説明

ソレノイド駆動装置

【課題】駆動時に発生する熱を低減できるソレノイド駆動装置を提供する。
【解決手段】ソレノイド駆動装置100において、第1リレー20は、第1電源部30とソレノイド40との接続をオンまたはオフする。第2リレー22は、第2電源部32とソレノイド40との接続をオンまたはオフする。統合IC10は、第1リレー20および第2リレー22からのソレノイド40への通電を切り替え、ソレノイド40への通電を切り替える間、第1リレー20および第2リレー22のそれぞれの通電をともに所定時間オン状態にするよう制御する。第1トランジスタ60は、第2電源部32と第1リレー20との接続をオンまたはオフする。第1リレー20または第2リレー22に不具合が生じた場合、統合IC10は、第1トランジスタ60または第2トランジスタ62の一方をオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ制御は、車両に搭載されたブレーキシステムの液圧アクチュエータを制御することで実行される。液圧アクチュエータは、ホイールシリンダへ流れ込むブレーキフルード量を制御する電磁弁を備える。この電磁弁にはソレノイドが設けられ、ソレノイドは電源部から駆動電流の供給をうけて駆動する。ソレノイドと電源部との通電はリレーのオンおよびオフにより制御される。特許文献1は、ハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子とを備えたリニアソレノイド駆動回路を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−203415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキバイワイヤ方式のブレーキ制御装置では、電磁弁の開閉制御により、制動力が制御される。その結果、電磁弁のソレノイドを制御するリレーの発熱量が増大することがある。また、一つのソレノイドを、複数の電源部およびリレーにより駆動する場合、各リレーのオン時間が長くなると、全体の発熱量が増大する問題もある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動時に発生する熱を低減できるソレノイド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のソレノイド駆動装置は、第1電源部とソレノイドとの接続をオンまたはオフする第1リレーと、第2電源部とソレノイドとの接続をオンまたはオフする第2リレーと、第1リレーおよび第2リレーのオンまたはオフを制御する制御部であって、第1リレーおよび第2リレーからのソレノイドへの通電を切り替え、ソレノイドへの通電を切り替える間、第1リレーおよび第2リレーのそれぞれの通電をともに所定時間オン状態にするよう制御する制御部と、第2電源部と第1リレーとの接続をオンまたはオフする第1トランジスタと、第1電源部と第2リレーとの接続をオンまたはオフする第2トランジスタと、を備える。制御部は、第1リレーからソレノイドへの通電状態を監視する第1通電監視部と、第2リレーからソレノイドへの通電状態を監視する第2通電監視部とを有する。制御部は、第1通電監視部または第2通電監視部により第1リレーおよび第2リレーのうち一方のリレーに不具合があると検出すると、第1トランジスタおよび第2トランジスタのうち一方をオンする。これにより、各リレーに発生する熱を低減できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のソレノイド駆動装置によれば、リレーにおいて発生する熱を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るソレノイド駆動装置とソレノイドを示す構成概念図である。
【図2】比較技術におけるソレノイドおよびリレーの通電状態を説明する図である。
【図3】実施形態に係るソレノイド駆動装置におけるソレノイドへの通電方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係るソレノイド駆動装置100とソレノイド40を示す構成概念図である。ソレノイド駆動装置100は、第1電源部30および第2電源部32(これらを区別しない場合「電源部」という)とECU50とを備えて、ソレノイド40を駆動する。第1電源部30は、第1ワイヤーハーネス70でECU50と接続し、第2電源部32は、第2ワイヤーハーネス72でECU50と接続する。
【0010】
ECU50は、ソレノイド40に駆動電流を供給する第1リレー20および第2リレー22(これらを区別しない場合「リレー」という)と、第2電源部32と第1リレー20との接続をオンまたはオフする第1トランジスタ60と、第1電源部30と第2リレー22との接続をオンまたはオフする第2トランジスタ62と、第1リレー20、第2リレー22、第1トランジスタ60および第2トランジスタ62を制御する統合IC10とを備える。第1トランジスタ60および第2トランジスタ62は、通常時、オフに設定されている。
【0011】
統合IC10は、第1リレー20および第2リレー22にソレノイド40を駆動するための制御信号を送出する。第1リレー20および第2リレー22は、統合IC10からの制御信号を受け取ると、その制御信号に応じて電源部とソレノイド40との通電をオンまたはオフする。ここで通電のオンまたはオフは、電源部とソレノイド40との接続をオンまたはオフすることで実現される。また統合IC10は、ワイヤーハーネスの断線などが生じた場合に、第1トランジスタ60または第2トランジスタ62のいずれか一方に、トランジスタをオンするための制御信号を送出する。
【0012】
統合IC10は第1通電監視部12および第2通電監視部14を有し、第1通電監視部12および第2通電監視部14により第1リレー20および第2リレー22の電流値を検出して、監視する。第1リレー20および第2リレー22にシャント抵抗を用いて電流値を検出してもよい。具体的に第1通電監視部12は、第1リレー20からソレノイド40への通電状態を監視し、第1リレー20からソレノイド40への電流値が所定値より低下すると、第1ワイヤーハーネス70の断線を検出する。また第2通電監視部14は、第2リレー22からソレノイド40への通電状態を監視し、第2リレー22からソレノイド40への電流値が所定値より低下すると、第2ワイヤーハーネス72の断線を検出する。
【0013】
統合IC10はさらにトランジスタ制御部16を有し、トランジスタ制御部16は、第1トランジスタ60および第2トランジスタ62のオンまたはオフを制御する。実施形態では、第1通電監視部12または第2通電監視部14により、第1リレー20および第2リレー22のうち一方のリレーに不具合があると検出すると、トランジスタ制御部16が、第1トランジスタ60および第2トランジスタ62のうち一方をオンする制御を行う。
【0014】
実施形態において、ソレノイド40は第1リレー20および第2リレー22を介して電源部から駆動電流の供給をうける。ソレノイド40はグランド34に接地されている。ソレノイドは、たとえば車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)の液圧アクチュエータユニットに配置される電磁弁に設けられる。液圧アクチュエータユニットは、動力液圧源またはマスタシリンダユニットから供給されたブレーキフルードの液圧を電磁弁により適宜調整してディスクブレーキユニットに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。液圧アクチュエータユニットには複数の電磁弁が設けられ、複数の電磁弁のそれぞれにソレノイドが設けられる。
【0015】
電磁弁は、第1リレー20および第2リレー22から所定の駆動電流を供給されると、開弁または閉弁し、ブレーキフルードを流通または遮断する。たとえば、常開型の電磁弁では、ソレノイドのコイルに所定の駆動電流が供給されると、ソレノイドに連結する弁子がソレノイドとともに弁座に向かって移動し、弁子が弁座に当接すると、弁座に設けられた孔を塞ぎ、ブレーキフルードの流通を遮断する。
【0016】
ソレノイドは第1リレー20および第2リレー22から駆動電流の供給を受ける。これにより、一方のリレーからソレノイドへの駆動電流の供給が停止した場合であっても、他方のリレーから駆動電流を供給することができる。
【0017】
図2は、比較技術におけるソレノイドおよびリレーの通電状態を説明する図である。図2では横軸が時間を示し、縦軸が通電のオンおよびオフを示す。ソレノイド40の通電状態は100%である。100%の通電状態とは、統合IC10から指令された通電量に対して十分な通電量が確保されている状態をいい、所望の通電量が供給されている状態をいう。
【0018】
図2に示す比較技術では、ソレノイド40が100%の通電状態であるとき、第1リレー20および第2リレー22の両方からそれと同等の100%の通電状態で駆動電流が供給されている。
【0019】
ソレノイド40を駆動している際、何らかの理由で第1リレー20から駆動電流を供給することができなくなった場合、第2リレー22からそのまま駆動電流を供給することで、ソレノイド40を停止することなく駆動することができる。この点で図2に示す比較技術は、フェールセーフの観点から有効な技術であることがいえる。
【0020】
しかしながら、この比較技術によると、通常の使用態様において、二つの電流供給経路で一つのソレノイド40を駆動するため、一つの電流供給経路で駆動する場合と比べて、リレーにおける発熱量は増大する。そこで実施形態のソレノイド駆動装置100では、統合IC10が二つの電流供給経路の通電量を抑えるように制御する。
【0021】
図3は、実施形態に係るソレノイド駆動装置100におけるソレノイド40への通電方法を説明する図である。図3では横軸が時間を示し、縦軸が通電のオンおよびオフを示す。第1リレー20および第2リレー22の通電のオンおよびオフは統合IC10により制御される。この例では、ソレノイド40の駆動が時刻T1から開始される。
【0022】
図3に示す通電制御によると、時刻T1において第1リレー20の通電がオフからオンとなり、第1リレー20からソレノイド40に駆動電流の供給が開始される。一方、時刻T1において第2リレー22の通電はオフのままである。時刻T2になると、第1リレー20に加えて、第2リレー22の通電もオンとなり、第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40に駆動電流が供給される。
【0023】
時刻T3になると、第1リレー20の通電はオフされ、第2リレー22のみからソレノイド40に駆動電流が供給される。時刻T4になると、第1リレー20の通電が再びオンされ、第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40に駆動電流が供給される。
【0024】
時刻T5になると、第2リレー22の通電がオフされ、第1リレー20のみからソレノイド40に駆動電流が供給される。このようにソレノイド40の通電をオンする期間、第1リレー20および第2リレー22の通電のオン・オフを繰り返すことで、第1リレー20および第2リレー22の通電量を減らすことができ、統合IC10での発熱量を抑えることができる。また、時刻2と時刻T3の間、および時刻T4および時刻T5の間の所定時間にリレーの切り替えが実行されており、リレーの切り替えでは第1リレー20および第2リレー22がともに所定時間だけオン状態にされている。これにより、通電オン時の立ち上がりやリレーの応答遅れを吸収して、ソレノイド40を一時的に停止することなく、ソレノイド40に所望の通電状態を確実に維持することができる。
【0025】
統合IC10は、第1通電監視部12および第2通電監視部14により第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40への通電状態を監視する。統合IC10は、第1リレー20に指令した制御情報と、第1通電監視部12により取得した第1リレー20の通電状態とを比較して、第1リレー20の通電状態に不具合があるかどうか検出する。たとえば、第1リレー20に通電のオンを示す制御信号を送出しても、第1通電監視部12により検出した電流がゼロのままであれば統合IC10は第1ワイヤーハーネス70に断線などの不具合があると検出する。また同様に、統合IC10は、第2リレー22に指令した制御情報と、第2通電監視部14により取得した第2リレー22の通電状態とを比較して、第2リレー22の通電状態に不具合があるかどうか検出する。これにより、第1リレー20および第2リレー22の通電状態の不具合を検出することができ、それぞれの電流供給経路からソレノイド40に通電できているかどうか監視することができる。統合IC10は、第1リレー20または第2リレー22の通電状態の不具合を検出すると、トランジスタ制御部16により第1トランジスタ60または第2トランジスタ62をオンに制御する。
【0026】
たとえば、第1通電監視部12が不具合を検出すると、統合IC10は、第1ワイヤーハーネス70が断線するなどして、第1電源部30からの電源供給を受けられない状態にあることを判定する。そのため、統合IC10は、トランジスタ制御部16により第1トランジスタ60をオンさせて、第2電源部32と第1リレー20とを接続させるように制御する。これにより、第1リレー20は、ソレノイド40に駆動電流を供給できるようになり、第2リレー22と協働して、図3に示す通電制御を実現できるようになる。
【0027】
一方、第2通電監視部14が不具合を検出すると、統合IC10は、第2ワイヤーハーネス72が断線するなどして、第2電源部32からの電源供給を受けられない状態にあることを判定する。そのため、統合IC10は、トランジスタ制御部16により第2トランジスタ62をオンさせて、第1電源部30と第2リレー22とを接続させるように制御する。これにより、第2リレー22は、ソレノイド40に駆動電流を供給できるようになり、第1リレー20と協働して、図3に示す通電制御を実現できるようになる。
【0028】
実施形態におけるソレノイドはECBに配置される電磁弁に設けられる態様を説明したが、それ以外のソレノイドにもソレノイド駆動装置100を用いることは当然に可能である。
【0029】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
10・・・統合IC、12・・・第1通電監視部、14・・・第2通電監視部、16・・・トランジスタ制御部、20・・・第1リレー、22・・・第2リレー、30・・・第1電源部、32・・・第2電源部、34・・・グランド、40・・・ソレノイド、50・・・ECU、60・・・第1トランジスタ、62・・・第2トランジスタ、70・・・第1ワイヤーハーネス、72・・・第2ワイヤーハーネス、100・・・ソレノイド駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源部とソレノイドとの接続をオンまたはオフする第1リレーと、
第2電源部と前記ソレノイドとの接続をオンまたはオフする第2リレーと、
前記第1リレーおよび前記第2リレーのオンまたはオフを制御する制御部であって、前記第1リレーおよび前記第2リレーからの前記ソレノイドへの通電を切り替え、前記ソレノイドへの通電を切り替える間、前記第1リレーおよび前記第2リレーのそれぞれの通電をともに所定時間オン状態にするよう制御する制御部と、
前記第2電源部と前記第1リレーとの接続をオンまたはオフする第1トランジスタと、
前記第1電源部と前記第2リレーとの接続をオンまたはオフする第2トランジスタと、を備え、
前記制御部は、前記第1リレーから前記ソレノイドへの通電状態を監視する第1通電監視部と、前記第2リレーから前記ソレノイドへの通電状態を監視する第2通電監視部と、を有し、
前記制御部は、前記第1通電監視部または前記第2通電監視部により前記第1リレーおよび前記第2リレーのうち一方のリレーに不具合があると検出すると、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのうち一方をオンすることを特徴とするソレノイド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−151580(P2012−151580A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7470(P2011−7470)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】