説明

ストラット滑り軸受

【課題】板金製の上部ばね座部材を省き得て、これにより自動車の足回りの軽量化、低価格化を図ることができるストラット滑り軸受を提供すること。
【解決手段】ストラット滑り軸受1は、環状下面2を有すると共にポリアセタール樹脂製の上ケース3と、上ケース3に当該上ケース3の軸心Oの回りでR方向に回転自在となるように重ね合わされると共に上ケース3の環状下面2に対面した環状上面4を有するポリアセタール樹脂に加えてこのポリアセタール樹脂に含有されたガラス繊維等の補強繊維を含む強化合成樹脂製の下ケース5と、環状下面2及び環状上面4間に介在されているポリアセタール樹脂製の環状のスラスト滑り軸受片6と、ポリアセタール樹脂製の筒状のラジアル滑り軸受片7とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラット滑り軸受、特に四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)の滑り軸受として組込まれて好適なストラット滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストラット型サスペンションは、主として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにサスペンションコイルばねを組合せたものである。斯かるサスペンションは、ストラットの軸線に対してサスペンションコイルばねの軸線を積極的にオフセットさせ、該ストラットに内蔵されたショックアブソーバのピストンロッドの摺動を円滑に行わせる構造のものと、ストラットの軸線に対してサスペンションコイルばねの軸線を一致させて配置させる構造のものとがある。いずれの構造においても、ステアリング操作によりストラットアッセンブリがサスペンションコイルばねと共に回転する際、当該回転を円滑に行わせるべく車体への取付部材とサスペンションコイルばねの上部ばね座部材との間にスラスト軸受が配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−303873号公報
【特許文献2】特開2002−257146号公報
【特許文献3】実公平6−45693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このスラスト軸受には、ボール若しくはニードルを使用したころがり軸受又は合成樹脂製の滑り軸受が使用されている。ころがり軸受は、摩擦トルクを低くできて軽快にステアリング操作を行い得るために極めて好ましいのであるが、高価であるために低価格が要求される場合にはころがり軸受に代えて滑り軸受がスラスト軸受に用いられる。
【0005】
ところで、いずれのスラスト軸受も上述の通り車体への取付部材とサスペンションコイルばねの上部ばね座部材との間に介在されるのであるが、上部ばね座部材は通常、板金製であるために比較的重く、また板金製の上部ばね座部材には防錆用の塗装を施す必要がある結果、自動車の足回りの軽量化、低価格化を図るべく高価なころがり軸受に代えて滑り軸受を用いても、上部ばね座部材の重量、製造費、組付け費用等によって斯かる軽量化、低価格化には限界がある。
【0006】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、板金製の上部ばね座部材を省き得て、これにより自動車の足回りの軽量化、低価格化を図ることができるストラット滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様のストラット滑り軸受は、環状下面を有した合成樹脂製の上ケースと、この上ケースに当該上ケースの軸心の回りで回転自在となるように重ね合わされると共に上ケースの環状下面に対面した環状上面を有した合成樹脂製の下ケースと、環状下面及び環状上面間に介在されている合成樹脂製の環状のスラスト滑り軸受片とを具備しており、下ケースは下面にサスペンションコイルばね用のばね座面を有している。
【0008】
第一の態様のストラット滑り軸受によれば、上ケース、下ケース及びスラスト滑り軸受片が合成樹脂製であるために、十分に軽量化、低価格化を図ることができ、しかも、下ケースはその下面にサスペンションコイルばね用のばね座面を有しているために、サスペンションコイルばねの一端部を下ケースで受けることができて板金製の上部ばね座部材を省くことができ、而して、板金製の上部ばね座部材に起因する重量増加及び板金製の上部ばね座部材の製造、塗装及び組付け等に起因する価格増加をなくし得て、上記と相俟って自動車の足回りの軽量化、低価格化を更に図ることができる。
【0009】
本発明のストラット滑り軸受は、本来的には、スラスト軸受と機能すればよいのであるが、本発明の第二の態様のストラット滑り軸受のように、筒状のラジアル滑り軸受片を更に具備していてもよく、この場合、上ケースは、環状下面が形成された上環状部と、この上環状部の径方向の内周縁又は外周縁から一体的に下方に延設されていると共に円筒側面を有した円筒部とを具備しており、下ケースは円筒側面に対面した円筒側面を有しており、ラジアル滑り軸受片は、上ケースの円筒部の円筒側面と下ケースの円筒側面との間に介在されている。
【0010】
斯かる第二の態様のストラット滑り軸受によれば、下ケースと上ケースとの間に加わるラジアル方向の力をラジアル滑り軸受片で受容できる結果、ラジアル方向の力が加わった場合でも下ケースと上ケースとの間の相対回転を低摩擦抵抗をもって行うことができ、而して、軽快にステアリング操作を行い得る。
【0011】
上ケースの円筒部は、上環状部の径方向の内周縁又は外周縁から一体的に下方に延設されていればよいのであるが、これに代えて、斯かる円筒部は、上環状部の径方向の内周縁及び外周縁の両方から一体的に下方に延設されていてもよい。
【0012】
下ケースは、本発明の第三の態様のストラット滑り軸受のように、径方向の内周側の環状上面から一体的に上方に突出した内周側円筒突起部と、径方向の外周側の環状上面から一体的に上方に突出した外周側円筒突起部とを有しており、この場合、スラスト滑り軸受片は内周側円筒突起部と外周側円筒突起部との間に配されており、またこれに代えて又はこれと共に、上ケースは、本発明の第四の態様のストラット滑り軸受のように、径方向の内周側の環状下面から一体的に下方に垂下した内周側円筒垂下部と、径方向の外周側の環状下面から一体的に下方に垂下した外周側円筒垂下部とを有しており、この場合も、スラスト滑り軸受片は内周側円筒垂下部と外周側円筒垂下部との間に配されている。
【0013】
第三及び第四の態様のストラット滑り軸受によれば、スラスト滑り軸受片を内周側円筒突起部及び外周側円筒突起部又は内周側円筒垂下部及び外周側円筒垂下部により位置決めできるために、スラスト滑り軸受片により確実にスラスト力を受容できる。内周側円筒突起部及び外周側円筒突起部に加えて内周側円筒垂下部及び外周側円筒垂下部を具備している場合には、これらにより好ましいラビリンス(迷路)を形成できるために、スラスト滑り軸受片が装着される下ケースと上ケースとの間の空間への泥、雨水等の侵入をより効果的に防止できる。
【0014】
下ケースは、好ましくは本発明の第五の態様のストラット滑り軸受のように、環状基部と、この環状基部の上面に一体的に形成されていると共に環状上面が形成された上円筒部と、環状基部の下面に一体的に形成された下円筒部とを具備しており、この場合、下円筒部の径方向の外側における環状基部の下面がばね座面になっている。
【0015】
第五の態様のストラット滑り軸受によれば、下円筒部でサスペンションコイルばねの一端部を径方向に関して保持できる結果、サスペンションコイルばねの一端部のばね座面からの脱落を防止できる。
【0016】
好ましい例では本発明の第六の態様のストラット滑り軸受のように、上ケースは、環状下面が形成された上環状部と、この上環状部の径方向の外周縁から一体的に下方に延設されている円筒部とを具備しており、下ケースは、環状基部と、この環状基部の上面の径方向の略中央部に一体的に形成されていると共に環状上面が形成された上円筒部と、環状基部の下面に一体的に形成された下円筒部とを具備しており、上円筒部は上ケースの円筒部に囲繞されており、下円筒部の径方向の外側における環状基部の下面がばね座面になっている。
【0017】
第六の態様のストラット滑り軸受によれば、上円筒部が環状基部の上面の径方向の略中央部に一体的に形成されていると共に上ケースの円筒部に囲繞されているために、上ケースの円筒部と下ケースの上円筒部との間の下方隙間を環状基部で覆うことができる結果、下方隙間を介する上ケースの円筒部と下ケースの上円筒部との間の隙間への泥、雨水等の侵入を効果的に防止できる。
【0018】
第六の態様のストラット滑り軸受でも、本発明の第七の態様のストラット滑り軸受のように、筒状のラジアル滑り軸受片を更に具備していてもよく、この場合、下ケースの上円筒部は上ケースの円筒部の円筒側面に対面した円筒側面を有しており、ラジアル滑り軸受片は、上ケースの円筒部の円筒側面と下ケースの上円筒部の円筒側面との間に介在されている。
【0019】
スラスト滑り軸受片及びラジアル滑り軸受片を構成する合成樹脂は、特に自己潤滑性を有することが好ましく、第二又は第七の態様のストラット滑り軸受では、ラジアル滑り軸受片は、好ましくは本発明の第八の態様のストラット滑り軸受のように、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっている。
【0020】
上ケースは、好ましくは本発明の第九の態様のストラット滑り軸受のように、下ケースに弾性嵌着されるようになっている。
【0021】
上ケース及び下ケースを構成する合成樹脂は、耐摩耗性、耐衝撃性、耐クリープ性等の摺動特性及び剛性等の機械的特性に優れている上に、特にスラスト滑り軸受片に使用される合成樹脂と摩擦特性の良好な組合わせの合成樹脂が使用されることが好ましく、具体的には、本発明の第十の態様の滑り軸受のように、上ケースは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっているとよく、スラスト滑り軸受片は、本発明の第十一の態様の滑り軸受のように、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっているとよく、下ケースは、上ケースを構成する合成樹脂と同様の合成樹脂が使用され得るが、本発明の第十二の態様の滑り軸受のように、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂及びポリプロピレン樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂と、この合成樹脂に含有された補強繊維とを含む強化合成樹脂からなる。補強繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維等を挙げることができるが、その他の補強繊維であってもよい。
【0022】
本発明のストラット滑り軸受は、四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるためのものであって、具体的には好ましくは車体への取付部材とサスペンションコイルばねとの間に介在される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、板金製の上部ばね座部材を省き得て、これにより自動車の足回りの軽量化、低価格化を図ることができるストラット滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の実施の形態の好ましい一例の断面図である。
【図2】図2は図1に示す例の一部の拡大断面図である。
【図3】図3は図1に示す例の上ケースの断面図である。
【図4】図4は図1に示す例の下ケースの断面図である。
【図5】図5は図1に示す例のスラスト滑り軸受片の斜視図である。
【図6】図6は図1に示す例のラジアル滑り軸受片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい例を参照して説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0026】
図1から図6において、本例の四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるためのストラット滑り軸受1は、環状下面2を有すると共に合成樹脂製、例えばポリアセタール樹脂製の上ケース3と、上ケース3に当該上ケース3の軸心Oの回りでR方向に回転自在となるように重ね合わされると共に上ケース3の環状下面2に対面した環状上面4を有する合成樹脂製、例えばポリアセタール樹脂に加えてこのポリアセタール樹脂に含有されたガラス繊維等の補強繊維を含む強化合成樹脂製の下ケース5と、環状下面2及び環状上面4間に介在されている合成樹脂製、例えばポリアセタール樹脂製の環状のスラスト滑り軸受片6と、合成樹脂製、例えばポリアセタール樹脂製の筒状のラジアル滑り軸受片7とを具備している。
【0027】
図3に特に詳細に示すように、貫通孔11を有する環状の上ケース3は、環状下面2が形成された上環状部12と、上環状部12の径方向の外周縁から一体的に下方に延設されていると共に径方向の内側に円筒側面13を有した円筒部14と、上環状部12の径方向の内周縁から一体的に下方に垂下されている内側円筒垂下部15と、円筒部14の径方向の内側の円筒側面13に形成された係合フック部16とを具備して、一体形成されている。
【0028】
貫通孔11と同心の貫通孔21を有した環状の下ケース5は、図4に特に詳細に示すように、環状基部22と、環状基部22の上面23の径方向の略中央部にに一体的に形成されていると共に環状上面4が形成されており、しかも、上ケース3の円筒部14の円筒側面13に対面した円筒側面29を有している上円筒部24と、環状基部22の下面25の径方向の略中央部に一体的に形成された下円筒部26と、径方向の内周側の環状上面4から一体的に上方に突出した内周側円筒突起部27と、径方向の外周側の環状上面4から一体的に上方に突出した外周側円筒突起部28と、円筒側面29に形成された被係合フック部30とを具備して、一体形成されている。円筒側面13は円筒部14の径方向の内側に配されており、円筒側面13に対面した円筒側面29は、上円筒部24の径方向の外側に配されている。
【0029】
下ケース5の下面、即ち、下円筒部26の径方向の外側における環状基部22の下面25がサスペンションコイルばね61用のばね座面36になっており、上円筒部24は上ケース3の円筒部14に囲繞されており、環状基部22、上円筒部24及び下円筒部26には、軽量化等を図るべく複数の肉取り空所37が設けられている。
【0030】
図5に特に詳細に示すようにスラスト滑り軸受片6は、その環状の上面41で環状下面2にその環状の下面42で環状上面4に夫々摺動自在に接触して、内側円筒垂下部15と円筒部14との間であって、しかも、内周側円筒突起部27と外周側円筒突起部28との間に配されている。
【0031】
図6に特に詳細に示すようにラジアル滑り軸受片7は、その円筒状の径方向の外面45で円筒側面13にその円筒状の径方向の内面46で円筒側面29に夫々摺動自在に接触して、上ケース3の円筒部14と下ケース5の上円筒部24との間に介在されている。
【0032】
上ケース3は、係合フック部16で下ケース5の被係合フック部30にスナップフィット式に弾性係合して下ケース5に弾性嵌着されるようになっている。
【0033】
上ケース3及び下ケース5の上環状部12及び上円筒部24のその径方向の外周縁部及び内周縁部のうちの少なくとも一方、本例では両縁部において、上環状部12及び円筒部14と上円筒部24及び外周側円筒突起部28とによりラビリンス(迷路)51が、上環状部12及び内側円筒垂下部15と内周側円筒突起部27とによりラビリンス52が夫々形成されるようになっており、斯かる外周縁部のラビリンス51及び内周縁部のラビリンス52により上環状部12と上円筒部24との間のスラスト滑り軸受片6を装着した環状空間への外部からの塵埃、泥水等の侵入が防止されている。
【0034】
以上のストラット滑り軸受1は、図1及び図2に特に詳細に示すようなストラット型サスペンションアセンブリ60におけるサスペンションコイルばね61の一端部62と、ストラット型サスペンションアセンブリ60を四輪自動車の車体に取り付ける取付部材63との間に介在されて用いられる。
【0035】
ストラット型サスペンションアセンブリ60における油圧ダンパのピストンロッド64の一端部65が支持される車体側の取付部材63は、四輪自動車の車体にねじ66を介して取り付けられる取付板67と、上ケース3と略同形の受け部材68と、ピストンロッド64の一端部65が配される円筒部材69と、ピストンロッド64の一端部65が貫通する座板70と、取付板67の一端部が埋設されていると共に受け部材68及び円筒部材69が加硫接着されてこれら取付板67、受け部材68及び円筒部材69を一体化する弾性部材73とを具備しており、サスペンションコイルばね61の一端部62は、ばね座面36に着座している。
【0036】
図1及び図2に示すようにストラット滑り軸受1を介して装着されたストラット型サスペンションアセンブリ60では、ステアリング操作に際してのサスペンションコイルばね61を介する下ケース5の軸心Oの回りでの相対的なR方向の回転は、スラスト滑り軸受片6の上面41と上ケース3の環状下面2との間の同方向の相対的な摺動又はスラスト滑り軸受片6の下面42と下ケース5の環状上面4との間の同方向の相対的な摺動並びにラジアル滑り軸受片7の内面46と下ケース5の円筒側面29との間の同方向の相対的な摺動又はラジアル滑り軸受片7の外面45と上ケース3の円筒側面13との間の同方向の相対的な摺動で滑らかに行われる。
【0037】
ストラット滑り軸受1によれば、上ケース3、スラスト滑り軸受片6及びラジアル滑り軸受片7に加えて下ケース5もまた合成樹脂製であるために、軽量化、低価格化を図ることができ、しかも、下ケース5はその下面25にサスペンションコイルばね61用のばね座面36を有しているために、サスペンションコイルばね61の一端部62を下ケース5で受けることができて板金製の上部ばね座部材を省くことができ、而して、板金製の上部ばね座部材に起因する重量増加及び板金製の上部ばね座部材の製造、塗装及び組付けに起因する価格増加をなくし得て、上記と相俟って自動車の足回りの軽量化、低価格化を更に図ることができる。
【0038】
またストラット滑り軸受1によれば、下ケース5と上ケース3との間に加わるラジアル方向の力をラジアル滑り軸受片7で受容できる結果、ラジアル方向の力が加わった場合でも下ケース5と上ケース3との間の相対回転を低摩擦抵抗をもって行うことができ、而して、軽快にステアリング操作を行い得、更に、スラスト滑り軸受片6を内周側円筒突起部27及び外周側円筒突起部28により位置決めできるために、スラスト滑り軸受片6により確実にスラスト力を受容でき、加えて、上円筒部24が環状基部22の上面23の径方向の略中央部に一体的に形成されていると共に上ケース3の円筒部14に囲繞されているために、上ケース3の円筒部14と上円筒部24との間の下方隙間71を環状基部22で覆うことができる結果、下方隙間71を介する上ケース3の円筒部14と上円筒部24との間の隙間72への泥、雨水等の侵入を効果的に防止でき、しかも、下円筒部26でサスペンションコイルばね61の一端部62を径方向に関して保持できる結果、サスペンションコイルばね61の一端部62のばね座面36からの脱落を防止できる。
【0039】
ストラット滑り軸受1では、内周側円筒突起部27及び外周側円筒突起部28を具備して下ケース5を構成したが、これに代えて又はこれと共に、内周側円筒突起部27と同様であって、径方向の内周側の環状下面2から一体的に下方に垂下した内周側円筒垂下部と、外周側円筒突起部28と同様であって、径方向の外周側の環状下面2から一体的に下方に垂下した外周側円筒垂下部とを具備して上ケース3を構成し、スラスト滑り軸受片6をこれら内周側円筒垂下部と外周側円筒垂下部との間に配してストラット滑り軸受1を構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ストラット滑り軸受
2 環状下面
3 上ケース
4 環状上面
5 下ケース
6 スラスト滑り軸受片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状下面を有した合成樹脂製の上ケースと、この上ケースに当該上ケースの軸心の回りで回転自在となるように重ね合わされると共に上ケースの環状下面に対面した環状上面を有した合成樹脂製の下ケースと、環状下面及び環状上面間に介在されている合成樹脂製の環状のスラスト滑り軸受片とを具備しており、下ケースは下面にサスペンションコイルばね用のばね座面を有しているストラット滑り軸受。
【請求項2】
筒状のラジアル滑り軸受片を更に具備しており、上ケースは、環状下面が形成された上環状部と、この上環状部の径方向の内周縁又は外周縁から一体的に下方に延設されていると共に円筒側面を有した円筒部とを具備しており、下ケースは円筒側面に対面した円筒側面を有しており、ラジアル滑り軸受片は、上ケースの円筒部の円筒側面と下ケースの円筒側面との間に介在されている請求項1に記載のストラット滑り軸受。
【請求項3】
下ケースは、径方向の内周側の環状上面から一体的に上方に突出した内周側円筒突起部と、径方向の外周側の環状上面から一体的に上方に突出した外周側円筒突起部とを有しており、スラスト滑り軸受片は内周側円筒突起部と外周側円筒突起部との間に配されている請求項1又は2に記載のストラット滑り軸受。
【請求項4】
上ケースは、径方向の内周側の環状下面から一体的に下方に垂下した内周側円筒垂下部と、径方向の外周側の環状下面から一体的に下方に垂下した外周側円筒垂下部とを有しており、スラスト滑り軸受片は内周側円筒垂下部と外周側円筒垂下部との間に配されている請求項1から3のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項5】
下ケースは、環状基部と、この環状基部の上面に一体的に形成されていると共に環状上面が形成された上円筒部と、環状基部の下面に一体的に形成された下円筒部とを具備しており、下円筒部の径方向の外側における環状基部の下面がばね座面になっている請求項1から4のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項6】
上ケースは、環状下面が形成された上環状部と、この上環状部の径方向の外周縁から一体的に下方に延設されている円筒部とを具備しており、下ケースは、環状基部と、この環状基部の上面の径方向の略中央部に一体的に形成されていると共に環状上面が形成された上円筒部と、環状基部の下面に一体的に形成された下円筒部とを具備しており、上円筒部は上ケースの円筒部に囲繞されており、下円筒部の径方向の外側における環状基部の下面がばね座面になっている請求項1に記載のストラット滑り軸受。
【請求項7】
筒状のラジアル滑り軸受片を更に具備しており、下ケースの上円筒部は上ケースの円筒部の円筒側面に対面した円筒側面を有しており、ラジアル滑り軸受片は、上ケースの円筒部の円筒側面と下ケースの上円筒部の円筒側面との間に介在されている請求項6に記載のストラット滑り軸受。
【請求項8】
ラジアル滑り軸受片は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっている請求項2又は7に記載のストラット滑り軸受。
【請求項9】
上ケースは下ケースに弾性嵌着されるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項10】
上ケースは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっている請求項1から9のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項11】
スラスト滑り軸受片は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっている請求項1から10のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項12】
下ケースは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂及びポリプロピレン樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂と、この合成樹脂に含有された補強繊維とを含む強化合成樹脂からなる請求項1から11のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項13】
四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるための請求項1から12のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のストラット滑り軸受と、一端部で下ケースのばね座面に着座しているサスペンションコイルばねとを具備した四輪自動車におけるストラット型サスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−270720(P2009−270720A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141600(P2009−141600)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【分割の表示】特願2003−83747(P2003−83747)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】