペクト比の凹部を高い加工精度で容易に形成することができるシリコン構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のシリコン構造体の製造方法は、シリコンからなる基材に、内側に深さ方向の段差を有する凹部が形成されたシリコン構造体の製造方法であって、寸法または形状が異なる複数の開口部を備えたマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、前記複数の開口部に露出された前記基材を同時に深さ方向に異方性ドライエッチングして、深さの異なる複数の初期凹部を形成するエッチング工程と、前記複数の初期凹部の内表面を酸化することにより、前記初期凹部の各々の間に隔壁として残存した前記基材の全体を酸化して酸化部を形成する酸化部形成工程と、前記酸化部を除去して、前記凹部を形成する酸化部除去工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように製造することで、エッチング工程において、基材に開口部の寸法または形状が異なる各初期凹部が異なるエッチング速度でエッチングされる。これにより、初期凹部が複数の異なる深さに形成される。この際、各初期凹部の内側面を構成する基材が各初期凹部の間に初期凹部同士を隔離する隔壁として残存した状態で、各初期凹部が形成される。そして、酸化部形成工程において、各初期凹部の内表面と、各初期凹部の間に残存した隔壁とが酸化されて酸化部となる。さらに、酸化部除去工程においてこの酸化部が除去されて凹部の全体の形状が形成される。これにより、凹部の内表面が平滑化されるとともに、深さの異なる初期凹部の間の隔壁が除去されて、凹部の内側に深さ方向の段差が1段以上複数段形成される。
したがって、本発明のシリコン構造体の製造方法によれば、内部に段差を有する高アスペクト比の凹部を高い加工精度で容易に形成することができる。
【0009】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターン形成工程において前記開口部の前記寸法または前記形状を調整することで、前記エッチング工程において前記初期凹部の深さを制御することを特徴とする。
【0010】
このように製造することで、エッチング工程において初期凹部の開口部の寸法を大きくして基材のエッチング速度を上昇させることができる。また、初期凹部の開口部の寸法を小さくして基材のエッチング速度を低下させることができる。また、初期凹部の開口部の形状を調整して基材のエッチング速度を調整することができる。
したがって、マスクパターンの開口部の寸法または形状を調整して各初期凹部のエッチング速度を調整し、各初期凹部の深さを制御することで、凹部の内側に所望の寸法及び形状の段差を高精度に形成することができる。
【0011】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターン形成工程において前記開口部の間隔を調整することで、前記エッチング工程において前記初期凹部の間の前記隔壁の厚さを前記酸化部形成工程において完全に酸化される厚さに調整することを特徴とする。
【0012】
このように製造することで、酸化部除去工程において初期凹部の間に残存させた隔壁の全体を酸化させ、より確実かつ容易に除去することができる。
【0013】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターン形成工程において、隣接する複数の前記開口部の寸法および形状を均一に形成することを特徴とする。
【0014】
このように製造することで、隣接する複数の初期凹部の深さが均一に形成される。そして、酸化部除去工程においてこれら初期凹部の間の隔壁を除去することによって、凹部の底面を所望の寸法、形状に形成することができる。
【0015】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記エッチング工程において、前記複数の開口部のうち、平面視で最も外側に位置する前記開口部は、前記基材が前記酸化部として前記酸化部除去工程において除去される厚さ分、前記凹部の内側面よりも前記凹部の内側に形成することを特徴とする。
【0016】
このように製造することで、初期凹部の内表面の基材が、最終的な凹部が形成される領域の境界まで酸化されて酸化部となる。そして、その酸化部が酸化部除去工程において除去される。したがって、凹部の内側面、幅寸法または径寸法等を高い加工精度で加工することができる。
【0017】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターン形成工程において前記開口部の前記寸法または前記形状を調整することで、前記初期凹部の深さを、前記基材が前記酸化部として前記酸化部除去工程において除去される厚さ分、前記凹部の深さよりも浅く形成することを特徴とする。
【0018】
このように製造することで、初期凹部の底面の基材が、最終的な凹部が形成される領域の境界まで酸化されて酸化部となる。そして、その酸化部が酸化部除去工程において除去される。したがって、凹部の底面、深さ等を高い加工精度で加工することができる。
【0019】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターン形成工程において、前記開口部の形状は、溝形状またはホール形状であることを特徴とする。
【0020】
このように製造することで、エッチング工程において、溝形状の初期凹部とホール形状の初期凹部とを形成し、それぞれ異なる深さに形成することができる。また、溝形状の初期凹部の各々の開口部の幅寸法を異ならせて、これらを異なる深さに形成することができる。また、ホール形状の初期凹部の開口部の各々の径寸法を異ならせて、これらを異なる深さに形成することができる。
【0021】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記酸化部形成工程は、加熱による熱酸化により行うことを特徴とする。
【0022】
このように製造することで、初期凹部の内表面の酸化部の厚さを均一にすることができる。また、酸化部の厚さを加熱温度及び加熱時間等を調整することで制御することができる。
【0023】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記酸化部除去工程は、ウェットエッチングにより行うことを特徴とする。
【0024】
このように製造することで、凹部の形状にほとんど影響を与えることなく、酸化部を除去することができる。したがって、凹部を所望の形状に高精度に加工することができる。
【0025】
また、本発明のシリコン構造体の製造方法は、前記マスクパターンはシリコン酸化物からなることを特徴とする。
【0026】
このように製造することで、異方性のドライエッチングによって基材をエッチングする際に、マスクパターンと基材との選択比を利用して基材をエッチングすることができる。したがって、凹部を多段状に形成することが可能となる。
また、酸化部除去工程と一括してマスクパターンを除去することが可能となる。したがって、工程数を削減し、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、シリコンからなる基材に、内側に段差を有する多段状の凹部(ホール、トレンチ等)を形成し、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等の分野で用いられるシリコン構造体を製造する方法について説明する。ここでは、基材をエッチングして内側に段差を有する凹部を備えたシリコン構造体を製造するために、まず、基材の表面に凹部の形状に対応したマスクパターンを形成する。
【0028】
図1〜図3は、本実施形態のシリコン構造体の製造工程を示す図である。図1(a)は基材の断面図及び凹部形成領域の拡大平面図を、図1(b)は凹部形成領域の拡大平面図を示している。図2(a)〜(c)及び図3(a)は基材の断面図、(b)は基材の断面図及び凹部の拡大平面図である。
【0029】
(マスクパターン形成工程)
図1(a)に示すように、まず、シリコンからなる基材1の表面1aに、例えばSiO等のシリコン酸化物からなるハードマスク(マスクパターン)2を形成する。ハードマスク2の形成は、例えば、基材1の表面1aを熱酸化させて形成したり、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により基材1の表面1aに成膜したりすることができる。
次に、ハードマスク2の表面2aにフォトレジスト3を形成する。次いで、フォトレジスト3を露光・現像してパターニングする。そして、平面視で略同心円環状に配置された溝形状の開口部31と、平面視で略円形状のホール形状の開口部32とを形成する。
【0030】
ここで、溝形状の開口部31は、図1(b)に示すように、幅W方向に隣接する複数(例えば6つ)の開口部31a〜31fを略同心円環状の均一な形状に形成する。また、溝形状の開口部31a〜31fは、各々の幅W方向の寸法が略等しくなるように均一にパターニングする。
また、開口部31a〜31f,32の各々の間には、後述するエッチング工程において隔壁1w(図2(c)参照)として残存させる基材1の厚さTw分の間隔を幅W方向にあけておく。
【0031】
また、フォトレジスト3のパターニング時には、開口部31,32の形状や、開口部31の幅W方向の寸法及び開口部32の径R方向の寸法を、例えば次のように調整する。
まず、後述するエッチング工程において形成される初期凹部11,12の深さd1,d2と、開口部51,52(図2(c)参照)の寸法及び形状と基材1のエッチング速度との関係に応じて調整する。
このとき、初期凹部11,12の深さd1,d2が、最終的に形成される凹部4の深さD1,D2よりも、後述する酸化部除去工程において酸化部Ox(図3(a)参照)として除去される基材1の厚さTo1分、浅く(凹部4の内側に)なるように調整する。
【0032】
さらに、平面視で略同心円状に形成された溝状の開口部31の最も外側の開口部31fの外縁は、最終的に形成される凹部4(図3(b)参照)の内側面4a1よりも、基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、凹部4の内側に形成する。また、ホール状の開口部32の径Rは、最終的に形成される凹部4の段差G1の内側面4a2よりも、基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、凹部4の内側に形成する。
すなわち、開口部31,32の形状や、開口部31の幅W方向の寸法及び開口部32の径R方向の寸法は、初期凹部11,12が酸化部Oxとして除去される基材1の厚さTo1分、凹部4よりも小さく(凹部4の内側に)なるように調整する。
【0033】
本実施形態では、最終的に形成する凹部4(図3(b)参照)の寸法は例えば以下の通りである。開口部5の径R1は約60μm、段差G1の内側の径R2は約20μm、段差G1の上側(浅い側)の底面4b1までの深さD1は約40μm、段差G1の下側(深い側)の底面4b2までの深さD2は約60μmである。
このとき、図1(a)および図1(b)に示すフォトレジスト3の開口部31,32の形状や、開口部31の幅W方向の寸法及び開口部32の径R方向の寸法の調整は、例えば次のように行う。
【0034】
まず、最終的に形成する凹部4の深さD1,D2を目標として、後述する初期凹部11,12の開口部51,52の寸法及び形状とエッチング速度との関係から、初期凹部11の開口部51の幅W方向の寸法と、初期凹部12の開口部52の径R方向の寸法を算出する。
次に、後述する酸化部除去工程において酸化部Ox(図3(a)参照)の厚さToを設定し、初期凹部11,12の内表面から除去される基材1の厚さTo1を算出する。酸化部Oxとして除去される基材1の厚さTo1は、酸化部Oxの厚さToの約0.45倍程度である。
【0035】
本実施形態では、酸化部Oxの厚さToを例えば約4μmに設定し、除去される基材1の厚さTo1を約1.8μmとする。
そして、算出した初期凹部11,12の開口部51,52の寸法を、その除去される厚さTo1分、小さくする。その小さくした寸法を、フォトレジスト3の開口部31,32の寸法とする。
これにより、フォトレジスト3の溝形状の開口部31a〜31fの幅Wがそれぞれ約2.1μmに調整され、ホール形状の開口部32の径Rが約16.4μmに調整される。
【0036】
また、初期凹部11,12の内表面から除去される基材1の厚さTo1から、後述するエッチング工程において隔壁1wとして残存させる基材1の厚さTwを決定する。また、隔壁1wの厚さTwは、後述する酸化部形成工程において酸化されて増加する厚さを考慮して、隣接する隔壁1w同士が酸化後に緩衝しないように決定する。
ここで、隔壁1wの厚さTwは、除去される基材1の厚さTo1の2倍未満とすることが望ましい。より好ましくは、酸化部Oxとして除去される基材1の厚さTo1の約0.9倍未満とする。
【0037】
本実施形態では、後述するエッチング工程において初期凹部11a〜11fの間に残存させる隔壁1wの厚さTwを約1.25μmとする。そして、開口部31a〜31f,32の各々の幅W方向の間隔を、厚さTwと等しい約1.25μmの間隔に設定する。
ここで、溝形状の初期凹部11a〜11fの幅Wをそれぞれ約2.1μmに設定しているので、残存させる隔壁1w同士の中心間隔は約3.35μm程度に調整される。
【0038】
次に、フォトレジスト3の開口部31,32に露出されたハードマスク2をドライエッチングによりエッチングして、図2(a)に示すように開口部21,22を形成する。これにより、上述のように調整されたフォトレジスト3の開口部31,32の形状及び寸法と、ハードマスク2の開口部21,22の形状及び寸法とが略同一に形成される。ここで、ドライエッチングのエッチャント(エッチングガス)としては、例えば、CF系等のガスを用いることができる。
【0039】
次に、ハードマスク2の表面2aのフォトレジスト3を除去して、図2(b)に示すように、ハードマスク2を露出させる。
以上により、基材1の表面1aを覆い、初期凹部11,12の形成領域の基材1を露出させる開口部21,22を備えたハードマスク2が形成される。
【0040】
(エッチング工程)
次に、図2(c)に示すように、ハードマスク2の開口部21,22に露出された基材1を深さ方向に異方性エッチングして、基材1に複数の略円環状の溝形状の初期凹部11a〜11fと、略円筒形状のホール形状の初期凹部12とを一括して形成する。
ここでは、例えばSF6等のフッ素系のガスと酸素を用いたエッチングステップと、C4F8ガスを用いたポリマー堆積ステップとを交互に行う異方性のドライエッチングを用いて基材1をエッチングする。
【0041】
そして、初期凹部11a〜11f,12の各々の間に基材1を隔壁1wとして残存させた状態で、基材1に開口部51a〜51f,52の寸法及び形状が異なる複数の初期凹部11a〜11f,12を一括して形成する。
ことのき、後述するマイクロローディング効果により、基材1が初期凹部11,12の開口部51,52の寸法及び形状に応じた異なるエッチング速度でエッチングされる。そして、初期凹部11,12が異なる深さd1,d2に一括して形成される。
【0042】
また、初期凹部11,12の開口部51,52は、ハードマスク2の開口部21,22と略同一の寸法及び形状に形成される。すなわち、上述のように調整されたフォトレジスト3の開口部31,32の寸法及び形状と略同一に形成される。そのため、初期凹部11,12の深さd1,d2が所定の値に制御される。
【0043】
そして、初期凹部11,12は、後述する工程において基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、最終的に形成される凹部4よりも小さく形成される。換言すると、凹部4の内表面よりも凹部4の内側に形成される。また、上述のように形成されたハードマスク2により、初期凹部11a〜11f,12の各々の間に、隔壁1wが、後述する酸化部形成工程において完全に酸化される厚さTwで残存する。本実施形態では、隔壁1wの厚さTwが約1.25μmに形成される。
【0044】
また、ハードマスク2の開口部21a〜21fの各々は、フォトレジスト3の開口部31a〜31fの各々と略同一の形状及び寸法に形成されている。したがって、ハードマスク2の開口部21a〜21fの各々は、幅W方向(図1(b)参照)の寸法が略同一に形成されている。また、すべてが略同等の円環状の均一な溝形状に形成されている。
そのため、隣接する複数の初期凹部11a〜11fの各々の開口部51a〜51fの幅W方向の寸法が均一(略同一)に形成される。これにより、初期凹部11a〜11fの各々が略同一のエッチング速度でエッチングされ、略同一の深さd1に形成される。
【0045】
(酸化部形成工程)
次に、基材1の表面1aのハードマスク2を除去した後、初期凹部11,12の底面及び内側面を含む内表面の基材1を酸化することで、基材1の表面1aおよび隔壁1wの全体を酸化して、図3(a)に示すように、所定の厚さToの酸化部Oxを形成する。
初期凹部11,12の内表面の酸化は、例えば初期凹部11,12の内表面を高温に加熱して酸化する熱酸化により行うことができる。酸化部Oxの厚さToは、熱酸化における温度や加熱時間等を調整することにより制御することができる。本実施形態では、熱酸化を例えば1000℃以上の高温で行う。そして、基材1を厚さTo1分酸化する。
【0046】
本実施形態では、初期凹部11,12の内表面の基材1が厚さTo1分の約1.8μm酸化されて、厚さToが約4μmの酸化部Oxが形成される。そして、初期凹部11,12の開口部51,52の幅W方向の寸法、すなわち隔壁1w同士の間隔は約0.57μmとなる。また、隔壁1wが完全に酸化され、厚さTwが約1.25μmから約2.78μm程度に増加する。
【0047】
(酸化部除去工程)
次に、上述の工程で酸化させた初期凹部11,12の内表面と隔壁1wとを含む酸化部Oxを除去して、図3(b)に示すように凹部4の全体の形状を形成する。ここでは、酸化部Oxの除去は、エッチング液を用いたウェットエッチングにより行う。
これにより、初期凹部11,12を隔離していた隔壁1wが除去されて、基材1の表面1aからの深さD1,D2が異なる底面4b1,4b2の間に、深さD1,D2方向の段差G1が形成される。
以上の工程により、内側に段差G1を有する多段構造の凹部4が基材1に形成される。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4は、上述のエッチング工程において基材1を一定の時間エッチングしたときの初期凹部11,12の開口部51,52の寸法及び形状とエッチング深さd1,d2との関係を示すグラフである。
図4中、縦軸は初期凹部11,12のエッチングの深さd1,d2を示し、所定のエッチング深さd1,d2(100μm以上)を「1」として表している。横軸は、初期凹部11,12の開口部51,52の寸法を示す対数軸である。
また、図4中、実線は溝形状の初期凹部11のデータを、破線はホール形状の初期凹部12のデータを示している。また、溝形状の初期凹部11の寸法は幅Wを、ホール形状の初期凹部12の寸法は径Rをそれぞれ示している。
【0049】
図4に示すように、溝形状の初期凹部11の幅W寸法とホール形状の初期凹部12の径R寸法とが同等であった場合、寸法が100μm以下では、同じエッチング時間であっても、所定の深さまでは溝形状の初期凹部11の方がホール形状の初期凹部12よりもエッチング深さd1が深くなる。
すなわち、幅W寸法と径R寸法とが同等であった場合、溝形状の初期凹部11のエッチング速度の方が、ホール形状の初期凹部12のエッチング速度よりも大きくなる。
このように、エッチング速度は初期凹部11,12の開口部51,52の形状に依存する。
【0050】
また、溝形状の初期凹部11の幅W寸法を大きくすることで、一定時間内により深い初期凹部11を形成することができる。すなわち、エッチング速度を上昇させることができる。同様に、ホール形状の初期凹部12の径R寸法を大きくすることで、エッチング速度を上昇させ、一定時間内により深い初期凹部12を形成することができる。
また、ホール形状の初期凹部12の径R寸法を、溝形状の初期凹部11の幅W寸法よりも、所定の比率大きくすることで、一定時間内に形成されるホール形状の初期凹部12の深さd2を、溝形状の初期凹部11の深さd1よりも深くすることができる。
【0051】
本実施形態では、上述のようにフォトレジスト3の溝形状の開口部31a〜31fの幅Wがそれぞれ約2.1μmに調整され、ホール形状の開口部32の径Rが幅Wよりも十分に大きい約16.4μmに調整されている。そして、ハードマスク2の開口部21,22が同様の寸法及び形状に形成され、さらに初期凹部11,12の開口部51,52の寸法及び形状も同様に形成されている。
【0052】
すなわち、ホール形状の初期凹部12の開口部52の径R寸法が、溝形状の初期凹部11の開口部51の幅W寸法よりも、十分に大きく形成されている。これにより、ホール形状の初期凹部12における基材1のエッチング速度を溝形状の初期凹部11のエッチング速度よりも大きくすることができる。そして、所定時間エッチングすることで、ホール形状の初期凹部12の開口部52の深さd2が約58.2μmに形成され、溝形状の初期凹部11の深さd2がそれよりも浅い約38.2μmに形成される。
【0053】
この際、初期凹部11a〜11f,12の内側面を構成する基材1が、初期凹部11a〜11f,12の間に初期凹部11a〜11f,12同士を隔離する隔壁1wとして残存した状態で、初期凹部11a〜11f,12が形成される。すなわち、エッチングの深さd1,d2の異なる複数の初期凹部11,12が、それぞれ隔壁1wにより分離され、隔離された状態でエッチングされる。
【0054】
そして、初期凹部11,12の内表面と隔壁1wとが酸化されて酸化部Oxとなり、酸化部Oxが除去されて凹部4の全体の形状が形成される。このとき、凹部4の内表面が平滑化される。また、基材1の表面1a方向に隣接する初期凹部11,12同士を隔離する隔壁1wが除去されて、凹部4の内側に深さD1,D2方向の段差G1が形成される。
【0055】
ここで、本実施形態との比較のため、図8(a)〜(b)及び図9(a)〜(c)に従来のシリコン構造体の製造方法を説明する断面図を示す。
従来の製造方法では、図8に示すように、基材10をエッチングして深さの異なる底面401b及び402bを有する凹部40を形成する際に、深さの異なる領域の境界(図8(a)のB部)が存在している。
【0056】
このような深さの異なる領域の境界において、図8(a)〜(b)に示すように、凹部40の内側面402aに凹凸が形成されると、次のような問題がある。例えば、内側面402aの凸部402cの影響により、内側面402aへのポリマーの堆積が阻害される場合がある。このような場合には、凹部40の段差Gの近傍の内側面402aに薄膜が形成されなかったり、その部分の薄膜の膜厚が薄くなったりしてしまう場合がある。
【0057】
また、従来の製造方法では、凹部40の最深部の形状を形成した後、凹部40の最深部の底面402bと、基材10の凹部形成領域40Aとを一括してエッチングする際に、次のような問題がある。例えば、最深部の底面402bと、それよりも浅い位置の底面401bとではエッチング条件が異なる。そのため、ポリマーを堆積させる工程における各種パラメータの調整幅(プロセスマージン)が非常に狭くなり、薄膜の膜厚を均一にすることが非常に困難である。
【0058】
このように、凹部40の内側面402aの段差Gの近傍に堆積した薄膜の膜厚が薄過ぎる場合には、横方向(深さ方向と垂直な方向)にエッチングが進行し、凹部40の段差Gの角Cがエッチングされる。そして、図9(a)に示すように、凹部40の最深部の内側面402aがテーパ状に形成されてしまう。
【0059】
反対に、凹部40の内側面402aの薄膜の膜厚が厚過ぎる場合には、図8(b)に示すように凸部402cの影となった部分が、異方性のドライエッチングのエッチングステップにおいて残存する場合がある。このような場合には、図9(b)に示すように、凹部40の段差Gに基材10が突起状に残存してしまう。
【0060】
また、図9(c)に示すように、エッチングによって凹部40の最深部の底面402bが荒れた状態になった場合には、次のような問題がある。例えば、薄膜を堆積させる工程において凹部40の最深部の角Cb(底面402bと内側面402aとの境界)の近傍においてポリマーが均一に堆積されず、エッチングにより凹部40の最深部の内側面402aも荒れた状態になってしまう。
【0061】
しかし、本実施形態では、図2(c)に示すように、エッチングの深さd1,d2の異なる複数の初期凹部11,12が、それぞれ隔壁1wにより分離され、隔離された状態でエッチングされる。そのため、エッチング工程において、従来のように深さが異なる領域の境界が発生しない。したがって、図9(a)〜(c)に示すような従来の製造方法における問題を解消することができる。これにより、初期凹部11,12を高いアスペクト比で高精度に形成することが可能となる。
【0062】
また、エッチング工程において、基材1のエッチングを異方性のドライエッチングにより行うことで、基材1を深さ方向に選択的にエッチングすることができる。
また、初期凹部11,12の開口部51,52の寸法または形状を調整して初期凹部11,12の深さを制御することができる。
【0063】
すなわち、図4に示すように、初期凹部11,12の開口部51,52の幅W及び径R寸法を大きくして基材1のエッチング速度を上昇させ、所定時間内に形成される初期凹部11,12の深さd1,d2を深くすることができる。また、初期凹部11,12の開口部51,52の幅W及び径R寸法を小さくして基材1のエッチング速度を低下させ、所定時間内に形成される初期凹部11,12の深さd1,d2を浅くすることができる。また、初期凹部11,12の開口部51,52の形状を溝形状またはホール形状のいずれかに調整して基材1のエッチング速度を調整することができる。
したがって、凹部4の内側に所望の寸法及び形状の段差G1を高精度に形成することができる。
【0064】
また、深さd1,d2の異なる初期凹部11,12を一括して形成することができるので、従来よりも工程数を削減するとともに、プロセスマージンを拡大し、製造工程を容易にすることができる。
【0065】
また、ハードマスク2の複数の溝形状の開口部21a〜21fは、各々の幅W方向の寸法が略等しくなるようにパターニングされたフォトレジスト3の溝形状の開口部31a〜31fと略同一の形状及び寸法に形成されている。そのため、エッチング工程において、隣接する複数の初期凹部11a〜11fの開口部51a〜51fの寸法および形状が同等に形成される。これにより、隣接する複数の初期凹部11a〜11fの深さが同等に形成される。
したがって、酸化部除去工程において、これら溝形状の初期凹部11a〜11fの間の隔壁1wを除去することによって、凹部4の底面4b1を所望の寸法、形状に形成することができる。
【0066】
また、酸化部形成工程において、初期凹部11,12の内表面と、初期凹部11a〜11f,12の間に残存した隔壁1wとが酸化されて酸化部Oxとなる。
このとき、図2(c)に示すように、初期凹部11,12が、最終的に形成される凹部4の内表面から、基材1の酸化部Oxに加工される厚さTo1分小さく(凹部4の内側に)形成されている。
【0067】
そのため、初期凹部11,12の内表面の基材1が、最終的に形成される凹部4の内表面(内側面4a1,4a2及び底面4b1、4b2)の境界まで酸化されて酸化部Oxとなる。そして、その酸化部Oxが酸化部除去工程において除去される。したがって、凹部4を従来よりも高い加工精度で加工することができる。
また、酸化部Oxの除去により、凹部4の内表面の凹凸を平滑化することができ、従来のように凹部4の内表面が荒れた状態となることを防止できる。
【0068】
また、エッチング工程において、隔壁1wの厚さが酸化部形成工程において完全に酸化される厚さに調整されている。すなわち、隔壁1wの厚さTwは、除去される基材1の厚さTo1の2倍未満に形成されている。隔壁1wは凹部酸化工程において両方向(凹部4の内側方向と外側方向)から酸化される。そのため、隔壁1wの厚さTwを、基材1が酸化部Oxとして加工される厚さTo1の2倍未満に設定することで、凹部4の内表面に厚さToの酸化部Oxが形成されたときに、隔壁1wを完全に酸化させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、隔壁1wの厚さTwが、酸化部Oxとして除去される基材1の厚さTo1の0.9倍未満の、より好ましい約1.25μmとされている。これにより、酸化部形成工程において隔壁1wを完全に酸化することができる。
したがって、酸化部除去工程において、初期凹部11a〜11f,12の間に残存させた隔壁1wをより確実かつ容易に除去することができる。
【0070】
また、隔壁1wの厚さTwは、酸化部形成工程において酸化されて増加する厚さを考慮して、隣接する隔壁1w同士が酸化後に緩衝しないように決定されている。
本実施形態では、酸化前の隔壁1wの厚さTwは、それぞれより好ましい約1.25μmに設定され、隔壁1w同士の中心間隔は約3.35μmである。また、酸化前の初期凹部11a〜11fの開口部51a〜51fの幅W方向の寸法が約2.1μmに形成されている。そのため、酸化後に隔壁1wの厚さTwが増加して約2.78μmになった場合でも、隔壁1w同士の間に約0.57μmの間隔を形成することができる。これにより、酸化後の隔壁1w同士の緩衝を防止することができる。
【0071】
また、熱酸化により酸化部Oxを形成することで、加熱温度及び加熱時間等を調整して酸化部Oxの厚さToを制御することができる。したがって、酸化部Oxの厚さToの調整を容易にして、凹部4の内表面に均一な厚さToの酸化部Oxを形成することができる。なお、酸化部Oxの厚さToは、酸化前の基材1の厚さTo1よりも厚くなる。
また、熱酸化を例えば1000℃以上の温度で行うことで、基材1を酸化して酸化部Oxを形成する際の面方位依存性を極小化することができる。これにより、初期凹部11,12の底面に形成された酸化部Oxの厚さToと、初期凹部11,12の内側面に形成された酸化部Oxの厚さToとを均等にすることができる。
【0072】
また、酸化部除去工程において、酸化部Oxが除去されて凹部4の全体の形状が形成される。これにより、凹部4の内表面が平滑化される。
さらに、深さの異なる初期凹部11,12の間の隔壁1wを除去して、凹部4の内側に深さ方向の段差G1を形成ことができる。
【0073】
また、初期凹部11,12の内表面及び隔壁1wを酸化(加工)してシリコン酸化物からなる酸化部Oxを形成することで、酸化部除去工程においてシリコン酸化物とシリコンとの材質の差異を利用して、酸化部Oxを選択的に除去することができる。
【0074】
また、エッチング工程においてハードマスク2により、初期凹部11,12の開口部51,52の形状及び寸法を規定することで、初期凹部11,12の形成領域以外の領域をハードマスク2により保護した状態で基材1をエッチングすることができる。これにより、初期凹部11,12の開口部51,52の寸法及び形状、隔壁1wとして残存させる基材1の厚さTwを規定することができる。
【0075】
また、シリコン酸化物からなるハードマスク2を用いることで、酸化部除去工程において酸化部Oxの除去と一括してハードマスク2を除去することが可能となる。この際、酸化部除去工程をウェットエッチングにより行うことで、基材1にほぼ影響を与えることなく酸化部Oxとハードマスク2とを一括して選択的に除去することができる。
また、異方性のドライエッチングによって基材1をエッチングする際に、ハードマスク2と基材1との選択比を利用して凹部4を段階的にエッチングすることができる。したがって、凹部4を多段状に形成することが可能となる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のシリコン構造体の製造方法によれば、内側に段差G1を有する高アスペクト比の凹部4を高い加工精度で容易に形成することができる。
したがって、内側に複数の段差を有する多段のトレンチ、多段のホールや、トレンチとホールの組合せの構造等の複雑な構造においても、高い加工精度で安定的にシリコンを加工できる。
【0077】
また、凹部4の形状が崩れたり、不安定な形状になったりすることを防止することができるため、再現性の良好なシリコンの加工が可能になる。さらに、エッチング工程におけるプロセスの変動(製造に影響するパラメータ等の変動)を最小限にすることができるため、大きなプロセスマージン(製造工程におけるパラメータの変動幅)を確保することができる。加えて、高い加工精度で安定してシリコンを加工できることにより、MEMSの小型・高性能化、高信頼性化を実現することができる。
【0078】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図1〜図4を援用し、図5を用いて説明する。本実施形態では、凹部41が溝形状となっている点で、上述の第一実施形態で説明したシリコン構造体の製造方法と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図5(a)は本実施形態において最終的に形成する凹部41の斜視断面図であり、図5(b)は、フォトレジスト3の開口部の平面図である。
【0079】
(マスクパターン形成工程)
図5(a)に示すように、内側に段差G11を有する溝形状の凹部41を形成する場合には、まず、図1(a)に示す第一実施形態と同様に、基材1の表面1aにハードマスク2を形成し、ハードマスク2の表面にフォトレジスト3を形成する。
そして、図5(b)に示すように、フォトレジスト3をパターニングして、幅W1が略等しい複数の溝形状の開口部311a〜311fと、幅W2が幅W1よりも大きい溝形状の開口部321を形成する。
【0080】
開口部311a〜311f,321の各々の間には、第一実施形態と同様に、エッチング工程において隔壁1w(図2(c)参照)として残存させる基材1の厚さTw分の間隔を幅W1,W2方向にあけておく。
また、開口部311,322の形状及び寸法は、図2(c)に示す第一実施形態と同様に、エッチング工程において形成される初期凹部(図示省略)の深さと、開口部の寸法及び形状と基材1のエッチング速度との関係に応じて調整する。
【0081】
また、第一実施形態と同様に、初期凹部の深さが、最終的に形成される凹部41の深さD11,D21よりも、後述する酸化部除去工程において酸化部Ox(図3(a)参照)として除去される基材1の厚さTo1分小さく(内側に)なるように調整する。
【0082】
隣接して複数設けられた開口部311の最も外側の開口部311fは、第一実施形態と同様に、最終的に形成される凹部41の開口部51よりも、基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、幅W1方向の内側に配置する。
また、開口部311,321は、幅W1,W2方向と直交する開口部311,322の延在方向に、最終的に形成される凹部41の開口部51よりも、基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、それぞれ内側に配置する。
【0083】
本実施形態では、最終的に形成される凹部41の開口部51の幅W3を第一実施形態の凹部4の開口部5の径R1と略等しくする。また、凹部41の段差G11の内側の幅W4を、第一実施形態の凹部4の段差G1の内側の径R2と略等しくする。
また、フォトレジスト3の開口部311の幅W1を、第一実施形態の溝形状の開口部31の幅Wと略等しくする。また、開口部321の幅W2を、第一実施形態のホール形状の開口部32の径Rと略等しくする。そして、エッチング工程において隔壁1wとして残存させる基材1の厚さTwも、第一実施形態と同様に決定する。
【0084】
次いで、図2(a)及び図2(b)に示す第一実施形態と同様に、ハードマスク2をエッチングし、フォトレジスト3を除去する。そして、フォトレジスト3の開口部311,322と略同一の形状及び寸法の開口部(図示省略)を備えたハードマスク2を形成する。
【0085】
(エッチング工程)
次に、図2(c)に示す第一実施形態と同様に、ハードマスク2の開口部に露出された基材1を深さ方向に異方性エッチングして、基材1に複数の幅W1が等しい溝形状の初期凹部と、幅W1よりも大きい幅W2の初期凹部とを一括して形成する。
これにより、第一実施形態と同様に、マイクロローディング効果により初期凹部の深さが所定の値に制御され、幅W1,W2が異なる初期凹部が、異なる深さに一括して形成される。なお、本実施形態では、幅W1,W2の初期凹部の開口部の平面形状が、双方とも溝形状に形成されている。また、幅W1の狭い開口部は第一実施形態の開口部51の幅Wと同様に、幅W2の広い開口部は、第一実施形態の開口部52の径Rと同様に形成されている。そのため、図4に示すように、第一実施形態の溝形状の初期凹部11とホール形状の初期凹部12の組み合わせの場合よりも、初期凹部11,12同士の深さd1,d2の差が大きくなる。
【0086】
また、初期凹部は、第一実施形態と同様に、基材1が酸化部Oxとして除去される厚さTo1分、最終的に形成される凹部41よりも凹部41の内側に形成される。また、初期凹部の各々の間に、隔壁1wが、後述する酸化部形成工程において完全に酸化される厚さTwで残存する。また、隣接する複数の幅W1の狭い初期凹部の各々の開口部の幅W1方向の寸法が略同一に形成され、各々が略同一の深さに形成される。
【0087】
(酸化部形成工程)
次に、初期凹部の底面及び内側面を含む初期凹部の内表面の基材1を酸化して、図3(a)に示す第一実施形態と同様に、所定の厚さToの酸化部Oxを形成する。
【0088】
(酸化部除去工程)
次に、上述の工程で酸化させた初期凹部の内表面と隔壁1wとを含む酸化部Oxを、図3(b)に示す第一実施形態と同様に除去して、凹部41の全体の形状を形成する。
これにより、第一実施形態と同様に基材1の表面1aからの深さD11,D22が異なる底面41b1,41b2の間に、深さD11,D21方向の段差G11が形成される。
以上の工程により、内側に段差G11を有する多段構造の溝形状の凹部41が基材1に形成される。
【0089】
したがって、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、溝形状の凹部41を形成することができる。また、幅W1,W2の異なる初期凹部の双方を溝形状とすることで、凹部41の深さD11,D22の差を第一実施形態よりも大きくすることができる。
【0090】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図1〜図5を援用し、図6を用いて説明する。本実施形態では、複数の形状および深さの異なる凹部を形成する点で、上述の第二実施形態で説明したシリコン構造体の製造方法と異なっている。その他の点は第二実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図6は、本実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はエッチング工程を、(b)は酸化部形成工程を、(c)は酸化部除去工程を示している。
【0091】
図6(a)に示すように、本実施形態では、上述の実施形態と同様に、エッチング工程において、基材1に開口部512,522,532の幅W5,W6,W7が異なる複数の初期凹部112,122,132を一括して形成する。
このとき、幅W5が幅W6よりも小さく、幅W7よりも大きくなるように形成する。また、隣接する複数の初期凹部112a,112bの各々を略等しい幅W5に形成する。同様に、隣接する複数の初期凹部132a〜132dの各々を略等しい幅W7に形成する。
【0092】
これにより、初期凹部112の深さd12が、初期凹部122の深さd22よりも浅く、初期凹部132の深さd32よりも深く形成される。また、隣接する複数の初期凹部112a,112bの各々の深さd12が略等しくなる。同様に隣接する複数の初期凹部132a〜132dの各々の深さd32が略等しくなる。
【0093】
また、初期凹部112a,112b,122の各々の間の隔壁11wの厚さTw1と、初期凹部132a〜132dの各々の間の隔壁12wの厚さTw2は、上述の実施形態と同様に、酸化部形成工程において完全に酸化され、かつ互いに緩衝しないように決定する。
【0094】
次に、図6(b)に示すように、上述の実施形態の酸化部形成工程と同様に、初期凹部112,122,132の内表面、隔壁11w,12w及び基材1の表面1aを酸化して厚さToの酸化部Oxを形成する。このとき、初期凹部122と初期凹部132との間の基材1は完全には酸化されずに一部が残存する。
【0095】
次いで、図6(c)に示すように、上述の実施形態の酸化部除去工程と同様に酸化部Oxを除去する。これにより、基材1に、内側に深さD12,D22方向の段差G12を有する凹部42aと、凹部42aに隣接する凹部42bとを形成することができる。
したがって、本実施形態によれば、第一、第二実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、複数の凹部42a,42bを一括して形成することができる。
【0096】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、図1〜図5を援用し、図7を用いて説明する。本実施形態では、複数の形状および深さの異なる凹部を段階的に形成し、基材の酸化量を十分に厚くして、テーパ形状の凹部を形成する点で、上述の第一実施形態で説明したシリコン構造体の製造方法と異なっている。その他の点は上述の第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図7は、本実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はエッチング工程を、(b)は酸化部形成工程を、(c)は酸化部除去工程を示している。
【0097】
図7(a)に示すように、本実施形態では、上述の実施形態と同様に、エッチング工程において、基材1に開口部513,523,533,543の幅W8,W9,W10,W11が異なる複数の初期凹部113,123,133,143を一括して形成する。
このとき、幅W8が最も小さく、幅W9、幅W10、幅W11の順に段階的に大きくなるように形成する。
これにより、初期凹部113,123,133,143の深さd13,d23,d33,d43が、この順により深くなるように形成される。
【0098】
また、隣接する初期凹部113,123,133,143の各々の間に隔壁として残存する基材1の厚さが、酸化部形成工程において完全に酸化されるように調整する。また、酸化後に隔壁状の基材1同士が緩衝しないように調整する。また、最終的に形成される凹部43のテーパ状の内側面43aの角度に応じて、初期凹部113,123,133,143の各々の間隔を調整する。また、最終的に形成する凹部43の内側面43aがなめらかなテーパ状になるように、酸化されて酸化部Oxとなる基材1の厚さを十分に大きく設定する。
【0099】
次に、上述の実施形態と同様に、初期凹部113,123,133,143の各々の内表面と、それらの間の基材1、及び基材1の表面1aとを酸化して、図7(b)に示すように、酸化部Oxを形成する。
また、隣接する初期凹部113,123,133,143の各々の間に隔壁として残存する基材1が完全に酸化されて酸化部Oxの一部となる。
【0100】
次いで、図7(c)に示すように、上述の実施形態の酸化部除去工程と同様に酸化部Oxを除去する。これにより、基材1に、内側に所望の角度のなめらかなテーパ状の内側面43aと、深さD13方向の段差G13を有する凹部43を形成することができる。
したがって、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、所望の角度のテーパ状の内側面43aと、深さD13方向の段差G13を一括して形成することができる。
【0101】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の第一実施形態では、初期凹部の開口部を2種類の異なる寸法・形状として、凹部の内側に1段の段差を形成したが、初期凹部の開口部を3種類以上の異なる寸法・形状に形成することで、2段以上の段差を形成してもよい。
また、上述の第一実施形態では、酸化部形成工程に先立ってハードマスクを除去したが、ハードマスクを除去せずに、初期凹部の内表面及び隔壁を酸化させるようにしてもよい。
また、径の異なるホール状の初期凹部を組み合わせて段差を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシリコン構造体の製造工程を説明する図であり、(a)は断面図及び平面図、(b)は拡大平面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第一実施形態係るシリコン構造体の製造工程を説明する断面図ある。
【図3】本発明の第一実施形態に係るシリコン構造体の製造方法を説明する図であり、(a)は断面図、(b)は断面図及び平面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る基材のエッチング深さと初期凹部の開口部の寸法及び形状との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第二実施形態に係るシリコン構造体の製造工程を説明する図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第三実施形態に係るシリコン構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第四実施形態に係るシリコン構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、従来のシリコン構造体の製造方法の問題点を説明する断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、従来のシリコン構造体の製造方法の問題点を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 基材、2 ハードマスク(マスクパターン)、4 凹部、11,12 初期凹部、21(21a〜21f),22 開口部、41 凹部、42a,42b 凹部、43 凹部、1w 隔壁、11w,12w 隔壁、R,R1,R2 径(寸法)、To,To1 厚さ、Tw,Tw1,Tw2 厚さ、Ox 酸化部、112,122,132 初期凹部、113,123,133,143 初期凹部、d1,d2 深さ、d12,d22,d32 深さ、d13,d23,d33,d43 深さ、G1,G11,G12,G13 段差、W,W1〜W11 幅(寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンからなる基材に、内側に深さ方向の段差を有する凹部が形成されたシリコン構造体の製造方法であって、
寸法または形状が異なる複数の開口部を備えたマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記複数の開口部に露出された前記基材を同時に深さ方向に異方性ドライエッチングして、深さの異なる複数の初期凹部を形成するエッチング工程と、
前記複数の初期凹部の内表面を酸化することにより、前記初期凹部の各々の間に隔壁として残存した前記基材の全体を酸化して酸化部を形成する酸化部形成工程と、
前記酸化部を除去して、前記凹部を形成する酸化部除去工程と、
を有することを特徴とするシリコン構造体の製造方法。
【請求項2】
前記マスクパターン形成工程において前記開口部の前記寸法または前記形状を調整することで、前記エッチング工程において前記初期凹部の深さを制御することを特徴とする請求項1記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項3】
前記マスクパターン形成工程において前記開口部の間隔を調整することで、前記エッチング工程において前記初期凹部の間の前記隔壁の厚さを前記酸化部形成工程において完全に酸化される厚さに調整することを特徴とする請求項1記載または請求項2に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項4】
前記マスクパターン形成工程において、隣接する複数の前記開口部の寸法および形状を均一に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項5】
前記マスクパターン形成工程において、前記複数の開口部のうち、平面視で最も外側に位置する前記開口部は、前記基材が前記酸化部として前記酸化部除去工程において除去される厚さ分、前記凹部の内側面よりも前記凹部の内側に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項6】
前記マスクパターン形成工程において前記開口部の前記寸法または前記形状を調整することで、前記初期凹部の深さを、前記基材が前記酸化部として前記酸化部除去工程において除去される厚さ分、前記凹部の深さよりも浅く形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項7】
前記マスクパターン形成工程において、前記開口部の形状は、溝形状またはホール形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項8】
前記酸化部形成工程は、加熱による熱酸化により行うことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項9】
前記酸化部除去工程は、ウェットエッチングにより行うことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【請求項10】
前記マスクパターンはシリコン酸化物からなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のシリコン構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−269120(P2009−269120A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121190(P2008−121190)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】