説明

スポット溶接部の超音波検査方法、超音波検査装置、検査プローブの角度調整方法および位置調整方法。

【課題】1つの検査プローブを用いるだけでナゲット径を計測できるようにする。
【解決手段】超音波トランスデューサとしての振動子群10が、それぞれ超音波を個々独立して発振可能および受信可能とされた複数の振動子11〜14を同心円状に配設して構成される。複数の振動子11〜14から時間をずらして順次スポット溶接部に向けて超音波を発振させて、発振された超音波の反射エコーの受信状態に基づいて、スポット溶接部におけるナゲット33の径が推測される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接部の超音波検査方法、超音波検査装置、検査プローブの角度調整方法および位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車ボディのインナパネルとアウタパネルとのフランジ部同士を接合する場合等、金属板同士を重ねた状態でスポット溶接することが多く行われている。スポット溶接においては、重なり合う2枚の金属板の境界部分に、ナゲットと呼ばれる接合部位が構成され、接合強度は実質的にナゲットの大きさつまりナゲット径によって決定されることになる。したがって、ナゲット径を計測(検査)することによって、スポット溶接の良否が判定できることになる。
【0003】
特許文献1には、超音波を利用してスポット溶接が適切に行われているか否かを判定する技術が開示されており、その図11の例では、超音波を発振すると共にその反射エコーを受信するための複数の振動子を、互いに同士円状に配設したものが開示されている。この特許文献1における図11に開示のものは、スポット溶接部の径に応じて、発振すべき振動子の数を選択するもの、つまり複数の振動子を組み合わせせて得られる実質的に1つの振動子の最大径を選択しようとするものであって、ナゲット径そのものを計測するものとはなっていない。すなわち、従来は、スポット溶接部の径の大きさに応じた径を有する検査プローブを選択的に用いていたものを、1つの検査プローブでもって異なる径のスポット溶接部に対応できるようにしたもので、ナゲット径を計測するために振動子を同士円状に配設するということまでを意図したものとはなっていない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−304774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スポット溶接部の外観は同一であっても、接合強度に大きな影響を与えるナゲット径はかなり大きく相違するのが実情である。このため、品質管理の観点から、例えば抜きとり検査や全数検査による品質向上の簡単から、ナゲット径を非破壊検査によって知ることが強く望まれることになる。
【0006】
超音波をスポット溶接部に発振させた場合、ナゲットが存在する部分と、ナゲットが存在しない部分とでは、超音波の反射エコーが相違するということが知られている。このような反射エコーの相違を利用してナゲット径を計測することが考えられるが、この場合は、径の異なる(超音波の発振面積の異なる)検査プローブを多数用意して、検査プローブを順次交換しつつ、最終的にナゲット径に応じた径を有する検査プローブを選択することにより、最終選択された検査プローブの径をナゲット径として決定することになる。しかしながら、この場合は、互いに径の異なる検査プローブを多数用意しなければならず、また検査プローブを何回も交換する必要があることから検査終了までに多大の時間を要することになってしまう。
【0007】
また、超音波を発振する検査プローブは、スポット溶接部に対する傾斜角度のずれ(角度のずれ)やナゲット中心からの位置ずれに応じて、反射エコーの状態がかなり大きく変化するものであり、したがって検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度設定および位置設定を所定のものに精度良く行うことは、超音波を利用したスポット溶接部の検査を精度よく行う上で重要となる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の目的は、1つの検査プローブを用いるだけでナゲット径を計測できるようにしたスポット溶接部の超音波検査方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、1つの検査プローブを用いるだけでナゲット径を計測できるようにしたスポット溶接部の超音波検査装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を精度良く決定できるようにした検査プローブの角度調整方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、検査プローブのスポット溶接部に対する位置を精度良く決定できるようにした検査プローブの位置調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第1の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
検査対象物におけるスポット溶接部のナゲット径を超音波を利用して検査するスポット溶接部の超音波検査方法であって、
それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定された検査プローブを準備する準備工程と、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて超音波を発振させて、該発振された超音波の反射エコーの受信状態に基づいて、該スポット溶接部のナゲット径を推測する検査工程と、
を備えているようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、最外周の振動子の径を、実際に得られるナゲット径よりも大きいものとなるように設定して、検査プローブの中心(同心円状の複数の振動子の中心)をナゲットのほぼ中心に設定した状態においては、中央付近の振動子から発振された超音波については、その反射エコーとしてナゲットのみを通過する第1反射エコーを得ることができる。また、最外周に位置する振動子から発振された超音波については、ナゲットの外周囲のみから反射する第2反射エコーを得ることができ、径方向中間に位置する振動子から発振された超音波の反射エコーは、第1反射エコーと第2反射エコーとが混在したものとなる。したがって、実際のナゲット径は、発振された振動子のうち、第1反射エコーのみが得られる範囲でもって最大径となる振動子の径よりも大きいと推測でき、第2反射エコーのみが得られる範囲でもって最小径となる振動子の径よりも小さいと推測することができ、さらには、第1反射エコーと第2反射エコーとが混在した範囲でもって最大径となる振動子の径よりも小さく、かつ最小径となる振動子の径よりも大きいと推測できる。したがって、例えば、第1反射エコーのみが得られる状態と、第1反射エコーと第2反射エコーとが混在して得られる状態との境界部位に相当する振動子の径を、実際のナゲット径であると最終決定することができる。同様に、第2反射エコーのみが得られる状態と、第1反射エコーと第2反射エコーとが混在して得られる状態との境界部位に相当する振動子の径を、実際のナゲット径であると最終決定することができる。
【0011】
請求項1を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項5に記載のとおりである。すなわち、
前記検査工程が、
ナゲットを通して反射される第1反射エコーのみが受信される第1状態と、該第1反射エコーに加えてナゲットの外周囲部分を通して反射される第2反射エコーが受信される第2状態とを得る第1ステップと、
超音波を発振した複数の振動子のうち、前記第1状態が得られる範囲でもって最外周に位置する第1特定振動子の径と、前記第2状態が得られる範囲でもって最内周に位置する第2特定振動子の径との少なくとも一方の径に基づいて、ナゲット径の推測値を決定する第2ステップと、
を備えているようにしてある(請求項2対応)。この場合、実際のナゲット径を推測するより具体的な手法が提供される。
【0012】
前記検査工程が、
ナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーのみが受信される第3状態と、該第2反射エコーに加えてナゲットを通して反射される第1反射エコーが受信される第2状態とを得る第1ステップと、
超音波を発振した複数の振動子のうち、前記第3状態が得られる範囲でもって最内周に位置する第3特定振動子の径と、前記第2状態が得られる範囲でもって最外周に位置する第1特定振動子の径との少なくとも一方の径に基づいて、ナゲット径の推測値を決定する第2ステップと、
を備えているようにしてある(請求項3対応)。この場合、実際のナゲット径を推測するより別の具体的な手法が提供される。
【0013】
前記検査工程の前に、前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させて、該発振された超音波の該中央の振動子での受信状態に基づいて該検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する角度調整行程をさらに備えている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの軸線を、ナゲットに対して所定傾斜角度(好ましくは垂直)に精度良く設定することが可能となる。
【0014】
前記検査工程の前に、前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させつつ、前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅とナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅とに基づいて該検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する位置調整行程をさらに備えている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの中心(軸線位置)を、ナゲットに対して所定位置(好ましくはナゲットの中心位置)に精度良く設定することが可能となる。
【0015】
前記第2の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項6に記載のように、
検査対象物におけるスポット溶接部のナゲット径を超音波を利用して検査するスポット溶接部の超音波検査装置であって、
それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定された検査プローブと、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて超音波を発振させる発振制御手段と、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて発振された超音波の反射エコーの受信状態に基づいて、該スポット溶接部のナゲット径を推測するナゲット径推測手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に対応した検査方法を実現するための検査装置が提供される。
【0016】
前記検査装置を前提とした好ましい態様は、請求項7,請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させる角度変更手段と、
前記角度変更手段によって前記検査プローブの前記スポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させる発振制御手段と、
前記発振制御手段の制御によって前記振動子から発振されたときに、前記中央の振動子での受信強度がもっとも大きくなる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する角度決定手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項7対応)。この場合、請求項4に対応した検査方法(角度調整方法)を実現することのできる検査装置が提供される。
【0017】
前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させる位置変更手段と、
前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅に対するナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅の比が最小となる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する位置決定手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項8対応)。この場合、請求項5に対応した検査方法(位置調整方法)を実現することのできる検査装置が提供される。
【0018】
前記第3の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項9に記載のように、
スポット溶接部の超音波検査に用いる検査プローブの角度調整方法であって、
前記検査プローブが、それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定され、
前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させて、該発振された超音波の該中央の振動子での受信強度がもっとも大きくなる傾斜角度となるように、該検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する、
ようにしてある。上記解決手法によれば、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの軸線をナゲットに対して精度良く垂直に設定することができる。
【0019】
前記第4の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項10に記載のように、
スポット溶接部の超音波検査に用いる検査プローブの位置調整方法であって、
前記検査プローブが、それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定され、
前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させつつ、前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅に対するナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅の比が最小となる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する、
ようにしてある。上記解決手法によれば、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの中心(軸線)を、ナゲットの中心に精度良く位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による検査方法および検査装置によれば、1つの検査プローブを用いるだけでナゲット径を計測することができる。
また、本発明による角度調整方法によれば、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの軸線をナゲットに対して垂直角度に精度良く位置決めすることができる。
さらに、本発明による位置調整方法によれば、検査プローブを有効に利用して、検査プローブの中心をナゲットの中心に対して精度良く位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1において、1は検査プローブである。検査プローブ1は、ゴム等の弾性材によって密閉構造に形成された本体(筐体)2を有し、本体2の内部には、その上部において後述する振動子群(トランスデューサ)10が配設されると共に、振動子群10の下方空間が例えば水等の音響伝播媒体3で充満されている。また、本体2の外部下面には、スポット溶接部に当接されるメンブレン4が一体化されている。このような検査プローブ1の中心軸線が符合Oで示される。
【0022】
上記検査プローブ1の本体2は、例えばロボットハンド20に把持されて、その軸線Oの傾斜角度が変更可能とされ、また前後、上下、左右の3次元方向に移動可能とされている。このロボットハンド20が、角度変更手段および位置変更手段を構成している。
【0023】
検査プローブ1の本体2には、その外周においてフランジ状に取付基板21が固定され、この取付基板21の下面には、左右一対の照射手段としてのランプ22、23が固定されている。左右一対のランプ22、23は、例えばLED等によって構成されて、指向性を有するように発光されて、その発光光線の指向方向が互いに交差するように設定されている。より具体的には、ランプ22,23からの発光光線の指向方向が符合L1、L2で示され、このL1とL2との交差位置が、検査プローブ1の軸線0上でかつメンブレン4の直下方に位置する焦点Sを構成するように設定されている。これにより、作業者は、検査プローブ1のメンブレン4をスポット溶接部の表面に接近させたときに、焦点Sを目視することによって、検査プローブ1の軸線0とスポット溶接部(のナゲット)の中心との位置合わせを容易に行うことができる。
【0024】
検査プローブ1内に配設された振動子群10は、図2,図3に示すように、複数の振動子11〜14を組み合わせることによって構成されている。中央の振動子11は、円板状に構成されると共に、振動子12,13、14はそれぞれ円環状に形成されて、円環状の各振動子12〜14は、中央の振動子11を取り巻くように配設されている。すなわち、各振動子11〜14は、互いに同心円状に配設されており、かつ各振動子11〜14の厚さは同一に設定されている。そして、内外の振動子同士は、例えば接着材等を利用して互いに一体化されている(径方向に実質的に隙間のないように互いに近接した状態での一体化)。
【0025】
各振動子11〜14は、例えば圧電素子によって形成することができ、各振動子11〜14毎に個々独立してその両面(上面、下面)に電極が形成されている。これにより、電圧印可された振動子のみが、個々独立して超音波を発振することが可能となっており、例えば、最外周の振動子14から中央の振動子11に向けて順次電圧印可(順次の超音波発振)することもでき、あるいは中央の振動子11から最外周の振動子14に向けて順次超音波を発振することもでき、さらには全ての振動子11〜14から同時に超音波を発振することができる。
【0026】
各振動子11〜14は、超音波の反射波となる反射エコーを個々独立して受信することが可能であり、受信された反射エコーは電気信号となって振動子11〜14から出力されるものである。勿論、反射エコーが強いほど、受信信号の振幅(電圧)が大きくなる。なお、発振のための電圧印可および反射エコーに対応した受信信号の外部への出力のために、図1に示すように、検査プローブ1の本体2の外部に突出させてコネクタ6が設けられている。
【0027】
図3〜図5には、振動子群10からの超音波の発振状態を互いに相違させた場合の例が示される。図3は、全ての振動子11〜14から同時に超音波を発振させた場合を示すもので、矢印で示すように、超音波の進行方向は、検査プローブ10の軸線0に沿っって直線的に進行される。この図3の発振状態は、振動子群10と同様の径(最外周に位置する振動子14の外径と同じ外径)を有する1つの振動子でもって超音波を発振させた場合と同様の超音波発振状態となる。
【0028】
図4は、振動子11と12のみから超音波を発振させた状態を示すもので、矢印で示すように、超音波の進行方向は、検査プローブ10の軸線0に沿っって直線的に進行される。ただし、図4の場合は、図3の場合に比して、超音波の発振面積が小さいものとなる。すなわち、振動子11と12とを合算した面積を有する1つの振動子でもって超音波を発振させたときの状態に相当する。
【0029】
図5は、中央の振動子11から外側の振動子へ向けて順次時間を遅らせて超音波を発振させた場合を示す。この図5の場合は、各振動子11〜14で発振された超音波は、干渉作用によって、軸線0上において焦点S2を構成するようになっており、遅れ時間の設定によって、焦点S2が、図1に示す焦点Sと一致するように設定されている。なお、焦点S2(S)の位置は、検査プローブ1のメンブレン4をスポット溶接部の表面に当接させた状態で、スポット溶接された2枚の板の境界部位に位置するように設定されている(板厚の相違に応じて、焦点S2の位置調整を行うことも可能)。
【0030】
図6は、スポット溶接部つまりナゲットに対して検査プローブ1から超音波を発振したときの一例が示される。この図6において、31,32は、スポット溶接された検査対象物としての2枚の金属板(例えば鉄板)であり、33はスポット溶接によって形成されたナゲットである。図6では、全ての振動子11〜14のうち、中央側から複数の振動子(例えば振動子11〜13)のみから超音波を発振させた状態を示し(最外周の振動子14は駆動されてないで休止)、実際に形成されているナゲット33の径が、駆動されている(超音波を発振している)振動子のうち最外周側に位置する振動子(例えば振動子13)の外径よりも大きい場合を示す。
【0031】
図6での超音波発振態様において、得られる反射エコー(受信信号)は、図7に示すようになる。すなわち、ナゲット径が、駆動されている振動子の最大径よりも大きいために、発振された超音波およびその反射エコーは全てナゲットを通過したものとなり、下側の金属板32の下面でもって反射された反射エコーを以下の説明では底面エコーと称する。この場合、図7で、もっとも左側に現れる波形は、表面エコーと呼ばれるもので、もっとも大きな振幅を示すが、ナゲット径には無関係な要素となる。また、この表面エコーの次から現れる波形が、全て底面エコーであって、破線丸印で示すそのピーク値が徐々に減衰されたものとなる。
【0032】
図8は、図6に対応したものであるが、実際のナゲット径が、駆動されている3つの振動子11〜13の最大径(振動子14は休止)よりも小さいものとなっている。この図6の場合に得られる反射エコーは、図9に示すようになる。この図9は、図7に対応したものであるが、超音波を発振する振動子の最大径よりもナゲット径が小さいために、反射エコーとしては、ナゲットのみを通過した底面エコーの他に、ナゲット33の外周囲のみを通過して上側の金属板31の下面(上下の金属板31と32との境界)でもって反射された中間エコーが得られることになる。この中間エコーは、底面エコーの間に出現されて、そのピーク値は、隣合う底面エコーよりも小さいものとなる(ピーク値の減衰状態が、底面エコーのピーク値の減衰状態とは相違する)。なお、図7,図9において、底面エコーとして示されるものが特許請求の範囲における第1反射エコーに相当し、中間エコーとして示されるものが特許請求の範囲における第2反射エコーに相当する。
【0033】
前述した図6〜図9の説明から明かなように、図示を略すが、ナゲット33が全く存在しないときは、図9の中間エコーのみが得られることになる。
【0034】
前述した底面エコーと中間エコーとは、明確に区別できるものである。したがって、振動子11〜14について、例えば、中央の振動子11から順次外側の振動子へ向けて超音波を発振することにより、図7に示すように底面エコーのみが得られる第1状態から、底面エコーの他に中間エコーをも得られる図9に示すような第2状態へと変化される。この第1状態のときは、実際のナゲット径は、駆動されている振動子のうち最大径となる振動子の径(外径)よりも大きいということが推測される。また、上記第2状態のときは、実際のナゲット径は、駆動されている振動子のうち最大径となる振動子の径(内径)よりも小さいということが推測される。したがって、この第1状態と第2状態との間で変化が生じたときに、実際のナゲット径は、駆動されている振動子のうちもっとも外側に位置する振動子の径(停止されている振動子のうちもっとも内側に位置する振動子の径)に相当する大きさであると推定することができる。各振動子11〜14の径方向幅を小さく設定することにより(例えば0.5mm〜1mm)の範囲に設定することにより、ナゲット径を各振動子の径方向幅の誤差範囲でもって極めて精度よく知ることができる。
【0035】
上述したナゲット径の計測は、複数の振動子11〜14を、中央側の振動子11から外側の振動子へと順次駆動した場合であるが、最外側の振動子14から中央の振動子11へ向けて順次超音波を発振する場合も同様にして、実際のナゲット径を計測できる。すなわち、最外側の振動子14のみを駆動したときに、中間エコーのみが得られる第3状態であり、この状態から中央に向けて振動子を順次駆動したときに、第3状態から前述した第2状態へと移行した直後の状態において、そのときに駆動されている振動子のうちもっとも内側に位置する振動子の径(停止されている振動子のうちもっとも外側に位置する振動子の径)が、実際のナゲット径であると推測されることになる。
【0036】
ここで、図6,図8の場合共に、検査プローブ1の軸線0が、スポット溶接部(ナゲット33)に対して垂直となり、かつスポット溶接部(ナゲット33)の中心に合致した理想状態を前提としている。このうような理想状態(検査条件)を満足するために、検査プローブ1のスポット溶接部(ナゲット33)に対する傾斜角度の調整および位置調整を行うための好ましい手法について説明する。なお、傾斜角度の調整および位置調整のための検査プローブ1の駆動は、ロボットハンド20によって行われるものである。
【0037】
まず、検査プローブ1の角度調整の点について説明する。この角度調整の際には、検査プローブ1の傾斜角度を微妙に変更しつつ、図5に示すような超音波の発振を行って(焦点S2を構成させる)、反射エコーの受信を中央の振動子11のみによって行う。この場合、スポット溶接部(ナゲット33)に対して検査プローブ1の軸線Oが垂直となったときに、中央の振動子11で受信される反射エコーの振幅(受信強度)がもっとも大きくなるので、反射エコーの振幅がもっとも大きくなる傾斜角度に固定設定する。これにより、検査プローブ1のスポット溶接部(ナゲット33)に対する傾斜角度の設定が終了される。
【0038】
次に、検査プローブ1の位置調整(中心位置合わせ)について説明する。この位置値せのときは、検査プローブ1を、スポット溶接部の表面に沿って移動させつつ、各振動子11〜14から同時に超音波を発振させる。このとき、図10に示すように(図10は、図9に対応)、底面エコーと中間エコーとが得られるが、1番目の底面エコーの振幅L1に対する1番目の中間エコーの振幅L2の比がもっとも小さくなった位置でもって検査プローブ1の位置を固定して、位置調整が終了される。すなわち、検査プローブ1の軸Oがナゲット33の中心から大きくずれているほど、底面エコーの振幅に対して相対的に中間エコーの振幅が大きくなるので、上記した「振幅の比」がもっとも小さくなる位置が、軸線Oがナゲット33の調中心に合致した位置となる。
【0039】
なお、前述した角度調整および位置調整は、図1に示すランプ22,23の焦点Sを利用して、作業者の目視によってのみ行うようにしてもよい。また、この作業者の目視による調整後に、微調整の範囲でもって角度と位置とを変更しつつ、前述した反射エコーを利用した自動的な角度調整と位置調整とを行うようにしてもよい。
【0040】
図11は、複数の振動子11〜14の個々独立した超音波発振と、その反射エコーの個々独立した受信とを行うための制御回路例を示すものである。この図11において、41はパルスの発振回路である。中央の振動子11は、発振回路41に対して、サーキュレータ51を介して接続されている。振動子12は、サーキュレータ52および遅延回路42を介して発振回路41に接続されている。振動子13は、サーキュレータ53および遅延回路43を介して発振回路41に接続されている。振動子14は、サーキュレータ54および遅延回路44を介して発振回路41に接続されている。
【0041】
図11中、Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)であり、発振回路41の制御と、遅延回路42〜44の制御とを行う。すなわち、発振回路41の駆動と停止との切替を行うと共に、遅延回路42〜44の作動(遅延あり)と停止(遅延なし)との切替えを行う。また、各サーキュレータ51〜54は、発振回路41からの信号を対応する振動子に出力する一方、各振動子からの受信信号をコントローラUへ入力させるようになっている。コントローラUは、各振動子11〜14からの受信信号を受信する受信回路の機能を有する他、前述した角度調整のための制御、位置調整のための制御、ナゲット径の推測のための制御を行う。そして、コントローラUは、表示画面からなる表示手段45に、計測(推測)されたナゲット径の表示を行うようになっている(ナゲット径の正常、異常の識別表示であってもよく、この場合は、表示手段45をランプ、ブザー等の簡易なものを利用できる)。
【0042】
次に、図12に示すフローチャートを参照しつつ、コントローラUの制御例について説明するが、実施形態では、検査プローブ1の角度調整制御と、位置調整制御と、2種類のナゲット径推測の制御とを行うものとなっている。角度調整および位置調整のために、コントローラUは、ロボットハンド20の制御をも行う。なお、以下の説明でQはステップを示す。また、図12の制御は、例えば、検査プローブ1のメンブレン4をスポット溶接部(の表面)に当接させ、かつ作業者が図示を略す開始スイッチを操作したときに開始される。
【0043】
まず、Q1において、検査プローブ1の傾斜角度を変更しつつ、図5の発振態様とさせる(焦点S2を設定する)。次いで、Q2において、中央の振動子11でのみ反射エコーを受信して、受信強度がもっとも強くなったときの傾斜角度となったときに、検査プローブ1の傾斜角度を固定する(傾斜角度調整の終了)。
【0044】
Q2の後、Q3において、基準となるナゲット径に応じて、図9のような反射エコーが得られるように、振動子を駆動する(全振動子を駆動してもよい)。この後、Q4において、図10に示す1番目の底面エコーと1番目の中間エコーとの振幅の比がもっとも小さくなる位置となった位置でもって、検査プローブ1を固定する(位置調整の終了)。
【0045】
Q4の後は、Q5において、現在中間エコーが発生(検出)しているか否かが判別される。このQ5の判別でNOのとき、つまり中間エコーが発生しないときは、駆動されている振動子の最大外径よりも実際のナゲット径が大きいときである。このときは、Q6、Q7の処理において、現在駆動されている振動子の1つ外側の振動子を駆動して、反射エコーを再測定し、中間エコーが発生するまでこのような処理を繰り返す。中間エコーが発生されたことが確認された時点でもって、Q8において、ナゲット径の推測が行われる(推測されたナゲット径は表示手段45に表示される)。上述したQ6からQ8を経る処理は、中央の振動子11から外側の振動子へ向けて順次駆動していくことによるナゲット径の推測手法となる。
【0046】
前記Q5の判別でYESのとき、つまり図7に示すように中間エコーが存在するときは、現在駆動されている振動子のうち最大径となる振動子の径よりも、ナゲット径が小さいときである。このときは、Q9,Q10の処理によって、駆動される振動子が径方向内側へ1つづつ移動し(駆動されない振動子が径方向外側から順次増加させていく)、反射エコーを再測定し、中間エコーが発生しなくなるまでこのような処理を繰り返す。中間エコーが発生しなくなったことが確認された時点でもって、Q8において、ナゲット径の推測が行われる(推測されたナゲット径は表示手段45に表示される)。上述したQ9からQ8を経る処理は、外側の振動子から中央の振動子11へ向けて順次駆動していく(外側の振動子から順次駆動停止していく)ことによるナゲット径の推測手法となる。
【0047】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。振動子の数は、適宜変更できるものであり、同じ最大外径であれば、振動子の数を増加させるほど、ナゲット径の推測の精度を向上させることができる。ナゲット径の推測に際しては、例えば、図12において、Q6〜Q8の処理の後にQ9〜Q8の処理を実行するようにし、またQ9〜Q8の処理の後にQ6〜Q8の処理を実行するようにして、得られる2つの推測値の例えば相加平均値を最終的なナゲット径の推測値として決定するようにしてもよい(より精度のよいナゲット径の推測)。ランプ22,23は、検査プローブ1の周囲に3個以上設けるようにしてもよく、またその照射方向を変更可能として、例えば金属板31,32の板厚の相違等に対応して、焦点Sの位置を変更可能にしてもよい。検査プローブ1の角度調整および位置調整の手法は、ナゲット径の推測を行うためのみならず、特許文献1に示すような技術に適用する場合等においても用いることができる。スポット溶接される検査対象物としての金属板は、3枚以上であってもよい。フローチャートに示された各ステップあるいはステップ群は、その機能に手段の名称を付した特定の機能部として把握することが可能である。本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明が適用された検査プローブの一例を示す一部断面側面図。
【図2】図1に示す振動子群の平面図。
【図3】全ての振動子から超音波を発振させたときの状態を示す側面図。
【図4】中央側の一部の振動子からのみ超音波を発振させたときの状態を示す側面図。
【図5】中央側の振動子から外側の振動子へ向けて順次時間を遅らせて超音波を発振させたときの状態を示す側面図。
【図6】駆動されている振動子の最大外径よりもナゲット径が大きいときの超音波と反射エコーを示す説明図。
【図7】図6の状態のときに得られる反射エコーの一例を示す特性図。
【図8】駆動されている振動子の最大外径よりもナゲット径が小さいときの超音波と反射エコーを示す説明図。
【図9】図8の状態のときに得られる反射エコーの一例を示す特性図。
【図10】検査プローブとナゲットとの中心位置合わせをを説明するための特性図。
【図11】各振動子が接続される制御回路例を示す図。
【図12】本発明の制御例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0049】
1:検査プローブ
3:音響伝達媒体
10:振動子群
11〜14:振動子
20:ロボットハンド(角度変更、位置変更用)
31,32:金属板(検査対象物)
33:ナゲット
41:発振回路
42〜44:遅延回路
45:表示手段
S、S2:焦点
L1、L2;反射エコーの振幅
O:中心軸線
U:コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物におけるスポット溶接部のナゲット径を超音波を利用して検査するスポット溶接部の超音波検査方法であって、
それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定された検査プローブを準備する準備工程と、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて超音波を発振させて、該発振された超音波の反射エコーの受信状態に基づいて、該スポット溶接部のナゲット径を推測する検査工程と、
を備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記検査工程が、
ナゲットを通して反射される第1反射エコーのみが受信される第1状態と、該第1反射エコーに加えてナゲットの外周囲部分を通して反射される第2反射エコーが受信される第2状態とを得る第1ステップと、
超音波を発振した複数の振動子のうち、前記第1状態が得られる範囲でもって最外周に位置する第1特定振動子の径と、前記第2状態が得られる範囲でもって最内周に位置する第2特定振動子の径との少なくとも一方の径に基づいて、ナゲット径の推測値を決定する第2ステップと、
を備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記検査工程が、
ナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーのみが受信される第3状態と、該第2反射エコーに加えてナゲットを通して反射される第1反射エコーが受信される第2状態とを得る第1ステップと、
超音波を発振した複数の振動子のうち、前記第3状態が得られる範囲でもって最内周に位置する第3特定振動子の径と、前記第2状態が得られる範囲でもって最外周に位置する第1特定振動子の径との少なくとも一方の径に基づいて、ナゲット径の推測値を決定する第2ステップと、
を備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記検査工程の前に、前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させて、該発振された超音波の該中央の振動子での受信状態に基づいて該検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する角度調整行程をさらに備えている、ことを特徴とするスポット溶接部の超音波検査方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記検査工程の前に、前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させつつ、前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅とナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅とに基づいて該検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する位置調整行程をさらに備えている、ことを特徴とするスポット溶接部の超音波検査方法。
【請求項6】
検査対象物におけるスポット溶接部のナゲット径を超音波を利用して検査するスポット溶接部の超音波検査装置であって、
それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定された検査プローブと、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて超音波を発振させる発振制御手段と、
前記複数の振動子から時間をずらして順次前記スポット溶接部に向けて発振された超音波の反射エコーの受信状態に基づいて、該スポット溶接部のナゲット径を推測するナゲット径推測手段と、
を備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させる角度変更手段と、
前記角度変更手段によって前記検査プローブの前記スポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させる発振制御手段と、
前記発振制御手段の制御によって前記振動子から発振されたときに、前記中央の振動子での受信強度がもっとも大きくなる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する角度決定手段と、
をさらに備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させる位置変更手段と、
前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅に対するナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅の比が最小となる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する位置決定手段と、
をさらに備えていることを特徴とするスポット溶接部の超音波検査装置。
【請求項9】
スポット溶接部の超音波検査に用いる検査プローブの角度調整方法であって、
前記検査プローブが、それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定され、
前記検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を変更させつつ、前記複数の振動子のうち中央の振動子から外側の振動子へと時間を遅らせて順次超音波を発振させて、該発振された超音波の該中央の振動子での受信強度がもっとも大きくなる傾斜角度となるように、該検査プローブのスポット溶接部に対する傾斜角度を決定する、
ことを特徴とする検査プローブの角度調整方法。
【請求項10】
スポット溶接部の超音波検査に用いる検査プローブの位置調整方法であって、
前記検査プローブが、それぞれ超音波を個々独立して発振可能とされた複数の振動子を同心円状に配設してなる超音波トランスデューサを備えて、該超音波トランスデューサから発振される超音波を音響伝播媒体を介して前記検査対象物におけるスポット溶接部に向けて発振させると共に、発振された超音波の反射エコーを前記複数の振動子で個々独立して受信可能に設定され、
前記検査プローブをスポット溶接部の表面に沿って相対的に移動させつつ、前記複数の振動子から超音波を発振させて、ナゲットを通して反射される第1反射エコーの振幅に対するナゲットの外周囲を通して反射される第2反射エコーの振幅の比が最小となる位置となるように、前記検査プローブのスポット溶接部に対する位置を決定する、
ことを特徴とする検査プローブの位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−203082(P2008−203082A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39273(P2007−39273)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】