説明

スイカズラ(LonicerajaponicaThunb.)茎の活性成分の抽出および精製方法、その消炎鎮痛剤への用途

スイカズラ(Lonicera Japonica Thunb.,忍冬藤)からの活性分画物を抽出し精製する方法およびその用途を開示する。さらに詳しくは、本発明は、スイカズラ茎(スイカズラ葉を除去したスイカズラの茎)からタンニンと難溶性フラボノイド、サポニンなどの成分を除去したスウェロシドを含む活性分画物を抽出、精製する方法に関する。このようにして得た活性分画物は、従来のスイカズラ花、スイカズラ葉の活性分画物よりも優れた消炎、鎮痛効果を有し、安定性や安全性に優れ、消炎鎮痛剤の有効活性成分であるスウェロシド(sweroside)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイカズラ(Lonicera japonica Thunb.)からの活性成分の抽出および精製方法およびその用途に関し、さらに詳しくは、スイカズラ茎(スイカズラ葉を除去したスイカズラの茎)からタンニンと難溶性フラボノイド、サポニンなどの成分を除去したスウェロシドを含む活性成分を抽出、精製する方法に関する。このようにして得た活性成分は、従来のスイカズラの花やスイカズラ葉から得られた活性成分よりもより優れた消炎、鎮痛効果を有し、安定性や安全性により優れており、消炎鎮痛剤および有効活性成分であるスウェロシド(sweroside)を含有する。
【0002】
スイカズラ(生薬名:ニンドウ(忍冬)、Lonicera japonica Thunb.)は、日本、中国および韓国の全国各地の海抜50〜600m程度の山野および人家付近の堤に自生する半常緑の蔓性の低木であって、つぼみ(スイカズラ花)、茎(スイカズラ茎)は、利尿、解毒、止血、浄血、腫れ物治療、浮腫治療、風邪、下痢、嘔吐などに使用されている生薬である[大韓植物図鑑、リ・チャンボク、709、1989、ハンムン社、ソウル;大韓薬典外漢方薬(生薬)企画集、ジ・ヒョンジュン、リ・サンイン、87, 305, 1988、韓国メディカルインデックス社、ソウル;韓国の資源植物、キム・テジョン、vol. 4, 148-149, 1996、ソウル大学出版部、ソウル]。また、四象医学、廣濟秘笈などの多くの漢方医書には、人体内外の各種の炎症性疾患である癰疽の治療に有用であるという記録があり[朝鮮民族四象医学、延辺朝鮮民族医薬研究所、276, 1991、ヨカン出版社、ソウル;廣濟秘笈、李景華(リ・キョンファ)、349-351, 1991、ヨカン出版社、ソウル]、民間では昔から消炎、鎮痛活性が知られ、風邪のような上気道感染症、扁桃炎および神経痛の治療に多用されてきた。最近、スイカズラのこのような消炎、鎮痛活性が種々の実験動物モデルを通じて立証され、有効生理活性物質も分離されて学会に報告されている[植物性抗炎症剤の開発:スイカズラ抽出物に対する抗炎症および鎮痛作用の比較、リ・ソンジンの他、生薬学会誌、363-367, 25, 1994;Flavonoids from the aerial parts of Lonicera japonica, Son et al., Arch. Pharm. Res., 365-370, 15, 1992; Antiinflammatory activity of Lonicera japonica, Lee et al., Phytother. Res., 445-447, 12, 1998 ; Triterpenoid saponins from the aerial parts of Lonicera japonica, Son et al., Phytochem., 1005-1008, 35, 1994 ; Anti-inflammatory activity of the major constituents of Lonicera japonica, Lee et al., Arch. Pharm. Res., 133-135, 18, 1995]。
【背景技術】
【0003】
これまで知られているスイカズラ茎に含有されている有効活性成分としては、カフェオイルキナ酸(caffeoylquinic acid)、メチルカフェエート(methyl caffeate)、クロロゲン酸(chlorogenic acid)、イソ−クロロゲン酸(iso-chlorogenic acid)などの加水分解型タンニン(tannin)類と、ロガニン(loganin)、スウェロシド(sweroside)、ボゲロシド(vogeloside)、エピ−ボゲロシド(epi-vogeloside)などのイリドイドグリコシド(iridoid glycosides)などがある。従来の文献には、スイカズラ花とスイカズラ葉に関する研究がほとんどであった。しかし、注視すべきものは、スイカズラ茎とスイカズラ葉、スイカズラ花は含有成分系列の分布が異なるということである。すなわち、スイカズラ茎とは異なり、スイカズラ葉やスイカズラ花の主要成分は、ロニセリン(lonicerin)、ロイフォリン(rhoifolin)、オクナフラボン(ochnaflavon)などのフラボノイド(flavonoid)やヘデラゲニン(hederagenin)、オレアノール酸(oleanolic acid)を非糖部として有するトリテルペン(triterpene)系サポニン(saponin)および各種の加水分解型タンニン類である。
【0004】
しかし、このような系列の成分を有するスイカズラから注射剤を開発するにはいくつかの問題がある。すなわち、注射剤原料中に高分子タンニン類が多量含有されていれば、他の成分と結合して共沈現象が発生するおそれがあり、血液中の血漿タンパク質と結合して難溶性沈澱を形成し、血管閉塞症を引き起こすこともある。そして、スイカズラに含有されているフラボノイドは一般的に水に難溶性であるため、かなり多量の有機溶媒やその他の溶解補助剤を使わなければ有効濃度以上に溶解することが難しいという問題があり、また、フラボノイドの含量が高い分画物は一般的に注射用生理食塩水に非常に難溶性であり、アルカリバッファーに長期保存した場合、その安定性が問題となるおそれがある。最後に、スイカズラ由来のサポニン、特にモノデスモシド(monodesmoside)類は溶血作用が強いことが知られているため、これを精製せずに直接静脈注射することは不可能である[Studies on the saponins of Lonicera japonica Thunb., Kawai et al., Chem. Pharm. Bull., 4769-4775, 36(12), 1988]。特に、スイカズラ葉やスイカズラ花はタンニンと難溶性フラボノイドの含量がスイカズラ茎に比べて遥かに高いため、注射剤として使用した場合、急性毒性試験においてスイカズラ茎に比べて低含量でも毒性を惹起しただけでなく、鎮痛、消炎に係る有効性もまた良好でなかった。
【0005】
一方、昔から下熱や解毒の目的で忍冬藤(Lonicera japonica)、センブリ(Swertia japonica)、リンドウ(Gentiana scabra, Gentiana triflora, Gentiana manshurica, Gentiana rigescens, Gentiana rigescens Franch. var. stictantha Marquand)などが使用されてきたが、どのような成分がそのような効果を有するかは明確に知られていない。但し、スイカズラ茎において主薬効成分としてロガニン(loganin)に対する活性研究のみが主として行われてきた[J. Nat. Prod., 54(4), 1102〜1104, 1991: Planta Med., 60, 232~234, 1994: Phytotheraphy Res., 12, 405-408, 1998]。
【0006】
さらに、従来のスウェロシドは、肝保護活性および抗微生物活性程度のみが知られており[J. Ethnopharmacol., 42, 183-191, 1994 : Chem. Pharm. Bull., 45(11), 1823-1827, 1997: Yakugaku Zasshi, 102(8), 755-759, 1982]、消炎、鎮痛効果についてはまだ報告されていない。
【非特許文献1】大韓植物図鑑、リ・チャンボク著、709頁、1989年発行 、ハンムン社、ソウル
【非特許文献2】大韓薬典外漢方薬(生薬)企画集、ジ・ヒョンジュン、リ・サンイン著、87, 305, 1988年発行、韓国メディカルインデックス社、ソウル
【非特許文献3】韓国の資源植物、キム・テジョン、4版, 148-149頁、1996 年発行、ソウル大学出版部、ソウル
【非特許文献4】朝鮮民族四象医学、延辺朝鮮民族医薬研究所、276頁、1991 年発行 、ヨカン出版社、ソウル
【非特許文献5】廣濟秘笈、李景華(リ・キョンファ)、349-351 頁、1991年発行、ヨカン出版社、ソウル
【非特許文献6】植物性抗炎症剤の開発:ニンドウ抽出物に対する抗炎症および鎮痛作用の比較、リ・ソンジンの他著、生薬学会誌、363-367頁、25, 1994年発行
【非特許文献7】Flavonoids from the aerial parts of Lonicera japonica, Sonら著、Arch. Pharm. Res., 365-370頁、15, 1992年発行
【非特許文献8】Antiinflammatory activity of Lonicera japonica, Leeら著、Phytother. Res., 445-447頁、12, 1998年発行
【非特許文献9】Triterpenoid saponins from the aerial parts of Lonicera japonica, Sonら著、Phytochem., 1005-1008頁、35, 1994年発行
【非特許文献10】Anti-inflammatory activity of the major constituents of Lonicera japonica, Leeら著、Arch. Pharm. Res., 133-135頁、18, 1995年発行
【非特許文献11】Studies on the saponins of Lonicera japonica Thunb., Kawaiら著、Chem. Pharm. Bull., 4769-4775頁、36(12), 1988年発行
【非特許文献12】J. Nat. Prod., 54(4), 1102〜1104頁、1991 年発行
【非特許文献13】Planta Med., 60, 232〜234頁、1994年発行
【非特許文献14】Phytotheraphy Res., 12, 405-408頁、1998 年発行
【非特許文献15】J. Ethnopharmacol., 42, 183-191頁、1994年発行
【非特許文献16】Chem. Pharm. Bull., 45(11), 1823-1827頁、1997年発行
【非特許文献17】Yakugaku Zasshi, 102(8), 755-759頁、1982年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、スイカズラ茎(スイカズラ葉を除去したスイカズラの茎)からタンニンと難溶性フラボノイド、サポニンなどの成分を除去した活性分画物を取り出し、前記活性分画物の有効活性成分であるスウェロシドの非常に優れた鎮痛、消炎効果を確認した。
【0008】
したがって、本発明は、スイカズラ茎から消炎、鎮痛活性に優れ、安全性および 安定性に優れた活性分画物を製造する方法を提供することにその目的がある。
【0009】
また、本発明は、前記活性分画物を含有する消炎鎮痛剤を提供することに他の目的がある。
【0010】
さらに、本発明は、スウェロシドを含有する消炎鎮痛剤を提供することにまた他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、スイカズラ茎から消炎、鎮痛活性に優れ、安全性および安定性に優れた活性分画物を製造する方法をその特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記活性分画物を含有する消炎鎮痛剤を他の特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、スウェロシドを含有する消炎鎮痛剤を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスイカズラ茎から得た活性分画物は、一般の抽出、精製物に比べて溶解度および血液安全性が格段と増加し、鎮痛、消炎薬効もまた非常に優れているとともに、安全性および安定性に優れ、また、スイカズラ茎から得られた本発明のスウェロシド(sweroside)もまた薬効が非常に優れ、毒性がほとんどみられないため、その有効性および安全性に優れた消炎鎮痛剤としての使用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明は、スイカズラ茎からタンニンと難溶性フラボノイド、サポニンなどの成分を除去して活性分画物およびスウェロシドを抽出、精製する方法に関し、このようにして得られた活性成分は、従来のスイカズラ花、スイカズラ葉の活性分画物よりも顕著に優れた消炎、鎮痛効果を有し、安定性と安全性に優れており、消炎鎮痛剤および有効活性成分であるスウェロシド(sweroside)をも含有する。
【0017】
まず、以下の方法によって、スイカズラ茎から活性分画物およびスウェロシドを抽出、精製する。
【0018】
スイカズラ茎試料を約7〜10倍量の蒸留水で2〜3時間還流抽出した後濾過してろ液を集め、さらに5〜7倍量の蒸留水で2〜3時間還流抽出した後、集めた液を濾過して先のろ液と合せた後、減圧濃縮してその体積が原生薬重量に対して約1〜3倍量(v/w)となるようにした後、もう一回濾過する。蒸留水で抽出するに当たって、水の量が少なすぎると、攪拌し難くなり、抽出物の溶解度が低くなるため、抽出効率に劣り、蒸留水の量が多すぎると、さらなる時間と費用が必要となる。その後、同量の水飽和低級アルコールを入れて約10〜20分間30〜50rpm程度で攪拌する。層を分離した後、水飽和低級アルコール層を濾過、減圧濃縮して1次活性分画物を得る。この際、用いられる水飽和低級アルコールはプロピルアルコール、ブチルアルコールのような低級アルコールに蒸留水を加え、攪拌した後、沈降させて製造し、層分離は2〜3回行う。低級アルコール溶媒分画を得るにおいて、もし低級アルコールの使用量が少なすぎると、精製効率に劣るため、エキスの収率および有効成分の含量が低くなる。これに対し、低級アルコールの使用量が多すぎると、経済性に劣る。したがって、原生薬重量の1〜3倍量(v/w)の低級アルコールを使用することがよい。
【0019】
また、不要な物質の除去と薬効物質の探索のためにまずポリアミドレジンまたはポリビニルピロリドンレジンなどを用いて1次活性分画物に対するカラムクロマトグラフィーを行うが、この際、前記充填剤は水飽和低級アルコール層の1〜10倍量(w/w)を使用し、溶媒は蒸留水、50%(v/v)メタノール水溶液、メタノールの順に充填剤体積の2〜3倍量を溶出させた後溶媒を溶出させるステップ−グラディエント(step-gradient)方式を使用する。このようにして得られた分画物のうち、蒸留水で溶出させて得られる2次活性分画物は芳香族有機酸、タンニン、フラボノイド類化合物が相当除去されただけでなく、薬効の増加、顕著な急性毒性の減少、溶解度増加、血液安全性増加などの優れた改善効果を示した。前記2次活性分画物に対してさらにODS(オクタデシルシラン)レジンを用いてカラムクロマトグラフィーを行うが、10%(v/v)メタノール水溶液から10%(V/V)ずつメタノール量を増やしながらレジン体積の2〜3倍量の溶媒をステップ−グラディエント方式で溶出させ、レジンの量は前記のポリアミドレジンまたはポリビニルピロリドンレジンなどを用いて精製された1次活性分画物重量の20〜50倍量を使用する。この際、20〜30%(v/v)メタノール水溶液を溶出させた分画物が消炎、鎮痛効果に最も優れているので、その消炎、鎮痛有効活性成分を追跡した結果、スウェロシド(sweroside)、ロガニン(loganin)のようなイリドイド(iridoid)系物質が主活性物質であり、この際、スウェロシドの含量は15.1〜72.1重量%、ロガニン(loganin)の含量は13.9〜41.4重量%と確認された。
【0020】
特に、20〜30%(v/v)メタノール水溶液を溶出させた分画においてスウェロシド(sweroside)の含量が最も高く、該分画物をさらにカラムクロマトグラフィーを行って下記式(1)で表される化合物であるスウェロシドを分離する。
【0021】
【化1】



【0022】
このようにして得られた活性分画物とスウェロシドに対してアラキドン酸誘導性耳浮腫試験(Arachidonic acid induced ear edema test)とクロトン油誘導性耳浮腫試験(Croton oil induced ear edema test)を通じて消炎効果を測定し、酢酸誘導性ライシング試験(Acetic acid induced writhing test)を通じて鎮痛効果を測定した結果、従来のスイカズラ花、スイカズラ葉の活性分画物に比べて非常に優れた消炎、鎮痛活性があることを確認した。
【0023】
一方、薬剤学的分野で公知の方法によって本発明に係るスウェロシドを治療用薬剤に製剤することができ、それ自体または医薬的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などと混合して経口投与または非経口投与でき、特に粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、皮膚塗布剤または注射剤の形態に製剤化して使用できる。
【0024】
また、本発明に係る活性分画物またはスウェロシドの人体投与量は体内での活性成分の吸収度、不活性化率および排泄速度、患者の年齢、性別および、状態、治療する疾病の重症程度などによって適宜選択するが、一般的に成人に1日1〜200mg程度の使用量で投与することが好ましい。このようにして製剤化された製剤は、専門家の意見により必要であれば、専門化された投薬法により投与されるか、一定の時間間隔で日に数回投与でき、好ましくは一日に1〜3回投与できる。また、前記薬剤組成物は経口または非経口で投与でき、非経口投与は静脈内、筋肉内、直腸内投与、皮膚塗布などが可能である。
【0025】
特に、スイカズラ茎活性分画物は、従来に比べて消炎、鎮痛効果に非常に優れており、溶解度、急性毒性、血液安全性などにおいても最も適するので、注射剤として使用することが好ましい。(実施例)
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、これらは本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
(実施例1)
スイカズラの使用部位別薬効
1999年7月に慶北永川(韓国)でスイカズラの全草(茎および葉を有するスイカズラ)、スイカズラ葉、スイカズラ茎の各々の試料を採取して陰乾し、7倍量の蒸留水で2.5時間還流抽出した後濾過してろ液を集め、さらに7倍量の蒸留水で2.5時間還流0抽出した後、集めた液を濾過して先のろ液と合わせた後、減圧濃縮してもう一回濾過しその体積が原生薬重量に対して2倍量(v/w)程度となるようにした。その後、同量の水飽和n−ブチルアルコールを入れて15分間30rpm程度で攪拌し、2回層分離を行った後、アルコール層を濾過し、減圧濃縮して1次活性分画を得た。ポリアミドレジン(CAS NO. 63428-83-1)でカラムクロマトグラフィーを行い精製分画を得た。前記レジンの量は試料量の5倍量を使用し、50%(v/v)メタノール、メタノールの順に充填剤体積の2倍量を溶出させ、次に蒸留水溶剤を溶出し2次活性分画を得た。クロトン油誘導性耳浮腫試験は実験4時間前に絶食させた6週齢のICRマウス(体重:20〜30g,n=6,SLC,Japan)に対して尻尾静脈を通じて前記スイカズラの全草、スイカズラ茎、スイカズラ葉の2次活性分画物を投与し、15分後2.5%クロトン油で炎症を誘発させてから4時間後にダイアル厚さ測定機を用いて左の耳と右の耳を厚さを各々測定し、以下の式(1)によって炎症誘発率を計算した。その結果を下記表1に示す。
(数1)
炎症誘発率(%)={炎症が誘発された耳(右)の厚さ−正常耳(左)の厚さ}/
{正常の耳の厚さ}×100
【0026】
【表1】

【0027】
前記表1に示したように、スイカズラ茎活性分画物が消炎および鎮痛活性に最も優れていた。
(実施例2)
スイカズラ茎から得られた活性分画物の薬効比較
クロトン油誘導性耳浮腫試験は前記実施例1と同様な方法で行った。
【0028】
また、アラキドン酸誘導性耳浮腫試験は実験4時間前に絶食させた6週齢のICRマウス(体重:20〜30g,n=6,SLC,日本)に対して尻尾静脈を通じて薬物(マロビベン、スイカズラ茎の1次活性分画、2次活性分画)を投与し、15分後0.05%アラキドン酸で炎症を誘発させた後、1時間後に左の耳と右の耳の厚さを各々測定し、前記式(1)により抑制率を計算した。その結果を下記表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
前記表2に示したように、スイカズラ茎から得た2次活性分画物は芳香族有機酸、タンニン、フラボノイド類化合物が除去されただけでなく、1次活性分画物に比べて有効活性成分の含量もまた増加していた。
【0031】

(実施例3)
忍冬藤から得られた活性分画物の薬効比較
ポリアミドレジンの代わりにポリビニルピロリドンレジン(CAS NO. 25249-54-1)を用いて実施例1と同様な方法で実験を行った。
【0032】
【表3】

【0033】
(実施例4)
最終活性分画物の製造およびこれに対する薬効試験
前記実施例1で製造したスイカズラ茎の2次活性分画物を減圧濃縮した後、得られた粉末に対してさらにODSレジン(YMC*GEL ODS−A 12nm,S−150mまたはODS−AM 12nm,S−50mまたはODS−AQ 12nm,S−50m)を用いてカラムクロマトグラフィーを行うが、レジンの3倍量の20%(v/v)メタノールを溶出させた最終活性分画物を得た。
【0034】
クロトン油誘導性耳浮腫試験は前記実施例1と同様な方法で測定した。
【0035】
また、酢酸誘導性ライシング試験(Acetic acid induced writhing test)は、実験前日に絶食させたICRマウス(体重:20〜30g,n=8,SLC,Japan)に対して尻尾静脈を通じて薬物(マロビベン、スイカズラ茎の最終活性分画物)を投与して行った。20分後0.7%酢酸を腹腔注射し、15分後に10分間の悶え(writhing)回数を数えて炎症抑制率を測定した。その結果を下記表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
(実施例5)
有効活性成分の含量および薬効試験
前記実施例1および4の方法で製造された様々な試料の最終活性分画物に対して高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った結果、有効活性成分であるスウェロシド(sweroside)が15.1〜72.1重量%、ロガニン(loganin)が13.9〜41.4重量%含有されていることを確認した。各試料のスウェロシド(sweroside)とロガニン(loganin)の含量を表5に示す。各試料の最終活性分画物に対する薬効はは試料の産地と収穫時期により異なる。結果を表6に示す。
【0038】
【表5】


【0039】
【表6】

【0040】
(実施例6)
最終活性分画物に対する溶血試験
ヘパリン(Heparin)で処理した注射器でウサギの心臓から血液20mlを採取し、これを約10分間遠心分離した。上澄液を捨て、残渣を注射用生理食塩水で10倍希釈し、注意深く掻き混ぜた後、実施例1の各薬物(スイカズラ茎の最終活性分画物およびスイカズラ茎、スイカズラ葉、スイカズラの全草の1次精製物)および実施例4の最終活性分画物溶液0.5mlと希釈された血液0.5mlを試験管に入れて準備した(食塩水対照群と蒸留水(100%溶血)対照群も準備)。その後、37℃恒温槽で15分間試験管を培養し、さらに45分間室温で放置した。最後に2500rpmで2分間遠心分離した後上澄液を540nmで測定した。
【0041】
【表7】

【0042】
(実施例7)
スウェロシドの製造
前記実施例4で得られた最終活性分画物をオクタデシルシランレジンでカラムクロマトグラフィーを行って下記式(1)で表されるスウェロシド(sweroside)を分離した。
【0043】
【化1】

【0044】
(実施例8)
スウェロシドの消炎効果測定
クロトン油誘導性耳浮腫試験は実験4時間前に絶食させた6週齢のICRマウス(体重:20〜30g,n=6,SLC,日本)に対して尻尾静脈を通じてスウェロシドを投与して行った。15分後2.5%クロトン油で炎症を誘発させ、4時間後にダイアル厚さ測定機を用いて左の耳と右の耳の厚さを各々測定した。前記式(1)によって炎症誘発率を計算し、その結果を下記表8に示す。経口投与して得られた薬効を下記表9に示す。
【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
また、アラキドン酸誘導性耳浮腫試験は実験4時間前に絶食させた6週齢のICRマウス(体重:20〜30g,n=6,SLC,日本)に対して尻尾静脈を通じてスウェロシドを投与して行った。15分後0.05%アラキドン酸で炎症を誘発させ、1時間後に厚さ測定機を用いて左の耳と右の耳の厚さを各々測定し、前記式(1)により抑制率を計算し、その結果を下記表10に示す。前記と同様な方法で実験するが、経口投与して得られた薬効を上記表9に示す。
【0048】
【表10】

【0049】
【表11】

【0050】
(実施例9)スウェロシド(sweroside)の鎮痛効果の測定
酢酸誘導性ライシング試験(Acetic acid induced writhing test)は実験前日に絶食させたICRマウス(体重:20〜30g,n=8,SLC,日本)に対して尻尾静脈を通じてスウェロシドを投与して行った。20分後0.7%酢酸を腹腔注射し、15分後に10分間の悶え(writhing)回数を数えて炎症抑制率を測定した。その結果を下記表12に示す。経口投与して得られた薬効を下記表13に示す。
【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
(実施例10)
毒性試験
実験4時間前に絶食させたSDラット(体重:120〜170g、各投与量当たりの雌雄各々5匹,SLC,日本)に対して尻尾静脈を通じてスイカズラ茎の活性分画物およびスウェロシドを各々1.0g/Kg,1.5g/Kg,2.0g/Kg単位で投与し、30分間目視で観察した後30分間隔で目視観察した。また、薬物投与後2週間の死亡率観察、一般の症状観察、体重測定を行い、解剖して各臓器の異常有無を確認した。
【0054】
スイカズラ茎活性分画物およびスウェロシドの致死量は経口投与の際、5.0g/Kg以上(死亡個体なし)、静脈注射の際、2.0g/Kg以上(死亡個体なし)であり、静脈注射の際、2.0g/Kgの容量で投与後約10分間呼吸増加および活動力減少が認められたが、すぐ回復し、他の症状は認められず、また試験物質の投与による体重変化も現れなかった。解剖結果もまた対照群と同様以上はなかった。
【0055】
50、100および150mg/Kgの投与量で局所毒性に対して実験した場合にも注射用生理食塩水投与群との違いは発見できず、組織壊死や炎症反応などの毒性もまた認められなかった。
【0056】

(製造例1)
錠剤の製造
スイカズラ活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成で経口投与用錠剤を製造した。
【0057】
【表14】

【0058】
(製造例2)
シロップ剤の製造
スイカズラ茎活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成でシロップ剤を製造した。
【0059】
【表15】

【0060】
(製造例3)
注射剤の製造
スイカズラ茎活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成で注射剤を製造した。
【0061】
【表16】

【0062】
(製造例4)
注射剤の製造
スイカズラ茎活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成で注射剤を製造した。
【0063】
【表17】

【0064】
(製造例5)
注射剤の製造
スイカズラ茎活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成で注射剤を製造した。
【0065】
【表18】

【0066】
(製造例6)
軟膏剤の製造
スイカズラ茎活性分画物またはスウェロシドを用いて以下の組成で軟膏剤を製造した。
【0067】
【表19】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】活性成分の含量別薬効グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイカズラ茎を水で還流抽出した後ろ過し、該ろ液に同量の水飽和低級アルコールを入れて層分離した後、水飽和低級アルコール層を減圧濃縮して1次分画物を得る工程;および
前記1次分画物をポリアミドレジンまたはポリビニルピロリドンレジンで精製して2次分画物を得、さらにオクタデシルシランレジンで精製して最終活性分画物を得る工程を含むことを特徴とするスイカズラ茎活性分画物の製造方法。
【請求項2】
前記水飽和低級アルコールは、プロピルアルコールまたはブチルアルコールの飽和水溶液であることを特徴とする請求項1記載のスイカズラ茎活性分画物の製造方法。
【請求項3】
前記活性分画物には、スウェロシド(sweroside)とロガニン(loganin)が有効活性成分として含有されていることを特徴とする請求項1記載のスイカズラ茎活性分画物の製造方法。
【請求項4】
前記活性分画物には、スウェロシド15.1〜72.1重量%とロガニン13.9〜41.4重量%が含有されていることを特徴とする請求項3記載のスイカズラ茎活性分画物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法で得られたスイカズラ茎活性分画物が含まれていることを特徴とする消炎鎮痛剤。
【請求項6】
前記活性分画物には、スウェロシドとロガニンが有効活性成分として含有されていることを特徴とする請求項5記載の消炎鎮痛剤。
【請求項7】
前記活性分画物には、スウェロシド15.1〜72.1重量%とロガニン13.9〜41.4重量%が含有されていることを特徴とする請求項6記載の消炎鎮痛剤。
【請求項8】
前記消炎鎮痛剤が、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、皮膚塗布剤または注射剤の形態に製剤化されることを特徴とする請求項5記載の消炎鎮痛剤。
【請求項9】
下記式(1)で表されるスウェロシドが含まれていることを特徴とする消炎鎮痛剤。
【化1】


【図1】
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【公表番号】特表2006−510592(P2006−510592A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535252(P2004−535252)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/KR2003/001851
【国際公開番号】WO2004/024172
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】