スタビライザブッシュの製造方法
【課題】ゴム弾性体に剛性の中間板を設けたスタビライザブッシュをスタビライザバーに組付状態に製造するに際して、ゴム弾性体をスタビライザバーに十分な接着力で接着でき、また後接着のための加圧加熱によって外ゴム層が熱へたりを生じて接着力や耐久性が低下したり、所望の初期ばね特性が得られなかったりする問題を解決する。
【解決手段】ゴム弾性体と16と、ブラケット14と、剛性の中間板18とを有するスタビライザブッシュ12を製造するに際して、一体加硫品から成る各分割体12A,12Aをスタビライザバー10を軸直角方向に挟み込む状態に組み合せて、中間板18の軸方向両端部に軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め塗布してある接着剤Sにて挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に後接着にて接着固定する。
【解決手段】ゴム弾性体と16と、ブラケット14と、剛性の中間板18とを有するスタビライザブッシュ12を製造するに際して、一体加硫品から成る各分割体12A,12Aをスタビライザバー10を軸直角方向に挟み込む状態に組み合せて、中間板18の軸方向両端部に軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め塗布してある接着剤Sにて挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に後接着にて接着固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のスタビライザバーを車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スタビライザバーは車体の傾きを減らすために取り付けられている捩り剛ばね(トーションバー)で、その両端を左右のサスペンションに取り付け、左右の車輪が上下に異なる動きをするときこれを抑制するように作用する。
例えばコーナを曲がるときサスペンションは遠心力によって外輪側が縮み、内輪側が伸びようとし、結果として車体が遠心力で外側に傾こうとする。
スタビライザバーはこのように左右の車輪が上下逆相で動くとき(ローリングするとき)捩れを発生させて、その捩れ剛性による抵抗によって左右の車輪の逆相の動きを抑制し、また捩れにより蓄えられた弾性復元力で逆相に動いた左右の車輪を速やかに元に戻すように働く。
【0003】
このようにスタビライザバーはロール角を抑える働きを有しており、これにより車両の走行安定性が高められる。
このスタビライザバーを車体に取り付けるに当っては、振動絶縁部材としてのスタビライザブッシュを車体とスタビライザバーとの間に介在させ、スタビライザバーを車体に弾性支持させるようにする。
【0004】
図12はスタビライザブッシュを用いたスタビライザバーの車体への弾性支持の例を示している(下記特許文献1に開示)。
同図において200は金属棒から成るスタビライザバーで、全体として平面形状が概略コ字形状をなしており、車幅方向(車両の左右方向)にほぼ直線状に延びる中央部200Aが一対のスタビライザブッシュ202にて車体204に固定され、また両端の腕部200Bの各端部が車輪206を支持するサスペンションアーム208に固定されている。
【0005】
スタビライザブッシュ202は、挿通孔を有するゴム弾性体210を有していて、その挿通孔にスタビライザバー200が挿通され、その状態で外筒部212を有するブラケット214により、ゴム弾性体210が外筒部212の内側の凹部220に内嵌した状態で車体204に固定されている。
【0006】
図13は従来用いられているスタビライザブッシュの例を示したもので、図示のように従来においてはゴム弾性体210がブラケット214とは別に単体で加硫成形され、その後にゴム弾性体210に対して挿通孔216に達する切割り218が入れられて、その切割り218を通じてゴム弾性体210がスタビライザバー200に嵌め合され、即ちスタビライザバー200が挿通孔216を挿通した状態とされ、その後にブラケット214によりゴム弾性体210が車体204に固定される構成とされていた。
【0007】
ここでブラケット214は、外筒部212の内側にゴム弾性体210を内嵌させる凹部220を有し、また両端部に板状の固定部222を有していて、それら固定部222において車体204に固定される。
【0008】
ところでこのスタビライザブッシュ202においては、スタビライザバー200に加わる捩りの入力等によって挿通孔216内面がスタビライザバー200に対して滑りを生じ、その滑りによってスティックスリップ音等の異音が発生する問題を有していた。
【0009】
その対策として、下記特許文献2にはゴム弾性体210を加硫成形する際に、これをスタビライザバー200に一体に加硫接着する点が提案されている。
しかしながらこの場合、大形のスタビライザバー200を直接ゴム弾性体210の成形金型にセットしてゴム弾性体210を加硫成形することとなり、設備が大掛りとなってその設備のために多大のコストがかかってしまう問題がある。
【0010】
一方ゴム弾性体210を単体で加硫成形しておいて、挿通孔216内面を後接着でスタビライザバー200に接着することも提案されている。例えば下記特許文献3,特許文献4にこの点が開示されている。
【0011】
ところで、ゴム弾性体210を一旦単体で加硫成形しておいて、これを後接着でスタビライザバー200に接着する場合、ゴム弾性体210における接着面、即ち挿通孔216内面をスタビライザバー200の外周面に十分に密着させた状態で接着を行うことが必要である。
そのために、スタビライザバー200に嵌め合わせたゴム弾性体210に対し、外周側から加圧力を加えてゴム弾性体210を縮径方向に圧縮変形させ、その状態で後接着処理を行うことが考えられる。
【0012】
図14はそのための1手段を示している。
ここではスタビライザバー200の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを塗布しておいて、そこにゴム弾性体210を嵌め合せ、その後加圧治具224にてゴム弾性体210を外周側から軸直角方向内方に加圧してゴム弾性体210を圧縮変形させ、その状態でこれを加熱炉内に所定時間挿入保持しておくことで、接着剤Sにてゴム弾性体210とスタビライザバー200との後接着処理を行う。
尚加圧治具224の代りに上記ブラケット214を用いることもできる。
【0013】
ところで、図14(III)に示しているようにスタビライザバー200に嵌め合わせたゴム弾性体210に対して、その外周側から軸直角方向に加圧力を加えて、これを同方向に圧縮変形させたとき、ゴム弾性体210は特に内周側の部分、即ち挿通孔216周りの部分が、スタビライザバー200に対する挿通孔216内面の軸方向の滑りを伴って軸方向に大きく変形する。
【0014】
その結果としてゴム弾性体210の軸方向両端部且つ内周部に大きなくびれKが生ずるとともに、スタビライザバー200に塗布してある接着剤Sがゴムの変形に伴って軸方向に流され、接着力不足或いは接着の不均等を生じる恐れがある。
而してこのような接着力不足或いは接着の不均等が生じると、このゴム弾性体210とスタビライザバー200との接着界面には大きな応力が働いてそこに応力集中を生じ易いことから、特に接着面の軸方向両端はくびれKの端となっていることから、同部に対しては特に大きな応力集中が生じ、そこを起点として使用中にゴム弾性体210とスタビライザバー200との間で接着剥離が発生及び軸方向に成長し、そのことが耐久寿命低下の原因となる恐れが生ずる。
加えて使用中にそのくびれKに泥水等が浸入し易いといった問題も生ずる。
【0015】
またこのようにゴム弾性体210とスタビライザバー200とを接着すると、そこでの滑りは防止できるが、一方でスタビライザバー200に加わる捩りの入力等によって、今度はゴム弾性体210の外周面とブラケット214との接触界面で滑りが生じ易くなり、そしてその滑りによって不快なスティックスリップ等の異音を発生する恐れも生ずる。
【0016】
そこで本発明者等は、ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に、挿通孔周りに回曲した軸直角方向の断面形状を有する剛性の中間板を埋設して、ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分けるとともに、ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとにゴム弾性体の加硫成形時にブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合わせ、且つそれぞれを軸直角方向に圧縮した状態で挿通孔内面をスタビライザバーの外周面に接着剤にて後接着して成るスタビライザブッシュを案出し、先の特許願(特願2004−316866:未公開)において提案している。
【0017】
図15及び図16はその具体例を示している。
これらの図において230はスタビライザバーで、232はスタビライザブッシュであり、剛性のブラケット234とゴム弾性体236及びその内部に埋設された剛性の中間板238を有している。
ゴム弾性体236は中心部に挿通孔240を有していて、そこにスタビライザバー230が挿通されている。
【0018】
この挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面とは、接着剤Sで接着固定してある。
ここで中間板238とゴム弾性体236とは、ゴム弾性体236の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
またゴム弾性体236とブラケット234もまた、ゴム弾性体236の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
【0019】
ゴム弾性体236は、中間板238によって内周側の内ゴム層236-1と外周側の外ゴム層236-2とに分かれている。
内ゴム層236-1は外ゴム層236-2に対して薄肉をなしており、また外ゴム層236-2は内ゴム層236-1に対して軸方向長が短くされている。
これらの結果として、ゴム弾性体236は内ゴム層236-1のばね定数が大きく、外ゴム層236-2のばね定数が小さいものとなっている。
【0020】
スタビライザブッシュ232は、挿通孔240を通る分割面Pで軸直角方向に2分割されており、それら分割体232A,232Aがスタビライザバー230を軸直角方向に挟み込み、且つ同方向にゴム弾性体236を圧縮変形させた状態で互いに組み付けられている。
各分割体232A,232Aは、スタビライザブッシュ232を丁度半分に分割した形態をなしており、それぞれにブラケット234の半分、ゴム弾性体236,中間板238のそれぞれの半分が備えられている。
【0021】
このスタビライザブッシュ232は次のようにしてスタビライザバー230に組み付ける。
即ち、図16に示しているように予めスタビライザバー230の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを塗布しておく。そして一対の分割体232A,232Aにてスタビライザバー230を軸直角方向に挟み込み、且つ各分割体232Aにおけるブラケット234を分割面P(図15参照)で重ね合わせる。
そしてブラケット234,234をクランプ等で締め付けてゴム弾性体236を圧縮状態に保持し、その状態で全体を加熱炉に入れて一定時間そこに保持し、ゴム弾性体236とスタビライザバー230との後接着、詳しくは挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との後接着処理を行う。
【0022】
このようにすれば、ゴム弾性体236を外周側から軸直角方向内方に圧縮したとき、内ゴム層236-1のばね定数が高く、外ゴム層236-2のばね定数が小さいため、内ゴム層236-1の軸方向の変形が小さく抑えられ、内ゴム層236-1の過大な変形に伴って接着剤Sが軸方向に流されるのが抑制されるとともに、内ゴム層236-1とスタビライザバー230との界面の軸方向両端に大きな括れが生ずることもない。
【0023】
その結果として接着界面、特にくびれの端となる接着界面の軸方向両端への応力集中が効果的に抑制され、同部における亀裂の生成及び接着界面に沿って亀裂が成長することによる接着剥れが生じるのを効果的に防止することができる。
またスタビライザブッシュ232使用時において、スタビライザバー230に捩りの入力が加わった際においても、主として外ゴム層236-2が大きく変形し、内ゴム層236-1の変形が抑えられるため、挿通孔240内面(接着界面)への応力集中も抑制され、その応力集中に基づく耐久性低下の問題も解決することができる。
【0024】
しかしながらスタビライザブッシュ232を上記の方法で製造し、スタビライザバー230に組み付けた場合、以下のような問題の生じることが判明した。
即ち挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との後接着のために、ゴム弾性体236に対して外周側から軸直角方向内方に圧縮力を加えると、外ゴム層236-2が軸方向に膨出変形を生じて圧縮力がそこで吸収されてしまい、その結果挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との間に十分な力が加わらず、十分な接着力が得られない問題の生じることが判明した。
【0025】
また後接着のためにゴム弾性体236をブラケット234により圧縮した状態で、これを加熱炉に入れて所定時間加圧加熱したとき、軸方向に膨出変形した外ゴム層236-2がその加圧力及び熱によりへたり(熱へたり)を生じてしまい、耐久性付与のために設定した軸直角方向の初期圧縮量(予圧縮量)が得られなくなって耐久性低下の原因となってしまう。
【0026】
更にその外ゴム層236-2の熱へたりによって、スタビライザブッシュ232を車両に組み付ける際のゴム弾性体236に対する締め代が少なくなり、その結果としてスタビライザブッシュにおける初期ばね特性に悪影響が及んでしまうといった問題の生じることが判明した。
【0027】
【特許文献1】特開2001−271860号公報
【特許文献2】特開2002−248923号公報
【特許文献3】特開平11−108096号公報
【特許文献4】特開2001−270315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は以上のような事情を背景とし、ゴム弾性体に剛性の中間板を設けて成るスタビライザブッシュを、スタビライザバーに対し後接着で組み付けて製造するに際して、ゴム弾性体をスタビライザバーに対して十分な接着力で接着することができ、また後接着のための加圧加熱によって外ゴム層が熱へたりを生ずるのを抑制でき、これによりその熱へたりによる耐久性低下の問題を解決でき、更には車両への組付時に設定した締め代を与え得て所望の初期ばね特性を付与することのできるスタビライザブッシュの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
而して請求項1のものは、(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって、前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記中間板の前記ゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加えた状態で、予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とする。
【0030】
請求項2のものは、請求項1において、前記中間板を前記ブラケットの前記外筒部よりも軸方向長を長くして、該中間板の軸方向両端部を該ブラケットから軸方向に突出させ、該ブラケットの軸方向外側において該中間板の両端部に前記加圧力を加えることを特徴とする。
【0031】
請求項3のものは、(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって、前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記ブラケットと前記中間板との間にスペーサ部材を介挿して、前記外ゴム層の弾性圧縮変形を阻止した状態で前記ブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0032】
以上のように請求項1は、スタビライザブッシュの各分割体をスタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合わせた状態で、中間板のゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め塗布してある接着剤にて挿通孔内面とスタビライザバーの外周面とを加硫後の後接着にて接着固定するもので、本発明によれば、後接着のための力が中間板に直接加えられて外ゴム層には加えられないため、外ゴム層が後接着処理に際して軸方向に膨出変形するのを防止できる。
従って外ゴム層が熱へたりを生じてしまう問題も防止でき、更にはその外ゴム層の熱へたりにより設定の初期ばね特性が得られない問題や、或いはまたスタビライザブッシュを車両に組み付ける際の締め代が、その熱へたりの影響で不足してしまうといった問題を解決することができる。
また外ゴム層の熱へたりによって、耐久性確保のために設定した初期圧縮量が得られなくなる問題も併せて解決することができる。
【0033】
また図15及び図16に示しているように後接着のために外ゴム層の外周側から軸直角方向内方に向けて圧縮力を加える場合には、外ゴム層の変形によって圧縮のための力が吸収されてしまう問題を生ずるが、この請求項1によれば中間板に対する加圧によって接着面に十分な加圧力を加えることができ、高い接着力を得ることができる。
【0034】
この場合において中間板をブラケットの外筒部よりも軸方向長を長くして、中間板の軸方向両端部をブラケットから軸方向に突出させ、ブラケットの軸方向外側において中間板の両端部に上記の加圧力を加えるようになすことができる(請求項2)。
このようにした場合、簡単且つ良好に中間板の両端部に対して加圧力を加えることが可能となる。
【0035】
次に請求項3は、ブラケットと中間部材との間にスペーサ部材を介挿し、外ゴム層の圧縮弾性変形を阻止した状態の下でブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、ゴム弾性体の挿通孔内面とスタビライザバーの外周面とを後接着で接着固定するもので、この請求項3においても、接着面に加圧力を加えて後接着する際に、外ゴム層の軸方向への膨出変形を防止でき、これにより請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0036】
この場合において外ゴム層の軸方向長をブラケットの外筒部より短いものとなし、外ゴム層の軸方向の端面と外筒部の内周面及び中間板の外周面との間に、軸方向内方に向かう凹所を形成して、その凹所にスペーサ部材を挿入するようになすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は金属棒から成るスタビライザバーで、全体として平面形状が概略コ字形状をなしており、車幅方向(車両の左右方向)にほぼ直線状に延びる中央部10aがスタビライザブッシュ12にて車体に固定され、また両端の腕部10bの各端部が車輪を支持するサスペンションアームに固定される。
【0038】
図2及び図3に上記スタビライザブッシュ12の具体的構成がスタビライザバー10への組付け状態で詳しく示してある。
これらの図に示しているように、この実施形態のスタビライザブッシュ12は金属製の剛性のブラケット14と、ゴム弾性体16と、ゴム弾性体16内部に埋設された金属製の剛性の中間板18とを有している。
【0039】
ゴム弾性体16は横断面形状が円筒形状をなしていて、その中心部に円形の挿通孔20を有しており、そこにスタビライザバー10が挿通されている。
ここで挿通孔20内面とスタビライザバー10外周面とは接着剤Sにて接着固定してある。
この接着剤Sとしては塩化ゴム系接着剤を好適に用いることができる。
【0040】
尚、中間板18とゴム弾性体16とはゴム弾性体16の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
ブラケット14は、図2に示すようにゴム弾性体16を包み込む外筒部24と、これから図中左右方向に延び出す一対の固定部26、即ちゴム弾性体16に対して軸直角方向の両側に位置する固定部26とを有している。
各固定部26には貫通の固定孔30が設けられており、これら固定孔30において固定部26が車体に固定されるようになっている。
【0041】
外筒部24は、ゴム弾性体16の外周面に対応した円形状の凹部28を有しており、そこにゴム弾性体16が内嵌されている。
そしてゴム弾性体16は、図2及び図3に示す組付け状態において外周面から縮径方向に加圧力を受けて全体が縮径方向に圧縮変形させられている。
【0042】
尚、ゴム弾性体16とブラケット14とはゴム弾性体16の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
上記中間板18は挿通孔20回りに回曲した断面形状、具体的にはここでは挿通孔20を取り巻く断面円形状をなしており、ゴム弾性体16のスタビライザバー10に対する軸直角方向断面の中間部に埋設されている。
そしてこれによりゴム弾性体16が、図3に示しているように中間板18よりも内周側の内ゴム層16-1と外周側の外ゴム層16-2とに分かれている。
【0043】
内ゴム層16-1と外ゴム層16-2とは同一のゴム材料にて一体成形されており、また内ゴム層16-1は外ゴム層16-2に対して薄肉をなしている。そのように中間板18の埋設位置が挿通孔20に近い位置に選ばれている。
【0044】
図3に明らかに示しているように、外ゴム層16-2は軸方向長lが内ゴム層16-1の軸方向長に比べて短いものとされている。
これらの結果として、ゴム弾性体16は内ゴム層16-1のばね定数が大きく、外ゴム層16-2のばね定数が小さいものとされている。
また外ゴム層16-2の軸方向長lが短くされた結果、図3に示しているように外ゴム層16-2の軸方向端面とブラケット14における外筒部24の内周面、更に中間板18の外周面とによって、軸方向内方に向かう凹所28が形成されている。
ここで内ゴム層16-1のばね定数と外ゴム層16-2のばね定数との比率は約2対1以上である。
【0045】
尚、中間板18には図2に示しているように周方向の複数箇所に貫通の連結孔32が設けられていて、この連結孔32において内ゴム層16-1と外ゴム層16-2とが連結されている。
【0046】
本実施形態においては、図2,図4に示しているようにスタビライザブッシュ12が挿通孔20を通る分割面Pで軸直角方向に二分割されており、それら分割体12A,12Aが、スタビライザバー10を軸直角方向に挟み込み且つ同方向にゴム弾性体16を圧縮変形させた状態で互いに組付けられている。
【0047】
ここで各分割体12A,12Aはスタビライザブッシュ12を丁度半分に分割した形態をなしており、それぞれにブラケット14の半分詳しくは外筒部24,固定部26の半分が備えられている。
またゴム弾性体16,中間板18のそれぞれの半分が備えられている。
【0048】
図3に示しているように、本実施形態では中間板18の長さがブラケット14、詳しくは外筒部24の軸方向長よりも長く、軸方向の両端部が外筒部24から軸方向外側に突出している。
また内ゴム層16-1の軸方向長が外筒部24の軸方向長と同等長とされている。
即ちこの実施形態では内ゴム層16-1の軸方向長が図16に示す先願のものよりも長くされている。
【0049】
このように内ゴム層16-1の軸方向長を長くし得たのは、中間板18の軸方向長を長くして、両端部をブラケット14の外筒部24よりも軸方向に突出させたことによるものである。
その結果としてこの実施形態のスタビライザブッシュ12は、ゴム弾性体16における挿通孔20内面とスタビライザバー10の外周面との接着面積が大となり、また内ゴム層16-1の軸方向長も長くなることによって接着力及び耐久性が高められる。
【0050】
次にスタビライザブッシュ12の本実施形態の製造方法を図5〜図9に基づいて説明する。
先ず図5において、34はゴム弾性体16の挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に対して加圧するための加圧治具で、一対の締付部材36,38を有している。
これら締付部材36,38は厚肉の板状をなす本体部39,40と、それぞれから互いに接近する方向に突出する加圧部42,42を有している。
これら加圧部42には半円形状の切欠き44が設けられている。
これら一対の加圧部42,42は、それぞれの半円形状の切欠き44を中間板18の外周面に嵌め合わせ、中間板18を軸直角方向内方即ちスタビライザバー10の外周面に向けて加圧する働きをなす。
【0051】
一方の締付部材38からは締付ボルト46及び位置決ピン48が図中上向きに突出している。
また他の一方の締付部材36には、締付ボルト46を挿通させるU字状の切欠き50、及び位置決ピン48の先端部を挿入させる挿入孔52がそれぞれ設けられている。
【0052】
この実施形態では、先ず図5に示しているようにブラケット14,ゴム弾性体16,中間板18のそれぞれの半分を予め一体に加硫成形して各分割体12Aを得、そして図6に示しているようにスタビライザバー10の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを予め塗布しておく(接着剤Sはゴム弾性体16の側或いはスタビライザバー10と両方とに塗付しておいても良い)。
【0053】
そして図7に示しているように一対の分割体12A,12Aを、各分割体12A,12Aの挿通孔20内面でスタビライザバー10を軸直角方向に挟む状態に互いに組み合わせる。
その状態で図8に示しているように一対の締付部材36,38を、締付ボルト46とナット54とで軸直角方向に締め付ける。
【0054】
このとき、一対の締付部材36,38に設けられた加圧部42,42は、図8及び図9に示しているように内ゴム層16-1の圧縮弾性変形を伴って、中間板18の軸方向に突出した端部を軸直角方向の内方、即ちスタビライザバー10の外周面に向けて加圧した状態となる。
尚その際各分割体12A,12Aのブラケット14に対しては加圧力は加えられておらず、従ってゴム弾性体16における外ゴム層16-2に対しては軸直角方向の圧縮力は加えられていない。
【0055】
このようにして加圧治具34にて挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧した状態で、スタビライザバー10を含む全体を加熱炉に入れて一定時間そこに保持し、挿通孔20内面とスタビライザバー10との後接着処理を行う。
ここにおいてスタビライザブッシュ12がゴム弾性体16の挿通孔20内面でスタビライザバー10に後接着された状態となる。
【0056】
その後、加圧治具34における一対の締付部材36,38を分解し、そして図2に示している状態に各分割体12A,12Aを締め付けて、その状態でスタビライザブッシュ12をブラケット14の固定孔30において車体に固定し、スタビライザバー10をスタビライザブッシュ12を介して車体に弾性支持させた状態とする。
【0057】
以上のように本実施形態では、中間板18の軸方向両端部をブラケット14の外筒部24から突出させて、それら両端部に対し軸直角方向内方の加圧力を加え、これにより挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧した状態で後接着処理を行うようにしており、従ってこの実施形態によれば、後接着のために加えられた力によって、ばね定数の小さな外ゴム層16-2が軸方向に膨出変形するのを防止でき、従ってその膨出変形した外ゴム層16-2が加えられた熱と力によって熱へたりを生じてしまう問題を解決できる。
【0058】
更にはその外ゴム層16-2の熱へたりによって、設定された初期ばね特性が得られなかったり、またスタビライザブッシュ12を車両に組み付ける際の締め代がその熱へたりの影響で不足してしまい、そのことによって耐久性が低下してしまうといった問題を解決することができる。
また後接着のために加えた加圧力が、外ゴム層16-2の変形によって吸収されてしまうといったことが無く、加えた加圧力を確実に接着面に及ぼすことができ、これにより挿通孔内面とスタビライザブッシュ10の外周面との接着力を高めることができる。
【0059】
またこの実施形態では中間板18をブラケット14の軸方向両端から突出させた上で、これを軸直角方向に加圧するようにしているため、そのための加圧治具34の構成が簡単となり、また容易に中間板18を軸直角方向の内方に加圧することができる。
【0060】
図10及び図11は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態では、図10に示しているように一対の分割体12Aのそれぞれに且つ上記の凹所28のそれぞれに、図11に示す半円形状のスペーサ部材56を介挿し、そしてこれらスペーサ部材56にて外ゴム層16-2の圧縮弾性変形を阻止した状態で、ブラケット12Aに対し軸直角方向内方の加圧力を加え、挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧するようにしている。
そしてその状態で、全体を加熱炉に入れて所定時間保持し、挿通孔20内面とスタビライザバー10の外周面とを後接着する。
【0061】
この実施形態においても、後接着のために加えた加圧力が外ゴム層16-2の変形によって吸収されてしまうのを防止でき、挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に強く加圧し得て、良好な接着力を得ることができる。
更にまた、後接着処理に際して外ゴム層16-2が変形して熱へたりを生じてしまう問題も解決することができる。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の適用対象であるスタビライザブッシュをスタビライザバーへの組付状態で示した図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2に示すスタビライザブッシュを図2とは90°異なった方向で切断した状態で示す断面図である。
【図4】同スタビライザブッシュを各分割体に分離した状態で示す図である。
【図5】本実施形態の製造方法の要部工程の説明図である。
【図6】図5の工程を別の方向から示した説明図である。
【図7】図5及び図6に続く工程の説明図である。
【図8】図7に続く工程の説明図である。
【図9】図8に示す工程を別方向の断面で示した説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態の要部工程の説明図である。
【図11】図10におけるスペーサ部材を示す図である。
【図12】従来のスタビライザブッシュをその取付例とともに示す図である。
【図13】従来のスタビライザブッシュの構成を示した図である。
【図14】図13のスタビライザブッシュの製造方法の要部工程の説明図である。
【図15】本願の先願に係るスタビライザブッシュの一例を示した図である。
【図16】図15のスタビライザブッシュを図15とは90°異なった断面で示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10 スタビライザバー
12 スタビライザブッシュ
12A 分割体
14 ブラケット
16 ゴム弾性体
16-1 内ゴム層
16-2 外ゴム層
18 中間板
20 挿通孔
24 外筒部
56 スペーサ部材
P 分割面
S 接着剤
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のスタビライザバーを車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スタビライザバーは車体の傾きを減らすために取り付けられている捩り剛ばね(トーションバー)で、その両端を左右のサスペンションに取り付け、左右の車輪が上下に異なる動きをするときこれを抑制するように作用する。
例えばコーナを曲がるときサスペンションは遠心力によって外輪側が縮み、内輪側が伸びようとし、結果として車体が遠心力で外側に傾こうとする。
スタビライザバーはこのように左右の車輪が上下逆相で動くとき(ローリングするとき)捩れを発生させて、その捩れ剛性による抵抗によって左右の車輪の逆相の動きを抑制し、また捩れにより蓄えられた弾性復元力で逆相に動いた左右の車輪を速やかに元に戻すように働く。
【0003】
このようにスタビライザバーはロール角を抑える働きを有しており、これにより車両の走行安定性が高められる。
このスタビライザバーを車体に取り付けるに当っては、振動絶縁部材としてのスタビライザブッシュを車体とスタビライザバーとの間に介在させ、スタビライザバーを車体に弾性支持させるようにする。
【0004】
図12はスタビライザブッシュを用いたスタビライザバーの車体への弾性支持の例を示している(下記特許文献1に開示)。
同図において200は金属棒から成るスタビライザバーで、全体として平面形状が概略コ字形状をなしており、車幅方向(車両の左右方向)にほぼ直線状に延びる中央部200Aが一対のスタビライザブッシュ202にて車体204に固定され、また両端の腕部200Bの各端部が車輪206を支持するサスペンションアーム208に固定されている。
【0005】
スタビライザブッシュ202は、挿通孔を有するゴム弾性体210を有していて、その挿通孔にスタビライザバー200が挿通され、その状態で外筒部212を有するブラケット214により、ゴム弾性体210が外筒部212の内側の凹部220に内嵌した状態で車体204に固定されている。
【0006】
図13は従来用いられているスタビライザブッシュの例を示したもので、図示のように従来においてはゴム弾性体210がブラケット214とは別に単体で加硫成形され、その後にゴム弾性体210に対して挿通孔216に達する切割り218が入れられて、その切割り218を通じてゴム弾性体210がスタビライザバー200に嵌め合され、即ちスタビライザバー200が挿通孔216を挿通した状態とされ、その後にブラケット214によりゴム弾性体210が車体204に固定される構成とされていた。
【0007】
ここでブラケット214は、外筒部212の内側にゴム弾性体210を内嵌させる凹部220を有し、また両端部に板状の固定部222を有していて、それら固定部222において車体204に固定される。
【0008】
ところでこのスタビライザブッシュ202においては、スタビライザバー200に加わる捩りの入力等によって挿通孔216内面がスタビライザバー200に対して滑りを生じ、その滑りによってスティックスリップ音等の異音が発生する問題を有していた。
【0009】
その対策として、下記特許文献2にはゴム弾性体210を加硫成形する際に、これをスタビライザバー200に一体に加硫接着する点が提案されている。
しかしながらこの場合、大形のスタビライザバー200を直接ゴム弾性体210の成形金型にセットしてゴム弾性体210を加硫成形することとなり、設備が大掛りとなってその設備のために多大のコストがかかってしまう問題がある。
【0010】
一方ゴム弾性体210を単体で加硫成形しておいて、挿通孔216内面を後接着でスタビライザバー200に接着することも提案されている。例えば下記特許文献3,特許文献4にこの点が開示されている。
【0011】
ところで、ゴム弾性体210を一旦単体で加硫成形しておいて、これを後接着でスタビライザバー200に接着する場合、ゴム弾性体210における接着面、即ち挿通孔216内面をスタビライザバー200の外周面に十分に密着させた状態で接着を行うことが必要である。
そのために、スタビライザバー200に嵌め合わせたゴム弾性体210に対し、外周側から加圧力を加えてゴム弾性体210を縮径方向に圧縮変形させ、その状態で後接着処理を行うことが考えられる。
【0012】
図14はそのための1手段を示している。
ここではスタビライザバー200の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを塗布しておいて、そこにゴム弾性体210を嵌め合せ、その後加圧治具224にてゴム弾性体210を外周側から軸直角方向内方に加圧してゴム弾性体210を圧縮変形させ、その状態でこれを加熱炉内に所定時間挿入保持しておくことで、接着剤Sにてゴム弾性体210とスタビライザバー200との後接着処理を行う。
尚加圧治具224の代りに上記ブラケット214を用いることもできる。
【0013】
ところで、図14(III)に示しているようにスタビライザバー200に嵌め合わせたゴム弾性体210に対して、その外周側から軸直角方向に加圧力を加えて、これを同方向に圧縮変形させたとき、ゴム弾性体210は特に内周側の部分、即ち挿通孔216周りの部分が、スタビライザバー200に対する挿通孔216内面の軸方向の滑りを伴って軸方向に大きく変形する。
【0014】
その結果としてゴム弾性体210の軸方向両端部且つ内周部に大きなくびれKが生ずるとともに、スタビライザバー200に塗布してある接着剤Sがゴムの変形に伴って軸方向に流され、接着力不足或いは接着の不均等を生じる恐れがある。
而してこのような接着力不足或いは接着の不均等が生じると、このゴム弾性体210とスタビライザバー200との接着界面には大きな応力が働いてそこに応力集中を生じ易いことから、特に接着面の軸方向両端はくびれKの端となっていることから、同部に対しては特に大きな応力集中が生じ、そこを起点として使用中にゴム弾性体210とスタビライザバー200との間で接着剥離が発生及び軸方向に成長し、そのことが耐久寿命低下の原因となる恐れが生ずる。
加えて使用中にそのくびれKに泥水等が浸入し易いといった問題も生ずる。
【0015】
またこのようにゴム弾性体210とスタビライザバー200とを接着すると、そこでの滑りは防止できるが、一方でスタビライザバー200に加わる捩りの入力等によって、今度はゴム弾性体210の外周面とブラケット214との接触界面で滑りが生じ易くなり、そしてその滑りによって不快なスティックスリップ等の異音を発生する恐れも生ずる。
【0016】
そこで本発明者等は、ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に、挿通孔周りに回曲した軸直角方向の断面形状を有する剛性の中間板を埋設して、ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分けるとともに、ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとにゴム弾性体の加硫成形時にブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合わせ、且つそれぞれを軸直角方向に圧縮した状態で挿通孔内面をスタビライザバーの外周面に接着剤にて後接着して成るスタビライザブッシュを案出し、先の特許願(特願2004−316866:未公開)において提案している。
【0017】
図15及び図16はその具体例を示している。
これらの図において230はスタビライザバーで、232はスタビライザブッシュであり、剛性のブラケット234とゴム弾性体236及びその内部に埋設された剛性の中間板238を有している。
ゴム弾性体236は中心部に挿通孔240を有していて、そこにスタビライザバー230が挿通されている。
【0018】
この挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面とは、接着剤Sで接着固定してある。
ここで中間板238とゴム弾性体236とは、ゴム弾性体236の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
またゴム弾性体236とブラケット234もまた、ゴム弾性体236の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
【0019】
ゴム弾性体236は、中間板238によって内周側の内ゴム層236-1と外周側の外ゴム層236-2とに分かれている。
内ゴム層236-1は外ゴム層236-2に対して薄肉をなしており、また外ゴム層236-2は内ゴム層236-1に対して軸方向長が短くされている。
これらの結果として、ゴム弾性体236は内ゴム層236-1のばね定数が大きく、外ゴム層236-2のばね定数が小さいものとなっている。
【0020】
スタビライザブッシュ232は、挿通孔240を通る分割面Pで軸直角方向に2分割されており、それら分割体232A,232Aがスタビライザバー230を軸直角方向に挟み込み、且つ同方向にゴム弾性体236を圧縮変形させた状態で互いに組み付けられている。
各分割体232A,232Aは、スタビライザブッシュ232を丁度半分に分割した形態をなしており、それぞれにブラケット234の半分、ゴム弾性体236,中間板238のそれぞれの半分が備えられている。
【0021】
このスタビライザブッシュ232は次のようにしてスタビライザバー230に組み付ける。
即ち、図16に示しているように予めスタビライザバー230の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを塗布しておく。そして一対の分割体232A,232Aにてスタビライザバー230を軸直角方向に挟み込み、且つ各分割体232Aにおけるブラケット234を分割面P(図15参照)で重ね合わせる。
そしてブラケット234,234をクランプ等で締め付けてゴム弾性体236を圧縮状態に保持し、その状態で全体を加熱炉に入れて一定時間そこに保持し、ゴム弾性体236とスタビライザバー230との後接着、詳しくは挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との後接着処理を行う。
【0022】
このようにすれば、ゴム弾性体236を外周側から軸直角方向内方に圧縮したとき、内ゴム層236-1のばね定数が高く、外ゴム層236-2のばね定数が小さいため、内ゴム層236-1の軸方向の変形が小さく抑えられ、内ゴム層236-1の過大な変形に伴って接着剤Sが軸方向に流されるのが抑制されるとともに、内ゴム層236-1とスタビライザバー230との界面の軸方向両端に大きな括れが生ずることもない。
【0023】
その結果として接着界面、特にくびれの端となる接着界面の軸方向両端への応力集中が効果的に抑制され、同部における亀裂の生成及び接着界面に沿って亀裂が成長することによる接着剥れが生じるのを効果的に防止することができる。
またスタビライザブッシュ232使用時において、スタビライザバー230に捩りの入力が加わった際においても、主として外ゴム層236-2が大きく変形し、内ゴム層236-1の変形が抑えられるため、挿通孔240内面(接着界面)への応力集中も抑制され、その応力集中に基づく耐久性低下の問題も解決することができる。
【0024】
しかしながらスタビライザブッシュ232を上記の方法で製造し、スタビライザバー230に組み付けた場合、以下のような問題の生じることが判明した。
即ち挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との後接着のために、ゴム弾性体236に対して外周側から軸直角方向内方に圧縮力を加えると、外ゴム層236-2が軸方向に膨出変形を生じて圧縮力がそこで吸収されてしまい、その結果挿通孔240内面とスタビライザバー230外周面との間に十分な力が加わらず、十分な接着力が得られない問題の生じることが判明した。
【0025】
また後接着のためにゴム弾性体236をブラケット234により圧縮した状態で、これを加熱炉に入れて所定時間加圧加熱したとき、軸方向に膨出変形した外ゴム層236-2がその加圧力及び熱によりへたり(熱へたり)を生じてしまい、耐久性付与のために設定した軸直角方向の初期圧縮量(予圧縮量)が得られなくなって耐久性低下の原因となってしまう。
【0026】
更にその外ゴム層236-2の熱へたりによって、スタビライザブッシュ232を車両に組み付ける際のゴム弾性体236に対する締め代が少なくなり、その結果としてスタビライザブッシュにおける初期ばね特性に悪影響が及んでしまうといった問題の生じることが判明した。
【0027】
【特許文献1】特開2001−271860号公報
【特許文献2】特開2002−248923号公報
【特許文献3】特開平11−108096号公報
【特許文献4】特開2001−270315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は以上のような事情を背景とし、ゴム弾性体に剛性の中間板を設けて成るスタビライザブッシュを、スタビライザバーに対し後接着で組み付けて製造するに際して、ゴム弾性体をスタビライザバーに対して十分な接着力で接着することができ、また後接着のための加圧加熱によって外ゴム層が熱へたりを生ずるのを抑制でき、これによりその熱へたりによる耐久性低下の問題を解決でき、更には車両への組付時に設定した締め代を与え得て所望の初期ばね特性を付与することのできるスタビライザブッシュの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
而して請求項1のものは、(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって、前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記中間板の前記ゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加えた状態で、予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とする。
【0030】
請求項2のものは、請求項1において、前記中間板を前記ブラケットの前記外筒部よりも軸方向長を長くして、該中間板の軸方向両端部を該ブラケットから軸方向に突出させ、該ブラケットの軸方向外側において該中間板の両端部に前記加圧力を加えることを特徴とする。
【0031】
請求項3のものは、(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって、前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記ブラケットと前記中間板との間にスペーサ部材を介挿して、前記外ゴム層の弾性圧縮変形を阻止した状態で前記ブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0032】
以上のように請求項1は、スタビライザブッシュの各分割体をスタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合わせた状態で、中間板のゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め塗布してある接着剤にて挿通孔内面とスタビライザバーの外周面とを加硫後の後接着にて接着固定するもので、本発明によれば、後接着のための力が中間板に直接加えられて外ゴム層には加えられないため、外ゴム層が後接着処理に際して軸方向に膨出変形するのを防止できる。
従って外ゴム層が熱へたりを生じてしまう問題も防止でき、更にはその外ゴム層の熱へたりにより設定の初期ばね特性が得られない問題や、或いはまたスタビライザブッシュを車両に組み付ける際の締め代が、その熱へたりの影響で不足してしまうといった問題を解決することができる。
また外ゴム層の熱へたりによって、耐久性確保のために設定した初期圧縮量が得られなくなる問題も併せて解決することができる。
【0033】
また図15及び図16に示しているように後接着のために外ゴム層の外周側から軸直角方向内方に向けて圧縮力を加える場合には、外ゴム層の変形によって圧縮のための力が吸収されてしまう問題を生ずるが、この請求項1によれば中間板に対する加圧によって接着面に十分な加圧力を加えることができ、高い接着力を得ることができる。
【0034】
この場合において中間板をブラケットの外筒部よりも軸方向長を長くして、中間板の軸方向両端部をブラケットから軸方向に突出させ、ブラケットの軸方向外側において中間板の両端部に上記の加圧力を加えるようになすことができる(請求項2)。
このようにした場合、簡単且つ良好に中間板の両端部に対して加圧力を加えることが可能となる。
【0035】
次に請求項3は、ブラケットと中間部材との間にスペーサ部材を介挿し、外ゴム層の圧縮弾性変形を阻止した状態の下でブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、ゴム弾性体の挿通孔内面とスタビライザバーの外周面とを後接着で接着固定するもので、この請求項3においても、接着面に加圧力を加えて後接着する際に、外ゴム層の軸方向への膨出変形を防止でき、これにより請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0036】
この場合において外ゴム層の軸方向長をブラケットの外筒部より短いものとなし、外ゴム層の軸方向の端面と外筒部の内周面及び中間板の外周面との間に、軸方向内方に向かう凹所を形成して、その凹所にスペーサ部材を挿入するようになすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は金属棒から成るスタビライザバーで、全体として平面形状が概略コ字形状をなしており、車幅方向(車両の左右方向)にほぼ直線状に延びる中央部10aがスタビライザブッシュ12にて車体に固定され、また両端の腕部10bの各端部が車輪を支持するサスペンションアームに固定される。
【0038】
図2及び図3に上記スタビライザブッシュ12の具体的構成がスタビライザバー10への組付け状態で詳しく示してある。
これらの図に示しているように、この実施形態のスタビライザブッシュ12は金属製の剛性のブラケット14と、ゴム弾性体16と、ゴム弾性体16内部に埋設された金属製の剛性の中間板18とを有している。
【0039】
ゴム弾性体16は横断面形状が円筒形状をなしていて、その中心部に円形の挿通孔20を有しており、そこにスタビライザバー10が挿通されている。
ここで挿通孔20内面とスタビライザバー10外周面とは接着剤Sにて接着固定してある。
この接着剤Sとしては塩化ゴム系接着剤を好適に用いることができる。
【0040】
尚、中間板18とゴム弾性体16とはゴム弾性体16の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
ブラケット14は、図2に示すようにゴム弾性体16を包み込む外筒部24と、これから図中左右方向に延び出す一対の固定部26、即ちゴム弾性体16に対して軸直角方向の両側に位置する固定部26とを有している。
各固定部26には貫通の固定孔30が設けられており、これら固定孔30において固定部26が車体に固定されるようになっている。
【0041】
外筒部24は、ゴム弾性体16の外周面に対応した円形状の凹部28を有しており、そこにゴム弾性体16が内嵌されている。
そしてゴム弾性体16は、図2及び図3に示す組付け状態において外周面から縮径方向に加圧力を受けて全体が縮径方向に圧縮変形させられている。
【0042】
尚、ゴム弾性体16とブラケット14とはゴム弾性体16の加硫成形の際に一体に加硫接着されている。
上記中間板18は挿通孔20回りに回曲した断面形状、具体的にはここでは挿通孔20を取り巻く断面円形状をなしており、ゴム弾性体16のスタビライザバー10に対する軸直角方向断面の中間部に埋設されている。
そしてこれによりゴム弾性体16が、図3に示しているように中間板18よりも内周側の内ゴム層16-1と外周側の外ゴム層16-2とに分かれている。
【0043】
内ゴム層16-1と外ゴム層16-2とは同一のゴム材料にて一体成形されており、また内ゴム層16-1は外ゴム層16-2に対して薄肉をなしている。そのように中間板18の埋設位置が挿通孔20に近い位置に選ばれている。
【0044】
図3に明らかに示しているように、外ゴム層16-2は軸方向長lが内ゴム層16-1の軸方向長に比べて短いものとされている。
これらの結果として、ゴム弾性体16は内ゴム層16-1のばね定数が大きく、外ゴム層16-2のばね定数が小さいものとされている。
また外ゴム層16-2の軸方向長lが短くされた結果、図3に示しているように外ゴム層16-2の軸方向端面とブラケット14における外筒部24の内周面、更に中間板18の外周面とによって、軸方向内方に向かう凹所28が形成されている。
ここで内ゴム層16-1のばね定数と外ゴム層16-2のばね定数との比率は約2対1以上である。
【0045】
尚、中間板18には図2に示しているように周方向の複数箇所に貫通の連結孔32が設けられていて、この連結孔32において内ゴム層16-1と外ゴム層16-2とが連結されている。
【0046】
本実施形態においては、図2,図4に示しているようにスタビライザブッシュ12が挿通孔20を通る分割面Pで軸直角方向に二分割されており、それら分割体12A,12Aが、スタビライザバー10を軸直角方向に挟み込み且つ同方向にゴム弾性体16を圧縮変形させた状態で互いに組付けられている。
【0047】
ここで各分割体12A,12Aはスタビライザブッシュ12を丁度半分に分割した形態をなしており、それぞれにブラケット14の半分詳しくは外筒部24,固定部26の半分が備えられている。
またゴム弾性体16,中間板18のそれぞれの半分が備えられている。
【0048】
図3に示しているように、本実施形態では中間板18の長さがブラケット14、詳しくは外筒部24の軸方向長よりも長く、軸方向の両端部が外筒部24から軸方向外側に突出している。
また内ゴム層16-1の軸方向長が外筒部24の軸方向長と同等長とされている。
即ちこの実施形態では内ゴム層16-1の軸方向長が図16に示す先願のものよりも長くされている。
【0049】
このように内ゴム層16-1の軸方向長を長くし得たのは、中間板18の軸方向長を長くして、両端部をブラケット14の外筒部24よりも軸方向に突出させたことによるものである。
その結果としてこの実施形態のスタビライザブッシュ12は、ゴム弾性体16における挿通孔20内面とスタビライザバー10の外周面との接着面積が大となり、また内ゴム層16-1の軸方向長も長くなることによって接着力及び耐久性が高められる。
【0050】
次にスタビライザブッシュ12の本実施形態の製造方法を図5〜図9に基づいて説明する。
先ず図5において、34はゴム弾性体16の挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に対して加圧するための加圧治具で、一対の締付部材36,38を有している。
これら締付部材36,38は厚肉の板状をなす本体部39,40と、それぞれから互いに接近する方向に突出する加圧部42,42を有している。
これら加圧部42には半円形状の切欠き44が設けられている。
これら一対の加圧部42,42は、それぞれの半円形状の切欠き44を中間板18の外周面に嵌め合わせ、中間板18を軸直角方向内方即ちスタビライザバー10の外周面に向けて加圧する働きをなす。
【0051】
一方の締付部材38からは締付ボルト46及び位置決ピン48が図中上向きに突出している。
また他の一方の締付部材36には、締付ボルト46を挿通させるU字状の切欠き50、及び位置決ピン48の先端部を挿入させる挿入孔52がそれぞれ設けられている。
【0052】
この実施形態では、先ず図5に示しているようにブラケット14,ゴム弾性体16,中間板18のそれぞれの半分を予め一体に加硫成形して各分割体12Aを得、そして図6に示しているようにスタビライザバー10の外周面に所定軸長に亘って接着剤Sを予め塗布しておく(接着剤Sはゴム弾性体16の側或いはスタビライザバー10と両方とに塗付しておいても良い)。
【0053】
そして図7に示しているように一対の分割体12A,12Aを、各分割体12A,12Aの挿通孔20内面でスタビライザバー10を軸直角方向に挟む状態に互いに組み合わせる。
その状態で図8に示しているように一対の締付部材36,38を、締付ボルト46とナット54とで軸直角方向に締め付ける。
【0054】
このとき、一対の締付部材36,38に設けられた加圧部42,42は、図8及び図9に示しているように内ゴム層16-1の圧縮弾性変形を伴って、中間板18の軸方向に突出した端部を軸直角方向の内方、即ちスタビライザバー10の外周面に向けて加圧した状態となる。
尚その際各分割体12A,12Aのブラケット14に対しては加圧力は加えられておらず、従ってゴム弾性体16における外ゴム層16-2に対しては軸直角方向の圧縮力は加えられていない。
【0055】
このようにして加圧治具34にて挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧した状態で、スタビライザバー10を含む全体を加熱炉に入れて一定時間そこに保持し、挿通孔20内面とスタビライザバー10との後接着処理を行う。
ここにおいてスタビライザブッシュ12がゴム弾性体16の挿通孔20内面でスタビライザバー10に後接着された状態となる。
【0056】
その後、加圧治具34における一対の締付部材36,38を分解し、そして図2に示している状態に各分割体12A,12Aを締め付けて、その状態でスタビライザブッシュ12をブラケット14の固定孔30において車体に固定し、スタビライザバー10をスタビライザブッシュ12を介して車体に弾性支持させた状態とする。
【0057】
以上のように本実施形態では、中間板18の軸方向両端部をブラケット14の外筒部24から突出させて、それら両端部に対し軸直角方向内方の加圧力を加え、これにより挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧した状態で後接着処理を行うようにしており、従ってこの実施形態によれば、後接着のために加えられた力によって、ばね定数の小さな外ゴム層16-2が軸方向に膨出変形するのを防止でき、従ってその膨出変形した外ゴム層16-2が加えられた熱と力によって熱へたりを生じてしまう問題を解決できる。
【0058】
更にはその外ゴム層16-2の熱へたりによって、設定された初期ばね特性が得られなかったり、またスタビライザブッシュ12を車両に組み付ける際の締め代がその熱へたりの影響で不足してしまい、そのことによって耐久性が低下してしまうといった問題を解決することができる。
また後接着のために加えた加圧力が、外ゴム層16-2の変形によって吸収されてしまうといったことが無く、加えた加圧力を確実に接着面に及ぼすことができ、これにより挿通孔内面とスタビライザブッシュ10の外周面との接着力を高めることができる。
【0059】
またこの実施形態では中間板18をブラケット14の軸方向両端から突出させた上で、これを軸直角方向に加圧するようにしているため、そのための加圧治具34の構成が簡単となり、また容易に中間板18を軸直角方向の内方に加圧することができる。
【0060】
図10及び図11は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態では、図10に示しているように一対の分割体12Aのそれぞれに且つ上記の凹所28のそれぞれに、図11に示す半円形状のスペーサ部材56を介挿し、そしてこれらスペーサ部材56にて外ゴム層16-2の圧縮弾性変形を阻止した状態で、ブラケット12Aに対し軸直角方向内方の加圧力を加え、挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に加圧するようにしている。
そしてその状態で、全体を加熱炉に入れて所定時間保持し、挿通孔20内面とスタビライザバー10の外周面とを後接着する。
【0061】
この実施形態においても、後接着のために加えた加圧力が外ゴム層16-2の変形によって吸収されてしまうのを防止でき、挿通孔20内面をスタビライザバー10の外周面に強く加圧し得て、良好な接着力を得ることができる。
更にまた、後接着処理に際して外ゴム層16-2が変形して熱へたりを生じてしまう問題も解決することができる。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の適用対象であるスタビライザブッシュをスタビライザバーへの組付状態で示した図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2に示すスタビライザブッシュを図2とは90°異なった方向で切断した状態で示す断面図である。
【図4】同スタビライザブッシュを各分割体に分離した状態で示す図である。
【図5】本実施形態の製造方法の要部工程の説明図である。
【図6】図5の工程を別の方向から示した説明図である。
【図7】図5及び図6に続く工程の説明図である。
【図8】図7に続く工程の説明図である。
【図9】図8に示す工程を別方向の断面で示した説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態の要部工程の説明図である。
【図11】図10におけるスペーサ部材を示す図である。
【図12】従来のスタビライザブッシュをその取付例とともに示す図である。
【図13】従来のスタビライザブッシュの構成を示した図である。
【図14】図13のスタビライザブッシュの製造方法の要部工程の説明図である。
【図15】本願の先願に係るスタビライザブッシュの一例を示した図である。
【図16】図15のスタビライザブッシュを図15とは90°異なった断面で示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10 スタビライザバー
12 スタビライザブッシュ
12A 分割体
14 ブラケット
16 ゴム弾性体
16-1 内ゴム層
16-2 外ゴム層
18 中間板
20 挿通孔
24 外筒部
56 スペーサ部材
P 分割面
S 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって
前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記中間板の前記ゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加えた状態で、予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記中間板を前記ブラケットの前記外筒部よりも軸方向長を長くして、該中間板の軸方向両端部を該ブラケットから軸方向に突出させ、該ブラケットの軸方向外側において該中間板の両端部に前記加圧力を加えることを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【請求項3】
(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって
前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記ブラケットと前記中間板との間にスペーサ部材を介挿して、前記外ゴム層の弾性圧縮変形を阻止した状態で前記ブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【請求項1】
(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって
前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記中間板の前記ゴム弾性体から突出した軸方向両端部に対して軸直角方向内方の加圧力を加えた状態で、予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記中間板を前記ブラケットの前記外筒部よりも軸方向長を長くして、該中間板の軸方向両端部を該ブラケットから軸方向に突出させ、該ブラケットの軸方向外側において該中間板の両端部に前記加圧力を加えることを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【請求項3】
(a)挿通孔を有する筒状のゴム弾性体と、(b)外筒部を備えた剛性のブラケットと、(c)軸直角方向の断面形状が前記挿通孔周り回曲した形状をなし、前記ゴム弾性体の軸直角方向断面の中間部に埋設されて該ゴム弾性体を内周側の内ゴム層と、外周側の該内ゴム層よりもばね定数の小さな外ゴム層とに分ける剛性の中間板と、を有し、前記挿通孔にスタビライザバーを挿通させた状態で該ゴム弾性体を前記ブラケットにて車体に固定し、該スタビライザバーを該車体に弾性支持させるスタビライザブッシュの製造方法であって
前記ゴム弾性体,ブラケット及び中間板を前記挿通孔を通る分割面で軸直角方向に分割して、各分割体ごとに前記ゴム弾性体の加硫成形時に前記ブラケット及び中間板を一体に加硫接着し、それら一体加硫品から成る各分割体を、前記スタビライザバーを軸直角方向に挟み込む状態に組み合せ、且つ前記ブラケットと前記中間板との間にスペーサ部材を介挿して、前記外ゴム層の弾性圧縮変形を阻止した状態で前記ブラケットに軸直角方向内方の加圧力を加え、その状態で予め該スタビライザバーの外周面と前記挿通孔内面との一方又は両方に塗布してある接着剤にて、該挿通孔内面を該スタビライザバーの外周面に加硫後の後接着にて接着固定することを特徴とするスタビライザブッシュの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−264435(P2006−264435A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83212(P2005−83212)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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