説明

シートに塗工された塗工パターンの形状測定方法及び装置

【課題】塗工パターンの幅方向および搬送方向の測定の同時性を実現し、光軸方向の距離変動の影響も無くすことができる塗工パターンの測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】 シートに塗工された塗工パターンの形状測定方法において、
1)シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に複数のカメラを並べ、前記シートを前記複数のカメラで撮影する工程、
2)撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を水平走査に同期させ前記複数のカメラの水平走査信号を順次切り替えて画像処理手段に取り込む工程を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシート状の基材に塗工または印刷によって成形されたパターンの形状を測定する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばコンデンサ電極や電池電極の製造工程では、シート基材(以下、シート)に特定の電気特性を実現するための材料(塗工物)を塗布(塗工)したものが用いられる。その場合、シート全面に塗工物を塗布する場合もあるが、塗工物が高価な場合やシート端面に塗工物があってはならない場合には、シートの特定の部分だけに塗工を行う。
【0003】
このような塗工は、部分塗工、ブロック塗工、パターン塗工などと呼ばれている。
その際、塗工部分の寸法(幅、長さ)を測定し、また、シート両面に塗工する場合、表裏の寸法(幅、長さ)のずれも測定し、管理する必要がある。
【0004】
図7は従来の塗工パターン測定装置の一例を示すもので、カメラを用いて測定する場合の概念図である。図7において、シート1は搬送ローラー(図示せず)に支持されて塗工ライン上を一定の速度で搬送される。塗工ラインの上にレンズ30を取り付けたカメラ31を複数台(図では2台)設置して塗工寸法を測定する。
【0005】
シート1を測定する場合、シートが一定速度で移動することからカメラ31は二次元の情報を持つ必要は無いため、撮像素子としてはセンサがシートの移動方向と直角な線上に配列されているラインセンサカメラを使用することが多い。もちろん撮像素子に二次元の情報を持つエリアセンサカメラを用いることも可能である。32は塗工部分を示し、33は注目部分を示している。
【0006】
このような塗工寸法測定システムの場合、次のような性能が求められる。
1)パスライン変動の影響
シート1は理想的には搬送ラインの同一位置を搬送される。このとき、シートが搬送される位置をパスラインというが、塗工ラインの場所によっては、シートが完全に同一の場所を通らず上下、左右の変動がある。例えば、搬送ローラー間の何も支えが無い場所などではシート1が上下に振動(パスライン変動)する場合がある。その位置変動が塗工寸法の測定に影響しないようにする必要がある。
【0007】
2)塗工パターンへの柔軟な対応
図7ではシート1の幅に対して一つの塗工パターンがある場合(1条塗り)を示しているが、幅方向に複数の塗工パターンを形成する場合がある。例えば、シート幅方向に2つのパターンを形成する場合(2条塗り)、撮像のためのカメラは3台必要となる。
【0008】
さらに3条、4条といった塗工パターンに対応するためにはシート幅全体にわたって撮像できることが望まれる。
3)小型化
塗工ラインの大きさは生産コストに直接影響するため、できるだけ小型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−42789
【特許文献2】特開2004−148534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7の従来例に示したカメラ31を用いたシート幅測定の場合、一般的なレンズ30を使うと塗工ラインの上下変動(光軸方向の変化)があったときカメラ31の撮像素子上のシートの像の大きさが変化するという問題点がある。
【0011】
図8(a)はその様子を示したものである。一般的なレンズ30は主光線がレンズの中心を通るので、図に示すように被測定対象Aの像はBに結像する。被測定対象がレンズに近づいてA’の位置に来た場合、やはり主光線がレンズの中心を通るので、A’の像はB’に結像する。
【0012】
図中、説明のためにB,B’の位置を変えて描いてあるが、B,B’はいずれも撮像素子上にあり、位置は変わらない。図で分かるようにB’はBよりも大きな像となる。すなわち、光軸方向の変動で、被測定シートがAからA’の場所に移動すると像の大きさが変わるため寸法が正確に測定できなくなる。
【0013】
このようなレンズであっても、レンズの視野角を小さくすることによって光軸方向の変動の影響を小さくすることができる。
図8(b)はレンズ30の視野角を小さくした場合の結像の様子を示したものである。
図に示すように被測定対象Aの像はBに結像する。被測定対象がレンズ30に近づいてA’の位置に来た場合、やはり主光線がレンズの中心を通るので、A’の像はB’に結像する。
【0014】
図8(a,b)中、説明のためにB,B’の位置を変えて描いてあるが、B,B’はいずれも撮像素子上にあり、位置は変わらない。図で分かるようにB’はBよりも大きな像となるが、図8(a)の場合と比べるとその変化の割合は小さくなる。被測定シートがAからA’の場所に移動することにより像の大きさがわずかに変わるが、その影響は視野角が大きい場合よりも小さくなるため寸法の誤差を小さくできる。
【0015】
しかし、視野角が小さいとカメラ一台が測定できる面積が小さくなるため同じ大きさの測定対象を測定するためにはカメラ台数を増やさなければならない。カメラ台数を増やすと画像入力用のコンピュータも増やさなければならないが、装置全体のコストアップになるため、従来は複数のカメラからの画像を切替えて順次取り込むような方法が取られてきた。
【0016】
図9は4台のカメラ6〜9を用いた従来例を示す構成説明図である。被測定対象はシート1の上に塗工されたパターン2〜5である。それをカメラ6〜9で撮像するが、入力は映像信号を切替えるスイッチ10で少なくとも映像信号のフレーム単位で切替えられ、画像入力ボードを搭載したコンピュータ11に取り込まれる。その際、シート1は紙面の奥から手前方向に搬送されているので、カメラ6〜9による撮像範囲はそれぞれ点線12〜15で示された搬送方向にずれた矩形になる。
【0017】
本来、塗工パターン2〜5の幅としては搬送方向に対して、同一位置での値を測定したい。すなわち、塗工パターン2の場合は、点16、点17の距離が知りたいのである。これは、シート1が搬送される際の幅方向への蛇行の影響による測定誤差を小さくしたいためである。図9に示す従来例ではそれぞれのカメラの撮像範囲がずれているため、点16、点17は撮像範囲に含まれないため、同一位置での値を求めることができないという問題点がある。また、搬送方向の距離に関しても同様の問題点がある。
【0018】
従って本発明の目的は多数のカメラを用いて塗工パターンの幅や長さを測定する測定装置において、幅方向および搬送方向の測定の同時性を実現し、光軸方向の距離変動の影響も無くすことができる塗工パターンの測定方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法においては、
1)シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に複数のカメラを並べ、前記シートを前記複数のカメラで撮影する工程、
2)撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を水平走査に同期させ前記複数のカメラの水平走査信号を順次切り替えて画像処理手段に取り込む工程を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項2においては、請求項1に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法において、
撮影のタイミングは同時であることを特徴とする。
請求項3においては、請求項1に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法において、
取り込んだ映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を合成する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項4においては、シートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された複数のカメラと、
前記複数のカメラで同時に前記シートを撮影するための指令を発する同期信号発生器と、
前記同期信号発生器の指令により撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切替える映像信号切替スイッチと、
前記映像信号切替スイッチで切り替えられた水平走査信号または垂直走査信号を順次取り込んで合成映像を作成する画像処理手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5においては、請求項4に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記複数のカメラはそれぞれ撮影した画像の水平走査の全部又は一部の映像信号の平均値を求める平均値算出回路と算出した平均値をホールドするサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路がホールドしている平均値を順次切り替えて出力する切替スイッチを具備し、各カメラの水平走査の指定範囲の平均値を水平走査の一定期間だけ出力することにより、複数カメラの垂直方向の映像信号変化を合成して出力することを特徴とする。
【0023】
請求項6においては、請求項請求項5に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記映像信号の平均値と閾値を比較するコンパレータを備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項7においては、シートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラと、
前記シートの搬送方向に直交して配置され、水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラと、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラまたは前記水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラで同時にまたは別々に前記シートを撮影するための指令を発する同期信号発生器と、
前記同期信号発生器の指令により撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切替える映像信号切替スイッチを備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項8においては、請求項7に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記映像信号切替スイッチで切り替えられた水平走査信号または垂直走査信号を順次取り込んで合成映像を作成する画像処理手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項9においては、請求項7に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラと、前記シートの搬送方向に直交して配置され、水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラは前記撮影方向をいずれかの撮影方向に任意に切替可能としたことを特徴とする。
【0027】
請求項10においては、請求項1乃至9に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記複数のカメラと前記シート間の距離を測定する変位センサを具備し、該変位センサの出力とあらかじめ求めておいた複数のカメラとシートとの距離と撮像倍率との関係を用いて前記複数のカメラで測定した前記塗工パターンの測定値を補正すること特徴とする。
【0028】
請求項11においては、請求項1乃至10に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートは電池電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1乃至3及び4によれば、シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された複数のカメラと、シートを複数のカメラで同時に撮影し、撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切り替えて画像処理手段に取り込み、取り込んだ映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を合成したので、測定位置の搬送方向の同時性を確保できる。その結果、正確な幅寸法測定が可能になる。
【0030】
請求項5、6によれば、各カメラの水平走査の指定範囲の平均値を水平走査の一定期間だけ出力することにより、複数カメラの垂直方向の映像信号変化を合成して出力し、搬送方向のラインの平均値を一つの映像信号にまとめることができるので、映像取り込みハードウエアの規模を拡大することなく抜けのない塗工開始、終了寸法の測定が可能になる。さらに、平均化処理した個別のライン信号をコンパレータで閾値と比較することにより、画像処理を行うことなく塗工開始、終了寸法の検出が可能になる。
【0031】
請求項7、8、9によれば、シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラと、シートの搬送方向に直交して配置され、水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラと、シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラまたは水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラで同時にまたは別々にシートを撮影するための指令を発する同期信号発生器と、同期信号発生器の指令により撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切替える映像信号切替スイッチと、映像信号切替スイッチで切り替えられた水平走査信号または垂直走査信号を順次取り込んで合成映像を作成する画像処理手段を備えており、撮影方向をいずれかの撮影方向に任意に切替可能としたので、
【0032】
カメラ台数が多くなっても、2チャンネルに集約されることで、画像入力手段が1枚で且つロースペックのものを選ぶことが出来、システム価格を安く抑えられる。また、画像処理に関しても、カメラ毎に画像を再現した後の情報量はカメラ台数分の1で済む。検出したい方向も明確であることから、画像処理も軽いものになる。
【0033】
請求項10によれば、複数のカメラとシート間の距離を測定する変位センサを備えているので、カメラとシートの距離の変化を知ることができるため、予め測定したシートとカメラの位置ずれによる寸法の変化に基づいてレンズの距離による倍率変動を補正し、正確な寸法測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す塗工パターンの測定装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置により撮像した画像の切替の様子を示す説明図である。
【図3】カメラ1台分の処理回路のブロック構成図である。
【図4】各カメラの映像信号と処理後の合成信号を示す説明図である。
【図5】他の実施例を示すブロック構成図である。
【図6】図5における水平ライン信号の取り込み状態を示す説明図である。
【図7】従来の塗工パターン測定装置の一例を示す概念図である。
【図8】一般的なレンズを使った場合に像の大きさが変化する様子を示す説明図である。
【図9】従来の塗工パターンの測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1(a,b)は本発明の実施形態の一例を示すシートに塗工された塗工パターンの測定装置の概略構成図である。
図1(a,b)において、シート1の上に、塗工パターン2〜5が塗工され、シート1は図示しない搬送機の上を紙面の奥側から手前側に一定速度で搬送されている。
【0036】
そしてシート1に塗工された塗工パターンをシートの流れ(矢印Y)方向に対して直角(矢印X)方向に直列に並べ、かつ、水平ラインの撮影方向に配置された4台のカメラ6〜9で撮像して測定を行う。
なお、本発明ではシートの流れ方向に直角な状態で水平走査される方向を「水平ラインの撮影方向」と定義する。
その撮像タイミングは同期信号発生器20で垂直走査、水平走査共に同期するようにされている。各カメラ6〜9から出力される映像信号は映像信号切替スイッチ10で切替えられ、画像入力ボード(図示省略)を搭載した画像処理コンピュータ11に取り込まれる。
【0037】
本発明においては、測定に使用するカメラ6〜9で同時に撮像を行うところが、従来例と異なる部分である。
図2は撮像した画像の切替の様子を示したものである。図1で示すカメラ6で撮影した映像を図2ではカメラaの映像と読み替え、同様にカメラ7をカメラb、カメラ8をカメラc、カメラ9をカメラdの映像と読み替える。なお、説明を分かりやすくするために映像の形状は図1に示すものと異なるものを示している。
【0038】
カメラの映像信号は上から順に走査しながら出力される(インターレース方式のカメラの場合には、1ラインおきに、偶数ラインを出力するフィールドと奇数ラインを出力するフィールドがあり、2つのフィールドで一つの映像フレームが出来上がるが、ここでは、全てのラインが順に出力されるプログレッシブ方式のカメラについて説明する。なお、インターレース方式のカメラにおいても考え方は同様なので、ここでの説明は省略する)。
【0039】
カメラ6で撮影した映像aの最初の水平ラインが出力された時点で、図1に示す映像信号切替スイッチ10をカメラ7に切替える。カメラ7で撮影した映像bの2番目の水平ラインが出力された時点で、図1に示す映像信号切替スイッチ10をカメラ8で撮影した映像cに切替える。カメラ8の3番目の水平ラインが出力された時点で、図1に示す映像信号切替スイッチ10をカメラ9に切替える。カメラ9で撮影した映像dの4番目の水平ラインが出力された時点で、図1に示す映像信号切替スイッチ10をカメラ6に切替える。・・・
【0040】
以下同様に1ラインが出力される毎に映像信号切替スイッチ10を次のカメラに切替えるようにする。切替タイミングは同期信号発生器20で制御される。このようにすると図2eに示すような合成映像が、図1の画像処理コンピュータ11に取り込まれる。
【0041】
それぞれのカメラの撮像は同時に行っているため、図1の12〜15に点線で示したように、撮像範囲は搬送方向に対して、同一のタイミングである。各カメラからの水平信号は順次取り込むので、完全に同地点とはいえないが、例えば撮像範囲が64mm×48mmでこれを640画素×480画素で取り込む場合、1水平ラインの寸法は0.1mmとなる。
【0042】
従ってカメラ4台で順次取り込んだ場合、最大の搬送方向の位置ズレは0.3mm(64/640×3)であり、無視できる程度の位置ズレである。画像処理コンピュータ11では、合成映像からライン毎に画像を分類することで、各カメラの映像を再現することができる。この場合、各カメラの映像の縦方向の画素数は1/4となるが、図1に示す測定点16〜19の位置の寸法を求めることができる。
【0043】
次に搬送方向の寸法を測定する実施例について図3および図4を用いて説明する。上記の技術を用いて、搬送方向の測定の同時性がほぼ確保できるが、塗工の搬送方向の長さを測定する場合、それぞれのカメラの搬送方向の情報を抜けなく測定する必要がある。
【0044】
図3は本発明のカメラ1台分の処理回路のブロック構成図、図4は各カメラの映像信号と処理後の合成信号を示している。
図3において、Aは例えばカメラ6の1水平ラインの信号を示している。この信号の平均処理をする範囲は矢印Bで示す範囲である。45は積分時間設定回路で平均処理Bに相当する時間だけゲートがONするようになっている。43は電圧発生器で、定電圧(映像信号は1Vピーク程度とする場合が多いので例えば0.5V程度)を発生する。44と46は第1、第2積分器である。
【0045】
47は除算器で第1積分器44の出力を第2積分器46の出力で除算する。48は除算器47の出力をホールドするサンプルホールド回路、49は切替スイッチである。
上述の構成において、第1積分器44に入った信号は積分時間設定回路45のゲートがONになっている間だけ積分される。すなわち、ライン信号Aがf(t)で与えられているとすると、第1積分器44の出力Viは
【0046】
【数1】

である。ここで、Tは平均範囲Bの時間に相当する。電圧発生器43の電圧をαとすると、第2積分器46の出力Vrは
【0047】
【数2】

である。これらが除算器47に入力するので、除算器47の出力Vdは
【0048】
【数3】

となり、f(t)の時間Tの平均値に比例する。除算器47の出力Vdはサンプルホールド回路48でホールドされる。
このような回路をカメラの数に相当する分用意し、切替スイッチ49に接続する。
【0049】
次に、図4を用いて、画像合成の処理を説明する。カメラ6の映像a1の1ライン分の信号の内、平均範囲Bに相当する部分の平均値を図3の回路を用いてサンプルホールド回路48でホールドする。
【0050】
同様にカメラ7の映像b1の1ライン分の信号の内、平均範囲b2に相当する部分の平均値を図3と同様の回路を用いてサンプルホールドする。以下カメラ8、カメラ9の1ライン分についても同様である。次のラインの走査が開始したら、カメラ6の平均値を1ラインの1/4に相当する時間だけ出力する。次の1/4の時間にはカメラ7の平均値を出力する。
【0051】
次の1/4の時間にはカメラ8の平均値を出力する。次の1/4の時間にはカメラ9の平均値を出力する。合成映像の2ラインにはカメラ6の平均値のレベル、カメラ7の平均値のレベル、カメラ8の平均値のレベル、カメラ9の平均値のレベルが、それぞれ1/4の時間含まれることになる。
【0052】
以下、以降のラインでも同様の処理を行う。得られる映像は図4のe’に示すような合成画像となる。この画像を図1に示す画像処理コンピュータ11に取り込めば、各カメラの垂直方向の映像信号の変化を1ライン毎に検出できるので、塗工パターンの搬送方向の寸法を正確に測定することができる。
【0053】
なお、図3の50はコンパレータであり、除算器47の出力(平均値)がある一定の値を超える、または、低下することを検出できる。これを用いて、塗工パターンと基材の反射率差による映像出力の差を検出すれば、塗工パターンの初めや終わりを画像処理手段を用いることなく検出することもできる。
【0054】
図5は他の実施例を示すもので、この例においては基材シート1に流れ方向に3条の矩形状の塗工パターン2a,2b,2cを断続的に塗布した状態を示している。そして、この実施例では14台のカメラ51〜64がシートの流れ方向(搬送方向)に対して直角方向に直列に並べて配置された状態で撮像して測定を行う。そして、この実施例においてもシートの流れ方向に直角な状態で水平走査される方向を「水平ラインの撮影方向」と定義する。
【0055】
なお、図ではカメラ52,58,62は水平ラインの撮影方向を90度旋回して示しているが、旋回のための機構(図示省略)はすべてのカメラに設けられていてもよく、特定のカメラのみに設けられていてもよい。また、図では14台のカメラを示しているが塗工パターンの状態に応じて増減してもよく、設定部70により不要なカメラは撮影機能をオフ状態としてもよい。
【0056】
71は映像信号切替手段であり、同期信号発生器72、映像切替スイッチ73及び画像合成手段74a、74bを含んで構成されている。75は画像処理手段(CPU)であり、画像入力手段76、画像処理部77、判定部78及び前述の設定部70を含んで構成されている。
【0057】
なお、設定部70は不要なカメラの撮影機能をオフ状態とするほかに、画像合成手段74a,74bの両方またはいずれかを選択し、いずれかを選択し他場合は水平ラインの撮影方向で撮影したカメラの画像を表示するか、水平ラインの撮影方向を90度旋回したカメラの映像を表示するかの切替を行う機能も有している。
【0058】
上述の構成において、例えばカメラ51〜64が全て同じ水平方向のラインに向くように配置されているとした場合(図5で示すカメラ52,58,62を水平ラインの撮影方向に向ける)、同期信号発生器72はカメラ51〜64に対して同じタイミングで撮像信号を発信する。その信号は垂直走査、水平走査共に同期するようにされている。各カメラ51〜64から出力される映像信号は画像処理手段75を構成する映像信号切替スイッチ73で切替えられ、画像合成手段74aで合成されて画像入力手段76を介して画像処理部77を搭載した画像処理手段75に取り込まれる。
【0059】
図6は撮像した画像の切替えの様子を示すもので、カメラの映像信号はカメラ51から64まで順に走査しながら出力される。
図5に戻り、カメラ51の最初の水平ラインが出力された時点で、映像信号切替えスイッチ73をカメラ2に切替える。カメラ52の2番目のラインが出力された時点で、映像信号切替えスイッチ73をカメラ53に切替える。カメラ3の3番目のラインが出力された時点で、映像信号切替えスイッチ73をカメラ54に切替える。・・・以下同様にカメラ64まで順次切替え、再びカメラ51に戻り同様に繰り返す。
【0060】
このように1ラインが出力される毎に映像信号切替えスイッチ73を順次切替えるようにする。切替えタイミングは同期信号発生器72で制御される。このようにすると画像合成手段74aにより合成映像が作成され、その画像が画像入力手段76を介して画像処理手段75に取り込まれる。
【0061】
それぞれのカメラの撮像は同時に行っているため、撮像範囲は搬送方向に対して同一のタイミングとなっている。各カメラからの水平信号は順次取り込むので、完全に同地点とはいえないが、例えば撮像範囲が50mm×37.5mmでこれを640画素×480画素で取り込む場合、1水平ラインの寸法は0.078mm(640/50)となる。
【0062】
カメラ14台で順次取り込んだ場合、最大の搬送方向の位置ズレは1.09mm(0.078×14)であり、幅を測定する目的から見れば無視できる程度の位置ズレである。また、1台のカメラとして見れば0.078mm×15回=1.17mm毎に幅の測定を全てのカメラで行っていることとなり、塗工機の制御周期より十分早いフィードバックをかけることができる。
【0063】
画像処理手段75では、画像処理部77により合成映像からライン毎に画像を分類することで、各カメラの映像を再現できる。この場合、各カメラの映像の縦方向の画素数は1/14となり、画素数が少なく処理の負荷を大幅に軽減することができる。
【0064】
塗工幅測定については、上記で述べた通りであるが、次に塗工長さ(=表裏の塗工位置ズレ)測定について説明する。
図5に示したようにカメラは、試料の搬送方向に対して略直交して1列に並んでおり、カメラ1台毎に90度旋回可能な機構(図示省略)に保持させてある。具体的には、光軸振れが発生しないように軸受けで支持し、小型ソレノイドやマイクロモータなどで駆動する。品種によって塗工パターンは変わるが検査する領域を把握することは容易である。
【0065】
即ち、カメラの設置位置(=撮影範囲)が事前にわかっていれば、塗工幅を測定するのに都合の良い位置にあるカメラと、塗工長さ測定に都合の良い位置にあるカメラを決定できる。従って、塗工長さを測定する場合は塗工長さ測定に用いるカメラだけを90度旋回させる。その状態で、幅測定と同様に水平信号を1本毎に差し込んで画像合成すれば、塗工長さを検出することができる。画像合成手段74bはカメラ51〜64を全て90度旋回させて塗工長さの画像を合成した状態を示している。
【0066】
なお、予め、画像処理手段75を構成する設定部70にて品種に合わせてカメラの役割を定め、品種替えの際に夫々のカメラ設定できるようにすることも可能である。
図5に示すようにカメラ53,58,62のみを90度旋回させるとともに、映像信号を割り振って幅測定画像と塗工長さ測定画像の2画面に画像合成し、2チャンネル分の画像を画像入力手段76を搭載した画像処理手段75に送り、前述のように合成映像からライン毎に画像を分類することで、各カメラの映像を再現し、画像処理をして判定部78により閾値判定をして、各種の補正を行って塗工部の幅や長さの寸法を算出することができる。
【0067】
上述の構成によれば、複数のカメラで同時に撮像しているので、測定位置の搬送方向の同時性を確保でき、正確な幅寸法測定が可能になる。また、ここではカメラ台数を14台として説明したが、幅測定用として1台、塗工長さ測定用に1台のカメラの2台で、幅方向の端検出及び流れ方向の端検出を例えば1.17mm間隔で測定することが可能である。
【0068】
カメラ台数が多くなっても、2チャンネル分の画像に集約されることで、画像入力手段76が1つで且つロースペックのものを選ぶことが可能となり、システム価格を安く抑えることができる。また、画像処理に関しても、カメラ毎に画像を再現した後の情報量はカメラ台数分の1で済み検出する方向も2種類なので画像処理のための負荷を軽減することができる。
【0069】
更に他の実施例について説明する。図1においてカメラと相対的な位置が変わらないように変位計21を取り付け、この変位計21の変位データを画像処理コンピュータ11に接続する。前述したように、カメラの視野角を小さく抑えることによって、光軸方向の変位に対する倍率の変動は小さくなっているが、誤差を発生することに変わりは無い。
【0070】
あらかじめ、カメラとシート1の距離が変わった際に寸法の測定値がどのように変化するかというデータを測定し、画像処理コンピュータ11に保存しておく。図1に示す変位計21によってシートとカメラの距離を測定し、画像処理コンピュータ11に取り込むことにより、カメラによる寸法測定のデータに補正を加えて、シートとカメラ間距離の変動の影響を取り除くことができる。
【0071】
また画像処理コンピュータに複数の画像入力手段を備えた画像入力ボードを搭載することによりさらに多くのカメラからの画像取り込みが可能となる。
平均値回路は図3の説明の中で述べたような積分器44,46と除算器47を用いたものに限るものではなく、A/D変換を用いたデジタル処理によるものでも良いし、積分値をスケーリングするような回路でも可能である。
【0072】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えばカメラの数は2台以上であればよい。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0073】
1 基材シート
2〜5 塗工パターン
6〜9、31、51〜64 カメラ
10、49 映像信号切替スイッチ
11 画像処理コンピュータ
12〜15 カメラの撮像範囲
16〜19 測定点
20,72 同期信号発生器
21 変位計
30 レンズ
32 塗工部分
33 注目部分
43 電圧発生器
44 第1積分器
45 積分時間設定回路
46 第2積分器
47 除算器
48 サンプルホールド回路
50 コンパレータ
70 カメラ位置設定部
71 映像信号切替手段
73 映像切替スイッチ
74 画像合成手段
75 画像処理手段
76 画像入力手段
77 画像処理部
78 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに塗工された塗工パターンの形状測定方法において、
1)シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に複数のカメラを並べ、前記シートを前記複数のカメラで撮影する工程、
2)撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を水平走査に同期させ前記複数のカメラの水平走査信号を順次切り替えて画像処理手段に取り込む工程を含むことを特徴とするシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法。
【請求項2】
撮影のタイミングは同時であることを特徴とする請求項1に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法。
【請求項3】
取り込んだ映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を合成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定方法。
【請求項4】
シートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された複数のカメラと、
前記複数のカメラで同時に前記シートを撮影するための指令を発する同期信号発生器と、
前記同期信号発生器の指令により撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切替える映像信号切替スイッチと、
前記映像信号切替スイッチで切り替えられた水平走査信号または垂直走査信号を順次取り込んで合成映像を作成する画像処理手段を備えたことを特徴とするシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項5】
前記複数のカメラはそれぞれ撮影した画像の水平走査の全部又は一部の映像信号の平均値を求める平均値算出回路と算出した平均値をホールドするサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路がホールドしている平均値を順次切り替えて出力する切替スイッチを具備し、各カメラの水平走査の指定範囲の平均値を水平走査の一定期間だけ出力することにより、複数カメラの垂直方向の映像信号変化を合成して出力することを特徴とする請求項4に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項6】
前記映像信号の平均値と閾値を比較するコンパレータを備えたことを特徴とする請求項請求項5に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項7】
シートに塗工された塗工パターンの形状測定装置において、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラと、
前記シートの搬送方向に直交して配置され、水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラと、
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラまたは前記水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラで同時にまたは別々に前記シートを撮影するための指令を発する同期信号発生器と、
前記同期信号発生器の指令により撮影した映像の水平走査信号または垂直走査信号の少なくとも一方を順次切替える映像信号切替スイッチを備えたことを特徴とするシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項8】
前記映像信号切替スイッチで切り替えられた水平走査信号または垂直走査信号を順次取り込んで合成映像を作成する画像処理手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項9】
前記シートの搬送方向に直交して水平ラインの撮影方向に配置された少なくとも一つのカメラと、前記シートの搬送方向に直交して配置され、水平ラインの撮影方向を90度旋回して配置された少なくとも一つのカメラは、前記撮影方向をいずれかの撮影方向に任意に切替可能としたことを特徴とする請求項7に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項10】
前記複数のカメラと前記シート間の距離を測定する変位センサを具備し、該変位センサの出力とあらかじめ求めておいた複数のカメラとシートとの距離と撮像倍率との関係を用いて前記複数のカメラで測定した前記塗工パターンの測定値を補正すること特徴とする請求項1乃至9に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。
【請求項11】
前記シートは電池電極であることを特徴とする請求項1乃至10に記載のシートに塗工された塗工パターンの形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−13667(P2012−13667A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189427(P2010−189427)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】