説明

スルホンアミド置換アルコールおよびその中間体の調製方法

アミノアルコールまたはそれらの塩およびスルホンアミド置換アルコール化合物の調製プロセスを提供する。望ましくは、上記スルホンアミド置換アルコール化合物は、複素環式スルホンアミドトリフルオロアルキル置換アルコール化合物またはフェニルスルホンアミドトリフルオロアルキル置換アルコール化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病の治療において役立つ、βアミロイド産生の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、老人における認知症(記憶の喪失)の最も一般的な形態である。脳内で見出されるADの主な異常病変は、斑の形態でのβアミロイドタンパク質の細胞外沈着物、および血管障害、および凝集した高リン酸化タウタンパク質の細胞内神経原線維変化からなる。最近の証拠により、脳内のβアミロイドレベル上昇が、タウ病理に先行するばかりでなく、認知低下にも相関していることが明らかになった。さらに、ADにおけるβアミロイドについての原因的役割を示唆するものとして、最近の研究により、細胞培養において凝集βアミロイドがニューロンに対して毒性であることが証明された。
【0003】
複素環式およびフェニル−スルホンアミド化合物、特に、フルオロおよびトリフルオロアルキル含有複素環式スルホンアミド化合物は、βアミロイド産生の阻害に有用であることが証明された。
【0004】
当分野において必要とされているものは、βアミロイド産生の阻害に有用なスルホンアミド化合物およびそれらの中間体を調製するための代替プロセスである。
【発明の開示】
【0005】
1つの態様において、アミノアルコールまたはそれらの塩の調製方法を提供する。
【0006】
もう1つの態様において、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。
【0007】
本発明の他の態様および利点は、以下の本発明の詳細な説明から容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書に記載する方法は、スルホンアミド置換アルコールへの経路を提供する。本方法は、アミノアルコールを含むそれらの中間体を調製するための新規工程も提供する。
【0009】
A.アミノアルコールの調製方法
アミノエステルからアミノアルコールまたはその塩を調製する方法を説明する。スキーム1参照(スキーム中のR1、R2、R3およびR4は、以下で定義する通りである)。
【化14】

【0010】
1つの実施形態において、前記アミノアルコールは、下記構造のものである。
【化15】

(式中、R2は、保護基であり;R3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;nは、1から3である)。望ましくは、R2は1−メチルベンジルである。
【0011】
用語「保護基」は、本明細書で用いる場合、アミノ官能基を保護する基を指す。望ましくは、保護基は、当業者に公知の条件下での脱保護によって除去することができる。様々な保護基が当分野において公知であり、Green et al., 「Protective Groups in Organic Synthesis」, 3rd Edition, John Wiley & Sons Inc., June, 1999(これは、本明細書において参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものを含む。さらに望ましくは、保護基は、場合によっては置換されているアルキル、シクロアルキル、またはカルボニルである。さらにより望ましくは、保護基は、数ある中でも、1−メチルベンジル、ベンジル、1−ブチルオキシカルボニル(BOC)、またはアセチルである。最も望ましくは、保護基は、1−メチルベンジルである。
【0012】
さらなる実施形態において、前記アミノアルコールは、次の構造のものである。
【化16】

(式中、R3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;およびnは、1から3である)。
【0013】
1つ例では、R4は、(CF3nアルキル、例えば、CF3CH2、CH(CH3)CH2CF3、CH(CH2CF32、CH(CH3)CF3、またはCH(CF32である。もう1つの例では、R4は、(F)nシクロアルキル、望ましくは(F)2シクロアルキル、さらに望ましくは(F)2シクロヘキサンおよびビシクロ[3.1.0]ヘキサン、および最も望ましくは4,4−ジフルオロ−シクロヘキサンおよび4,4−ジフルオロビシクロ[3.1.0]−3−ヘキサンである。
【0014】
1つの実施形態において、前記アミノアルコールは、
【化17】

である。
【0015】
さらなる実施形態において、前記アミノアルコールは、(2S)−4,4,4−トリフルオロ−2−{[(1R)−1−フェニルエチル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−オール:
【化18】

である。
【0016】
あるいは、次の構造のアミノアルコール塩を上述のアミノエステルから調製することができる。
【化19】

(式中、R3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;およびnは、1から3である)。
【0017】
もう1つの実施形態において、アミノアルコール塩は、
【化20】

である。
【0018】
さらなる実施形態において、アミノアルコール塩は、
【化21】

である。
【0019】
前記アミノアルコールは、アミノエステルの還元によって調製する。この還元は、アミノエステルを還元剤に添加することによって行う。用語「還元剤」は、本明細書で用いる場合、アミノエステルのエステル官能基をアルコール官能基に転化させる化合物または錯体を指す。当業者は、この還元に適する還元剤を容易に選択することができる。適する還元剤としては、「Comprehensive Organic Transformations」, R. C. Larock, VCH Publishers, Inc., New York, NY, 1989(これは、本明細書において参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものを含み、限定ではないが、数ある中でも、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LAH)、水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、ナトリウム水素化ビスメトキシエトキシアルミニウム、ナトリウム水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム(red−Al)、k−セレクトライドを含む、ヒドリド還元剤が挙げられる。望ましくは、還元剤は、DIBAL−Hである。
【0020】
前記還元は、一般に、非反応性溶媒を使用して行う。用語「非反応性溶媒」は、本明細書で用いる場合、その還元中に利用される試薬のいずれとも反応しない溶媒を指す。望ましくは、前記還元中に利用される非反応性溶媒としては、数ある中でも、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、シクロヘキサンが挙げられる。
【0021】
本発明者らは、アミノエステルを還元剤、すなわちDIBAL−H、に添加したときの方が、前記還元剤を前記アミノエステルに添加したときよりアミノアルコールの収率が高いことを見出した。典型的に、アミノアルコールは、約90%より高い、約91%より高い、約92%より高い、約93%より高い、約94%より高い、または約95%より高い収率で調製される。1つの実施形態において、アミノアルコールは、約90から約95%の収率で調製される。
【0022】
前記還元中に利用される温度は、約−60℃より高い。1つの実施形態において、アミノアルコールの還元は、約−60℃から約−10℃で行う。もう1つの実施形態において、前記還元は、約−20から約−10℃で行う。さらなる実施形態において、前記還元は、約−8から−11℃で行う。さらにもう1つの実施形態において、前記還元は、約−10℃で行う。
【0023】
前記アミノアルコールの還元は、後に、プロトン性溶媒を使用して停止させる。用語「プロトン性溶媒」は、溶液中に放出することができる水素源(H+)を含有する溶媒を意味する。典型的に、水素源は、プロトン性溶媒の酸素原子に結合している。1つの実施形態において、プロトン性溶媒は、ヒドロキシル基を含有する。もう1つの実施形態において、プロトン性溶媒は、アルコール、例えばエタノールである。さらなる実施形態において、プロトン性溶媒は、プロトン酸である。用語「プロトン酸」は、本明細書で用いる場合、限定ではないが、数ある中でも、強酸および弱酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリハロ酢酸、臭化水素、マレイン酸、スルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、乳酸、樟脳酸、アスパラギン酸、シトロネル酸、BCl3、エタノール酸、硫化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸を含む。さらにもう1つの実施形態において、プロトン性溶媒は、溶液中に放出することができる水素原子を含有する溶媒の混合物である。
【0024】
当業者は、当分野におけるおよび本明細書における技術および知識を利用して、多数のアミノエステルを還元することができ、決定することができる。望ましくは、前記アミノエステルは、1つまたはそれ以上のキラル炭素中心を含有する。さらに望ましくは、前記アミノエステルは、保護アミノエステルである。最も望ましくは、前記アミノエステルは、N保護アミノエステルである。1つの実施形態において、前記アミノエステルは、次の構造のものである。
【化22】

(式中、R1は、アルキルまたはベンジルであり;R2は、保護基であり;R3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;およびnは、1から3である)。
【0025】
もう1つの実施形態において、前記アミノエステルは、R1、R3およびR4が上で定義した通りであり、次の構造のものである。
【化23】

【0026】
さらにもう1つの実施形態において、前記アミノエステルは、R1、R3およびR4が上で定義した通りであり、次の構造のものである。
【化24】

【0027】
さらにもう1つの実施形態において、前記アミノエステルは、
【化25】

である。
【0028】
さらなる実施形態において、前記アミノエステルは、
【化26】

である。
【0029】
1つの例では、約−60℃から約−10℃でアミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによるアミノエステルの還元を含む、アミノエステルからのアミノアルコールまたはその塩の調製する方法を提供する。
【0030】
もう1つの例では、構造:
【化27】

のアミノアルコールの調製方法を提供し、本方法では、約−60℃から約−10℃でアミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによって、次の構造のアミノエステルを還元する。
【化28】

【0031】
B.スルホンアミド置換アルコールの調製方法
スルホンアミド置換アルコールの調製方法も提供する。1つの実施形態において、前記スルホンアミド置換アルコールは、1つまたはそれ以上のトリフルオロアルキル基で置換されている。もう1つの実施形態において、前記スルホンアミド置換アルコールは、複素環式スルホンアミド置換アルコールまたはフェニルスルホンアミド置換アルコールである。スキーム2参照。
【0032】
1つの実施形態において、前記スルホンアミド置換アルコールは、下記構造のものである。
【化29】

(式中、R3は、H、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;nは、1から3であり;R5は、H、ハロゲン、CF3、Yに融合したジエン(YがCであるとき)、およびYに融合した置換ジエン(YがCであるとき)の中から選択され;W、YおよびZは、C、CR6およびNの中から独立して選択され、W、YまたはZのうちの少なくとも1つは、Cであり;Xは、O、S、SO2およびNR7の中から選択され;R6は、H、ハロゲン、C1からC6アルキル、および置換C1からC6アルキルの中から選択され;およびR7は、H、C1からC6アルキル、およびC3からC8シクロアルキルの中から選択される)。
【化30】

【0033】
SO2基へのW−X−Y−Z−C複素環の結合点は、限定ではない。前記環は、SO2基に炭素原子または窒素原子によって結合している場合もある。
【0034】
1つの実施形態において、本明細書に記載の調製される化合物は、チオフェンスルホンアミド、さらに望ましくは、5−ハロチオフェンスルホンアミド、および最も望ましくは、第一アルコールの側鎖内にβ分枝を有する5−ハロチオフェンスルホンアミドである。
【0035】
さらなる実施形態において、前記置換スルホンアミド置換アルコールは、
【化31】

である。
【0036】
もう1つの実施形態において、調製される化合物は、フランスルホンアミドである。従って、これらの化合物は、XがOである構造を有する。1つの望ましい実施形態において、前記フランスルホンアミドは、第一アルコールの側鎖内のβ分枝によって特徴付けられる。
【0037】
さらなる実施形態において、本明細書に記載する化合物は、ピラゾールスルホンアミドである。従って、この化合物は、XがNR7であり、WがNおよびZであり、およびYがCまたはCR6であるが、但し、YまたはZの少なくとも一方がCでなければならない構造を有する。
【0038】
もう1つの実施形態において、スルホンアミドトリフルオロアルキル置換アルコールは、5−クロロ−N−[(1S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−(トリフルオロメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドまたは4−クロロ−N−[(1S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ベンゼンスルホンアミドである。
【0039】
1つの例では、R3は、Hであり、R4は、(CF32CH、望ましくはS立体化学のものであり、R5は、水素であり、Wは、Cであり、Xは、Sであり、Yは、CHであり、およびZは、チオフェン環のC−2に結合しているスルホンアミドを有するCHである。
【0040】
もう1つの例では、R3は、Hであり、R4は、(CH2CF32CHであり、R5は、ハロゲンであり、Wは、Cであり、Xは、Sであり、Yは、CHであり、およびZはチオフェン環のC−2に結合しているスルホンアミドを有するCHである。
【0041】
さらなる例では、R3は、Hであり、R4は、(F)2シクロアルキルであり、R5は、ハロゲンであり、Wは、Cであり、Xは、Sであり、Yは、CHであり、Zは、チオフェン環のC−2に結合しているスルホンアミドを有するCHである。
【0042】
さらにもう1つの例では、前記置換スルホンアミド置換アルコールは、
【化32】

である。
【0043】
さらなる例では、前記置換スルホンアミド置換アルコールは、
【化33】

である。
【0044】
もう1つの実施形態において、前記スルホンアミド置換アルコールは、下記構造のものである。
【化34】

(式中、R3は、H、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;nは、1から3であり;R8、R9、R10、R11およびR12は、H、ハロゲン、C1からC6アルキル、置換C1からC6アルキル、C1からC6アルコキシ、置換C1からC6アルコキシ、およびNO2の中から独立して選択されるか;R8とR9、R9とR10、R11とR12、またはR10とR11が融合して、(i)3から8個の炭素原子を含有する炭素系飽和環、(ii)3から8個の炭素原子を含有する炭素系不飽和環、または(iii)O、NおよびSの中から選択される1から3個のヘテロ原子を環の骨格内に含有する複素環を形成し、環(i)から(iii)は、C1からC6アルキルまたは置換C1からC6アルキルを含む1から3個の置換基により、場合によっては置換されている)。
【0045】
1つの例では、前記置換スルホンアミド置換アルコールは、
【化35】

である。
【0046】
従って、本方法は、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物とプロトン酸を反応させて、対応するN保護アミノエステル塩を形成することによる、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーの単離を含む。典型的に、ジアステレオマー混合物をプロトン酸で処理して、N保護アミノエステルの塩を形成することによって、アミノエステル塩の所望されるジアステレオマーを単離する。用語「プロトン酸」は、本明細書で用いる場合、水素原子(H+)を供与する任意の酸を指す。アミノアルコールを対応する塩に転化させるために様々なプロトン酸を利用することができ、限定ではないが、数ある中でも、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸が挙げられる。所望の単一のジアステレオマーN保護アミノエステル塩が溶液から沈殿し、その後、当分野における技法、例えば、数ある中でも濾過、デカントを使用して、それを単離する。望ましくは、前記単一のジアステレオマーN保護アミノエステル塩は、濾過を使用して単離する。その後、そのN保護アミノエステル塩は、さらに精製せずに利用してもよいし、または当業者に公知の技法を使用して精製してもよい。
【0047】
1つの実施形態において、前記N保護アミノエステル塩は、下記構造のものである。
【化36】

(式中、R1は、アルキルまたはベンジルであり;R3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルの中から選択され;R4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルの中から選択され;およびnは、1から3である)。
もう1つの実施形態において、前記N保護アミノエステル塩は、
【化37】

である。
【0048】
その後、前記N保護アミノエステル塩を塩基で処理して、単一ジアステレオマーの対応するN保護アミノエステルを形成する。本明細書で用いる場合、用語塩基は、プロトンを受容することができる化合物を指す。従って、用語塩基は、限定ではないが、数ある中でも、および米国特許出願公開第US−2005/0272932号(これは、本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているものを含む、水酸化物、例えば水酸化カリウム、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、アルコキシド、水化物、アミンが挙げられる。
【0049】
その後、前記N保護アミノエステルを、上で説明した通りのDIBAL−HへのそのN保護アミノエステルの添加によって、N保護アミノアルコールに還元する。その後、上で説明したようなプロトン性溶媒でその還元を停止させて、N保護アミノアルコールを形成する。
【0050】
その後、前記N保護アミノアルコールを、そのN保護アミノアルコールと上記で説明したようなプロトン酸とを反応させることにより、対応するN保護アミノアルコール塩に転化させる。
【0051】
その後、前記N保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成する。当業者は、この水素化での使用に適する水素化剤を容易に選択できる。望ましくは、水素を触媒の存在下で利用する。水素化の際に有用である触媒としては、上記で引用したLarock et al.(本明細書に参照により組み込まれる)に列挙されているものが挙げられる。望ましくは、前記水素化、Pd/Cを使用して行う。
【0052】
その後、塩化スルホニルを使用して前記無保護アミノアルコール塩をスルホニル化して、スルホンアミド置換アルコールを形成する。1つの実施形態において、前記塩化スルホニルは、下記構造のものである。
【化38】

(式中、R5は、H、ハロゲンおよびCF3の中から選択され;W、YおよびZは、C、CR6およびNの中から独立して選択され、W、YまたはZのうちの少なくとも1つはCであり;Xは、O、S、SO2およびNR7の中から選択され;R6は、H、ハロゲン、C1からC6アルキルおよび置換C1からC6アルキルの中から選択され;R7は、H、C1からC6アルキル、およびC3からC8シクロアルキルの中から選択される)。
【0053】
もう1つの実施形態において、前記塩化スルホニルは、
【化39】

である。
【0054】
さらなる実施形態において、前記塩化スルホニルは、下記構造のものである。
【化40】

(式中、R8、R9、R10、R11およびR12は、H、ハロゲン、C1からC6アルキル、置換C1からC6アルキル、C1からC6アルコキシ、置換C1からC6アルコキシ、およびNO2の中から独立して選択される;またはR8とR9、R9とR10、R11とR12、またはR10とR11が融合して、(i)3から8個の炭素原子を含有する炭素系飽和環、(ii)3から8個の炭素原子を含有する炭素系不飽和環、または(iii)O、NおよびSの中から選択される1から3個のヘテロ原子を環の骨格内に含有する複素環を形成し、環(i)から(iii)は、C1からC6アルキルまたは置換C1からC6アルキルを含む1から3個の置換基により、場合によっては置換されている)。
【0055】
望ましくは、前記スルホニル化は、保護および脱保護段階の不在下で行われる。さらに望ましくは、前記スルホニル化は、米国特許出願公開第US−2004/0198778号A1(本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているようないかなるシリル化または脱シリル化段階も不在下で行われる。
【0056】
典型的に、前記スルホニル化は、4−メチルモルホリン/酢酸イソプロピル、ヒューニッヒ塩基/テトラヒドロフラン、4−メチルモルホリン/アセトニトリル、4−メチルモルホリン/プロピオニトリル、および4−メチルモルホリン/トルエンを含む塩基/溶媒系を使用し、米国特許仮出願第60/774,300号(本明細書に参照により組み込まれる)に記載されている手順を用いて行う。
【0057】
その後、当業者に公知の技法を使用して、前記スルホンアミド置換アルコールを場合によっては精製する。望ましくは、前記精製は、シリカゲルクロマトグラフィーの使用を含むクロマトグラフィーの不在下で行う。
【0058】
前記化合物は、1つまたはそれ以上の不斉炭素原子を含有することがあり、および前記化合物の一部は、1つまたはそれ以上の不斉(キラル)中心を含有することがあり、従って、光学異性体およびジアステレオマーを生じさせることがある。立体化学を顧慮せずに示されているが、前記化合物が1つまたはそれ以上のキラル中心を含有する場合、そのβ−アミノアルコールの少なくともキラル中心は、S立体化学のものである。望ましくは、前記キラル中心は、N−原子、R3およびR4が結合している炭素原子(α炭素原子)を含む。さらに望ましくは、前記α炭素原子は、キラルである。最も望ましくは、前記α炭素原子は、キラルであり、S立体化学のものである。従って、前記化合物は、そのような光学異性体およびジアステレオマー;ならびにラセミ体のおよび分割された、エナンチオマー的に純粋な立体異性体;ならびにR立体異性体およびS立体異性体の他の混合物;およびそれらの医薬的に許容される塩、水和物およびプロドラッグを含む。
【0059】
用語「アルキル」は、1から10個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10)、例えば、1から8個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7またはC8)、1から6個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5またはC6)、または1から4個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3またはC4)を有する、直鎖と分枝鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を指すために本明細書では用いる。用語「低級アルキル」は、1から6個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5またはC6)、望ましくは1から4個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3またはC4)を有する、直鎖および分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基を指す。用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および2から8個の炭素原子(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7またはC8)、2から6個の炭素原子(例えば、C2、C3、C4、C5またはC6)、または2から4個の炭素原子(例えば、C2、C3またはC4)を有する、直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指す。用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合および2から8個の炭素原子((例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7またはC8)、2から6個の炭素原子(例えば、C2、C3、C4、C5またはC6)、または2から4個の炭素原子(例えば、C2、C3またはC4)を有する、直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指す。
【0060】
用語「置換アルキル」、「置換アルケニル」、および「置換アルキニル」は、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アリール、置換アリール、複素環式のもの、置換複素環式のもの、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノおよびアリールチオを含む1から3個の置換基を有する、ここで説明したようなアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を指す。これらの置換基は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基のいずれの炭素に結合していてもよいが、但し、その結合が安定な化学的部分を構成することを条件とする。
【0061】
用語「シクロアルキル」は、3個より多くの炭素原子を有し、安定な環を形成している、炭素系飽和環を記載するために本明細書では用いる。用語シクロアルキルは、2つまたはそれ以上のシクロアルキル基が融合して安定な多環式の環を形成している基を含み得る。望ましくは、シクロアルキルは、約4から約9個の炭素原子、およびさらに望ましくは約6個の炭素原子を有する環を指す。
【0062】
用語「置換シクロアルキル」は、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールチオ、複素環式のもの、置換複素環式のもの、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノアルキルおよび置換アミノアルキルを含むが、これらに限定されない1から5個の置換基を有する、ここで説明したようなシクロアルキル基を指すために本明細書では用いる。
【0063】
用語「アリール」は、単一の環であり得る場合、または融合もしくは連結した環の少なくとも一部が共役芳香族系を形成するように互いに融合もしくは連結した多数の芳香族環である場合もある、炭素環式芳香族系を指すために本明細書では用いる。アリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリルおよびインダンが挙げられるが、これらに限定されない。望ましくは、アリールは、約6から約14個の炭素原子を有する炭素環式芳香族系を指す。
【0064】
用語「置換アリール」は、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノおよびアリールチオを含む1から4個の置換基を有する、ここで定義したようなアリールを指す。
【0065】
用語「複素環」または「複素環式の(もの)」は、本明細書で用いる場合、安定な飽和または部分不飽和3から9員単環式または多環式複素環を指すために、同義で用いることができる。複素環は、その骨格内に炭素原子または、1つまたはそれ以上のヘテロ原子(窒素、酸素および硫黄原子を含む)を有する。1つの実施形態において、複素環は、1から約4個のヘテロ原子をその環の骨格内に含有する。複素環が窒素または硫黄原子をその環の骨格内に含有するとき、それらの窒素または硫黄原子は、酸化されていることがある。用語「複素環」または「複素環式の(もの)」は、複素環が約6から約14の炭素原子のアリール環に融合している多環式の環も指す。その複素環は、そのアリール環にヘテロ原子を介して結合している場合もあり、または炭素原子を介して結合している場合もあるが、但し、結果として生じる複素環構造が化学的に安定であることを条件とする。1つの実施形態において、複素環は、1から5個の環を有する多環式系を含む。
【0066】
様々な複素環基が当分野において公知であり、限定ではないが、酸素含有環、窒素含有環、硫黄含有環、混合ヘテロ原子含有環、融合ヘテロ原子含有環、およびそれらの組み合わせが挙げられる。複素環基の例としては、限定ではないが、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、2−オキソピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、ピラニル、ピロニル、ジオキシニル、ピペラジニル、ジチオリル、オキサチオリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、オキサジニル、オキサチアジニル、ベンゾピラニル、ベンズオキサジニル、およびキサントレニルが挙げられる。
【0067】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、安定な芳香族5から14員単環式または多環式ヘテロ原子含有環を指す。ヘテロアリール環は、その骨格内に、炭素原子および1つまたはそれ以上のヘテロ原子(窒素、酸素および硫黄原子を含む)を有する。1つの実施形態において、ヘテロアリール環は、その環の骨格内に1から約4個のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール環が、その環の骨格内に窒素または硫黄原子を含有するとき、それらの窒素または硫黄原子は、酸化されていることがある。用語「ヘテロアリール」は、ヘテロアリール環がアリール環に融合している多環式の環も指す。そのヘテロアリール環は、そのアリール環にヘテロ原子を介して結合している場合もあり、または炭素原子を介して結合している場合もあるが、但し、結果として生じる複素環構造が化学的に安定であることを条件とする。1つの実施形態において、ヘテロアリール環は、1から5個の環を有する多環式系を含む。
【0068】
様々なヘテロアリール基が当分野において公知であり、限定ではないが、酸素含有環、窒素含有環、硫黄含有環、混合ヘテロ原子含有環、融合ヘテロ原子含有環、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、限定ではないが、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、アゼピニル、チエニル、ジチオリル、オキサチオリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、オキセピニル、チエピニル、ジアゼピニル、ベンゾフラニル、チオナフテン、インドリル、ベンザゾリル、プリンジニル、ピラノピロリル、イソインダゾリル、インドキサジニル、ベンズオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾジアゾニル、ナフチリジニル、ベンゾチエニル、ピリドピリジニル、アクリジニル、カルバゾリルおよびプリニル環が挙げられる。
【0069】
用語「置換複素環」および「置換ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、C1からC3パーフルオロアルキル、C1からC3パーフルオロアルコキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルオキシ(−O−(C1からC10アルキル)もしくは−O−(C1からC10置換アルキル)を含む)、アルキルカルボニル(−CO−(C1からC10アルキル)もしくは−CO−(C1からC10置換アルキル)を含む)、アルキルカルボキシ(−COO−(C1からC10アルキル)または−COO−(C1からC10置換アルキル)を含む)、−C(NH2)=N−OH、−SO2−(C1からC10アルキル)、−SO2−(C1からC10置換アルキル)、−O−CH2−アリール、アルキルアミノ、アリールチオ、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール(これらの基は、場合によっては置換されていることがある)を含む1つまたはそれ以上の置換基を有する、複素環基またはヘテロアリール基を指す。置換複素環またはヘテロアリール基は、1、2、3または4個の置換基を有することがある。
【0070】
用語「アルコキシ」は、OR基(Rは、アルキルまたは置換アルキルである)を指すために本明細書では用いる。用語「低級アルコキシ」は、1から6個の炭素原子を有するアルコキシ基を指す。
【0071】
用語「アリールオキシ」は、OR基(Rは、アリールまたは置換アリールである)を指すために本明細書では用いる。
【0072】
用語「アリールチオ」は、SR基(Rは、アリールまたは置換アリールである)を指すために本明細書では用いる。
【0073】
用語「アルキルカルボニル」は、RCO基(Rは、アルキルまたは置換アルキルである)を指すために本明細書では用いる。
【0074】
用語「アルキルカルボキシ」は、COOR基(Rは、アルキルまたは置換アルキルである)を指すために本明細書では用いる。
【0075】
用語「アミノアルキル」は、1から8個の炭素原子を含有するそのアルキルまたは置換アルキル基が同じまたは異なることもあり、およびその結合点が窒素原子上にある、第二アミンと第三アミンの両方を指す。
【0076】
用語「ハロゲン」は、Cl、Br、FまたはIを指す。
【0077】
医薬的に許容される塩は、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、樟脳スルホン酸および同様に公知である許容可能な酸を含む有機および無機酸から形成することができる。塩は、無機塩基、望ましくはアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、リチウムまたはカリウムを含み、および有機塩基、例えばアンモニウム塩、モノ、ジおよびトリメチルアンモニウム、モノ、ジおよびトリエチルアンモニウム、モノ、ジおよびトリプロピルアンモニウム(イソおよびノルマル)、エチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、1−メチルピペリジニウム、4−エチルモルホリニウム、1−イソプロピルピロリジニウム、1,4−ジメチルピペラジニウム、1−n−ブチルピペリジニウム、2−メチルピペリジニウム、1−エチル−2−メチルピペリジニウム、モノ、ジおよびトリエタノールアンモニウム、エチルジエタノールアンモニウム、n−ブチルモノエタノールアンモニウム、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム、フェニルモノエタノールアンモニウムなどから形成することができる。
【0078】
生理的に許容されるアルカリ塩およびアルカリ土類金属塩は、限定ではないが、エステルおよびカルバメートの形態でのナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩を挙げることができる。
【0079】
これらの塩、ならびに他の化合物は、エステル、カルバメート、および他の従来の「プロ−ドラッグ」形態(そのような形態で投与されたとき、インビボで活性部分に転化される)である場合もある。1つの実施形態において、前記プロドラッグは、エステルである。もう1つの実施形態において、前記プロドラッグは、カルバメートである。例えば、B. Testa and J. Caldwell, 「Prodrugs Revisited: The "Ad Hoc" Approach as a Complement to Ligand Design」, Medicinal Research Reviews, 16(3):233-241, ed., John Wiley & Sons (1996) 参照。
【0080】
1つの例では、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物をプロトン酸と反応させてN保護アミノエステル塩を形成することによって、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;そのN保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;−60℃から約−10℃でそのN保護アミノエステルを還元剤に添加することによって、N保護アミノエステルを還元すること;プロトン性溶媒でその還元を停止させること;そのN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;そのN保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;および塩基/溶媒系の存在下に塩化スルホニルで、その無保護アミノアルコールをスルホニル化することを含む、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。スキーム3参照。
【化41】

【0081】
もう1つの例では、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物をプロトン酸と反応させてN保護アミノエステル塩を形成することによって、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;そのN保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;−60℃から約−10℃でそのN保護アミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによって、N保護アミノエステルを還元すること;プロトン性溶媒でその還元を停止させること;そのN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;そのN保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;および塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルで、その無保護アミノアルコールをスルホニル化することを含む、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。
【0082】
さらなる例では、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物をプロトン酸と反応させてN保護アミノエステル塩を形成することによって、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;そのN保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;−60℃から約−10℃でそのN保護アミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによって、N保護アミノエステルを還元すること;プロトン性溶媒でその還元を停止させること;そのN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;そのN保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;および4−メチルモルホリン/酢酸イソプロピル、ヒューニッヒ塩基/テトラヒドロフラン、4−メチルモルホリン/アセトニトリル、4−メチルモルホリン/プロピオニトリル、4−メチルモルホリン/トルエンの中から選択される塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルで、その無保護アミノアルコールをスルホニル化することを含む、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。
【0083】
さらにもう1つの例では、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物をプロトン酸と反応させてN保護アミノエステル塩を形成することによって、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;そのN保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;−60℃から約−10℃でそのN保護アミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによって、N保護アミノエステルを還元すること;プロトン性溶媒でその還元を停止させること;そのN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;そのN保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;および塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルで、その無保護アミノアルコールをスルホニル化すること(スルホニル化は、保護および脱保護段階の不在下で行う)を含む、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。
【0084】
さらなる例では、N保護アミノエステルのジアステレオマー混合物をプロトン酸と反応させてN保護アミノエステル塩を形成することによって、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;そのN保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;−60℃から約−10℃でそのN保護アミノエステルを水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することによって、N保護アミノエステルを還元すること;プロトン性溶媒でその還元を停止させること;そのN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;そのN保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルでその無保護アミノアルコールをスルホニル化すること;およびそのスルホンアミド置換アルコールを精製すること(精製は、シリカゲル不在下で行う)を含む、スルホンアミド置換アルコールの調製方法を提供する。
【0085】
以下の実施例は、一例に過ぎず、本発明に対して限定であるとは解釈されない。
【実施例】
【0086】
実施例1
4,4,4−トリフルオロ−2−(1−フェネチルアミノ)−3−トリフルオロメチルブタン−1−オールの調製
水(80mL)中の50 %NaOH(24g、0.302mol)の溶液を、水(278mL)およびトルエン(1.01L)中のエチル4,4,4,4’,4’,4’−ヘキサフルオロ−N−[(1R)−1−フェニルエチル]−L−バリネート塩酸塩アミノエステル(100g、0.254mol)の懸濁液に添加した。その混合物を30分間攪拌し、二相を分離した。トルエン層を水(2×195mL)で洗浄し、その水を共沸によって除去した。そのトルエン溶液を大気圧下、蒸気温度が約108〜110℃に達するまで蒸留し、それにより、約600mLのトルエンがフラスコ内に残った。
【0087】
トルエン中のDIBAL−Hの溶液(1.5N、518mL、0.78mol)を−10℃に冷却し、その後、前記アミノエステルトルエン溶液(約600mL)を約90分かけて添加し、この間、その反応混合物を約−8から−11℃で維持した。その後、その混合物を約10分間攪拌した。その後、反応温度を25℃未満に維持しながら、EtOH(29mL、0.5mol)を10分かけて添加した。
【0088】
水(130mL)中の濃HCl(93g)の溶液を35〜40℃に加熱した。その後、温度を45℃以下に保ちながら、この加熱したHCl溶液に前記反応混合物を60から90分かけて添加した。その後、この混合物を40〜45℃で30分間攪拌した。二層を分離し、有機層を15% NaCI(700mL)で洗浄した。その後、その有機層溶液を−5℃に冷却し、その後、濃HCl(32g、0.33mol)を15分かけて添加した。その後、その混合物を6時間攪拌した。その後、前の段階からの塩生成物を濾過によって単離し、トルエン(2×200mL)で洗浄し、真空オーブンで乾燥させて、81g(90%)の最終生成物をオフホワイトの固体として得た。98.9面積% HPLC純度、98.5%強度。
【0089】
実施例2
5−クロロ−N−[(1S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−(トリフルオロ−メチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドの調製
4−メチルモルホリン(2.7mL、24.6mmol)を、酢酸イソプロピル(10mL)中の(2S)−2−アミノ−4,4,4−トリ−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−オール(2g、8.1mmol)の懸濁液に添加した。その混合物を約20〜25℃で約5〜10分間攪拌し、その後、塩化5−クロロチオフェン−2−スルホニル(2.0g、9.2mmol)を添加した。その反応混合物を20〜25℃で6〜18時間攪拌した。その後、水(10mL)をその反応混合物に添加し、それにより、固体は溶解した。その後、二層を分離し、有機層を10% NaHCO3(10mL)および10% NaCl(10mL)の溶液で洗浄した。酢酸イソプロピル層(約10mL)にヘプタン(10mL)を添加した。その後、その混合物を、常圧蒸留下で蒸留してその原体積のほぼ半分まで下がった。溶液は約80〜90℃のままで維持され、ヘプタン(10mL)を5〜10分かけて添加し、この時間の間に固体が形成した。ヘプタン添加後、その混合物を20〜25℃に冷却し、約1〜2時間攪拌し、その後、1時間、さらに約5〜10℃に冷却した。その後、固体を濾過によって回収し、ヘプタン(5mL)で洗浄し、オーブン乾燥させて、2.15g(67%)の生成物をオフホワイトの固体として得た。98面積% HPLC純度、およびHPLCによる99%より高いキラル純度。
【0090】
本明細書において引用した全ての出版物は、本明細書に参照により組み込まれる。特定の実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明の精神を逸脱することなく変更を行うことができることは理解される。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノエステルをヒドリド還元剤に約−60℃から約−10℃で添加することにより前記アミノエステルを還元することを含む、アミノエステルからのアミノアルコールまたはその塩の調製方法。
【請求項2】
前記アミノエステルが、構造:
【化1】

(式中、
1は、アルキルまたはベンジルであり;
2は、保護基であり;
3は、水素、低級アルキルおよび置換低級アルキルからなる群より選択され;
4は、(CF3nアルキル、(CF3n(置換アルキル)、(CF3nアルキルフェニル、(CF3nアルキル(置換フェニル)および(F)nシクロアルキルからなる群より選択され;
nは、1から3である)
のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノアルコールが、構造:
【化2】

(式中、R2〜R4は、請求項2に記載の通りである)
のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミノアルコール塩が、構造:
【化3】

(式中、R2〜R4は、請求項2に記載の通りである)
のものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記保護基R2が、1−メチルベンジル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
3が、Hであり、およびR4が、−CH(CF32である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノアルコールが、
【化4】

である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドリド還元剤が、水素化ジイソブチルアルミニウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プロトン性溶媒での前記還元の停止をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロトン性溶媒が、プロトン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プロトン酸が、塩酸または酢酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロトン性溶媒が、エタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記還元が、約−20から約−10℃で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アミノアルコールが、約90から約95%の収率で調製される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
構造:
【化5】

のアミノアルコールを調製するための方法であって、
次の構造のアミノエステル
【化6】

を、約−60から約−10℃で水素化ジイソブチルアルミニウムに前記アミノエステルを添加することによって還元すること、および
所望される場合には、前記アミノアルコールをその塩に転化させること
を含む、方法。
【請求項16】
前記アミノエステルがキラル保護基によってN保護される方法であって、前記N保護アミノエステルを還元する前に、前記N保護アミノエステルのジアステレオマーの混合物とプロトン酸を反応させて、N保護アミノエステル塩を形成すること、単一のアミノエステル塩ジアステレオマーを単離すること、および前記アミノエステル塩を塩基で中和して、単一のN保護アミノエステルジアステレオマーを形成することをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アミノアルコールがN保護される方法であって、前記N保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること、および前記無保護アミノアルコールを塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルでスルホニル化して、スルホンアミド置換アルコールを形成することをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
スルホンアミド置換アルコールの調製方法であって、
(a)N保護アミノエステルのジアステレオマーの混合物をプロトン酸と反応させて、N保護アミノエステル塩を形成することにより、N保護アミノエステルの1つのジアステレオマーを単離すること;
(b)前記N保護アミノエステル塩を塩基で中和して、N保護アミノエステルを形成すること;
(c)前記N保護アミノエステルを−60℃から約−10℃で水素化ジイソブチルアルミニウムに添加することにより、前記N保護アミノエステルを還元すること;
(d)段階(c)の反応をプロトン性溶媒で停止させること;
(e)段階(d)のN保護アミノアルコールをプロトン酸と反応させて、N保護アミノアルコール塩を形成すること;
(f)前記N保護アミノアルコール塩を水素化して、無保護アミノアルコール塩を形成すること;および
(g)前記無保護アミノアルコールを塩基/溶媒系の存在下、塩化スルホニルでスルホニル化すること
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記塩基/溶媒系が、4−メチルモルホリン/酢酸イソプロピル、ヒューニッヒ塩基/テトラヒドロフラン、4−メチルモルホリン/アセトニトリル、4−メチルモルホリン/プロピオニトリル、および4−メチルモルホリン/トルエンからなる群より選択される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記スルホニル化が、保護および脱保護段階の不在下で行われる、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記スルホンアミド置換アルコールを精製することをさらに含み、前記精製が、シリカゲルの不在下で行われる、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スルホンアミド置換アルコールが、1つまたはそれ以上のトリフルオロアルキル基で置換される、請求項17から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記スルホンアミド置換アルコールが、構造:
【化7】

(式中、
3およびR4は、請求項2に記載の通りであり;
5は、H、ハロゲン、CF3、Yに融合したジエン(YがCであるとき)、およびYに融合した置換ジエン(YがCであるとき)からなる群より選択され;
W、YおよびZは、C、CR6およびNからなる群より独立して選択され、W、YまたはZのうちの少なくとも1つは、Cであり;
Xは、O、S、SO2およびNR7からなる群より選択され;
6は、H、ハロゲン、C1からC6アルキル、および置換C1からC6アルキルからなる群より選択され;
7は、H、C1からC6アルキル、およびC3からC8シクロアルキルからなる群より選択され;
8、R9、R10、R11およびR12は、H、ハロゲン、C1からC6アルキル、置換C1からC6アルキル、C1からC6アルコキシ、置換C1からC6アルコキシ、およびNO2からなる群より独立して選択される;または
8とR9、R9とR10、R11とR12、またはR10とR11が融合して、
(i)3から8個の炭素原子を含有する炭素系飽和環、
(ii)3から8個の炭素原子を含有する炭素系不飽和環、または、
(iii)O、NおよびSからなる群より選択される1から3個のヘテロ原子を前記環の骨格内に含有する複素環
を形成し、環(i)から(iii)は、C1からC6アルキルまたは置換C1からC6アルキルを含む1から3個の置換基により、場合によっては置換されている)
のもの、またはその医薬的に許容される塩、水和物またはプロドラッグである、請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記スルホンアミド置換アルコールが、
【化8】

である、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
前記スルホンアミド置換アルコールが、
【化9】

である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水素化が、触媒によって行われる、請求項17から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記無保護アミノアルコール塩が、構造:
【化10】

(式中、R3およびR4は、請求項2に記載の通りである)
のものである、請求項17から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記無保護アミノアルコール塩が、
【化11】

である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記塩化スルホニルが、構造:
【化12】

(式中、R5、W、Y、Z、XおよびR8〜R12は、請求項23に記載の通りである)
のものである、請求項17から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記塩化スルホニルが、
【化13】

である、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2009−528281(P2009−528281A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555374(P2008−555374)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/004090
【国際公開番号】WO2007/098029
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】