説明

シールされたケーブルと端子クリンプ

【課題】ケーブルの撚り線及び/又は電気的端子に関して耐腐食性の改善されたアルミニウムを基材としたケーブル及びケーブル撚り線の間の隙間を含め、ケーブルをシールする方法の提供。
【解決手段】ケーブル10は、複数のケーブル撚り線12と、複数のケーブル撚り線12の一部分の上に、複数のケーブル撚り線12が少なくとも部分的には露出するように、配置される絶縁材14と、複数のケーブル撚り線12の隙間16の間、及び少なくとも部分的には絶縁材14の下に配置されるシール剤18と、を含んでいる。更に、方法は、絶縁材14をケーブル10の端部から剥ぎ取って、複数のケーブル撚り線12を露出させる段階と、シール剤18をケーブル撚り線12に塗布して、シール剤18が、毛管現象によって、絶縁材14の下に吸い込まれ、ケーブル撚り線12の間の隙間16を埋めるようにする段階と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールされたケーブルと端子クリンプに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ケーブルは、多くの装置との電気的通信を行うために使用されている。多くの場合、これらのケーブルは、高い導電性、良好な耐腐食性、及び適切な機械的強度を有する銅の撚り線を含んでいる。しかしながら、軽量化及び費用節約への関心によって、銅の代わりにアルミニウムを基材とした撚り線ケーブルへの関心が高まっている。しかしながら、アルミニウムを基材としたケーブルは、導電性、強度、及び耐用年数を含め、異なる特性を有している。恐らくもっと重要なのは、銅を基材としたケーブルとアルミニウムを基材としたケーブルは、異なる耐食性を有していることである。例えば、銅は、塩及び他の腐食性薬品に耐性を示すのに対し、アルミニウムは大気腐食には耐性を示すが、腐食性液体がケーブルの撚り線の間の隙間に侵入すると、局所的な孔食及び隙間腐食を生じ易い。アルミニウムを基材としたケーブルは、銅合金又は他の電気的端子にクリンプした場合も、電解質が存在すると、電界腐食を生じ易い。
【0003】
様々な環境が、ケーブルを、その様な環境に曝されていないケーブルよりも速く腐食させる可能性がある。例えば、湿度の高い区域にあるか、又は雨や雪の様な様々な環境条件に曝されているケーブルは、より腐食を生じ易い。氷を溶かすために道路用の塩を使用している地理的な区域では、舗装道路の被覆層の下に設置された撚り線ケーブルは、特に腐食を生じ易い。従って、腐食を最小限に抑えるため、シール剤を使用して、塩水の様な電解質がアルミニウムを基材としたケーブルと接触するの防ぐ場合もある。しかしながら、ケーブル撚り線の間には小さな隙間があるため、シール剤でケーブルを被覆するのは、難しいことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な次第で、ケーブルの撚り線及び/又は電気的端子に関して耐腐食性の改善されたアルミニウムを基材としたケーブルが、必要とされている。更に、ケーブル撚り線の間の隙間を含め、ケーブルをシールする方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ケーブルは、複数のケーブル撚り線と、複数の撚り線の一部分の上に、複数の撚り線が少なくとも部分的には露出するように、配置される絶縁材と、複数の撚り線の隙間の間、及び少なくとも部分的には絶縁材の下に配置されるシール剤と、を含んでいる。
【0006】
更に、或る方法は、絶縁材をケーブルの端部から剥ぎ取って、複数のケーブル撚り線を露出させる段階と、シール剤をケーブル撚り線に塗布して、シール剤が、毛管現象によって、絶縁材の下に吸い込まれ、ケーブル撚り線の間の隙間を埋めるようにする段階と、を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、或る実施形態による、複数のケーブル撚り線と、その上に配置されたシール剤と、を有するケーブルの例示的な側面図である。
【図2】図2は、或る実施形態による、シール剤が複数のケーブル撚り線に塗布されている、例示的なケーブルの例示的側面図である。
【図3】図3は、或る実施形態による、シール剤が、絶縁材の下に、そして毛管現象によって複数のケーブル撚り線の間の隙間の中に吸い込まれている、例示的なケーブルの例示的側面図である。
【図4】図4は、或る実施形態による、ケーブルの周りにクリンプされた端子の例示的な側面図であり、シール剤が複数のケーブル撚り線と端子に塗布されている状態を示している。
【図5】図5は、或る実施形態による、ケーブルをシールする方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ケーブルは、絶縁材の内側に配置された複数のケーブル撚り線を含んでいる。絶縁材は、ケーブル撚り線が少なくとも部分的には露出するように剥ぎ取られる。シール剤は、ケーブル撚り線に塗布され、シール剤は、絶縁材の下に吸い込まれ、毛管現象によって、ケーブル撚り線の間の隙間を埋める。毛管現象は、シール剤をある場所から別の場所へ吸い込む、ケーブル撚り線と絶縁材の能力である。具体的には、毛管現象は、シール剤を、ケーブルの一方の端から他方の端まで吸い込むこともある。或いは、毛管現象は、シール剤を、ケーブルの一方の端から、少なくとも部分的には絶縁材の下へと吸い込むだけでもよい。この様な次第で、シール剤は、多くのケーブル撚り線を被覆し、更にケーブル撚り線を腐食から防護することができる。更に、ケーブル撚り線の間の隙間をシール剤で埋めることで、腐食性液体の浸入を防いでいる。
【0009】
図1は、複数の、絶縁材14の中に配置された、アルミニウムを基材とする、又は他の型式のケーブル撚り線12を含んでいる、例示的なケーブル10を示している。絶縁材14は、プラスチックで作られていてもよく、開口部を画定するチューブ型の形状を有しており、ケーブル撚り線12は、開口部の中に配置されている。図解しているように、絶縁材14の一部は、ケーブル撚り線12を露出させるために剥ぎ取られている。ケーブル10の両端部は、ケーブル10の両側で撚り線12を露出させるために剥ぎ取られてもよいものと理解頂きたい。
【0010】
図2に示すように、それぞれのケーブル撚り線12の間には、非常に小さい隙間16が存在しており、腐食を防ぐために、シール剤18が、複数の撚り線12の隙間16の中に、及び少なくとも部分的には絶縁材14の下に配置されている。異なる特性を有する様々な型式のシール剤18を使用することができる。1つの例示的なやり方では、シール剤18は、良好な濡れ特性を有し、ケーブル撚り線12を作るのに使用されている材料と適合性があり、使用される環境内で長期間の安定性を有し、クリンプ接続部と適合性がある。アルミニウムを基材とした、又は他の型式のケーブル撚り線12と共に使用されるシール剤18の例としては、好気性又は嫌気性の接着剤、ワックス又はワックスを基材とした化合物、シリコンを基材とした形状追従性の良い化合物、ウレタンを基材とした形状追従性の良い被覆、有機質の密着性の良い防腐剤、油又はグリース、が挙げられる。更に、これらの各材料は、犠牲陽極として働くことによって腐食を最小限に抑えるのに役立つ、亜鉛又はマグネシウムの粉末と混ぜ合わせてもよい。
【0011】
シール剤18は、ケーブル撚り線12に塗布され、毛管現象が、シール剤18を、撚り線12の間の隙間に、そして絶縁材14の下の少なくとも一部の下に流し込み、隙間を埋める。1つの例示的なやり方では、シール剤18は、ケーブル10の一方の端から他方の端まで吸い込まれることもある。或いは、シール剤18は、絶縁材14の下を数ミリメートルの位置まで流れることもあり、1つの例示的なやり方では、ケーブル撚り線12の端部から約100mmの位置まで流れることもある。シール剤18が流れる程度は、シール剤18の粘度、撚り線12の間の隙間16の寸法、塗布されるシール剤の量、及び/又は絶縁材14の寸法を含め、様々な環境によって左右される。
【0012】
図2は、シール剤18がケーブル撚り線12に塗布されているところを示している。1つの例示的な方法では、シール剤18は、ケーブル撚り線12の上に滴下させてもよいが、シール剤18は、吹き付け、電解転送、及びブラシ又はスポンジを用いた塗布を含め、異なる技法で塗布してもよい。図3は、シール剤18が、絶縁材14の下に吸い込まれ、毛細現象によってケーブル10の他方の端まで、ケーブル撚り線12の間の隙間18を埋めた後の、ケーブル10の端部の拡大図である。シール剤18は、ケーブル10の他方の端まで完全に吸い込まれる必要は無いものと理解頂きたい。シール剤18は、少なくとも部分的に絶縁材14の下に吸い込まれていれば十分である。
【0013】
図4に示すように、1つの実施形態では、ケーブル撚り線12は、端子20にクリンプされており、シール剤18は、端子20をケーブル撚り線12上にクリンプする前又は後の何れに塗布してもよい。シール剤18を後で塗布する場合は、毛管現象によって、シール剤18が、端子20の下側に流れ、ケーブル撚り線12の間と、少なくとも端子20の一部の下の隙間を埋める。
【0014】
図5に示すように、ケーブル10をシールする方法100は、ケーブル10の端部から絶縁材14を剥ぎ取り、複数のケーブル撚り線を露出させる段階を含んでいる。次に、方法100は、シール剤18をケーブル撚り線12に塗布して、シール剤18が、絶縁材14の下に吸い込まれ、毛管現象によってケーブル撚り線12の間の隙間16を埋めるようにする段階104を含んでいる。先に述べたように、シール剤は、吹き付け、電解転送、及びブラシ又はスポンジを用いた塗布を含め、多くの方法で塗布することができる。また、シール剤18は、手動で、又は自動的に塗布してもよく、大量に又は少量だけ塗布してもよい。更に、シール剤18は、1つ又はそれ以上のこれらの技法を用いて、複数回の塗布又は被覆処理で塗布してもよい。シール剤18を塗布する工程104の前又は後の何れかに、方法100は、ケーブル10を端子20にクリンプする工程106を含んでいてもよい。
【0015】
上記説明は、例証であり制約を課すものではない。提供した例以外の多くの代替的な方法又は適用が、当業者には、上記説明を読めば明白となるであろう。本発明の範囲は、上記説明を参照して確定されるべきではなく、添付する特許請求の範囲を参照して、その様な特許請求の範囲を表題にした等価な全ての範囲と共に確定されなければならない。ここで論じている技術では、将来的な発展が生じるであろうこと、及び開示するシステムと方法はその様な将来的な例に組み込まれるであろうことを、予期し、意図している。要約して言えば、本発明は、修正及び変更することができるものであり、以下に述べる特許請求の範囲によってのみ制限されるものと理解頂きたい。
【0016】
以上の各実施形態は、具体的に示し、説明してきたが、それらは、最良の態様を例証しているに過ぎない。当業者には理解頂けるように、特許請求の範囲を実施する際には、特許請求の範囲に定義する精神及び範囲から逸脱すること無く、ここで説明した実施形態に対する様々な代替案を採用することができる。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義すること、及び、これらの特許請求の範囲とその等価物の範囲に入る方法と装置が、それによって包含されること、を意図している。この説明は、ここで説明した要素の全ての新奇性と進歩性の組み合わせを含んでいるものと理解されるべきであり、特許請求の範囲は、本出願又は後の出願において、これらの要素のあらゆる新奇性及び進歩性の組み合わせに対して示されてもよい。更に、前述の実施形態は、例証的なものであり、単一の特徴又は要素が、本出願又は後の出願において請求されるかもしれない全ての可能性のある組み合わせにとって、必要不可欠なわけではない。
【0017】
特許請求の範囲に使用している全ての用語は、別に明示されていない限り、当業者に理解頂ける、最も広義で妥当な解釈及び普通の意味を付与されるよう意図している。特に、「或る」「その」「前記」などの単数の冠詞は、特許請求の範囲が別の明示的な制限を示していない場合には、1つ又はそれ以上の表示された要素を示しているものと読み取らなければならない。
【符号の説明】
【0018】
10 ケーブル
12 ケーブル撚り線
14 絶縁材
16 隙間
18 シール剤
20 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法において、
ケーブル(10)の端部から絶縁材(14)を剥ぎ取って、複数のケーブル撚り線(12)を露出させる段階と、
シール剤(18)を前記ケーブル撚り線(12)に塗布して、前記シール剤(18)が、毛管現象によって、前記絶縁材(14)の下に吸い込まれ、前記ケーブル撚り線(12)の間の隙間(16)を埋めるようにする段階と、から成る方法。
【請求項2】
前記シール剤(18)を塗布する段階は、前記シール剤(18)を前記ケーブル撚り線(12)の上に吹き付ける段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シール剤(18)を塗布する段階は、前記シール剤(18)を前記ケーブル撚り線(12)の上に滴下する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ケーブル(10)を端子(20)にクリンプする段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シール剤(18)は、前記端子(20)が前記ケーブル(10)の上にクリンプされる前に塗布される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シール剤(18)は、前記端子(20)が前記ケーブル(10)の上にクリンプされた後に塗布される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記シール剤(18)は、前記絶縁材(14)の下に、前記ケーブル撚り線(12)の端部から約100mの位置まで吸い込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ケーブル(10)において、
複数のケーブル撚り線(12)と、
前記複数の撚り線(12)の一部の上に、前記複数の撚り線(12)が少なくとも部分的には露出するように、配置されている絶縁材(14)と、
前記複数の撚り線(12)の間の隙間(16)と、少なくとも部分的には前記絶縁材(14)の下とに配置されるシール剤(18)と、を備えているケーブル(10)。
【請求項9】
前記複数のケーブル撚り線(12)は、アルミニウム又はアルミニウムを基材とした合金を含んでいる、請求項8に記載のケーブル(10)。
【請求項10】
前記シール剤(18)は、毛管現象によって、前記絶縁材(14)の下に、及び前記撚り線(12)の間の前記隙間(16)の中へ吸い込まれる、請求項8に記載のケーブル(10)。
【請求項11】
前記シール剤(18)は、前記絶縁材(14)の下に、前記ケーブル撚り線(12)の端部から約100mの位置まで吸い込まれる、請求項10に記載のケーブル(10)。
【請求項12】
前記複数のケーブル撚り線(12)にクリンプされた端子(20)を更に備えている、請求項8に記載のケーブル(10)。
【請求項13】
前記シール剤(18)は、毛管現象によって、前記端子(20)の下に吸い込まれる、請求項12に記載のケーブル(10)。
【請求項14】
前記シール剤(18)は、前記端子(20)が前記複数のケーブル撚り線(12)上にクリンプされる前に、前記複数のケーブル撚り線(12)に塗布される、請求項12に記載のケーブル(10)。
【請求項15】
前記シール剤(18)は、前記端子(20)が前記複数のケーブル撚り線(12)上にクリンプされた後で、前記複数のケーブル撚り線(12)に塗布される、請求項12に記載のケーブル(10)。
【請求項16】
前記シール剤(18)は、接着剤、ワックス又はワックスを基材とした化合物、シリコンを基材とした形状追従性の良い被覆、ウレタンを基材とした形状追従性の良い被覆、有機質の密着性の良い防腐剤、油、及び、グリース、の内の少なくとも1つを含んでいる、請求項8に記載のケーブル(10)。
【請求項17】
前記シール剤(18)は、前記複数のケーブル撚り線(12)の腐食を減じる、請求項8に記載のケーブル(10)。
【請求項18】
前記シール剤(18)は、亜鉛の粉末及びマグネシウムの粉末の内の少なくとも1つと混ぜ合わされている、請求項8に記載のケーブル(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−103102(P2010−103102A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−209895(P2009−209895)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】