説明

ズームレンズおよび撮像装置

【課題】小型の撮像装置に適した高い結像性能を有すると共に、広角端における画角を70°〜90°程度にできる広角化と、ズーム倍率を4〜6倍程度にできる高倍率化とを実現可能とする。
【解決手段】物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とを配列する。前記第5レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置された構成とする。以下の条件式を満足する。β5は前記第5レンズ群の横倍率、F5は前記第5レンズ群の焦点距離、Ftは望遠端における全系の焦点距離。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタルスチルカメラや家庭用ビデオカメラ等の小型の撮像装置に適したズームレンズ、およびそのようなズームレンズを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラ等の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及しつつある。このようなデジタルスチルカメラの普及に伴い一層の高画質化が求められており、特に画素数の多いデジタルスチルカメラ等においては、画素数の多い固体撮像素子に対応した結像性能に優れた撮影用レンズ、特にズームレンズが求められている。また、その上で、最近では広画角化への要求も強く、4倍から6倍程度のズーム比と半画角で40°程度の広い画角を有するコンパクトなズームレンズが求められている。
【0003】
一方、光路を途中で折り曲げることで入射光軸方向の小型化を図った屈曲式の光学系が知られている(特許文献1ないし4参照)。例えば特許文献1には、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群と、正の屈折力の第4レンズ群と、負の屈折力の第5レンズ群とにより構成された屈曲タイプの5群ズームレンズの構成が記載されている。このズームレンズでは、第5レンズ群中に光軸に対して垂直方向にシフトさせて像ブレを補正することが可能な正レンズを具備することで小型でありながら手ぶれ補正機構を有した屈曲タイプのズームレンズを提供している。
【0004】
また、特許文献2,3には、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群と、正の屈折力の第4レンズ群と、正または負の屈折力の第5レンズ群とにより構成される5群ズームレンズ構成とすることで、小型でありながら手ぶれ補正機構を有した屈曲タイプのズームレンズを提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−71993号公報
【特許文献2】特開2006−276475号公報
【特許文献3】特開2006−323051号公報
【特許文献4】特開2009−265557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1ないし4に記載の光学系では画角が60°〜65°程度であり広角化がなされていない。このような構成において広角化をなそうとする場合、画角が広がるために前玉径が大型化し、ひいてはズームレンズの奥行き方向の大型化を招く。加えて、ズーム倍率も3〜4倍程度であるため、広角化・高倍率化・小型化の両立を求められる昨今のニーズに十分に応えているとは言い難い。
【0007】
本開示の目的は、小型の撮像装置に適した高い結像性能を有すると共に、広角端における画角を70°〜90°程度にできる広角化と、ズーム倍率を4〜6倍程度にできる高倍率化とを実現可能なズームレンズおよび撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によるズームレンズは、物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とが配列され、少なくとも第2レンズ群と第4レンズ群とを移動させることによりズーミングを行うようにしたものである。また、第1レンズ群が、光路を折り曲げる反射部材を有し、第5レンズ群が、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置された構成とし、以下の条件式を満足するようにしたものである。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:第5レンズ群の横倍率
F5:第5レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
【0009】
本開示による撮像装置は、ズームレンズと、ズームレンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子とを備え、ズームレンズを、上記本開示によるズームレンズによって構成したものである。
【0010】
本開示によるズームレンズまたは撮像装置では、物体側より順に、正、負、正、正、正の屈折力配置とされ、少なくとも第2レンズ群と第4レンズ群とを移動させてズーミングを行う。
【発明の効果】
【0011】
本開示のズームレンズまたは撮像装置によれば、物体側より順に、正、負、正、正、正の屈折力を有する5つのレンズ群を配置し、各レンズ群の構成の最適化を図るようにしたので、小型の撮像装置に適した高い結像性能を有すると共に、広角端における画角を70°〜90°程度にできる広角化と、ズーム倍率を4〜6倍程度にできる高倍率化とを実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施の形態に係るズームレンズの第1の構成例を示すものであり、数値実施例1に対応するレンズ断面図である。
【図2】ズームレンズの第2の構成例を示すものであり、数値実施例2に対応するレンズ断面図である。
【図3】ズームレンズの第3の構成例を示すものであり、数値実施例3に対応するレンズ断面図である。
【図4】ズームレンズの第4の構成例を示すものであり、数値実施例4に対応するレンズ断面図である。
【図5】ズームレンズの第5の構成例を示すものであり、数値実施例5に対応するレンズ断面図である。
【図6】数値実施例1に対応するズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図7】数値実施例1に対応するズームレンズの中間焦点距離における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図8】数値実施例1に対応するズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図9】数値実施例2に対応するズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図10】数値実施例2に対応するズームレンズの中間焦点距離における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図11】数値実施例2に対応するズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図12】数値実施例3に対応するズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図13】数値実施例3に対応するズームレンズの中間焦点距離における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図14】数値実施例3に対応するズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図15】数値実施例4に対応するズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図16】数値実施例4に対応するズームレンズの中間焦点距離における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図17】数値実施例4に対応するズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図18】数値実施例5に対応するズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図19】数値実施例5に対応するズームレンズの中間焦点距離における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図20】数値実施例5に対応するズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)は歪曲収差を示す。
【図21】撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[レンズの基本構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係るズームレンズの第1の構成例を示している。この構成例は、後述の数値実施例1のレンズ構成に対応している。なお、図1は広角端で無限遠合焦時でのレンズ配置に対応している。同様にして、後述の数値実施例2〜5のレンズ構成に対応する第2ないし第5の構成例の断面構成を、図2〜図5に示す。図1〜図5において、符号Simgは像面を示す。d6,d11,d14,d17は、変倍に伴って変化する部分の面間隔を示す。
【0015】
本実施の形態に係るズームレンズは、光軸Z1に沿って物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とが配置された、実質的に5つのレンズ群で構成されている。
【0016】
開口絞りStは、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間で、第3レンズ群G3の近傍に配置されていることが好ましい。
【0017】
本実施の形態に係るズームレンズは、少なくとも第2レンズ群G2と第4レンズ群G4とを移動させることによりズーミングを行うようになっている。具体的には、例えば図1〜図5の各構成例において実線で移動の軌跡を示したように、広角端から望遠端への変倍の際に、第2レンズ群G2が物体側から像面側へ、第4レンズ群G4が像面側から物体側へ移動する。
【0018】
第1レンズ群G1は、光路を折り曲げる反射部材LPを有している。反射部材LPは例えば、光の入射面と、入射光軸を90°折り曲げる反射面と、反射後の光を透過する出射面とを有するプリズムで構成することができる。図1〜図5の各構成例では、便宜上、反射面を省略し、光の入射面と出射面とを同一方向の光軸Z1上に配置した状態で示しているが、実際には、反射部材LPにおいて光軸Z1が折り曲げられている。第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する単レンズの第1レンズL11と、反射部材LPと、正の屈折力を有する第2レンズL12とによって構成されていることが好ましい。
【0019】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群GFと、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群GRとが配置された構成となっている。第1のレンズ部分群GFは、負の屈折率を有する単レンズからなることが好ましい。
【0020】
その他、本実施の形態に係るズームレンズは、後述する所定の条件式を満足することが好ましい。
【0021】
[作用・効果]
次に、本実施の形態に係るズームレンズの作用および効果を説明する。
【0022】
本実施の形態に係るズームレンズでは、第1レンズ群G1内に反射部材LPを有することにより、ズーミングを行う際の第2レンズ群G2および第4レンズ群G4の移動方向が、反射部材LPで折り曲げられた後の光軸方向となり、レンズ系が薄型化される。また、正、負、正、正、正の屈折力配置のズーム構成を有し、かつ、少なくとも第2レンズ群G2と第4レンズ群G4とを移動させることによってズーミングを行うようにすることで、前玉径の小径化が達成できる上に、第1レンズ群G1から第5レンズ群G5までのレンズ径の差分が少ないズームレンズが実現され、ひいては、レンズの薄型化が達成できる。
【0023】
特に、第5レンズ群G5を、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群GFと正の屈折力を有する第2のレンズ部分群GRとで構成し、第5レンズ群G5が拡大作用を有することで、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4までの小型化が達成できる。
【0024】
(条件式の説明)
さらに、本実施の形態に係るズームレンズでは、以下の条件式を満足するように各レンズ群の構成の最適化を図ることで、デジタルスチルカメラや家庭用ビデオカメラ等の小型撮像装置に適した高い結像性能を有し、広角端における画角が70°〜90°程度の広角化と、ズーム倍率が4〜6倍程度の高倍率化とを実現可能となる。
【0025】
本実施の形態に係るズームレンズは、以下の条件式(1),(2)を満足する。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:第5レンズ群G5の横倍率
F5:第5レンズ群G5の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
【0026】
条件式(1)は第5レンズ群G5の横倍率β5を規定する式である。条件式(1)の下限値を超えると、第5レンズ群G5の拡大作用が弱まり、ズームレンズの小型化が困難になる。一方、条件式(1)の上限値を超えると、第5レンズ群G5の拡大作用が強まり、小型化は達成しやすくなるものの、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4までの収差を拡大することとなり、光学性能の確保が困難になる。従って、ズームレンズが条件式(1)を満足することにより、第1レンズ群G1の小型化を達成するとともに、望遠端での光学性能劣化に起因する色収差やコマ収差の発生を抑制することができる。
【0027】
条件式(2)は第5レンズ群G5の焦点距離F5と望遠端におけるレンズ系全体の焦点距離Ftとの比を規定する式である。条件式(2)の下限値を超えると、第5レンズ群G5の屈折力が弱まり、第5レンズ群G5で発生する歪曲収差量が少なくなり、第1レンズ群G1の小型・薄型化が困難になる。一方、条件式(2)の上限値を超えると、第5レンズ群G5の屈折力が強まりすぎ、第5レンズ群G5で発生する歪曲収差量がプラス側に大きく発生しすぎることとなり、レンズ系全体でも補正が困難となる。
【0028】
なお、本実施の形態においては、上記条件式(1),(2)に代えて、それぞれ以下の条件式(1)’,(2)’を満足するように構成してもよい。条件式(1)’,(2)’を満足することにより、光学全長の一層の小型化等を図ることができる。
1.2<β5<1.56 ……(1)’
0.1<|F5/Ft|<2 ……(2)’
【0029】
本実施の形態に係るズームレンズは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
|Fw/G1R1|<1.0 …(3)
ただし、
G1R1:第1レンズL11の物体側の面の曲率半径
Fw:広角端における全系の焦点距離
とする。
【0030】
条件式(3)は、第1レンズL11の物体側の面の曲率半径G1R1とレンズ全系の広角端の焦点距離Fwとを規定する式である。条件式(3)を満足することで、ズームレンズの薄型化、特に、入射光軸方向の厚みの短縮化を図ることができる。条件式(3)の上限値を超えると、第1レンズL11の曲率半径G1R1の絶対値が小さくなり、第1レンズ群G1の厚みが増してしまい、ズームレンズの薄型化が困難になる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、上記条件式(3)に代えて以下の条件式(3)’を満足するように構成してもよい。条件式(3)’を満足することで、より薄型化を図ることができる。
|Fw/G1R1|<0.8 …(3)’
【0032】
第1のレンズ部分群GFは、負の屈折率を有する単レンズからなり、以下の条件式を満足するように構成することが好ましい。
NdGF>1.9 ……(4)
0.6<|FGF/Fw|<2.0 ……(5)
ただし、
NdGF:第1のレンズ部分群GFのd線での屈折率
FGF:第1のレンズ部分群GFの焦点距離
とする。
【0033】
第1のレンズ部分群GFは、負の屈折率を有する単レンズで構成することにより、光学全長の短縮を図ることができる。条件式(4)は、第1のレンズ部分群GFの屈折率を規定する式である。条件式(4)の下限値を下回るとレンズ系全体のペッツバール和を補正することが困難となり、像面湾曲収差の補正が困難となる。条件式(5)は、第1のレンズ部分群GFの焦点距離FGFとレンズ全系の広角端の焦点距離Fwを規定する式である。条件式(5)の下限値を下回ると、第1のレンズ部分群GFの屈折力が強くなりすぎて、第5レンズ群G5において発生する諸収差量が大きくなると共に偏芯敏感度が高くなりレンズの量産性を阻害してしまう。一方、条件式(5)の上限値を超えると、第1のレンズ部分群GFの屈折力が弱くなりすぎて、ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。条件式(4),(5)を満足することで、レンズ系全体のペッツバール和を低減し、像面湾曲収差の発生を抑え、ズームレンズの小型化を図りつつも高い光学性能を確保することができる。
【0034】
なお、本実施の形態においては、上記条件式(4),(5)に代えて、以下の条件式(4)’,(5)’を満足するように構成してもよい。条件式(4)’,(5)’を満足することで、より高性能化を図ることができる。
NdGF>2.0 ……(4)’
1.0<|FGF/Fw|<1.8 ……(5)’
【0035】
本実施の形態に係るズームレンズは、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
1.2<G1R2/G2R1<2.0 ……(6)
ただし、
G1R2:第1レンズ群G1の最も像側の面の曲率半径
G2R1:第2レンズ群G2の最も物体側の面の曲率半径
とする。
【0036】
条件式(6)は、第1レンズ群G1の最も像側の面(第2レンズL12の像側の面)の曲率半径G1R2と第2レンズ群G2の最も物体側の面の曲率半径G2R1との比を規定する式である。条件式(6)の下限値を下回ると、第1レンズ群G1で補正しきれない残留歪曲収差を補正しきれなくなり、画像処理システムにて適切に歪曲収差補正を実施することが不可能となるか、第1レンズL11の大型化を引き起こし、ズームレンズの小型化が達成できなくなる。一方、条件式(6)の上限値を超えると、第2レンズ群G2の最も物体側の面の曲率半径G2R1が第1レンズ群G1内の第2レンズL12の像側の面の曲率半径G1R2に対し小さくなることとなり、結果、偏芯敏感度が高くなりレンズの量産性を阻害してしまう。条件式(6)満足することにより、第1レンズ群G1の厚みを薄くすることで補正しきれなくなった歪曲収差を抑えることができる。これにより、ズームレンズの小型化、ならびに画像処理システムで適切な歪曲収差のコントロールが可能となる。
【0037】
本実施の形態に係るズームレンズは、以下の条件式(7),(8)を満足することが望ましい。
0.7<|F1/(Fw×Ft)1/2|<1.5 ……(7)
D1/{(Ft/Fw)×tan(ωw)}<5.0 ……(8)
ただし、
F1:第1レンズ群G1の焦点距離
D1:第1レンズ群G1の最も物体側の面から反射部材LPの像側の面までの光軸上距離
ωw:広角端における画角
とする。
【0038】
条件式(7)は、第1レンズ群G1の焦点距離F1と、レンズ全系における広角端の焦点距離Fwと望遠端の焦点距離Ftとの積の平方根を規定する式である。条件式(7)の下限値を下回ると、第1レンズ群G1の屈折力が強くなりすぎて、第1レンズ群G1において発生する望遠端における球面収差や軸上色収差が大きくなると共に偏芯敏感度が高くなりレンズの量産性を阻害してしまう。一方、条件式(7)の上限値を超えると、第1レンズ群G1の大型化を引き起こし、ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。条件式(8)は、G1R1からG2R2までの距離と、広角端における画角ωwと、ズーム倍率(Ft/Fw)とを規定する式である。条件式(8)の上限値を超えると、第1レンズ群G1の大型化を引き起こし、ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。条件式(7),(8)を満足することで、ズームレンズの薄型化、特に、第1レンズ群G1の小型化が達成でき、ひいては入射光軸方向の厚みの短縮化を図ることができる。
【0039】
本実施の形態に係るズームレンズは、以下の条件式(9),(10)を満足することが望ましい。
NdG1>1.9 ……(9)
NdPr>1.9 ……(10)
ただし、
NdG1:第1レンズ群G1内の第1レンズL11のd線での屈折率
NdPr:反射部材LPのd線での屈折率
とする。
【0040】
条件式(9)は、第1レンズL11のd線での屈折率を規定する式である。条件式(9)の下限値を下回ると、第1レンズ群G1の大型化を引き起こし、ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。条件式(10)は、反射部材LPのd線での屈折率を規定する式である。条件式(10)の下限値を下回ると、第1レンズ群G1の大型化を引き起こし、ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。条件式(9),(10)を満足することで、ズームレンズの薄型化、特に、第1レンズ群G1の小型化が達成でき、入射光軸方向の厚みの短縮化を図ることができる。
【0041】
[その他の望ましい構成]
その他、本実施の形態に係るズームレンズは、下記のような構成にすることが望ましい。
【0042】
第1レンズ群G1ないし第5レンズ群G5のうち、一つのレンズ群または一つのレンズ群の一部を防振レンズ群として光軸Z1に略垂直な方向へ移動(シフト)させることにより、像をシフトさせることが可能である。この場合、例えば、像ぶれを検出する検出系と、防振レンズ群をシフトさせる駆動系と、検出系の出力に基づいて駆動系にシフト量を付与する制御系とを組み合わせることにより、ズームレンズを防振光学系として機能させることが可能である。特に、本実施の形態に係るズームレンズにおいては、第5レンズ群G5内の1つの正レンズを光軸Z1に対して略垂直な方向にシフトさせることにより、少ない収差変動で像をシフトさせることが可能である。
【0043】
第4レンズ群G4を光軸方向へ移動させることによりフォーカシングを行うことが好ましい。特に、第4レンズ群G4をフォーカシングのためのレンズ群として用いることにより、シャッタユニットやアイリスユニットの駆動制御を行う駆動系やレンズ群をシフトさせる防振駆動系との干渉を回避し易く、小型化を図ることができる。
【0044】
なお、レンズ系の像側に、カバーガラス等の光学部材GCが配置されていても良い。また、光学部材GCとして、モアレ縞の発生を防ぐためにローパスフィルタを配置したり、受光素子の分光感度特性に応じて赤外カットフィルタを配置しても良い。
【0045】
また、本実施の形態に係るズームレンズを撮像装置に適用する場合、撮像信号によって得られた撮影画像に対し歪曲収差補正処理を施す信号処理部を備えることが望ましい。例えば後述の撮像装置100では、カメラ信号処理部20において歪曲収差補正処理を施すことが望ましい。本実施の形態に係るズームレンズでは、広角端での撮影画角を70°〜90°程度とし、4〜6倍程度の変倍率を実現するために、広角端から望遠端における歪曲収差変動が大きい。この歪曲収差を補正する機能を撮像装置に持たせることで、薄型のズームレンズが実現できる。
【0046】
[撮像装置への適用例]
図21は、本実施の形態に係るズームレンズを適用した撮像装置100の一構成例を示している。この撮像装置100は、例えばデジタルスチルカメラであり、カメラブロック10と、カメラ信号処理部20と、画像処理部30と、LCD(Liquid Crystal Display)40と、R/W(リーダ/ライタ)50と、CPU(Central Processing Unit)60と、入力部70とを備えている。
【0047】
カメラブロック10は、撮像機能を担うものであり、ズームレンズ11(図1ないし図5に示したズームレンズ1,2,3,4,5)を含む光学系と、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子12とを有している。撮像素子12は、ズームレンズ11によって形成された光学像を電気信号へ変換することで、光学像に応じた撮像信号(画像信号)を出力するようになっている。
【0048】
カメラ信号処理部20は、撮像素子12から出力された画像信号に対してアナログ−デジタル変換、ノイズ除去、画質補正、輝度・色差信号への変換等の各種の信号処理を行うものである。画質補正としては、例えば撮影画像に対し歪曲収差補正処理を施す。
【0049】
画像処理部30は、画像信号の記録再生処理を行うものであり、所定の画像データフォーマットに基づく画像信号の圧縮符号化・伸張復号化処理や解像度等のデータ仕様の変換処理等を行うようになっている。
【0050】
LCD40は、ユーザの入力部70に対する操作状態や撮影した画像等の各種のデータを表示する機能を有している。R/W50は、画像処理部30によって符号化された画像データのメモリカード1000への書込、およびメモリーカード1000に記録された画像データの読み出しを行うものである。メモリカード1000は、例えば、R/W50に接続されたスロットに対して着脱可能な半導体メモリーである。
【0051】
CPU60は、撮像装置100に設けられた各回路ブロックを制御する制御処理部として機能するものであり、入力部70からの指示入力信号等に基づいて各回路ブロックを制御するようになっている。入力部70は、ユーザによって所要の操作が行われる各種のスイッチ等からなり、例えば、シャッタ操作を行うためのシャッタレリーズボタンや、動作モードを選択するための選択スイッチ等によって構成され、ユーザによる操作に応じた指示入力信号をCPU60に対して出力するようになっている。レンズ駆動制御部80は、カメラブロック10に配置されたレンズの駆動を制御するものであり、CPU60からの制御信号に基づいてズームレンズ11の各レンズを駆動する図示しないモータ等を制御するようになっている。
【0052】
以下に、撮像装置100における動作を説明する。
撮影の待機状態では、CPU60による制御の下で、カメラブロック10において撮影された画像信号が、カメラ信号処理部20を介してLCD40に出力され、カメラスルー画像として表示される。また、入力部70からのズーミングのための指示入力信号が入力されると、CPU60がレンズ駆動制御部80に制御信号を出力し、レンズ駆動制御部80の制御に基づいてズームレンズ11の所定のレンズが移動する。
【0053】
入力部70からの指示入力信号によりカメラブロック10の図示しないシャッターが動作されると、撮影された画像信号がカメラ信号処理部20から画像処理部30に出力されて圧縮符号化処理され、所定のデータフォーマットのデジタルデータに変換される。変換されたデータはR/W50に出力され、メモリカード1000に書き込まれる。
【0054】
なお、フォーカシングは、例えば、入力部50のシャッタレリーズボタンが半押しされた場合や記録(撮影)のために全押しされた場合等に、CPU60からの制御信号に基づいてレンズ駆動制御部80がズームレンズ11の所定のレンズを移動させることにより行われる。
【0055】
メモリカード1000に記録された画像データを再生する場合には、入力部70に対する操作に応じて、R/W50によってメモリカード1000から所定の画像データが読み出され、画像処理部30によって伸張復号化処理が行われた後、再生画像信号がLCD40に出力されて再生画像が表示される。
【0056】
なお、上記した実施の形態においては、撮像装置をデジタルスチルカメラに適用した例を示したが、撮像装置の適用範囲はデジタルスチルカメラに限られることはなく、デジタルビデオカメラ、カメラが組み込まれた携帯電話、カメラが組み込まれたPDA(Personal Digital Assistant)等のデジタル入出力機器のカメラ部等として広く適用することができる。
【実施例】
【0057】
次に、本実施の形態に係るズームレンズの具体的な数値実施例について説明する。
なお、以下の各表や説明において示した記号の意味等については、下記に示す通りである。「i」は、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の面の番号を示している。「ri」は、i番目の面の曲率半径(mm)を示す。「di」はi番目の面とi+1番目の面との間の光軸上の間隔(mm)を示す。「ni」はi番目の面を有する光学要素の材質のd線(波長587.6nm)における屈折率の値を示す。「νi」はi番目の面を有する光学要素の材質のd線におけるアッベ数の値を示す。また、Fno.はFナンバー、fは全系の焦点距離、ωは半画角を示す。
【0058】
「di」の値が「variable」となっている部分は、面間隔が可変であることを示す。「ri」の値が「INFINITY」となっている部分は平面、または絞り面を示す。面番号中に「STO」を付した面は絞り面であることを示す。「IMG」は像面を示す。また、「ASP」で示した面は非球面であり、非球面の形状は次式で表される形状である。非球面係数のデータにおいて、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−05」であれば、「1.0×10-5」であることを示す。
【0059】
(非球面の式)
【数1】

【0060】
ただし、
x:レンズ面頂点からの光軸方向の距離
y:光軸と垂直な方向の高さ
c:レンズ頂点での近軸曲率
K:コーニック定数
Ai:第i次の非球面係数
である。
【0061】
以下の各数値実施例に係るズームレンズ1〜5は、光軸Z1に沿って物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とが配置された、実質的に5つのレンズ群で構成されている。開口絞りStは、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間で、第3レンズ群G3の近傍に配置されている。また、最終レンズ群である第5レンズ群G5と像面Simgとの間に、カバーガラス等の平板状の光学部材GCが配置されている。広角端から望遠端への変倍の際には、第2レンズ群G2が物体側から像面側へ、第4レンズ群G4が像面側から物体側へ移動する。
【0062】
[数値実施例1]
[表1]〜[表4]は、図1に示した第1の構成例に係るズームレンズ1に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表1]にはその基本的なレンズデータを示し、[表2]には非球面に関するデータを示す。[表3]、[表4]にはその他のデータを示す。このズームレンズ1は、変倍に伴って第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が移動するため、それらのレンズ群の前後の面間隔の値は可変となっている。この可変の面間隔の広角端、中間焦点距離、および望遠端での値を、Fno.,f,ωの値と共に[表3]に示す。[表4]には、各レンズ群の始面の面番号と焦点距離を示す。
【0063】
このズームレンズ1では、第1レンズ群G1が、物体側から順に、負のメニスカスレンズ(第1レンズL11)と、光軸Z1を90°折り曲げるプリズム(反射部材LP)と、両面に非球面を有する両凸レンズ(第2レンズL12)とで構成されている。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面に非球面を有する両凹レンズL21と、両凹レンズL22および正レンズL23からなる接合レンズとで構成されている。第3レンズ群G3は、物体側に非球面を有する両凸レンズL31のみで構成されている。第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に非球面を有する両凸レンズL41と負のメニスカスレンズL42とからなる接合レンズで構成されている。第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹レンズL51と、両面に非球面を有する両凸レンズL52と、物体側に非球面を有する両凸レンズL53とで構成されている。両凹レンズL51が第1のレンズ部分群GFを構成している。両凸レンズL52と両凸レンズL53とが、第2のレンズ部分群GRを構成している。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
[数値実施例2]
[表5]〜[表8]は、図2に示した第2の構成例に係るズームレンズ2に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表5]にはその基本的なレンズデータを示し、[表6]には非球面に関するデータを示す。[表7]、[表8]にはその他のデータを示す。このズームレンズ2は、変倍に伴って第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が移動するため、それらのレンズ群の前後の面間隔の値は可変となっている。この可変の面間隔の広角端、中間焦点距離、および望遠端での値を、Fno.,f,ωの値と共に[表7]に示す。[表8]には、各レンズ群の始面の面番号と焦点距離を示す。
【0069】
このズームレンズ2では、第1レンズ群G1が、物体側から順に、負のメニスカスレンズ(第1レンズL11)と、光軸Z1を90°折り曲げるプリズム(反射部材LP)と、両面に非球面を有する両凸レンズ(第2レンズL12)とで構成されている。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面に非球面を有する両凹レンズL21と、両凹レンズL22および正レンズL23からなる接合レンズとで構成されている。第3レンズ群G3は、両面に非球面を有する両凸レンズL31のみで構成されている。第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に非球面を有する両凸レンズL41と負のメニスカスレンズL42とからなる接合レンズで構成されている。第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹レンズL51と、両面に非球面を有する両凸レンズL52と、物体側に非球面を有する両凸レンズL53とで構成されている。両凹レンズL51が第1のレンズ部分群GFを構成している。両凸レンズL52と両凸レンズL53とが、第2のレンズ部分群GRを構成している。
【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
[数値実施例3]
[表9]〜[表12]は、図3に示した第3の構成例に係るズームレンズ3に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表9]にはその基本的なレンズデータを示し、[表10]には非球面に関するデータを示す。[表11]、[表12]にはその他のデータを示す。このズームレンズ3は、変倍に伴って第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が移動するため、それらのレンズ群の前後の面間隔の値は可変となっている。この可変の面間隔の広角端、中間焦点距離、および望遠端での値を、Fno.,f,ωの値と共に[表11]に示す。[表12]には、各レンズ群の始面の面番号と焦点距離を示す。
【0075】
このズームレンズ3では、第1レンズ群G1が、物体側から順に、負のメニスカスレンズ(第1レンズL11)と、光軸Z1を90°折り曲げるプリズム(反射部材LP)と、両面に非球面を有する両凸レンズ(第2レンズL12)とで構成されている。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面に非球面を有する両凹レンズL21と、両凹レンズL22および正レンズL23からなる接合レンズとで構成されている。第3レンズ群G3は、両面に非球面を有する両凸レンズL31のみで構成されている。第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に非球面を有する両凸レンズL41と負のメニスカスレンズL42とからなる接合レンズで構成されている。第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹レンズL51と、両面に非球面を有する両凸レンズL52と、両面に非球面を有する両凸レンズL53とで構成されている。両凹レンズL51が第1のレンズ部分群GFを構成している。両凸レンズL52と両凸レンズL53とが、第2のレンズ部分群GRを構成している。
【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
【表12】

【0080】
[数値実施例4]
[表13]〜[表16]は、図4に示した第4の構成例に係るズームレンズ4に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表13]にはその基本的なレンズデータを示し、[表14]には非球面に関するデータを示す。[表15]、[表16]にはその他のデータを示す。このズームレンズ4は、変倍に伴って第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が移動するため、それらのレンズ群の前後の面間隔の値は可変となっている。この可変の面間隔の広角端、中間焦点距離、および望遠端での値を、Fno.,f,ωの値と共に[表15]に示す。[表16]には、各レンズ群の始面の面番号と焦点距離を示す。
【0081】
このズームレンズ4では、第1レンズ群G1が、物体側から順に、負のメニスカスレンズ(第1レンズL11)と、光軸Z1を90°折り曲げるプリズム(反射部材LP)と、両面に非球面を有する両凸レンズ(第2レンズL12)とで構成されている。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面に非球面を有する両凹レンズL21と、両凹レンズL22および正レンズL23からなる接合レンズとで構成されている。第3レンズ群G3は、両面に非球面を有する両凸レンズL31のみで構成されている。第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に非球面を有する両凸レンズL41と負のメニスカスレンズL42とからなる接合レンズで構成されている。第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹レンズL51と、両面に非球面を有する両凸レンズL52と、両面に非球面を有する両凸レンズL53とで構成されている。両凹レンズL51が第1のレンズ部分群GFを構成している。両凸レンズL52と両凸レンズL53とが、第2のレンズ部分群GRを構成している。
【0082】
【表13】

【0083】
【表14】

【0084】
【表15】

【0085】
【表16】

【0086】
[数値実施例5]
[表17]〜[表20]は、図5に示した第5の構成例に係るズームレンズ5に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表17]にはその基本的なレンズデータを示し、[表18]には非球面に関するデータを示す。[表18]、[表19]にはその他のデータを示す。このズームレンズ5は、変倍に伴って第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が移動するため、それらのレンズ群の前後の面間隔の値は可変となっている。この可変の面間隔の広角端、中間焦点距離、および望遠端での値を、Fno.,f,ωの値と共に[表19]に示す。[表20]には、各レンズ群の始面の面番号と焦点距離を示す。
【0087】
このズームレンズ5では、第1レンズ群G1が、物体側から順に、負のメニスカスレンズ(第1レンズL11)と、光軸Z1を90°折り曲げるプリズム(反射部材LP)と、両面に非球面を有する両凸レンズ(第2レンズL12)とで構成されている。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面に非球面を有する両凹レンズL21と、両凹レンズL22および正レンズL23からなる接合レンズとで構成されている。第3レンズ群G3は、両面に非球面を有する両凸レンズL31のみで構成されている。第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に非球面を有する両凸レンズL41と負のメニスカスレンズL42とからなる接合レンズで構成されている。第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹レンズL51と、両面に非球面を有する両凸レンズL52と、物体側に非球面を有する両凸レンズおよびメニスカスレンズからなる接合レンズL54とで構成されている。両凹レンズL51が第1のレンズ部分群GFを構成している。両凸レンズL52と接合レンズL54とが、第2のレンズ部分群GRを構成している。
【0088】
【表17】

【0089】
【表18】

【0090】
【表19】

【0091】
【表20】

【0092】
[各実施例のその他の数値データ]
[表21]には、上述の各条件式に関する値を、各数値実施例についてまとめたものを示す。[表21]から分かるように、各条件式について、各数値実施例の値がその数値範囲内となっている。
【0093】
【表21】

【0094】
[収差性能]
図6〜図20に、各数値実施例の収差性能を示す。図6〜図20に示した収差はいずれも無限遠合焦時のものである。
【0095】
図6(A)〜(C)はそれぞれ、数値実施例1に対応するズームレンズ1の広角端における球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。図7(A)〜(C)は中間焦点距離状態における同様の各収差を示している。図8(A)〜(C)は望遠端における同様の各収差を示している。これらの各収差図には、d線(587.6nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図には、g線(435.84nm)、C線(656.28nm)についての収差も示す。非点収差図において、S(実線)はサジタル方向、M(破線)はメリジオナル方向の収差を示す。FnoはF値、ωは半画角を示す。
【0096】
同様に、数値実施例2に対応するズームレンズ2についての球面収差、非点収差、および歪曲収差を図9〜図11の(A)〜(C)に示す。同様にして、数値実施例3に対応するズームレンズ3についての球面収差、非点収差、および歪曲収差を図12〜図14の(A)〜(C)に示す。同様にして、数値実施例4に対応するズームレンズ4についての球面収差、非点収差、および歪曲収差を図15〜図17の(A)〜(C)に示す。同様にして、数値実施例5に対応するズームレンズ5についての球面収差、非点収差、および歪曲収差を図18〜図20の(A)〜(C)に示す。
【0097】
以上の各収差図から分かるように、各実施例について、広角端、広角端と望遠端との中間焦点距離、および望遠端の各変倍域において、各収差ともバランス良く補正され、優れた結像性能を有している。
【0098】
また、各実施例について、広角端における画角が70°〜90°程度で、ズーム比が4〜6倍程度のズームレンズが達成できている。
【0099】
<その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記実施の形態および実施例の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各数値実施例において示した各部の形状および数値は、いずれも本技術を実施するための具体化のほんの一例に過ぎず、これらによって本技術の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0100】
また、上記実施の形態および実施例では、5つのレンズ群からなる構成について説明したが、実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備えた構成であっても良い。
【0101】
また例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
[1]
物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とが配列され、
少なくとも前記第2レンズ群と前記第4レンズ群とを移動させることによりズーミングを行うようになされ、
前記第1レンズ群は、光路を折り曲げる反射部材を有し、
前記第5レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置され、
以下の条件式を満足する
ズームレンズ。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:前記第5レンズ群の横倍率
F5:前記第5レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
[2]
前記第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する単レンズの第1レンズと、前記反射部材と、正の屈折力を有する第2レンズとによって構成され、
以下の条件式を満足する、上記[1]に記載のズームレンズ。
|Fw/G1R1|<1.0 …(3)
ただし、
G1R1:前記第1レンズの物体側の面の曲率半径
Fw:広角端における全系の焦点距離
とする。
[3]
前記第1のレンズ部分群は、負の屈折率を有する単レンズからなり、
以下の条件式を満足する、上記[1]または[2]に記載のズームレンズ。
NdGF>1.9 ……(4)
0.6<|FGF/Fw|<2.0 ……(5)
ただし、
NdGF:前記第1のレンズ部分群のd線での屈折率
FGF:前記第1のレンズ部分群の焦点距離
とする。
[4]
以下の条件式を満足する、上記[1]ないし[3]のいずれか1つに記載のズームレンズ。
1.2<G1R2/G2R1<2.0 ……(6)
ただし、
G1R2:前記第1レンズ群の最も像側の面の曲率半径
G2R1:前記第2レンズ群の最も物体側の面の曲率半径
とする。
[5]
以下の条件式を満足する、上記[1]ないし[4]のいずれか1つに記載のズームレンズ。
0.7<|F1/(Fw×Ft)1/2|<1.5 ……(7)
D1/{(Ft/Fw)×tan(ωw)}<5.0 ……(8)
ただし、
F1:前記第1レンズ群の焦点距離
D1:前記第1レンズ群の最も物体側の面から前記反射部材の像側の面までの光軸上距離
ωw:広角端における画角
とする。
[6]
以下の条件式を満足する、上記[2]に記載のズームレンズ。
NdG1>1.9 ……(9)
NdPr>1.9 ……(10)
ただし、
NdG1:前記第1レンズ群内の前記第1レンズのd線での屈折率
NdPr:前記反射部材のd線での屈折率
とする。
[7]
実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備えた
上記[1]ないし[6]のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[8]
ズームレンズと、前記ズームレンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子とを備え、
前記ズームレンズは、
物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とが配列され、
少なくとも前記第2レンズ群と前記第4レンズ群とを移動させることによりズーミングを行うようになされ、
前記第1レンズ群は、光路を折り曲げる反射部材を有し、
前記第5レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置され、
以下の条件式を満足する
撮像装置。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:前記第5レンズ群の横倍率
F5:前記第5レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
[9]
前記撮像信号によって得られた撮影画像に対し歪曲収差補正処理を施す信号処理部をさらに備えた
上記[8]に記載の撮像装置。
[10]
前記ズームレンズは、実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備える
上記[8]または[9]に記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0102】
G1…第1レンズ群、G2…第2レンズ群、G3…第3レンズ群、G4…第4レンズ群、G5…第5レンズ群、GC…光学部材、GF…第1のレンズ部分群、GR…第2のレンズ部分群、St…開口絞り、Ll1…第1レンズ、Ll2…第2レンズ、LP…反射部材、Simg…像面、Z1…光軸、1〜5…ズームレンズ、10…カメラブロック、11…ズームレンズ、12…撮像素子、20…カメラ信号処理部、30…画像処理部、40…LCD、50…R/W(リーダ/ライタ)、60…CPU、70…入力部、80…レンズ駆動制御部、100…撮像装置、1000…メモリカード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とが配列され、
少なくとも前記第2レンズ群と前記第4レンズ群とを移動させることによりズーミングを行うようになされ、
前記第1レンズ群は、光路を折り曲げる反射部材を有し、
前記第5レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置され、
以下の条件式を満足する
ズームレンズ。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:前記第5レンズ群の横倍率
F5:前記第5レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
【請求項2】
前記第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する単レンズの第1レンズと、前記反射部材と、正の屈折力を有する第2レンズとによって構成され、
以下の条件式を満足する
請求項1に記載のズームレンズ。
|Fw/G1R1|<1.0 …(3)
ただし、
G1R1:前記第1レンズの物体側の面の曲率半径
Fw:広角端における全系の焦点距離
とする。
【請求項3】
前記第1のレンズ部分群は、負の屈折率を有する単レンズからなり、以下の条件式を満足する
請求項1に記載のズームレンズ。
NdGF>1.9 ……(4)
0.6<|FGF/Fw|<2.0 ……(5)
ただし、
NdGF:前記第1のレンズ部分群のd線での屈折率
FGF:前記第1のレンズ部分群の焦点距離
とする。
【請求項4】
以下の条件式を満足する
請求項1に記載のズームレンズ。
1.2<G1R2/G2R1<2.0 ……(6)
ただし、
G1R2:前記第1レンズ群の最も像側の面の曲率半径
G2R1:前記第2レンズ群の最も物体側の面の曲率半径
とする。
【請求項5】
以下の条件式を満足する
請求項1に記載のズームレンズ。
0.7<|F1/(Fw×Ft)1/2|<1.5 ……(7)
D1/{(Ft/Fw)×tan(ωw)}<5.0 ……(8)
ただし、
F1:前記第1レンズ群の焦点距離
D1:前記第1レンズ群の最も物体側の面から前記反射部材の像側の面までの光軸上距離
ωw:広角端における画角
とする。
【請求項6】
以下の条件式を満足する
請求項2に記載のズームレンズ。
NdG1>1.9 ……(9)
NdPr>1.9 ……(10)
ただし、
NdG1:前記第1レンズ群内の前記第1レンズのd線での屈折率
NdPr:前記反射部材のd線での屈折率
とする。
【請求項7】
ズームレンズと、前記ズームレンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子とを備え、
前記ズームレンズは、
物体側より順に、ズーミングの際に固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群とが配列され、
少なくとも前記第2レンズ群と前記第4レンズ群とを移動させることによりズーミングを行うようになされ、
前記第1レンズ群は、光路を折り曲げる反射部材を有し、
前記第5レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1のレンズ部分群と、正の屈折力を有する第2のレンズ部分群とが配置され、
以下の条件式を満足する
撮像装置。
1.1<β5<1.56 ……(1)
0.1<|F5/Ft|<4 ……(2)
ただし、
β5:前記第5レンズ群の横倍率
F5:前記第5レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
とする。
【請求項8】
前記撮像信号によって得られた撮影画像に対し歪曲収差補正処理を施す信号処理部をさらに備えた
請求項7に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−50650(P2013−50650A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189616(P2011−189616)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】