説明

センサチップの実装構造およびその実装方法

【課題】ガラス台座を設けることなく、センサチップの検出精度が低下することを抑制することができるセンサチップの実装構造およびその実装方法を提供することを目的とする。
【解決手段】センサチップ60の裏面61bに当該裏面61bに対して交差する方向に突出すると共に凹部62を取り囲む凸部64と、裏面61bのうち凸部64を挟んで凹部62側と反対側に位置する接合領域とを備え、接合材70を接着剤71と、接着剤71に混入された間隔保持材72とを有するものとし、被実装部材40におけるセンサチップ60の接合領域と対向する領域に塗布領域41を備え、センサチップ60と被実装部材40との間に、センサチップ60のうち接合領域と被実装部材40とに接触する間隔保持材72により、所定の間隔を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムを有するセンサチップを被実装部材に接合材を介して接合してなるセンサチップの実装構造およびその実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板の裏面側に凹部を形成することにより構成された薄肉のダイヤフラムを有するセンサチップを被実装部材に、ビーズ等が混入された接着剤を介して接合してなるセンサチップの実装構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このような実装構造では、センサチップの裏面には、ガラス等で構成されると共に熱膨張係数がセンサチップの熱膨張係数に近い値を有する台座が備えられており、センサチップが台座および接着剤を介して被実装部材に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−247903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなセンサチップの実装構造では、ガラス台座を設けなければならないため、部品点数が多くなるという問題がある。
【0005】
この問題を解決するためには、単純には、ガラス台座を設けずに、センサチップを直接被実装部材に接着剤を介して接合することが考えられる。しかしながら、センサチップを直接被実装部材に接合した場合には、接着剤が凹部の壁面に沿って濡れ広がってダイヤフラムに付着してしまうことがあり、接着剤がダイヤフラムに付着した場合にはセンサチップの検出精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ガラス台座を設けることなく、センサチップの検出精度が低下することを抑制することができるセンサチップの実装構造およびその実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明では、半導体基板(61)の裏面(61b)側に凹部(62)を形成することにより構成された薄肉のダイヤフラム(63)を有するセンサチップ(60)を、被実装部材(40)における塗布領域(41)に塗布された接合材(70)を濡れ広がらせることにより、被実装部材(40)に接合してなるセンサチップの実装構造であって、センサチップ(60)は、裏面(61b)に当該裏面(61b)に対して交差する方向に突出すると共に凹部(62)を取り囲む凸部(64)と、裏面(61b)のうち凸部(64)を挟んで凹部(62)側と反対側に位置する接合領域を有し、接合材(70)は、センサチップ(60)と被実装部材(40)とを接合する接着剤(71)と、接着剤(71)に混入された間隔保持材(72)とを有し、被実装部材(40)は、センサチップ(60)の裏面(61b)と対向する領域のうち、接合領域と対向する領域に塗布領域(41)を有しており、センサチップ(60)と被実装部材(40)との間は、センサチップ(60)のうち接合領域と被実装部材(40)とに接触する間隔保持材(72)により、所定の間隔が形成されていることを特徴としている。
【0008】
このようなセンサチップの実装構造では、センサチップ(60)は裏面(61b)に凹部(62)を取り囲む凸部(64)を備えている。このため、塗布領域(41)に塗布された接合材(70)が濡れ広がるとき、接合材(70)は凸部(64)と衝突して濡れ広がる勢いが減少することになる。また、接合材(70)のうち接着剤(71)は狭い空間から広い空間には表面張力により濡れ広がりにくいため、凸部(64)と被実装部材(40)との間に塗れ広がった接着剤(71)は、凹部(62)内に濡れ広がることが抑制される。したがって、センサチップ(60)に凸部(64)を形成しない場合と比較して、センサチップ(60)の裏面(61b)のうち凹部(62)内に接合材(70)、具体的には接着剤(71)が濡れ広がることを抑制することができる。このため、センサチップ(60)のダイヤフラム(63)に接着剤(71)が付着することを抑制することができ、センサチップ(60)の検出精度が低下することを抑制することができる。
【0009】
例えば、請求項2に記載の発明のように、凸部(64)における裏面(61b)から先端までの長さを、センサチップ(60)および被実装部材(40)と接触している間隔保持材(72)における裏面(61b)の垂直方向の長さより短くすることができる。
【0010】
このような実装構造では、被実装部材(40)の塗布領域(41)が接合領域と対向する領域、つまり、凸部(64)と対向する領域よりも外側の領域にあり、凸部(64)の長さを間隔保持材(72)のうち凸部(64)の突出方向と平行な方向の長さより短くしている。このため、凸部(64)と被実装部材(40)との間に間隔保持材(72)が挟まれることを抑制することができる。したがって、センサチップ(60)が被実装部材(40)に対して傾くことを抑制することができ、また、センサチップ(60)と被実装部材(40)との間が所望の間隔より大きくなることを抑制することができる。また、凸部(64)が直接被実装部材(40)と接触することが抑制されるので、被実装部材(40)から熱応力等が直接センサチップ(60)に伝達されることを抑制することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明のように、センサチップ(60)の裏面(61b)に、凸部(64)を取り囲む窪み部(65)を形成することができる。このような実装構造では、窪み部(65)がない場合と比較して、接合材(70)が窪み部(65)内に濡れ広がるとき、また、窪み部(65)内から凸部(64)側に濡れ広がるときに、濡れ広がる方向が変化して濡れ広がる勢いが減少することになる。このため、センサチップ(60)の裏面(61b)のうち凹部(62)内に接着剤(71)が濡れ広がることをさらに抑制することができ、センサチップ(60)のダイヤフラム(63)に接着剤(71)が付着することをさらに抑制することができる。
【0012】
この場合、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の発明において、窪み部(65)を構成する壁面と凸部(64)を構成する壁面とを連ならせることができる。このような実装構造では、窪み部(65)を構成する壁面と凸部(64)を構成する壁面とが連なった構成とされていない場合と比較すると、窪み部(65)内に引き寄せられる力の方向の変化が小さいため、凸部(64)とステム(40)との間の部分の接着剤(71)に対して窪み部(65)内に引き寄せられる力を大きくすることができる。したがって、さらに、センサチップ(60)のダイヤフラム(63)に接着剤(71)が付着することを抑制することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明のように、間隔保持材(72)を球形状とすることができる。このような実装構造では、間隔保持材(72)が球形状とされているため、センサチップ(60)および被実装部材(40)と接触する間隔保持材(72)が球形状でない場合、例えば、立方体等である場合と比較して、センサチップ(60)および被実装部材(40)と間隔保持材(72)との接触面積を小さくすることができる。このため、間隔保持材(72)が球形状でない場合と比較して、間隔保持材(72)を介して被実装部材(40)からセンサチップ(60)に伝達される熱応力等を小さくすることができる。
【0014】
請求項1ないし5では、本発明をセンサチップの実装構造として把握した場合を説明したが、本発明をセンサチップの実装方法として把握することも可能である。
【0015】
すなわち、請求項6に記載の発明では、半導体基板(61)の裏面(61b)側に凹部(62)を形成することにより構成された薄肉のダイヤフラム(63)を有するセンサチップ(60)を被実装部材(40)に接合材(70)を介して接合するセンサチップの実装方法であって、センサチップ(60)として、裏面(61b)に当該裏面(61b)に対して交差する方向に突出すると共に凹部(62)を取り囲む凸部(64)と、裏面(61b)のうち凸部(64)を挟んで凹部(62)側と反対側に位置する接合領域を有するものを用意する工程と、接合材(70)として、センサチップ(60)と被実装部材(40)とを接合する接着剤(71)と、接着剤(71)に混入された間隔保持材(72)とを有するものを用意する工程と、被実装部材(40)におけるセンサチップ(60)を搭載する領域のうち、接合領域と対向する領域に接合材(70)を塗布する工程と、センサチップ(60)を被実装部材(40)上にマウントすることにより、接合材(70)を濡れ広がらせつつ、間隔保持材(72)をセンサチップ(60)の接合領域と被実装部材(40)とに接触させた状態で、センサチップ(60)を被実装部材(40)に接合する工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
このように、本発明をセンサチップの実装方法として把握した場合についても、センサチップ(60)として裏面(61b)に凹部(62)を取り囲む凸部(64)を有するものを用意し、当該センサチップ(60)を被実装部材(40)における接合領域と対向する領域に塗布された接合材(70)を介して被実装部材(40)に接合するため、上記請求項1に記載の発明と同様に、センサチップ(60)のダイヤフラム(63)に接着剤(71)が付着することを抑制することができる。このため、センサチップ(60)の検出精度が低下することを抑制することができる。
【0017】
例えば、請求項7に記載の発明のように、センサチップ(60)を用意する工程では、センサチップ(60)の裏面(61b)に凸部(64)を取り囲む窪み部(65)が形成されたものを用意してもよい。
【0018】
また、請求項8に記載の発明のように、接合材(70)を用意する工程では、間隔保持材(72)として球形状の間隔保持材(72)を用意し、センサチップ(60)を用意する工程では、凸部(64)におけるセンサチップ(60)の裏面(61b)から先端までの長さが間隔保持材(72)の直径より短くされたセンサチップ(60)を用意してもよい。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態におけるセンサチップの実装構造を適用した圧力センサの断面構成を示す図である。
【図2】図1に示す二点鎖線部分の拡大図である。
【図3】図2に示す二点鎖線部分の拡大図である。
【図4】図2に示すセンサチップの裏面図である。
【図5】ステムの塗布領域に接合材を塗布したときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態におけるセンサチップの実装構造を適用した圧力センサの断面構成を示す図である。
【0022】
図1に示されるように、圧力センサは、箱形状のケース本体10と、当該ケース本体10を閉じる上蓋20および下蓋30を有して構成されている。これらケース本体10、上蓋20および下蓋30は、例えば PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やエポキシ樹脂等の樹脂材料を型成形して構成されている。
【0023】
ケース本体10は、内部に導入空間11、12を構成する仕切り部13を備えていると共に、各導入空間11、12とそれぞれ連結された圧力導入ポート14、15を備えている。これにより、導入空間11、12に圧力導入ポート14、15を介して圧力媒体が導入されるようになっている。特に限定されるものではないが、例えば、導入空間11には圧力導入ポート14を介して排気ガス等の圧力媒体が導入されるようにし、導入空間12には圧力導入ポート15を介して大気圧等が導入されるようにすることができる。
【0024】
また、ケース本体10には、仕切り部13とケース本体10の内壁面との間に被実装部材としてのステム40が二つ圧入固定されている。このステム40は、鉄系金属等をプレス加工や切削加工、冷間鍛造等がされて形成されており、後述のセンサチップ60との熱膨張係数の差が小さいものが用いられる。本実施形態では、後述のセンサチップ60がシリコン等の半導体基板を用いて構成されるため、ステム40は、例えば、セラミックス等が用いられて構成される。
【0025】
そして、ケース本体10の内壁面および仕切り部13とステム40との間には、これらの間の隙間を封止するシール部材50が備えられている。このシール部材50としては、例えば、シリコーンゴム等が用いられる。なお、このシール部材50は、隙間を封止する機能に加えて、ケース本体10の内壁面や仕切り部13から気泡が発生することを抑制する機能も有している。
【0026】
また、各ステム40は、貫通孔40aを有していると共に、上蓋20に対向する部分に貫通孔40aを閉塞するセンサチップ60が接合材70を介して接着固定されている。図2は図1に示す二点鎖線部分の拡大図、図3は図2に示す二点鎖線部分の拡大図である。また、図4は、図2に示すセンサチップ60の裏面図である。なお、図3では、後述する第1ゲル部材は省略して示してある。
【0027】
図2〜図4に示されるように、センサチップ60は、例えば、表面61aと当該表面61aと平行である裏面61bとを有するシリコン等の半導体基板61を用いて構成されている。そして、半導体基板61が裏面61bから異方性エッチング等されて凹部62が形成されることにより構成される薄肉のダイヤフラム63を有しており、このダイヤフラム63の表面には、ブリッジ回路を構成するように形成された図示しないゲージ抵抗が備えられている。つまり、このセンサチップ60は、ダイヤフラム63に圧力が印加されるとゲージ抵抗の抵抗値が変化してブリッジ回路の電圧が変化し、この電圧の変化に応じてセンサ出力信号を出力する半導体ダイヤフラム式のものである。
【0028】
また、センサチップ60には、半導体基板61の裏面61bに、当該裏面61bに対して交差する方向、具体的には、裏面61bに対して垂直方向に突出すると共に凹部62を取り囲む凸部64と、当該凸部64を取り囲む窪み部65が形成されている。そして、裏面61bのうち凸部64を挟んで凹部62側と反対側に接合領域を有している。また、本実施形態では、凸部64を構成する壁面と凹部62を構成する壁面とが連なった構成とされており、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なった構成とされている。さらに、凸部64は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、裏面61bから先端までの長さが50μm程度とされている。
【0029】
なお、凸部64を構成する壁面と凹部62を構成する壁面とが連なった構成とされているとは、凸部64を構成する壁面と凹部62を構成する壁面との間に表面61aと平行である壁面が存在しないことである。また、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なった構成とされているとは、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面との間に表面61aと平行である壁面が存在しないことである。
【0030】
接合材70は、シリコーン系接着剤等の接着剤71と、当該接着剤71に混入された複数の間隔保持材72とを有した構成とされている。この間隔保持材72は、本実施形態では、直径が凸部64の長さより長い直径を有する球形状とされており、例えば、直径が75〜100μm程度のものとされている。また、間隔保持材72を構成する材料としては、センサチップ60の熱膨張係数に近い値を有するものが用いられ、例えば、ジビニルベンゼン等が用いられる。
【0031】
そして、センサチップ60は、上記接合材70を介してステム40と接合されている。具体的には、センサチップ60は、ステム40におけるセンサチップ60の裏面61bと対向する領域のうち、接合領域と対向する領域に位置する塗布領域に塗布された接合材70を介して接合されている。つまり、ステム40は、センサチップ60の裏面61bと対向する領域のうち、凸部64と対向する領域を挟んで凹部62と対向する領域と反対側の領域に塗布領域を有している。そして、当該塗布領域に塗布された接合材70を濡れ広がらせることにより、センサチップ60の裏面61bとステム40とが接合されている。また、センサチップ60とステム40との間は、センサチップ60のうち接合領域とステム40とに接触する間隔保持材72により、所定の間隔、つまり間隔保持材72の直径に相当する間隔が形成されている。
【0032】
なお、センサチップ60は接合材70を濡れ広がらせることによりステム40と接合されているが、センサチップ60の裏面61bには凸部64が形成されており、凸部64により凹部62内に接着剤71が濡れ広がることが抑制されるため、センサチップ60のうち凹部62内に接合材70に含まれる接着剤71は配置されていない。また、接合材70に混入されている間隔保持材72は、全てのものがセンサチップ60とステム40との間に所定の間隔を形成する間隔保持機能を発揮するものではなく、センサチップ60とステム40とに接触することにより、センサチップ60とステム40との間に所定の間隔を形成する間隔保持機能を発揮するものである。言い換えると、接合材70に含まれる間隔保持材72は、全てものがセンサチップ60およびステム40と接触しているわけではない。以上説明したようにして、センサチップ60がステム40に接合されている。
【0033】
また、図1に示されるように、各センサチップ60の裏面61b側には、第1ゲル部材81がステム40の貫通孔40aおよび導入空間11、12のうちステム40近傍の部分に配置されていると共に、この第1ゲル部材81を覆うと共に第1ゲル部材81よりも硬い第2ゲル部材82が導入空間11、12に配置されている。これら、第1、第2ゲル部材81、82としては、腐食性の高い圧力媒体からセンサチップ60を保護することができる耐酸性の高いものを用いることが好ましく、例えば、フッ素系ゲル等が用いられる。
【0034】
また、ケース本体10には、各センサチップ60からの電気信号が入力されると共に演算・増幅等の処理を行って外部に信号を出力する図示しない回路チップが備えられており、各センサチップ60は回路チップと図示しないボンディングワイヤ等により電気的に接続されている。
【0035】
さらに、ケース本体10は、一つの側面部にコネクタ部16を備えている。このコネクタ部16には、ケース本体10内に露出すると共にコネクタ部16に形成された開口部16a内から露出するターミナル17がインサート成形されている。そして、ケース本体10内に露出するターミナル17の一端部は、回路チップと図示しないボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。他方、コネクタ部16の開口部16aから露出するターミナル17の他端部は、ワイヤハーネス等の図示しない外部配線部材を介して外部回路と電気的に接続される。また、ターミナル17のうちケース本体10内に突出している部分には、ターミナル17とケース本体10との隙間を封止する、例えば、ゲル等で構成されるシール部材83が配置されている。
【0036】
また、ケース本体10には溝部18が設けられていると共に突出端19が設けられており、上蓋20には開口端21が設けられ、下蓋30には溝部31が設けられている。そして、溝部18に接着剤91が充填されて上蓋20の開口端21が挿し込まれると共に、溝部31に接着剤92が充填されてケース本体10の突出端19が挿し込まれることにより、ケース本体10と上蓋20および下蓋30とが一体化されている。すなわち、導入空間11、12は、それぞれケース本体10、仕切り部13、センサチップ60、下蓋30で構成されており、各導入空間11、12が仕切り部13により互いに分離された構成とされている。
【0037】
次に、このような圧力センサの製造方法の一例について説明する。
【0038】
まず、コネクタ部16および圧力導入ポート14、15が設けられると共にターミナル17がインサート成形されたケース本体10、上蓋20、下蓋30、貫通孔40aを有するステム40、上記構成のセンサチップ60を用意する。
【0039】
そして、仕切り部13とケース本体10の内壁面との間に二つのステム40を圧入する。その後、ステム40における塗布領域に接合材70を塗布する。図5は、ステム40の塗布領域に接合材70を塗布したときの状態を示す図である。図5に示されるように、ステム40における塗布領域41は、センサチップ60を搭載する領域のうち、凸部64と対向する凸部対向領域42より外側の領域、つまり、センサチップ60の接合領域と対向する領域に位置しており、例えば、四箇所とされている。そして、当該塗布領域41に接合材70が塗布されている。
【0040】
その後、センサチップ60をステム40上にマウントし、接合材70を介してセンサチップ60とステム40とを接合する。具体的には、センサチップ60をステム40上にマウントして塗布されている接合材70を濡れ広がらせることにより、センサチップ60の裏面61bとステム40とを接合する。これにより、上記図2および図3に示されるように、凹部62内に接着剤71がなく、センサチップ60のうち接合領域とステム40とに間隔保持材72が接触した状態で、センサチップ60とステム40とが接合される。
【0041】
すなわち、接合材70は、塗布領域41から周囲に濡れ広がることになるが、センサチップ60の裏面61bには凸部64が形成されているため、接合材70は凸部64と衝突して濡れ広がる勢いが減少することになる。また、接着剤71は狭い空間から広い空間には表面張力により濡れ広がりにくいため、凸部64とステム40との間に塗れ広がった接着剤71は、凹部62内に濡れ広がることが抑制される。したがって、センサチップ60の裏面61bのうち凹部62内に接着剤71が濡れ広がることが抑制され、ダイヤフラム63に接着剤71が付着することが抑制される。
【0042】
また、接合材70に含まれる間隔保持材72も接合材70が濡れ広がることにより移動することになるが、ステム40における塗布領域41が接合領域と対向する領域とされており、間隔保持材72は凸部64の長さより長い直径を有する球形状とされている。このため、接合材70が塗れ広がったとしても間隔保持材72は凸部64と衝突することになる。したがって、間隔保持材72はセンサチップ60のうち接合領域とステム40とに接触した状態となる。言い換えると、凸部64とステム40との間に間隔保持材72が挟まれることが抑制され、センサチップ60がステム40に対して傾くことが抑制される。
【0043】
続いて、ケース10本体にシール部材50を配置したり回路基板を配置したりした後、各センサチップ60と回路チップや、回路チップとターミナル17とをボンディングワイヤを介して電気的に接続する。そして、シール部材83や第1、第2ゲル部材81、82を配置する。その後、溝部18に接着剤91を充填して上蓋20の開口端21を挿し込むと共に、溝部31に接着剤92を充填してケース本体10の突出端19を挿し込み、ケース本体10と上蓋20および下蓋30とを一体化することにより、上記図1に示す圧力センサが製造される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、センサチップ60の裏面61bに凸部64および窪み部65を形成している。そして、ステム40のうちセンサチップ60を搭載したときの接合領域と対向する領域に接合材70を塗布してセンサチップ60とステム40とを接合している。
【0045】
このため、センサチップ60をステム40にマウントして接合材70を塗布領域41から周囲に濡れ広がらせたとき、接合材70は凸部64と衝突して濡れ広がる勢いが減少することになる。また、接合材70のうち接着剤71は狭い空間から広い空間には表面張力により濡れ広がりにくいため、凸部64とステム40との間に塗れ広がった接着剤71は、凹部62内に濡れ広がることが抑制される。したがって、センサチップ60に凸部64を形成しない場合と比較して、センサチップ60の裏面61bのうち凹部62内に接合材70、具体的には接着剤71が濡れ広がることを抑制することができる。このため、センサチップ60のダイヤフラム63に接着剤71が付着することを抑制することができ、センサチップ60の検出精度が低下することを抑制することができる。
【0046】
また、センサチップ60の裏面61bには凸部64を取り囲む窪み部65が形成されているため、接合材70は、窪み部65内に濡れ広がるとき、また、窪み部65内から凸部64側に濡れ広がるときに、濡れ広がる方向が変化して濡れ広がる勢いが減少することになる。さらに、接着剤71のうち凸部64とステム40との間の部分では、窪み部65に流れ込んだ接着剤71から窪み部65内に引き寄せられる力も印加されることになる。このため、センサチップ60の裏面61bのうち凹部62内に接着剤71を濡れ広がることをさらに抑制することができる。
【0047】
また、接着剤71のうち凸部64とステム40との間の部分では、窪み部65に流れ込んだ接着剤71から窪み部65内に引き寄せられる力が印加されることになるが、この力は窪み部65から凸部64の先端に向かう壁面に沿った方向となる。すなわち、センサチップ60が窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なった構成とされていない場合、つまり、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面との間に表面61aと平行な壁面が存在する場合には、窪み部65内に引き寄せられる力が窪み部65を構成する壁面に沿った方向から表面61aと平行な壁面に沿った方向に変化した後、凸部64の壁面に沿った方向になる。つまり、本実施形態では、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なった構成とされているため、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なった構成とされていない場合と比較すると、窪み部65内に引き寄せられる力の方向の変化を小さくすることができる。このため、凸部64とステム40との間の部分の接着剤71に対して窪み部65内に引き寄せられる力を大きくすることができ、センサチップ60の裏面61bのうち凹部62内に接着剤71が濡れ広がることをさらに抑制することができる。
【0048】
そして、本実施形態では、ステム40のうち凸部対向領域42より外側の領域、つまりセンサチップ60の接合領域と対向する領域に接合材70を塗布しており、間隔保持材72の直径が凸部64の長さより長くされているため、接合材70が濡れ広がったときに凸部64とステム40との間に間隔保持材72が挟まれることが抑制される。したがって、センサチップ60がステム40に対して傾くことを抑制することができ、また、センサチップ60とステム40との間が所望の間隔より大きくなることを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、間隔保持材72が球形状とされているため、間隔保持材72が球形状でない場合と比較して、間隔保持材72がセンサチップ60およびステム40と接触する接触面積を小さくすることができ、間隔保持材72を介してステム40からセンサチップ60に伝達される熱応力等を小さくすることができる。
【0050】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、ダイヤフラム63を有するセンサチップ60をステム40に接合する実装構造を圧力センサに適用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、流量センサ等にも適用することができる。すなわち、本発明は、ダイヤフラム63を有するセンサチップ60を被実装部材に台座を介さずに接合してなる実装構造および実装方法に適用することが可能である。
【0051】
また、上記第1実施形態では、凸部64を構成する壁面と凹部62を構成する壁面とが連なっている例について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、凸部64を構成する壁面と凹部62を構成する壁面との間に、表面61aと平行な壁面を有する形状とすることもできる。
【0052】
さらに、上記第1実施形態では、センサチップ60の裏面61bに窪み部65が形成されている例について説明したが、センサチップ60の裏面61bに窪み部65が形成されていなくてもよい。つまり、センサチップ60の裏面61bに凸部64が形成されていれば、凸部64を形成しない場合と比較して、凹部62内に接着剤71が濡れ広がることを抑制することができ、センサチップ60の検出精度が低下することを抑制することができる。また、上記第1実施形態では、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面とが連なっている例について説明したが、窪み部65を構成する壁面と凸部64を構成する壁面との間に表面61aと平行な壁面を有する形状とすることもできる。
【0053】
そして、上記第1実施形態では、間隔保持材72が球形状であるものについて説明したが、例えば、間隔保持材72は立方体、正八面体、正十六面体等であってもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態では、センサチップ60に凸部64および窪み部65が一つずつ形成された例について説明したが、もちろん、センサチップ60に凸部64および窪み部65が複数形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ケース本体
20 上蓋
30 下蓋
40 ステム
60 センサチップ
61 半導体基板
62 凹部
63 ダイヤフラム
64 凸部
65 窪み部
70 接合材
71 接着剤
72 間隔保持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(61)の裏面(61b)側に凹部(62)を形成することにより構成された薄肉のダイヤフラム(63)を有するセンサチップ(60)を、被実装部材(40)における塗布領域(41)に塗布された接合材(70)を濡れ広がらせることにより、前記被実装部材(40)に接合してなるセンサチップの実装構造であって、
前記センサチップ(60)は、前記裏面(61b)に当該裏面(61b)に対して交差する方向に突出すると共に前記凹部(62)を取り囲む凸部(64)と、前記裏面(61b)のうち前記凸部(64)を挟んで前記凹部(62)側と反対側に位置する接合領域を有し、
前記接合材(70)は、前記センサチップ(60)と前記被実装部材(40)とを接合する接着剤(71)と、前記接着剤(71)に混入された間隔保持材(72)とを有し、
前記被実装部材(40)は、前記センサチップ(60)の前記裏面(61b)と対向する領域のうち、前記接合領域と対向する領域に前記塗布領域(41)を有しており、
前記センサチップ(60)と前記被実装部材(40)との間は、前記センサチップ(60)のうち前記接合領域と前記被実装部材(40)とに接触する前記間隔保持材(72)により、所定の間隔が形成されていることを特徴とするセンサチップの実装構造。
【請求項2】
前記凸部(64)における前記裏面(61b)から突出方向の先端までの長さが、前記センサチップ(60)と前記被実装部材(40)とに接触している前記間隔保持材(72)における前記裏面(61)の垂直方向の長さより短いことを特徴とする請求項1に記載のセンサチップの実装構造。
【請求項3】
前記センサチップ(60)の前記裏面(61b)には、前記凸部(64)を取り囲む窪み部(65)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサチップの実装構造。
【請求項4】
前記窪み部(65)を構成する壁面と前記凸部(64)を構成する壁面とが連なっていることを特徴とする請求項3に記載のセンサチップの実装構造。
【請求項5】
前記間隔保持材(72)は、球形状であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のセンサチップの実装構造。
【請求項6】
半導体基板(61)の裏面(61b)側に凹部(62)を形成することにより構成された薄肉のダイヤフラム(63)を有するセンサチップ(60)を被実装部材(40)に接合材(70)を介して接合するセンサチップの実装方法であって、
前記センサチップ(60)として、前記裏面(61b)に当該裏面(61b)に対して交差する方向に突出すると共に前記凹部(62)を取り囲む凸部(64)と、前記裏面(61b)のうち前記凸部(64)を挟んで前記凹部(62)側と反対側に位置する接合領域を有するものを用意する工程と、
前記接合材(70)として、前記センサチップ(60)と前記被実装部材(40)とを接合する接着剤(71)と、前記接着剤(71)に混入された間隔保持材(72)とを有するものを用意する工程と、
前記被実装部材(40)における前記センサチップ(60)を搭載する領域のうち、前記接合領域と対向する領域に前記接合材(70)を塗布する工程と、
前記センサチップ(60)を前記被実装部材(40)上にマウントすることにより、前記接合材(70)を濡れ広がらせつつ、前記間隔保持材(72)を前記センサチップ(60)の前記接合領域と前記被実装部材(40)とに接触させた状態で、前記センサチップ(60)を前記被実装部材(40)に接合する工程と、を含むことを特徴とするセンサチップの実装方法。
【請求項7】
前記センサチップ(60)を用意する工程では、前記裏面(61b)に前記凸部(64)を取り囲む窪み部(65)が形成されたものを用意することを特徴とする請求項6に記載のセンサチップの実装方法。
【請求項8】
前記接合材(70)を用意する工程では、前記間隔保持材(72)として球形状のものを用意し、
前記センサチップ(60)を用意する工程では、前記凸部(64)における前記裏面(61b)から先端までの長さが前記間隔保持材(72)の直径より短くされたものを用意することを特徴とする請求項6または7に記載のセンサチップの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21923(P2012−21923A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161284(P2010−161284)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】