説明

シリコーンヒドロゲルレンズの旋盤加工方法

シリコーンヒドロゲル材料、特に、高酸素透過度を有し、かつ比較的大量のオキシパーム成分を含む重合性組成物で作製したシリコーンヒドロゲル材料を、室温で旋盤加工してコンタクトレンズにする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンヒドロゲルレンズの製造方法、特に、室温でシリコーンヒドロゲルレンズを旋盤加工する方法に関する。
【0002】
発明の背景
コンタクトレンズは、多くの異なるタイプの視力異常を矯正するために広く使用されている。これらの視力異常には、低度の単色収差、例えば焦点のずれ(近視または近視眼、遠視または遠視眼)、乱視、プリズム、および通常加齢に伴う近視野視力の低下(老眼)が挙げられる。他の組織のように、角膜が供給血液から酸素を受け取れないので、コンタクトレンズは、取巻く空気(すなわち酸素)から酸素を角膜に到達させなければならない。もし充分な酸素が角膜に到達しなければ、角膜膨張が起こる。長時間の酸素欠乏は、角膜に望ましくない血管成長を起こす。「ソフト」コンタクトレンズは、眼の形と緊密に合致するので、酸素は簡単にレンズの周りには到達しない。したがって、ソフトコンタクトレンズは、レンズを通して酸素を拡散させ、角膜に到達させなければならず、すなわち、外面から内面への酸素透過率(すなわち、レンズ厚を通る酸素透過度)が比較的高く、充分な酸素がレンズを通過して角膜に達し、角膜の健康に最小限の悪影響しか与えないようにしなければならない。高酸素透過シリコーンヒドロゲル材料は既に開発されており、例えばFocus NIGHT & DAY(登録商標)(CIBA VISION)のような、角膜の健康にメリットを提供することができるコンタクトレンズを製造する要求は満たされている。
【0003】
シリコーンヒドロゲルは、一般に、少なくとも1種の親水性モノマーおよびシリコーン含有モノマーまたはマクロマーを含有する重合性混合物のコポリマーから形成されている。一般的に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、使い捨て型を使うフルモールディング方法によって、大量生産されている。1つには型の使用に伴う比較的高いコストのため、および1つには多数のSKUの製品在庫を管理することが困難であるため、レンズ成形法によって製造された一群のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、視力および/またはベースカーブ等の選択において限定された数のバリエーションしか持つことができない。多くの場合、患者は、彼(彼女)の処方箋に適合したコンタクトレンズを使用しなければならない。オーダーメイドまたは特注のコンタクトレンズを、たとえば直接に旋盤加工して製造すれば患者の処方箋に適合することができる。しかし、その柔軟性および/または粘着性のため、当分野では、一般的に、シリコーンヒドロゲル材料は、低温においてしか旋盤加工することができないと考えられている。低温旋盤加工するのに伴う高コストのため、製造コストは高くなるおそれがある。したがって、製造者にとってはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを室温で旋盤加工することが望ましい。
【0004】
さらに、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、使い捨て型を使うフルモールディング方法によって経済的に大量生産することができるが、使い捨て型を使用するフルモールディング方法は、避けることができない使い捨て型の寸法のばらつきのために、レンズ設計の全ての特徴部分を再生産する正確さが比較的低いために、比較的複雑な表面設計を有するコンタクトレンズの製造には適さない。比較的複雑な表面設計を持つコンタクトレンズの例として、乱視、プリズム、および老眼を矯正するコンタクトレンズ、高度の単色収差を矯正する特注のレンズ(たとえば、規格外の量の球面収差、コマ収差、および他の不規則高度収差)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの乱視、プリズム、老眼および高次単色収差を矯正するコンタクトレンズは、眼上で回転性および/または向き安定性を与えるために、コンタクトレンズに備えつけられる少なくともある特別の特徴を必要とする。これらの効果および性能は、向き/安定性特徴の設計と、これらの特徴の設計の正確な複製とに大きく依存する。しかし、型の射出成形の間、型の寸法のばらつきが起こる可能性があり、その結果、製造過程(温度、圧力、材料特性)におけるばらつきおよび/または射出成形後の不均一な収縮となることが予想される。
【0005】
したがって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを室温(または周囲温度)で旋盤加工する方法が必要である。
【0006】
発明の要旨
一態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を室温で直接旋盤加工することによりシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含有するレンズ形成流体材料を得る工程;1以上のチューブにレンズ形成材料を充填する工程;チューブ中のレンズ形成材料をゆっくり硬化させて、高酸素透過度を有するロッド形ポリマーを形成する工程;ポリマーからチューブを引剥がす工程;ポリマーを充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ポリマーの室温旋盤加工性を増加させる工程;および、ポリマーを室温で旋盤加工してコンタクトレンズにする工程を含み、各コンタクトレンズが少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するものである方法である。
【0007】
別の態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を室温で直接旋盤加工することによって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明は、ポリマーボタンの注型成形用の型を準備する工程;型内に、高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含むレンズ形成流体材料を充填する工程;レンズ形成材料を型内で硬化させて、高酸素透過度を有するボタン形ポリマーを形成する工程;ボタンを型から取り出し;ボタンを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボタンの室温旋盤加工能力を増加させる工程;およびボタンを室温で旋盤加工し、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとする工程;を含む方法である。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、ボンネットの注型成形用の型半が光学特性を持つ成形面を有し、成形面がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの後面および前面の1つを画定するものである型を準備する工程;型内に高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーが含むレンズ形成流体材料を充填する工程;レンズ形成材料を型内で硬化させて、コンタクトレンズの前面および後面の1つに対応する光学的に仕上げられた面を有し、高い酸素透過度を有するボンネット形のポリマーを形成する工程;ボンネットを型から取り出し;ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;および、ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の面を室温で直接旋盤加工することによって前面を形成し、それによりレンズを得る工程;を含み、得られたコンタクトレンズが少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するものである方法を提供する。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、前面と反対の後面があり、前面には中央光学区域とその中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域があるコンタクトレンズの製造方法であって、ポリマーボンネットの注型成形用の型であって、型の第一の型半には光学特性を持つ第一成形面があり、また第二の型半には第二の成形面があり、第二の成形面には光学特性のある実質的に環状の周辺成形区域があり、第一の成形面によってコンタクトレンズの後面が画定され、周辺成形区域がコンタクトレンズの前面上に1以上の非光学区域を画定するものである型を準備する工程;型内にレンズ形成流体材料を充填する工程;型内でレンズ形成流体材料を硬化させて、光学的に仕上げられコンタクトレンズの後面に対応する1個の面、および光学的に仕上げられコンタクトレンズの中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域に対応する区域があるボンネット形のポリマー形成し;ボンネットを型から取り出す工程;ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;および中央光学区域および場合により、中央光学区域と非光学区域とを橋渡しする周辺ブレンド区域を形成するために、ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の、光学的に仕上げられた区域によって取り囲まれている表面領域を室温で直接旋盤加工し、それによってコンタクトレンズを得る工程;を含む方法である。
【0010】
発明の形態の詳細な説明
本発明の態様態様について詳細に説明する。本発明の範囲および趣旨を逸脱しない範囲で本発明の種々の改変および変更が可能であることは当業者に明らかである。たとえば、一つの実施態様の一部として描きあるいは記載した特徴を別の態様で使用して更に別の態様を得ることができる。したがって、本発明はそのような改変および変更を、添付の特許請求の範囲およびそれらと均等のものの範囲内に当然含むものである。本発明の他の目的、特徴および態様は、以下の詳細な説明に記載され、また、それから明らかになる。本説明は、単に例示的な態様の説明であり、本発明のより広い態様を限定するものではないことを、当業者は理解する必要がある。
【0011】
他に記載がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全てこの発明が属する分野の当業者に共通して理解される意味と同じ意味を持つ。一般的に、本明細書で使用される専門用語および実験手段は、当分野でよく知られており、普通に使用されている。当分野および種々の一般的な参照資料に提供されている従来法は、ここでの手法として使用される。用語が単数で記載されている場合、本発明者は、その用語の複数も想定している。本明細書で使用される専門用語および以下に記載する実験手段は、当分野で公知であり普通に採用されているものである。
【0012】
本明細書で使用される「眼用装具」は、眼または眼球近傍でまたはその周りで使用される、コンタクトレンズ(ハードおよびソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、他の眼用装具(たとえば、ステント、緑内障シャントなど)を言う。
【0013】
「コンタクトレンズ」は、装着者の眼の上または内部に配置することのできる構造体を言う。コンタクトレンズは、使用者の視野を矯正、改善あるいは変えることができるが、必ずしも必要なことではない。コンタクトレンズは、当分野で知られているあるいは後で開発される、任意の適切な材料で製造することができ、ソフトレンズでも、ハードレンズでも、またハイブリッドレンズでもよい。代表的には、コンタクトレンズには前面および反対側の後面および周縁端部分があり、前面および後面は次第に肉薄になる。
【0014】
本明細書で使用される、コンタクトレンズの「前あるいは前面」は、装着している間、目から離れた面を言う。また、実質的に凸面が代表である前面を、レンズの前方曲面と言う場合もある。
【0015】
本明細書で使用されるコンタクトレンズの「後ろまたは後面」は、装着している間、目に向き合っているレンズの面を言う。また、実質的に凹面が代表である後面を、レンズのベース曲面と言う場合もある。
【0016】
コンタクトレンズの前面および後面のそれぞれは、中央光学区域とその中央光学区域を取り囲む1以上の非光学区域(周辺区域)とを含むことができる。例示的な非光学区域(または周辺区域)には、ベベル、レンチキュラー、周辺ブレンド区域などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「ベベル」は、コンタクトレンズの後面の境界線に位置する非光学的表面区域を言う。一般的に、ベベルは、有意に平坦に近い曲面で、通常はコンタクトレンズのベースカーブ(光学的後面)と組み合わさり、境界線近くの上向きのテーパのように見える。これにより、より急なベースカーブ半径が眼を押さえつけないようになり、境界線が僅かに持ち上がることを可能にする。この境界線を持ち上げることは、角膜を横切る涙の適正な流れにとって重要なことであり、レンズの装着をより心地よくする。
【0018】
「レンチキュラー」は、光学区域と境界線との間のコンタクトレンズの前面の非光学的表面区域を言う。レンチキュラーの主な機能は、レンズ境界の厚さを調整することである。
【0019】
「周辺ブレンド区域」は、レンチキュラー区域および中央光学区域の間に位置する非光学区域を言う。周辺ブレンド区域が存在することにより、中央光学区域および周辺区域を別々に独立して設計することが可能となり、中央光学区域から周辺区域への連続した移行が確実になる。
【0020】
本明細書で使用される「眼球環境」は、眼球液(たとえば涙液)および眼球組織(たとえば角膜)を言い、これらは視野矯正、薬剤送達、傷の治癒、目の色の変更、または他の眼科的な適用のために使用されるコンタクトレンズと密接に接触することになる。
【0021】
「ヒドロゲル」は、完全に水和されたとき、少なくとも10重量%の水を吸収することのできる重合体材料を言う。一般的に、ヒドロゲル材料は、さらなるモノマーおよび/またはマクロマーの存在下または非存在下で、少なくとも1種の親水性モノマーの重合または共重合によって得られる。
【0022】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたは少なくとも1種のシリコーン含有マクロマーを含む重合性組成物の共重合によって得られたヒドロゲルを言う。
【0023】
本明細書で使用される「親水性」は、脂質より水に対してより簡単に結びつく材料またはその一部を表す。
【0024】
「レンズ形成材料」は、熱的にまたは化学線照射によって硬化(すなわち、重合および/または架橋)し、架橋ポリマーを得ることができる重合性組成物(または配合物)を言う。重合性組成物、材料またはレンズ形成材料の硬化または重合に関連して、本明細書で使用する「化学線によって」は、硬化(たとえば、架橋および/または重合)が、たとえば、UV線、イオン線(たとえば、γ線あるいはX線照射)、マイクロ波照射などのような化学線照射によって行われることを意味する。熱硬化または化学線硬化方法は、当業者にはよく知られている。レンズ形成材料も当業者によく知られている。
【0025】
「プレポリマー」は、化学線によって、熱的に、あるいは化学的に硬化(たとえば架橋および/または重合)して、出発ポリマーより非常に高い分子量を有する架橋および/または重合されたポリマーを得ることができる、出発ポリマーを言う。「架橋性プレポリマー」は、化学線照射で架橋して、出発ポリマーより非常に高い分子量を有する架橋ポリマーを得ることができる、出発ポリマーを言う。
【0026】
「モノマー」は、重合することができる低分子量化合物を意味する。低分子量は、普通、700ドルトン未満の平均分子量を意味する。
【0027】
本明細書で使用する「ビニル系モノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、化学線によってまたは熱的に重合することのできる低分子量化合物を言う。低分子量は、普通、700ドルトン未満の平均分子量を意味する。
【0028】
用語「オレフィン性不飽和基」は、本明細書では、広い意味で使用し、>C=C<基を少なくとも1つ含有する任意の基を含む。例示的なエチレン性不飽和基として、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、または他のC=C含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される「親水性ビニル系モノマー」は、水溶性または少なくとも10重量%の水を吸収することのできるホモポリマーを形成しうるビニル系モノマーを言う。
【0030】
本明細書で使用される「疎水性ビニル系モノマー」は、水に不溶性で、10重量%未満の水しか吸収できないホモポリマーを形成しうるビニル系モノマーを言う。
【0031】
「マクロマー」は、更に重合/架橋反応を起こしうる官能基を含有する中〜高分子量化合物またはポリマーを言う。中および高分子量の代表的なものとは、700ドルトンを超える平均分子量を意味する。マクロマーとしては、エチレン性不飽和基を含有し、化学線によってまたは熱的に重合されうるのが好ましい。
【0032】
本明細書で使用するポリマー材料(モノマーまたはマクロマー材料も含む)の「分子量」は、他に特別に記載しない限り、または他に試験条件で指摘しない限り、数平均分子量を言う。
【0033】
「ポリマー」は、1種以上のモノマー、マクロマーおよび/またはオリゴマーを重合する/架橋することによって形成された材料を意味する。
【0034】
「光開始剤」は、光を使用してラジカル架橋および/または重合反応を開始する化学薬品を言う。適切な光開始剤として、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプおよびIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくはDarocure(登録商標)1173およびIrgacure(登録商標)2959が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「熱開始剤」は、熱エネルギーを使用してラジカル架橋および/または重合反応を開始する化学薬品を言う。適切な熱開始剤の例として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。熱開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好ましい。
【0036】
レンズに関連する「視覚的着色」は、使用者が、レンズ収納器、消毒または洗浄容器内の透明溶液中にレンズを簡単に置けるように、レンズを染色(または着色)することを意味する。染料および/または顔料が、レンズの視覚的着色において使用できることは、当分野でよく知られている。
【0037】
「染料」は、溶剤に可溶で、色を着けるために使用される物質を意味する。染料は、代表的には、半透明であり吸着性であるが、光を散乱しない。本発明では、任意の適切な生物適合性のある染料を使用することができる。
【0038】
「顔料」は、それには溶けない液体中に懸濁する粉末状の物質を意味する。顔料としては、蛍光性顔料、リン光性顔料、真珠光沢の顔料、または従来の顔料であってもよい。任意の適切な顔料を使用してもよいが、現状では、顔料は、耐熱性で、非毒性で、水溶液に不溶性であるのが好ましい。
【0039】
本明細書で使用される用語「流体」は、液体のように、流れることができる材料を示す。
【0040】
本明細書で使用される「表面改質」は、蒸気または液体と接触させるおよび/または(1)物品の表面に皮膜を塗布する、(2)物品の表面に化学種を吸着させる、(3)物品の表面の化学基の化学的性質(たとえば、静電荷)を変える、または(4)以上とは別の態様で物品の表面特性を改質するエネルギー源の適用によって、物品が表面処理法(または表面改質法)で処理されていることを意味する。例示的な表面処理法として、エネルギーによる表面処理(たとえば、プラズマ、静電荷、放射線照射、または他のエネルギー源)、化学処理、親水性モノマーまたはマクロマーの物品の表面へのグラフト、およびポリマー電解質のレイヤーバイレイヤー(LbL)析出が挙げられるが、これらに限定されない。表面処理法の好ましいクラスは、イオン化したガスを物品の表面に適用するプラズマ法とLbLコーティング法である。
【0041】
プラズマガスおよび加工条件は、米国特許第4,312,575号および第4,632,844号、および米国公開特許第2002/0025389号に更に詳しく記載されている。プラズマガスは、低級アルカン類および窒素、酸素および不活性ガスの混合物が好ましい。
【0042】
本明細書で使用される「LbLコーティング」は、物品、好ましくは医療機器に共有結合で結合していないコーティングを言い、物品上にポリイオン化した(または荷電した)および/または荷電していない材料をレイヤーバイレイヤー(「LbL」)析出させて得られるものである。LbLコーティングは、1層またはそれ以上の層、好ましくは1層またはそれ以上の複層で構成することができる。
【0043】
用語「複層」は、本明細書では広い意味で使用され、特別の順番はないが、第一のポリマー材料(または荷電した材料)の1層と第一のポリマー材料(または荷電した材料)の電荷と反対の電荷を有する第二のポリマー材料(または荷電した材料)とを交互に適用することによって、医療機器上に形成されたコーティング構造、または特に順番はないが、第一の荷電したポリマー材料の1層と荷電していないポリマー材料または第二の荷電したポリマー材料の1層とを交互に適用することによって、医療機器上に形成されたコーティング構造を含むものである。(先に記載した)第一および第二のコーティング材料は、複層中で互いに絡み合ってもよいと理解すべきである。
【0044】
眼用装具上のLbLコーティングの形成は種々の方法で達成させてよく、たとえば、米国特許第6,451,871号および係属中の米国特許出願(出願公開番号第2001−0045676号、第2001−0048975号、第2004−0067365号)に記載の方法がある。コーティング方法の1実施態様には、単独ディップコーティングおよびディップリンス工程が含まれる。別のコーティング方法の実施態様として、単独スプレーコーティングおよびスプレーリンス工程が含まれる。しかし、数多くの選択肢として、スプレーおよびディップコーティングおよびリンス工程の種々の組合せが、当業者によって設計されてもよい。
【0045】
本明細書で使用される「抗菌剤」は、当分野で公知の用語である微生物の成長を減少する、排除するあるいは阻止することができる化学薬品を言う。
【0046】
「抗菌金属」は、そのイオンが抗菌効果を持ち、生物適合性のある金属を意味する。好ましい抗菌金属としては、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、BiおよびZnが挙げられ、Agが最も好ましい。
【0047】
「抗菌金属含有ナノ粒子」は、径が1マイクロメーター未満で、1またはそれ以上の酸化状態において少なくとも1個の抗菌金属を含有する粒子を言う。
【0048】
「抗菌金属ナノ粒子」は、本質的に抗菌金属から製造され、1マイクロメーター未満の径を持つ粒子を言う。抗菌金属ナノ粒子中の抗菌金属は、1またはそれ以上の酸化状態において存在することができる。たとえば、銀含有ナノ粒子は、Ag、Ag1+およびAg2+のように、1またはそれ以上の酸化状態で銀を含有することができる。
【0049】
「安定化抗菌金属ナノ粒子」は、その製造の間、安定剤によって安定化されている抗菌金属ナノ粒子を言う。安定化抗菌金属ナノ粒子は、プラスに帯電していても、マイナスに帯電していても、あるいは電気的に中性であってもよく、それは、ナノ粒子を製造する溶液中に存在し、あるいは得られるナノ粒子を安定化することのできる材料(あるいは、いわゆる安定剤)に大きく依存する。安定剤は、任意の公知の適切なものでよい。例示的な安定剤として、プラスに帯電したポリマー材料、マイナスに帯電したポリマー材料、ポリマー、界面活性剤、サリチル酸、アルコール類、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用されるレンズの「酸素透過率」は、酸素が特定の眼用レンズを通過する時の速度である。酸素透過率Dk/tは、従来から、単位barrer/mmで表され、tは、材料の測定すべき範囲の平均厚[mmの単位]であり、「barrer/mm」は以下のように規定される。
【0051】
[(cm酸素)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9
【0052】
レンズ材料の固有「酸素透過度」Dkは、レンズ厚に依存しない。固有酸素透過度は、酸素が材料を通り抜ける時の速度である。酸素透過度は、従来から、単位barrerで表され、「barrer」は以下に規定される。
【0053】
[(cm酸素)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10
【0054】
これらは、当分野で普通に使用されている単位である。したがって、当分野での使用に一致させるために、単位「barrer」は、前記のような意味を持つものである。たとえば、Dk(「酸素透過度barrer」)が90barrerで厚みが90ミクロン(0.090mm)のレンズは、100barrer/mm(酸素透過率barrer/mm)のDk/tを持つことになる。
【0055】
レンズを通る「イオン透過率」は、イオノフラックス拡散係数およびイオノトンイオン透過係数の両方に相関する。
【0056】
イオノフラックス拡散係数Dは、以下のように、フィックの法則を適用することによって決定される。
【0057】
D=−n’/(A×dc/dx)
【0058】
(式中、
n’=イオン輸送の速度[mol/分]
A=露出しているレンズの面積[mm
D=イオノフラックス拡散係数[mm/分]
dc=濃度差[mol/L]
dx=レンズの厚さ[mm])
【0059】
次に、イオノトンイオン透過係数Pは、以下の式に従って決定される。
【0060】
ln(1−2C(t)/C(0))=−2APt/Vd
【0061】
(式中、
C(t)=受容細胞でのナトリウムイオンの時間tでの濃度
C(0)=供与細胞でのナトリウムイオンの初期濃度
A=膜の面積、すなわち細胞に露出しているレンズ面積
V=細胞コンパートメントの容積(3.0ml)
d=露出している範囲のレンズの平均厚さ
P=透過係数)
【0062】
イオノフラックス拡散係数Dは、約1.5×10−6mm/分を超えるのが好ましく、約2.6×10−6mm/分を超えるのが更に好ましく、約6.4×10−6mm/分を超えるのが最も好ましい。
【0063】
イオノトンイオン透過係数Pは、約0.2×10−6cm/秒を超えるのが好ましく、約0.3×10−6cm/秒を超えるのが更に好ましく、約0.4×10−6cm/秒を超えるのが最も好ましい。
【0064】
レンズの眼球上の動きには、良好に涙を交換し、最終的に健全な角膜が良好に保たれることが保証されることが要求されることは公知である。イオン透過率は、水の透過率に正比例すると考えられるので、イオン透過率は眼球上の動きの予測因子の1つである。
【0065】
水透過度は、本明細書で開示するようなオキシパームポリマーを含有する長時間着用レンズにとって、非常に重要な特徴であるとの理論をNicolsonら(米国特許第5,760,100号)は立てている。高酸素透過度で低水透過度のシロキサン含有材料は、眼球に強く付着する傾向があり、そうすることで、眼球上の動きを止めている。水をレンズに通す能力によって、シロキサン含有ポリマーレンズは眼球上で動くことができ、その動きはレンズから押し出された水が発する力によって起こると考えられる。また、レンズの水透過率は、一度圧力が取り除かれると、レンズの含水率を補充するのに重要であるとも考えられる。
【0066】
また、Nicolsonら(米国特許第5,760,100号)も、レンズの内面から外面へのあるいはその反対方向のレンズを通るイオン透過率がある閾値を超えると、レンズは眼球上で動き、閾値を下回るとレンズは眼球に付着することを見出した。レンズを通るイオン透過率は、イオノフラックス透過係数およびイオノトンイオン透過係数の両方に相関関係がある。
【0067】
レンズの水透過率は、米国特許第5,849,811号にNicolsonらによって記載されたヒドロゲル技術によって測定してもよい。この技術は、妥当な眼球上での動きの可能性を測定するために使用してもよい。
【0068】
本明細書で使用される用語「重合性組成物中のオキシパーム成分」は、モノマー、オリゴマー、マクロマーなど、およびこれらの混合物であって、類似のあるいは異なる重合可能な材料と重合して比較的速い酸素拡散速度を示すポリマーを形成することができるものを言う。
【0069】
室温(または周囲温度)は、22±6℃と規定する。
【0070】
材料に関する用語「旋盤加工性」は、代表的なレンズ旋盤加工機器を用いて、材料が光学特性を有するコンタクトレンズに機械加工される可能性を言う。材料の旋盤加工性の1つの判断基準は、その主要ガラス転移温度(Tg)である。単相ポリマー材料において、Tgが室温(すなわち旋盤加工温度)未満の場合は、室温旋盤には柔らかすぎると考えられ、一方、室温(すなわち旋盤加工温度)を超える、好ましくは室温より少なくとも3℃上のTgを持つ材料は、室温での旋盤加工に充分な硬さを有する。微視的に多相ポリマー材料は、明らかに単独のTgまたは複数のTgを示すかもしれない。微視的に多相ポリマー材料であっても、その材料の主要相に関連するTgが室温以上である限り、室温で旋盤加工してコンタクトレンズにすることができる。「主要相」は、本明細書では、材料の全体的な(嵩あるいは加工)硬度を決定する多相材料中の相と定義する。
【0071】
用語「ロッド」は、チューブ中でレンズ形成材料から注型成形された円柱であって、長さ約1cm以上のものを言う。
【0072】
用語「ボタン」は、型内でレンズ形成材料から注型成形された短い円柱(長さが約1cm以下)を言う。本発明によれば、ボタンの相対する面は、平らでも曲面状であってもよい。たとえば、ボタンの2つの相対する面の1つが凹曲面(たとえば半球形)であり、他の面が凸曲面(たとえば半球形)である。
【0073】
用語「ボンネット」は、型内でレンズ形成材料から注型成形またはスピンキャスティングによって得れらたポリマーボタンを言い、ボンネットの2つの相対する面の少なくとも1つが、コンタクトレンズの前面と後面の1つに対応する光学的に仕上げられた面を持つ。面または面の区域に関する用語「光学的に仕上げられた」は、表面または区域を、たとえば、研削または旋盤などの更なる加工に供する必要がない、コンタクトレンズの面またはコンタクトレンズの面の区域を言う。また、擬似ボンネットからレンズを加工することもできる。擬似ボンネットは、コンタクトレンズを得るために、材料の両面を旋盤加工する必要のある部分である。このタイプの部分は材料が失われるのを最小限にしながら、レンズの前面および後面の設計に適応が可能である。
【0074】
本発明は、一般的に、シリコーンヒドロゲル材料を室温で旋盤加工してコンタクトレンズを製造する方法に関する。本発明は、例えば酸素透過度が高く(厚さ100ミクロンのサンプルを試験したとき、実施例に記載の方法による見かけの(直接測定)酸素透過度が40barrer以上)、かつ比較的大量のオキシパーム成分を含有する重合性組成物で作製したシリコーンヒドロゲルを含むシリコーンヒドロゲルを、室温で任意の旋盤加工装置を使用して旋盤加工することができることを示す。一般に、シリコーンヒドロゲル材料、特に高酸素透過度のシリコーンヒドロゲル材料は、柔らかく粘着性があるので室温で旋盤加工ができず、低温(室温より低い温度)で旋盤加工しなければならないと考えられていた。
【0075】
一態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法を提供する。本発明の方法は、高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含有するレンズ形成流体材料を得る工程;1以上のチューブにレンズ形成材料を充填する工程;チューブ中のレンズ形成材料をゆっくり硬化させて、高酸素透過度を有するロッド形ポリマーを形成する工程;ポリマーをチューブから引剥がす工程;ポリマーを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ポリマーの室温旋盤加工性を増加させる工程;および、ポリマーを室温で旋盤加工して、少なくとも45barrer/mm、好ましくは60、より好ましくは70barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するコンタクトレンズにする工程、を含む。
【0076】
本発明によれば、レンズ形成流体材料は、60℃未満の温度で、溶液、溶剤を含まない液体、または溶融物であってもよい。
【0077】
本発明によれば、重合性流体材料は、ソフトコンタクトレンズを製造するいかなる配合物であってもよい。例示的な配合物として、lotrafilconA、lotrafilconB、etafilconA、genfilconA、lenefilconA、polymacon、acquafilconAおよびbalafilconが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
レンズ形成流体材料が溶液の場合、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマー、少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーおよび他の所望の成分全てを当業者に公知の任意の適切な溶剤に溶解することによって製造することができる。適切な溶剤の例として、低級アルコール類、たとえばエタノールやメタノール、のようなアルコール類、エチルアセテート、ブチルアセテートのようなエステル類、さらに、ジメチルフォルムアミドのようなカルボン酸アミド、ジメチルスルフォキシドまたはメチルエチルケトンなどの双極性非プロトン溶剤、たとえばアセトンまたはシクロヘキサノンのようなケトン類、トルエンのような炭化水素、たとえばTHF、ジメトキシエタンまたはジオキサンのようなエーテル類、たとえばトリクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素、また適切な溶剤との混合物、たとえば水/エタノールまたは水/メタノール混合物のような水とアルコールとの混合物が挙げられる。
【0079】
本発明によれば、ソフトコンタクトレンズを製造するために、任意の公知の適切なシリコーン含有マクロマーを使用することができる。特に好ましいシリコーン含有マクロマーは、米国特許第5,760,100号に記載のマクロマーA、マクロマーB、マクロマーCおよびマクロマーDからなる群から選択される。
【0080】
任意の公知の適切なシリコーン含有ビニル系モノマーを、ソフトコンタクトレンズを製造するために使用することができる。シリコーン含有モノマーの例として、メタクリルオキシアルキルシロキサン類、3−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、モノメタクリレート化ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキサイド、ビニル末端ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリプロピレンオキサイド、メタクリレートまたはアクリレート末端ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキサイド、メタクリレートまたはアクリレート末端ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリプロピレンオキサイド、モノアクリレート化ポリジメチルシロキサン、メルカプト末端ポリジメチルシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミドおよびトリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリレート(TRIS)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいシリコーン含有ビニル系モノマーは、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであり、CAS No.17096−07−0で表されるTRISである。多官能性モノマーおよびマクロマー(2個以上のエチレン性不飽和単位を含有するもの)も、架橋剤として作用することができる。用語「TRIS」は、3−メタクリロキシプロピルトリス−(トリメチルシロキシ)シランのダイマーも含む。多種の分子量のモノメタクリレート化またはモノアクリレート化ポリジメチルシロキサンが使用できる。
【0081】
殆ど全ての親水性ビニル系モノマーを本発明の流体組成物で使用することができる。適切な親水性モノマーとして、これは網羅的なリストではないが、ヒドロキシル−置換低級アルキル(C〜C)アクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、(低級アリル)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、エトキシル化アクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシル−置換(低級アルキル)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ヒドロキシル−置換低級アルキルビニルエーテル類、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル4,4’−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−および4−ビニルピリジン、合計で3〜5個の炭素原子を持つビニル性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)−(ここで、用語「アミノ」は第四級アンモニウムも含む)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)およびジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリレートおよびメタクリレート、アリルアルコールなどがある。
【0082】
この中で好ましい親水性ビニル系モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0083】
本発明によれば、重合性流体組成物は、更に、種々の成分、たとえば、架橋剤、疎水性ビニル系モノマー、開始剤、UV吸収剤、阻害剤、充填剤、視覚的着色剤、抗菌剤などを含むことができる。
【0084】
架橋剤は、構造完全性および機械的強度を改良するために使用してもよい。架橋剤の例として、アリル(メタ)アクリレート、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジ−またはトリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルフタレートまたはジアリルフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である。
【0085】
使用される架橋剤の量は、全ポリマーに対する重量率として表され、0.05〜20%の範囲、特に、0.1〜10%の範囲、好ましくは0.1〜2%の範囲である。もし架橋剤がポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルシロキサンのブロックコポリマーである場合は、そのような材料は、酸素透過度を向上させるために存在するので、配合物中の重量%は、30〜50%の範囲でもよい。
【0086】
たとえば、重合技術において使用がよく知られている材料から選択される開始剤を、重合反応速度を助長および/または速めるために、レンズ形成流体材料中に含めてもよい。
【0087】
適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびDarocurおよびIrgacurタイプであり、好ましくは、Darocur1173(登録商標)およびDarocur2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキサイド;およびビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。たとえばマクロマーに組み込むことのできる、あるいは特定のモノマーとして使用することのできる反応性光開始剤もまた適切なものである。反応性光開始剤の例として、欧州特許第632329号記載のものが挙げられる。次いで、重合は、たとえば、光、特に適切な波長のUV光などの化学線の放射によっていつでも起こることができる。もし適正なら適切な感光剤を添加し、スペクトル要件は、それに従って調整することができる。
【0088】
適切な熱開始剤の例として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0089】
本発明によれば、チューブは、プラスチック、ガラスまたは石英であってもよい。製造において使用されるチューブの直径は、製造すべきコンタクトレンズの直径より大きい。
【0090】
本発明によれば、材料またはコンタクトレンズに関する高酸素透過度は、厚さが100ミクロンのサンプル(フィルムまたはレンズ)に関し、実施例に記載のクローンメトリック法による見かけの酸素透過度が少なくとも40barrer以上であることを特徴とする。
【0091】
本発明によれば、レンズ形成材料を硬化させてロッドを形成する工程は、化学線で(たとえばUV照射によって)または熱的に行うことができる。この工程は、多段階の熱的方法(すなわち、少なくとも2つの異なる温度、好ましくは少なくとも3つの異なる温度、さらに好ましくは少なくとも4つ異なる温度で)で硬化することによって達成するのが好ましい。最も低い硬化温度は28℃〜40℃が好ましく、最も高い硬化温度は80℃〜120℃が好ましい。各硬化温度で、レンズ形成材料を少なくとも4時間硬化するのが好ましい。硬化温度は1つの温度から別の硬化温度にゆっくりと、好ましくは約60分かけて上げる。
【0092】
硬化工程をUV照射によって行う場合、UV照射の強度は、最初低いレベルに保ち、次いで徐々に上昇するのが好ましい。
【0093】
場合によっては、ロッドを、チューブから引き剥がす前に冷却することができる。
【0094】
後硬化および/または乾燥工程は、高温たとえば約75℃以上の温度で行うのが好ましい。後硬化および/または乾燥工程があることによって、ロッド中に残存する、重合していないモノマーおよび/またはマクロマーが更に重合し、溶剤を取り除くこともできると考えられる。このようにして、得られたポリマーの硬度は増大し、得られるポリマーの室温旋盤加工性が達成される。溶剤を含有する配合物に関し、ロッドを、後硬化および/または乾燥工程前にボタンに切断することが好ましい。このようなさらなる工程で、得られるポリマーの後硬化および特に乾燥を促進することができる。得られるポリマーの乾燥は、高温減圧下で行うことによってさらに促進される。ガラスチューブ中で、溶剤のない配合物は好ましくは後硬化される。
【0095】
得られるポリマーの後硬化は、高温(すなわち、ロッドを形成する硬化工程での硬化温度を超える温度)でのみ活性化する高温開始剤をレンズ形成流体材料中に加えることによって促進することができる。レンズ形成流体材料中に高温開始剤を加えることによって、硬化工程の後に残った残留重合性成分のいかなるものも、後硬化および/または乾燥工程中に、完全に重合させることができ、旋盤加工すべき、得られるシリコーンヒドロゲル材料の硬度を増加させる。更に、高温開始剤は、後硬化および/または乾燥工程の間、架橋密度および硬度の増加するように機能する。適切な高温開始剤の例示として、DupontからのVAZO−88、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドおよびt−ブチルパーアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
公知の適切な旋盤加工装置を本発明で使用することができる。本発明では、コンピューターにより制御できる(または数値制御)旋盤が好ましい。本発明では、45°ピエゾカッターを有する数値制御2軸旋盤または米国特許第6,122,999号明細書中にDurazoおよびMorganによって開示されている旋盤装置がより好ましく使用される。例示的な好ましい旋盤装置として、Precitech社の数値制御旋盤、たとえば、Variformピエゾセラミック高速工具サーボアッタチメントの付いたOptoform超精密旋盤(モデル30、40、50および80)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
好ましい実施態様において、旋盤加工プロセスは、約50%未満、好ましくは約40%未満、更に好ましくは約30%未満、更により好ましくは約25%未満の相対湿度で行われる。
【0098】
別の好ましい実施形態では、旋盤加工プロセスの間、約10℃未満、好ましくは約0℃未満、更に好ましくは約−20℃未満、更により好ましくは約−40℃未満の温度の冷圧縮空気を使用して、削りカスを吹き飛ばす。冷気で削りカスを吹き飛ばすことによって、明瞭な切断が得られる。
【0099】
別の態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を室温で直接旋盤加工することによって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、ポリマーボタンの注型成形用型を準備する工程;型内に高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含有するレンズ形成流体材料を充填する工程;レンズ形成材料を型内で硬化させて、高酸素透過度を有するボタン形ポリマーを形成する工程;ボタンを型から取り出し、ボタンを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボタンの室温旋盤加工性を増加させる工程;およびボタンを室温で旋盤加工し、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとする工程、を含む。
【0100】
当業者には、ポリマーボタンを注型成形するための型をどのようにして製造するかは公知である。好ましくは、2つの相対する面のそれぞれがカーブしているモールドボタンを注型するために、型を使用することができる。たとえば、ボタンの2つの相対する面の1つを凹状面(たとえば半球状)とし、他方を凸状面(たとえば半球状)とすることができる。2つの相対する曲面を持つ注型成形ボタンの利点は、シリコーンヒドロゲル材料を切り離すことが殆どなく、したがって無駄が殆どないことである。ボタンの2曲面は、同一のまたは異なる湾曲を持つことができる。2曲面は半球状であるのが好ましい。
【0101】
当業者に周知のスピンキャスティングを使用して、ポリマーボタンを製造することができることを理解すべきである。スピンキャスティングによるボタンの製造では、レンズ形成材料によって濡らされた光学凹状面を有する型空洞内にサンプルを置き、次いで、回転している重合カラムの入り口端に断続的に一塊づつ強制的に供給する、なおこのカラムには望ましくは入り口端の近くにある「コンディショニング」区域と出口端に向かう重合反応区域がある。型は、前処理した光学面を特徴としており、それによってその親水性または濡れ性が当分野で周知の方法で増強されることが好ましい。チューブと型を確実に密着させ、それらの回転速度を調整することによって、レンズ形成材料を径方向外側に移動せしめて所定のレンズ形状にするおよび/または維持する。これにチューブ内で重合条件を加えると、所望の形状のコンタクトレンズが形成される、たとえば、300r.p.m.以下から600r.p.m.以上の回転速度を都合よく使用することができる。もちろん、操業において使用する正確な回転速度は、当業者にはよく知られている。考慮すべき要因として、使用されるレンズ形成材料を含む成分のタイプおよび濃度、選択した操業条件、開始剤のタイプおよび濃度、および/または重合を開始するエネルギー源の強度およびタイプ、および既に述べた当業者には簡単にわかる要因などが挙げられる。
【0102】
スピンキャスティングで通常使用される重合カラム(チューブ)は、化学線照射がカラムの重合区域に伝播するのを妨げない材料から製造しなければならないことは、当業者によく知られている。化学線として長波長U.V.光を使用する場合、PYREXのようなガラスは、重合カラムとして適切な材料である。先に挙げた、他のタイプの化学線の照射を使用する場合、重合カラムは、スチール、ニッケル、青銅、種々の合金などの種々のタイプの金属から製作することができる。
【0103】
上記したレンズ形成流体材料、旋盤装置、後硬化条件、乾燥条件、および旋盤加工条件は、いかなるものであっても本発明のこの態様で使用することができる。ボタンを製造する型中のレンズ形成材料の硬化は、化学線照射または好ましくは熱的手段によって行うことができる。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法であって、ボンネットの注型成形用の型半が光学特性を持つ成形面を有し、成形面がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの後面および前面の1つを画定するものである型を準備する工程;型内に高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含むレンズ形成流体材料を充填する工程;レンズ形成材料を型内で硬化させて、コンタクトレンズの前面および後面の1つに対応する光学的に仕上げられた面を有し、高い酸素透過度を有するボンネット形のポリマーを形成する工程;ボンネットを型から取り出し、ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;およびボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の面を室温で直接旋盤加工することによって前面を形成し、それによりコンタクトレンズを得る工程、を含み、得られたコンタクトレンズが、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するものである方法を提供する。
【0105】
シリコーンヒドロゲルレンズ用のレンズ形成材料を型内で大気圧下に重合すると、得られたレンズの見かけ(測定)イオン透過率が減少する面を形成すると理解されている。得られたボンネットの両面を旋盤加工してスキン(イオン透過率に有害なポリマー材料の層)を取り除くことによってイオン透過率を向上させることができる。得られたボンネットまたは得られたレンズのスキンを取り除くことによって、イオン透過率を向上しつつ、脱酸素操作に伴う製造コストを低減することができる。
【0106】
あるいは、使用の前に窒素またはアルゴン中でボンネットモールドを貯蔵し、レンズ配合物をアルゴンまたは窒素中で硬化させることによって、イオン透過率を向上させることができる。使用前の型の処理は、より高いイオン透過率を得る結果になることが期待される。たとえば、窒素またはアルゴンを含有するガスチャンバー中に、使用前のある期間型を貯蔵することができる。これによって、吸収された酸素を、型の表面から取り除くあるいは部分的に取り除くことができる。型表面の酸素の存在は、重合の抑制およびスキン生成を起こすことが知られている。さらに、窒素またはアルゴン中でレンズ配合物を硬化させて、ボンネット上のスキン生成を最小限にすることができる。
【0107】
上記のスピンキャスティングは、コンタクトレンズの前面に対応する、光学的に仕上げられた面を有するボンネットを製造するために使用することもできる。
【0108】
上記のレンズ形成流体材料、硬化方法および条件、旋盤装置、後硬化条件、乾燥条件、旋盤加工条件はいかなるものであっても本発明のこの態様において使用することができる。
【0109】
好ましい実施態様では、第一の型半の光学特性を有する第一の成形面が、製造されるべきコンタクトレンズの後面を画定する。ボンネットから旋盤加工をする必要があるのはレンズの片側(前面)およびレンズ端だけである。
【0110】
ボンネットの光学的に仕上げられた面の反対側の面は、平坦でも曲面でもよいが、好ましくは凸型半球状面であることが理解される。
【0111】
更に別の態様では、本発明は、前面と反対の後面とを有し、前面には中央光学区域および中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域があるコンタクトレンズの製造方法であって、ポリマーボンネットの注型成形用の型であって、型の第一の型半には光学特性をもつ第一の成形面があり、また第二の型半には第二成形面があり、第二の成形面には光学特性のある実質的に環状の周辺成形区域があり、第一の成形面によって、コンタクトレンズの後面が画定され、周辺成形区域がコンタクトレンズの前面に1以上の非光学区域を画定するものである型を準備する工程;型内にレンズ形成流体材料を充填する工程;型内のレンズ形成流体材料を硬化させて、光学的に仕上げられコンタクトレンズの後面に対応する1個の面、および光学的に仕上げられコンタクトレンズの中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域に対応する区域があるボンネット形のポリマーを形成し;ボンネットを型から取り出す工程;ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;および中央光学区域および場合により、中央光学区域と非光学区域とを橋渡しする周辺ブレンド区域を形成するために、ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の、光学的に仕上げられた区域によって取り囲まれた表面領域を室温で直接旋盤加工し、それによってコンタクトレンズを得る工程、を含む方法を提供する。
【0112】
本発明のこの方法の長所は、全後面および目的とする幾何学形状を直接成形しながら、旋盤加工を、全てのコンタクトレンズおよびコンタクトレンズの前面の光学区域の外側に共通している、コンタクトレンズの前面の任意の所望の光学区域の幾何学形状を画定する仕上げ切断して減少することができることである。このように、特注またはオーダーメイド(MTO)コンタクトレンズの製造に伴う時間、コストおよび材料の無駄を最小限にすることができる。特注またはオーダーメイド(MTO)コンタクトレンズは、いずれかの患者の処方箋にも正確に適合して製造することがでる。
【0113】
レンズ形成流体材料は、本発明のこの態様において、いずれも使用することができる。例示的な好ましいレンズ形成材料として、非シリコーンヒドロゲル材料の成形材料およびシリコーンヒドロゲル材料の成形材料が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、レンズ形成流体材料として、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマー、および少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーが挙げられる。更に好ましくは、レンズ形成流体材料は、高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成することができ、かつ少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマー、および少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含有する。
【0114】
本発明のこの態様の好ましい実施態様では、製造されたコンタクトレンズは、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率と、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率とを有することを特徴とするシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。
【0115】
レンズ形成流体材料、旋盤装置、後硬化条件、乾燥条件、および旋盤加工条件は、いかなるものであっても本発明のこの態様で使用することができる。
【0116】
好ましい実施形態では、周辺成形区域によって、コンタクトレンズの前面上の1以上の非光学区域が画定され、この1以上の非光学区域が、向きの安定化および/または平行移動形体を含む。いずれかの適切な向きの安定化および平行移動形体を使用することができる。種々の向き安定化が従来技術に開示されており、例えば、種々のプリズムバラスト設計、プリズム厚プロフィルの変化がレンズの光学区域を取り囲む非光学区域内に限定されているペリバラスト設計、眼蓋と相互作用することによってレンズの向きを定める隆起形体、トップスラブオフ区域とボトムスラブオフ区域を有してレンズの向きを維持するダブルスラブオフ形体、米国特許公開公報第2002/0071094号および第2002/0024631号に開示されている動的安定化形体を含むが、これらに限定されない。好ましい例として、2004年5月19日に出願した同時係属中の米国特許出願第10/848,791号および米国特許第6,467,903号に開示された、向き安定化および平行移動形体が挙げられる。
【0117】
同時係属中の米国特許出願第10/848,791号は、前面と反対側の後面とがあり、垂直経線と、水平経線と、中央光学区域と、周辺区域と、端縁区域と、中央光学区域から周辺区域へ外側に延び、中央光学区域から周辺区域への連続した平行移動を提供する第一のブレンド区域と、周辺区域から端縁区域へ外側に延び、周辺区域から端縁区域への連続した平行移動を提供する第二のブレンド区域と、を前面に含むコンタクトレンズを画定する。前面は、垂直経線面に関して鏡像対称であり、少なくとも1次導関数で連続している。コンタクトレンズは周辺区域と第二のブレンド区域とのレンズ厚さを変えることによりレンズの下部分を重くし、その結果コンタクトレンズを眼の上で平衡位置に来るようにし、またコンタクトレンズは、垂直経線の下部分に対して約35°以上の2本の扇形境界半経線と、この2本の扇形境界半経線の間に含まれる端縁部分とによって囲われる扇形部分におけるレンズ厚さを特徴とするレンズ厚さプロフィルを有し、それは周辺区域の内側境界線から各半経線に沿って最高レンズ厚さに達するまで徐々に増加し、次いで減少する。
【0118】
好ましくはレンズ厚のプロフィルは、(1)コンタクトレンズの周辺区域のレンズ厚が、垂直経線の上部分に沿って、垂直経線の上部分が周辺区域の外側境界線および内側境界線と交わる2つの点での両レンズ厚値の差が50%未満、好ましくは30%未満、さらに好ましくは15%未満であるように、実質的に一定であるかまたは周辺区域の外側境界線から周辺区域の内側境界線に向けて徐々に増加し、および/または(2)コンタクトレンズの周辺区域のレンズ厚が、垂直経線の下部分に沿って、垂直経線の下部分が周辺区域の内側境界線および外側境界線と交わる2つの点での両レンズ厚値の差が約15〜約65%であるように、周辺区域の内側境界線から周辺区域の外側境界線に向けて徐々に増加することをさらに特徴とする。
【0119】
コンタクトレンズの前面に関する「垂直経線」は、レンズを眼の上で所定の向きに維持したとき、前面の上端から幾何学中心を通り下端に垂直方向に走る仮想線を言う。コンタクトレンズの前面に関する「水平経線」は、レンズを眼の上で所定の向きに維持したとき、前面の左側から中心を通り右側に水平に走る仮想線を言う。水平および垂直経線は、互いに直交する。
【0120】
コンタクトレンズの前面の中央光学区域以外の区域に関する「外側境界線」は、前面の幾何学中心からさらに離れた区域の2本の周辺境界線の1本を言う。
【0121】
コンタクトレンズの前面の中央光学区域以外の区域に関する「内側境界線」は、前面の幾何学中心近傍区域の2本の周辺境界線の1本を言う。
【0122】
「半経線」は、コンタクトレンズの前面の幾何学中心からコンタクトレンズの端縁へ放射状に走る仮想線を言う。
【0123】
「垂直経線の上部分」は、レンズを眼の上で所定の向きに維持したとき、コンタクトレンズの前面の幾何学中心より上の垂直経線の半分を言う。
【0124】
「垂直経線の下部分」は、レンズを眼の上で所定の向きに維持したとき、コンタクトレンズの前面の幾何学中心より下の垂直経線の半分を言う。
【0125】
2以上の区域に関する「連続した移行」は、これらの区域が、少なくとも1次導関数で、好ましくは2次導関数で連続していることを意味する。
【0126】
「垂直経線面」は、コンタクトレンズの光軸とコンタクトレンズの前面上の垂直経線を通って切断する面を言う。
【0127】
コンタクトレンズの前面に関する「扇形」は、垂直経線の下部分に関して同じ角度の2本の扇形境界半経線と、2本の扇形境界半経線の間に含まれる端縁部分とによって境界が定められた領域を意味する。2本の扇形境界半経線の間に含まれる端縁部分は、2本の半経線の1本と垂直経線の下部分との間の第一の端縁部分および別の半経線と垂直経線の下部分との間の第二の端縁部分を合わせたものである。
【0128】
2本の「扇形境界半経線」は、前面を2つの扇形にわける2本の半経線を言う。
【0129】
「レンズ厚」は、コンタクトレンズの前面上の点から後面までの最も短い距離を言う。
【0130】
「2つのレンズ厚値の差の百分率」は、先ず大きな値から小さな値を引き、次いで得られた差を大きな値で割って、最後に100を掛けて得られる。
【0131】
「ブレンド区域」は、2つの区域の間に位置する非光学区域であって、これらの2つの区域に連続した平行移動を提供する区域を言う。
【0132】
第一のブレンド区域の存在により、中央光学区域と周辺区域とを別々に独立して設計することができ、中央光学区域から周辺区域への平行移動が連続することを確実にする。中央光学区域と周辺区域との間の第一のブレンド区域によって、製造されたコンタクトレンズには2つの区域の間の結合部での変曲点および/または鋭い境界が取り除かれ、それにより装着者の快適性が向上する。さらに、中央光学区域と周辺区域との間の第一のブレンド区域により、レンズの光学的特徴と機械的安定化特徴が切り離なされ、その結果プリズムが眼の中に入るのが防止される。第一のブレンド区域には、周辺区域、第一のブレンド区域および中央光学区域が相互に接することを確実にする面がある。ブレンド区域は、数学的関数、好ましくはスプラインに基づく数学的関数によって記述される面でも可能であり、または異なる接線面パッチで作製することもできる。
【0133】
「接線面パッチ」は、1次導関数、好ましくは2次導関数で互いに連続する湾曲面の組み合わせを言う。
【0134】
周辺区域は、互いに継ぎ合わさって連続面を形成する1以上の周辺のバンドまたは範囲で構成することができる。コンタクトレンズが、周辺区域および第二のブレンド区域で、上記のレンズ厚プロフィルを有する場合、そのようなコンタクトレンズは眼の上で所定の向きに効果的に維持できることが分かっている。従来のレンズバラストと同様に、本発明の向き形体が、下部分でレンズを重くすることにより作用し、レンズは眼の上で平衡位置に来るようにする。そのような向き形体で前面の光学区域を独立に設計することができ、最適の視覚性能を提供する。さらに、周辺区域は、中央光学区域の下に周辺区域から外側に延びるように隆起形体を配置して、使用者が装着した際に使用者の下眼瞼との係合を可能にし、それによりコンタクトレンズに関して垂直の平行移動支持を提供する。隆起形体は、好ましくは、米国特許出願公開第20040017542号に記載されているように、上部境界線と、下部傾斜境界線と、前面から外側に延びる緯度隆起と、下部傾斜境界線から下方に延びて傾斜隆起区域及び下眼瞼が傾斜隆起区域に当たる場所に依存する下眼瞼の間の相互作用の程度が変化する湾曲または傾斜を有する傾斜部と、を含む傾斜付き隆起である。好ましくは、傾斜付き隆起は、平坦な下部傾斜端縁および平坦な緯度隆起、または緯度隆起の二つの端に形成される2つの隆起を有し、隆起の高さは両端の方が中央より高い。
【0135】
また、レンズ厚は、垂直経線の上部分に沿った周辺区域の中心90%において、約110〜約150マイクロメーターの間の範囲の値を有することができる。正確な値は、材料特性およびベースカーブ(後面)パラメーターに依存する。周辺区域がさらに傾斜隆起を有する場合、隆起形体の最高レンズ厚は、約400〜約600マイクロメーターであることが好ましい。
【0136】
垂直経線の下部分が周辺区域の中央90%の内側境界線と交わる点でのレンズ厚は、約200〜約280マイクロメーターであることが好ましく、垂直経線の下部分が周辺区域の中央90%の外側境界線と交わる点でのレンズ厚は、約320〜約400マイクロメーターである。正確な値は、材料特性およびベースカーブ(後面)パラメーターに依存する。
【0137】
扇形の寸法は変化することができる。扇形は、垂直経線の下部、および2本の扇形境界半経線の間の端縁部分に対して、好ましくは角度約90°、より好ましくは約120°、さらにより好ましくは約135°の2本の扇形境界半経線によって囲まれる。好ましい実施形態において、水平経線に沿った最高レンズ厚は、好ましくは約200〜約300マイクロメーターである。扇形が、垂直経線の下部および2本の扇形境界半経線の間の端縁部分に対して、好ましくは角度約120°で2本の扇形境界半経線によって囲まれている場合、この扇形におけるレンズ厚は、各半経線に沿って徐々に増加して最高レンズ厚に達し、次いで減少するが、一方残りの他の扇形では、レンズ厚は実質的に一定、あるいはこの残りの扇形内の半経線に沿って周辺区域の外側境界から周辺区域の内側境界へ、任意の半経線が周辺区域の外側境界線および内側境界線と交わる2点での両レンズ厚値の差が15%未満であるように徐々に増加する。
【0138】
半経線に沿った最高レンズ厚部分は、扇形内の周辺区域の外側境界線より僅かに内側に、または線上に、または僅かに外側に位置するのが好ましい。半経線に沿った最高レンズ厚部分は、扇形内の周辺区域の外側境界線より僅かに外側(0.4mm未満)に位置するのが更に好ましい。
【0139】
レンズの端縁と扇形内の周辺区域の外側境界線に沿った任意の点との間の距離は、約0.6〜約2.0mmであるのが好ましい。
【0140】
本発明のコンタクトレンズの全周辺区域は、1次導関数および/または2次導関数において連続性を有するのが好ましい。そのような周辺区域は、1つ以上の数学的関数、好ましくはスプラインに基づく数学的関数によって画定される連続面であることができ、またはいくつかの異なる表面パッチで作製される。
【0141】
コンタクトレンズの前面の中央光学区域を取り囲む実質的に環状の、向き特性と平行移動形体を有する非光学区域に対応して光学的に仕上げられた区域は、ボンネットの製造に使用する型の第二の成形面によって成形されるのが望ましい。レンズブランク(ボンネット)を型に注型するとき、レンズの表面および/または区域を複製する成形面を有する型の製造方法は当業者に周知である。たとえば、数値制御旋盤付きの光学的切削工具を使用して、コンタクトレンズの前面の非光学区域の形体を取り込んだ金属製光学的工具を形成してもよい。次いで、工具を使用して型半を製造し、次いでこの型半を成形後面の型半とともに使用して、この2つの型半の間に配した適切な液体レンズ形成材料を使用するレンズブランクを形成し、次にレンズ形成材料を圧縮、硬化する。
【0142】
米国特許出願公開第2004/0017542号およびPCT出願第WO2004011990号として公開された、Ciba Visionの係属中の米国特許出願、タイトル「コンタクトレンズの製造方法」(米国特許出願第10/616,378号、2003年7月9日出願)に記載の方法によれば、型を製造するために使用される光学的工具は、Precitech社製の数値制御旋盤、例えばVariform(登録商標)またはVarimaxピエゾセラミック高速工具サーボアタッチメントを有するOptoform(登録商標)超精密旋盤(30、40、50および80型)を使用して作製するのが好ましい。
【0143】
本発明のコンタクトレンズの親水性表面は、表面改質方法を使用して得るのが好ましい。親水性表面は、眼用装具を充分水和したとき、平均接触角が85°以下、より好ましくは65°以下である表面を言う。親水性表面は、プラズマコーティングまたはLbLコーティングであるのが好ましい。
【0144】
「平均接触角」は、材料表面上の水の接触角(静滴法によって測定)を言い、少なくとも3個の別々のサンプル(すなわちコンタクトレンズ)の測定を平均することにより得られる。コンタクトレンズの平均接触角(静滴)は、ボストン、マサチュウーセッツ州のAST社製のVCA2500XE接触角測定装置を使用して測定することができる。この装置は、前進または後退接触角、または静的(静止)接触角を測定することができる。測定は、完全に水和された材料で行うのが好ましい。
【0145】
接触角は、コンタクトレンズまたは物品(たとえば、容器のくぼみ面)の表面親水性の一般的な尺度である。特に、低い接触角は、より高い親水性表面に相当する。
【0146】
他の態様では、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を室温で旋盤加工して眼内レンズ、角膜アンレー、ステント、緑内障シャントを製造する方法を提供する。この方法には、種々の実施態様、好ましい実施態様およびこれらの組合わせがあり、これらは先に記載したようにシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するためにシリコーンヒドロゲル材料を室温で直接旋盤加工する。
【0147】
これまでの開示により、当業者は本発明を実施することができる。読者が具体的な実施態様およびその利点を更によく理解できるように、以下の実施例を参照することを提案する。
【0148】
実施例1
特に記載がない限り、全ての試薬は入手ままで使用した。示差走査熱量計(DSC)実験は、TA Instruments2910DSCを使用して、窒素雰囲気下、アルミニウム皿で行った。この装置は、インジウムを用いて較正した。シリコーンヒドロゲル材料のロッドを製造するために使用したガラス管は、使用の前にシラン処理した。レンズは、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)で少なくとも4時間抽出し、公開された米国特許出願第2002/0025389号に記載されている手順に従ってプラズマ処理を施し、プラズマコーティングを得た。酸素透過度およびイオン透過率測定は、抽出およびプラズマコーティング後のレンズを用いて行った。プラズマコーティングされていないレンズを、引張試験および含水率測定のために使用した。
【0149】
酸素透過度測定:レンズの酸素透過度およびレンズ材料の酸素透過率は、米国特許第5,760,100号およびWintertonらの文献(The Cornea:Transactions of the World Congress on the Cornea 111,H.D.Cavanagh Ed.,Raven Press:NY、1988,pp273-280)に記載されたのと同様の技術に従って測定した。酸素フラックス(J)は、ウエットセル(すなわちガス気流が相対湿度約100%に保たれている)中、34℃で、Dk1000装置(Applied Design and Development社、Norcross、GAから市販されている)または類似の分析器を使用して測定した。酸素を公知の割合(たとえば21%)で含む空気流を、レンズの片面から速度約10〜20cm/分で流し、一方、窒素流を、レンズの反対側の面から速度約10〜20cm/分で流した。サンプルを、試験媒体(すなわち、生理食塩水または蒸留水)中、指定の試験温度で、測定前に少なくとも30分しかし45分を超えない時間、平衡にした。コーティング層として使用する任意の試験媒体は、指定の試験温度で、測定前に少なくとも30分しかし45分を超えない時間、平衡にした。撹拌モータの速度は、ステッパモータコントローラにおける所定の設定400±15に対応して、1200±50rpmに設定した。システムを取巻く気圧Pmeasuredを測定した。試験のために露出させた領域のレンズの厚さ(t)を、MitotoyaマイクロメーターVL−50、またはそれに類似する装置で、10箇所測定して、測定の平均を取った。窒素気流中の酸素濃度(すなわち、レンズを拡散する酸素)を、Dk1000装置を使用して測定した。レンズ材料の見かけの酸素透過度Dkappを以下の式から決定した。
【0150】
UKapp=Jt/(Poxygen
【0151】
(式中、J=酸素フラックス[マイクロリットルO/cm−分]
oxygen=(Pmeasured−Pwater蒸気)=(空気流中の%O)[mmHg]=空気流中の酸素分圧
measured=気圧(mmHg)
water蒸気=34℃で0mmHg(ドライセル中)(mmHg)
water蒸気=34℃で40mmHg(ウエットセル中)(mmHg)
t=露出するテスト領域全体のレンズの平均厚さ(mm)
Dkappは単位barrerで表される。
【0152】
材料の酸素透過率(Dk/t)は、酸素透過度(Dkapp)をレンズの平均厚さ(t)で割ることによって、計算してもよい。
【0153】
イオン透過率の測定:レンズのイオン透過率は、米国特許第5,760,100号に記載の手順に従って測定した。以下の実施例に報告されているイオン透過率の値は、対照材料としてのレンズ材料、Alsaconに関する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)であり、Alsaconのイオノフラックス拡散係数は、0.314×10−3mm/分である。
【0154】
実施例2(シリコーン含有マクロマーの合成)
平均分子量が1030g/molで、末端基滴定による1.96meq/gのヒドロキシ基を含有するパーフルオロポリエーテルFomblin(登録商標)ZDOL(Ausimont S.p.A,Milan)51.5g(50mmol)を、50mgのジブチル錫ジラウレートとともに、3つ口フラスコに入れた。フラスコの中を撹拌して、約20mbarに排気し、続けてアルゴンで圧力を下げた。この操作を2回繰り返した。次いで、アルゴン下に保たれた22.2g(0.1mol)の新鮮な蒸留イソホロンジイソシアネートをアルゴンの対流中に加えた。水浴で冷却してフラスコ内の温度を30℃未満に保った。室温で一晩撹拌後、反応が終了した。イソシアネート滴定によって、NCO含量1.40meq/g(理論値:1.35meq/g)を得た。
【0155】
Shin−Etsu製の分子量が2000g/mol(滴定によって、1.00meq/gのヒドロキシ基を含有)のα,ω−ヒドロキシプロピル−末端ポリジメチルシロキサンKF−6001、202gをフラスコに入れた。フラスコ中を約0.1mbarに排気して、アルゴンで圧力を下げた。この操作を2回繰り返した。脱ガスされたシロキサンを、アルゴン下に保たれた、新しく蒸留されたトルエン202mlに溶解し、100mgのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を加えた。溶液の均質化が完了した後、イソホロンジイソシアネート(IPDI)と反応したパーフルオロポリエーテルを全てアルゴン下で加えた。室温で一晩撹拌の後、反応が終了した。溶剤を、室温で高真空下除去した。微量滴定によって、0.36meq/gのヒドロキシ基(理論値0.37meq/g)を示した。
【0156】
13.78g(88.9mmol)の2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)を、アルゴン下、247gのα,σ−ヒドロキシプロピル−末端ポリシロキサン−パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンの3ブロックコポリマー(化学量論的平均では3ブロックコポリマーであるが、他のブロック長もまた存在する)に加えた。混合物を室温で3日間撹拌した。次いで、微量滴定を行ったが、もはやイソシアネート基(検出限界0.01meq/g)は検出しなかった。0.34meq/gのメタクリル基が存在した(理論値0.34meq/g)。
【0157】
この方法で製造したマクロマーは、完全に無色透明であった。これは、空気中、室温で数ヶ月、光が存在しない所で保存することができ、分子量の変化はなかった。
【0158】
対照配合物
上で製造したシロキサン含有マクロマーを使用して、対照実験に使用した2つの配合物を製造した。各成分および濃度(重量%)を表1に挙げる。
【0159】
【表1】

【0160】
実施例3(レンズ形成材料の製造)
(1563−37−1):実施例2で製造したマクロマー25.85重量%、28.80重量%のDMA、19.20重量%のTRIS、24.88重量%のエタノールおよび1.00重量のDaracure1173)からなる混合物127.27gに、0.3435gのVAZO−52を加え、レンズ形成材料を製造した。
【0161】
(1563−37−2):実施例2で製造したマクロマー88.25g、35.28gのTRIS、52.96gのDMA、0.7038gのVAZO−52および58.59gの無水エタノールからなる混合物を均質になるまで混合した。
(DMA=N,N−ジメチルアクリルアミド、TRIS=3−メタクリロキシプロピル−トリス(トリメチルシロキサン)、Daracure1173=2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル−1−オン、VAZO−52=2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
【0162】
ポリマーロッド製造
約2分間窒素を吹き付けたレンズ形成材料(1563−37−1または1563−37−2)をシラン化ガラスバイアル(40ドラム)に充填し、密閉し、4000RPMで5分間遠心分離した。次いで、サンプルを、強制空気炉中で以下のようにして硬化した:30℃/24時間、50℃/24時間、75℃/24時間、100℃/4時間(注:溶剤の存在によって、100℃加熱段階で、ポリマーの有意な膨張が起こった。その結果、サンプルは冷却され、ガラスがサンプルから引き剥がされた)。ポリマーロッドをガラスチューブから取り出し、130℃/24時間、硬化/乾燥させた。ディスクをロッドから切断し、さらに75℃/24時間乾燥させた(注:室温〜30℃以外は、60分間の温度傾斜を利用して、それぞれプラトー温度に到達させた)。
【0163】
乾燥したディスクから切断したポリマーのガラス転移温度を、20℃/分の走査速度で、DSC測定により測定した。全ての試験サンプルにおいて、溶融の吸熱ピーク特性は、18℃付近で起こった。結果を表2に報告する。
【0164】
考えられるように、配合物1563−37−1から製造した材料は、配合物1563−37−2から製造された材料より、高いガラス転移温度(Tg)および良好な旋盤加工特性を有する。1563−37−2に比べて、1563−37−1の方がTgが高くおよび旋盤加工特性が良好なのは、1563−37−1の方がシリコーン含有マクロマーの含有量が低いためと考えられる。
【0165】
【表2】

【0166】
レンズ製造
ボタンの作製方法:重合シリコーンヒドロゲルロッドを、ガラス管から取り出した。ポリマーロッドをガラス管から離した後、重合工程で生じたロッドの表面変形を取り除き、毎回同じロッド径を確実に得るために、ロッドを芯なし研削盤と研削油を使用して研削した。
【0167】
ボタンのトリミング方法:ボタントリミング旋盤を用いて、研削されたポリマーロッドをボタンに変えた。各シリコーンヒドロゲルロッドをボタントリミング旋盤コレットメカニズム中に架け、スピンドルを3000回転/分で回転させながら4個の成形カーバイド工具によってボタン形状を成形した。次いでシリコーンヒドロゲルボタンをアルミニウムバッグに充填し、事前の水和を完全に避けた。ボタントリミング法を72°Fで相対湿度(Rh)20%±5%の環境条件で行った。
【0168】
ミニファイルの製造:レンズ設計を達成するための幾何学構造がミニファイルと呼ばれるファイルに描かれる。ミニファイル(.MNI)は、製造すべきプロファイルの幾何学的記述であって、これにより複雑な幾何学構造も比較的小さなファイルで記述可能となり、これらのファイルを処理する時間もジョブファイル(.JFL)と比べて比較的小さくなる。シリコーンヒドロゲル用のミニファイルは、ミニファイルエンジンソフトウェアパッケージを使用して作成される。ミニファイルによってすべての面は妥当な数のゾーンに描かれ、それぞれ唯一である。
【0169】
レンズ旋盤:一担、ポリマーボタンおよびミニファイルが作られ、OPTOFORM旋盤(Optoform40、Optoform50およびOptoform80のいずれか1つ、バリフォームまたはバリマックス第3軸アタッチメント付またはなし)およびその軸外円錐形ジェネレーターを使用して、凹面または凸面レンズ旋盤を行った。旋盤工程は、相対湿度20%±2%で、温度72±2°Fの環境で行った。旋盤中、天然または合成のうねりコントロールダイアモンド工具を使用した。レンズ旋盤速度は2500〜10,000RPMで、供給速度は10〜30mm/分であった。削りカスを吹き飛ばして明瞭な切断を得るために、旋盤加工中は露点約−60°Fの圧縮空気を使用した。仕上げ部分の適格性を検査した。
【0170】
レンズをリン酸緩衝生理食塩水中に詰めた。レンズをイソプロパノールで抽出し、乾燥し、プラズマコーティングし、次いで再水和した。
【0171】
Nicolsonら(米国特許第5,760,100号明細書)によって開示された方法に従ってプラズマコーティングされたレンズの酸素透過度を測定した。4個のレンズを試験し、平均酸素透過度を表2に報告した。プラズマコーティングされたレンズの酸素透過度およびイオン透過率は、Nicolsonら(米国特許第5,760,100号明細書)によって開示された方法に従って測定し、表2に報告した。プラズマコーティングされたレンズの酸素透過度は、対照(配合物Iおよび配合物II)のそれに匹敵する。1563−37−2のイオン透過率(IP)は、予測の範囲内であり、一方1563−37−2のそれは異状に高い。
【0172】
実施例4
DMA、実施例2で製造したマクロマー、TRIS、スチレン性モノマー(たとえばスチレンまたはt−ブチルスチレン)およびVAZO−52を混合して表3に示す無溶媒配合物を製造し、室温旋盤加工可能なシリコーンヒドロゲル材料を作製した。スチレンまたはt−ブチルスチレンを配合物に加えることによって、溶剤(たとえばエタノール)が無くても全成分の混和を確実にし、ポリマーの旋盤特性(Tgの上昇)が増進した。
【0173】
【表3】

【0174】
実施例5(旋盤加工可能なシリコーンヒドロゲルのロッドの製造)
実施例4で製造した配合物に窒素を吹き付け、次いでシラン処理された試験管に注いだ(約75mlの配合物)。各試験管をゴム製隔膜でキャップし、次いで、以下のように脱ガスサイクルを行った。配合物を充填した各試験管を数分間真空とし、次いで、圧力を窒素で平衡にした。このような脱ガスと圧力平衡の操作を3回繰り返した。
【0175】
配合物1563−61−1を以下の工程で、熱的に硬化し、更に後硬化した:(a)30℃で42時間油浴中、(b)50℃で13時間強制空気炉中、(c)75℃で20時間強制空気炉中、および(d)105℃で8時間強制空気炉中。硬化炉において60分の傾斜速度をかけて、それぞれ硬化温度に到達させた。サンプルをゆっくりと室温に冷却した。
【0176】
配合物1563−91−1または1563−91−2を以下の工程で、熱的に硬化し、更に後硬化した:(a)30℃で48時間油浴中、(b)40℃で18時間油浴中、(c)50℃で12時間強制空気炉中、(d)75℃で12時間強制空気炉中、および(e)105℃で30時間強制空気炉中。硬化炉において60分の傾斜速度をかけて、それぞれ硬化温度に到達させた。4時間の冷却傾斜をかけて、サンプルを105℃から30℃に冷却して硬化の最後とした。
【0177】
硬化したロッドから切断したポリマーのガラス転移温度(Tg)を、DSC分析に従って、スキャン速度20℃/分で測定した。68℃の結果を表4に示す。また、サンプル1563−61−1のDSC温度記録は、9℃と25℃の近くで小さな吸熱ピークを示した。吸熱ピークの特性は現時点ではわからない。
【0178】
【表4】

【0179】
ポリマーロッドの抽出と分析
サンプル1563−91−1および1563−91−2からのポリマーロッドを旋盤上で研削した。得られた切りくずをイソプロパノール中で4および24時間抽出した。4および24時間の抽出後、ガスクロマトグラフィー(GC)による測定では、検出可能な量のモノマー(DMA、TRIS、スチレンまたはt−ブチルスチレン)は存在しなかった。検出限界は約100ppmである。また、抽出液をGPCにより分析したところ、サンプル1563−91−1(24時間抽出)では、保持時間がシリコーン含有マクロマー(実施例2)の範囲内にあるポリマー材料がトレース程度しか検出されなかった。シリコーン含有マクロマー(実施例2)をGPC追跡すると、ショルダーのあるメインピークを示した。シリコーン含有マクロマー(実施例2)のGPC追跡において観察されるショルダーは、1563−91−1の抽出液からのピークには観察されなかった。しかし、GPC追跡におけるシグナルは、非常に弱く、特定が難しかった。
【0180】
実施例6(レンズ製造)
ボタンの製造方法:実施例5で記載した手順に従って製造した重合シリコーンヒドロゲルロッドを、ガラス管から取り出した。ポリマーロッドをガラス管から離した後、重合工程で生じたロッドの表面変形を取り除き、毎回同じロッド径を確実に得るために、ロッドを芯なし研削盤と研削油を使用して研削した。
【0181】
ボタンのトリミング方法:ボタントリミング旋盤を用いて、研削されたポリマーロッドをボタンに変えた。各シリコーンヒドロゲルロッドをボタントリミング旋盤コレットメカニズム中に取り込み、スピンドルを3000回転/分で回転させながら、4個の成形カーバイド工具によってボタン形状を作製した。次いでシリコーンヒドロゲルボタンをアルミニウムバッグに充填し、事前の水和を完全に避けた。ボタントリミング法を20%±5%相対湿度(Rh)で約72°F(〜22℃)の環境条件で行った。
【0182】
ミニファイルの製造:レンズ設計を達成するための幾何学構造がミニファイルと呼ばれるファイルに描かれる。ミニファイル(.MNI)は、製造すべきプロファイルの幾何学的記述であって、これにより複雑な幾何学構造も比較的小さなファイルで記述可能となり、これらのファイルを処理する時間もジョブファイル(.JFL)と比べて比較的小さくなった。シリコーンヒドロゲル用のミニファイルは、ミニファイルエンジンソフトウェアパッケージを使用して作成された。ミニファイルによってすべての面は妥当な数のゾーンに描かれ、それぞれ唯一である。
【0183】
レンズ旋盤:一担、ポリマーボタンおよびミニファイルが作られ、OPTOFORM旋盤(Optoform40、Optoform50およびOptoform80のいずれか1つ、バリフォームまたはバリマックス第3軸アタッチメント付またはなし)およびその軸外円錐形ジェネレーターを使用して、凹面または凸面レンズ旋盤を行った。旋盤工程は、相対湿度20%±2%で、温度72±2°Fの環境で行った。旋盤中、天然または合成うねりコントロールダイアモンド工具を使用した。レンズ旋盤の加工速度は、2500〜10,000RPMで、供給速度は、10〜30mm/分であった。旋盤加工中、削りカスを吹き飛ばして明瞭な切断を得るため、旋盤加工中は露点約−60°Fの圧縮空気を使用した。仕上げ部分の適格性を検査した。
【0184】
レンズをリン酸緩衝生理食塩水に入れて滅菌(123℃ 20分)した。プラズマコーティングしていない滅菌レンズの機械特性およびレンズ含水率を試験した。結果を表5に示す。引張特性、含水率および接触角の測定は、プラズマコーティングしていないレンズで行った。引張試験に関して、12mm/分のひずみ速度、6.5mmのゲージ長さ、片(幅2.90mmおよび厚さ0.096mm)を使用した。引張試験の間、サンプルは全て食塩水浴に漬けた。レンズは、試験の前に加圧滅菌した。
【0185】
プラズマコーティングしていないレンズ(1563−61−1)は、前進接触角108°(後退接触角56°)によって証明されるように、疎水性面を有した。
【0186】
レンズを、イソプロパノール中で約4時間抽出し、水中で約2時間抽出し、乾燥し、プラズマコーティングし、再水和して酸素およびイオン透過率を測定した。プラズマコーティングレンズの酸素透過度およびイオン透過率を、Nicolsonら(米国特許第US5,760,100号)によって記載された方法に従って測定した。複数のレンズを試験した。平均の酸素およびイオン透過率を表5に示す。
【0187】
【表5】

【0188】
全てのサンプルから旋盤加工したレンズは、対照レンズ(配合物IまたはII)に匹敵するイオン透過率(IP)および酸素透過度(Dk)を有する。
【0189】
全てのサンプルから旋盤加工されたレンズは、優れた機械的特性を示した。ヤング率は、対照(配合物I)より低い。レンズは非常に強く、破断応力値が対照(配合物I)の1.56N/mmに比べて約4.16〜約5.45N/mmであることから明らかである。また、レンズ(破断伸び約325〜約405%)は、対照レンズ(配合物I)の約170%と比べて弾性がある。
【0190】
対照レンズ(配合物I)に比べて、旋盤加工レンズの方が機械的特性および弾性率が大きいのは、重合方法および配合物における違いに大きく依存すると考えられる。旋盤加工レンズの各配合物は、約0.25重量%の開始剤を含み、溶剤(たとえば、対照配合物Iのエタノール)を含有しない。加えて、旋盤加工用に開発した配合物は、比較的低温で硬化する。硬化温度が30℃を超えるとポリマーは初めてゲル化する。これらの全要因により、ゲル化点の前で高分子量化およびモノマーの高変換化を促進されたと推測される。ゲル化点の前で高分子量化し高いモノマー変換があったポリマーからは、機械的特性の良好な材料が得られると期待される。これとは対照的に、対照実験では、配合物IもIIも溶剤および高レベルの光開始剤を利用している。高い開始剤濃度および溶剤を使用すれば、結果的にはゲル化点の前の分子量は低い。
【0191】
t−ブチルスチレンを含有する配合物1563−91−2によるレンズは、配合物1563−91−1(Dk=74barrer)によるレンズより僅かに高いDk(78barrer)を有する。配合物1563−91−1も配合物1563−91−2も、10重量%のスチレン系モノマー(スチレンまたはt−ブチルスチレン)を含有するが、モル基準で、配合物1563−91−2は、配合物1563−91−1より、1.5倍少ないスチレン系モノマーを含有する。t−ブチル部分を嵩高にすることによって、レンズの酸素透過度を増加させることができると考えられる。
【0192】
1563−91−1および1563−91−2によるレンズの抽出および分析
プラズマコーティングレンズを、抽出および抽出可能な分析に供した。抽出物をGPCによって分析した。対照レンズ(配合物II)に比べると、ポリマー/マクロマーのレベルが非常に低いことが見出された。結果を表4にまとめる。実験レンズ抽出物からのピーク面積は、エベレスト対照グループのピーク面積に対して指標化した。旋盤加工レンズの抽出可能物は、対照レンズ(配合物II)に比べて約34〜約44倍少ないレベルである。
【0193】
先に検討したように、硬化方法および配合物の違いにより、抽出物における違いが起こる可能性がある。旋盤加工レンズによるポリマーは、開始剤濃度が低く溶剤が不在でも、比較的低い温度で熱的に硬化する。これらの全要因により、高分子量化およびモノマーの変換がゲル化点の前に促進される。また、これらの要因の全ては、抽出可能な材料のレベルを低くするのに都合がよい。対照レンズ(配合物II)は、エタノール中で比較的高い開始剤濃度でUVにより硬化された。対照レンズではエタノールおよび高開始剤濃度が存在するために、抽出可能物のレベルが旋盤加工レンズに比べて高くなっている可能性がある。GPCによって観察されるポリマー抽出物は、DMAとTRISとのコポリマーであると考えられる。
【0194】
実施例7(ボンネットからのコンタクトレンズの製造)
A.シリコーンヒドロゲルレンズ配合物を、DMA(33.8112g)、実施例2で製造されたマクロマー(37.9989g)、TRIS(18.1648g)、t−ブチルスチレン(10.0159g)およびVAZO−52(0.2535g)を混合して調製した。調製した配合物を使用して、以下のようにボンネットを製造した。プラスチックキャップに約0.75mlの該レンズ配合物を充填し、次いで、ポリプロピレンレンズベース曲線型半(FreshLook型)をレンズ配合物内に置いた。レンズ配合物を、強制空気炉中で、以下の硬化工程に従って硬化した:75℃/2時間(45℃設定点から10分の傾斜)、110℃/16時間(75℃から10分の傾斜)。先の実施例に記載したように、ベース曲面(後面)のあるレンズブランク(ボンネット)を室温で旋盤により直接旋盤加工し、コンタクトレンズとした。各コンタクトレンズのベース曲面は直接成形されているので、その前面(前方曲面)を旋盤加工した。レンズ前方曲面を旋盤加工した後、実施例1で記載したように、レンズを抽出し、乾燥し、プラズマコーティングし、次いで水和した。イオン透過率(Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数D/Dref)は、0.05であった。酸素透過度は68barrerであった。イオン透過率の値が低いのは、スキン効果が原因であって、これはポリマー層をシリコーンヒドロゲルのベース曲面から除去することによって解消されると考えられる。
【0195】
B.シリコーンヒドロゲルレンズ配合物(1575−36−1)を、DMA(33.8706g)、実施例2で製造されたもの(37.9962g)、TRIS(18.1604g)、t−ブチルスチレン(10.0513g)およびVAZO−52(0.2551g)を混合して調製した。製造した配合物を使用して以下のようにボンネットを製造した。プラスチックキャップに約0.75mlのレンズ配合物を充填し、ポリプロピレンベース曲面型半(FreshLookタイプ、ポリプロピレン)をレンズ配合物中に置いた。組立品(それぞれカップとベース曲面型半から構成される)とレンズ配合物の水準を合せるために、2枚のプラスチック板の間に組立品を挟み、次いで、5ポンドのドーナツ型鉛を上の板に置いた。レンズ配合物を強制空気炉中で、2時間、75℃で硬化した。組立品を開き、ポリプロピレンベース曲面型上に横たわる得られたボンネットを、強制空気炉中で、更に16時間、110℃で硬化した。レンズを製造するために、各ボンネットの前方曲面を室温で旋盤加工し、同時に各ボンネットのベース曲面から約0.5mmの材料の層(またはスキン)を取り除いた。レンズを抽出し、プラズマコーティングし、滅菌した。レンズイオン透過率(Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数D/Dref)は、2.92であり、酸素透過度は、65barrerであった。
【0196】
ボンネットの前後の両曲面から材料を取り除くことにより、確実にスキン効果を除去した。スキン効果は、重合中の表面阻害の結果であると考えられる。型表面に酸素が吸着すると、表面で重合が阻害され、スキンが形成される。スキン効果を除去あるいは最小限にするには、プラスチック型を窒素またはアルゴン下に保存して使用する。
【0197】
C.シリコーンヒドロゲルレンズ配合物を、実施例2で製造したマクロマー(190.12g)、TRIS(90.09g)、DMA(169.08g)、スチレン(50.02g)およびVAZO−52(1.2261g)を組み合わせて調製した。調製した配合物を使用して、ボンネットを以下のように製造した。プラスチックカップに約0.6mlのレンズ配合物を充填し、次いで、ゼオネックスベース曲面型半(型設計のBOO1タイプ)を、レンズ配合物中に置いた。組立品(それぞれカップとベース曲面型半から構成される)をレンズ配合物と共に強制空気炉中に置き、レンズ配合物を75℃で2時間硬化した。組立品を分離し、ボンネットポリマーを更に(BOO1型上で)110℃で16時間硬化した。ボンネットから切断したシリコーンヒドロゲルポリマーのDSC分析をDSC(20℃/分)によって分析すると、ガラス転移温度は、約64℃(第2スキャン)であった。サンプルのショアーA硬度は、100を超えている(オフスケール)。サンプルは旋盤加工可能であるが、型からレンズを脱ブロックすることはできなかった。レンズ配合物は型に含浸し、硬化の後レンズバンクが型に付着した。
【0198】
D.シリコーンヒドロゲルレンズ配合物を、実施例2で製造したマクロマー(190.15g)、TRIS(90.05g)、DMA(169.23g)、t−ブチルスチレン(50.01g)およびVAZO−52(1.2234g)を組み合わせて調製した。調製した配合物を使用してボンネットを以下のように製造した。プラスチックカップに約0.6mlのレンズ配合物を充填し、次いでゼオネックスベース曲面型半(型設計のBOO1タイプ)をレンズ配合物中に置いた。組立品(それぞれカップとベース曲面型半から構成される)をレンズ配合物と共に強制空気炉中に置き、レンズ配合物を75℃で2時間硬化した。組立品を分離し、ボンネットポリマーを更に(BOO1型上で)110℃で16時間硬化した。ボンネットから切断したシリコーンヒドロゲルポリマーのDSC分析をDSC(20℃/分)によって分析すると、ガラス転移温度は、約59℃(第2スキャン)であった。サンプルのショアーA硬度は、100を超えていた(オフスケール)。サンプルは旋盤加工可能であったが、型からレンズを脱ブロックすることはできなかった。レンズ配合物は型に含浸し、硬化の後レンズバンクは型に付着した。
【0199】
本発明の種々の態様を、特定の用語、装置および方法を用いて記載したが、この記載は、単に説明を目的とするものである。使用した用語は、限定というより説明である。以下の請求項に規定の本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲内で当業者が変更および変形を作成することができることは理解される。更に、種々の実施態様の態様を全体的にあるいは部分的に互換してもよいことを理解すべきである。したがって、添付の請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる好ましい変更例の記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、
a)高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含有するレンズ形成流体材料を得る工程;
b)1以上のチューブにレンズ形成材料を充填する工程;
c)チューブ中のレンズ形成材料をゆっくり硬化させて、高酸素透過度を有するロッド形ポリマーを形成する工程;
d)ポリマーからチューブを引剥がす工程;
e)ポリマーを充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ポリマーの室温旋盤加工性を増加させる工程;および
f)ポリマーを室温で旋盤加工してコンタクトレンズにする工程
を含み、各コンタクトレンズが、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、かつ、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するものである方法。
【請求項2】
工程c)を、チューブ中のレンズ形成材料を、約28℃〜約40℃の第一の硬化温度での第一の熱硬化工程と約80℃〜約120℃の第二の硬化温度での第二の熱硬化工程とを少なくとも含む多段階硬化プロセスで熱的に硬化させることによって実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多段階硬化プロセスが、第一および第二の工程の間に、第一および第二の硬化温度の間の硬化温度でのさらなる工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
硬化温度を、1つの温度からもう1つの温度へ、約60分を超える時間をかけてゆっくりと上昇させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程c)を、UV線により、UV線強度を最初は低いレベルに保ち、次いで徐々に上昇させる手順で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程e)を、好ましくは、約75℃以上の温度で実施する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
レンズ形成流体材料が、工程c)の硬化温度を超える高い温度で初めて活性化する高温開始剤を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程c)で製造したロッドを、工程e)の前にボタンに切り出す、請求項2記載の方法。
【請求項9】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、
a)ポリマーボタンの注型成形用の型を準備する工程;
b)型内に、高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含むレンズ形成流体材料を充填する工程;
c)レンズ形成材料を型内で硬化させて、高酸素透過度を有するボタン形ポリマーを形成する工程;
d)ボタンを型から取り出し;ボタンを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボタンの室温旋盤加工性を増加させる工程;および
e)ボタンを室温で旋盤加工し、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにする工程
を含む方法。
【請求項10】
工程c)を、チューブ中のレンズ形成材料を、約28℃〜約40℃の第一の硬化温度での第一の熱硬化工程と約80℃〜約120℃の第二の硬化温度での第二の熱硬化工程とを少なくとも含む多段階硬化プロセスで熱的に硬化させることによって実施する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
多段階硬化プロセスが、第一および第二の工程の間に、第一および第二の硬化温度の間の硬化温度でのさらなる工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
硬化温度を、1つの温度からもう1つの温度へ、約60分を超える時間をかけてゆっくりと上昇させる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
工程e)を、好ましくは、約75℃以上の温度で実施する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
工程c)を、UV線により、UV線強度を最初は低いレベルに保ち、次いで徐々に上昇させる手順で実施する、請求項9記載の方法。
【請求項15】
ボタンが、2つの相対する平面を有する、請求項9記載の方法。
【請求項16】
ボタンが、2つの相対する曲面を有する、請求項9記載の方法。
【請求項17】
ボタンの2つの相対する面の1つが凹型半球面であり、他方が凸型半球面である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、
a)ボンネットの注型成形用の、光学特性を持つ成形面を有する型半を含み、成形面がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの後面および前面の1つを画定するものである型を準備する工程;
b)型内に高酸素透過度を有するポリマーまたはコポリマーを形成しうる、少なくとも1種のシリコーン含有ビニル系モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性ビニル系モノマーを含むレンズ形成流体材料を充填する工程;
c)レンズ形成材料を型内で硬化させて、コンタクトレンズの前面および後面の1つに対応する光学的に仕上げられた面を有し、高い酸素透過度を有するボンネット形にポリマーを形成する工程;
d)ボンネットを型から取り出し;ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;および
e)ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の面を室温で直接旋盤加工することによって前面を形成し、それによりコンタクトレンズを得る工程を含み、得られたコンタクトレンズが少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有するものである方法。
【請求項19】
工程c)を、チューブ中のレンズ形成材料を、約28℃〜約40℃の第一の硬化温度での第一の熱硬化工程と約80℃〜約120℃の第二の硬化温度での第二の熱硬化工程とを少なくとも含む多段階硬化プロセスで熱的に硬化させることによって実施する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程c)を、UV線により、UV線強度を最初は低いレベルに保ち、次いで徐々に上昇させる手順で実施する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
成形面が、製造すべきコンタクトレンズの後面を画定する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の面が凸型半球面である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前面と反対の後面があり、前面には中央光学区域と中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域があるコンタクトレンズの製造方法であって、
a)ポリマーボンネットの注型成形用の型であって、型の第一の型半には光学特性を持つ第一の成形面があり、また第二の型半には第二の成形面があり、第二の成形面には光学特性のある実質的に環状の周辺成形区域があり、第一の成形面によってコンタクトレンズの後面が画定され、周辺成形区域がコンタクトレンズの前面に1以上の非光学区域を画定するものである型を準備する工程;
b)型内にレンズ形成流体材料を充填する工程;
c)型内でレンズ形成流体材料を硬化させて、光学的に仕上げられコンタクトレンズの後面に対応する1個の面、および光学的に仕上げられコンタクトレンズの中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域に対応する区域があるボンネット形のポリマーを形成し;ボンネットを型から取り出す工程;
d)ボンネットを、充分に長い時間後硬化および/または乾燥させて、ボンネットの室温旋盤加工性を増加させる工程;および
e)中央光学区域および場合により、中央光学区域と非光学区域とを橋渡しする周辺ブレンド区域を形成するために、ボンネットの、光学的に仕上げられた面とは反対側の、光学的に仕上げられた区域によって囲まれている表面領域を室温で直接旋盤加工し、それによってコンタクトレンズを得る工程
を含む方法。
【請求項24】
コンタクトレンズがヒドロゲルレンズである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
コンタクトレンズが、少なくとも45barrer/mmの酸素透過率を有し、約0.2×10−6cm/秒を超えるイオノトンイオン透過係数または約1.5×10−6cm/分を超えるイオノフラックス拡散係数のいずれかで特徴付けられるイオン透過率を有することを特徴とするシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
周辺成形区域がコンタクトレンズ前面の1以上の非光学区域を画定し、1以上の非光学区域が向きの安定化および/または平行移動形体を含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前面が、さらに垂直経線と水平経線とを含み、中央光学区域を取り囲む1以上の実質的に環状の非光学区域が、周辺区域と、端縁区域と、中央光学区域から周辺区域へ外側に延び、中央光学区域から周辺区域への移行が連続的となる第一のブレンド区域と、周辺区域から端縁区域へ外側に延び、周辺区域から端縁区域への移行が連続的となる第二のブレンド区域とを含み、また前面が、垂直経線面に関して鏡像対称を有し、少なくとも1次導関数で連続しており、またコンタクトレンズが、周辺区域と第二のブレンド区域のレンズ厚さを変えることによりレンズの下半部分を重くし、その結果コンタクトレンズは眼の上で平衡位置に来るようにし、またコンタクトレンズが、垂直経線の下部分に対して約35°以上の2本の扇形境界半経線とこの2本の扇形境界半経線の間に含まれる端縁部分とによって囲われる扇形部分におけるレンズ厚さを特徴とするレンズ厚さプロフィルを有し、それは周辺区域の内側境界線から各半経線に沿って徐々に増加して最高レンズ厚さに達した後減少し、またボンネットの光学的に仕上げられた面と反対側の光学的に仕上げた区域は、周辺区域と、端縁区域と、周辺区域から端縁区域へ外側に延び、周辺区域から端縁区域への移行が連続的になる第二のブレンド区域とで構成されている、請求項26記載の方法。
【請求項28】
レンズ厚さプロフィルが、(1)コンタクトレンズの周辺区域のレンズ厚が、垂直経線の上部分に沿って、垂直経線の上部分が周辺区域の外側境界線および内側境界線と交わる2つの点での両レンズ厚値の差が50%未満、好ましくは30%未満、さらに好ましくは15%未満であるように、実質的に一定であるかまたは周辺区域の外側境界線から周辺区域の内側境界線に向けて徐々に増加し、および/または(2)コンタクトレンズの周辺区域のレンズ厚が、垂直経線の下部分に沿って、垂直経線の下部分が周辺区域の内側境界線および外側境界線と交わる2つの点での両レンズ厚値の差が約15%〜約65%であるように、周辺区域の内側境界線から周辺区域の外側境界線に向けて徐々に増加することをさらに特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項29】
周辺区域が、中央光学区域の下方に位置して周辺区域から外側に延び、それにより使用者の下眼瞼との係合が可能となり、使用者が装着した際に垂直方向の平行移動によってコンタクトレンズに支持を提供する隆起をさらに有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
隆起が、上部境界線と、下部傾斜境界線と、前面から外側に延びる緯度方向の隆起と、傾斜部とを含む、下部傾斜境界線から下方に延びて、傾斜隆起区域と下眼瞼とが相互に作用する角度は下眼瞼が傾斜隆起区域に当たる場所に応じて変化する湾曲ないしスロープを有する傾斜隆起である、請求項29記載の方法。

【公表番号】特表2008−506549(P2008−506549A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518530(P2007−518530)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007006
【国際公開番号】WO2006/002894
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】