シード結晶からキャストシリコンを製造するための方法及び装置
光電池及び他の用途のためのシリコンをキャストするための方法及び装置を提供する。これらの方法によれば、炭素が低含量のインゴットを成長させることができ、その結晶成長はキャスティング中のシード材料の断面積を増加させるように制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,155の利益を請求する。米国仮出願60/951,155の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、エネルギー省によって認定された国立再生可能エネルギー研究所との元請負契約下での下請契約ZAZ−6−33628−11の下で米国政府の支援を得て行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般には、光起電の分野、及び光起電用途のためのキャストシリコンを製造するための方法及び装置に関する。本発明は更に、光電池及び他の半導体デバイスのような器具を製造するために用いることができる新しい形態のキャストシリコンに関する。この新規なシリコンは、単結晶質、ほぼ単結晶質、双晶、又は幾何学的多結晶質構造を有することができ、シード結晶を用いるキャスティングプロセスによって製造することができる。
【背景技術】
【0004】
光電池は光を電流に変換する。光電池の最も重要な特性の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するその効率である。光電池は種々の半導体材料から製造することができるが、妥当なコストで容易に入手でき、光電池の製造において用いるための電気特性、物理特性、及び化学特性の好適なバランスを有しているので、シリコンが一般的に用いられる。
【0005】
光電池を製造するための公知の手順においては、シリコン供給材料に、正又は負の導電型のいずれかを有するドーパントをドープし、溶融し、次に、個々のシリコン粒の粒径によって、溶融区域から結晶化シリコンを単結晶質シリコンのインゴットに引き上げる(チョクラルスキー(CZ)法又はフロートゾーン(FZ)法による)か、或いは多結晶質シリコン又はポリシリコンのブロック又は「ブリック」にキャストすることのいずれかによって結晶化させる。ここで用いる「単結晶質シリコン」という用語は、全体にわたって1つの一貫した結晶方位を有する単結晶シリコン体を指す。更に、通常の多結晶質シリコンは、センチメートルスケールの粒径分布を有し、複数のランダムに配向されている結晶が多結晶質シリコン体内に配置されている結晶質シリコンを指す。しかしながら、ここで用いる「幾何学的に配列されている多結晶質シリコン」(以下においては「幾何学的多結晶質シリコン」と略称する)という用語は、本発明の幾つかの態様による、多重配向結晶が多結晶質シリコン体内に配置されている幾何学的に配列されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶質シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶質シリコンにおいては、粒は通常は平均で約0.5cm〜約5cmの寸法であり、幾何学的多結晶質シリコン体内の粒方位は所定の配向にしたがって制御される。更に、ここで用いる「ポリシリコン」という用語は、マイクロメートルスケールの粒径、及び与えられた結晶質シリコン体内に配置されている複数の粒方位を有する結晶質シリコンを指す。例えば、粒は、通常は平均でおよそサブミクロン乃至およそミクロンの寸法であり(例えば、個々の粒は裸眼では視認できない)、粒方位は全体にわたってランダムに分布している。上記に記載の手順においては、インゴット又はブロックを、公知のスライシング又はソーイング法によって薄い基材(ウエハとも呼ぶ)に切り出す。次に、これらのウエハを光電池に加工することができる。
【0006】
光電池の製造において用いるための単結晶質シリコンは、一般に、CZ又はFZ法(いずれも結晶質シリコンの円筒形のブールが製造される方法である)によって製造される。CZ法に関しては、シード結晶を溶融シリコンのプールに接触させ、ブールの固体部分を通して熱を引き抜きながらブールをプールからゆっくりと引き上げる。ここで用いる「シード結晶」という用語は、凝固中に液体シリコンがシードの結晶性に適合するように液体シリコンと接触させる結晶質材料の片を指す。FZ法に関しては、溶融区域を通して固体材料を供給し、溶融区域の一方の側の中に導入することによって溶融し、溶融区域の他の側の上で一般にはシード結晶と接触させることによって再凝固させる。
【0007】
最近では、米国特許出願公開20070169684A1及び20070169685A1として公開されている2007年1月18日出願の米国特許出願11/624,365及び11/624,411に開示されているような、キャスト装置で単結晶質又は幾何学的多結晶質材料を製造するための新規な技術が発明されている。多結晶質シリコンインゴットを製造するためのキャスティングプロセスは、光起電技術において公知である。簡単に言うと、かかるプロセスにおいては、溶融シリコンを石英ルツボのようなルツボ内に収容し、制御された方法で冷却してその中に含まれているシリコンを結晶化させる。得られるキャスト結晶質シリコンのブロックは、一般に、光電池を製造するために用いるウエハの寸法と同等か又はこれに近接する断面を有するブリックに切断し、ブリックをかかるウエハに切り取るか又は他の方法で切り出す。このようにして製造される多結晶質シリコンは、それから製造されるウエハの内部において粒の互いに対する配向が有効にランダムである結晶粒の凝集体である。単結晶質又は幾何学的多結晶質シリコンは、具体的に選択された粒方位及び(後者の場合においては)粒界を有し、上記で言及した特許出願において開示されている新規なキャスト技術によって、液体シリコンをプロセス中に部分的に固体状態で保持される大きなシード層と接触させて、それを通して凝固中に熱を引き抜くことにより形成することができる。ここで用いる「シード層」という用語は、連続層を形成する所望の結晶方位を有する結晶又は複数の結晶の群を指す。これらは、キャストの目的のためのルツボの一つの側部と適合するように形成することができる。
【0008】
最良の品質のキャストインゴットを製造するためには、幾つかの条件を満足させなければならない。第1に、インゴットの可能な限り多くが所望の結晶度を有する。インゴットが単結晶質であるように意図される場合には、インゴットの全体の使用可能な部分は単結晶質でなければならず、幾何学的多結晶質材料に関しても同様である。第2に、シリコンは可能な限り少ない欠陥を含んでいなければならない。欠陥としては、個々の不純物、不純物の凝集体、シリコン格子内の固有の格子欠陥及び構造欠陥、例えば転位及び積層欠陥が挙げられる。これらの欠陥の多くは、結晶質シリコンから製造される機能している光電池内での電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こす可能性がある。これにより、電池の効率性の低下が引き起こされる可能性がある。
【0009】
長年の開発によって、良く成長したCZ及びFZシリコンにおいて最小量の欠陥が得られている。まず薄いネック部を成長させ、ここでシードに含まれる全ての転位を成長除去することによって、転位を含まない単結晶を達成することができる。挿入物及び二次相(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、又は炭化ケイ素の粒子)の混入は、溶融体に対するシード結晶の対向回転を維持することによって避けられる。酸素の混入は、産業界において公知なようにFZ又は磁気CZ法を用いて最小にすることができる。金属不純物は、一般に、ブールを加工した後のポットスクラップ又はタングエンド中に残留させることによって最小にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開20070169684A1
【特許文献2】米国特許出願公開20070169685A1
【発明の概要】
【0011】
幾つかの態様によれば、本発明はシリコンのキャスト中の熱の流れ、特にシード結晶を通る熱の流れを制御する方法及び装置に関する。望ましくは、シリコンは平坦な界面を伴って溶融するが、例えば単結晶質シリコン材料の量が最大になるように、成長は可能な限り大きい湾曲を伴って起こる。本発明の幾つかの態様においては、供給材料を溶融させる必要性と結晶質材料を成長させる必要性とのバランスが取れている。
【0012】
溶融工程中においては、シード結晶を通して熱を伝導させて、シード結晶の少なくとも一部を固体として保持しながら供給材料を確実に溶融させて、凝固工程中の結晶成長の配向を開始させることができる。凝固工程中においては、例えば製造される多結晶質材料の量を最小にするために、ルツボの壁を通した熱損失を減少及び/又は阻止することが望ましい。ルツボの底部は熱シンクと熱連絡しており、ルツボのための材料は通常は溶融シリコンよりも高い伝熱性を有しているので、ルツボの側部も同様に冷却される。驚くべきことに且つ予期しなかったことに、ルツボの下に配置される伝熱性材料及び断熱性材料の構成により、シード結晶から製造される単結晶質シリコンの量を増加させることによって熱の流れを制御して凝固を向上させることができる。
【0013】
ここで用いる「ほぼ単結晶質のシリコン」という用語は、物体の50体積%より多い量にわたって1つの一貫した結晶方位を有する結晶質シリコン体を指し、例えばかかるほぼ単結晶質のシリコンは多結晶質領域に隣接する単結晶シリコン体を含むか、又は他の結晶方位のシリコンのより小さい結晶を部分的か又は全体で含むシリコンの大きな隣接して一貫する結晶を含んでいてよく、より小さい結晶は全体積の50%より多い量を構成しない。好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の25%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。より好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の10%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。更により好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の5%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。
【0014】
ここで用いる「双晶シリコン」という用語は、物体の50体積%以上に関して全体にわたって1つの一貫した結晶方位、及び物体の体積の残りに関して他の一貫した結晶方位を有するシリコン体を指す。例えば、かかる双晶シリコンは、結晶質シリコンの体積の残りを構成する異なる結晶方位を有する他の単結晶シリコン体に隣接する1つの結晶方位を有する単結晶シリコン体を含んでいてよい。好ましくは、双晶シリコンは同じシリコン体内にそれらの結晶方位においてのみ異なる2つの別個の領域を含んでいてよい。
【0015】
具現化され広範に記載された本発明によれば、シリコンを充填したルツボを、熱シンク及び断熱性領域と接触している伝熱性材料を含み、層の伝熱性部分がルツボの底面の約5%〜約99%と接触している層の上に配置し;伝熱層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。熱の引き抜きは、キャストシリコンを第1の温度にし、次にそれを第2の温度に冷却することによって直接シード成長を行わせるように、シリコンの一部又は全部が溶融した後に行うことができる。
【0016】
本発明によれば、また、ルツボの中心に向かって内側方向にテーパー状になっている壁部を有するルツボ内にシリコンを配置し;シリコンを溶融し;ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;キャストシリコンを第1の温度にし;シリコンを第1の温度と異なる第2の温度に冷却し;ルツボからキャストシリコンを引き抜き;次にキャストシリコンから切片を切り出す;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、また、ルツボの中心から外側に向かってテーパー状になっている壁部を有するルツボ内にシリコンを配置し;シリコンを溶融し;ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;キャストシリコンを第1の温度にし;シリコンを第1の温度と異なる第2の温度に冷却し;ルツボからキャストシリコンを引き抜き;次にキャストシリコンから切片を切り出す;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0018】
本発明によれば、また、底面及び複数の側壁を有し、複数の側壁の少なくとも1つが、ルツボの底面に直交する面に対して且つ底面から上に向かって伸びる方向で見て約1°〜約25°の角度でルツボの中心に向かって内側方向にテーパー状になっているシリコンをキャストするためのルツボが提供される。テーパー状の1つ又は複数の側壁により、底面から離れる方向において容器の断面積を減少させることができる。
【0019】
本発明によれば、また、底面及び複数の側壁を有し、複数の側壁の少なくとも1つが、ルツボの底面に直交する面に対して且つ底面から上に向かって伸びる方向で見て約2°より大きい角度でルツボの中心から外側に向かってテーパー状になっているシリコンをキャストするためのルツボが提供される。テーパー状の1つ又は複数の側壁により、底面から離れる方向において容器の断面積を増加させることができる。
【0020】
本発明によれば、また、底壁を未被覆の状態で残して、剥離コートでルツボの内側壁を被覆し;シリコンシード結晶を未被覆の壁部と接触させて配置し;シリコン供給材料をルツボ内に配置し;シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら供給材料を溶融し;シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし;そしてシリコンを第2の温度に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0021】
本発明によれば、また、予めキャストされたインゴットをスラブにスライスし;スラブを化学的に処理して不純物を除去し;スラブをシード層として用いるためにルツボ内に配置し;次にルツボにキャストのための供給材料を充填する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、また、層の中心領域内のシード結晶が表面に直交する1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%〜約99%をカバーし、一方、層の端部上の残りのシード結晶が表面に直交する少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域をカバーするように、単結晶質シリコンシード結晶の層をルツボ内の少なくとも1つの表面上に配置し;供給材料シリコンを加え、供給材料及びシード結晶の一部を溶融状態にし;シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを所定の例えば均一な第1の温度にし、次にシリコンを均一な第2の温度に好ましくは均一に冷却する;ことを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、また、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に絶縁性のベースプレート上に載置されているルツボの底面上に配置し;固体又は液体のシリコン供給材料を導入してシード結晶を部分的に溶融し;凸形の固体境界によって単結晶成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜き;シリコンを第1の温度にし、それを第2の温度に好ましくは均一に冷却し;キャストシリコンのシード結晶と反対の側部からスラブを切り出し;化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして大きなスラブをその後のキャスティングプロセスのための新しいシード層として用いる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0024】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体シリコン供給材料と一緒に、リッド又はカバーを有するルツボ中に装填し;シード層の一部を固体として保持し、且つアルゴン及び窒素ガスの少なくとも1つをリッド又はカバー中の少なくとも1つの孔を通して流し、一方、少なくとも他の孔からガスを排出しながらシリコンを溶融及び凝固させ;シリコンを好ましくは均一に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0025】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層をルツボ中に装填し;リッドを有するルツボに蓋をし;好ましくは過熱した液体シリコンをルツボ中に導入し;シード層の一部を溶融し;アルゴン及び窒素ガスの少なくとも1つをリッド中の少なくとも1つの孔を通して流し、一方少なくとも1つの他の孔からガスを排出しながらシリコンを凝固させ;そしてシリコンを冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0026】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;実質的に、シード層の中心部上で平坦で、シード層の端部において凸状である固/液界面を保持しながら、供給材料及びシード層の一部を溶融し;少なくとも初めは同じ固/液界面形状を保持しながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし、そしてシリコンを第2の温度に冷却する(ここで加熱及び冷却は好ましくは均一である);ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0027】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;シード層全体にわたって実質的に平坦である固/液界面を保持しながら、供給材料及びシード層の一部を溶融し;少なくとも初めはシード層の端部を含む領域内に過剰の熱を与えながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし、そしてシリコンを第2の温度に好ましくは均一に冷却する(ここで加熱及び冷却は好ましくは均一である);ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0028】
本発明によれば、また、熱シンク上に載置されているルツボを取り囲んでおり、シリコンを溶融するために与えられている加熱器;熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段;ガスを導入するための導入口;及び、第1の加熱器と一緒に配置されている、ルツボを取り囲むための断熱水冷チューブの少なくとも1つのループ(ここで、ループはルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるように稼働させることができる);を含む、シリコンをキャストするための装置が提供される。
【0029】
明細書中に含まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1A〜1Bは、断熱層がキャスト装置内のルツボの下側で伝熱層と組み合わされている、本発明の一態様による代表的なシステムを示す。
【図2】図2A〜2Dは、本発明の幾つかの態様によるテーパー状のルツボの2つの例を、その中でキャストされるシリコンに対する所望の効果の説明と一緒に示す。
【図3】図3は、本発明の一態様による、部分的に被覆されたルツボ中に装填したシリコン供給材料の例を示す。
【図4】図4は、本発明の一態様による、シード層材料を再生利用する方法の例を示す。
【図5】図5は、本発明の一態様による、シード層を形成する単結晶シリコンの代表的な配列を示す。
【図6】図6は、本発明の一態様による、大きな単結晶シード層を生成するための代表的な方法を示す。
【図7】図7A〜7Bは、本発明の一態様による、低炭素の単結晶質又は多結晶質シリコンをキャストするための代表的な装置を示す。
【図8】図8は、本発明の幾つかの態様による、単結晶質又は多結晶質シリコンをキャストするための代表的な装置を示す。
【図9】図9A〜Dは、本発明の一態様による、断熱層が交互形状で伝熱層と組み合わされている代表的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで本発明の幾つかの態様を詳細に説明し、その幾つかの例を添付の図面において示す。可能な限り、同じか又は類似の部品を示すために同じか又は同様の参照番号を図面全体にわたって用いる。
【0032】
本発明にしたがう幾つかの態様においては、溶融シリコンの結晶化はシード結晶を用いるキャスティングプロセスによって行う。ここで開示するように、かかるキャスティングプロセスは、結晶化シリコンのキャスト体における結晶粒の寸法、形状、及び配向を制御するように行うことができる。ここで用いる「キャスト」という用語は、溶融シリコンを保持するために用いる型又は容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンを形成することを意味する。一例として、シリコンはルツボ内で凝固させることによって形成することができ、ここでは凝固は、シリコンをルツボから引き上げる冷却された外部物体を通してではなく、ルツボの少なくとも1つの壁部から始まる。したがって、溶融シリコンの結晶化は、シードを移動させるか、又は型、容器、若しくはルツボを移動させることのいずれかによってブールを「引き出す」ことによっては制御されない。更に、本発明の一態様によれば、型、容器、又はルツボは、溶融シリコンを凝固させるための少なくとも1つの加熱側壁面を含む。ここで用いる「加熱壁」という用語は、溶融シリコンと等温か又はこれよりも熱い表面を指す。好ましくは、加熱壁面はシリコンの加工中において固定して保持される。
【0033】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化シリコンは、連続単結晶質であるか、又は制御された粒方位を有する連続多結晶質のいずれかであってよい。ここで用いる「連続単結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が単結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない単結晶質シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続多結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が多結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない多結晶質シリコンを指す。
【0034】
本発明の幾つかの態様によれば、シリコンのキャスティングは、結晶質シリコンの「シード」の所望の一群を、例えば溶融シリコンを保持することができる石英ルツボのような容器の底部内に配置することによって行うことができる。シードによって、ルツボの底部の全部、又は殆ど、又は実質的に全部を覆うことができる。ここで用いる「シード」という用語は、所望の結晶構造を有し、それをその中に配置することができる容器の表面に合致する側部を有する幾何学的形状のシリコンの片を指す。かかるシードは、シリコンの単結晶質の片か、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの片のいずれかであってよい。本発明にしたがうと、シードは、その底面と平行な頂面を有していてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。例えば、シードは寸法が直径で約2mm〜約10mm乃至直径で約100mm〜約1000mmで変化するシリコンの片であってよい。シリコンの片は、約1mm〜約1000mm、好ましくは約10mm〜約50mmの厚さを有していてよい。シードの好適な寸法及び形状は簡便性及びタイリングを得るように選択することができる。タイリングは、以下により詳細に説明するが、シリコンシード結晶をルツボの底面又は側面及び底面のいずれかにわたって所定の幾何学的配向又はパターンで配列することである。
【0035】
次に、シリコン供給材料をルツボ中のシードの上に導入して、次に供給材料を溶融することができる。或いは、溶融シリコンをルツボ中に且つシードの上に直接注ぎ入れることができる。溶融シリコンを注ぎ入れる場合には、ルツボは、好ましくはまずシリコンの溶融温度に非常に近い温度か又はそれ以下の温度にし、次に溶融シリコンを注ぎ入れる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固が始まる前にシードの薄層を溶融させることができる。
【0036】
次に、好ましくは溶融シリコンの冷却を行って、それにより溶融シリコンの結晶化が、固体のシードの元の頂部のレベルか又はこれより下のレベルで開始し、シードから離れる方向、好ましくは上向きに離れる方向に進行するように、溶融シリコンをシードの存在下で冷却及び結晶化させる。これは、シード結晶を通して融解熱を熱シンクに引き抜くことによって行うことができる。ここで用いる「熱シンク」という用語は、熱を他の物体から引き抜くために用いる物体を指す。熱シンクは、より低温の流体による対流、又はより低い温度の物体へのエネルギーの直接放射による、より高い温度領域からより低い温度領域への熱伝導を用いて熱を引き抜く。一般に、1つの側が冷却する物体と平衡になり、他方が冷却器領域とエネルギーを交換するように、熱シンク全体にわたる熱勾配が保持される。
【0037】
本発明の幾つかの態様によれば、溶融又は凝固中において、溶融シリコンと結晶化シリコンとの間の液/固界面をキャスティングプロセス全体にわたって実質的に平坦に保持する必要はない。即ち、冷却中においては、溶融シリコンの端部における固/液界面は、溶融シリコンとシリコンシード結晶との間の距離が増加する方向に移動するように制御される。溶融シリコンの凝固が開始すると、凝固前面は初めは実質的に平坦であり、好ましくはシリコンの成長固体物質の水平端において強い湾曲を有する。したがって、固/液界面の形状はキャスティングプロセス全体にわたって制御された輪郭を有することができる。
【0038】
本発明の幾つかの態様にしたがうように溶融シリコンの結晶化を行うことにより、ランダムではなく特定の粒界及び特定の粒径を有するキャストシリコンを製造することができる。更に、全てのシードが互いに同じ相対方向に配向し、例えば(100)極方向がルツボの底面に直交し、(110)極方向が長方形又は正方形の断面のルツボの側面に対して45°となるようにシードを整列させることにより、かかるキャストシリコンの極方向がシードのものと同じである単結晶質又は実質的に単結晶質のシリコンである大きなキャストシリコン体を得ることができる。同様に、他の極方向はルツボの底面に直交していてよい。更に、全ての共通の極方向がルツボの底面に直交するように1以上のシードを配列させることができる。更に、本発明の一態様にしたがうと、2以上の異なる極方向のシード結晶を一緒に用いて結晶成長の有効性を最大にして、所望の結晶方位を有する可能な限り大きな体積のシリコンを生成させることができる。
【0039】
本発明の幾つかの態様にしたがうキャスティングプロセスのために用いるシードは、任意の所望の寸法及び形状のものであってよいが、好適には、シリコンの正方形、長方形、六角形、偏菱形、又は八角形の片のような単結晶質シリコン又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの幾何学的形状の片である。これらはタイリングに対して伝導性に形成して、端から端まで且つルツボの底部に適合させて所望のパターンで配置又は「タイリング」することができる。また本発明の幾つかの態様にしたがうと、シードをルツボの1以上の側部上に配置することができる。かかるシードは、例えば単結晶質シリコンのブールのような結晶質シリコンの源を所望の形状を有する片に切り出すことによって得ることができる。またシードは、その後のキャスティングプロセスにおいて用いるためのシードを初めのキャスティングプロセスから製造することができるように、本発明の幾つかの態様によるプロセスによって製造されるシリコンの試料からそれらを切り出すことによって形成することもできる。例えば、転位を有しないシード材料のより小さな片を用いて、新しいシード結晶層として用いるためにルツボの全底部を覆うのに十分に大きな転位を有しない単結晶を成長させることができる。
【0040】
ここで、本発明の幾つかの態様によるシリコンを製造するための方法及び装置を説明する。しかしながら、これらは本発明の幾つかの態様にしたがうシリコンを形成するための唯一の方法ではない。
【0041】
図1A及び1Bを参照すると、キャスト装置の加熱区域の断面が図1Aに示されており、種付けキャスティングプロセスの溶融段階の終了時における液体シリコン100及び固体シリコン101が示されている。シリコンは、例えば溶融石英又はシリカのルツボであってよい底部と壁部を有するルツボ110内に配置されている。この時点において、ルツボ110内の固体シリコン101は、ルツボの底部に予め装填されているシリコンのシード層から完全に構成される。供給材料シリコン(図示せず)をシード層の頂部上に導入する。供給材料シリコンは、固体として装填してその後にルツボ内で溶融するか、或いは別の容器内で溶融して液体としてシードの頂部上に導入することができる。いずれの場合においても、元のシリコンシード層が部分的に溶融し、固体シリコン101は完全にシリコンシード層の残りから構成される。好ましくは、ルツボ110は、シリカ、窒化ケイ素、又は液体カプセル封入剤から製造されるもののような、ルツボ110からの結晶化シリコンの取り出しを助ける剥離コートを有する。
【0042】
更に図1Aを参照すると、ここで示す炉の加熱区域においては、抵抗加熱器120によりシリコンを溶融するのに必要な温度を保持するエネルギーが与えられ、一方、断熱材130によって熱が外側の室(図示せず)に逃げるのが抑止される。本発明の一態様にしたがうと、ルツボ110は、熱をシリコンから制御して伝導除去するようにも働く複数の層によって支持される。例えば、伝熱性ブロック140は熱を水冷室(図示せず)に放射して、それによってその上の加熱区域の部品を冷却する。図1Aにおいて断面で示され、図1Bにおいて三次元で示されるグラファイト支持プレート142は、伝熱層141から熱を伝導して、次に熱をルツボ110並びにシリコン100及び101から伝導除去する。熱除去路を変化させ、その結果として凝固前面の形状を変化させるために、代表的な構成においては断熱層150によって伝熱層141を取り囲むことができる。固体グラファイトの側部プレート143がルツボ110を取り囲んで、ルツボに対する構造的支持を与える。本発明の幾つかの態様にしたがうと、キャスト装置はグラファイト支持プレート142を有していてよいが、伝熱層141及び断熱層150によって制御される調整された熱伝導路は必須ではない。
【0043】
更に図1A及び1Bを参照すると、グラファイト側部プレート143をグラファイト支持プレート142上に載置して、プレート142に直接熱を伝導して、ルツボの底端に冷スポットを生成させることができる。しかしながら、相対する層141及び150に関する調整された熱伝導の効果により、例えばルツボ110の角部をより熱く保持することによって、冷却パラメーターを変化させ、これにより液/固界面の形状を変化させて、それにより横方向への溶融を少量しか起こさないようにすることができる。例えば、図1Aに示すように、固体シリコン101は、ルツボ110の下の材料において起こる熱交換によってその左端及び右端において大きな湾曲を有する。かかる湾曲により、固体の横方向への膨張及び種付け結晶構造の外側への成長を引き起こすことができる。図1Aにおいて、固体シリコン101の結晶成長方向を黒矢印によって示す。
【0044】
図2A〜2Dを参照すると、ルツボの形状を変化させることによってシリコンの結晶成長を変化させることができる。例えば、図2A及び2Bに示すように外側に向かってテーパー状になっているルツボ200内で結晶成長を行わせることができ、ここでは固体シリコン221に対する液体シリコン220の湾曲によって種付けされた結晶(図示せず)の横方向への膨張が促進され、その成長方向は図2Bにおいて矢印で示す。他の例においては、図2C及び2Dに示すように内側に向かってテーパー状になっているルツボ210内において結晶成長を行わせることができ、これも、図2Aにおけるルツボ200と同様に、使用可能なキャストシリコン222の量を最大にし、キャストシリコンインゴット(222+223)をブリック(破線によって示す)に切り出す間に除去される使用できないか又は望ましくないシリコン223の量を最小にする有利性を有する。キャストシリコンの側壁上の望ましくないシリコン223のテーパー状の形状(図2Dにおいて断面で示す)は、より迅速に冷却されるインゴットの頂部におけるシリコンと比べて、ルツボの底部におけるシリコンが凝固及び結晶成長中に高温状態で費やす過剰の時間のためである。
【0045】
図3は、キャスティングのためにルツボ310中に装填されるシリコン(供給材料300及び結晶質シード301)の断面を示す。窒化ケイ素又は炭化ケイ素のような剥離コート320を、供給材料300がルツボ310と接触するルツボ310の領域に施すことができ、これはキャスティング中に完全に溶融するようになるシリコン300の領域に対応する。結晶質シード301の下側にはコートは施さない。シード301は完全には溶融せず、したがってルツボ110に接着しない。
【0046】
図4は、結晶質シリコンシード層を再利用するための方法を示す。図4に示すように、シード層401から成長したキャストインゴット400を、まず破線にそってスライスしてシード層401を含む材料のスラブを取り出す。次に、材料のスラブを破線の端部で切り取って、他のルツボ内に配置するのに障害となる可能性のある過剰の材料を除去する。元のシード層401の寸法及び形状に切り取られた切取スラブ402を次に、好適な液体又は他の材料を含むタンク又はタブのような容器410内において、場合によってはシリコンの他の同様の片と一緒に処理して、層401(及び場合によってはシリコンの他の片)から汚染物質及びデブリスを除去し、その後、その後のキャスティングプロセスにおいてシード層として用いるために新しいルツボ420内に配置する。
【0047】
図5は、シード層を形成するように配列した単結晶シリコン片の代表的な配列を示す。(001)結晶方位はシリコン太陽電池を製造するために有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、その全表面を覆うパターンピラミッドを形成するように化学的にエッチングすることができ、これにより反射を減少させることと材料内の光路長を増加させることの両方によってシリコンの光捕捉能を向上させることができる。化学エッチングは公知の方法によって行うことができる。しかしながら、シリコンの多結晶質領域に隣接して配置した場合には、その(001)極方向に対して鋭角に粒界を成長させるその傾向によって(001)シリコンのキャスティングは困難になる。多結晶質シリコンの成長に対抗するために、幾何学的配列の複数の単結晶質シリコンシード結晶を、ルツボ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えばルツボの底面の上に配置することができる。ここで、幾何学的配列としては最密多角形が挙げられる。図5において示すように、(001)シリコンの片500は、長方形の(111)シリコン501の周縁によって取り囲まれている。周縁のシリコン501の極方向を(111)として示すが、これは、多結晶質領域に隣接して成長する際に競合的に優位である任意の結晶方位であってよい。このようにして、得られるキャストインゴット(図示せず)の大部分は(001)シリコンから構成され、シリコン501から成長する競合的に優位な(111)粒によって、シリコン500の上の(001)シリコンによって占められる領域内での多結晶質シリコンの成長が制限される。同様に、本発明の幾つかの態様にしたがって多結晶質シリコン体をキャストすることによって製造されるシリコン結晶粒は、円柱状に成長させることができる。更に、かかる結晶粒は、凝固が進行するにつれて収縮する(001)断面領域を有するのではなく、それから形成されるシードの形状であるか又はそれに近似する断面を有することができる。このような具体的に選択された粒界を有し、好ましくは粒界の接合部が角部において接する3つの粒界のみを有するシリコンを製造する場合には、条件は図5において示される配列に合致する。
【0048】
図6は、シード層として用いるための大面積で転位のない単結晶を製造するための方法を示す。断面で示すこの方法においては、多結晶質供給材料600を、面積が約25cm2〜約10,000cm2の横方向の寸法及び約3mm〜約1000mmの厚さを有していてよい単結晶シード601と一緒に装填する。供給材料600をルツボ610内に配置し、これを次に伝熱性部品(620)及び断熱性部品(630)から構成される複数の層620、621、及び630の頂部上の装置(図示せず)内に配置する。伝熱性部品620の領域は、好ましくはルツボ610の底部とほぼ同じ形状であり、シード結晶601の約50%〜約150%の横方向の面積を有する。溶融の間は、伝熱性領域620を通して支持プレート621に熱を引き抜き、一方、熱が断熱層630を通過することは抑止される。シード結晶601の完全な溶融を抑止するために、キャスティングの溶融段階の間においても伝熱性領域620を通して熱を伝導除去する。全ての供給材料600及びシード結晶601の少量が液体シリコン602に溶融したら、残りの固体シリコン603は、次に凝固プロセスのための核形成層として作用する。断熱層630の存在は、核形成及び成長の間の固体シリコン603の形状、及び図6において矢印で示される凝固の方向を制御するのを助ける。凝固表面の強い湾曲によって固体シリコン603の外側への成長が引き起こされ、一方、多結晶質領域605が最小になる。インゴット604がキャストされたら、インゴットの上部から水平の層を切り出して(破線)、新しいシードスラブ606として用いることができる。スラブ606は、清浄化し、切り取り、新しいルツボ610内で新しいインゴットのための完全なシード層として用いるか、或いは上記に記載した方法を再び用いて更に大きい単結晶のための出発点として用いることができる。
【0049】
図7A及び7Bは、低炭素の単結晶質又は多結晶質シリコンを種付けされたインゴットにキャストするための装置の断面図である。図7Aにおいて示すように、シード結晶700を、供給材料701と一緒に、炉の加熱区域(表示せず)内に配置されているルツボ710内に装填する。ルツボ710は、セラミックのリッド711(図7Bにおいても示す)で被包するように示されているが、被包せずに周囲雰囲気に完全に開放していてもよい。キャスティングにおいては、炭素をグラファイト断熱材720の分離した片からインゴット中に含ませることができる。これは、ルツボ710中に落下させてもよいし、或いはルツボ710からの酸素をシリコン溶融体中に溶解させ、次にSiO分子(図示せず)として蒸発させることによってもよい。これらの分子は、炉のグラファイト部分720、750、760に接着して、反応:SiO+2C→SiC+COによって反応することができる。
【0050】
COガスの分子は液体中に侵入し、ここでSiCが形成され、Oが再び解離してサイクルが繰り返される。セラミックのリッド711(図7Bに示す)をルツボ710に導入し、プロセスガス730(例えばアルゴンであってよい)を注意深く制御することによって、炭素取り込みの両方のメカニズムを有効に停止するか又は大きく制限することができる。セラミックのリッド711は、例えば溶融シリカ、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素などをはじめとする数多くの材料で製造することができる。上記に記載の炭素ガスの反応を抑止するために、アルゴンのような不活性ガスの新しい供給流が流路740を通って中に入り、他の流路(図示せず)を通って排出されるデザインとすることが望ましい。
【0051】
更に図7A及び7Bを参照すると、キャスティングプロセスは、炉内にルツボ710を設置する前に1以上のシード700及び供給材料701を装填するか、或いは1以上のシード700のみを装填し、その後、別の溶融チャンバーからルツボ中に液体シリコン750を導入することのいずれかによって運転することができる。
【0052】
図8は、キャスティング中の固/液界面の形状を変化させるための本発明の幾つかの態様にしたがう装置を示す。図8において示すように、第1の加熱器820及び更なる加熱器840がキャスト装置の加熱区域(断熱材831によって取り囲まれて示されている)内に配置されて、材料800、801に目標の加熱を誘導する。固体シード材料801の頂部の上の液体材料800は、ルツボ810の側壁付近の端部において湾曲している界面を有する。第1の加熱器820は第1の熱シンク860と一緒に、通常は実質的に平坦な固/液界面(図示せず)を形成するように働く。しかしながら、更なる加熱器840が材料800、801に電流を直接接続して、ルツボ810の壁付近の材料800、801の端部に誘導加熱を導き、それによって固体材料801をその周辺で溶融する。
【0053】
更なる加熱器840は、図8において示すように、例えば銅であってよい導電性金属のコイルであり、循環する液体850によって冷却され、被包層830によって第1の加熱器820から断熱されている。更なる加熱器840は、図8において示すようにループでルツボ810を取り囲む単巻コイルであってよく、或いは螺旋を構成するループの間に任意の所望の間隔を有する螺旋を形成する複数のループを有していてもよい。更なる加熱器840は、また、固/液界面(図示せず)に影響を与えるようにルツボ810の壁に対して移動させることができるように構成することもできる。更なる加熱器840は銅管を通して流れる電流によって運転され、一方、水がそれを冷却するので、管を通る電流は強い磁場を形成し、これが液体シリコンと結合して、シリコン内に対応する電流を誘導する。シリコン内及び/又はそれを通る電流からの抵抗加熱により局所的な加熱作用が与えられる。
【0054】
また、更なる加熱器840として抵抗加熱器を用いることができるが、抵抗加熱器は材料800、801のような特定の体積の材料を標的にして熱を加えることにおいてはさほど効率的ではない可能性がある。図8において示される装置を用いるキャスティング中においては、更なる加熱器840は、シード材料801を過度に溶融しないように溶融サイクルの終了時付近においてのみ作動させる。更なる加熱器840により、凝固プロセスの少なくともほぼ初めの20%にわたってルツボ810に熱を加え続ける。また、更なる加熱器840により、冷却段階が行われるまで全凝固プロセスを通してルツボ810に熱を加え続けることもできる。
【0055】
ここで開示するように、本発明の幾つかの態様を用いて、簡単でコスト的に有効なキャスティングプロセスによって、単結晶質シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、双晶シリコン、又は幾何学的多結晶質シリコンの大きな物体を製造することができる。本発明の幾つかの態様にしたがう方法において用いるシリコン供給材料、及び製造されるシリコンには、以下のもの:ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、及びビスマス;を含むリストから選択される1種類以上のドーパントを含ませることができる。かかる1種類又は複数のドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。好ましくは、シリコン中の1種類又は複数のドーパントの量は、シリコンから製造されるウエハが約0.1〜約50Ω・cm、好ましくは約0.5〜約5.0Ω・cmの抵抗を有するような量である。また、ここで開示する方法及び装置を用いて、好適な液相を有する他の材料をキャストすることができる。例えば、本発明の幾つかの態様によって、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、サファイア、及び数多くの他のIII−V又はII−VI材料、並びに金属及び合金をキャストすることができる。
【0056】
更に、ここではシリコンのキャスティングを記載したが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(そのサファイアの単結晶形態を含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。更に、数多くの他のIII−V族又はII−VI族材料、並びに金属及び合金を、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストすることができる。
【0057】
幾つかの態様によれば、断熱性領域のために好適な断熱性材料としては、炭素繊維断熱ボード、炭素結合炭素繊維(CBCF)、アルミナ繊維、シリカ繊維、溶融シリカ、溶融石英、放射線反射材、炭素繊維複合体、及び/又は比較的高い伝熱性及びキャスティングプロセスの運転温度における安定性を有する任意の他の物質を挙げることができる。
【0058】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料のために好適な伝熱性材料としては、グラファイト、高温金属、高温合金、タングステン、モリブデン、タンタル、炭化ケイ素、十分な熱伝導率を有するセラミックス、及び/又は断熱性材料よりも低い熱伝導率及びキャスティングプロセスの運転温度における安定性を有する任意の他の物質を挙げることができる。
【0059】
幾つかの態様によれば、層中の材料は、少なくとも約20:1(伝熱体/断熱体)、望ましくは少なくとも約50:1、より望ましくは少なくとも約100:1の熱伝導率の比を有する。例えば、約1400℃の運転温度範囲において、グラファイトは48W/m/Kの熱伝導率を有し、一方、CBCFは0.7W/m/Kの熱伝導率を有し、これにより約68:1の比を与える。室温において測定した場合には、同じ材料は約260:1の比を有する。
【0060】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料は、正方形及び/又は長方形の形状を形成するような断熱性領域によって枠に囲まれている。望ましくは、伝熱窓は少なくとも概してシード結晶配列の形状に合致及び/又は対応する。また、図9A〜Dにおいて示すように、角部は2つの側から加熱されるので、過剰の冷却領域が角部において適用される。図9Aは側部の中心における断熱層150の幅が角における断熱層150の幅の約2倍であるように形作られた断熱層及び/又は領域150を有する伝熱層141を示す。図9Bは、ルツボ110を伝熱層141及び断熱層150に対して示す。図9Cは、断熱層150上に配置されている支持壁142(通常はグラファイト)の輪郭を破線で示す。図9Dは、ルツボ110内に配置されている固体シリコン101の輪郭を伝熱層141及び断熱層150に対して破線で示す。
【0061】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料及び/又は断熱性材料を形作る方法は、ソー、ルーター、及び/又は任意の他の好適な器具を用いることを含む。唇形、梁形、噛合片、面取、丸角などのような伝熱性材料及び/又は断熱性材料の任意の好適な形状が可能である。
【0062】
望ましくは、部分的に溶融したシード結晶の固体の周縁はほぼ正方形のままである。約0.5〜約2.0、望ましくは約1.0、更により望ましくは約0.9〜約1.1のような、シード結晶領域に対する伝熱窓の任意の好適な面積比が可能である。
【0063】
幾つかの態様によれば、更なる加熱器及び/又は水管加熱器は、ルツボの高さに対して移動させて、凝固中にシリコンに局所的な熱を加え、固/液界面に関して上向き及び/又は下向きに調節するなどを行うことができるようになっている。この動的能力により、凝固中の入熱を制御して溶融中の溶融体/固体界面の形状を平坦にして、壁部を加温状態に保持して、所望の単結晶質シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、及び/又は幾何学的多結晶質シリコンの成長を最大にしながら多結晶質材料の成長を最小にすることなどを行うことができる。
【0064】
本発明の他の幾つかの態様によれば、動的能力により、装置によって例えば溶融セグメント及び成長セグメントなどにおける熱流を変化させることができる。断熱性領域は、例えばルツボ及び/又は支持壁の下側に断熱性領域を挿入するか及び/又はそこから断熱性領域を除去することによって増加及び/又は減少させることができる。層には、標識、ノッチ、ペグ、及び/又は種々の部品を配置するのを助ける任意の他の好適な器具を含ませることができる。他の幾つかの態様においては、静的断熱によって溶融及び成長における必要性及び/又は特性の間で平衡が保たれる。
【0065】
幾つかの他の態様によれば、本発明は、層の上にルツボを配置することを含むキャストシリコンの製造方法を包含する。この層は、伝熱性材料、熱シンク、及び断熱性領域を含み、層の伝熱性部分はルツボの底面の一部と接触している。本方法は、ルツボの底部上に少なくとも1つのシード結晶を配置し、溶融シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し、そして伝熱性材料を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを更に含む。望ましくは、本方法は、少なくとも1つのシード結晶を含むように固形体の一部を形成することを更に含む。
【0066】
幾つかの態様によれば、本発明は、キャストシリコンの固形体を提供し、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し、少なくとも1つのウエハの表面にドープすることによってp−n接合を形成し、表面中和層及び/又は背面場を形成し、ウエハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成することを含む太陽電池の製造方法を包含する。
【0067】
幾つかの態様によれば、層を通る熱流束を、シリコンを溶融する工程から固形体を形成する工程へ変化させて、例えば非対称の溶融を与え、キャスティングプロセスを最適にする。望ましくは、溶融中に、例えば固体シリコンシード材料をルツボの底部上に保持するのにかろうじて十分な熱シンクへの最小の熱移動が起こる。しかしながら、溶融中においては、熱移動の領域は平坦な溶融体/固体界面を促進するように可能な限り広い。冷却又は凝固中においては、熱シンクはより高い熱流束を受けてインゴットの凝固を引き起こすが、断熱性領域は増加して、伝熱性材料及び/又は熱シンクからグラファイト支持壁及びルツボの側壁を少なくとも部分的に離隔する。この配列の効果は、側部を加温状態に保持し、ドーム状の溶融体/固体界面を保持して、側壁からの多結晶質シリコンの成長を最小にすることである。
【0068】
場合によっては、熱を引き抜く工程によって凝固中に種付けされた結晶の側部領域が膨張する。この態様においては、ルツボ内の固体シリコン供給材料を少なくとも1つのシード結晶の頂部上に配置し、ルツボの底部を冷却して少なくとも1つのシード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら固体シリコン供給材料を溶融することを更に含ませることができる。
【0069】
また、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶が完全に溶融しないように加熱を制御し、溶融シリコンを溶融容器からルツボ中へ移すことを更に含む。
【0070】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料は、ルツボの底表面積の約5%〜約99%、望ましくは少なくとも約90%と接触している。或いは、伝熱性材料は、ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶の寸法及び形状に対応し、例えば約0.5〜約2.0、望ましくは約0.9〜約1のシード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比を有する。
【0071】
本製造方法には、例えば断熱性領域の少なくとも一部を加えるか及び/又は除去することによってルツボの底部と接触する伝熱性材料及び/又は伝熱性領域を減少させるか及び/又は拡げることを更に含ませることができる。
【0072】
望ましくは(しかしながら必ずしも必要ではないが)、熱シンクは熱を水冷容器の壁部に放射する放射熱シンクを含む。幾つかの態様によれば、断熱性領域は伝熱性材料の周りの周縁部又は縁部を形成する。或いは、周縁部は層の角部よりも層の側部の中心においてより幅広い輪郭形状を含む。周縁部により、例えば冷却を減少させて壁からの多結晶成長を遅延させるために、ルツボに関するグラファイト側支持壁を熱シンクから熱的に分離することができる。周縁部は、場合によっては熱リングと呼ぶことができる。
【0073】
幾つかの態様によれば、本発明は、場合によってはルツボ、場合によってはルツボの底部上の少なくとも1つのシード結晶、ルツボと熱連絡している抵抗加熱器、及び層を含むシリコンをキャストするための装置を包含する。層は、伝熱性材料、熱シンク、及び断熱性領域を含み、層の伝熱性部分は一方の側においてルツボの底面の一部、及び反対側において熱シンクと接触している。望ましくは、断熱性領域は伝熱性材料の周りの周縁部を形成する。場合によっては、断熱性領域は移動可能であり、例えば4つ以上の別個のパッド又はブロックを含んでいて、それにより、伝熱性材料に対して移動させることによって、層を通って移動する熱が断熱性領域により増加、減少、及び/又は変化する。
【0074】
幾つかの態様によれば、断熱性領域に対する伝熱性材料の熱伝導率の比は少なくとも約20:1である。他の幾つかの態様においては、シード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比は約0.5〜約2.0である。
【0075】
本発明は、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し、固/液界面をシード層の中心上で実質的に平坦に保持するがシード層の端部の固体部分において凸状に保持することによって固体供給材料及びシード層の一部を溶融し、固/液界面をシード層の中心上で実質的に平坦に保持するがシード層の端部の固体部分においては凸状に保持しながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、固形体を第1の温度にし、固形体を第2の温度に冷却する工程を含むキャストシリコンの製造方法を包含することができる。
【0076】
約1410℃〜約1300℃の間の範囲のような第1の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る温度勾配を含む。平均で約1350℃のような第2の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る減少した温度勾配及び/又は均一な温度プロファイルを含む。温度勾配を減少させることは、本開示との関連では時にはアニーリングと呼ぶことができる。アニーリングとしては、例えば断熱を停止することが挙げられる。
【0077】
本発明はまた、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し、固/液界面をシード層全体の上において実質的に平坦に保持することによって固体供給材料及びシード層の一部を溶融し、少なくとも初めはシード層の少なくとも1つの端部の付近において過剰の熱を与えながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、固形体を第1の温度にし、そして、固形体を第2の温度に冷却することを含む、キャストシリコンの製造方法を包含することができる。
【0078】
幾つかの態様によれば、本発明は、熱シンクの上に載置されているルツボを取り囲むためのシリコンを溶融させるための少なくとも1つの第1の抵抗加熱器、熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段、ガスを導入するための導入口、及び、ルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるようにルツボを取り囲むための更なる加熱器を有する、シリコンをキャストするための装置を包含する。望ましくは、更なる加熱器は、少なくとも1つの第1の抵抗加熱器と一緒に配置されている断熱性の水冷導電性チューブの1つのループを含む。また望ましくは、更なる加熱器はルツボの壁に対して移動する。本装置にはまた、ルツボの底部上の少なくとも1つのシード結晶を更に含ませることができる。
【0079】
以下の実施例は本発明の幾つかの態様にしたがう実験結果である。これらの実施例は本発明の幾つかの態様を単に例示し示すために与えるものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0080】
実施例1:
ルツボの製造:2つの層から構成される支持構造体上にルツボを配置した。支持構造体の底層は、複合体層を支持する80cm×80cm×2.5cmの寸法の固体の等方成形グラファイトプレートであった。上部の複合体層は、60cm×60cm×1.2cmの寸法の伝熱性等方成形グラファイトプレートであり、全ての側部について厚さ1.2cmの断熱性グラファイトファイバーボードの10cmの周縁部によって取り囲まれている内部領域を有していた。このように、複合体層は底層を完全に覆っていた。
【0081】
シードの製造:MEMC, Inc.から得られ、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキー(CZ)シリコン(単結晶質)のブールを、ダイアモンドコートバンドソーを用いてその長さに沿って、側部あたり140mmからの寸法の正方形の断面を有するように切り落とした。得られた単結晶質シリコンのブロックを、同じソーを用いてその断面を通して約2cm〜約3cmの厚さを有するスラブに切り出した。これらのスラブを単結晶質シリコンのシード結晶又は「シード」として用いた。シリコンブールの(100)結晶学的極方向を保持した。次に、得られた単結晶シリコンスラブを、石英ルツボの底部内に、スラブの(100)方向が上向きになり、(110)方向がルツボの1つの側に平行に保持されるように配列した。石英ルツボは、側部について68cmの正方形の断面、及び約40cmの深さを有していた。スラブを、それらの長尺方向をルツボの底に平行に、それらの側部を互いに接触させてルツボの底部内に配列して、ルツボの底部の上にかかるスラブの単一の完全な層を形成した。
【0082】
キャスティング:室温において、ルツボにシードプレートを装填し、次に固体シリコン供給材料を265kgの全質量まで充填した。高ホウ素ドープシリコンの少量のウエハを加えて、約0.3ppmaの全インゴットドーピングに十分なホウ素を与えた。充填したルツボを、まず支持構造体の断熱性部分の上に載置したグラファイト支持プレートで取り囲み、次に多結晶質シリコンをキャストするのに用いるin−situの溶融/一方向性凝固キャスト装置中に装填した。抵抗加熱器を約1550℃に加熱することによって溶融プロセスを行い、断熱部を合計で6cm開放することによって熱を底部から放射放出させながら加熱が頂部から行われるように、加熱器を構成した。この構成によって、溶融をルツボの底部に向かう上から下への方向で進行させた。底部を通る受動冷却により、熱電対によって監視しながら、シード結晶を溶融温度において固体状態で保持した。溶融の程度は、10分毎に溶融体中に沈下させた石英浸漬ロッドによって測定した。浸漬ロッドの高さを装置内の空のルツボについて採った測定値と比較して、残りの固体材料の高さを求めた。浸漬ロッド測定によって、まず供給材料を溶融し、次にシード結晶の約1.5cmの高さしか残留しなくなるまで溶融段階を継続させた。この時点において、加熱力を1500℃の温度設定値まで低下させ、一方、断熱部分を12cmに開放することによって底部からの放射を増加させた。浸漬ロッド測定によって観察されるように、凝固が始まる前に更に1mm又は2mmのシード結晶が溶融した。次に、種付けした単結晶の成長を凝固工程の終了まで進行させた。成長段階及びキャスティングサイクルの残りは通常のパラメーターを用いて行い、ここでは、頂部から底部への熱勾配を均一にし、次にインゴット全体を室温にゆっくりと冷却した。キャストシリコン生成物は66cm×66cm×24cmのインゴットであった。シードと合致する結晶性の領域が底部において始まり、非溶融材料の端部と適合し、成長が始まるにつれてそこから横方向に外側へルツボの壁部に向かって成長し、結晶化の終了に向かって一定の寸法に安定化した。インゴットから切り出したブリックの面を視認検査することによって単結晶質シリコン構造が明らかであった。
【0083】
実施例2:
実施例1のようにして種付けを行い、大きな単結晶体積を含むインゴットをキャストした。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切り出し用の固定ダイアモンド研磨材を有するバンドソー中に装填した。インゴットの底部を、2cmの厚さを有する単一の層として切り出した。次に、この層を切断テーブル上に水平に固定した。同じバンドソー内において、約1.5cmをそれぞれの側部から除去するように層の端部を切り取った。次に、スラブをサンドブラストにかけて接着剤及び異物を除去し、その後、加熱水酸化ナトリウム浴中でエッチングし、すすぎ、HCl浴中に浸漬して金属を除去した。次に、スラブを先のインゴットと同じ寸法の標準的なルツボの底部上に配置した。シリコン供給材料を265kgの全質量に装填し、キャスティングプロセスを繰り返して第2の種付けされたインゴットを製造した。
【0084】
実施例3:
シードの製造:ルツボの底部の輪郭を描くのに用いた18kgの正方形の(100)プレートから出発してシード層を形成して、58×58cmの被覆領域及び2〜3cmの範囲の厚さを与えた。これらのプレートを一緒に、ルツボ内の中心に位置する大きな正方形に配置した。次に、この正方形を(111)配向シード結晶の厚さ2cmの層によって取り囲んで、全シード層を63cm×63cmの正方形にした。
【0085】
キャスティング:シードを含むルツボにシリコンを265kgの全質量に充填し、キャスト装置内に配置した。実施例1のようにしてキャスティングを行い、溶融の終了及び凝固の開始を通してシード層が損なわれないで残留することが確保されるようにプロセスを監視した。得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5グリッドに切り出した。ブリックの結晶構造の光学検査により、(111)結晶が緩衝層として作用し、ランダムに核形成された粒が(100)の体積中に入るのを抑止したことが示された。
【0086】
実施例4:
ルツボの製造:標準的な69cm2のルツボを2層から構成される支持構造体上に配置した。この層は、複合体層の寸法が異なる他は実施例1と同様に構成されていた。底部固体グラファイト層は先のように80×80×2.5cm3の寸法を有していたが、複合体層の伝熱性部分は20×20×1.2cm3の寸法しかなく、底層の頂部上の中心に配置した。底層の残りは断熱性グラファイトファイバーボードで被覆した。
【0087】
シードの製造:21cm×21cm×2cmの寸法を有する(100)配向単結晶シリコンの単一の片を、ルツボの底部内に中心に配置した。次に、ルツボにシリコン供給材料の残りを265kgの全質量に充填した。
【0088】
キャスティング:
ルツボ及び支持プレートをキャスト装置内に配置し、シリコンの凝固のために更なる時間を与え、より小さな熱引き抜き面積を与えた他は実施例1と同様にサイクル運転した。冷却した後、インゴットを切片にした。切片化されたインゴットの視認検査によって、制御された熱の引き抜きから結晶の強い外向きの成長が確認された。
【0089】
実施例5:
ルツボの製造:標準的な69cm2のルツボをグラファイト支持プレート上に配置し、供給材料が先のインゴットから再生処理されたシリコンを含まない他は実施例1と同様に、シード層、供給材料、及びドーパントを装填した。次に、69×69×12cm3の寸法を有する溶融シリカリッドをルツボ上に配置した。プロセスガスが導入される頂部の断熱材内の孔に入れ子式のチューブが接続されるように、キャスト装置を改造した。次に充填物を装置中に装填し、持ち上げて入れ子式チューブと接触させた。変更した方法を用いてキャスト装置を運転して、より良好なガスの制御及び変化させた凝固設定によってルツボリッドの効果を相殺するようにした。得られたインゴットを測定すると、通常のインゴットにおいて見られる炭素濃度の1/10の濃度を有しており、鏡状の頂面及び通常のインゴットよりも少なく含有された異物粒子を更に有していた。
【0090】
したがって、本発明の幾つかの態様及び上記に記載の実施例にしたがうと、本発明の幾つかの態様にしたがってシリコンから製造されるウエハは、好適に薄く、光電池において用いることができる。例えば、ウエハは厚さ約10ミクロン〜厚さ約300ミクロンであることができる。更に、光電池において用いるウエハは、好ましくはウエハ厚さ(t)よりも大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、tに対するLpの比は好適には少なくとも0.5である。これは例えば、少なくとも約1.1又は少なくとも約2であってよい。拡散長は、少数キャリア(例えばp−型の材料における電子)が、多数キャリア(p−型の材料における正孔)と再結合する前に拡散することができる平均距離である。Lpは関係式:Lp=(Dτ)1/2(式中、Dは拡散定数である)によって小数キャリアの寿命τに相関する。拡散長は、光子線誘導電流法又は表面光電圧法のような数多くの技術によって測定することができる。例えば、どのようにして拡散長を測定できるかの説明に関しては、A. Fahrenbruch及びR. Bubeによる"Fundamentals of Solar Cells", Academic Press, 1983, p.90-102(参照として本明細書中に包含する)を参照されたい。
【0091】
ウエハは約100mm〜約600mmの幅を有することができる。好ましくは、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する。本発明のシリコンから製造されるウエハ、及びしたがって本発明によって製造される光電池は、例えば約100〜約3600cm2の表面積を有することができる。ウエハの前面は好ましくはテクスチャー加工する。例えば、ウエハは、化学エッチング、プラズマエッチング、又はレーザー若しくは機械的スクライビングを用いて好適にテクスチャー加工することができる。単結晶質ウエハを用いる場合には、ウエハを水酸化ナトリウムのような塩基の水溶液中、昇温温度、例えば約70℃〜約90℃において、約10〜約120分間処理することによって、ウエハをエッチングして異方性テクスチャー加工された表面を形成することができる。水溶液には、イソプロパノールのようなアルコールを含ませることができる。
【0092】
したがって、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;場合によってはウエハの表面について清浄化処理を行い;場合によっては表面へのテクスチャー加工工程を行い;表面をドープすることによってp−n接合を形成し;場合によっては表面上に反射防止被覆を析出させ;場合によっては例えばアルミニウム焼結工程を用いて背面電界を形成し;そしてウエハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成する;ことによって、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストシリコンインゴットから製造されるウエハを用いて太陽電池を製造することができる。
【0093】
例えばp−型のシリコンウエハを用いて光電池を製造するための通常の一般的な方法においては、ウエハの1つの側部を好適なn−ドーパントに曝露して、ウエハの前面又は受光側の上にエミッタ層及びp−n接合を形成する。通常は、n−型層又はエミッタ層は、まず化学析出又は物理析出のような当該技術において通常的に用いられる技術を用いてp−型のウエハの前面上にn−ドーパントを析出させ、かかる析出の後、n−ドーパント、例えばリンをシリコンウエハの前面中に導入して、n−ドーパントをウエハ表面中に更に拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」工程は、通常、ウエハを高温に曝露することによって行う。これにより、n−型層とp−型シリコンウエハ基材との間の境界領域においてp−n接合が形成される。ウエハ表面は、リン又は他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前にテクスチャー加工することができる。吸光性を更に向上させるために、通常は、窒化ケイ素のような反射防止被覆をウエハの前面に施し、場合によっては同時に表面及び/又はバルクの不動態化を与える。
【0094】
p−n接合を光エネルギーに曝露することによって生成する電位を利用するために、光電池には、通常、ウエハの前面上に導電性前面電気接点、及びウエハの背面上に導電性背面電気接点が与えられているが、両方の接点をウエハの背面上に配することができる。かかる接点は、通常は、1以上の高電導性金属で形成され、したがって通常は不透明である。
【0095】
したがって、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続単結晶質シリコン体(このシリコン体は、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する)からスライスされるウエハ;ウエハ内のp−n接合、ウエハの表面上の反射防止被覆;並びにウエハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接点;を含ませることができ、シリコン体は螺旋欠陥を実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0096】
また、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続多結晶質シリコン体(このシリコン体は、シリコン体の表面に直交する共通の極方向を有する粒方位の所定の配列を有し、このシリコン体は、更にそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する)からスライスされるウエハ;ウエハ内のp−n接合;ウエハの表面上の反射防止被覆、及びウエハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接点;を含ませることができ、多結晶質シリコンは約0.5cm〜約30cmの平均粒界長を有するシリコン粒を含み、シリコン体は螺旋欠陥を実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0097】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかである。本発明の他の態様は、明細書及び実施例は例示のみのものとして考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,155の利益を請求する。米国仮出願60/951,155の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、エネルギー省によって認定された国立再生可能エネルギー研究所との元請負契約下での下請契約ZAZ−6−33628−11の下で米国政府の支援を得て行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般には、光起電の分野、及び光起電用途のためのキャストシリコンを製造するための方法及び装置に関する。本発明は更に、光電池及び他の半導体デバイスのような器具を製造するために用いることができる新しい形態のキャストシリコンに関する。この新規なシリコンは、単結晶質、ほぼ単結晶質、双晶、又は幾何学的多結晶質構造を有することができ、シード結晶を用いるキャスティングプロセスによって製造することができる。
【背景技術】
【0004】
光電池は光を電流に変換する。光電池の最も重要な特性の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するその効率である。光電池は種々の半導体材料から製造することができるが、妥当なコストで容易に入手でき、光電池の製造において用いるための電気特性、物理特性、及び化学特性の好適なバランスを有しているので、シリコンが一般的に用いられる。
【0005】
光電池を製造するための公知の手順においては、シリコン供給材料に、正又は負の導電型のいずれかを有するドーパントをドープし、溶融し、次に、個々のシリコン粒の粒径によって、溶融区域から結晶化シリコンを単結晶質シリコンのインゴットに引き上げる(チョクラルスキー(CZ)法又はフロートゾーン(FZ)法による)か、或いは多結晶質シリコン又はポリシリコンのブロック又は「ブリック」にキャストすることのいずれかによって結晶化させる。ここで用いる「単結晶質シリコン」という用語は、全体にわたって1つの一貫した結晶方位を有する単結晶シリコン体を指す。更に、通常の多結晶質シリコンは、センチメートルスケールの粒径分布を有し、複数のランダムに配向されている結晶が多結晶質シリコン体内に配置されている結晶質シリコンを指す。しかしながら、ここで用いる「幾何学的に配列されている多結晶質シリコン」(以下においては「幾何学的多結晶質シリコン」と略称する)という用語は、本発明の幾つかの態様による、多重配向結晶が多結晶質シリコン体内に配置されている幾何学的に配列されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶質シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶質シリコンにおいては、粒は通常は平均で約0.5cm〜約5cmの寸法であり、幾何学的多結晶質シリコン体内の粒方位は所定の配向にしたがって制御される。更に、ここで用いる「ポリシリコン」という用語は、マイクロメートルスケールの粒径、及び与えられた結晶質シリコン体内に配置されている複数の粒方位を有する結晶質シリコンを指す。例えば、粒は、通常は平均でおよそサブミクロン乃至およそミクロンの寸法であり(例えば、個々の粒は裸眼では視認できない)、粒方位は全体にわたってランダムに分布している。上記に記載の手順においては、インゴット又はブロックを、公知のスライシング又はソーイング法によって薄い基材(ウエハとも呼ぶ)に切り出す。次に、これらのウエハを光電池に加工することができる。
【0006】
光電池の製造において用いるための単結晶質シリコンは、一般に、CZ又はFZ法(いずれも結晶質シリコンの円筒形のブールが製造される方法である)によって製造される。CZ法に関しては、シード結晶を溶融シリコンのプールに接触させ、ブールの固体部分を通して熱を引き抜きながらブールをプールからゆっくりと引き上げる。ここで用いる「シード結晶」という用語は、凝固中に液体シリコンがシードの結晶性に適合するように液体シリコンと接触させる結晶質材料の片を指す。FZ法に関しては、溶融区域を通して固体材料を供給し、溶融区域の一方の側の中に導入することによって溶融し、溶融区域の他の側の上で一般にはシード結晶と接触させることによって再凝固させる。
【0007】
最近では、米国特許出願公開20070169684A1及び20070169685A1として公開されている2007年1月18日出願の米国特許出願11/624,365及び11/624,411に開示されているような、キャスト装置で単結晶質又は幾何学的多結晶質材料を製造するための新規な技術が発明されている。多結晶質シリコンインゴットを製造するためのキャスティングプロセスは、光起電技術において公知である。簡単に言うと、かかるプロセスにおいては、溶融シリコンを石英ルツボのようなルツボ内に収容し、制御された方法で冷却してその中に含まれているシリコンを結晶化させる。得られるキャスト結晶質シリコンのブロックは、一般に、光電池を製造するために用いるウエハの寸法と同等か又はこれに近接する断面を有するブリックに切断し、ブリックをかかるウエハに切り取るか又は他の方法で切り出す。このようにして製造される多結晶質シリコンは、それから製造されるウエハの内部において粒の互いに対する配向が有効にランダムである結晶粒の凝集体である。単結晶質又は幾何学的多結晶質シリコンは、具体的に選択された粒方位及び(後者の場合においては)粒界を有し、上記で言及した特許出願において開示されている新規なキャスト技術によって、液体シリコンをプロセス中に部分的に固体状態で保持される大きなシード層と接触させて、それを通して凝固中に熱を引き抜くことにより形成することができる。ここで用いる「シード層」という用語は、連続層を形成する所望の結晶方位を有する結晶又は複数の結晶の群を指す。これらは、キャストの目的のためのルツボの一つの側部と適合するように形成することができる。
【0008】
最良の品質のキャストインゴットを製造するためには、幾つかの条件を満足させなければならない。第1に、インゴットの可能な限り多くが所望の結晶度を有する。インゴットが単結晶質であるように意図される場合には、インゴットの全体の使用可能な部分は単結晶質でなければならず、幾何学的多結晶質材料に関しても同様である。第2に、シリコンは可能な限り少ない欠陥を含んでいなければならない。欠陥としては、個々の不純物、不純物の凝集体、シリコン格子内の固有の格子欠陥及び構造欠陥、例えば転位及び積層欠陥が挙げられる。これらの欠陥の多くは、結晶質シリコンから製造される機能している光電池内での電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こす可能性がある。これにより、電池の効率性の低下が引き起こされる可能性がある。
【0009】
長年の開発によって、良く成長したCZ及びFZシリコンにおいて最小量の欠陥が得られている。まず薄いネック部を成長させ、ここでシードに含まれる全ての転位を成長除去することによって、転位を含まない単結晶を達成することができる。挿入物及び二次相(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、又は炭化ケイ素の粒子)の混入は、溶融体に対するシード結晶の対向回転を維持することによって避けられる。酸素の混入は、産業界において公知なようにFZ又は磁気CZ法を用いて最小にすることができる。金属不純物は、一般に、ブールを加工した後のポットスクラップ又はタングエンド中に残留させることによって最小にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開20070169684A1
【特許文献2】米国特許出願公開20070169685A1
【発明の概要】
【0011】
幾つかの態様によれば、本発明はシリコンのキャスト中の熱の流れ、特にシード結晶を通る熱の流れを制御する方法及び装置に関する。望ましくは、シリコンは平坦な界面を伴って溶融するが、例えば単結晶質シリコン材料の量が最大になるように、成長は可能な限り大きい湾曲を伴って起こる。本発明の幾つかの態様においては、供給材料を溶融させる必要性と結晶質材料を成長させる必要性とのバランスが取れている。
【0012】
溶融工程中においては、シード結晶を通して熱を伝導させて、シード結晶の少なくとも一部を固体として保持しながら供給材料を確実に溶融させて、凝固工程中の結晶成長の配向を開始させることができる。凝固工程中においては、例えば製造される多結晶質材料の量を最小にするために、ルツボの壁を通した熱損失を減少及び/又は阻止することが望ましい。ルツボの底部は熱シンクと熱連絡しており、ルツボのための材料は通常は溶融シリコンよりも高い伝熱性を有しているので、ルツボの側部も同様に冷却される。驚くべきことに且つ予期しなかったことに、ルツボの下に配置される伝熱性材料及び断熱性材料の構成により、シード結晶から製造される単結晶質シリコンの量を増加させることによって熱の流れを制御して凝固を向上させることができる。
【0013】
ここで用いる「ほぼ単結晶質のシリコン」という用語は、物体の50体積%より多い量にわたって1つの一貫した結晶方位を有する結晶質シリコン体を指し、例えばかかるほぼ単結晶質のシリコンは多結晶質領域に隣接する単結晶シリコン体を含むか、又は他の結晶方位のシリコンのより小さい結晶を部分的か又は全体で含むシリコンの大きな隣接して一貫する結晶を含んでいてよく、より小さい結晶は全体積の50%より多い量を構成しない。好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の25%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。より好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の10%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。更により好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の5%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。
【0014】
ここで用いる「双晶シリコン」という用語は、物体の50体積%以上に関して全体にわたって1つの一貫した結晶方位、及び物体の体積の残りに関して他の一貫した結晶方位を有するシリコン体を指す。例えば、かかる双晶シリコンは、結晶質シリコンの体積の残りを構成する異なる結晶方位を有する他の単結晶シリコン体に隣接する1つの結晶方位を有する単結晶シリコン体を含んでいてよい。好ましくは、双晶シリコンは同じシリコン体内にそれらの結晶方位においてのみ異なる2つの別個の領域を含んでいてよい。
【0015】
具現化され広範に記載された本発明によれば、シリコンを充填したルツボを、熱シンク及び断熱性領域と接触している伝熱性材料を含み、層の伝熱性部分がルツボの底面の約5%〜約99%と接触している層の上に配置し;伝熱層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。熱の引き抜きは、キャストシリコンを第1の温度にし、次にそれを第2の温度に冷却することによって直接シード成長を行わせるように、シリコンの一部又は全部が溶融した後に行うことができる。
【0016】
本発明によれば、また、ルツボの中心に向かって内側方向にテーパー状になっている壁部を有するルツボ内にシリコンを配置し;シリコンを溶融し;ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;キャストシリコンを第1の温度にし;シリコンを第1の温度と異なる第2の温度に冷却し;ルツボからキャストシリコンを引き抜き;次にキャストシリコンから切片を切り出す;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、また、ルツボの中心から外側に向かってテーパー状になっている壁部を有するルツボ内にシリコンを配置し;シリコンを溶融し;ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;キャストシリコンを第1の温度にし;シリコンを第1の温度と異なる第2の温度に冷却し;ルツボからキャストシリコンを引き抜き;次にキャストシリコンから切片を切り出す;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0018】
本発明によれば、また、底面及び複数の側壁を有し、複数の側壁の少なくとも1つが、ルツボの底面に直交する面に対して且つ底面から上に向かって伸びる方向で見て約1°〜約25°の角度でルツボの中心に向かって内側方向にテーパー状になっているシリコンをキャストするためのルツボが提供される。テーパー状の1つ又は複数の側壁により、底面から離れる方向において容器の断面積を減少させることができる。
【0019】
本発明によれば、また、底面及び複数の側壁を有し、複数の側壁の少なくとも1つが、ルツボの底面に直交する面に対して且つ底面から上に向かって伸びる方向で見て約2°より大きい角度でルツボの中心から外側に向かってテーパー状になっているシリコンをキャストするためのルツボが提供される。テーパー状の1つ又は複数の側壁により、底面から離れる方向において容器の断面積を増加させることができる。
【0020】
本発明によれば、また、底壁を未被覆の状態で残して、剥離コートでルツボの内側壁を被覆し;シリコンシード結晶を未被覆の壁部と接触させて配置し;シリコン供給材料をルツボ内に配置し;シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら供給材料を溶融し;シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし;そしてシリコンを第2の温度に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0021】
本発明によれば、また、予めキャストされたインゴットをスラブにスライスし;スラブを化学的に処理して不純物を除去し;スラブをシード層として用いるためにルツボ内に配置し;次にルツボにキャストのための供給材料を充填する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、また、層の中心領域内のシード結晶が表面に直交する1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%〜約99%をカバーし、一方、層の端部上の残りのシード結晶が表面に直交する少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域をカバーするように、単結晶質シリコンシード結晶の層をルツボ内の少なくとも1つの表面上に配置し;供給材料シリコンを加え、供給材料及びシード結晶の一部を溶融状態にし;シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを所定の例えば均一な第1の温度にし、次にシリコンを均一な第2の温度に好ましくは均一に冷却する;ことを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、また、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に絶縁性のベースプレート上に載置されているルツボの底面上に配置し;固体又は液体のシリコン供給材料を導入してシード結晶を部分的に溶融し;凸形の固体境界によって単結晶成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜き;シリコンを第1の温度にし、それを第2の温度に好ましくは均一に冷却し;キャストシリコンのシード結晶と反対の側部からスラブを切り出し;化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして大きなスラブをその後のキャスティングプロセスのための新しいシード層として用いる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0024】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体シリコン供給材料と一緒に、リッド又はカバーを有するルツボ中に装填し;シード層の一部を固体として保持し、且つアルゴン及び窒素ガスの少なくとも1つをリッド又はカバー中の少なくとも1つの孔を通して流し、一方、少なくとも他の孔からガスを排出しながらシリコンを溶融及び凝固させ;シリコンを好ましくは均一に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0025】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層をルツボ中に装填し;リッドを有するルツボに蓋をし;好ましくは過熱した液体シリコンをルツボ中に導入し;シード層の一部を溶融し;アルゴン及び窒素ガスの少なくとも1つをリッド中の少なくとも1つの孔を通して流し、一方少なくとも1つの他の孔からガスを排出しながらシリコンを凝固させ;そしてシリコンを冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0026】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;実質的に、シード層の中心部上で平坦で、シード層の端部において凸状である固/液界面を保持しながら、供給材料及びシード層の一部を溶融し;少なくとも初めは同じ固/液界面形状を保持しながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし、そしてシリコンを第2の温度に冷却する(ここで加熱及び冷却は好ましくは均一である);ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0027】
本発明によれば、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;シード層全体にわたって実質的に平坦である固/液界面を保持しながら、供給材料及びシード層の一部を溶融し;少なくとも初めはシード層の端部を含む領域内に過剰の熱を与えながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし、そしてシリコンを第2の温度に好ましくは均一に冷却する(ここで加熱及び冷却は好ましくは均一である);ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0028】
本発明によれば、また、熱シンク上に載置されているルツボを取り囲んでおり、シリコンを溶融するために与えられている加熱器;熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段;ガスを導入するための導入口;及び、第1の加熱器と一緒に配置されている、ルツボを取り囲むための断熱水冷チューブの少なくとも1つのループ(ここで、ループはルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるように稼働させることができる);を含む、シリコンをキャストするための装置が提供される。
【0029】
明細書中に含まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1A〜1Bは、断熱層がキャスト装置内のルツボの下側で伝熱層と組み合わされている、本発明の一態様による代表的なシステムを示す。
【図2】図2A〜2Dは、本発明の幾つかの態様によるテーパー状のルツボの2つの例を、その中でキャストされるシリコンに対する所望の効果の説明と一緒に示す。
【図3】図3は、本発明の一態様による、部分的に被覆されたルツボ中に装填したシリコン供給材料の例を示す。
【図4】図4は、本発明の一態様による、シード層材料を再生利用する方法の例を示す。
【図5】図5は、本発明の一態様による、シード層を形成する単結晶シリコンの代表的な配列を示す。
【図6】図6は、本発明の一態様による、大きな単結晶シード層を生成するための代表的な方法を示す。
【図7】図7A〜7Bは、本発明の一態様による、低炭素の単結晶質又は多結晶質シリコンをキャストするための代表的な装置を示す。
【図8】図8は、本発明の幾つかの態様による、単結晶質又は多結晶質シリコンをキャストするための代表的な装置を示す。
【図9】図9A〜Dは、本発明の一態様による、断熱層が交互形状で伝熱層と組み合わされている代表的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで本発明の幾つかの態様を詳細に説明し、その幾つかの例を添付の図面において示す。可能な限り、同じか又は類似の部品を示すために同じか又は同様の参照番号を図面全体にわたって用いる。
【0032】
本発明にしたがう幾つかの態様においては、溶融シリコンの結晶化はシード結晶を用いるキャスティングプロセスによって行う。ここで開示するように、かかるキャスティングプロセスは、結晶化シリコンのキャスト体における結晶粒の寸法、形状、及び配向を制御するように行うことができる。ここで用いる「キャスト」という用語は、溶融シリコンを保持するために用いる型又は容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンを形成することを意味する。一例として、シリコンはルツボ内で凝固させることによって形成することができ、ここでは凝固は、シリコンをルツボから引き上げる冷却された外部物体を通してではなく、ルツボの少なくとも1つの壁部から始まる。したがって、溶融シリコンの結晶化は、シードを移動させるか、又は型、容器、若しくはルツボを移動させることのいずれかによってブールを「引き出す」ことによっては制御されない。更に、本発明の一態様によれば、型、容器、又はルツボは、溶融シリコンを凝固させるための少なくとも1つの加熱側壁面を含む。ここで用いる「加熱壁」という用語は、溶融シリコンと等温か又はこれよりも熱い表面を指す。好ましくは、加熱壁面はシリコンの加工中において固定して保持される。
【0033】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化シリコンは、連続単結晶質であるか、又は制御された粒方位を有する連続多結晶質のいずれかであってよい。ここで用いる「連続単結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が単結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない単結晶質シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続多結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が多結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない多結晶質シリコンを指す。
【0034】
本発明の幾つかの態様によれば、シリコンのキャスティングは、結晶質シリコンの「シード」の所望の一群を、例えば溶融シリコンを保持することができる石英ルツボのような容器の底部内に配置することによって行うことができる。シードによって、ルツボの底部の全部、又は殆ど、又は実質的に全部を覆うことができる。ここで用いる「シード」という用語は、所望の結晶構造を有し、それをその中に配置することができる容器の表面に合致する側部を有する幾何学的形状のシリコンの片を指す。かかるシードは、シリコンの単結晶質の片か、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの片のいずれかであってよい。本発明にしたがうと、シードは、その底面と平行な頂面を有していてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。例えば、シードは寸法が直径で約2mm〜約10mm乃至直径で約100mm〜約1000mmで変化するシリコンの片であってよい。シリコンの片は、約1mm〜約1000mm、好ましくは約10mm〜約50mmの厚さを有していてよい。シードの好適な寸法及び形状は簡便性及びタイリングを得るように選択することができる。タイリングは、以下により詳細に説明するが、シリコンシード結晶をルツボの底面又は側面及び底面のいずれかにわたって所定の幾何学的配向又はパターンで配列することである。
【0035】
次に、シリコン供給材料をルツボ中のシードの上に導入して、次に供給材料を溶融することができる。或いは、溶融シリコンをルツボ中に且つシードの上に直接注ぎ入れることができる。溶融シリコンを注ぎ入れる場合には、ルツボは、好ましくはまずシリコンの溶融温度に非常に近い温度か又はそれ以下の温度にし、次に溶融シリコンを注ぎ入れる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固が始まる前にシードの薄層を溶融させることができる。
【0036】
次に、好ましくは溶融シリコンの冷却を行って、それにより溶融シリコンの結晶化が、固体のシードの元の頂部のレベルか又はこれより下のレベルで開始し、シードから離れる方向、好ましくは上向きに離れる方向に進行するように、溶融シリコンをシードの存在下で冷却及び結晶化させる。これは、シード結晶を通して融解熱を熱シンクに引き抜くことによって行うことができる。ここで用いる「熱シンク」という用語は、熱を他の物体から引き抜くために用いる物体を指す。熱シンクは、より低温の流体による対流、又はより低い温度の物体へのエネルギーの直接放射による、より高い温度領域からより低い温度領域への熱伝導を用いて熱を引き抜く。一般に、1つの側が冷却する物体と平衡になり、他方が冷却器領域とエネルギーを交換するように、熱シンク全体にわたる熱勾配が保持される。
【0037】
本発明の幾つかの態様によれば、溶融又は凝固中において、溶融シリコンと結晶化シリコンとの間の液/固界面をキャスティングプロセス全体にわたって実質的に平坦に保持する必要はない。即ち、冷却中においては、溶融シリコンの端部における固/液界面は、溶融シリコンとシリコンシード結晶との間の距離が増加する方向に移動するように制御される。溶融シリコンの凝固が開始すると、凝固前面は初めは実質的に平坦であり、好ましくはシリコンの成長固体物質の水平端において強い湾曲を有する。したがって、固/液界面の形状はキャスティングプロセス全体にわたって制御された輪郭を有することができる。
【0038】
本発明の幾つかの態様にしたがうように溶融シリコンの結晶化を行うことにより、ランダムではなく特定の粒界及び特定の粒径を有するキャストシリコンを製造することができる。更に、全てのシードが互いに同じ相対方向に配向し、例えば(100)極方向がルツボの底面に直交し、(110)極方向が長方形又は正方形の断面のルツボの側面に対して45°となるようにシードを整列させることにより、かかるキャストシリコンの極方向がシードのものと同じである単結晶質又は実質的に単結晶質のシリコンである大きなキャストシリコン体を得ることができる。同様に、他の極方向はルツボの底面に直交していてよい。更に、全ての共通の極方向がルツボの底面に直交するように1以上のシードを配列させることができる。更に、本発明の一態様にしたがうと、2以上の異なる極方向のシード結晶を一緒に用いて結晶成長の有効性を最大にして、所望の結晶方位を有する可能な限り大きな体積のシリコンを生成させることができる。
【0039】
本発明の幾つかの態様にしたがうキャスティングプロセスのために用いるシードは、任意の所望の寸法及び形状のものであってよいが、好適には、シリコンの正方形、長方形、六角形、偏菱形、又は八角形の片のような単結晶質シリコン又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの幾何学的形状の片である。これらはタイリングに対して伝導性に形成して、端から端まで且つルツボの底部に適合させて所望のパターンで配置又は「タイリング」することができる。また本発明の幾つかの態様にしたがうと、シードをルツボの1以上の側部上に配置することができる。かかるシードは、例えば単結晶質シリコンのブールのような結晶質シリコンの源を所望の形状を有する片に切り出すことによって得ることができる。またシードは、その後のキャスティングプロセスにおいて用いるためのシードを初めのキャスティングプロセスから製造することができるように、本発明の幾つかの態様によるプロセスによって製造されるシリコンの試料からそれらを切り出すことによって形成することもできる。例えば、転位を有しないシード材料のより小さな片を用いて、新しいシード結晶層として用いるためにルツボの全底部を覆うのに十分に大きな転位を有しない単結晶を成長させることができる。
【0040】
ここで、本発明の幾つかの態様によるシリコンを製造するための方法及び装置を説明する。しかしながら、これらは本発明の幾つかの態様にしたがうシリコンを形成するための唯一の方法ではない。
【0041】
図1A及び1Bを参照すると、キャスト装置の加熱区域の断面が図1Aに示されており、種付けキャスティングプロセスの溶融段階の終了時における液体シリコン100及び固体シリコン101が示されている。シリコンは、例えば溶融石英又はシリカのルツボであってよい底部と壁部を有するルツボ110内に配置されている。この時点において、ルツボ110内の固体シリコン101は、ルツボの底部に予め装填されているシリコンのシード層から完全に構成される。供給材料シリコン(図示せず)をシード層の頂部上に導入する。供給材料シリコンは、固体として装填してその後にルツボ内で溶融するか、或いは別の容器内で溶融して液体としてシードの頂部上に導入することができる。いずれの場合においても、元のシリコンシード層が部分的に溶融し、固体シリコン101は完全にシリコンシード層の残りから構成される。好ましくは、ルツボ110は、シリカ、窒化ケイ素、又は液体カプセル封入剤から製造されるもののような、ルツボ110からの結晶化シリコンの取り出しを助ける剥離コートを有する。
【0042】
更に図1Aを参照すると、ここで示す炉の加熱区域においては、抵抗加熱器120によりシリコンを溶融するのに必要な温度を保持するエネルギーが与えられ、一方、断熱材130によって熱が外側の室(図示せず)に逃げるのが抑止される。本発明の一態様にしたがうと、ルツボ110は、熱をシリコンから制御して伝導除去するようにも働く複数の層によって支持される。例えば、伝熱性ブロック140は熱を水冷室(図示せず)に放射して、それによってその上の加熱区域の部品を冷却する。図1Aにおいて断面で示され、図1Bにおいて三次元で示されるグラファイト支持プレート142は、伝熱層141から熱を伝導して、次に熱をルツボ110並びにシリコン100及び101から伝導除去する。熱除去路を変化させ、その結果として凝固前面の形状を変化させるために、代表的な構成においては断熱層150によって伝熱層141を取り囲むことができる。固体グラファイトの側部プレート143がルツボ110を取り囲んで、ルツボに対する構造的支持を与える。本発明の幾つかの態様にしたがうと、キャスト装置はグラファイト支持プレート142を有していてよいが、伝熱層141及び断熱層150によって制御される調整された熱伝導路は必須ではない。
【0043】
更に図1A及び1Bを参照すると、グラファイト側部プレート143をグラファイト支持プレート142上に載置して、プレート142に直接熱を伝導して、ルツボの底端に冷スポットを生成させることができる。しかしながら、相対する層141及び150に関する調整された熱伝導の効果により、例えばルツボ110の角部をより熱く保持することによって、冷却パラメーターを変化させ、これにより液/固界面の形状を変化させて、それにより横方向への溶融を少量しか起こさないようにすることができる。例えば、図1Aに示すように、固体シリコン101は、ルツボ110の下の材料において起こる熱交換によってその左端及び右端において大きな湾曲を有する。かかる湾曲により、固体の横方向への膨張及び種付け結晶構造の外側への成長を引き起こすことができる。図1Aにおいて、固体シリコン101の結晶成長方向を黒矢印によって示す。
【0044】
図2A〜2Dを参照すると、ルツボの形状を変化させることによってシリコンの結晶成長を変化させることができる。例えば、図2A及び2Bに示すように外側に向かってテーパー状になっているルツボ200内で結晶成長を行わせることができ、ここでは固体シリコン221に対する液体シリコン220の湾曲によって種付けされた結晶(図示せず)の横方向への膨張が促進され、その成長方向は図2Bにおいて矢印で示す。他の例においては、図2C及び2Dに示すように内側に向かってテーパー状になっているルツボ210内において結晶成長を行わせることができ、これも、図2Aにおけるルツボ200と同様に、使用可能なキャストシリコン222の量を最大にし、キャストシリコンインゴット(222+223)をブリック(破線によって示す)に切り出す間に除去される使用できないか又は望ましくないシリコン223の量を最小にする有利性を有する。キャストシリコンの側壁上の望ましくないシリコン223のテーパー状の形状(図2Dにおいて断面で示す)は、より迅速に冷却されるインゴットの頂部におけるシリコンと比べて、ルツボの底部におけるシリコンが凝固及び結晶成長中に高温状態で費やす過剰の時間のためである。
【0045】
図3は、キャスティングのためにルツボ310中に装填されるシリコン(供給材料300及び結晶質シード301)の断面を示す。窒化ケイ素又は炭化ケイ素のような剥離コート320を、供給材料300がルツボ310と接触するルツボ310の領域に施すことができ、これはキャスティング中に完全に溶融するようになるシリコン300の領域に対応する。結晶質シード301の下側にはコートは施さない。シード301は完全には溶融せず、したがってルツボ110に接着しない。
【0046】
図4は、結晶質シリコンシード層を再利用するための方法を示す。図4に示すように、シード層401から成長したキャストインゴット400を、まず破線にそってスライスしてシード層401を含む材料のスラブを取り出す。次に、材料のスラブを破線の端部で切り取って、他のルツボ内に配置するのに障害となる可能性のある過剰の材料を除去する。元のシード層401の寸法及び形状に切り取られた切取スラブ402を次に、好適な液体又は他の材料を含むタンク又はタブのような容器410内において、場合によってはシリコンの他の同様の片と一緒に処理して、層401(及び場合によってはシリコンの他の片)から汚染物質及びデブリスを除去し、その後、その後のキャスティングプロセスにおいてシード層として用いるために新しいルツボ420内に配置する。
【0047】
図5は、シード層を形成するように配列した単結晶シリコン片の代表的な配列を示す。(001)結晶方位はシリコン太陽電池を製造するために有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、その全表面を覆うパターンピラミッドを形成するように化学的にエッチングすることができ、これにより反射を減少させることと材料内の光路長を増加させることの両方によってシリコンの光捕捉能を向上させることができる。化学エッチングは公知の方法によって行うことができる。しかしながら、シリコンの多結晶質領域に隣接して配置した場合には、その(001)極方向に対して鋭角に粒界を成長させるその傾向によって(001)シリコンのキャスティングは困難になる。多結晶質シリコンの成長に対抗するために、幾何学的配列の複数の単結晶質シリコンシード結晶を、ルツボ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えばルツボの底面の上に配置することができる。ここで、幾何学的配列としては最密多角形が挙げられる。図5において示すように、(001)シリコンの片500は、長方形の(111)シリコン501の周縁によって取り囲まれている。周縁のシリコン501の極方向を(111)として示すが、これは、多結晶質領域に隣接して成長する際に競合的に優位である任意の結晶方位であってよい。このようにして、得られるキャストインゴット(図示せず)の大部分は(001)シリコンから構成され、シリコン501から成長する競合的に優位な(111)粒によって、シリコン500の上の(001)シリコンによって占められる領域内での多結晶質シリコンの成長が制限される。同様に、本発明の幾つかの態様にしたがって多結晶質シリコン体をキャストすることによって製造されるシリコン結晶粒は、円柱状に成長させることができる。更に、かかる結晶粒は、凝固が進行するにつれて収縮する(001)断面領域を有するのではなく、それから形成されるシードの形状であるか又はそれに近似する断面を有することができる。このような具体的に選択された粒界を有し、好ましくは粒界の接合部が角部において接する3つの粒界のみを有するシリコンを製造する場合には、条件は図5において示される配列に合致する。
【0048】
図6は、シード層として用いるための大面積で転位のない単結晶を製造するための方法を示す。断面で示すこの方法においては、多結晶質供給材料600を、面積が約25cm2〜約10,000cm2の横方向の寸法及び約3mm〜約1000mmの厚さを有していてよい単結晶シード601と一緒に装填する。供給材料600をルツボ610内に配置し、これを次に伝熱性部品(620)及び断熱性部品(630)から構成される複数の層620、621、及び630の頂部上の装置(図示せず)内に配置する。伝熱性部品620の領域は、好ましくはルツボ610の底部とほぼ同じ形状であり、シード結晶601の約50%〜約150%の横方向の面積を有する。溶融の間は、伝熱性領域620を通して支持プレート621に熱を引き抜き、一方、熱が断熱層630を通過することは抑止される。シード結晶601の完全な溶融を抑止するために、キャスティングの溶融段階の間においても伝熱性領域620を通して熱を伝導除去する。全ての供給材料600及びシード結晶601の少量が液体シリコン602に溶融したら、残りの固体シリコン603は、次に凝固プロセスのための核形成層として作用する。断熱層630の存在は、核形成及び成長の間の固体シリコン603の形状、及び図6において矢印で示される凝固の方向を制御するのを助ける。凝固表面の強い湾曲によって固体シリコン603の外側への成長が引き起こされ、一方、多結晶質領域605が最小になる。インゴット604がキャストされたら、インゴットの上部から水平の層を切り出して(破線)、新しいシードスラブ606として用いることができる。スラブ606は、清浄化し、切り取り、新しいルツボ610内で新しいインゴットのための完全なシード層として用いるか、或いは上記に記載した方法を再び用いて更に大きい単結晶のための出発点として用いることができる。
【0049】
図7A及び7Bは、低炭素の単結晶質又は多結晶質シリコンを種付けされたインゴットにキャストするための装置の断面図である。図7Aにおいて示すように、シード結晶700を、供給材料701と一緒に、炉の加熱区域(表示せず)内に配置されているルツボ710内に装填する。ルツボ710は、セラミックのリッド711(図7Bにおいても示す)で被包するように示されているが、被包せずに周囲雰囲気に完全に開放していてもよい。キャスティングにおいては、炭素をグラファイト断熱材720の分離した片からインゴット中に含ませることができる。これは、ルツボ710中に落下させてもよいし、或いはルツボ710からの酸素をシリコン溶融体中に溶解させ、次にSiO分子(図示せず)として蒸発させることによってもよい。これらの分子は、炉のグラファイト部分720、750、760に接着して、反応:SiO+2C→SiC+COによって反応することができる。
【0050】
COガスの分子は液体中に侵入し、ここでSiCが形成され、Oが再び解離してサイクルが繰り返される。セラミックのリッド711(図7Bに示す)をルツボ710に導入し、プロセスガス730(例えばアルゴンであってよい)を注意深く制御することによって、炭素取り込みの両方のメカニズムを有効に停止するか又は大きく制限することができる。セラミックのリッド711は、例えば溶融シリカ、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素などをはじめとする数多くの材料で製造することができる。上記に記載の炭素ガスの反応を抑止するために、アルゴンのような不活性ガスの新しい供給流が流路740を通って中に入り、他の流路(図示せず)を通って排出されるデザインとすることが望ましい。
【0051】
更に図7A及び7Bを参照すると、キャスティングプロセスは、炉内にルツボ710を設置する前に1以上のシード700及び供給材料701を装填するか、或いは1以上のシード700のみを装填し、その後、別の溶融チャンバーからルツボ中に液体シリコン750を導入することのいずれかによって運転することができる。
【0052】
図8は、キャスティング中の固/液界面の形状を変化させるための本発明の幾つかの態様にしたがう装置を示す。図8において示すように、第1の加熱器820及び更なる加熱器840がキャスト装置の加熱区域(断熱材831によって取り囲まれて示されている)内に配置されて、材料800、801に目標の加熱を誘導する。固体シード材料801の頂部の上の液体材料800は、ルツボ810の側壁付近の端部において湾曲している界面を有する。第1の加熱器820は第1の熱シンク860と一緒に、通常は実質的に平坦な固/液界面(図示せず)を形成するように働く。しかしながら、更なる加熱器840が材料800、801に電流を直接接続して、ルツボ810の壁付近の材料800、801の端部に誘導加熱を導き、それによって固体材料801をその周辺で溶融する。
【0053】
更なる加熱器840は、図8において示すように、例えば銅であってよい導電性金属のコイルであり、循環する液体850によって冷却され、被包層830によって第1の加熱器820から断熱されている。更なる加熱器840は、図8において示すようにループでルツボ810を取り囲む単巻コイルであってよく、或いは螺旋を構成するループの間に任意の所望の間隔を有する螺旋を形成する複数のループを有していてもよい。更なる加熱器840は、また、固/液界面(図示せず)に影響を与えるようにルツボ810の壁に対して移動させることができるように構成することもできる。更なる加熱器840は銅管を通して流れる電流によって運転され、一方、水がそれを冷却するので、管を通る電流は強い磁場を形成し、これが液体シリコンと結合して、シリコン内に対応する電流を誘導する。シリコン内及び/又はそれを通る電流からの抵抗加熱により局所的な加熱作用が与えられる。
【0054】
また、更なる加熱器840として抵抗加熱器を用いることができるが、抵抗加熱器は材料800、801のような特定の体積の材料を標的にして熱を加えることにおいてはさほど効率的ではない可能性がある。図8において示される装置を用いるキャスティング中においては、更なる加熱器840は、シード材料801を過度に溶融しないように溶融サイクルの終了時付近においてのみ作動させる。更なる加熱器840により、凝固プロセスの少なくともほぼ初めの20%にわたってルツボ810に熱を加え続ける。また、更なる加熱器840により、冷却段階が行われるまで全凝固プロセスを通してルツボ810に熱を加え続けることもできる。
【0055】
ここで開示するように、本発明の幾つかの態様を用いて、簡単でコスト的に有効なキャスティングプロセスによって、単結晶質シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、双晶シリコン、又は幾何学的多結晶質シリコンの大きな物体を製造することができる。本発明の幾つかの態様にしたがう方法において用いるシリコン供給材料、及び製造されるシリコンには、以下のもの:ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、及びビスマス;を含むリストから選択される1種類以上のドーパントを含ませることができる。かかる1種類又は複数のドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。好ましくは、シリコン中の1種類又は複数のドーパントの量は、シリコンから製造されるウエハが約0.1〜約50Ω・cm、好ましくは約0.5〜約5.0Ω・cmの抵抗を有するような量である。また、ここで開示する方法及び装置を用いて、好適な液相を有する他の材料をキャストすることができる。例えば、本発明の幾つかの態様によって、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、サファイア、及び数多くの他のIII−V又はII−VI材料、並びに金属及び合金をキャストすることができる。
【0056】
更に、ここではシリコンのキャスティングを記載したが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(そのサファイアの単結晶形態を含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。更に、数多くの他のIII−V族又はII−VI族材料、並びに金属及び合金を、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストすることができる。
【0057】
幾つかの態様によれば、断熱性領域のために好適な断熱性材料としては、炭素繊維断熱ボード、炭素結合炭素繊維(CBCF)、アルミナ繊維、シリカ繊維、溶融シリカ、溶融石英、放射線反射材、炭素繊維複合体、及び/又は比較的高い伝熱性及びキャスティングプロセスの運転温度における安定性を有する任意の他の物質を挙げることができる。
【0058】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料のために好適な伝熱性材料としては、グラファイト、高温金属、高温合金、タングステン、モリブデン、タンタル、炭化ケイ素、十分な熱伝導率を有するセラミックス、及び/又は断熱性材料よりも低い熱伝導率及びキャスティングプロセスの運転温度における安定性を有する任意の他の物質を挙げることができる。
【0059】
幾つかの態様によれば、層中の材料は、少なくとも約20:1(伝熱体/断熱体)、望ましくは少なくとも約50:1、より望ましくは少なくとも約100:1の熱伝導率の比を有する。例えば、約1400℃の運転温度範囲において、グラファイトは48W/m/Kの熱伝導率を有し、一方、CBCFは0.7W/m/Kの熱伝導率を有し、これにより約68:1の比を与える。室温において測定した場合には、同じ材料は約260:1の比を有する。
【0060】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料は、正方形及び/又は長方形の形状を形成するような断熱性領域によって枠に囲まれている。望ましくは、伝熱窓は少なくとも概してシード結晶配列の形状に合致及び/又は対応する。また、図9A〜Dにおいて示すように、角部は2つの側から加熱されるので、過剰の冷却領域が角部において適用される。図9Aは側部の中心における断熱層150の幅が角における断熱層150の幅の約2倍であるように形作られた断熱層及び/又は領域150を有する伝熱層141を示す。図9Bは、ルツボ110を伝熱層141及び断熱層150に対して示す。図9Cは、断熱層150上に配置されている支持壁142(通常はグラファイト)の輪郭を破線で示す。図9Dは、ルツボ110内に配置されている固体シリコン101の輪郭を伝熱層141及び断熱層150に対して破線で示す。
【0061】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料及び/又は断熱性材料を形作る方法は、ソー、ルーター、及び/又は任意の他の好適な器具を用いることを含む。唇形、梁形、噛合片、面取、丸角などのような伝熱性材料及び/又は断熱性材料の任意の好適な形状が可能である。
【0062】
望ましくは、部分的に溶融したシード結晶の固体の周縁はほぼ正方形のままである。約0.5〜約2.0、望ましくは約1.0、更により望ましくは約0.9〜約1.1のような、シード結晶領域に対する伝熱窓の任意の好適な面積比が可能である。
【0063】
幾つかの態様によれば、更なる加熱器及び/又は水管加熱器は、ルツボの高さに対して移動させて、凝固中にシリコンに局所的な熱を加え、固/液界面に関して上向き及び/又は下向きに調節するなどを行うことができるようになっている。この動的能力により、凝固中の入熱を制御して溶融中の溶融体/固体界面の形状を平坦にして、壁部を加温状態に保持して、所望の単結晶質シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、及び/又は幾何学的多結晶質シリコンの成長を最大にしながら多結晶質材料の成長を最小にすることなどを行うことができる。
【0064】
本発明の他の幾つかの態様によれば、動的能力により、装置によって例えば溶融セグメント及び成長セグメントなどにおける熱流を変化させることができる。断熱性領域は、例えばルツボ及び/又は支持壁の下側に断熱性領域を挿入するか及び/又はそこから断熱性領域を除去することによって増加及び/又は減少させることができる。層には、標識、ノッチ、ペグ、及び/又は種々の部品を配置するのを助ける任意の他の好適な器具を含ませることができる。他の幾つかの態様においては、静的断熱によって溶融及び成長における必要性及び/又は特性の間で平衡が保たれる。
【0065】
幾つかの他の態様によれば、本発明は、層の上にルツボを配置することを含むキャストシリコンの製造方法を包含する。この層は、伝熱性材料、熱シンク、及び断熱性領域を含み、層の伝熱性部分はルツボの底面の一部と接触している。本方法は、ルツボの底部上に少なくとも1つのシード結晶を配置し、溶融シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し、そして伝熱性材料を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを更に含む。望ましくは、本方法は、少なくとも1つのシード結晶を含むように固形体の一部を形成することを更に含む。
【0066】
幾つかの態様によれば、本発明は、キャストシリコンの固形体を提供し、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し、少なくとも1つのウエハの表面にドープすることによってp−n接合を形成し、表面中和層及び/又は背面場を形成し、ウエハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成することを含む太陽電池の製造方法を包含する。
【0067】
幾つかの態様によれば、層を通る熱流束を、シリコンを溶融する工程から固形体を形成する工程へ変化させて、例えば非対称の溶融を与え、キャスティングプロセスを最適にする。望ましくは、溶融中に、例えば固体シリコンシード材料をルツボの底部上に保持するのにかろうじて十分な熱シンクへの最小の熱移動が起こる。しかしながら、溶融中においては、熱移動の領域は平坦な溶融体/固体界面を促進するように可能な限り広い。冷却又は凝固中においては、熱シンクはより高い熱流束を受けてインゴットの凝固を引き起こすが、断熱性領域は増加して、伝熱性材料及び/又は熱シンクからグラファイト支持壁及びルツボの側壁を少なくとも部分的に離隔する。この配列の効果は、側部を加温状態に保持し、ドーム状の溶融体/固体界面を保持して、側壁からの多結晶質シリコンの成長を最小にすることである。
【0068】
場合によっては、熱を引き抜く工程によって凝固中に種付けされた結晶の側部領域が膨張する。この態様においては、ルツボ内の固体シリコン供給材料を少なくとも1つのシード結晶の頂部上に配置し、ルツボの底部を冷却して少なくとも1つのシード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら固体シリコン供給材料を溶融することを更に含ませることができる。
【0069】
また、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶が完全に溶融しないように加熱を制御し、溶融シリコンを溶融容器からルツボ中へ移すことを更に含む。
【0070】
幾つかの態様によれば、伝熱性材料は、ルツボの底表面積の約5%〜約99%、望ましくは少なくとも約90%と接触している。或いは、伝熱性材料は、ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶の寸法及び形状に対応し、例えば約0.5〜約2.0、望ましくは約0.9〜約1のシード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比を有する。
【0071】
本製造方法には、例えば断熱性領域の少なくとも一部を加えるか及び/又は除去することによってルツボの底部と接触する伝熱性材料及び/又は伝熱性領域を減少させるか及び/又は拡げることを更に含ませることができる。
【0072】
望ましくは(しかしながら必ずしも必要ではないが)、熱シンクは熱を水冷容器の壁部に放射する放射熱シンクを含む。幾つかの態様によれば、断熱性領域は伝熱性材料の周りの周縁部又は縁部を形成する。或いは、周縁部は層の角部よりも層の側部の中心においてより幅広い輪郭形状を含む。周縁部により、例えば冷却を減少させて壁からの多結晶成長を遅延させるために、ルツボに関するグラファイト側支持壁を熱シンクから熱的に分離することができる。周縁部は、場合によっては熱リングと呼ぶことができる。
【0073】
幾つかの態様によれば、本発明は、場合によってはルツボ、場合によってはルツボの底部上の少なくとも1つのシード結晶、ルツボと熱連絡している抵抗加熱器、及び層を含むシリコンをキャストするための装置を包含する。層は、伝熱性材料、熱シンク、及び断熱性領域を含み、層の伝熱性部分は一方の側においてルツボの底面の一部、及び反対側において熱シンクと接触している。望ましくは、断熱性領域は伝熱性材料の周りの周縁部を形成する。場合によっては、断熱性領域は移動可能であり、例えば4つ以上の別個のパッド又はブロックを含んでいて、それにより、伝熱性材料に対して移動させることによって、層を通って移動する熱が断熱性領域により増加、減少、及び/又は変化する。
【0074】
幾つかの態様によれば、断熱性領域に対する伝熱性材料の熱伝導率の比は少なくとも約20:1である。他の幾つかの態様においては、シード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比は約0.5〜約2.0である。
【0075】
本発明は、また、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し、固/液界面をシード層の中心上で実質的に平坦に保持するがシード層の端部の固体部分において凸状に保持することによって固体供給材料及びシード層の一部を溶融し、固/液界面をシード層の中心上で実質的に平坦に保持するがシード層の端部の固体部分においては凸状に保持しながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、固形体を第1の温度にし、固形体を第2の温度に冷却する工程を含むキャストシリコンの製造方法を包含することができる。
【0076】
約1410℃〜約1300℃の間の範囲のような第1の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る温度勾配を含む。平均で約1350℃のような第2の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る減少した温度勾配及び/又は均一な温度プロファイルを含む。温度勾配を減少させることは、本開示との関連では時にはアニーリングと呼ぶことができる。アニーリングとしては、例えば断熱を停止することが挙げられる。
【0077】
本発明はまた、結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し、固/液界面をシード層全体の上において実質的に平坦に保持することによって固体供給材料及びシード層の一部を溶融し、少なくとも初めはシード層の少なくとも1つの端部の付近において過剰の熱を与えながらシード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、固形体を第1の温度にし、そして、固形体を第2の温度に冷却することを含む、キャストシリコンの製造方法を包含することができる。
【0078】
幾つかの態様によれば、本発明は、熱シンクの上に載置されているルツボを取り囲むためのシリコンを溶融させるための少なくとも1つの第1の抵抗加熱器、熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段、ガスを導入するための導入口、及び、ルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるようにルツボを取り囲むための更なる加熱器を有する、シリコンをキャストするための装置を包含する。望ましくは、更なる加熱器は、少なくとも1つの第1の抵抗加熱器と一緒に配置されている断熱性の水冷導電性チューブの1つのループを含む。また望ましくは、更なる加熱器はルツボの壁に対して移動する。本装置にはまた、ルツボの底部上の少なくとも1つのシード結晶を更に含ませることができる。
【0079】
以下の実施例は本発明の幾つかの態様にしたがう実験結果である。これらの実施例は本発明の幾つかの態様を単に例示し示すために与えるものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0080】
実施例1:
ルツボの製造:2つの層から構成される支持構造体上にルツボを配置した。支持構造体の底層は、複合体層を支持する80cm×80cm×2.5cmの寸法の固体の等方成形グラファイトプレートであった。上部の複合体層は、60cm×60cm×1.2cmの寸法の伝熱性等方成形グラファイトプレートであり、全ての側部について厚さ1.2cmの断熱性グラファイトファイバーボードの10cmの周縁部によって取り囲まれている内部領域を有していた。このように、複合体層は底層を完全に覆っていた。
【0081】
シードの製造:MEMC, Inc.から得られ、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキー(CZ)シリコン(単結晶質)のブールを、ダイアモンドコートバンドソーを用いてその長さに沿って、側部あたり140mmからの寸法の正方形の断面を有するように切り落とした。得られた単結晶質シリコンのブロックを、同じソーを用いてその断面を通して約2cm〜約3cmの厚さを有するスラブに切り出した。これらのスラブを単結晶質シリコンのシード結晶又は「シード」として用いた。シリコンブールの(100)結晶学的極方向を保持した。次に、得られた単結晶シリコンスラブを、石英ルツボの底部内に、スラブの(100)方向が上向きになり、(110)方向がルツボの1つの側に平行に保持されるように配列した。石英ルツボは、側部について68cmの正方形の断面、及び約40cmの深さを有していた。スラブを、それらの長尺方向をルツボの底に平行に、それらの側部を互いに接触させてルツボの底部内に配列して、ルツボの底部の上にかかるスラブの単一の完全な層を形成した。
【0082】
キャスティング:室温において、ルツボにシードプレートを装填し、次に固体シリコン供給材料を265kgの全質量まで充填した。高ホウ素ドープシリコンの少量のウエハを加えて、約0.3ppmaの全インゴットドーピングに十分なホウ素を与えた。充填したルツボを、まず支持構造体の断熱性部分の上に載置したグラファイト支持プレートで取り囲み、次に多結晶質シリコンをキャストするのに用いるin−situの溶融/一方向性凝固キャスト装置中に装填した。抵抗加熱器を約1550℃に加熱することによって溶融プロセスを行い、断熱部を合計で6cm開放することによって熱を底部から放射放出させながら加熱が頂部から行われるように、加熱器を構成した。この構成によって、溶融をルツボの底部に向かう上から下への方向で進行させた。底部を通る受動冷却により、熱電対によって監視しながら、シード結晶を溶融温度において固体状態で保持した。溶融の程度は、10分毎に溶融体中に沈下させた石英浸漬ロッドによって測定した。浸漬ロッドの高さを装置内の空のルツボについて採った測定値と比較して、残りの固体材料の高さを求めた。浸漬ロッド測定によって、まず供給材料を溶融し、次にシード結晶の約1.5cmの高さしか残留しなくなるまで溶融段階を継続させた。この時点において、加熱力を1500℃の温度設定値まで低下させ、一方、断熱部分を12cmに開放することによって底部からの放射を増加させた。浸漬ロッド測定によって観察されるように、凝固が始まる前に更に1mm又は2mmのシード結晶が溶融した。次に、種付けした単結晶の成長を凝固工程の終了まで進行させた。成長段階及びキャスティングサイクルの残りは通常のパラメーターを用いて行い、ここでは、頂部から底部への熱勾配を均一にし、次にインゴット全体を室温にゆっくりと冷却した。キャストシリコン生成物は66cm×66cm×24cmのインゴットであった。シードと合致する結晶性の領域が底部において始まり、非溶融材料の端部と適合し、成長が始まるにつれてそこから横方向に外側へルツボの壁部に向かって成長し、結晶化の終了に向かって一定の寸法に安定化した。インゴットから切り出したブリックの面を視認検査することによって単結晶質シリコン構造が明らかであった。
【0083】
実施例2:
実施例1のようにして種付けを行い、大きな単結晶体積を含むインゴットをキャストした。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切り出し用の固定ダイアモンド研磨材を有するバンドソー中に装填した。インゴットの底部を、2cmの厚さを有する単一の層として切り出した。次に、この層を切断テーブル上に水平に固定した。同じバンドソー内において、約1.5cmをそれぞれの側部から除去するように層の端部を切り取った。次に、スラブをサンドブラストにかけて接着剤及び異物を除去し、その後、加熱水酸化ナトリウム浴中でエッチングし、すすぎ、HCl浴中に浸漬して金属を除去した。次に、スラブを先のインゴットと同じ寸法の標準的なルツボの底部上に配置した。シリコン供給材料を265kgの全質量に装填し、キャスティングプロセスを繰り返して第2の種付けされたインゴットを製造した。
【0084】
実施例3:
シードの製造:ルツボの底部の輪郭を描くのに用いた18kgの正方形の(100)プレートから出発してシード層を形成して、58×58cmの被覆領域及び2〜3cmの範囲の厚さを与えた。これらのプレートを一緒に、ルツボ内の中心に位置する大きな正方形に配置した。次に、この正方形を(111)配向シード結晶の厚さ2cmの層によって取り囲んで、全シード層を63cm×63cmの正方形にした。
【0085】
キャスティング:シードを含むルツボにシリコンを265kgの全質量に充填し、キャスト装置内に配置した。実施例1のようにしてキャスティングを行い、溶融の終了及び凝固の開始を通してシード層が損なわれないで残留することが確保されるようにプロセスを監視した。得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5グリッドに切り出した。ブリックの結晶構造の光学検査により、(111)結晶が緩衝層として作用し、ランダムに核形成された粒が(100)の体積中に入るのを抑止したことが示された。
【0086】
実施例4:
ルツボの製造:標準的な69cm2のルツボを2層から構成される支持構造体上に配置した。この層は、複合体層の寸法が異なる他は実施例1と同様に構成されていた。底部固体グラファイト層は先のように80×80×2.5cm3の寸法を有していたが、複合体層の伝熱性部分は20×20×1.2cm3の寸法しかなく、底層の頂部上の中心に配置した。底層の残りは断熱性グラファイトファイバーボードで被覆した。
【0087】
シードの製造:21cm×21cm×2cmの寸法を有する(100)配向単結晶シリコンの単一の片を、ルツボの底部内に中心に配置した。次に、ルツボにシリコン供給材料の残りを265kgの全質量に充填した。
【0088】
キャスティング:
ルツボ及び支持プレートをキャスト装置内に配置し、シリコンの凝固のために更なる時間を与え、より小さな熱引き抜き面積を与えた他は実施例1と同様にサイクル運転した。冷却した後、インゴットを切片にした。切片化されたインゴットの視認検査によって、制御された熱の引き抜きから結晶の強い外向きの成長が確認された。
【0089】
実施例5:
ルツボの製造:標準的な69cm2のルツボをグラファイト支持プレート上に配置し、供給材料が先のインゴットから再生処理されたシリコンを含まない他は実施例1と同様に、シード層、供給材料、及びドーパントを装填した。次に、69×69×12cm3の寸法を有する溶融シリカリッドをルツボ上に配置した。プロセスガスが導入される頂部の断熱材内の孔に入れ子式のチューブが接続されるように、キャスト装置を改造した。次に充填物を装置中に装填し、持ち上げて入れ子式チューブと接触させた。変更した方法を用いてキャスト装置を運転して、より良好なガスの制御及び変化させた凝固設定によってルツボリッドの効果を相殺するようにした。得られたインゴットを測定すると、通常のインゴットにおいて見られる炭素濃度の1/10の濃度を有しており、鏡状の頂面及び通常のインゴットよりも少なく含有された異物粒子を更に有していた。
【0090】
したがって、本発明の幾つかの態様及び上記に記載の実施例にしたがうと、本発明の幾つかの態様にしたがってシリコンから製造されるウエハは、好適に薄く、光電池において用いることができる。例えば、ウエハは厚さ約10ミクロン〜厚さ約300ミクロンであることができる。更に、光電池において用いるウエハは、好ましくはウエハ厚さ(t)よりも大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、tに対するLpの比は好適には少なくとも0.5である。これは例えば、少なくとも約1.1又は少なくとも約2であってよい。拡散長は、少数キャリア(例えばp−型の材料における電子)が、多数キャリア(p−型の材料における正孔)と再結合する前に拡散することができる平均距離である。Lpは関係式:Lp=(Dτ)1/2(式中、Dは拡散定数である)によって小数キャリアの寿命τに相関する。拡散長は、光子線誘導電流法又は表面光電圧法のような数多くの技術によって測定することができる。例えば、どのようにして拡散長を測定できるかの説明に関しては、A. Fahrenbruch及びR. Bubeによる"Fundamentals of Solar Cells", Academic Press, 1983, p.90-102(参照として本明細書中に包含する)を参照されたい。
【0091】
ウエハは約100mm〜約600mmの幅を有することができる。好ましくは、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する。本発明のシリコンから製造されるウエハ、及びしたがって本発明によって製造される光電池は、例えば約100〜約3600cm2の表面積を有することができる。ウエハの前面は好ましくはテクスチャー加工する。例えば、ウエハは、化学エッチング、プラズマエッチング、又はレーザー若しくは機械的スクライビングを用いて好適にテクスチャー加工することができる。単結晶質ウエハを用いる場合には、ウエハを水酸化ナトリウムのような塩基の水溶液中、昇温温度、例えば約70℃〜約90℃において、約10〜約120分間処理することによって、ウエハをエッチングして異方性テクスチャー加工された表面を形成することができる。水溶液には、イソプロパノールのようなアルコールを含ませることができる。
【0092】
したがって、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;場合によってはウエハの表面について清浄化処理を行い;場合によっては表面へのテクスチャー加工工程を行い;表面をドープすることによってp−n接合を形成し;場合によっては表面上に反射防止被覆を析出させ;場合によっては例えばアルミニウム焼結工程を用いて背面電界を形成し;そしてウエハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成する;ことによって、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストシリコンインゴットから製造されるウエハを用いて太陽電池を製造することができる。
【0093】
例えばp−型のシリコンウエハを用いて光電池を製造するための通常の一般的な方法においては、ウエハの1つの側部を好適なn−ドーパントに曝露して、ウエハの前面又は受光側の上にエミッタ層及びp−n接合を形成する。通常は、n−型層又はエミッタ層は、まず化学析出又は物理析出のような当該技術において通常的に用いられる技術を用いてp−型のウエハの前面上にn−ドーパントを析出させ、かかる析出の後、n−ドーパント、例えばリンをシリコンウエハの前面中に導入して、n−ドーパントをウエハ表面中に更に拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」工程は、通常、ウエハを高温に曝露することによって行う。これにより、n−型層とp−型シリコンウエハ基材との間の境界領域においてp−n接合が形成される。ウエハ表面は、リン又は他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前にテクスチャー加工することができる。吸光性を更に向上させるために、通常は、窒化ケイ素のような反射防止被覆をウエハの前面に施し、場合によっては同時に表面及び/又はバルクの不動態化を与える。
【0094】
p−n接合を光エネルギーに曝露することによって生成する電位を利用するために、光電池には、通常、ウエハの前面上に導電性前面電気接点、及びウエハの背面上に導電性背面電気接点が与えられているが、両方の接点をウエハの背面上に配することができる。かかる接点は、通常は、1以上の高電導性金属で形成され、したがって通常は不透明である。
【0095】
したがって、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続単結晶質シリコン体(このシリコン体は、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する)からスライスされるウエハ;ウエハ内のp−n接合、ウエハの表面上の反射防止被覆;並びにウエハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接点;を含ませることができ、シリコン体は螺旋欠陥を実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0096】
また、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続多結晶質シリコン体(このシリコン体は、シリコン体の表面に直交する共通の極方向を有する粒方位の所定の配列を有し、このシリコン体は、更にそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する)からスライスされるウエハ;ウエハ内のp−n接合;ウエハの表面上の反射防止被覆、及びウエハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接点;を含ませることができ、多結晶質シリコンは約0.5cm〜約30cmの平均粒界長を有するシリコン粒を含み、シリコン体は螺旋欠陥を実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0097】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかである。本発明の他の態様は、明細書及び実施例は例示のみのものとして考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱性材料;
熱シンク;及び
断熱性領域;
を含む層の上にルツボを配置し、ここで層の伝熱性部分をルツボの底面の一部と接触させ;
ルツボの底部の上に少なくとも1つのシード結晶を配置し;
溶融シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させ;そして
伝熱性材料を通して熱を引き抜くことによってシリコン固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャストシリコンの固形体を提供し;
キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;
少なくとも1つのウエハの表面をドープすることによってp−n接合を形成し;そして
ウエハの少なくとも1つの表面の上に、表面中和層を形成し且つ導電性接点を形成する;
ことを含む太陽電池の製造方法。
【請求項3】
熱の引き抜きによって凝固中に種付けされた結晶の側部領域が膨張する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶融シリコンを配置することが、ルツボ内の固体シリコン供給材料を少なくとも1つのシード結晶の頂部上に配置し、ルツボの底部を冷却して少なくとも1つのシード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら固体シリコン供給材料を溶融することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
層を通る熱流束がシリコンを溶融する工程から固形体を形成する工程へ変化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶融シリコンを配置することが、
ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し;
ルツボをシリコンの溶融温度に加熱し;
ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶が完全に溶融しないように加熱を制御し;
溶融シリコンを溶融容器からルツボ中へ移す;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固形体の一部を、少なくとも1つのシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
伝熱性材料をルツボの底表面積の約5%〜約99%と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
伝熱性材料がルツボ内の少なくとも1つのシード結晶の寸法及び形状に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
熱シンクが熱を水冷容器の壁に放射する放射熱シンクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
断熱性領域が伝熱性材料の周りの周縁部を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
周縁部が、層の角部よりも層の側部の中心において幅のより広い輪郭形状を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
周縁部によってルツボに関する側部支持壁が熱シンクから断熱されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
断熱性領域の少なくとも一部を加えるか又は除去することによってルツボの底部と接触している伝熱性領域を減少又は拡大することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ルツボと熱連絡している抵抗加熱器;並びに
伝熱性材料;
熱シンク;及び
断熱性領域;
を含む層;
を含み、ここで層の伝熱性部分は、1つの側においてルツボの底面の一部、及び反対の側において熱シンクと接触している、シリコンをキャストするための装置。
【請求項16】
断熱性領域が伝熱性材料の周りの周縁部を形成している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
断熱性領域を導電性材料に対して移動させることによって、層を通して移動する熱を増加又は減少させる、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
伝熱性材料と断熱性領域との熱伝導率の比が少なくとも約20:1である、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
シード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比が約0.5〜約2.0である、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
結晶質シリコンのシード結晶を固体供給材料と一緒に装填し;
固/液界面をシード層の中心上において実質的に平坦であるが、シード層の端部における固体部分において凸状に保持することによって、固体供給材料及びシード結晶の一部を溶融し;
固/液界面をシード結晶の中心上において実質的に平坦であるが、シード層の端部における固体部分において凸状に保持しながら、シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【請求項21】
結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;
固/液界面をシード層全体の上において実質的に平坦に保持することによって、固体供給材料及びシード層の一部を溶融し;
少なくとも初めはシード層の少なくとも1つの端部の付近において過剰の熱を与えながら、シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【請求項22】
熱シンクの上に載置されているルツボを取り囲むためのシリコンを溶融させるための少なくとも1つの第1の抵抗加熱器;
熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段;
ガスを導入するための導入口;及び
ルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるようにルツボを取り囲むための更なる加熱器;
を有する、シリコンをキャストするための装置。
【請求項23】
更なる加熱器が、少なくとも1つの第1の抵抗加熱器と一緒に配置されている断熱性で水冷の導電性チューブの1つのループを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
更なる加熱器がルツボの壁に対して移動する、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
ルツボの底部上に少なくとも1つのシード結晶を更に含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に配置されているルツボの底部上に配置し;
液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し;
凸状の固体境界によって単結晶成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし、そして固形体を第2の温度に冷却し;
シード結晶の反対側の固形体の側部からスラブを切り出し;
化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして
その後のキャスティングプロセスのためのシード層としてスラブを用いる;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【請求項1】
伝熱性材料;
熱シンク;及び
断熱性領域;
を含む層の上にルツボを配置し、ここで層の伝熱性部分をルツボの底面の一部と接触させ;
ルツボの底部の上に少なくとも1つのシード結晶を配置し;
溶融シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させ;そして
伝熱性材料を通して熱を引き抜くことによってシリコン固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャストシリコンの固形体を提供し;
キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;
少なくとも1つのウエハの表面をドープすることによってp−n接合を形成し;そして
ウエハの少なくとも1つの表面の上に、表面中和層を形成し且つ導電性接点を形成する;
ことを含む太陽電池の製造方法。
【請求項3】
熱の引き抜きによって凝固中に種付けされた結晶の側部領域が膨張する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶融シリコンを配置することが、ルツボ内の固体シリコン供給材料を少なくとも1つのシード結晶の頂部上に配置し、ルツボの底部を冷却して少なくとも1つのシード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら固体シリコン供給材料を溶融することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
層を通る熱流束がシリコンを溶融する工程から固形体を形成する工程へ変化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶融シリコンを配置することが、
ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し;
ルツボをシリコンの溶融温度に加熱し;
ルツボ内の少なくとも1つのシード結晶が完全に溶融しないように加熱を制御し;
溶融シリコンを溶融容器からルツボ中へ移す;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固形体の一部を、少なくとも1つのシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
伝熱性材料をルツボの底表面積の約5%〜約99%と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
伝熱性材料がルツボ内の少なくとも1つのシード結晶の寸法及び形状に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
熱シンクが熱を水冷容器の壁に放射する放射熱シンクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
断熱性領域が伝熱性材料の周りの周縁部を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
周縁部が、層の角部よりも層の側部の中心において幅のより広い輪郭形状を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
周縁部によってルツボに関する側部支持壁が熱シンクから断熱されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
断熱性領域の少なくとも一部を加えるか又は除去することによってルツボの底部と接触している伝熱性領域を減少又は拡大することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ルツボと熱連絡している抵抗加熱器;並びに
伝熱性材料;
熱シンク;及び
断熱性領域;
を含む層;
を含み、ここで層の伝熱性部分は、1つの側においてルツボの底面の一部、及び反対の側において熱シンクと接触している、シリコンをキャストするための装置。
【請求項16】
断熱性領域が伝熱性材料の周りの周縁部を形成している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
断熱性領域を導電性材料に対して移動させることによって、層を通して移動する熱を増加又は減少させる、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
伝熱性材料と断熱性領域との熱伝導率の比が少なくとも約20:1である、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
シード結晶の面積に対する伝熱性材料の面積の比が約0.5〜約2.0である、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
結晶質シリコンのシード結晶を固体供給材料と一緒に装填し;
固/液界面をシード層の中心上において実質的に平坦であるが、シード層の端部における固体部分において凸状に保持することによって、固体供給材料及びシード結晶の一部を溶融し;
固/液界面をシード結晶の中心上において実質的に平坦であるが、シード層の端部における固体部分において凸状に保持しながら、シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【請求項21】
結晶質シリコンのシード層を固体供給材料と一緒に装填し;
固/液界面をシード層全体の上において実質的に平坦に保持することによって、固体供給材料及びシード層の一部を溶融し;
少なくとも初めはシード層の少なくとも1つの端部の付近において過剰の熱を与えながら、シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【請求項22】
熱シンクの上に載置されているルツボを取り囲むためのシリコンを溶融させるための少なくとも1つの第1の抵抗加熱器;
熱シンクを通して熱を制御して引き抜くための手段;
ガスを導入するための導入口;及び
ルツボ内の異なる領域において誘導加熱を与えるようにルツボを取り囲むための更なる加熱器;
を有する、シリコンをキャストするための装置。
【請求項23】
更なる加熱器が、少なくとも1つの第1の抵抗加熱器と一緒に配置されている断熱性で水冷の導電性チューブの1つのループを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
更なる加熱器がルツボの壁に対して移動する、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
ルツボの底部上に少なくとも1つのシード結晶を更に含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に配置されているルツボの底部上に配置し;
液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し;
凸状の固体境界によって単結晶成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし、そして固形体を第2の温度に冷却し;
シード結晶の反対側の固形体の側部からスラブを切り出し;
化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして
その後のキャスティングプロセスのためのシード層としてスラブを用いる;
ことを含む、キャストシリコンの製造方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【公表番号】特表2011−528308(P2011−528308A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518295(P2010−518295)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070196
【国際公開番号】WO2009/014961
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070196
【国際公開番号】WO2009/014961
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
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