説明

ステンシルマスク用ブランク、ステンシルマスク及びそれらの製造方法

【課題】反りや薄膜の剥離が生ずることがなく、良好なパターン位置精度を有するステンシルマスクを得ることの可能なステンシルマスク用マスクブランク、ステンシルマスク、及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】支持基板と、該支持基板により支持されたシリコン薄膜とを含む2層構造を有するステンシルマスク用マスクブランクであって、該シリコン薄膜の応力が0MPa以上100MPa以下に調整されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造に用いるマスクに係り、特に、荷電粒子線露光又はイオン注入に用いられるステンシルマスク用のマスクブランク、ステンシルマスク及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化に伴い、その製造技術として電子線リソグラフィー、イオンビームリソグラフィー等の研究開発が盛んにおこなわれており、このようなリソグラフィー技術の中でも、半導体の微細化に対応する方法として、電子線を用いたセルプロジェクション露光法やブロック露光法と呼ばれる方法、更に高スループット化が可能なEPL(Electron Projection Lithography)法、LEEPL(Low Energy E−beam Proximity Projection Lithography)法と呼ばれる電子線投影露光法が開発されている。EPLやLEEPLに使用されるステンシルマスクとしては、厚さ2μm以下の自立シリコン薄膜(メンブレン)に転写貫通パターンを形成したものが使用されている。
【0003】
これらのリソグラフィーに使用されるステンシルマスク用の基板としては、微細加工のし易さの点から、図5に示すようなSOI(Silicon On Insulator)基板11が用いられている。SOI基板11は、シリコン基板12、酸化シリコン薄膜13及びシリコン薄膜14からなる積層構造を有する。
【0004】
シリコン薄膜14は自立メンブレンとなる部分であり、単結晶シリコン基板などを研磨して所定の膜厚にしたものであり、これにパターンを形成することにより転写パターンが形成されている。この自立メンブレンを支えてマスクの平面性を維持するために、支持基板であるシリコン基板12が必要である。支持基板12としては、加工性や入手容易性の点から、単結晶シリコン基板が用いられている。中間層としての酸化シリコン薄膜13は、エッチングにより支持基板12の加工又はシリコン薄膜14の微細加工を行うために必要とされる。即ち、酸化シリコン薄膜13は、支持基板12又はシリコン薄膜14をエッチングして開口部又は転写パターンを加工する際のエッチングストッパーとして機能する。これは、酸化シリコンが単結晶シリコンとの間でエッチング選択比が比較的高く、また、それ故酸化シリコン薄膜自体の膜厚を薄くできるからである。
【0005】
しかし、一般的なSOI基板11では、ステンシルマスクの製造工程において単結晶シリコン薄膜14に形成される転写パターンに反りを生じたり、またパターンによっては応力集中により亀裂が入ったりするという問題がある。
【0006】
このようなSOI基板11において、単結晶シリコン薄膜14は、若干の引っ張り応力(0MPa以上20MPa以下が望ましい)を有するように、すなわち自立メンブレンが弛み無く張られるように、シリコンより原子半径の小さいリンやホウ素などをドープするなどの応力調整を行う方法や、エッチングストッパー層である酸化シリコン薄膜13を他の材質に換えて応力を低く調整する方法などにより対処してきた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−338449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、単結晶シリコン薄膜14にリンやホウ素をドープしたとしても、中間層である酸化シリコン薄膜13が高い応力を有していることに変わりは無く、また酸化シリコン薄膜13を他の材料に換えて応力を低く調整したとしても、上層は下層の応力の影響も受けるため、上層の単結晶シリコン薄膜14の応力も調整する必要があり、応力調整が難しくなるほか、マスクブランク内に異なる材料が存在することで、熱応力による反りや部分剥離の発生原因となり、特に前者はパターニング後の位置精度に影響してくる。
【0008】
また、酸化シリコン層13が導電性を持たないため、作製したステンシルマスクを用いて露光するとマスクが帯電し、荷電粒子線が偏向したり、帯電の程度によっては試料基板交換時にメンブレンが破壊されるなどの問題も生じる。更には、イオン注入マスクとして使用するなど高エネルギーを有する荷電粒子線を照射する場合には、マスクの温度上昇を避ける必要性から、熱伝導率の低い酸化シリコンが存在することは好ましくない。
【0009】
また、シリコン基板のみを用いて、エッチングを途中で停止してシリコン薄膜を形成する技術も開発されたが、エッチング速度の面内分布により、場所によってはエッチングを途中で停止できずに基板を貫通してしまうこともあり、このことは基板が大型化されるに従って無視できなくなってきている。
【0010】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、反りや薄膜の剥離が生ずることがなく、良好なパターン位置精度を有するステンシルマスクを得ることの可能なステンシルマスク用マスクブランク、ステンシルマスク、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、支持基板と、該支持基板により支持されたシリコン薄膜とを含む2層構造を有するステンシルマスク用マスクブランクであって、該シリコン薄膜の応力が0MPa以上100MPa以下に調整されていることを特徴とするマスクブランクを提供する。
【0012】
このようなマスクブランクによると、シリコン薄膜の応力が所定の値に調整されているため、シリコン薄膜が弛むことがなく、また、シリコン薄膜に形成される転写パターンに反りが生じたり、亀裂が入ったりする現象が抑制される。更に、2層構造というシンプルな構造を有するため、シリコン薄膜のみの応力を調整するという容易な手法で、上記効果を得ることが可能である。更にまた、シリコン薄膜を用いることで、パターニングやその後の洗浄などに関して、SOIで培われてきた技術をそのまま適用することが出来るという利点もある。
【0013】
本発明の第1の態様に係るマスクブランクにおいて、支持基板は、導電性を有するものとすることが出来る。このように、導電性を有する支持基板を用いることで、荷電粒子線を照射した際に支持基板側に堆積した電荷を除去することが可能になる。
【0014】
また、シリコン薄膜は、導電性を有するものとすることが出来る。このように、シリコン薄膜が導電性を有することで、荷電粒子線を照射した際にシリコン薄膜側に堆積した電荷を除去することが可能になる。
【0015】
更に、支持基板として、シリコンウェハーを用いることが出来る。このように、支持基板にシリコンウェハーを用いることで、支持基板とシリコン薄膜の熱膨張係数の差の下限を0にすることが可能になり、熱応力の影響による位置精度のずれを低く抑えることができる。また、支持基板をエッチングする際にシリコン薄膜をエッチングする場合と同様のガス及びエッチング設備を使用することが可能になるため、設備投資に係るコストを低く抑えることが出来る。更に、このようなマスクブランクから得たステンシルマスクをイオン注入マスクとして用いた場合でも、熱を逃がしやすいため、熱膨張による微細パターンの変形や位置ずれが生じにくいという利点がある。
【0016】
本発明の第2の態様は、支持基板と、該支持基板により支持されたシリコン薄膜とを含むステンシルマスク用マスクブランクの製造方法であって、前記支持基板上にエッチングストッパー層を形成する工程と、前記支持基板裏面をパターニングして開口部を形成する工程と、前記開口部が形成された前記支持基板裏面に開口部支持層を形成する工程と、前記エッチングストッパー層を除去する工程と、前記支持基板表面にシリコン薄膜を形成する工程と、前記開口部支持層を除去する工程とを具備することを特徴とするマスクブランクの製造方法を提供する。
【0017】
このようなマスクブランクの製造方法によると、エッチングストッパー層は途中の工程で除去されて、最終のマスクブランクには含まれていないため、2層構造というシンプルな構造のマスクブランクを製造することが可能になる。
【0018】
本発明の第2の態様に係るマスクブランクの製造方法において、エッチングストッパー層が、酸化インジウム、ITO、クロム、窒化クロム、銅、アルミニウム、及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含むものとすることが出来る。このような材質のエッチングストッパー層を用いることで、支持基板の材質にシリコンを用いた時に極めて高い選択比を確保できるとともに、エッチングストッパー層が殆どエッチングされないため、後にシリコン薄膜を形成した際に極めて良好な表面形態を有するシリコン薄膜を得ることが出来る。
【0019】
本発明の第3の態様は、上述したマスクブランクのシリコン薄膜に転写パターンを形成してなることを特徴とする荷電粒子線ステンシルマスクを提供する。
【0020】
このようなステンシルマスクは、シリコン薄膜の応力が所定の値に調整されたマスクブランク用いて形成されているため、基板に反りが生じることがなく、転写パターンを形成する際の位置精度が良好である。
【0021】
本発明の第4の態様は、上述のマスクブランクの製造方法における各工程の後に、シリコン薄膜に転写パターンを形成する工程を更に具備することを特徴とする荷電粒子線ステンシルの製造方法を提供する。
【0022】
このようなステンシルの製造方法によると、シリコン薄膜の応力が所定の値に調整されたマスクブランク用いているため、反りの無い良好なステンシルマスクを製造することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のステンシルマスク用マスクブランクおよびステンシルマスクによると、シリコン薄膜の応力が所定の値に調整され、転写パターンと支持基板との間で応力の調整が行われているため、マスク全体の反りを防止することが可能になり、また微細パターンの変形や位置ずれを生ずることが抑制される。
【0024】
また、本発明のステンシルマスク用マスクブランク及びステンシルマスクの製造方法によると、エッチングストッパー層を残さないシンプルな構造の、またシンプルであるが故に応力調整を行い易いマスクブランク及びステンシルマスクを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図1及び2を参照して、本発明の一実施形態に係るマスクブランクの製造方法について説明する。
【0026】
まず、図1に示すような支持基板1を準備する。支持基板1に用いる材料としては、後に成膜されるシリコン薄膜7との間で付着力が高く、熱膨張係数が近似するか又は等しい材料であるのが好ましく、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどが挙げられる。導電性を高めるため、これらの材料にリンやホウ素などをドープして比抵抗を低くしたものであるのが好ましい。
【0027】
次いで、図1(b)に示すように、支持基板1上に、支持基板をエッチングする際のエッチングストッパー層2を形成する。エッチングストッパー層2に使用する材料としては、支持基板1に対してエッチング選択比が極めて高い材料であるのが望ましい。即ち、エッチング底面の表面形態は、後に成膜されるシリコン薄膜7の表面形態に影響するので、ほとんどエッチングされないものが好ましい。
【0028】
このような材料としては、酸化インジウム、ITO、クロム、窒化クロム、銅、アルミニウム、ニッケル、又はこれらの複合体を挙げることが出来る。
【0029】
なお、支持基板1をエッチングする方法としては、開口部間の支え(ストラット)幅を狭くできる点からドライエッチングが望ましいが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングの方法によってエッチングストッパー層2の材料は適宜変更される。
【0030】
エッチングストッパー層2の形成方法は、支持基板1上に均一に被覆することができ、付着力も高いスパッタ法が好ましいが、CVD法、めっき法、その他いずれの方法でも良く、制限されない。
【0031】
なお、エッチング後に開口部5に残ったエッチングストッパー層2が弛まないように、エッチングストッパー層2の応力を0MPa以上にしておくことが望ましい。
【0032】
応力を調整する方法としては、公知の技術が適用可能である。すなわち、基板との熱応力を利用する方法、成膜後に焼成する方法などである。支持基板1を加熱した状態で支持基板より熱膨張係数の大きな材料を用いてエッチングストッパー層2を成膜すると、冷却時に引っ張り応力を有する膜が得られる。必要な熱膨張係数の値を持つ材料や、あるいは加熱温度を適切に選択することによって応力を調整することが可能である。
【0033】
また、成膜後に焼成することで膜中の欠陥が低減し、体積収縮を生ずる。この現象を用いて膜を引っ張り応力にすることが可能であり、膜の材料、焼成温度やその時間などを適切に選択することによって応力の調整が可能である。また、成膜に特にスパッタ法を用いた場合は、成膜時の全圧を制御する方法も適用できる。これらを単独で用いてもよいし、複数の方法を組み合わせることも可能で、応力調整の方法は問わない。
【0034】
膜の応力の測定法としては、基板の変形量から求める方法のほか、自立メンブレンへ加える圧力と変形量から見積もる、いわゆるバルジ法などが知られている。
【0035】
次に、支持基板1の裏面(エッチングストッパー層2とは反対側の面)にエッチングマスク材料層3を形成し(図1(c))、このエッチングマスク材料層3をパターニングしてエッチングマスク4を形成し(図1(d))、更にこのエッチングマスク4をマスクとして用いて支持基板1の裏面をエッチングし、開口部5を形成する(図1(e))。
【0036】
ここで、支持基板1の裏面に開口部5を形成する方法としては、ドライエッチングに限らず、ウエットエッチングを用いてもよい。エッチングマスク材料層3としては、エッチング方法に応じて適宜選択され、フォトレジスト、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、金属膜、金属酸化膜、金属窒化膜等を用いることが出来る。
【0037】
支持基板1としてシリコンウェハーを用い、開口部5を形成するためのエッチング方法としてドライエッチングを用いる場合は、フッ素系ガス(CF4 、C4 8 、SF6 等)を主体とした混合ガスを、エッチングマスク材料層3のエッチング耐性を考慮したうえで使用することが出来る。
【0038】
ドライエッチング装置としては、公知のRIE、ECR、ICP、マイクロ波、ヘリコン波、NLD等の放電方式を用いたものが挙げられる。開口部5を形成するためにドライエッチングを行う場合、エッチングストッパー層2としてアルミニウムを用いると、シリコンに対して30700という高い選択比を期待することが出来る。同様に、エッチングストッパー層2としてクロムを用いた場合には、選択比は50000となる。
【0039】
続いて、エッチングマスク4を除去した後(図2(a))、支持基板1の裏面に開口部支持層6を形成する(図2(b))。開口部支持層6の材料に特に制限は無く、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、金属ホウ化物などのほか、ガラスや樹脂なども使用可能である。
【0040】
その後に開口部支持層6を残してエッチングストッパー層2を除去する工程を経るため、これを考慮して開口部支持層6の材料を選択することが望ましい。例を挙げると、エッチングストッパー層2としてアルミニウムを選択した場合、開口部支持層6にニッケルや鉄などを選択することで、エッチングストッパー層2をアルカリ溶液により、後に開口部支持層6を酸により除去することができる。また、エッチングストッパー層2にクロムを選択した場合には、開口部支持層6としてガラスを選択することで、エッチングストッパー層2を硫酸により、開口部支持層6をフッ酸により除去することができる。
【0041】
開口部支持層6の成膜方法としては、支持基板1の裏面の形状が平坦ではないため、めっき法や蒸着法が好ましいが、スパッタ法やCVD法などを使用することも出来る。その際は、基板ホルダーに傾斜をつけて回転させることが好ましい。その後に支持基板1の表面にシリコン薄膜7を形成する工程を経るため、開口部支持層6が弛まないように、開口部支持層6の応力を0MPa以上にしておく。応力の調整法は、前述のとおりである。
【0042】
次に、エッチングストッパー層2を除去する(図2(c))。除去の方法は問わないが、ウェットエッチングによるのが簡便でよい。
【0043】
その後、エッチングストッパー層2を除去した支持基板1の表面にシリコン薄膜7を形成する(図2(d))。シリコン薄膜7としては、アモルファスシリコン膜でも結晶性シリコン膜でも良いが、ステンシルマスクをイオン注入マスクとして用いる場合には、熱伝導率を高める必要があるため、結晶性シリコン膜を用いることが望ましい。
【0044】
シリコン薄膜7の成膜方法は、均一にコーティングすることができ、付着力も高いスパッタ法が好ましいが、PVD法に限らず、CVD法なども使用可能であり、成膜法にはこだわらない。成膜条件によっては、膜中に取り込まれた不純物などの影響や形状の影響により応力が働き、支持基板1が反る場合があるが、応力制御を行ってシリコン薄膜を形成することにより、支持基板1の反りを抑えることができる。応力制御は、具体的には、この時のシリコン薄膜の応力が0MPa以上100MPa以下になるように調整する。0MPa未満では、図4(a)に示すように、基板が反ったり、メンブレンが弛んだりする。一方、20MPaを超えると、図4(b)に示すように、基板が反ったり、メンブレンが割れたり、あるいはメンブレンに転写パターンを形成した時にそのパターンの形状によってはパターン位置がずれたりする。応力が100MPaを超えると、この影響が顕著になり、もはや荷電粒子線マスクとして使用に耐えなくなる。
【0045】
最後に、開口部支持層6を除去して、マスクブランクが完成する(図2(e))。
【0046】
以上のようなマスクブランクの製造方法によると、エッチングストッパー層2は途中の工程で除去されて、最終のマスクブランクには含まれていないため、2層構造というシンプルな構造のマスクブランクを製造することが出来る。また、以上の方法により得たマスクブランクは、シリコン薄膜の応力が0MPa以上100MPa以下に調整されているため、基板1に反りが生じたり、シリコン薄膜7が弛むという現象が生ずることがない。
【0047】
次に、以上のようにして製造されたマスクブランクから転写マスクを製造するプロセスについて、図3を参照して説明する。
【0048】
まず、シリコン薄膜7表面に、荷電粒子線レジスト8を形成し(図3(a))、これを通常のフォトリソグラフィーまたは荷電粒子線リソグラフィーによってパターニングして、シリコン薄膜7をパターニングするマスクとして用いる荷電粒子線レジストパターン9を形成する(図3(b))。
【0049】
次いで、このレジストパターン9をマスクとして用いて、ドライエッチングによりシリコン薄膜7をパターニングし、荷電ビーム透過孔転写パターン10を形成する(図3(c))。この場合のドライエッチングのエッチング条件等は特に制限されない。このエッチングに使用するガスとしては、例えば、CH、C、SFといったフッ素系ガスまたはそれらの混合ガス等が挙げられる。また、ドライエッチング装置としては、RIE、マグネトロンRIE、ECR、ICP、マイクロ波、ヘリコン波、NLD等の放電方式を用いたドライエッチング装置が挙げられる。
【0050】
最後に、荷電粒子線レジストパターン9を除去して、荷電ビーム透過孔パターン10を有するステンシルマスクが完成する(図3(d))。
【0051】
以上のようにして製造されたステンシルマスクは、シリコン薄膜7の応力が0MPa以上100MPa以下に調整されたマスクブランク用いて形成されているため、基板1に反りが生じることがなく、また形成された荷電ビーム透過孔パターンの位置精度が良好である。
【実施例】
【0052】
以下、図1〜3を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0053】
最初に、図1及び2に示すプロセスにより、荷電粒子線露光用マスク用ブランクを製造した。
【0054】
まず、支持基板1(図1(a))としてホウ素をドープした低比抵抗の単結晶シリコンウェハーを用い、この上にアルミニウム膜をスパッタリングにより成膜し、焼成して、エッチングストッパー層2を形成した(図1(b))。アルミニウム膜のスパッタリングは、直流マグネトロンスパッタ装置により、アルミニウムターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを用いて、投入電力300Wで行った。
【0055】
次いで、スピンコーターを用いて支持基板1の裏面にレジスト膜3を塗布し、焼成した(図1(c))。続いて、開口部5を作製するためのフォトマスクを用いてレジスト膜3にコンタクト露光し、アルカリ現像液により現像し、レジストパターン4を形成した(図1(d))。
【0056】
次に、レジストパターン4をマスクとして用いて、SF6 ガスを使用したドライエッチング装置によって支持基板1の裏面のエッチングを行い、支持基板1に開口部5を形成した(図1(e))。そして、酸素プラズマアッシング装置によりレジストパターン4を除去した(図2(a))。
【0057】
その後、支持基板1の裏面に、めっきのための導電層としてニッケル薄膜(図示せず)をスパッタ成膜した後、電解めっき法によってニッケルめっきを施すことで、開口部支持層6を形成し(図2(b))、続いて、水酸化カリウム水溶液によってエッチングストッパー層2を除去した(図2(c))。
【0058】
次に、低比抵抗のシリコンターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを用いて、投入電力300Wで直流マグネトロンスパッタ装置により、スパッタ法によって支持基板1の表面に低比抵抗のシリコン薄膜7を成膜し、焼成した(図2(d))。
【0059】
続いて、開口部支持層6を塩酸によって除去し、本実施例に係る荷電粒子線露光用マスク用ブランクが完成した(図2(e))。
【0060】
引き続き、図3に示すプロセスにより、以上のようにして製造されたマスクブランクから転写マスクを製造した。
【0061】
まず、シリコン薄膜7の表面にレジストをスピンコーターを用いて成膜し、焼成し、荷電粒子線レジスト膜8を形成した(図3(a))。次いで、電子線描画機にて荷電粒子線レジスト8上に描画を行い、専用のアルカリ現像液を用いて現像することで、荷電粒子線レジスト8に半導体回路パターンとなるレジストパターン9を形成した(図3(b))。
【0062】
次に、このレジストパターン9をマスクとして用いて、フロロカーボン系混合ガスを用いたドライエッチング装置によりシリコン薄膜7をエッチングして、荷電ビーム透過孔転写パターン10を形成した(図3(c))。
【0063】
最後に、残っている荷電粒子線レジストパターン9を有機溶剤により除去して、荷電粒子線露光用マスクが完成した(図3(d))。
【0064】
以上のようにして製造されたマスクは、転写パターンが形成された後においても、面内のパターン変形が抑制されており、また転写パターンの位置精度が良好なステンシルマスクであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のステンシルマスク用マスクブランク及びそれにより得られたステンシルマスクは、各種半導体装置の製造プロセスに広範に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係るマスクブランクの製造工程の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るマスクブランクの製造工程の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るマスクブランクを用いたステンシルマスクの製造工程の一例を示す断面図である。
【図4】応力調整を行わずに成膜を行った基板の反りの様子を示す模式図である。
【図5】一般的に用いられているSOI基板の状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1…支持基板、2…エッチングストッパー層、3…エッチングマスク材料層、4…エッチングマスク、5…開口部、6…開口部支持層、7…シリコン薄膜、8…荷電粒子線レジスト膜、9…荷電粒子線レジストパターン、10…荷電ビーム透過孔転写パターン、11…SOI基板、12…シリコン基板、13…酸化シリコン薄膜、14…シリコン薄膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、該支持基板により支持されたシリコン薄膜とを含む2層構造を有するステンシルマスク用マスクブランクであって、該シリコン薄膜の応力が0MPa以上100MPa以下に調整されていることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記支持基板は、導電性を有することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記シリコン薄膜は、導電性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記支持基板が、シリコンウェハーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
支持基板と、該支持基板により支持されたシリコン薄膜とを含むステンシルマスク用マスクブランクの製造方法であって、
前記支持基板上にエッチングストッパー層を形成する工程と、
前記支持基板裏面をパターニングして開口部を形成する工程と、
前記開口部が形成された前記支持基板裏面に開口部支持層を形成する工程と、
前記エッチングストッパー層を除去する工程と、
前記支持基板表面にシリコン薄膜を形成する工程と、
前記開口部支持層を除去する工程と
を具備することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
前記エッチングストッパー層が、酸化インジウム、ITO、クロム、窒化クロム、銅、アルミニウム、及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載のマスクブランクの前記シリコン薄膜に転写パターンを形成してなることを特徴とする荷電粒子線ステンシルマスク。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のマスクブランクの製造方法における各工程の後に、前記シリコン薄膜をパターニングして転写パターンを形成する工程を更に具備することを特徴とする荷電粒子線ステンシルマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−245225(P2006−245225A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57786(P2005−57786)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】