スプラインシャフトのDLC被膜の形成方法
【課題】熱陰極PIGプラズマCVD法によって雄スプライン部にDLC被膜を形成する場合に、DLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることができるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】真空室60内において、柱状のプラズマ70aの周囲に複数のスプラインシャフト10を配置すると共に、柱延在方向に複数のスプラインシャフト10を同軸状に並べて配置する。同軸状に並べて配置された複数のスプラインシャフト10は、それぞれの雄スプライン部16の間に軸方向隙間が形成されるように配置される。複数の雄スプライン部16の軸方向隙間は、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置するようにする。
【解決手段】真空室60内において、柱状のプラズマ70aの周囲に複数のスプラインシャフト10を配置すると共に、柱延在方向に複数のスプラインシャフト10を同軸状に並べて配置する。同軸状に並べて配置された複数のスプラインシャフト10は、それぞれの雄スプライン部16の間に軸方向隙間が形成されるように配置される。複数の雄スプライン部16の軸方向隙間は、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のプロペラシャフトなどにおいて、軸方向に摺動可能とするために2つのシャフトをスプライン嵌合させている。そして、スプライン部には、摺動性および耐摩耗性が要求される。そこで、スプライン部には、DLC(Diamond Like Carbon)被膜を形成することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、DLC被膜の形成方法として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、イオン蒸着法などが知られている。CVD法の中には、熱陰極PIG(Penning Ionization Gauge)型プラズマ源を用いて行う熱陰極PIGプラズマCVD法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-122663号公報
【特許文献2】特開2006-169589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、装置内に複数のスプラインシャフトを配置し、複数のスプラインシャフトの雄スプライン部に対して同時にDLC被膜を形成する。そして、複数の雄スプライン部の性能の個体差を低減するために、それぞれの雄スプライン部に形成されるDLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱陰極PIGプラズマCVD法によって雄スプライン部にDLC被膜を形成する場合に、DLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることができるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、熱陰極PIGプラズマCVD法とDLC被膜の膜厚の関係を見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
(請求項1)本発明に係るスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法は、熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法であって、前記熱陰極PIGプラズマCVD装置は、前記スプラインシャフトを配置する真空室と、プラズマガン、真空室内に配置された反射電極、前記プラズマガンを囲むように配置された第一コイル、および、前記第一コイルに対向し前記反射電極側に配置された第二コイルを含んで構成され、前記真空室に中央部が膨らんだ柱状のプラズマを形成させる熱陰極PIG型プラズマ源と、前記真空室内へ前記DLC被膜の材料となる材料ガスを導入する材料ガス導入部と、を備え、前記真空室内において、前記柱状のプラズマの周囲に複数の前記スプラインシャフトを配置すると共に、前記柱延在方向に複数の前記スプラインシャフトを同軸状に並べて配置し、同軸状に並べて配置された複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記雄スプライン部の間に軸方向隙間が形成されるように配置され、複数の前記雄スプライン部の軸方向隙間は、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置する。
【0009】
(請求項2)また、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、偶数本としてもよい。
(請求項3)また、前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、他部材と連結可能なU字形状に形成されると共に前記雄スプライン部と別体にて形成された後に前記雄スプライン部に一体的に接合されるヨーク部とを備え、前記真空室内には、前記スプラインシャフトのうち前記雄スプライン部のみを配置し、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記雄スプライン部は、4以上であり、前記柱延在方向の中央部寄りに配置された2つの前記雄スプライン部の間には、前記軸方向隙間が形成され、前記柱延在方向の中央部以外に配置された2つの前記雄スプライン部は、当接した状態で配置されるようにしてもよい。
【0010】
(請求項4)また、前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、前記雄スプライン部に一体的に形成され他部材と連結するU字形状のヨーク部とを備え、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置し、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するそれぞれの前記雄スプライン部の軸方向隙間には、それぞれの前記ヨーク部が配置されるようにしてもよい。
【0011】
(請求項5)また、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第一群とし、それぞれの前記ヨーク部を外方に向けて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第二群とし、柱状の前記プラズマの周囲に、前記第一群と前記第二群を周方向に交互に配置するようにしてもよい。
(請求項6)また、前記第一群の前記雄スプライン部と前記第二群の前記雄スプライン部とは、前記柱延在方向に同一位置に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)本発明者らは、真空室に形成されるプラズマが中央部の膨らんだ柱状であって、このプラズマの膨らみの大きさとDLC被膜の膜厚とに相関があることを発見した。具体的には、プラズマの膨らみが大きい位置ほど、DLC被膜が厚くなる関係となることが分かった。そこで、本発明は、柱延在方向に並べて配置される複数の雄スプライン部の軸方向隙間は、プラズマの柱延在方向の中央部に位置するようにしている。つまり、プラズマの柱延在方向の中央部には、雄スプライン部が配置されない。換言すると、プラズマの膨らみが最も大きな中央部を、雄スプライン部のDLC被膜処理に用いないようにしている。そして、プラズマの中央部以外の部位を用いて、雄スプライン部のDLC被膜処理を行っている。その結果、雄スプライン部のDLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることができる。
【0013】
(請求項2)プラズマの中央部の膨らみが最も大きく、プラズマの両端側ほど膨らみが小さくなっていく。そして、本発明のように、並べて配置される複数のスプラインシャフトを偶数本とすることで、DLC被膜の膜厚のばらつきを低減しつつ、プラズマの両端側を有効利用できる。つまり、多くのスプラインシャフトを真空室内に配置して、一度に多数のスプラインシャフトの雄スプライン部のDLC被膜を形成することができる。
(請求項3)プラズマの柱延在方向の中央部以外に配置された2つのスプラインシャフトの雄スプライン部を当接した状態で配置することで、確実に、多くのスプラインシャフトの雄スプライン部を真空室内に配置することができる。
【0014】
(請求項4)スプラインシャフトが雄スプライン部とそれに一体的に形成されるヨーク部とを備える場合に、ヨーク部にはDLC被膜を形成する必要がないため、真空室内においてヨーク部の領域は無駄な領域となる。しかし、並べて配置される複数のスプラインシャフトのそれぞれのヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置することで、DLC被膜を形成する必要のない領域をできる限り狭くすることができる。さらに、プラズマの柱延在方向の中央部に、向かい合うそれぞれのヨーク部の重なり部分を配置することで、複数の雄スプライン部の軸方向隙間を有効利用できる。このように、真空室内を有効に利用できるため、DLC被膜の膜厚のばらつきを低減しつつ、多くのスプラインシャフトを真空室内に配置することができる。
【0015】
(請求項5)真空室内における周方向に配置する複数のスプラインシャフト全てを、それぞれのヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置した場合、周方向の隣りにヨーク部同士が当接しないようにするために、周方向の間隔を大きくとる必要がある。しかし、本発明のように、ヨーク部を向かい合わせて配置される第一群と、ヨーク部を外方に向けて配置される第二群とを周方向に交互に配置することで、周方向の間隔を狭くすることができる。つまり、真空室内において周方向により多くのスプラインシャフトを配置することができる。
【0016】
(請求項6)第一群と第二群とを周方向に交互に配置する場合に、それぞれの雄スプライン部をプラズマの柱延在方向に同一位置に配置することで、第一群の雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚と、第二群の雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚とのばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のスプラインシャフトとしての第一シャフトを含むプロペラシャフトの全体構成であり、一部を断面図で表す図である。
【図2】図1のプロペラシャフトを構成する第一シャフトを示す図である。
【図3】摩擦圧接により一体化される前における図2の第一シャフトを形成する二部材を示す図である。
【図4】図3に示す第一シャフトの雄スプライン部の表面側の断面図である。
【図5】第一実施形態:図3に示す雄スプライン部に表面処理を行うための熱陰極PIGプラズマ装置を示す図である。
【図6】図5のA−A断面図であり、熱陰極PIGプラズマ装置の径方向断面図である。
【図7】図5に示す装置を用いて、図3に示す雄スプライン部の表面処理方法を示すフローチャートである。
【図8】図5に示す装置における軸方向位置と雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図9】第二実施形態:図2に示す一体的な第一シャフトを収容して雄スプライン部に表面処理を行うための熱陰極PIGプラズマ装置を示す図である。
【図10】図9のB−B断面図であり、熱陰極PIGプラズマ装置の径方向断面図である。
【図11】図9,10に示す装置の真空室内に配置された複数の第一シャフトを周方向に展開した状態の配置図である。
【図12】図9に示す装置における軸方向位置と雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施形態>
(プロペラシャフトの構成)
本発明のスプラインシャフトとして、車両のプロペラシャフトの第一シャフトを例に挙げて説明する。プロペラシャフトの構成について、図1〜図4を参照して説明する。プロペラシャフト1は、エンジンからディファレンシャル装置へ動力を伝達するためのシャフトである。このプロペラシャフト1には、駆動方式によって異なるが、フロントプロペラシャフトとリアプロペラシャフトがある。これらは、何れも、エンジンとディファレンシャル装置との間を連結しており、車両前後方向に延びるように配置されている。
【0019】
図1に示すように、プロペラシャフト1は、第一シャフト10と、第一シャフト10に対して軸方向に摺動可能に配置された第二シャフト20とを備えている。第一シャフト10は、例えば、エンジン側の部材30に連結されており、第二シャフト20は、ディファレンシャル装置側の部材40に連結されている。
【0020】
第一シャフト10は、図1および図2に示すように、第一ヨーク部11と、雄スプライン部16とを備えている。第一ヨーク部11は、他部材30に対して角度を付与した状態で連結されるユニバーサルジョイントの一部を構成する。この第一ヨーク部11は、先端側(図2の左側)に開口するU字形状に形成されている。雄スプライン部16は、筒状に形成されており、第一ヨーク部11のU字形状の底部に一体的に接合され、第一ヨーク部11と同軸状に配置されている。
【0021】
第二シャフト20は、第二ヨーク部21と、雌スプライン部22と、中間筒部23とにより構成され、それぞれ別体に形成された後に摩擦圧接によって一体的に接合されている。第二シャフト20の第二ヨーク部21は、他部材40に対して角度を付与した状態で連結されるユニバーサルジョイントの一部を構成する。この第二ヨーク部21は、先端側(図1の右側)に開口するU字形状に形成されている。第二シャフト20の雌スプライン部22は、第一シャフト10の雄スプライン部16にスプライン嵌合し、相対的に軸方向に摺動可能である。中間筒部23は、第二ヨーク部21および雌スプライン部22に同軸状に、一体的に接合されている。
【0022】
また、本実施形態においては、図2および図3に示すように、第一シャフト10は、第一ヨーク部11と雄スプライン部16とを別体にて形成した後に、摩擦圧接によって両部材を一体的に接合することにより形成されている。そして、第一シャフト10の雄スプライン部16には、摺動性および耐摩耗性を向上するために、表面処理が施されている。図4に示すように、雄スプライン部16は、鉄を主成分とする基材16aの表面側に、クロムを主成分とする中間層被膜16bを形成し、その表面側にDLC被膜16cを形成している。中間層被膜16bは、PVD法、特にスパッタリング法によって形成され、DLC被膜16cは、熱陰極PIGプラズマCVD法によって形成される。この表面側のDLC被膜16cは、Siの含有量が表面に近づくに従って低くなる傾斜組成を有する。
【0023】
(熱陰極PIGプラズマ装置の構成)
次に、第一シャフト10の雄スプライン部16の表面処理を施す熱陰極PIGプラズマ装置50について、図5および図6を参照して説明する。熱陰極PIGプラズマ装置は、熱陰極PIGプラズマを発生させた状態で、雄スプライン部16の基材16aの表面側に、PVD法によって中間層被膜16bを形成すると共に、CVD法によってDLC被膜16cを形成する装置である。
【0024】
図5および図6に示すように、当該装置50は、真空室60と、熱陰極PIG型プラズマ源70と、支持装置110と、材料ガス導入部120と、スパッタ源130と、ヒータ140とを備えて構成される。
【0025】
真空室60は、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばステンレスにより円筒形状に形成され、壁部は接地電位(GND)に接続されている。真空室60には、中心軸から離れた位置、図5においては周壁面に、排気口61が形成されている。また、真空室60の中心軸方向一方の端壁面(図5の上端壁面)には、プラズマを供給する開口部62が形成されている。この真空室60には、表面処理を施す対象物である雄スプライン部16が複数配置されている。
【0026】
熱陰極PIG型プラズマ源70は、真空室60に中央部が膨らんだ柱状のプラズマ70aを形成させる。この熱陰極PIG型プラズマ源70は、プラズマガン80、反射電極91、第一コイル92、第二コイル93を備えて構成される。
【0027】
プラズマガン80は、真空室60のうち開口部62の外部に配置されている。プラズマガン80は、筐体81と、絶縁体82と、熱陰極83と、陽極84と、電子注入電極85と、ガスノズル86とにより構成される。筐体81は、例えばステンレスにより円筒形状に形成され、真空室60の開口部62を被覆するように設けられている。この筐体81と真空室60の端壁面との間には、フッ素樹脂やアルミナ等の絶縁体82を介在させている。
【0028】
熱陰極83、陽極84および電子注入電極85は、筐体81の内部に配位置されている。熱陰極83は、例えば、タングステン製フィラメントで構成されており、筐体81のうち開口部62から最も遠い位置(図5の上端側)に配置されている。熱陰極83は、直流電源101に接続されており、直流電源101から直流電力(カソード電力とも称する)を供給されることにより加熱される。そして、熱陰極83は、熱電子が放出される温度に加熱されることによって、熱電子を放出する。
【0029】
陽極84は、モリブデン製の扁平な環状体に形成され、中空部を開口部62に対向するように、熱陰極83と開口部62との間に配置されている。陽極84には、アノード電源102によって熱陰極83に対して正の電圧が印加される。電子注入電極85は、陽極84と同様に形成され、電子注入電源103を介して熱陰極83に接続されるとともに、接地されている。また、熱陰極83、陽極84および電子注入電極85は、プラズマガン80の筐体81に対して浮遊している。
【0030】
ガスノズル86は、外部から筐体81の内部に、放電用ガス、例えばアルゴンガスおよび水素ガスを導入する。つまり、熱陰極83、陽極84および電子注入電極85に通電して、ガスノズル86から放電用ガスを導入することによって、筐体81内にプラズマが発生する。
【0031】
反射電極91は、スチール製またはステンレス製からなり、プラズマガン80に対向するように、真空室60内に配置されている。この反射電極91は、プラズマガン80から真空室60内に供給されるプラズマ70aの粒子をプラズマガン80側へ向けて反射する。この反射電極91は、絶縁電位とされている。
【0032】
第一コイル92は、プラズマガン80の筐体81の周囲を囲むように、かつ、真空室60の一方の端壁面(図5の上側面)の外面に対向するように配置される。この第一コイル92は、直流電流を供給されることによって、プラズマガン80の筐体81内の放電を助勢する磁場を発生する。第二コイル93は、第一コイル92に対向し、真空室60の他方の端壁面(図5の下側面)の外面に対向するように配置される。つまり、第二コイル93は、反射電極91側に配置される。この第二コイル93は、直流電流を供給されることによって、真空室60内にプラズマ70aを柱状(ビーム状)に閉じ込めるための磁場を発生する。つまり、プラズマ70aは、開口部62と反射電極91を両端とする柱状であって、柱延在方向の中央部が膨らんだ形状となる。
【0033】
支持装置110は、真空室60内の他方の端壁面側(図5の下側)に設けられており、プラズマ70aの周囲に複数の雄スプライン部16を支持することができる。図5および図6に示すように、支持装置110は、第一回転台111、第二回転台112、モータ113、支柱114、および、パルス電源装置115を備える。第一回転台111は、円盤状に形成され、真空室60の壁面に対して回転可能に設けられている。この第一回転台111は、モータ113によって回転駆動される。第二回転台112は、第一回転台111上に周方向に複数設けられ、第一回転台111に対して回転可能に設けられている。第二回転台112は、歯車機構によって第一回転台111の回転に伴って回転する。第二回転台112上には、支柱114が固定されている。この支柱114は、複数の雄スプライン部16を挿通することができる。つまり、モータ113を駆動することによって、雄スプライン部16が第一回転台111の中心回りに公転しつつ、支柱114の中心回りに自転する。
【0034】
さらに、真空室60の外部には、バイアス電圧としての非対称パルス電圧を第一回転台111、第二回転台112、支柱114を介して、雄スプライン部16に印加するパルス電源装置115が設けられている。
【0035】
材料ガス導入部120は、周壁面に設けられ、外部から真空室60に、雄スプライン部16の表面にDLC被膜を形成するための材料ガスとしてのTMS(テトラメチルシラン)ガスおよびアセチレンガスを導入する。スパッタ源130は、真空室60内のうち外周壁の近傍に配置され、当該スパッタ源130のターゲットはクロムを主成分とする材料により形成されている。ヒータ140は、真空室60内のうち外周壁の近傍に配置され、被処理物としての雄スプライン部16を加熱するために用いられる。
【0036】
(真空室内における雄スプライン部の配置)
次に、真空室60内において、複数の雄スプライン部16の配置について、図5および図6を参照して説明する。それぞれの支柱114に、4つの雄スプライン部16を挿通させる。つまり、真空室60内において、プラズマ70aの周囲に複数の雄スプライン部16を配置すると共に、プラズマ70aの柱延在方向に複数列の雄スプライン部を同軸状に並べて配置している。
【0037】
具体的には、以下のようにして、真空室60内に複数の雄スプライン部16を配置する。まず、それぞれの支柱114に、第一列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合側の面から挿入する。続いて、支柱114に、第二列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合とは反対側の面から挿入する。このとき、第一列の雄スプライン部16と第二列の雄スプライン部16とは、第一ヨーク部11とは反対側の面同士が当接している。
【0038】
第二列の雄スプライン部16の次には、円筒形状の間座部材150を支柱114に挿入する。次に、支柱114に、第三列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合側の面から挿入する。続いて、支柱114に、第四列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合とは反対側の面から挿入する。このとき、第三列の雄スプライン部16と第四列の雄スプライン部16とは、第一ヨーク部11とは反対側の面同士が当接している。
【0039】
従って、4列の雄スプライン部16が同軸状に並べて配置されており、中央寄りの第二列と第三列の雄スプライン部16の間に軸方向隙間が形成されるように配置されている。そして、間座部材150を挟んで、二列ずつの雄スプライン部16が配置されているため、間座部材150が配置されている雄スプライン部16の軸方向隙間は、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置することになる。つまり、プラズマ70aの中央部の最も膨らんでいる部分の外周側には、間座部材150が配置されており、雄スプライン部16が配置されていない。
【0040】
(雄スプライン部の表面処理方法)
次に、雄スプライン部16の表面処理方法について図7のフローチャートを参照して説明する。まず、モータ113を駆動すると共に、ヒータ140に通電して、被処理物としての雄スプライン部16を加熱する。これによって、雄スプライン部16の脱ガス処理を行う(S1)。
【0041】
続いて、ヒータ140への通電を停止し、放電洗浄処理を行う(S2)。放電洗浄処理は、プラズマガン80の筐体81に、ガスノズル86によりアルゴンガスおよび水素ガスを導入する。さらに、熱陰極83、陽極84、電子注入電極85、第一コイル92および第二コイル93に通電する。そうすると、熱陰極83が加熱されて熱電子を放出し、熱電子は陽極84に向かって加速される。加速された熱電子は、アルゴンガスの粒子および水素ガスの粒子に衝突して、当該衝突によってアルゴンガスの粒子および水素ガスの粒子が電離して、筐体81内にてプラズマが発生する。
【0042】
筐体81にて発生したプラズマは、開口部62から真空室60に供給され、反射電極91に向かって移動する。しかし、反射電極91は絶縁電位とされているので、プラズマ内の電子は、反射電極91にて反射してプラズマガン80に向かって移動する。ところが、プラズマガン80の筐体81も絶縁電位とされているので、真空室60内にて、プラズマ内の電子は、プラズマガン80と反射電極91との間で電界振動する。さらに、第一コイル92および第二コイル93によって、プラズマ70aを柱状に閉じ込めるように磁場が作用しているため、中央部が膨らんだ柱状のプラズマ70aが、真空室60内に発生する。
【0043】
さらに、パルス電源装置115により、雄スプライン部16にバイアス電圧を印加する。従って、雄スプライン部16の表面に、プラズマ70aのアルゴンイオンおよび水素イオンが衝突する。これによって、雄スプライン部16の表面が洗浄される。洗浄が終了すると、水素ガスの導入が停止される。
【0044】
続いて、PVD法のうちスパッタリング法により、中間層被膜16bを形成する(S3)。スパッタ源130のターゲットに通電する。そうすると、ターゲットの表面にアルゴンイオンが衝突することによって、ターゲットからクロム粒子が叩き出される。このクロム粒子が雄スプライン部16の表面に衝突して、堆積する。このようにして、雄スプライン部16の基材16aの表面に、クロムを主成分とする中間層被膜16bが形成される。そして、スパッタ源130のターゲットへの通電が停止される。
【0045】
続いて、熱陰極PIGプラズマCVD法により、DLC被膜16cを形成する(S4)。真空室60内に、TMSガスおよびアセチレンガスを、材料ガス導入部120により導入する。そうすると、真空室60において、プラズマ70aの作用によって、TMSガスおよびアセチレンガスが電離され、プラズマ化される。そして、プラズマ化されたTMSガスおよびアセチレンガスは、雄スプライン部16の表面において化学反応を起こし、Si含有のDLC被膜16cが形成される。
【0046】
(雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚)
次に、同一の支柱114に並べて配置された第一列から第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚について、図8を参照して説明する。図8において、縦軸を真空室60における軸方向(図5の上下方向)の位置とし、横軸を雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚とする。
【0047】
図8に示すように、真空室60に形成されるプラズマ70aが中央部の膨らんだ柱状の場合には、このプラズマ70aの膨らみの大きさとDLC被膜16cの膜厚とに相関があることが分かった。具体的には、プラズマ70aの膨らみが大きい位置ほど、DLC被膜16cが厚くなる関係となることが分かった。つまり、プラズマ70aの柱延在方向の中央が、最も膜厚が大きくなり、柱延在方向の端部に行くに従って膜厚が小さくなる。
【0048】
ここで、上述したように、真空室60に第一列から第四列の雄スプライン部16を配置している。つまり、第一列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y1からY2の範囲に位置している。第二列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y2からY3の範囲に位置している。第三列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y4からY5の範囲に位置している。第四列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y5からY6の範囲に位置している。そして、間座部材150は、Y3からY4の範囲、すなわち、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置している。
【0049】
従って、第一列と第二列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、T1からT2の範囲となる。また、第三列と第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚も、同様に、T1からT2の範囲となる。T1は、必要な最小の膜厚であるV1以上であり、T2は、必要な最大の膜厚であるV2以下である。そして、仮に雄スプライン部16を配置してDLC被膜16cを形成した場合にDLC被膜16cの膜厚が最も大きくなる範囲には、雄スプライン部16が位置していない。このDLC被膜16cの膜厚の最も大きい部分とその近傍の膜厚は、必要な最大の膜厚であるV2よりも大きくなっている。従って、同時にDLC被膜16cを形成する雄スプライン部16において、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを小さくできる。
【0050】
なお、本実施形態は、説明を容易にするために、Y1における膜厚とY6における膜厚とはともにT1となっているとともに、Y3における膜厚とY4における膜厚とはともにT2となっているが、それぞれ異なっていてもよく、通常、異なる値となる。Y1における膜厚とY6における膜厚とが必要な最小の膜厚であるV1以上であり、Y3における膜厚とY4における膜厚とが必要な最大の膜厚であるV2以下であればよい。つまり、第一列、第二列、第三列、および、第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、必要な最小の膜厚であるV1以上となっていて、かつ、必要な最大の膜厚であるV2以下となっている。
【0051】
また、支柱114に偶数本の雄スプライン部16を挿入しており、間座部材150の両側に同数の雄スプライン部16を配置している。従って、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを低減しつつ、プラズマ70aの両端側を有効利用できる。つまり、多くの雄スプライン部16を真空室60内に配置して、一度に多数の雄スプライン部16のDLC被膜16cを形成することができる。
【0052】
特に、第一シャフト10を第一ヨーク部11と雄スプライン部16とに分離した状態とし、雄スプライン部16のみを真空室60内に配置することで、多数の雄スプライン部16を真空室60に配置することができる。さらに、プラズマ70aの柱延在方向の中央部以外に配置された2つの雄スプライン部16を当接した状態で配置することにより、より多くの雄スプライン部16を確実に真空室60に配置することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、それぞれの支柱114に4本の雄スプライン部16を挿入したが、2本の雄スプライン部16を挿入するようにしてもよいし、6本以上の偶数本の雄スプライン部16を挿入するようにしてもよい。
【0054】
<第二実施形態>
第二実施形態におけるDLC被膜16cの形成方法について説明する。本実施形態においては、真空室60内に配置する被処理物は、図2に示す第一シャフト10である。つまり、第一ヨーク部11と雄スプライン部16とが一体的に形成されている第一シャフト10を、真空室60内に配置する。
【0055】
図9に示すように、一つの支柱114には、2本の第一シャフト10を挿入する。ここで、2本の第一シャフト10の挿入方法によって、第一群A1の2本の第一シャフト10と、第二群A2の2本の第一シャフト10と区別する。
【0056】
第一群A1としての2本の第一シャフト10は、それぞれの第一ヨーク部11を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるようにプラズマ70aの柱延在方向に並べて配置されている。具体的には、それぞれの第一ヨーク部11が相互に90度軸回りにずれた状態、すなわちユニバーサルジョイントの両ヨーク部が配置されるような状態にしている。つまり、第一群A1の2本の第一シャフト10の雄スプライン部16の軸方向間には、それぞれの第一ヨーク部11が配置されている。ただし、支柱114には、最初に間座部材200が挿入され、その後に2本の第一シャフト10が挿入されている。そして、それぞれの雄スプライン部16の軸方向間が、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置するように、間座部材200の長さが調整されている。そして、第一群A1は、周方向に一つおきの第二回転台112に配置されている。
【0057】
また、第二群A2としての2本の第一シャフト10は、それぞれの第一ヨーク部11を外方に向けてプラズマ70aの柱延在方向に並べて配置されている。そして、第二群A2の2本の第一シャフト10の軸方向間には、間座部材210が配置されている。この間座部材210の軸方向長さは、第一群A1の雄スプライン部16と第二群A2の雄スプライン部16とが、プラズマ70aの柱延在方向に同一位置に配置されるように設定されている。つまり、間座部材210の軸方向中央が、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置する。そして、第二群A2は、周方向に一つおきの第二回転台112に配置されている。つまり、図10に示すように、プラズマ70aの周囲に、第一群A1と第二群A2を周方向に交互に配置している。
【0058】
また、真空室60内において、それぞれの第一ヨーク部11は、表面処理を施されないようにマスク部材220により被覆されている。図9および図11においては、マスク部材220は、二点差線にて示す。
【0059】
次に、同一の支柱114に並べて配置された2本の第一シャフト10の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚について、図12を参照して説明する。図12において、縦軸を真空室60における軸方向(図9の上下方向)の位置とし、横軸を雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚とする。
【0060】
図12に示すように、第一列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y11からY12の範囲に位置している。第二列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y13からY14の範囲に位置している。そして、第一群A1の2本の第一シャフト10の雄スプライン部16の軸方向間に位置する第一ヨーク部11は、Y12からY13の範囲内、すなわち、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置している。また、第二群A2の2本の第一シャフト10の軸方向間に配置された間座部材210は、Y12からY13の範囲内に位置している。
【0061】
従って、2本の第一シャフト10の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、T11からT12の範囲となる。T11は、必要な最小の膜厚であるV11以上であり、T12は、必要な最大の膜厚であるV12以下である。そして、仮に雄スプライン部16を配置してDLC被膜16cを形成した場合にDLC被膜16cの膜厚が最も大きくなる範囲には、雄スプライン部16が位置していない。このDLC被膜16cの膜厚の最も大きい部分とその近傍の膜厚は、必要な最大の膜厚であるV12よりも大きくなっている。従って、同時にDLC被膜16cを形成する雄スプライン部16において、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを小さくできる。
【0062】
なお、本実施形態は、説明を容易にするために、Y11における膜厚とY14における膜厚とはともにT11となっているとともに、Y12における膜厚とY13における膜厚とはともにT12となっているが、それぞれ異なっていてもよく、通常、異なる値となる。Y11における膜厚とY14における膜厚とが必要な最小の膜厚であるV11以上であり、Y12における膜厚とY13における膜厚とが必要な最大の膜厚であるV12以下であればよい。つまり、第一群A1の第一列および第二列、並びに、第二群A2の第一列および第二列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、必要な最小の膜厚であるV11以上となっていて、かつ、必要な最大の膜厚であるV12以下となっている。
【0063】
ここで、第一ヨーク部11にはDLC被膜を形成する必要がないため、真空室60内において第一ヨーク部11の領域は無駄な領域となる。しかし、並べて配置される複数の第一シャフト10のそれぞれの第一ヨーク部11を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置することで、DLC被膜を形成する必要のない領域をできる限り狭くすることができる。さらに、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に、向かい合うそれぞれの第一ヨーク部11の重なり部分を配置することで、複数の雄スプライン部16の軸方向隙間を有効利用できる。このように、真空室60内を有効に利用できるため、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを低減しつつ、多くの第一シャフト10を真空室内に配置することができる。
【0064】
さらに、第一群A1の2本の第一シャフト10の周方向の隣りの2本の第一シャフト10を、第二群A2とすることで、第一ヨーク部11同士が周方向に当接しないようにすることができる。つまり、第一群A1と第二群A2とを周方向に交互に配置することで、第一群A1と第二群A2との周方向の間隔を狭くすることができる。つまり、真空室60内において周方向により多くの第一シャフト10を配置することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:プロペラシャフト、 10:第一シャフト、 11:第一ヨーク部、 16:雄スプライン部、 16a:基材、 16b:中間層被膜、 16c:被膜、 50:熱陰極PIGプラズマ装置、 60:真空室、 70:熱陰極PIG型プラズマ源、 70a:プラズマ、 80:プラズマガン、 83:熱陰極、 84:陽極、 91:反射電極、 92:第一コイル、 93:第二コイル、 120:材料ガス導入部、 A1:第一群の2本の第一シャフト、 A2:第二群の2本の第一シャフト
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のプロペラシャフトなどにおいて、軸方向に摺動可能とするために2つのシャフトをスプライン嵌合させている。そして、スプライン部には、摺動性および耐摩耗性が要求される。そこで、スプライン部には、DLC(Diamond Like Carbon)被膜を形成することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、DLC被膜の形成方法として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、イオン蒸着法などが知られている。CVD法の中には、熱陰極PIG(Penning Ionization Gauge)型プラズマ源を用いて行う熱陰極PIGプラズマCVD法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-122663号公報
【特許文献2】特開2006-169589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、装置内に複数のスプラインシャフトを配置し、複数のスプラインシャフトの雄スプライン部に対して同時にDLC被膜を形成する。そして、複数の雄スプライン部の性能の個体差を低減するために、それぞれの雄スプライン部に形成されるDLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱陰極PIGプラズマCVD法によって雄スプライン部にDLC被膜を形成する場合に、DLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることができるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、熱陰極PIGプラズマCVD法とDLC被膜の膜厚の関係を見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
(請求項1)本発明に係るスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法は、熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法であって、前記熱陰極PIGプラズマCVD装置は、前記スプラインシャフトを配置する真空室と、プラズマガン、真空室内に配置された反射電極、前記プラズマガンを囲むように配置された第一コイル、および、前記第一コイルに対向し前記反射電極側に配置された第二コイルを含んで構成され、前記真空室に中央部が膨らんだ柱状のプラズマを形成させる熱陰極PIG型プラズマ源と、前記真空室内へ前記DLC被膜の材料となる材料ガスを導入する材料ガス導入部と、を備え、前記真空室内において、前記柱状のプラズマの周囲に複数の前記スプラインシャフトを配置すると共に、前記柱延在方向に複数の前記スプラインシャフトを同軸状に並べて配置し、同軸状に並べて配置された複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記雄スプライン部の間に軸方向隙間が形成されるように配置され、複数の前記雄スプライン部の軸方向隙間は、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置する。
【0009】
(請求項2)また、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、偶数本としてもよい。
(請求項3)また、前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、他部材と連結可能なU字形状に形成されると共に前記雄スプライン部と別体にて形成された後に前記雄スプライン部に一体的に接合されるヨーク部とを備え、前記真空室内には、前記スプラインシャフトのうち前記雄スプライン部のみを配置し、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記雄スプライン部は、4以上であり、前記柱延在方向の中央部寄りに配置された2つの前記雄スプライン部の間には、前記軸方向隙間が形成され、前記柱延在方向の中央部以外に配置された2つの前記雄スプライン部は、当接した状態で配置されるようにしてもよい。
【0010】
(請求項4)また、前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、前記雄スプライン部に一体的に形成され他部材と連結するU字形状のヨーク部とを備え、前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置し、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するそれぞれの前記雄スプライン部の軸方向隙間には、それぞれの前記ヨーク部が配置されるようにしてもよい。
【0011】
(請求項5)また、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第一群とし、それぞれの前記ヨーク部を外方に向けて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第二群とし、柱状の前記プラズマの周囲に、前記第一群と前記第二群を周方向に交互に配置するようにしてもよい。
(請求項6)また、前記第一群の前記雄スプライン部と前記第二群の前記雄スプライン部とは、前記柱延在方向に同一位置に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)本発明者らは、真空室に形成されるプラズマが中央部の膨らんだ柱状であって、このプラズマの膨らみの大きさとDLC被膜の膜厚とに相関があることを発見した。具体的には、プラズマの膨らみが大きい位置ほど、DLC被膜が厚くなる関係となることが分かった。そこで、本発明は、柱延在方向に並べて配置される複数の雄スプライン部の軸方向隙間は、プラズマの柱延在方向の中央部に位置するようにしている。つまり、プラズマの柱延在方向の中央部には、雄スプライン部が配置されない。換言すると、プラズマの膨らみが最も大きな中央部を、雄スプライン部のDLC被膜処理に用いないようにしている。そして、プラズマの中央部以外の部位を用いて、雄スプライン部のDLC被膜処理を行っている。その結果、雄スプライン部のDLC被膜の膜厚のばらつきを小さくすることができる。
【0013】
(請求項2)プラズマの中央部の膨らみが最も大きく、プラズマの両端側ほど膨らみが小さくなっていく。そして、本発明のように、並べて配置される複数のスプラインシャフトを偶数本とすることで、DLC被膜の膜厚のばらつきを低減しつつ、プラズマの両端側を有効利用できる。つまり、多くのスプラインシャフトを真空室内に配置して、一度に多数のスプラインシャフトの雄スプライン部のDLC被膜を形成することができる。
(請求項3)プラズマの柱延在方向の中央部以外に配置された2つのスプラインシャフトの雄スプライン部を当接した状態で配置することで、確実に、多くのスプラインシャフトの雄スプライン部を真空室内に配置することができる。
【0014】
(請求項4)スプラインシャフトが雄スプライン部とそれに一体的に形成されるヨーク部とを備える場合に、ヨーク部にはDLC被膜を形成する必要がないため、真空室内においてヨーク部の領域は無駄な領域となる。しかし、並べて配置される複数のスプラインシャフトのそれぞれのヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置することで、DLC被膜を形成する必要のない領域をできる限り狭くすることができる。さらに、プラズマの柱延在方向の中央部に、向かい合うそれぞれのヨーク部の重なり部分を配置することで、複数の雄スプライン部の軸方向隙間を有効利用できる。このように、真空室内を有効に利用できるため、DLC被膜の膜厚のばらつきを低減しつつ、多くのスプラインシャフトを真空室内に配置することができる。
【0015】
(請求項5)真空室内における周方向に配置する複数のスプラインシャフト全てを、それぞれのヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置した場合、周方向の隣りにヨーク部同士が当接しないようにするために、周方向の間隔を大きくとる必要がある。しかし、本発明のように、ヨーク部を向かい合わせて配置される第一群と、ヨーク部を外方に向けて配置される第二群とを周方向に交互に配置することで、周方向の間隔を狭くすることができる。つまり、真空室内において周方向により多くのスプラインシャフトを配置することができる。
【0016】
(請求項6)第一群と第二群とを周方向に交互に配置する場合に、それぞれの雄スプライン部をプラズマの柱延在方向に同一位置に配置することで、第一群の雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚と、第二群の雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚とのばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のスプラインシャフトとしての第一シャフトを含むプロペラシャフトの全体構成であり、一部を断面図で表す図である。
【図2】図1のプロペラシャフトを構成する第一シャフトを示す図である。
【図3】摩擦圧接により一体化される前における図2の第一シャフトを形成する二部材を示す図である。
【図4】図3に示す第一シャフトの雄スプライン部の表面側の断面図である。
【図5】第一実施形態:図3に示す雄スプライン部に表面処理を行うための熱陰極PIGプラズマ装置を示す図である。
【図6】図5のA−A断面図であり、熱陰極PIGプラズマ装置の径方向断面図である。
【図7】図5に示す装置を用いて、図3に示す雄スプライン部の表面処理方法を示すフローチャートである。
【図8】図5に示す装置における軸方向位置と雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図9】第二実施形態:図2に示す一体的な第一シャフトを収容して雄スプライン部に表面処理を行うための熱陰極PIGプラズマ装置を示す図である。
【図10】図9のB−B断面図であり、熱陰極PIGプラズマ装置の径方向断面図である。
【図11】図9,10に示す装置の真空室内に配置された複数の第一シャフトを周方向に展開した状態の配置図である。
【図12】図9に示す装置における軸方向位置と雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施形態>
(プロペラシャフトの構成)
本発明のスプラインシャフトとして、車両のプロペラシャフトの第一シャフトを例に挙げて説明する。プロペラシャフトの構成について、図1〜図4を参照して説明する。プロペラシャフト1は、エンジンからディファレンシャル装置へ動力を伝達するためのシャフトである。このプロペラシャフト1には、駆動方式によって異なるが、フロントプロペラシャフトとリアプロペラシャフトがある。これらは、何れも、エンジンとディファレンシャル装置との間を連結しており、車両前後方向に延びるように配置されている。
【0019】
図1に示すように、プロペラシャフト1は、第一シャフト10と、第一シャフト10に対して軸方向に摺動可能に配置された第二シャフト20とを備えている。第一シャフト10は、例えば、エンジン側の部材30に連結されており、第二シャフト20は、ディファレンシャル装置側の部材40に連結されている。
【0020】
第一シャフト10は、図1および図2に示すように、第一ヨーク部11と、雄スプライン部16とを備えている。第一ヨーク部11は、他部材30に対して角度を付与した状態で連結されるユニバーサルジョイントの一部を構成する。この第一ヨーク部11は、先端側(図2の左側)に開口するU字形状に形成されている。雄スプライン部16は、筒状に形成されており、第一ヨーク部11のU字形状の底部に一体的に接合され、第一ヨーク部11と同軸状に配置されている。
【0021】
第二シャフト20は、第二ヨーク部21と、雌スプライン部22と、中間筒部23とにより構成され、それぞれ別体に形成された後に摩擦圧接によって一体的に接合されている。第二シャフト20の第二ヨーク部21は、他部材40に対して角度を付与した状態で連結されるユニバーサルジョイントの一部を構成する。この第二ヨーク部21は、先端側(図1の右側)に開口するU字形状に形成されている。第二シャフト20の雌スプライン部22は、第一シャフト10の雄スプライン部16にスプライン嵌合し、相対的に軸方向に摺動可能である。中間筒部23は、第二ヨーク部21および雌スプライン部22に同軸状に、一体的に接合されている。
【0022】
また、本実施形態においては、図2および図3に示すように、第一シャフト10は、第一ヨーク部11と雄スプライン部16とを別体にて形成した後に、摩擦圧接によって両部材を一体的に接合することにより形成されている。そして、第一シャフト10の雄スプライン部16には、摺動性および耐摩耗性を向上するために、表面処理が施されている。図4に示すように、雄スプライン部16は、鉄を主成分とする基材16aの表面側に、クロムを主成分とする中間層被膜16bを形成し、その表面側にDLC被膜16cを形成している。中間層被膜16bは、PVD法、特にスパッタリング法によって形成され、DLC被膜16cは、熱陰極PIGプラズマCVD法によって形成される。この表面側のDLC被膜16cは、Siの含有量が表面に近づくに従って低くなる傾斜組成を有する。
【0023】
(熱陰極PIGプラズマ装置の構成)
次に、第一シャフト10の雄スプライン部16の表面処理を施す熱陰極PIGプラズマ装置50について、図5および図6を参照して説明する。熱陰極PIGプラズマ装置は、熱陰極PIGプラズマを発生させた状態で、雄スプライン部16の基材16aの表面側に、PVD法によって中間層被膜16bを形成すると共に、CVD法によってDLC被膜16cを形成する装置である。
【0024】
図5および図6に示すように、当該装置50は、真空室60と、熱陰極PIG型プラズマ源70と、支持装置110と、材料ガス導入部120と、スパッタ源130と、ヒータ140とを備えて構成される。
【0025】
真空室60は、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばステンレスにより円筒形状に形成され、壁部は接地電位(GND)に接続されている。真空室60には、中心軸から離れた位置、図5においては周壁面に、排気口61が形成されている。また、真空室60の中心軸方向一方の端壁面(図5の上端壁面)には、プラズマを供給する開口部62が形成されている。この真空室60には、表面処理を施す対象物である雄スプライン部16が複数配置されている。
【0026】
熱陰極PIG型プラズマ源70は、真空室60に中央部が膨らんだ柱状のプラズマ70aを形成させる。この熱陰極PIG型プラズマ源70は、プラズマガン80、反射電極91、第一コイル92、第二コイル93を備えて構成される。
【0027】
プラズマガン80は、真空室60のうち開口部62の外部に配置されている。プラズマガン80は、筐体81と、絶縁体82と、熱陰極83と、陽極84と、電子注入電極85と、ガスノズル86とにより構成される。筐体81は、例えばステンレスにより円筒形状に形成され、真空室60の開口部62を被覆するように設けられている。この筐体81と真空室60の端壁面との間には、フッ素樹脂やアルミナ等の絶縁体82を介在させている。
【0028】
熱陰極83、陽極84および電子注入電極85は、筐体81の内部に配位置されている。熱陰極83は、例えば、タングステン製フィラメントで構成されており、筐体81のうち開口部62から最も遠い位置(図5の上端側)に配置されている。熱陰極83は、直流電源101に接続されており、直流電源101から直流電力(カソード電力とも称する)を供給されることにより加熱される。そして、熱陰極83は、熱電子が放出される温度に加熱されることによって、熱電子を放出する。
【0029】
陽極84は、モリブデン製の扁平な環状体に形成され、中空部を開口部62に対向するように、熱陰極83と開口部62との間に配置されている。陽極84には、アノード電源102によって熱陰極83に対して正の電圧が印加される。電子注入電極85は、陽極84と同様に形成され、電子注入電源103を介して熱陰極83に接続されるとともに、接地されている。また、熱陰極83、陽極84および電子注入電極85は、プラズマガン80の筐体81に対して浮遊している。
【0030】
ガスノズル86は、外部から筐体81の内部に、放電用ガス、例えばアルゴンガスおよび水素ガスを導入する。つまり、熱陰極83、陽極84および電子注入電極85に通電して、ガスノズル86から放電用ガスを導入することによって、筐体81内にプラズマが発生する。
【0031】
反射電極91は、スチール製またはステンレス製からなり、プラズマガン80に対向するように、真空室60内に配置されている。この反射電極91は、プラズマガン80から真空室60内に供給されるプラズマ70aの粒子をプラズマガン80側へ向けて反射する。この反射電極91は、絶縁電位とされている。
【0032】
第一コイル92は、プラズマガン80の筐体81の周囲を囲むように、かつ、真空室60の一方の端壁面(図5の上側面)の外面に対向するように配置される。この第一コイル92は、直流電流を供給されることによって、プラズマガン80の筐体81内の放電を助勢する磁場を発生する。第二コイル93は、第一コイル92に対向し、真空室60の他方の端壁面(図5の下側面)の外面に対向するように配置される。つまり、第二コイル93は、反射電極91側に配置される。この第二コイル93は、直流電流を供給されることによって、真空室60内にプラズマ70aを柱状(ビーム状)に閉じ込めるための磁場を発生する。つまり、プラズマ70aは、開口部62と反射電極91を両端とする柱状であって、柱延在方向の中央部が膨らんだ形状となる。
【0033】
支持装置110は、真空室60内の他方の端壁面側(図5の下側)に設けられており、プラズマ70aの周囲に複数の雄スプライン部16を支持することができる。図5および図6に示すように、支持装置110は、第一回転台111、第二回転台112、モータ113、支柱114、および、パルス電源装置115を備える。第一回転台111は、円盤状に形成され、真空室60の壁面に対して回転可能に設けられている。この第一回転台111は、モータ113によって回転駆動される。第二回転台112は、第一回転台111上に周方向に複数設けられ、第一回転台111に対して回転可能に設けられている。第二回転台112は、歯車機構によって第一回転台111の回転に伴って回転する。第二回転台112上には、支柱114が固定されている。この支柱114は、複数の雄スプライン部16を挿通することができる。つまり、モータ113を駆動することによって、雄スプライン部16が第一回転台111の中心回りに公転しつつ、支柱114の中心回りに自転する。
【0034】
さらに、真空室60の外部には、バイアス電圧としての非対称パルス電圧を第一回転台111、第二回転台112、支柱114を介して、雄スプライン部16に印加するパルス電源装置115が設けられている。
【0035】
材料ガス導入部120は、周壁面に設けられ、外部から真空室60に、雄スプライン部16の表面にDLC被膜を形成するための材料ガスとしてのTMS(テトラメチルシラン)ガスおよびアセチレンガスを導入する。スパッタ源130は、真空室60内のうち外周壁の近傍に配置され、当該スパッタ源130のターゲットはクロムを主成分とする材料により形成されている。ヒータ140は、真空室60内のうち外周壁の近傍に配置され、被処理物としての雄スプライン部16を加熱するために用いられる。
【0036】
(真空室内における雄スプライン部の配置)
次に、真空室60内において、複数の雄スプライン部16の配置について、図5および図6を参照して説明する。それぞれの支柱114に、4つの雄スプライン部16を挿通させる。つまり、真空室60内において、プラズマ70aの周囲に複数の雄スプライン部16を配置すると共に、プラズマ70aの柱延在方向に複数列の雄スプライン部を同軸状に並べて配置している。
【0037】
具体的には、以下のようにして、真空室60内に複数の雄スプライン部16を配置する。まず、それぞれの支柱114に、第一列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合側の面から挿入する。続いて、支柱114に、第二列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合とは反対側の面から挿入する。このとき、第一列の雄スプライン部16と第二列の雄スプライン部16とは、第一ヨーク部11とは反対側の面同士が当接している。
【0038】
第二列の雄スプライン部16の次には、円筒形状の間座部材150を支柱114に挿入する。次に、支柱114に、第三列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合側の面から挿入する。続いて、支柱114に、第四列の雄スプライン部16を、雄スプライン部16における第一ヨーク部11との接合とは反対側の面から挿入する。このとき、第三列の雄スプライン部16と第四列の雄スプライン部16とは、第一ヨーク部11とは反対側の面同士が当接している。
【0039】
従って、4列の雄スプライン部16が同軸状に並べて配置されており、中央寄りの第二列と第三列の雄スプライン部16の間に軸方向隙間が形成されるように配置されている。そして、間座部材150を挟んで、二列ずつの雄スプライン部16が配置されているため、間座部材150が配置されている雄スプライン部16の軸方向隙間は、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置することになる。つまり、プラズマ70aの中央部の最も膨らんでいる部分の外周側には、間座部材150が配置されており、雄スプライン部16が配置されていない。
【0040】
(雄スプライン部の表面処理方法)
次に、雄スプライン部16の表面処理方法について図7のフローチャートを参照して説明する。まず、モータ113を駆動すると共に、ヒータ140に通電して、被処理物としての雄スプライン部16を加熱する。これによって、雄スプライン部16の脱ガス処理を行う(S1)。
【0041】
続いて、ヒータ140への通電を停止し、放電洗浄処理を行う(S2)。放電洗浄処理は、プラズマガン80の筐体81に、ガスノズル86によりアルゴンガスおよび水素ガスを導入する。さらに、熱陰極83、陽極84、電子注入電極85、第一コイル92および第二コイル93に通電する。そうすると、熱陰極83が加熱されて熱電子を放出し、熱電子は陽極84に向かって加速される。加速された熱電子は、アルゴンガスの粒子および水素ガスの粒子に衝突して、当該衝突によってアルゴンガスの粒子および水素ガスの粒子が電離して、筐体81内にてプラズマが発生する。
【0042】
筐体81にて発生したプラズマは、開口部62から真空室60に供給され、反射電極91に向かって移動する。しかし、反射電極91は絶縁電位とされているので、プラズマ内の電子は、反射電極91にて反射してプラズマガン80に向かって移動する。ところが、プラズマガン80の筐体81も絶縁電位とされているので、真空室60内にて、プラズマ内の電子は、プラズマガン80と反射電極91との間で電界振動する。さらに、第一コイル92および第二コイル93によって、プラズマ70aを柱状に閉じ込めるように磁場が作用しているため、中央部が膨らんだ柱状のプラズマ70aが、真空室60内に発生する。
【0043】
さらに、パルス電源装置115により、雄スプライン部16にバイアス電圧を印加する。従って、雄スプライン部16の表面に、プラズマ70aのアルゴンイオンおよび水素イオンが衝突する。これによって、雄スプライン部16の表面が洗浄される。洗浄が終了すると、水素ガスの導入が停止される。
【0044】
続いて、PVD法のうちスパッタリング法により、中間層被膜16bを形成する(S3)。スパッタ源130のターゲットに通電する。そうすると、ターゲットの表面にアルゴンイオンが衝突することによって、ターゲットからクロム粒子が叩き出される。このクロム粒子が雄スプライン部16の表面に衝突して、堆積する。このようにして、雄スプライン部16の基材16aの表面に、クロムを主成分とする中間層被膜16bが形成される。そして、スパッタ源130のターゲットへの通電が停止される。
【0045】
続いて、熱陰極PIGプラズマCVD法により、DLC被膜16cを形成する(S4)。真空室60内に、TMSガスおよびアセチレンガスを、材料ガス導入部120により導入する。そうすると、真空室60において、プラズマ70aの作用によって、TMSガスおよびアセチレンガスが電離され、プラズマ化される。そして、プラズマ化されたTMSガスおよびアセチレンガスは、雄スプライン部16の表面において化学反応を起こし、Si含有のDLC被膜16cが形成される。
【0046】
(雄スプライン部におけるDLC被膜の膜厚)
次に、同一の支柱114に並べて配置された第一列から第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚について、図8を参照して説明する。図8において、縦軸を真空室60における軸方向(図5の上下方向)の位置とし、横軸を雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚とする。
【0047】
図8に示すように、真空室60に形成されるプラズマ70aが中央部の膨らんだ柱状の場合には、このプラズマ70aの膨らみの大きさとDLC被膜16cの膜厚とに相関があることが分かった。具体的には、プラズマ70aの膨らみが大きい位置ほど、DLC被膜16cが厚くなる関係となることが分かった。つまり、プラズマ70aの柱延在方向の中央が、最も膜厚が大きくなり、柱延在方向の端部に行くに従って膜厚が小さくなる。
【0048】
ここで、上述したように、真空室60に第一列から第四列の雄スプライン部16を配置している。つまり、第一列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y1からY2の範囲に位置している。第二列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y2からY3の範囲に位置している。第三列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y4からY5の範囲に位置している。第四列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y5からY6の範囲に位置している。そして、間座部材150は、Y3からY4の範囲、すなわち、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置している。
【0049】
従って、第一列と第二列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、T1からT2の範囲となる。また、第三列と第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚も、同様に、T1からT2の範囲となる。T1は、必要な最小の膜厚であるV1以上であり、T2は、必要な最大の膜厚であるV2以下である。そして、仮に雄スプライン部16を配置してDLC被膜16cを形成した場合にDLC被膜16cの膜厚が最も大きくなる範囲には、雄スプライン部16が位置していない。このDLC被膜16cの膜厚の最も大きい部分とその近傍の膜厚は、必要な最大の膜厚であるV2よりも大きくなっている。従って、同時にDLC被膜16cを形成する雄スプライン部16において、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを小さくできる。
【0050】
なお、本実施形態は、説明を容易にするために、Y1における膜厚とY6における膜厚とはともにT1となっているとともに、Y3における膜厚とY4における膜厚とはともにT2となっているが、それぞれ異なっていてもよく、通常、異なる値となる。Y1における膜厚とY6における膜厚とが必要な最小の膜厚であるV1以上であり、Y3における膜厚とY4における膜厚とが必要な最大の膜厚であるV2以下であればよい。つまり、第一列、第二列、第三列、および、第四列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、必要な最小の膜厚であるV1以上となっていて、かつ、必要な最大の膜厚であるV2以下となっている。
【0051】
また、支柱114に偶数本の雄スプライン部16を挿入しており、間座部材150の両側に同数の雄スプライン部16を配置している。従って、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを低減しつつ、プラズマ70aの両端側を有効利用できる。つまり、多くの雄スプライン部16を真空室60内に配置して、一度に多数の雄スプライン部16のDLC被膜16cを形成することができる。
【0052】
特に、第一シャフト10を第一ヨーク部11と雄スプライン部16とに分離した状態とし、雄スプライン部16のみを真空室60内に配置することで、多数の雄スプライン部16を真空室60に配置することができる。さらに、プラズマ70aの柱延在方向の中央部以外に配置された2つの雄スプライン部16を当接した状態で配置することにより、より多くの雄スプライン部16を確実に真空室60に配置することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、それぞれの支柱114に4本の雄スプライン部16を挿入したが、2本の雄スプライン部16を挿入するようにしてもよいし、6本以上の偶数本の雄スプライン部16を挿入するようにしてもよい。
【0054】
<第二実施形態>
第二実施形態におけるDLC被膜16cの形成方法について説明する。本実施形態においては、真空室60内に配置する被処理物は、図2に示す第一シャフト10である。つまり、第一ヨーク部11と雄スプライン部16とが一体的に形成されている第一シャフト10を、真空室60内に配置する。
【0055】
図9に示すように、一つの支柱114には、2本の第一シャフト10を挿入する。ここで、2本の第一シャフト10の挿入方法によって、第一群A1の2本の第一シャフト10と、第二群A2の2本の第一シャフト10と区別する。
【0056】
第一群A1としての2本の第一シャフト10は、それぞれの第一ヨーク部11を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるようにプラズマ70aの柱延在方向に並べて配置されている。具体的には、それぞれの第一ヨーク部11が相互に90度軸回りにずれた状態、すなわちユニバーサルジョイントの両ヨーク部が配置されるような状態にしている。つまり、第一群A1の2本の第一シャフト10の雄スプライン部16の軸方向間には、それぞれの第一ヨーク部11が配置されている。ただし、支柱114には、最初に間座部材200が挿入され、その後に2本の第一シャフト10が挿入されている。そして、それぞれの雄スプライン部16の軸方向間が、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置するように、間座部材200の長さが調整されている。そして、第一群A1は、周方向に一つおきの第二回転台112に配置されている。
【0057】
また、第二群A2としての2本の第一シャフト10は、それぞれの第一ヨーク部11を外方に向けてプラズマ70aの柱延在方向に並べて配置されている。そして、第二群A2の2本の第一シャフト10の軸方向間には、間座部材210が配置されている。この間座部材210の軸方向長さは、第一群A1の雄スプライン部16と第二群A2の雄スプライン部16とが、プラズマ70aの柱延在方向に同一位置に配置されるように設定されている。つまり、間座部材210の軸方向中央が、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置する。そして、第二群A2は、周方向に一つおきの第二回転台112に配置されている。つまり、図10に示すように、プラズマ70aの周囲に、第一群A1と第二群A2を周方向に交互に配置している。
【0058】
また、真空室60内において、それぞれの第一ヨーク部11は、表面処理を施されないようにマスク部材220により被覆されている。図9および図11においては、マスク部材220は、二点差線にて示す。
【0059】
次に、同一の支柱114に並べて配置された2本の第一シャフト10の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚について、図12を参照して説明する。図12において、縦軸を真空室60における軸方向(図9の上下方向)の位置とし、横軸を雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚とする。
【0060】
図12に示すように、第一列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y11からY12の範囲に位置している。第二列の雄スプライン部16のうち雄スプラインが形成されている範囲は、Y13からY14の範囲に位置している。そして、第一群A1の2本の第一シャフト10の雄スプライン部16の軸方向間に位置する第一ヨーク部11は、Y12からY13の範囲内、すなわち、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に位置している。また、第二群A2の2本の第一シャフト10の軸方向間に配置された間座部材210は、Y12からY13の範囲内に位置している。
【0061】
従って、2本の第一シャフト10の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、T11からT12の範囲となる。T11は、必要な最小の膜厚であるV11以上であり、T12は、必要な最大の膜厚であるV12以下である。そして、仮に雄スプライン部16を配置してDLC被膜16cを形成した場合にDLC被膜16cの膜厚が最も大きくなる範囲には、雄スプライン部16が位置していない。このDLC被膜16cの膜厚の最も大きい部分とその近傍の膜厚は、必要な最大の膜厚であるV12よりも大きくなっている。従って、同時にDLC被膜16cを形成する雄スプライン部16において、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを小さくできる。
【0062】
なお、本実施形態は、説明を容易にするために、Y11における膜厚とY14における膜厚とはともにT11となっているとともに、Y12における膜厚とY13における膜厚とはともにT12となっているが、それぞれ異なっていてもよく、通常、異なる値となる。Y11における膜厚とY14における膜厚とが必要な最小の膜厚であるV11以上であり、Y12における膜厚とY13における膜厚とが必要な最大の膜厚であるV12以下であればよい。つまり、第一群A1の第一列および第二列、並びに、第二群A2の第一列および第二列の雄スプライン部16のDLC被膜16cの膜厚は、必要な最小の膜厚であるV11以上となっていて、かつ、必要な最大の膜厚であるV12以下となっている。
【0063】
ここで、第一ヨーク部11にはDLC被膜を形成する必要がないため、真空室60内において第一ヨーク部11の領域は無駄な領域となる。しかし、並べて配置される複数の第一シャフト10のそれぞれの第一ヨーク部11を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置することで、DLC被膜を形成する必要のない領域をできる限り狭くすることができる。さらに、プラズマ70aの柱延在方向の中央部に、向かい合うそれぞれの第一ヨーク部11の重なり部分を配置することで、複数の雄スプライン部16の軸方向隙間を有効利用できる。このように、真空室60内を有効に利用できるため、DLC被膜16cの膜厚のばらつきを低減しつつ、多くの第一シャフト10を真空室内に配置することができる。
【0064】
さらに、第一群A1の2本の第一シャフト10の周方向の隣りの2本の第一シャフト10を、第二群A2とすることで、第一ヨーク部11同士が周方向に当接しないようにすることができる。つまり、第一群A1と第二群A2とを周方向に交互に配置することで、第一群A1と第二群A2との周方向の間隔を狭くすることができる。つまり、真空室60内において周方向により多くの第一シャフト10を配置することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:プロペラシャフト、 10:第一シャフト、 11:第一ヨーク部、 16:雄スプライン部、 16a:基材、 16b:中間層被膜、 16c:被膜、 50:熱陰極PIGプラズマ装置、 60:真空室、 70:熱陰極PIG型プラズマ源、 70a:プラズマ、 80:プラズマガン、 83:熱陰極、 84:陽極、 91:反射電極、 92:第一コイル、 93:第二コイル、 120:材料ガス導入部、 A1:第一群の2本の第一シャフト、 A2:第二群の2本の第一シャフト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法であって、
前記熱陰極PIGプラズマCVD装置は、
前記スプラインシャフトを配置する真空室と、
プラズマガン、真空室内に配置された反射電極、前記プラズマガンを囲むように配置された第一コイル、および、前記第一コイルに対向し前記反射電極側に配置された第二コイルを含んで構成され、前記真空室に中央部が膨らんだ柱状のプラズマを形成させる熱陰極PIG型プラズマ源と、
前記真空室内へ前記DLC被膜の材料となる材料ガスを導入する材料ガス導入部と、
を備え、
前記真空室内において、前記柱状のプラズマの周囲に複数の前記スプラインシャフトを配置すると共に、前記柱延在方向に複数の前記スプラインシャフトを同軸状に並べて配置し、
同軸状に並べて配置された複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記雄スプライン部の間に軸方向隙間が形成されるように配置され、
複数の前記雄スプライン部の軸方向隙間は、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、偶数本であるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、他部材と連結可能なU字形状に形成されると共に前記雄スプライン部と別体にて形成された後に前記雄スプライン部に一体的に接合されるヨーク部とを備え、
前記真空室内には、前記スプラインシャフトのうち前記雄スプライン部のみを配置し、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記雄スプライン部は、4以上であり、
前記柱延在方向の中央部寄りに配置された2つの前記雄スプライン部の間には、前記軸方向隙間が形成され、
前記柱延在方向の中央部以外に配置された2つの前記雄スプライン部は、当接した状態で配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、前記雄スプライン部に一体的に形成され他部材と連結するU字形状のヨーク部とを備え、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置し、
前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するそれぞれの前記雄スプライン部の軸方向隙間には、それぞれの前記ヨーク部が配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4において、
それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第一群とし、
それぞれの前記ヨーク部を外方に向けて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第二群とし、
柱状の前記プラズマの周囲に、前記第一群と前記第二群を周方向に交互に配置するスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第一群の前記雄スプライン部と前記第二群の前記雄スプライン部とは、前記柱延在方向に同一位置に配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項1】
熱陰極PIGプラズマCVD装置によってスプラインシャフトの雄スプライン部にDLC被膜を形成する方法であって、
前記熱陰極PIGプラズマCVD装置は、
前記スプラインシャフトを配置する真空室と、
プラズマガン、真空室内に配置された反射電極、前記プラズマガンを囲むように配置された第一コイル、および、前記第一コイルに対向し前記反射電極側に配置された第二コイルを含んで構成され、前記真空室に中央部が膨らんだ柱状のプラズマを形成させる熱陰極PIG型プラズマ源と、
前記真空室内へ前記DLC被膜の材料となる材料ガスを導入する材料ガス導入部と、
を備え、
前記真空室内において、前記柱状のプラズマの周囲に複数の前記スプラインシャフトを配置すると共に、前記柱延在方向に複数の前記スプラインシャフトを同軸状に並べて配置し、
同軸状に並べて配置された複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記雄スプライン部の間に軸方向隙間が形成されるように配置され、
複数の前記雄スプライン部の軸方向隙間は、前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、偶数本であるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、他部材と連結可能なU字形状に形成されると共に前記雄スプライン部と別体にて形成された後に前記雄スプライン部に一体的に接合されるヨーク部とを備え、
前記真空室内には、前記スプラインシャフトのうち前記雄スプライン部のみを配置し、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記雄スプライン部は、4以上であり、
前記柱延在方向の中央部寄りに配置された2つの前記雄スプライン部の間には、前記軸方向隙間が形成され、
前記柱延在方向の中央部以外に配置された2つの前記雄スプライン部は、当接した状態で配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記スプラインシャフトは、前記雄スプライン部と、前記雄スプライン部に一体的に形成され他部材と連結するU字形状のヨーク部とを備え、
前記真空室内にて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトは、それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて軸方向に重なり合わせるように配置し、
前記プラズマの前記柱延在方向の中央部に位置するそれぞれの前記雄スプライン部の軸方向隙間には、それぞれの前記ヨーク部が配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4において、
それぞれの前記ヨーク部を向かい合わせて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第一群とし、
それぞれの前記ヨーク部を外方に向けて前記柱延在方向に並べて配置される複数の前記スプラインシャフトを第二群とし、
柱状の前記プラズマの周囲に、前記第一群と前記第二群を周方向に交互に配置するスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第一群の前記雄スプライン部と前記第二群の前記雄スプライン部とは、前記柱延在方向に同一位置に配置されるスプラインシャフトのDLC被膜の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−44041(P2013−44041A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184372(P2011−184372)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(591139574)株式会社CNK (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(591139574)株式会社CNK (25)
【Fターム(参考)】
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