説明

スタチン類の製造方法

本発明によれば、下記の工程を含むスタチンの製造方法が提供される:
a)式III:
【化1】


の化合物を立体選択的水素添加して、式II−a:
【化2】


の化合物を製造し、所望により水酸基の保護基を導入して、式II:
【化3】


(式中、Sは、水素原子または水酸基の保護基を表し;SおよびSは、それぞれ独立して、水酸基の保護基を表し;およびRは、水素原子またはカルボキシル基の保護基を表す)の化合物を製造する工程、および
b)式IIの化合物をラクトン化して、式I−a:
【化4】


の化合物を製造する工程。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMG−CoA還元酵素として知られているスタチン類の製造方法に関する。本発明の製造方法で使用される中間体化合物の一部は、新規な化合物であり、本発明はこれらの新規な中間体化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
スタチン類は、酵素であるヒドロキシメチルグルタリル(HMG)−CoA還元酵素を阻害する公知の活性物質の一群である。該活性物質は広く使用され、特に、血液中のコレステロールの低下剤として使用される。公知のスタチン類として、例えば、セリバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチン、BMY22089、ロスバスタチン、グレンバスタチンおよびアトルバスタチンが挙げられる。スタチン類の合成ルートは、公知であり、数多くの刊行物に記載されている。スタチン類は、原則的に、所謂スタチン側鎖が開環型またはラクトン型で結合した、芳香族、複素環式または芳香族複素環式の、置換または非置換の、単環式、二環式または多環式構造に基いている。
【化1】

(式中、Stは上記した環式構造、すなわちスタチン残基を表す)
本願明細書において使用される用語「スタチン」は、先行技術に記載されているスタチン類の薬学的に許容され得る塩類、水和物、溶媒和物、エステル類およびエーテル類をも更に意味するものである。
【0003】
スタチン類の有効性に関し非常に重要なことは、上記の式に示すように、スタチン側鎖における水酸基の3次元配列である。スタチンの合成において、最終製品の収率をできるだけ高くするために、非常に初期の段階で立体化学を確立し、その立体化学を保ちながら、すなわち立体選択的にその後の工程を実施する(相異する立体化学を持つ生成物は分離しなければならない)ことが経済的に得策である。
【0004】
スタチン類の製造方法は、古くから知られており、化学研究の課題である。1984年の初期の刊行物(J.Org.Chem.,第49巻、No.21,1984,3994−4003頁)には、とりわけ、以下の反応が記載されている。
【化2】

(式中、Tsはトシル保護基を表す。)
化合物:
【化3】

は、第1世代スタチン類の1つであるコンパクチンのラクトン残基の可能な製造用中間体と見なされているが、上記文献では、ラセミ体:
【化4】

の開裂は、全体の工程を無効とするこの化合物の単離をするために必要であると推論している。
【0005】
最近のスタチン類の製造に関して、先行技術では、このシリル化された中間体化合物を含まない別のルートが採択された。上記合成の出発化合物のように、5位および6位の水酸基が架橋保護基によって保護されたアルコールもまた、スタチン合成においてある程度の成功を収め、単離する場合においてのみ使用された。例えば、欧州公開特許第374922号明細書には化合物5,6−O−イソプロピリデン−3,5,6−トリヒドロキシヘキサン酸エチルの製造が開示されている。この合成の最終生成物は所望の(3R,5S)−異性体を含むが、その比率はわずか78:22であり、これでは、商業的な目的には不満足である。この化合物のラクトンへの変換は起きなかった。
【0006】
これに対し、さらに近代的なスタチン合成の改良方法では、例えば、欧州公開特許第583171号明細書に記載するように、トリヒドロキシヘキサノエートの3位および5位の水酸基の保護基が架橋保護基によって保護されている中間化合物を介して、あるいは架橋保護基を完全に含有しない中間化合物を介して合成が行われるが、これらの方法では、ラクトン化反応は生起しない。
【0007】
スタチン類の合成において先行技術が向かっている方向の典型的な例としては、例えば、WO03/004450およびWO03/004456の明細書中に記載されている。これらの特許公報は、所謂「キー中間体」
【化5】

【化6】

を開示している。これらは、更なる反応の後、スタチン残基とカップリングすることができる。これら「キー中間体」は、化合物:
【化7】

のラセミ混合物を、エナンチオ選択性触媒を使用する加水分解により製造される。
【0008】
この方法は、スタチン側鎖の立体化学が早い段階で確立するという利点があるが、操作が非常に複雑で、化合物:
【化8】

の立体選択的加水分解の収率は低く、側鎖の立体化学が後の操作で失われるかもしれないというリスクもある。
【0009】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の製造方法またはスタチン側鎖の製造方法は、Prasad,K.ら、Tetrahedron:Asymmetry,第1巻、No.5,307−310頁,1990;Prasad,K.ら、Tetrahedron Letters,第25巻,No.32,3391−3394頁、1984;Bennett,F.ら、J.Chem.Soc.Perkins Trans.1,133−140頁,1991;ドイツ特許3530798号明細書および欧州公開特許第1288213号明細書に同様に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
経済的、且つ簡単な方法でスタチン類を高収率、より短工程で製造することのできる製造方法が、大いに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、例えば、刊行物J.Org.Chem.,第49巻,No.21,1984,3994−4003頁に記載されている、殆ど見込みのなかった初期の実験に基づくスタチン合成法が、高収率かつ高光学純度で、所望のスタチン側鎖を有するスタチン類を与えることを見出した。中間体の中には、文献で公知のものもあるが、一方、他の中間体は新規化合物である。本発明によれば、これらの中間体を簡単な手段により、より高い収率で製造することができる方法もまた知見された。
【0012】
したがって、本発明は、スタチンの製造方法に関し、以下の工程a)およびb)を含むものである。
a)式III:
【化9】

の化合物を立体選択的水素添加して、式II−a:
【化10】

の化合物を製造し、所望により水酸基の保護基を導入して、式II:
【化11】

(式中、Sは、水素原子または水酸基の保護基を表し、SおよびSは、独立して、それぞれ水酸基の保護基を表す、あるいはSおよびSは、一緒になって水酸基の架橋型保護基を表し、Rは、水素原子またはカルボキシル基の保護基本を表す)の化合物を製造する工程、および
b)式IIの化合物をラクトン化して式I−a:
【化12】

の化合物を得る工程。
【0013】
また、本発明は、上記式(I−a):
【化13】

の中間体の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
基は、水素原子または水酸基の保護基を表す。水酸基の保護基は、当該分野で公知であり、例えば、一般的な参考文献Protective Groups in Organic Synthesis、Theodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wuts,第2版,John Wiley& Sonsを参照されたい。適切な水酸基の保護基は、例えば、WO03/004450にも記載されており、ここに援用することにより本願明細書に開示があったものとする。本発明によれば、水酸基の保護基は、炭素数4乃至10および任意に1乃至3個のヘテロ原子を有するものが好ましい。水酸基の保護基としては、1個のケイ素原子と、5乃至10個の炭素原子を含み、更にヘテロ原子は含まないものが特に好ましい。水酸基の保護基Sとしては、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジ−tert−ブチルメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルまたはトリス(トリメチルシリル)保護基が特に好ましい。水酸基の保護基Sとしては、tert−ブチルジメチルシリル基が最も好ましい。一般式R−O−C(O)−およびR−C(O)−(式中、Rは、アルキル基、特にtert−ブチル基のようなC−C−アルキル基;アリール基、特にフェニル基のようなC−C10−アリール基;またはアルキルアリール基、特にC−C−アルキル−C−C10−アリール基を表す)で表される保護基もまた好ましい。
【0015】
基およびS基は、通常の水酸基の保護基であって、水酸基の保護基Sに関して記載したものと同じ水酸基の保護基を使用することができる。再び、標準書物、Protective Groups in Organic Synthesis、Theodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wuts,第2版、John Wiley&Sonsを参照されたい。しかし、原則的に知られているように、SおよびSは、一緒になって架橋性の水酸基保護基を形成するのが好ましい。適切な架橋型の水酸基の保護基の例示としては、WO03/004450に開示され、ここに援用することにより本願明細書に開示があったものとする。保護基SおよびSが一緒になってイソプロピリデン保護基を形成するのが特に好ましい。
【0016】
基は、水素原子またはカルボキシル基の保護基を示す。カルボキシル基の保護基は、当業者に公知で、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、Theodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wuts,第2版、John Wiley & Sonsに記載されている。Rは、例えば、水素原子、C1−3−アルキル基またはC5−10−アリール基を示し、これらの基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C−C10−アルキル基、C−C10−アルコキシ基、0乃至10個の、好ましくは1乃至5個の炭素原子と、1乃至10個の、好ましくは1乃至5個の硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子とで構成される複素環、及び官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよい。Rは、C1−8−アルキルまたはC5−10−アリール基が好ましく、これらは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、テトラゾリル基、C1−8−アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基およびシアノ基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されている。
【0017】
特にS基がtert−ブチルジメチルシリル基を表す場合、R基は、特にC1−8−アルキル基が好ましく、特にC1−3−アルキル基、エチル基が最も好ましい。
【0018】
式I−a:
【化14】

の化合物は、簡単な方法で、スタチン類の製造において重要な中間体化合物である式I:
【化15】

の化合物に変換することができる。
【0019】
式I:
【化16】

の化合物において、S基は前記の通りである。R基を介して、式Iの化合物はスタチンの残基、特に、−CH、−CHO、−CH=P(R
【化17】

または
【化18】

にカップリングすることができる。
基:−CH=P(Rは、基:−H−P(Rと平衡状態で存在する。従って、これらは、基:−CH−P(R(式中、Mは、例えば、Hal(Hal=Cl、BrまたはI)またはO−Tosのような通常の反対イオンを表す)も含む。
【0020】
R基が、−CH=P(R
【化19】

または
【化20】

基の場合、式Iの化合物は、ウィッティヒ試薬またはホーナー−ウィッティヒ試薬であり、これらは引き続き、適切な官能基を有するスタチンの環式構造Stとのウィッティヒ反応またはホーナー−ウィッティヒ反応を行うことができる。環式構造Stと式Iの化合物が反応してスタチンを生成するが、この場合、好ましくは、カップリング部位にアルデヒド基を有している。
【0021】
基、R基およびR基は、ウィッティヒ基またはホーナー−ウィッティヒ基を完成させ、該化合物がウィッティヒ反応またはホーナー−ウィッティヒ反応を受けることができる通常の基であることが好ましい。従って、R基は、通常、1個または2個のC−C−アルキル基および/またはハロゲン原子によって置換されていてもよい、C−C10−アリール基、C−C−アルキル基またはC−C10−シクロアルキル基、特に、フェニル基、n−C−C−アルキル基またはシクロヘキシル基を示す。フェニル基は置換されていないのが好ましい。フェニル基は、また、1個または2個のn−C−C−アルキル基または塩素原子で置換されたものも好ましい。R基は、C−C−アルキル基が好ましく、特にn−C−C−アルキル基が、とりわけエチル基が好ましい。R基は、C−C10−アリール基またはC−C−アルキル基が好ましく、特にC−C10−アリール基またはC−C−アルキル基、特にフェニル基、メチル基またはエチル基が好ましい。しかし、これらの基は、その後に必要なウィッティヒ(またはホーナー−ウィッティヒ)反応を行うことができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
式Iの化合物中のR基がアルデヒド基を表す場合、式Iの化合物が反応して対応するスタチンを生成する環式構造Stは、適切な官能基を有していることが必要であり、ウィッティヒ反応またはホーナー−ウィッティヒ反応を実施することができる。
【0023】
ウィッティヒ反応およびホーナー−ウィッティヒ反応は公知の反応であり、有機化学に関連する教科書、例えば、March‘s Advanced Organic Chemistry,第4版,1992,John WileyおよびSonsを参照することができる。
【0024】
R基が−CH基を表す場合、該R基は、本発明によれば、ハロゲン原子、特に塩素、臭素または沃素原子、シアニド基(−C≡N)、−CHNH−基またはSO−R基、または脱離基を表す。
【0025】
がシアニド基を表す場合、式Iの化合物は、特にRが−CHNH基である式Iの化合物の製造のための中間体である。Rが−CHNH基である式Iの化合物は、アトルバスタチンの製造のための適切な、特に好ましい中間体である。
【0026】
基がシアニド基である式Iの化合物は、水素添加によってRが−CHNH基である式Iの化合物に変換することができる。
【0027】
基が−SOである式Iの化合物は、R基がウィッティヒ基またはホーナー−ウィッティヒ基である化合物に依存して、例えば、カップリング基としてアルデヒド基を持つ環式構造Stと反応してスタチンを製造することができる。対応するスルフォン類は、式I−aのアルコール類から、あるいは式Iのトシラート類から直接に、例えばTetrahedron Letters,1973,49,pp.4833−4836;Synlett 1988,pp.26−28またはJ.Chem.Soc.,2001、123,pp.10772−10773に記載するように、たとえば硫化物との反応とそれに続く過酸化物またはHとの酸化反応により得ることができる。
【0028】
基は、水素原子、C1−3−アルキル基またはC5−10−アリール基を示し、これらは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C−C10−アルキル基、C−C10−アルコキシ基、0乃至10個の、好ましくは1乃至5個の炭素原子と、1乃至10個の、好ましくは1乃至5個の硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子とで構成される複素環及び官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよい。R基は好ましくは、水素原子、C1−8−アルキル基またはC5−10−アリール基を示し、これらは任意に、それぞれ独立して、ハロゲン原子、テトラゾリル基、C1−8−アルキル基、C1−8−アルコキシ基、ニトロ基およびシアノ基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよい。
【0029】
本発明によれば、R基は、求核置換反応において、適切に置換されたスタチン残基とカップリングすることのできる通常の脱離基であってもよい。適切な脱離基は有機化学において公知であり、ここに好ましいものとして、ハロゲン原子、特に塩素原子、臭素原子および沃素原子と、−O−SO−R基(式中、Rは、アルキル基、アリール基またはアルキルアリール基を示し、好ましくは炭素数20以下であって、特に好ましくはC−C−アルキル基またはC−C10−アリール基であって、これらは1個または2個のC−C−アルキル基で置換されていてもよく、例えば、フェニル基またはp−トリル基が挙げられる。基−O−SO−Rは、−O−Tos基(式中、Tosはトシル基である)が好ましい。
【0030】
基としては、シアニド基、−CHNH基またはSO基が特に好ましい。Rの全意義に関して、水酸基の保護基Sは、上記した通りであり、特に好ましい意義についてもまたそうである。
【0031】
基がハロゲン原子である式Iの化合物は、式I−aの化合物から直接、好ましく製造される。R基がハロゲン原子である式Iの化合物は、R基が別の脱離基、特にO−トシル基である式Iの化合物からも製造することができる。式I−aの化合物からR基が−O−トシル基である式Iの化合物を製造する方法は、公知である。R基がハロゲン原子である式Iの化合物は、例えば化合物P(Rと反応させることによって、R基が−CH=P(R基である式Iの化合物に変換することができる。
【0032】
式I−aの化合物は、以下のスキームに従って反応させ、好ましい式Iの化合物を得ることができる。
【化21】

(式中、Halはハロゲン原子を示す。)
【0033】
第1級水酸基のアルデヒド基への酸化は、たとえば、スワン(Swern)酸化またはCr(VI):(PyH)Crによる酸化[Handbook of Reagents for Organic Synthesis “Oxidizing and Reducing Agents”(有機合成のための試薬便覧「酸化および還元剤」)、S.D.Burke、R.L.Danheiser編集、John Wiley & Sons Ltd.,1999,pp.330〜334]、またはCr(VI):HPyCrClOによる酸化[Handbook of Reagents for Organic Synthesis “Oxidizing and Reducing Agents”(有機合成のための試薬便覧「酸化および還元剤」)、S.D.Burke,R.L.Danheiser編集、John Wiley & Sons Ltd.,1999,pp.323〜330)によって実施することができる。
【0034】
トシル基のハライドへの変換は、例えば、Weygand/Hilgetag,第4版,1970,pp.232〜235の記載に従って行うことができる。トシル基のシアニドへの変換は、例えば、Organikum,第16版,1986,pp.211〜216;P.Kurtz「Houben−Weil」第8巻,1952,pp.290〜311;D.T.Mowry、Chem.Rev.,1948,42巻,pp.189〜284に記載されている。
【0035】
前記化合物の製造の詳細は、例えば、以下の刊行物から得ることができる。
− Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bioorganic Chemistry (1972−1999)(1988)、(8)、2291−5;(アルデヒド類に関して)
− Journal of Organic Chemistry(2001)、66(20)、6803−6806;(トシラートに関して)
− Tetrahedron(1995)、51(48)、13217−38;(トシラートに関して)
− Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bioorganic Chemistry (1995)、(13)、1641−3;(トシラートに関して)
− Journal of Organic Chemistry (1984)、49(21)、3994−4003;(トシラートに関して)
− 藤沢有、他,特開平10−087568号公報、1998年(平成10年4月7日)(塩化物に関して)
− Chemistry Letters (1997),(8),765−766;(塩化物に関して)
− Tetrahedron Letters(1996)、37(33)、6001−6004;(ヨウ化物に関して)
− Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bioorganic Chemistry(1972−1999)(1991)、(1)、133−40(ヨウ化物に関して)および
− Tetrahedron Letters(1988)、29(38)、4865−8(ヨウ化物に関して)
【0036】
式Iの化合物の殆どは新規であり、本発明は、これらの新規化合物にも関する。S基がtert−ブチルジメチルシリル基であり、R基が−CHO、−CH−O−Tos、−CHClまたは−CHI基である式Iの化合物は公知であり、従って、化合物としては請求されていない。本発明によれば、特に好ましい新規化合物は、S基がtert−ブチルジメチルシリル基であって、R基が−CH、−CH=P(R、−CH−P(R
【化22】

または
【化23】

(式中、Rは臭素原子、C≡N基、−CHNH基または−SO−R基であり、R、R、R、RおよびMは上記した通り)である式Iの化合物である。これらの化合物は、上記の説明に基づいて簡単に製造することができる。
【0037】
WO93/06235は、幾つかのテトラヒドロピラン−2−オン異性体を一般的に開示している。
【0038】
本発明による式I:
【化24】

の好ましい化合物は、
は、上記で定義した通りであり、
Rは、−CH、−CHOまたは−CH=P(Rを表し、
は、−CHNH、−SO−Rまたは−O−SO(式中、Rはアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基を表す)を表し、
但し、該R基がCHO基またはCH−OTos基の場合、S基はtert−ブチルジメチルシリル基ではなく、
は、ウィッティヒ基またはホーナー−ウィッティヒ基を完成させ、
は、水素原子、C1−3−アルキル基またはC5−10−アリール基であって、これらは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、および0乃至10個の炭素原子と、1乃至10個の硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子とを含む複素環及び官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよく、および
は、反対イオンを表す化合物である。
【0039】
さらに好ましい化合物として、S基がtert−ブチルジメチルシリル基であり、R基が−CH基または−CH=P(R
(式中、
は、−CHNH基または−SO−R基を表し、
は、ウィッティヒ基またはホーナー−ウィッティヒ基を完成させ、
は、水素原子、C1−3−アルキル基またはC5−10−アリール基であって、これらは任意に、それぞれ独立して、ハロゲン原子、および0乃至10個の炭素原子と、1乃至10個の硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子とを含む複素環及び官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよく、および
は、反対イオンを表す)の化合物が挙げられる。
【0040】
また、以下の例示について説明する。
【0041】
本発明によれば、式I−a:
【化25】

の化合物は、化合物II:
【化26】

(式中、S基、S基、S基およびR基は上記した通りである)を出発化合物として製造される。
【0042】
この反応工程は、原則的に文献公知であり、例えば、酢酸中で加熱することによって行うことができる。例えば、以下の刊行物が参照される。
− Journal of Organic Chemistry (1984),49(21),3994−4003;
− 欧州公開特許1234885号明細書;
− 米国特許第6,417,374号明細書;
− Journal of Organic Chemistry(2001),66(20),6803−6806;
− Tetrahedron (1995),51(48),13217−38;
− Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bioorganic Chemistry(1995),(13),1641−3
これらの刊行物は、援用することにより、本願明細書に完全に開示されるものである。
【0043】
式II:
【化27】

(式中、Sは水酸基を表す)の化合物は、S基が水素原子である式IIの化合物、すなわち式II−aの化合物から、例えば、化合物S−A(式中、Aはハロゲン原子(例えば塩素、臭素またはヨウ素)のような通常の脱離基を表し、Sは水酸基の保護基を表す)との反応によって、容易に製造することができる。
【0044】
保護基Sがtert−ブチルジメチルシリル保護基である、特に好ましい式IIの化合物は、例えば、DMFおよびイミダゾールの混合物中で、化合物II−aとClSiMetert−ブチルとを反応させることによって有利に製造することができる。
【0045】
式II−a:
【化28】

の化合物は、式III:
【化29】

の化合物から、例えば、室温(25℃)で、20乃至80バール、特に30乃至70バール、例えば約50バールの範囲内の高圧下、適当な溶剤中、好ましくは極性プロトン性溶剤、特にメタノールやエタノールのようなC−C−アルコール中で、水素で水素添加することによって、高い立体選択性で製造することができる。水素添加は、好ましくは、たとえば、Tetrahedron Lett.1991,32,4163およびWO95/18784に記載されている所謂Ru−BINAP触媒を使用して実施される。これら2つの刊行物は、本発明による方法を実行するための好ましい触媒の定義および製造法に関し、援用することにより、その内容が本願明細書に充分に開示される。
【0046】
本発明による最も好ましい触媒は、構造:
(R)−Ru(BINAP)Cl x NEt(式中、Et=エチル)または
(R)−Ru(BINAP)Cl x DMF x NEt
を有するものであり、
式中、BINAPは式:
【化30】

(式中、Ph=フェニル)である。これらは、例えば、TetrahedronLett. 1991,32,pp.4163に記載されている方法で製造することができる。(R)−BINAPの替わりに、(R)−TolBINAPもまた、有利に使用することができる。触媒(R)−Ru(BINAP)Clx NEtを用いて、本発明の反応において、シン/アンチ比を、≧80、特に≧90、好ましくは≧95、さらに好ましくは≧99とすることができる。これは、目的とする(3R,5S)−異性体の、目的としない異性体に対するモル比が80:20以上であることに相当する。一方、例えば、欧州公開特許第374922号明細書に記載された先行技術においては、モル比は78:22しか達成できなかった。対応(S)−BINAP触媒を用いても、立体選択的反応が起きるが、望ましくないアンチ異性体が優勢である。従って、本発明は、式IIIの化合物を、特に(R)−RuBINAPまたは(R)−RuTolBINAP触媒を使用して、立体選択的に水素添加し、式II−aの化合物を得る方法に関する。これらの触媒は前記した通りであり、また、例えばWO95/18784号、またはTetrahedron Lett.,1991、32,pp.4163に記載されている。また、前記水素添加によって、式II−a:
【化31】

の化合物の対応するアンチ化合物:
【化32】

に対するモル比は、80:20以上、特に90:10以上、特に95:5以上、最も好ましくは99:1以上である。従って、概して、本発明による方法では、もはや望ましくないアンチ異性体を除去する必要はない。しかしながら、除去が必要な場合は、公知の方法で実施することができる。
【0047】
式IIIの化合物は、例えば、Angew.Chem.1979,91,pp.76−77に記載された方法に従って、市販の経済的なS−リンゴ酸から公知の方法で得られる、式IV:
【化33】

の化合物から容易に得ることができる。
【0048】
化合物IVの化合物IIIへの変換は、先ず化合物IVのカルボキシル基をN,N’−カルボニルジイミダゾールのような適切な活性化剤で活性化させることによって、有利に実施される。次いで、この活性化された化合物を、化合物M0−1と反応させる。ここで、Mは、二価または三価の金属カチオンで、特に、元素周期律表の第2、第3族または第2、第3亜族の金属カチオン、特に、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオンまたはアルミニウムイオン、特に好ましくは、マグネシウムイオン、亜鉛イオンまたはアルミニウムイオン(Mg2+、Zn2+またはAl3+イオン)であり、R基は、適切なカルボン酸基、特に部分エステル化されたジカルボン酸基、例えば、EtOCCHCO基のようなC1−4−OC(CH1−4CO基である。別の適切なR基の例示として、CHCOO基のようなC1−6COO基が挙げられる。金属カチオン上の2個のR基は、互いに同じでもよいが、2個の異なったR基が該金属イオン上に存在してもよい。X基は、必要に応じて、金属カチオンMが三価のイオンの場合、電荷補償として働く一価の反対イオンである。2個のR基は、例えば、2個のR基の1個がC1−4−OC(CH1−4CO基で、残りがC−CCOO基であるように、相違するのが特に好ましい。例えば、化合物Mg(CHCOO)(EtOCCHCO)、Zn(EtOCCHCO)(EtOCCHCOO)またはAlCl(EtOCCHCO)(EtOCCHCOO)を使用することで非常に優れた結果が得られる。本発明によれば、前記した基の他の組み合わせも、もちろん使用可能である。反応は、例えば、THF中室温で実施することができ、60%を超える収率、好ましくは70%を超える収率を達成することができた。
【0049】
金属塩は、例えば、対応する金属粉末と対応する酸(例えばEtOCCHCOOH)とを、適切な溶剤中、例えばTHFなどのエーテル中で還流下、反応させることにより、インシツ(in situ)で好ましく製造することができる。
【0050】
本発明の方法によって、下記側鎖:
【化34】

(式中、点線は、存在してもよい結合を表す)を有するスタチン類の全てを、あるいは対応するラクトンを好ましく製造することができる。
【0051】
以下に好ましいスタチン類:
【化35】

を例示するが、例えばイタバスタチンおよびBMY22089も挙げられる。
【0052】
下記側鎖:
【化36】

を有するスタチン類は、下記側鎖:
【化37】

を有する対応するスタチン類の水素添加によって製造することができる。
【0053】
水素添加は、水酸基が保護されているスタチンの前駆体、即ち、下記側鎖:
【化38】

(式中、Sは水酸基の保護基を表し、上記の通りである)を有するスタチンに対して好ましく実施される。
【0054】
保護基S(もし存在すれば)の脱離およびラクトン環の開環は、本発明によるスタチン合成の最終工程で加水分解によるのが好ましい。
【0055】
本発明によれば、式Iの化合物とスタチン残基を表す環式構造Stとのカップリングは、ウィッティヒ反応またはホーナー−ウィッティヒ反応によって行われるのが好ましい。ここで、スタチン残基Stは、特に式Iの化合物がウィッティヒまたはホーナー−ウィッティヒ官能性を持つ場合、アルデヒド基によって官能化し、または式Iの化合物がアルデヒド基を有する場合は、残基Stの環式構造がウィッティヒまたはホーナー−ウィッティヒ官能性を備えている。対応官能基化された環式構造Stの製造方法は、例えば、WO84/02131号明細書、欧州公開特許第244364号明細書および欧州公開特許第521471号明細書に記載され、これらは援用することによりその内容が本願明細書に充分に開示されているものとする。これらの特許公報明細書に明示的に記載されていない官能基化された環式構造Stも対応する方法で製造することができる。ここで、例えば、WO01/04100およびWO03/006439の公報を参照されたい。
【0056】
スタチン類の製造方法の一般的な製造スキームは以下の通りである。
【化39】

(式中、Sは上記で定義した通りであり、Pは上記したウィッティヒ基またはホーナー−ウィッティヒ基を表し、特に、−P(フェニル)OTos基であり、Stはスタチンの残基、例えば、
【化40】

(Xは、各式における結合部位を示す)を表す。
【0057】
上記スキームにおいて、P基は、−S(O)−R基(式中、Rは上記で定義した通りである)をも表すことができる。
【0058】
アトルバスタチン製造の例示的な合成スキームは以下の通りである。
【化41】

【0059】
ジケトン:
【化42】

は、例えば、WO03/344011、WO03/24959、WO03/04457、WO03/04450、WO01/72706、WO98/04543、米国特許第5,298,627号、WO89/07598またはTetrahedron Letters(1992),33(17),2283−4頁に記載された方法で製造することができる。
【0060】
以下の実施例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、例示としての以下の合成スキームに関する。
【化43】

【0062】
[実施例1]

(4S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)酢酸メチル(化合物1)
この化合物は、例えば、アルドリッチ社から市販されている、あるいは(S)−リンゴ酸ジメチルから出発して、エステル基の1つをChem.Letters1984,pp.1389−1392またはTetrahedron 1992、48、pp.4067−4086に記載の方法に従って、選択的に還元することによって簡単な手段で製造することができる。
【0063】
0.28g(0.0074mol)のNaBHを、一度に300mlの無水THF中、113.4g(0.70mol)の(S)−リンゴ酸ジメチル溶液に加えた。次いで、68ml(54.5g、0.72mol)のBHx MeS複合体を室温で撹拌しながら、ゆっくり加えた。添加の間、ガス状生成物が発生した。添加終了後、反応混合物を室温で3時間保った。その後、285mlのメタノールを加え、得られた溶液を室温で一晩放置した。揮発性成分を留去し、粘性残渣を減圧下6時間乾燥した。残渣を、300mlのアセトン、96.3ml(81.6g、0.78mol)のMeC(OMe)および4g(0.021mol)のp−TsOH x HOと混合した。反応を一晩室温で行った。次いで反応混合物を4gの炭酸ナトリウムで中和した。反応混合物を更に1時間撹拌し、ろ過し、濃縮した。残渣を減圧下(74℃/6ミリバール)で蒸留し、90.6g(74.4%)の化合物1を得た。
【0064】
[実施例2]
(4S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)酢酸(化合物2)
50g(0.287mol)の実施例1の化合物を撹拌しながら、氷冷した2M水酸化ナトリウム水溶液(287ml、0.574mol)に加えた。氷浴を取り除き、混合物を2時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで抽出し(3×50ml)、有機抽出物を分離した。水層を100mlのジエチルエーテルと混合し、氷で冷却した。300mlの2規定硫酸水素ナトリウム水溶液を混合物に加えた。該混合物を激しく15分間撹拌した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を減圧乾燥し、36g(78.3%)の液状の生成物を得た。NMRスペクトルで測定した最終生成物の純度は、95%であった。生成物は、さらに精製することなく使用することができた。
H NMR(CDCl),δ ppm: 1.37(3H,s),1.43(3H,s),2.58(1H,dd,J=16.2および6.7Hz),2.75(1H,dd,J=16.2および6.7Hz),3.68(1H,dd,J=8.5および6.1Hz),4.17(dd,J=8.5および6.0Hz),4.45−4.53(1H,m),11(1H,br.s).
13C NMR(CDCl),δ ppm: 25.8(CH),27.2,(CH),39.2(CH),69.4(CH),72.1(CH),109.9(C),176.7(COO).
【0065】
[実施例3]
(4S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−3−オキソへキサン酸エチル(化合物3)
49.0g(0.371mol)のマロン酸モノエチルと6.0g(0.248g原子)のマグネシウムとの混合物を、200mlの無水THF中で撹拌しながら4時間還流し、第1溶液を得た。これと同時に、28.8g(0.177mol)の固形N,N’−カルボニルビスイミダゾールを、5〜10分かけて、実施例2の25.8g(0.161mol)の化合物を含む100mlの無水THF溶液に加えると、ガスが発生した。次いで、室温で2時間撹拌した。そして、冷却した第1溶液をこの溶液に添加した。残存したマグネシウムを50mlの無水THFで洗浄し、次いで、洗浄液を反応混合物に加えた。反応混合物を一晩室温で撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣を200mlの酢酸エチルに溶解し、激しく撹拌しながら430mlの2規定の硫酸水素ナトリウム水溶液で酸性にした。有機層を分離し、順次、2規定の硫酸水素ナトリウム水溶液(2×200ml)および重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(3×200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を減圧下(90−93℃、0.07ミリバール)で濃縮し、26.9g(72.4%)の化合物3を得た。CDCl中のNMRスペクトルによって、生成物は約10%のエノール型を含むことが示された。以下のNMRスペクトルは、専らケト型に関するものである。
H NMR(CDCl),δ ppm: 1.28(3H,t,J=7.1Hz),1.35(1H,s),1.40(1H,s),2.75(1H,dd,J=17.1および6.8Hz),2.99(1H,dd,J=17.1および6.1Hz),3.49(2H,s),3.57(1H,dd,J=8.4および6.6Hz),4.15−4.24(3H,m),4.42−4.52(1H,m).
13C NMR(CDCl),δ ppm: 14.3(CH),25.7(CH),27.1(CH),47.4(CH),49.9(CH),61.7(CH),69.5(CH),71.7(CH),109.2(C),167.1(COO),201(C=O).
【0066】
[実施例4]
(3R,4S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル(化合物4)
a)触媒の製造
200mg(0.295mmol)の(R)−TolBINAP、73.6mg(0.147mmol)の[Ru(C)Clおよび2mlのDMFの混合物をアルゴン雰囲気下、100℃で15分間撹拌した。揮発性成分を留去し、残渣を減圧下、50℃で1時間乾燥した。BINAP触媒のこの製造方法は、刊行物Tetrahedron Lett.,1991,32,4163に基づく。残渣を3mlのジクロロメタンに溶解し、0.2mlのトリエチルアミンを加えた。室温で1時間放置後、揮発性成分を留去し、残渣を減圧乾燥した。固体状の生成物を、さらに精製および特性化することなく、以下の水素添加用触媒として使用した。
【0067】
b)実施例3のケトンの水素添加
10mlの無水の酸素非含有メタノール中、0.58g(2.5mmol)の実施例3の化合物と、工程a)で製造した4.3mg(約0.005mmol)のプレ触媒との混合物を、嫌気状態で撹拌しながら室温で、最初50バール水素圧下で水素添加した。150分後、水素の吸収が終了した。オートクレーブを開き、反応混合物を濃縮し、減圧下で乾燥した。転化率および収率は定量的であった。NMRスペクトルによれば、生成物のジアステレオマー純度は、99%を超えていた。ジアステレオマー純度は、Chem.Ber.,1998,pp.2035−2044に従って、対応するメチルエステル類と同様にしてNMRスペクトルに基づき測定した。
H NMR(CDCl),δ ppm: 1.27(3H,t,J=7.1Hz),1.36(3H,s),1.42(3H,s),1.72−1.83(2H,m),2.45−2.59(2H,m),3.53−3.61(2H,m),4.08−4.35(5H,m).
13C NMR(CDCl),δ ppm: 14.4(CH),25.9(CH),27.1(CH),39.9(CH),41.8(CH),60.8(CH),67.0(CH),69.7(CH),74.6(CH),109.4(C),172.3(COO).
【0068】
[実施例5]
(3R,4S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサノエート(化合物5)
J.Org.Chem.,1984,49,pp.3994−4003に記載の方法に従って、表題化合物を実施例4の化合物から収率88%で得た。
【0069】
[実施例6]
(4R,6S)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−6−ヒドロキシメチルテトラヒドロピラン−2−オン(化合物6)
J.Org.Chem.,1984,49,pp.3994−4003に記載の方法に従って、表題化合物を実施例5の化合物から収率60%で得た。
【0070】
[実施例7]
(4R,6S)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−6−(p−トルエンスルホニルオキシメチル)テトラヒドロピラン−2−オン(化合物8)
J.Org.Chem.,1984,49,pp.3994−4003に記載の方法に従って、 表題化合物を実施例6の化合物から収率91%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
a)式III:
【化1】

の化合物を立体選択的水素添加して、式II−a:
【化2】

の化合物を製造し、所望により水酸基の保護基を導入して、式II:
【化3】

(式中、Sは、水素原子または水酸基の保護基を表し;SおよびSは、それぞれ独立して、水酸基の保護基を表し;およびRは、水素原子またはカルボキシル基の保護基を表す)の化合物を製造する工程、および
b)式IIの化合物をラクトン化して、式I−a:
【化4】

の化合物を製造する工程、
とを含むことを特徴とするスタチンの製造方法。
【請求項2】
さらに下記の工程:
c)式I−a:
【化5】

の化合物を、式I:
【化6】

(式中、Sは、請求項1で定義した通りであり;Rは、−CH、−CHO、−CH=P(R、−CH−P(R
【化7】

または
【化8】

を表し;Rは、ハロゲン原子、−C≡N、−CHNH、−SO−Rまたは脱離基を表し;R、RおよびRは、ウィッティヒ(Wittig)基またはホーナー−ウィッティヒ(Horner−Wittig)基を完成させ;Rは、水素原子、またはC1−3−アルキル基、またはC5−10−アリール基を表し、これらはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、0乃至10個の炭素原子と、1乃至10個の硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子とを含む複素環基、及び官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよく;およびMは、反対イオンを表す)の化合物に変換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式III:
【化9】

の化合物を、式IV:
【化10】

の化合物の鎖延長反応により製造する工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
式Iの化合物を、下記の製造工程a)乃至e)の1つにより、次いで所望によりラクトン環を開環し、および所望により保護基を除去してスタチンに変換することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法:
a)式(I):
【化11】

(式中、RはCHO基を表し、Sは請求項1で定義した通り)の化合物を、式:
【化12】



[式中、Rは、−CH=P(R、−CH−P(R
【化13】

または
【化14】

(式中、R、R、RおよびMは請求項1で定義した通り)を表す]の化合物と反応させる工程、
b)式I:
【化15】

(式中、Rは、−CH=P(R、−CH−P(R
【化16】

または
【化17】

を示す)の化合物を、式:
【化18】

(式中、Rは−CHOを表し、R、R、RおよびMは請求項1で定義した通り)の化合物と反応させる工程、
c)式I:
【化19】

(式中、Rは−CH−C≡Nである)の化合物の反応であって、式I(式中、Rが−CH−C≡Nである)の化合物の水素添加によって式I(式中、Rが−CH−CHNHである)の化合物を製造し、式I(式中、Rが−CH−CHNHである)の化合物を式V:
【化20】

の化合物と反応させる工程、
d)式I:
【化21】

(式中、Rは−CH−C≡Nである)の化合物を水素添加して、式I(式中、Rは−CH−CHNHである)の化合物を製造し、式I(式中、Rは−CH−CHNHである)の化合物を式V:
【化22】

の化合物と反応させる工程、
e)式(I):
【化23】

(式中、Rは−CH−CHNHである)の化合物を、式V:
【化24】

の化合物と反応させる工程。
【請求項5】
式:
【化25】

(式中、Sは請求項1で定義した通りであり、Stは、スタチンの残基を表す)の化合物を接触水素添加し、そして所望により保護基Sを除去し、所望によりラクトン環を開環し、式:
【化26】

の化合物に変換することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
水酸基の保護基Sが、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリルエチル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルメチルシリル、ジ−tert−ブチルメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリス(トリメチルシリル)およびパラ−トシル保護基から選択されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
保護基SおよびSが架橋されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
保護基SおよびSが一緒になってイソプロピリデン保護基を表すことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
RがCH基を表し、Rが脱離基を表し、この脱離基がハロゲン原子、および−OSO−C−C−アルキル基または−OSO−C−C10−アリール基から選択されることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
は、水素原子またはC1−3−アルキル基またはC4−10アリール基を表し、これらは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、0乃至10個の炭素原子と、硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択される1乃至10個のヘテロ原子とを有する複素環基、および官能基から選択される1またはそれ以上の基によって置換されていてもよいことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
は、C乃至C10−アリール基を表し、これは所望により1個または2個のC−C−アルキル基および/またはハロゲン原子、C−C−アルキル基またはC−C10−シクロアルキル基によって置換されていてもよく、
は、C−C−アルキル基を表し、
は、C−C−アルキル基またはC−C10−アリール基を表すことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
スタチンが、フルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、グレンバスタチンまたはアトルバスタチンであることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
式I:
【化27】

(式中、SおよびRは請求項2で定義した通りである。但し、RがCHO基、−CH−OTos基、−CHCl基または−CHI基を表す場合は、Sは、tert−ブチルジメチルシリル基ではない)の化合物。
【請求項14】
がtert−ブチルジメチルシリル基を表し、Rが−CH、−CH=P(R、−CH−P(R
【化28】

または
【化29】

(式中、Rは、臭素原子、−C≡N、−CHNHまたは−SO−Rを表し;R、R、R、RおよびMは請求項2で定義した通りである)であることを特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式II:
【化30】

(式中、S、S、SおよびRは、請求項1で定義した通りである)の化合物をラクトン化して、式(I−a):
【化31】

(式中、Sは請求項1で定義した通りである)の化合物に変換することを特徴とする、式(I−a)の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2007−513077(P2007−513077A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538768(P2006−538768)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012659
【国際公開番号】WO2005/047276
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(501249043)ラティオファルム ゲー・エム・ベー・ハー (7)
【Fターム(参考)】