説明

ステージシステムおよび該ステージシステムを備えたリソグラフィ装置

【課題】 ステージの動的性能を向上させることである。
【解決手段】 リソグラフィ装置用のステージシステムは、ステージと、ステージに作用する過剰設定された数のアクチュエータと、ステージの位置依存パラメータを測定し、各センサ信号を供給する少なくとも2つのセンサとを含む。少なくとも2つのセンサは、同じ自由度で各位置依存パラメータを測定するように配置される。センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および位置依存パラメータに応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するように、コントローラが設けられる。別のコントローラには、センサによって測定された位置依存パラメータが供給される。この別のコントローラは、センサからの位置依存パラメータ間の差を求め、求めた差に応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、ステージシステム、該ステージシステムを含むリソグラフィ装置、およびステージ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、基板、通常は基板のターゲット部分に所望のパターンを与える機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。その場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上の(例えば、1つまたは複数のダイの一部を含む)ターゲット部分に転写することができる。パターンの転写は、典型的には基板に提供された放射感応性材料(レジスト)の層への結像によって行われる。通常、単一の基板は、連続的にパターニングされる隣接するターゲット部分のネットワークを含む。従来のリソグラフィ装置には、ターゲット部分に全パターンを一度に露光することによって各ターゲット部分を照射するいわゆるステッパと、放射ビームによって所与の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンし、それと同期してこの方向と平行または逆平行に基板をスキャンすることによって各ターゲット部分を照射するいわゆるスキャナとが含まれる。また、基板上にパターンをインプリントすることによってパターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置のスループット、例えば一定時間内にリソグラフィ装置によって処理されるウェーハの量に対する要求の高まりから、基板テーブルまたはマスクテーブルなどのステージの速度と加速度を高めることが求められている。さらに、リソグラフィ装置によって基板上に投影されるパターンの解像度および精度に対する要求も高まっており、これは、投影光学部品の縮小率を高めつつマスクのサイズを大きくする傾向につながっており、この大きなサイズのマスクは、マスク上に必要なレベルのディテールを提供することが可能である。一方では、高いスキャン速度に関する要求により、ステージの重量をできるだけ低く保つことが必要であるが、他方では、高い剛性を得るようにステージを構築して、ステージの共振モードの発生または励起を回避する必要があり、そのため結果的に重厚な構造となる傾向がある。さらには、高い内部剛性が達成できるように高い剛性を有する材料が使用されるが、残念なことに相対減衰量は小さく、内部振動が整定するまでに長い時間を要する。
【0004】
[0004] さらに詳細にいくつかの設計基準を調べると、サーボ外乱除去およびトラッキング性能(整定挙動)は、フィードバックコントローラにより閉ループ制御システムのバンド幅を増大することによって改善することができる。常に存在するステージの内部構造共振は、閉ループバンド幅を増大できる範囲に厳しい制約を課す。この理由で、ステージの設計中には、制御エンジニアのかなりの努力が、これらの共振周波数ができるだけ高くなるように、機構を最適化して高いバンド幅を実現することに置かれる。通常、プロセスの仕様に基づいて、必要最小限のバンド幅が選択される。次いで、機械の設計が最適化されて、このバンド幅より上ですべての共振が起こるようにする。一般に、このことはアクチュエータ位置とセンサ位置との間の強固な結合を意味しており、結果的に比較的重量のある構造をもたらすことがある。強固な構造を設計するために、高ヤング率の材料が使用されるが、この材料は本質的に減衰性が悪い。ステージ製造時の変動性により、コントローラは、プラント動特性の変化に対して堅牢でなければならない。一般に、ある特定のステージのすべての製造品目には同じコントローラ設計を使用することが望まれているが、このことが若干の保守性をも誘発し、これもまた性能を制限する。
【0005】
[0005] スループットの向上、言い換えるとより高い加速度および短い整定時間は、一般にステージ精度、したがってオーバレイに対して負の影響を有することがある。より高い加速度は、ステージ内部のより高い動的な振動(または変形)を引き起こすことがあるが、この振動は本質的に減衰性が悪く、おそらくは整定時間が短くなるにつれてステージ精度が悪化する結果となる。さらにまた、クロストークによるステージ自体の動きによって誘発されるステージおよび環境(すなわち「サイレントワールド(silent world)」に対する外乱が増大(例えばレンズ、液浸)することがあり、これもまた、結果的にステージ精度の悪化となり得る。
【0006】
[0006] スループットが増加するにつれて、振動および外乱がステージ精度、したがってオーバレイを制限するようになることがあるので、上記の制限および相反する要求を解消する、または少なくとも軽減することが望ましい。
【0007】
[0007] したがって、リソグラフィ装置のスループットに対する高い要求を考慮すると、相反する要求が生じ、このことは、達成できる性能に上限をもたらす結果となるように思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] ステージの動的性能を向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 本発明の一実施形態によれば、ステージと、ステージに作用し、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータと、ステージの位置依存パラメータを測定し、各センサ信号を供給する少なくとも2つのセンサであって、センサ自由度において各位置依存パラメータを測定するように配置された少なくとも2つのセンサと、センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および位置依存パラメータに応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するコントローラと、センサのうちの少なくとも2つによって測定された位置依存パラメータが供給され、センサのうちの少なくとも2つからの位置依存パラメータ間の差を求め、求めた差に応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給する別のコントローラとを含む、リソグラフィ装置用のステージシステムが提供される。
【0010】
[0010] 本発明の別の実施形態によれば、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面にパターンを与えてパターニングされた放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築された支持体と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターンニングされた放射ビームを基板の目標部分に投影するように構成された投影システムとを含み、支持体および基板テーブルのうちの少なくとも一方がステージシステムを含むリソグラフィ装置が提供される。このステージシステムは、ステージと、ステージに作用し、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータと、ステージの位置依存パラメータを測定し、各センサ信号を供給する少なくとも2つのセンサであって、センサ自由度において各位置依存パラメータを測定するように配置された少なくとも2つのセンサと、センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および位置依存パラメータに応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するコントローラと、センサのうちの少なくとも2つによって測定された位置依存パラメータが供給され、センサのうちの少なくとも2つからの位置依存パラメータ間の差を求め、求めた差に応じてアクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給する別のコントローラとを含む。
【0011】
[0011] 本発明の一実施形態によれば、ステージに作用し、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータを設けるステップと、各々が各センサ信号を供給する少なくとも2つのセンサによってステージの位置依存パラメータを測定するステップであって、少なくとも2つのセンサがセンサ自由度において各位置依存パラメータを測定する、測定するステップと、センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および位置依存パラメータに応じてコントローラ出力信号を決定するステップと、アクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するステップと、少なくとも2つのセンサからの測定された位置依存パラメータ間の差を求めるステップと、求めた差に応じて別のコントローラ出力信号を決定するステップと、アクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給するステップとを含む、ステージ制御方法が提供される。
【0012】
[0012] 次に、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例として本発明の実施形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[0017] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示している。本装置は、放射ビームB(例えばUV放射または他の任意の放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショニングデバイスPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTとを含む。また本装置は、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショニングデバイスPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTすなわち「基板支持体」も含む。本装置はさらに、放射ビームBに与えられたパターンを、パターニングデバイスMAによって基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSを含む。
【0014】
[0018] この照明システムは、放射を方向付ける、成形する、または制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気、もしくは他のタイプの光学コンポーネント、またはそれらの任意の組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0015】
[0019] 支持構造(例えばマスクテーブル)MTは、パターニングデバイスを支持する、すなわちパターニングデバイスの重量を支持する。この支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、およびその他の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境内に置かれているか否かなどに応じた様式でパターニングデバイスを保持する。支持構造(例えばマスクテーブル)MTは、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気、またはその他のクランプ技法を使用することができる。支持構造(例えばマスクテーブル)MTは、例えばフレームまたはテーブルとすることができ、必要に応じて固定することも可動にすることもできる。支持構造(例えばマスクテーブル)MTは、パターニングデバイスが、例えば投影システムに対して所望の位置にあることを保証することができる。本明細書における用語「レチクル」または「マスク」の使用は、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義と考えることができる。
【0016】
[0020] 本明細書で使用する用語「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分にパターンを作り出すように放射ビームの断面にパターンを与えるために使用することができる任意のデバイスを表すものと広く解釈すべきである。例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、放射ビームに与えられるパターンは、基板のターゲット部分での所望のパターンに正確には対応していない場合があることに留意すべきである。一般に、放射ビームに与えられるパターンは、ターゲット部分に作製される集積回路などのデバイス内の特定の機能層に対応している。
【0017】
[0021] パターニングデバイスは、透過型または反射型とすることができる。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレー、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいてよく知られており、マスクには、バイナリ、レベンソン型(Alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(Attenuated)位相シフトなどのマスクタイプ、ならびにさまざまなハイブリッドマスクタイプが含まれる。プログラマブルミラーアレーの一例は、小型ミラーのマトリックス配列を採用したものであり、各ミラーは、入射放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜させることができる。傾斜させたミラーが、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを与える。
【0018】
[0022] 本明細書で使用する用語「投影システム」は、使用される露光放射、または浸液の使用もしくは真空の使用など他の因子のために、適宜、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気、および静電気光学システム、またはそれらの任意の組合せを含めた任意のタイプの投影システムを包含するものと広く解釈すべきである。本明細書における用語「投影レンズ」の使用は、より一般的な用語「投影システム」と同義と考えることができる。
【0019】
[0023] 本明細書で示されるように、本装置は(例えば透過性マスクを使用する)透過型である。あるいは、本装置は、(例えば上記のタイプのプログラマブルミラーアレーを使用する、または反射性マスクを使用する)反射型であってもよい。
【0020】
[0024] このリソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブルすなわち「基板支持体」(および/または2つ以上のマスクテーブルすなわち「マスク支持体」)を有するタイプのものにすることができる。そのような「マルチステージ」の機械では、追加のテーブルまたは支持体を並行して使用することができ、あるいは、1つまたは複数のテーブルまたは支持体で準備ステップを行いながら、1つまたは複数の他のテーブルまたは支持体を露光用に使用することができる。
【0021】
[0025] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、比較的高い屈折率を有する液体、例えば水によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものにすることができる。浸液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えばマスクと投影システムとの間に与えることもできる。投影システムの開口数を高めるために、液浸技法を使用することができる。本明細書で使用する用語「液浸」は、基板などの構造物を液体中に浸漬しなければならないことを意味するのではなく、露光中に投影システムと基板との間に液体が存在していることを単に意味する。
【0022】
[0026] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOからの放射ビームを受ける。例えば放射源がエキシマレーザーであるとき、放射源とリソグラフィ装置とを別々の部分とすることができる。そのような場合、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているものとはみなされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILに送られる。その他の場合、例えば放射源が水銀ランプであるときには、放射源をリソグラフィ装置の一部分とすることができる。放射源SOとイルミネータILを、必要であればビームデリバリシステムBDと共に、放射システムと呼んでもよい。
【0023】
[0027] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面内での強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(一般に、各々σ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなどの種々の他のコンポーネントを備えることができる。イルミネータを使用して、放射ビームをその断面に所望の均一性と強度分布を有するように調整することができる。
【0024】
[0028] 放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を通った後に投影システムPSを通過し、この投影システムPSが、ビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる。第2のポジショニングデバイスPWおよび位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路内にさまざまなターゲット部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショニングデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示せず)を使用して、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を、例えばマスクライブラリから機械的に取り出した後で、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることができる。一般に、支持構造(例えばマスクテーブル)MTの移動は、第1のポジショニングデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWTすなわち「基板支持体」の移動は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。(スキャナとは対照的に)ステッパの場合には、支持構造(例えばマスクテーブル)MTを、ショートストロークアクチュエータのみに連結してもよく、または固定してもよい。パターニングデバイスMA(例えばマスク)および基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2、および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示した基板アライメントマークは専用のターゲット部分にあるが、基板アライメントマークはターゲット部分間の空間に配置することもできる(これらは、スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、複数のダイがマスクMA上に提供される場合には、マスクアライメントマークをダイの間に配置してもよい。
【0025】
[0029] 図示の装置は、以下のモードの少なくとも1つで使用することができる。
【0026】
[0030] 1.ステップモードでは、基板支持構造(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持体」および基板テーブルWTすなわち「基板支持体」を本質的に静止状態に保ったままで、放射ビームに与えられた全パターンが一度にターゲット部分Cに投影される(すなわち、単一の静止露光)。次いで、異なるターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTすなわち「基板支持体」がXおよび/またはY方向にシフトされる。ステップモードでは、露光フィールドの最大寸法が、単一の静的露光で結像されるターゲット部分Cの寸法を制限する。
【0027】
[0031] 2.スキャンモードでは、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分Cに投影されている間に、支持構造(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持体」と基板テーブルWTすなわち「基板支持体」とが同期してスキャンされる(すなわち、単一の動的露光)。マスクテーブルMTすなわち「マスク支持体」に対する基板テーブルWTすなわち「基板支持体」の速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)率および像反転特性によって決定することができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大寸法が、単一の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限し、スキャン運動の長さが、ターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
【0028】
[0032] 3.別のモードでは、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分Cに投影されている間、支持構造(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持体」は、プログラマブルパターニングデバイスを保持して本質的に静止状態に保たれ、基板テーブルWTすなわち「基板支持体」は移動またはスキャンされる。このモードでは、通常、パルス放射源が採用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTすなわち「基板支持体」の毎回の移動後に、またはスキャン中の連続する放射パルスの合間に必要に応じて更新される。この動作モードは、前述したタイプのプログラマブルミラーアレーなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0029】
[0033] 上述の使用モードの組合せおよび/または変形、あるいは全く異なる使用モードを採用することもできる。
【0030】
[0034] 図2は、パターニングデバイスを保持するための、支持体とも呼ばれる支持構造(例えばマスクテーブル)MTの非常に概略的な図を示している。図2では、平面図が示されている。言い換えると、図2の図平面は、焦点面すなわちパターンが設けられたパターニングデバイスの表面と一致する。図2では、スキャン方向はY方向により形成することができる。複数のアクチュエータが設けられる。本実施形態では、4つのアクチュエータが、支持構造(例えばマスクテーブル)に対してスキャン方向に力を作用させるように設けられており、これらのアクチュエータはY1a、Y1b、Y2a、Y2bによって示されている。また、2つのアクチュエータX1、X2も、支持体に対してX方向に力を作用させるように設けられている。さらに、4つのアクチュエータZ1、Z2、Z3、およびZ4が、支持体に対して図2の図平面と垂直な方向に力を作用させるように設けられている。図示の構成は、X方向およびY方向に関して対称形である。図2に示す実施形態では、動的挙動の向上を達成でき、例えばより高い共振周波数、位置依存性の少ない動的挙動を提供し、それにより高いバンド幅が達成される結果となる。4つのYアクチュエータ(Y1a、Y1b、Y2a、Y2b)により、Y方向、すなわちスキャン方向で高い加速度が達成でき、それにより高いスループットが可能になる。
【0031】
[0035] このような構成によって、下記の効果を達成できる。
【0032】
[0036] 1)スキャン方向およびクロススキャン方向に沿った対称性
一般に、ステージのモード形状(すなわち、ある固有振動数での運動)は、慣性の主軸の方向と一致する向きを有する。ステージの対称性が測定方向と一致する場合、ステージ位置センサはモードの方向で測定する。その場合、これらのセンサは、主要な方向に関連するモードを認識するだけである。ステージの対称軸が測定方向と平行でない場合、位置センサは、すべての組合せのモードを認識するので、ステージ動力学はずっと複雑になる。したがって、すべてのアクチュエータは、対称的なX、Y、Z位置に配置される。
【0033】
[0037] 2)パターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)が中心に置かれるので、モータはすべて外側に配置される
放射はパターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)を通過するので、パターニングデバイス位置にはアクチュエータまたはセンサがあり得ない。その場合、支持構造(またはステージ)のモータは、パターニングデバイスおよび支持構造の外側に配置される。
【0034】
[0038] 3)スキャン方向(=Y方向)の非常に大きな力
Y方向のスキャン力は非常に大きいので、大きいアクチュエータが望まれる。1つのYアクチュエータのみが使用される場合、ステージはX軸を中心に非対称となる。前後の2つのYアクチュエータは、大きな力と対称構造を可能にする。
【0035】
[0039] 4)2つのXアクチュエータ
重心にはパターニングデバイスはあるので、そこにはXモータは配置されない。2つのXモータを付けることは、支持構造の重心において「仮想Xモータ」および/または「仮想Rzモータ」を可能にする。Rz作動は、Xモータのみ、Yモータのみを使用する、またはすべてのXおよびYモータを使用してなされることができる点に留意されたい。
【0036】
[0040] 5)制限されたDC作動を解消
各Yモータは同じ作動信号を有することができ、その結果、それらは支持構造の重心にある1つの大きな「仮想Yモータ」の働きをする。
【0037】
[0041] 6)4つのZ-モータ
4つのZモータは、支持構造の重心CoGにおいて「仮想ZモータおよびRx/Ry」を可能にする。
【0038】
[0042] 図2はさらに、X方向で支持体の位置を測定するように各々構成された複数のセンサ、本例ではセンサS2、S2、S3、およびS4を示している。
【0039】
[0043] 上記のアクチュエータには、例えばリニアモータなどのモータ、圧電アクチュエータ、空圧式アクチュエータ、またはその他の任意のタイプのアクチュエータを含む任意のタイプのアクチュエータが含まれ得る。同様に、上記のセンサには、干渉計、エンコーダ、加速度センサ、速度センサ、ねじれセンサ、ひずみゲージ、容量位置センサ、誘導位置センサ、またはその他のタイプの位置センサ、速度センサ、加速度センサなどのような任意のタイプのセンサが含まれ得る。さらに、図2では支持体が示されるが、本明細書に記載されている実施形態は、基板テーブル、液体供給システム、マスクブレードなどのような他の任意のステージにも適用され得る。位置依存パラメータには、位置、速度、加速度、ジャークなどのような任意のタイプの位置依存パラメータが含まれ得る。したがって、位置依存パラメータには、位置、速度、加速度などのうちの1つまたは複数が含まれ得る。過剰設定された数のアクチュエータは、必ずというわけではないが、同じ自由度で位置パラメータを測定する少なくとも2つのセンサが測定する自由度と同じ自由度で作動させることが必要な場合がある。したがって、アクチュエータ自由度は、センサ自由度と等しくなることがある。アクチュエータ自由度およびセンサ自由度には各々、X方向、Y方向、またはZ方向の少なくとも1つ、および/またはX方向、Y方向、またはZ方向に対する回転が含まれ得る。
【0040】
[0044] 図3は、STによって概略的に示されたステージの位置依存パラメータの制御図を示しており、このステージには、図2に示した支持構造(例えばマスクテーブル)MTなどのマスクテーブル、基板テーブルWT、またはその他の任意のステージが含まれ得る。本例ではY方向の位置である位置依存パラメータが制御される。さらに、設定値rが制御ループに提供される。当然、位置依存パラメータには、速度、加速度、ジャーク、またはそれらの任意の組合せなどの他の任意の位置依存パラメータも含まれ得る。上記の設定値には、単一次元設定値または多次元設定値が含まれことがあり、多次元設定値の例は6自由度の設定値である。閉ループ制御ループは、コントローラCpos、ゲインスケジューリングマトリックスGS、ゲインバランシングマトリックスGB、ステージST、および測定MSによって形成される。マトリックスGSは、スキャン位置依存コントローラ力を重心の力へと変換することができ、GBマトリックスは、重心の力を物理的なモータ力へと平衡させることができる。コントローラCposには、設定値rと測定システムMSの出力信号との差を形成する誤差信号eが供給される。コントローラ出力信号COSは、ゲインスケジューリングマトリックスGSおよびゲインバランシングマトリックスGBを介してステージSTに供給される。干渉計、エンコーダなどのような測定システムMS、本例では干渉計が含まれる測定システムが、位置依存パラメータ、本例ではステージの位置を測定する際、コントローラCposに供給される誤差信号eは、設定値信号rと測定システムの出力信号との差によって形成され、したがって、測定システムMSが測定する位置を表している。測定システムは、6自由度でステージの位置を測定でき、このような位置は、図2においてyifmによって概略的に表されている。図3はさらに、ゲインスケジューリングマトリックスGSおよびゲインバランシングマトリックスGBを介してステージSTにフィードフォワード信号を供給するように構成されたフィードフォワードFFを示しており、このフィードフォワードは設定値信号rから決定される。この閉ループシステムのバンド幅(別のコントローラCdampはまだ考慮しない)は、実際にはステージの共振周波数によって制限され得る。制御ループのバンド幅は、実際の事例においてはこのような共振周波数よりも下に維持されるが、そうでない場合には、不安定性、オーバーシュート、または同様の影響が生じ、そのためにステージの整定時間が長くなり、それによってリソグラフィ装置の性能が悪化する。
【0041】
[0045] スループットが増加するにつれて、振動および外乱がステージ精度、したがってオーバレイを制限するようになるため、閉ループシステムのバンド幅を広げ、これらの振動(共振)を低減または減衰させることが望ましい。特に、振動の低減または減衰を行うと、いくつかの理由で有益となることがある。まず、一般に高周波であるこれらの振動は、コントローラによって抑制されない。というのは、感度が、高周波に対して1に等しいことがあるからである。次に、共振が減衰すると、共振の大きさおよびプラント動特性における変化が減少するので、より高いバンド幅を得ることができる。最後に、先進の制御技法(例えば、Hα最適化、反復学習制御ほか)を使用するバンド幅およびフィードフォワードの最適化は、ステージの共振モードにより、最高のオーバレイ性能を自動的には与えない。その理由は、パターニングデバイス位置を直接測定することができない(パターニングデバイスは支持構造上に配置され、アッベ測定誤差ができるだけ小さくなるようにして支持構造が測定される)ため、通常、制御位置(非コロケート制御)が露光位置と物理的に一致しないからである。
【0042】
[0046] さらに図3に示すように、ステージSTにゲインバランシングマトリックスGBを介して別のコントローラ出力信号FCOSを供給する別のコントローラCdampが設けられる。ステージに「コントローラ出力信号」または「別のコントローラ出力信号」を供給する、用語「コントローラ」または「別のコントローラ」は、ステージのアクチュエータに「コントローラ出力信号」または「別のコントローラ出力信号」を供給する「コントローラ」または「別のコントローラ」として解釈することができ、このアクチュエータは、各々の信号の制御下にあるかまたはそれらによって駆動されると、ステージ上に力を作用させる、または対応する作動によってステージの変位、位置、速度、その他を提供することができる。別のコントローラCdampには、少なくとも2つのセンサによって測定された位置依存パラメータが供給される。この少なくとも2つのセンサは、同じ自由度、すなわち同一方向でまたは同一回転軸に対して各々の位置依存パラメータを測定するように配置されている。図3では、少なくとも2つのセンサ出力信号はxdifで示されている。ステージの静止または定常状態では、別のコントローラ出力信号FCOSは、ステージに対して実質的な影響を有することができない。というのは、このような定常状態においては、付されるセンサのタイプに応じて、同じ自由度で位置を測定するセンサの出力信号間の差が周知の定数またはゼロであるからである。したがって、ステージSTが剛体であると考え得る限りは、Cposのコントローラおよび測定システムMSを介して提供されるフィードバックは、ステージの制御を可能にする。ステージの共振モードが励起される場合には、少なくとも2つのセンサが同じ自由度で測定することによって提供される位置依存パラメータ間の差は、前述の定数またはゼロ値からはずれ、コントローラが、それに応じて、ゲインバランシングマトリックスGBを介して別のコントローラ出力信号FCOSをステージに供給する。図2を参照して前述したように、過剰設定された数のアクチュエータを設けたので、励起された共振モードの抑制にアクチュエータが能動的に関与することができる。一例として、YアクチュエータY1、Y2が、おそらくは支持構造(例えばマスクテーブル)MT自体のフレームの共振と相まって、支持構造(例えばマスクテーブル)MTのフレームに対してX方向に共振する傾向がある場合には、Xアクチュエータの適切な作動は、このような共振モードを少なくとも部分的に抑制する、または能動的に減衰させることを支援できる。
【0043】
[0047] 文言「アクチュエータが、ある自由度において過剰設定されている」とは、ステージが剛体である場合に、厳密にその自由度での作動に必要なアクチュエータよりも多くのアクチュエータを設けることであると理解されたい。一例として、ステージを作動させてある方向への平行移動を可能にするのには、1つのアクチュエータ(または各々の側に1つのアクチュエータ)で十分である。この方向により多くのアクチュエータを作動させることにより、ステージの共振、ねじれモードなどの場合にもたらされる影響は、これらのアクチュエータを適切に駆動することによって相殺することができる。過度の作動は、「剛体」運動制御に必要な数よりも多くのアクチュエータ(場合によってはセンサ)を提供および/または駆動することとして規定することができ、したがって、過度に作動されるステージには、過剰設定された数のアクチュエータ、すなわち、ステージが「剛体」運動制御手法で作動される自由度数よりも多い数のアクチュエータを設けることができる。それにより、前述したようにステージの剛性に能動的に影響を与えることができる。実際に、センサxdifおよび別のコントローラCdampによって形成される制御ループがステージの共鳴様式を減衰させるのを支援する。というのは、同じ自由度で少なくとも2つのセンサを使用することにより、その特定の自由度の共振現象の発生を検出でき、それに応じて別のコントローラが、検出される共振現象を減衰させる、またはそれに影響を与えることを試みるためにステージのアクチュエータを駆動するからである。さらに、異なる位置で力をステージ上へ与えられるように、アクチュエータの数が過剰設定されるのが好ましく、それゆえ、ステージの特定の共振モードを少なくとも部分的に相殺する、あるパターンの力を与えることが可能となる。
【0044】
[0048] 過剰設定された数のアクチュエータは、ステージを対称形に保つ働きもできるので、動的挙動を改善しスループットを増加させるというさらなる利点と、ステージのより高い加速度を可能にすることによるさらなる利点を提供できる。
【0045】
[0049] さらに、ステージの重心CoGは、パラメータの位置が制御されることになっている基準すなわちステージの中心からずれることがある。図2に示すように、重心と、ステージの位置依存パラメータが制御されることになっている基準すなわちステージの中心との差により、現況技術によって生じるかもしれない不一致を低減するまたは排除するために、過剰設定された数のセンサおよびアクチュエータを付けることができる。
【0046】
[0050] ゲインバランシングマトリックスGBは、(おそらくは、さまざまな自由度のコントローラおよび別のコントローラの)重心のコントローラ出力信号と、ステージの物理的なアクチュエータ駆動信号とを関連させるように構成されたマトリックスと考えることができる。本例では、合計10個のアクチュエータが設けられている。これらのアクチュエータには、図3に示すように制御システムから、さらにおそらくは他の自由度の同様の制御ループからアクチュエータ駆動信号が供給される。したがって、図3の制御ループだけが提供される場合には、ゲインバランシングマトリックスGBは、2つのコントローラ出力信号、すなわちコントローラ出力信号および別のコントローラ出力信号と、10個のアクチュエータのアクチュエータ駆動信号との間に関連を形成することができる。図3に示すように、支持構造(例えばマスクテーブル)の位置測定が支持構造(例えばマスクテーブル)のさまざまな部分で行われるということを修正できるゲインスケジューリングマトリックスGSが提供される。一例としては、マスクテーブルY位置に応じて、重心CoGのX併進だけでなく、重心に対する回転Rzも測定され、この回転の影響はステージのY位置に依存する。したがって、ゲインスケジューリングマトリックスは、単一次元または多次元のコントローラ出力信号COS(おそらくは、フィードフォワードFFからのフィードフォワード出力信号と組み合わせて)を、重心CoGに関連した制御信号へと変換できる。そのため、ゲインスケジューリングは、位置依存制御力を分離する。スキャン中、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)上の情報は基板へ順次複写される。したがって、スキャン中の支持構造の制御箇所はさまざまである。このときのGSは、スキャンプロセスのすべての段階中に結果として6つの分離された軸が生じる位置依存力変換である。ゲインスケジューリングマトリックスおよびゲインバランシングマトリックスは、アクチュエータ駆動マトリックスの例を提供する。したがって、コントローラおよび別のコントローラは、一般に任意のアクチュエータ駆動マトリックスを介してアクチュエータを駆動できる。
【0047】
[0051] 同じ自由度で測定する少なくとも2つのセンサは、任意の適切な位置に配置することができる。これらのセンサのうちの少なくとも1つは、大きな振幅でステージの共振モードが生じる位置、例えば腹が生じる位置に配置することができる。というのは、この位置では、共振波の比較的大きな振幅が観察され、したがって当該センサの比較的高域の信号成分が提供されるからであり、この特定の信号成分は共振によって生じる。腹の位置に配置されたセンサのうちの1つに対して大きなセンサ出力信号差を提供できるように、もう1つのセンサは、ステージの共振モードにおいて共振波の静止点が生じる位置、例えば節が生じる位置に配置することができる。アクチュエータは、ステージのさまざまな部分で作動することができる。別のコントローラが複数のアクチュエータを駆動できるので、アクチュエータが、ステージの共振モードにおいて腹が形成されることがあるステージの一部分に作用するように配置される場合、共振モードの効果的な減衰を達成できる。アクチュエータは、他の場所、例えば前述のステージの基準モードにおいて節が生じる位置に配置されてもよく、その結果、アクチュエータによってさまざまな力が節および腹に加えられ、それにより能動的に共振モードを減衰させることを試みることができるということが理解されるであろう。
【0048】
[0052] 位置センサの機能は、できるだけわずかなアッビ(収差)誤差でパターニングデバイス位置を測定することであり得る。さらに、最低3つの水平位置センサおよび3つの垂直位置センサが望まれる。リソグラフィ装置では、2つのYエンコーダおよび1つのXエンコーダが設けられ、支持構造(例えばチャック)上の罫線およびレンズ上のエンコーダヘッドで、X、Y、およびRz方向のチャック−レンズトップ位置を測定する。Z方向には4つの容量センサが設けられて、チャック−レンズのZ、Rx、およびRy位置を測定する。
【0049】
[0053] 位置センサは冗長であってもよい。それにより、共振に関する追加の位置情報を測定することができる。共振を測定するために印加される追加の速度信号または加速度信号があってもなくてもよい。
【0050】
[0054] 一実施形態では、例えば回転位置の正確な測定ができるように、センサは互いにある距離を置いて(例えば、ステージの外側縁部付近に)配置される。さらに、アクチュエータがリニアモータなどのモータを含む一実施形態では、アクチュエータの(電)磁場がセンサの正確な動作を妨げることがあるので、そのようなアクチュエータからある間隔だけセンサを離しておくことが好ましい。このことは、特にYアクチュエータに当てはまる。というのは、スキャン方向の高い加速度には、そのようなアクチュエータによって大きな力を発生させる必要があり、それが高い磁場を生じさせ得るからである。
【0051】
[0055] 別のコントローラは、減算などの任意の適切な演算により、同じ自由度の2つのセンサの2つのセンサ信号間の差を求めることができる。また、この別のコントローラは、共振モードが生じない場合には、信号が実質的にゼロの値を有するように、得られた差から一定値を減算してもよい。
【0052】
[0056] 本明細書に記載した実施形態は、ステージの共振モードを減衰させるのを支援するだけでなく、その代わりにまたはそれに加えて、ステージの剛性の強化、例えばステージのねじれまたはねじれモードを低減することにも適用することができる。
【0053】
[0057] 図3に示す別のコントローラにより、コントローラ、本例では位置コントローラCposによって形成される制御ループのバンド幅は大きくなることがあり、そのため、より速く、より正確なステージの位置決めをもたらすことができ、または、剛性を低くステージ自体を構築できるのでステージの質量を減らすことができ、別のコントローラおよびそれに対応する過剰設定された数のアクチュエータの駆動は、ステージの効果的な剛性を強化するのを支援する。さらなる効果として、ステージの質量の減少によってステージのより高い加速度が可能になり、それにより、ステージのより速い動き、より高い加速度、および/またはより短い整定時間を促進するさらなる要因を提供することができる。
【0054】
[0058] 図3では単一の別のコントローラを有する単一の制御ループを示したが、ステージの位置決めは、各々が特定の自由度のための複数の制御ループによって実行することもでき、適切な別のコントローラがこれらの制御ループのうちの2つ以上の制御ループ用に設けられ、それにより、1つよりも多い自由度でステージを励振させる共振モードの減衰が可能になる、または異なる自由度のさまざまな共振モードが減衰される。
【0055】
[0059] 図4は、本発明の一実施形態によるステージ制御部方法の流れ図を示している。ブロック400で、(少なくとも1つの自由度において)過剰設定された数のアクチュエータがステージに作用するように設けられる。ブロック410で、ステージの位置依存パラメータが、各々が各センサ信号を供給し、同じ自由度で各位置依存パラメータを測定する少なくとも2つのセンサによって測定される。ブロック420で、コントローラ出力信号が、各センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および位置依存パラメータに応じて決定される。ブロック430で、コントローラ出力信号が、各アクチュエータのうちの少なくとも1つに供給される。ブロック440で、少なくとも2つのセンサからの測定された位置依存パラメータ間の差が求められる。ブロック450で、別のコントローラ出力信号が、求めた差に応じて決定される。次いでブロック460で、別のコントローラ出力信号が、各アクチュエータのうちの少なくとも1つに供給される。本発明の一実施形態によるステージおよびリソグラフィ装置に関する上記と同様の利点、実施形態、およびさらなる特徴も同様に、本発明の一実施形態による方法に適用可能であってもよい。
【0056】
[0060] 本方法の一実施形態は、以下のように説明できる。
【0057】
[0061] 1)実際の6自由度(DoF)パターニングデバイス位置を測定し、コントローラ入力としての位置を提供する。
【0058】
[0062] 2)実際の6DoF位置をスキャン中の位置設定値と比較し、コントローラ誤差を算出する。
【0059】
[0063] 3)コントローラ誤差を最小にする6DoF修正力を算出する。比例・積分・微分コントローラおよびローパスノッチフィルタコントローラを使用する。設定値フィードフォワード力を印加して高速整定を可能にする。
【0060】
[0064] 4)6DoFコントローラ力を重心において分離した6DoF力に変換して、スキャン中の位置依存性を補正する。
【0061】
[0065] 5)「別のコントローラ」で、N−DoF共振位置、速度、または加速度信号を測定し、利用可能なN−DoFセンサを使用するか、または追加のセンサを加える(Nは1、2、3、4、5、または6である)。
【0062】
[0066] 6)「別のコントローラ」でN−DoF力を算出し、比例・積分・微分コントローラおよびローパスノッチフィルタコントローラを使用して共振を減衰させる。
【0063】
[0067] 7)「別のコントローラ」の出力を通常のコントローラから重心に加える。
【0064】
[0068] 8)コントローラ出力:重心におけるすべての論理6DoF力を、物理的モータ用の増幅器を駆動する6つ以上のアクチュエータ制御信号へと変換する。
【0065】
[0069] 図3に戻ると、別のコントローラには、PID(比例・積分・微分)コントローラなどの任意の適切なタイプのコントロ−ラ、または積分コントローラ、比例コントロ−ラなどのような他の任意のタイプのコントローラが含まれ得る。別のコントローラは、アナログエレクトロニクスまたは他の制御回路などの適切なハードウェアにおいて実施できるが、コントローラは、すでにあるリソグラフィ装置の処理デバイスなどの適切な処理デバイスにロードすることが可能なソフトウェア命令として実施することができる。同様に、図3に示したゲインバランシングマトリックスGBとゲインスケジューリングマトリックスGSは、適切なアナログエレクトロニクスなどの適切なハードウェアによって、またはリソグラフィ装置の処理デバイスによって実行される適切な命令を使用することによって形成することができる。
【0066】
[0070] この文脈では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に対して特に言及しているものの、本明細書で説明したリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁区メモリ用の誘導および検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド他の製造など、他の用途を有していてもよいことを理解されたい。そのような代替用途の文脈では、本明細書における用語「ウェーハ」または「ダイ」の使用を、各々より一般的な用語「基板」または「ターゲット部分」と同義と考えることができることが当業者には理解されよう。本明細書で言及した基板は、露光前または露光後に、例えばトラック(典型的には、レジストの層を基板に与え、露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理することができる。適用可能な場合には、本明細書における開示を、そのような基板処理ツール、およびその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、例えば多層ICを作製するために、基板を複数回加工することもでき、そのため、本明細書で使用する用語「基板」は、複数の加工された層をすでに含む基板を表すこともある。
【0067】
[0071] 上では、光リソグラフィの文脈で本発明の実施形態の使用に対して特に言及してきたが、本発明は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィで使用することもでき、文脈が許す限り、光リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィが、基板上に作成されるパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されるレジストの層にプレスすることができ、その後、レジストは、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せを加えることによって硬化される。レジストが硬化した後で、パターニングデバイスがレジストから外されると、レジストにパターンが残る。
【0068】
[0072] 本明細書で使用する用語「放射」および「ビーム」は、(例えば、約365、248、193、157、または126nmの波長あるいは約365、248、193、157、または126nmを有する)紫外(UV)放射および(例えば、5〜20nmの範囲内の波長を有する)極端紫外(EUV)放射、ならびにイオンビームまたは電子ビームなどの粒子ビームを含むすべてのタイプの電磁放射を包含する。
【0069】
[0073] 用語「レンズ」は、文脈が許す限り、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電気光学コンポーネントを含むさまざまなタイプの光学コンポーネントの任意の1つまたはそれらの組合せを表すことがある。
【0070】
[0074] 本発明の特定の実施形態を上述してきたが、説明した以外の形で本発明を実施することもできることを理解されたい。例えば、本発明は、上で開示した方法を記述するマシン可読命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、あるいは内部にそのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気または光ディスク)の形態とすることができる。
【0071】
[0075] 上述の説明は、例示を意図するものであり、限定するものではない。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、説明した本発明に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】[0013]本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】[0014]本発明の一実施形態によるステージの略図である。
【図3】[0015]本発明の一実施形態によるステージ制御の制御図である。
【図4】[0016]本発明の一実施形態による方法の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
前記ステージに作用するように構成され、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータと、
各々が前記ステージの位置依存パラメータを測定し、各センサ信号を供給するように構成された少なくとも2つのセンサであって、センサ自由度において前記各位置依存パラメータを測定するように配置された少なくとも2つのセンサと、
前記センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および前記位置依存パラメータに応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するように構成されたコントローラと、
前記センサのうちの前記少なくとも2つによって測定された前記位置依存パラメータが供給され、前記センサのうちの前記少なくとも2つからの前記位置依存パラメータ間の差を求め、求めた前記差に応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給するように構成された別のコントローラと
を備える、リソグラフィ装置用のステージシステム。
【請求項2】
前記コントローラおよび前記別のコントローラが、アクチュエータ駆動マトリックスを介して前記複数のアクチュエータを駆動するように構成される、請求項1に記載のステージシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つのセンサのうちの1つが、前記ステージが共振モードのときに励起共振波が生じる位置に配置される、請求項1に記載のステージシステム。
【請求項4】
前記励起共振波が腹である、請求項3に記載のステージ。
【請求項5】
前記少なくとも2つのセンサのうちの別のセンサが、前記ステージが共振モードのときに共振波の静止点が生じる位置に配置される、請求項3に記載のステージシステム。
【請求項6】
前記共振波の静止点が節である、請求項5に記載のステージ。
【請求項7】
前記別のコントローラが、励起共振波が前記ステージの共振モードにおいて形成される前記ステージの一部に作用するように配置された前記アクチュエータのうちの1つに前記別のコントローラ出力信号を供給するように構成される、請求項1に記載のステージシステム。
【請求項8】
前記励起共振波が腹である、請求項7に記載のステージシステム。
【請求項9】
少なくとも二組の少なくとも2つのセンサと、各々が前記各組のセンサからの入力信号に応じて別のコントローラ出力信号を供給するように構成された少なくとも2つの別のコントローラとが設けられる、請求項1に記載のステージシステム。
【請求項10】
前記ステージが、
前記リソグラフィ装置の放射ビームの断面にパターンを与えるパターニングデバイスを支持するように構成された支持体を含み、
前記複数のアクチュエータが、
各々がスキャン方向に前記支持体に力を作用させるように前記支持体の縁部に配置された、少なくとも2つのスキャン方向のアクチュエータと、
前記スキャン方向に対して実質的に直角な第2の方向で前記支持体に力を作用させるように前記支持体の各々の側で前記リソグラフィ装置の焦点面内に配置された、少なくとも2つの第2の方向のアクチュエータと、
前記焦点面に対して実質的に垂直な第3の方向で前記支持体に力を作用させるように前記支持体の縁部に各々配置された、少なくとも3つの第3の方向のアクチュエータと
を含み、
前記ステージシステムが、少なくとも7つのアクチュエータによって6自由度で制御可能である、請求項1に記載のステージシステム。
【請求項11】
前記スキャン方向で見ると、前記スキャン方向のアクチュエータが前記支持体の前方側に取り付けられ、前記第2の方向のアクチュエータが前記支持体の後方側に取り付けられる、請求項10に記載のステージシステム。
【請求項12】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを与えてパターニングされた放射ビームを形成するように構成されたパターニングデバイスを支持するように構築されたパターニングデバイス支持体と、
基板を保持するように構築された基板支持体と、
前記パターンニングされた放射ビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと
を備え、
前記支持体のうちの少なくとも1つが、
ステージと、
前記ステージに作用するように構成され、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータと、
各々が前記ステージの位置依存パラメータを測定し、各センサ信号を供給するように構成された少なくとも2つのセンサであって、センサ自由度において前記各位置依存パラメータを測定するように配置された少なくとも2つのセンサと、
前記センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および前記位置依存パラメータに応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくとも1つにコントローラ出力信号を供給するように構成されたコントローラと、
前記センサのうちの前記少なくとも2つによって測定された前記位置依存パラメータが供給され、前記センサのうちの前記少なくとも2つからの前記位置依存パラメータ間の差を求め、求めた前記差に応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくとも1つに別のコントローラ出力信号を供給するように構成された別のコントローラと
を含むステージシステムによって支持される、リソグラフィ装置。
【請求項13】
前記コントローラおよび前記別のコントローラが、アクチュエータ駆動マトリックスを介して前記アクチュエータを駆動するように構成される、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つのセンサのうちの1つが、前記ステージが共振モードのときに励起共振波が生じる位置に配置される、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項15】
前記励起共振波が腹である、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項16】
前記少なくとも2つのセンサのうちの別のセンサが、前記ステージが前記共振モードのときに共振波の静止点が生じる位置に配置される、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項17】
前記共振波の静止点が節である、請求項16に記載のリソグラフィ装置。
【請求項18】
前記別のコントローラが、励起共振波が前記ステージの共振モードにおいて形成される前記ステージの一部に作用するように配置された前記アクチュエータのうちの1つに前記別のコントローラ出力信号を供給するように構成される、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項19】
前記励起共振波が腹である、請求項18に記載のリソグラフィ装置。
【請求項20】
少なくとも二組の少なくとも2つのセンサと、各々が前記各組のセンサからの入力信号に応じて別のコントローラ出力信号を供給するように構成された少なくとも2つの別のコントローラとが設けられる、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項21】
前記複数のアクチュエータが、
各々がスキャン方向に前記支持体のうちの前記支持体少なくとも1つに力を作用させるように前記支持体のうちの前記少なくとも1つの縁部に配置される、少なくとも2つのスキャン方向のアクチュエータと、
前記スキャン方向に対して実質的に直角な第2の方向で前記支持体のうちの前記少なくとも1つに力を作用させるように、前記支持体のうちの前記少なくとも1つの各々の側で前記リソグラフィ装置の焦点面内に配置された、少なくとも2つの第2の方向のアクチュエータと、
前記焦点面に対して実質的に垂直な第3の方向で前記支持体のうちの前記少なくとも1つへ力を作用させるように、前記支持体のうちの前記少なくとも1つの縁部に各々配置された、少なくとも3つの第3の方向のアクチュエータと
を含み、
前記ステージシステムが、好ましくは少なくとも7つのアクチュエータによって6自由度で制御可能である、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項22】
前記スキャン方向で見ると、前記スキャン方向のアクチュエータが前記支持体うちの前記少なくとも1つの前方側に取り付けられ、前記第2の方向のアクチュエータが前記支持体うちの前記少なくとも1つの後方側に取り付けられる、請求項21に記載のリソグラフィ装置。
【請求項23】
ステージに作用するように構成され、アクチュエータ自由度において過剰設定された複数のアクチュエータを設けるステップと、
各々が各センサ信号を供給するように構成された少なくとも2つのセンサによって前記ステージの位置依存パラメータを測定するステップであって、前記少なくとも2つのセンサが自由のセンサにおいて前記各位置依存パラメータを測定するように構成される、測定するステップと、
前記センサのうちの少なくとも1つによって測定された設定値および前記位置依存パラメータに応じてコントローラ出力信号を決定するステップと、
前記アクチュエータのうちの少なくとも1つに前記コントローラ出力信号を供給するステップと、
前記少なくとも2つのセンサからの測定された前記位置依存パラメータ間の差を求めるステップと、
求めた前記差に応じて別のコントローラ出力信号を決定するステップと、
前記アクチュエータのうちの少なくとも1つに前記別のコントローラ出力信号を供給するステップと
を含む、ステージ制御方法。
【請求項24】
前記アクチュエータが、前記コントローラ出力信号および前記別のコントローラ出力信号によりアクチュエータ駆動マトリックスを介して駆動される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも2つのセンサのうちの1つが、前記ステージが共振モードのときに励起共振波が生じる位置に配置される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記励起共振波が腹である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも2つのセンサのうちの別のセンサが、前記ステージが共振モードのときに共振波の静止点が生じる位置に配置される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記共振波の静止点が節である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記別のコントローラが、励起共振波が前記ステージの共振モードにおいて形成される前記ステージの一部に作用するように配置された前記アクチュエータのうちの1つに前記別のコントローラ出力信号を供給するように構成される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記共振波モードが腹である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
二組の少なくとも2つセンサが設けられ、各々の別のコントローラ出力信号が各組のセンサからの各入力信号に応じて決定される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−219001(P2008−219001A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−34572(P2008−34572)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】