説明

タイマ装置

【課題】時間分解能を高めたタイマにより低消費電力で精度よく時間計測するタイマ装置を提供する。
【解決手段】入力信号を反転して出力する反転手段10と、反転手段10からの入力信号を所定時間遅延させて出力する遅延手段11と、遅延手段11に接続され所定の制御信号により出力を所定の状態に保持する保持手段19とを備え、計測開始信号と計測停止信号が入力されたとき、その指示信号を前記保持手段19の制御端子に所定の形態で入力する保持選択手段22及びラッチ手段21を有し、反転手段10と遅延手段11と保持手段19とで1組の信号生成手段を構成すると共に、この信号生成手段を複数段設けリング状に接続してHi/Loのクロック信号を生成するリングオシレータを構成し、最終段の信号生成手段の出力をカウントして時間計測を行う構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間を計測するタイマ装置に関し、特に、リングオシレータを用いた高分解能計測技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタイマ装置に関し、超音波の伝搬時間等を計測し、その伝搬時間から流速や流量を求める超音波流速計等において、図4に示すように、流路1に超音波振動子2および3を流れの方向に相対して設置し、制御部4はタイマ5をスタートさせると同時に駆動回路6を動作させる。駆動回路6により駆動された超音波振動子2から送信された超音波は、超音波振動子3で受信され、超音波振動子3の出力を受けた受信検知回路7により受信検知される。タイマ5は超音波が送信されてから受信検知されるまでの伝搬時間を計測し、演算部8はタイマ5が計測した時間から流路1の中の流速を演算によって求めていた。
【0003】
また、超音波の伝搬時間を上流方向と下流方向の両方を求め、その逆数差から流速を求めているものもあった。
【0004】
また、低流速時の微少な伝搬時間の変化を計測するため、時間分解能の高い第2のタイマを設置し、基本クロック用のタイマと高分解能タイマとを組み合わせ、低流速時の計測精度を高めるようにした超音波流速計もあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、高分解能タイマの一例として図5に示すように、反転手段と遅延手段を奇数個リング状に接続したリングオシレータがあり、構成が簡単、起動時間が短い、高周波発振が可能という特徴を持っている。
【0006】
このリングオシレータの動作を図5を用いて説明すると、反転手段9、10は入力信号を反転させた出力をそれぞれ遅延手段11へ出力する。それぞれの遅延手段11では同じ信号を遅延時間経過した後にそれぞれに対する次段の反転手段9、遅延手段11へ出力する。このようにリング状に接続された経路一周中に反転手段は奇数個設置しているので、安定することなく時間経過とともに信号がリング状経路を移動し発振するように構成されている。この発振数をカウンタ12で計数し時間計測する。
【0007】
反転手段の出力遅延時間に対し、遅延手段の出力遅延時間は長いため、反転手段の出力周期はそれぞれの遅延手段の合計遅延時間の約2倍となり、この周期が時間計測の分解能となる。
【特許文献1】特開2000−213971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、流量計測が必要なガス器具等においては高性能化や保安基準の高精度化が進み、さらなる低流速を計測する必要性が生じ、このような低流速を計測する流速計を実現しようとした場合、前記従来の構成においては、高分解能タイマの周波数をさらに上げる必要がある。この場合、周波数の増加に比例し消費電流が増え、電池で長時間動作させることができないという問題があった。
【0009】
さらに、前記従来構成においてリングオシレータの周波数を上げるため、遅延手段11の遅延時間を短くすると、反転手段の入力電圧がHi或いはLoで安定する前に、遅延手
段の出力がHiからLo或いはLoからHiへ変化するため、反転手段9の入力信号振幅がスレッショルドレベル付近で小さな幅で変動するようになる。このような状態ではノイズ、回路の電源電圧、反転手段の特性などの要因で発振動作が不安定になるという問題があった。
【0010】
そこで、従来技術を用いた構成にあっては、時間計測の高分解能化を安定かつ低消費電流で実現するには限度があり、要求される低流速の計測を満足できる精度で行うことが困難であるという課題を有していた。
【0011】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、リングオシレータの周波数を上げることなく高分解能の時間計測を可能とし、低消費電力で精度よく計測可能なタイマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するため本発明のタイマ装置は、入力信号を反転して出力する反転手段と、前記反転手段からの入力信号を所定時間遅延させて出力する遅延手段と、前記遅延手段に接続され所定の制御信号により出力を所定の状態に保持する保持手段とを備え、前記反転手段と前記遅延手段と前記保持手段とで1組の信号生成手段を構成すると共に、この信号生成手段を複数段設けリング状に接続してHi/Loのクロック信号を生成するリングオシレータを構成し、前記リングオシレータの最終段の信号生成手段の出力をカウントして時間計測を行うタイマ装置であって、計測開始信号と計測停止信号が入力されたとき、その指示信号を前記保持手段の制御端子に所定の形態で入力する保持選択手段及びラッチ手段を有する構成としたものである。
【0013】
上記発明によれば、反転手段と遅延手段で構成する信号生成手段の出力を保持する保持手段を設け、この保持手段を介在させて信号生成手段をリング状に複数組接続してリングオシレータを構成し、計測停止信号で作動するラッチ手段によりリングオシレータの動作を停止したとき保持手段の動作が有効となるようにしているため、この保持手段の動作により、リング状に接続された信号生成手段の途中で計測停止状態となったとき、最終段の信号生成手段の出力を計数するカウンタに計上されない時間であるリングオシレータの発振位相情報を失うことなく保持することが可能となり、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件として反映させることができる。
【0014】
このように、リングオシレータの停止時に全ての保持手段を有効として使用した場合は、計測停止時点におけるリングオシレータの発振位相情報を用いて次回の計測を開始することができるため、時間分解能は反転手段一段分の遅延時間となり、リングオシレータの発振周波数を上げることなく高い時間分解能を得ることができる。
【0015】
また、保持手段を有効にする別の形態として、リングオシレータの停止時に予め定めた保持手段のみ有効として使用する形態があり、この場合は計測停止時点における保持手段の信号を固定することができ、最終段の信号生成回路に接続した保持手段のみ有効として使用すると、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件を一定にすることができ、1回の計測を同一条件で行うことができるため正確な計測が可能となる。
【0016】
以上のように、保持手段を有効にする形態を変更することで、用途に応じて適切な時間計測手段を選択することができる。例えば、所定間隔で時間計測を行うような場合、1回当たりの計測を複数回行ってその平均値を求める方法においては、リングオシレータの停止時に全ての保持手段を有効として使用する形態が高分解能の計測を実現することができ、所定間隔で1回しか計測しないように場合は、リングオシレータの停止時に特定の保持
手段を有効として使用する形態が計測条件を一定とした高精度の計測を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超音波流速計は、発振周波数を上げることなく高分解能の計測を実現することができ、かつ用途に応じて適切な時間計測手段を選択することができるため、低消費電流で高精度かつ安定したタイマ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、入力信号を反転して出力する反転手段と、前記反転手段からの入力信号を所定時間遅延させて出力する遅延手段と、前記遅延手段に接続され所定の制御信号により出力を所定の状態に保持する保持手段とを備え、前記反転手段と前記遅延手段と前記保持手段とで1組の信号生成手段を構成すると共に、この信号生成手段を複数段設けリング状に接続してHi/Loのクロック信号を生成するリングオシレータを構成し、前記リングオシレータの最終段の信号生成手段の出力をカウントして時間計測を行うタイマ装置であって、計測開始信号と計測停止信号が入力されたとき、その指示信号を前記保持手段の制御端子に所定の形態で入力する保持選択手段及びラッチ手段を有する構成としたことを特徴とするものである。
【0019】
そして、反転手段と遅延手段で構成する信号生成手段の出力を保持する保持手段を設け、この保持手段を介在させて信号生成手段をリング状に複数組接続してリングオシレータを構成し、計測停止信号で作動するラッチ手段によりリングオシレータの動作を停止したとき保持手段の動作が有効となるようにしているため、この保持手段の動作により、リング状に接続された信号生成手段の途中で計測停止状態となったとき、最終段の信号生成手段の出力を計数するカウンタに計上されない時間であるリングオシレータの発振位相情報を失うことなく保持することが可能となり、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件として反映させることができる。
【0020】
このように、リングオシレータの停止時に全ての保持手段を有効として使用した場合は、計測停止時点におけるリングオシレータの発振位相情報を用いて次回の計測を開始することができるため、時間分解能は反転手段一段分の遅延時間となり、リングオシレータの発振周波数を上げることなく高い時間分解能を得ることができる。
【0021】
また、保持手段を有効にする別の形態として、リングオシレータの停止時に予め定めた保持手段のみ有効として使用する形態があり、この場合は計測停止時点における保持手段の信号を固定することができ、最終段の信号生成回路に接続した保持手段のみ有効として使用すると、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件を一定にすることができ、1回の計測を同一条件で行うことができるため正確な計測が可能となる。
【0022】
以上のように、保持手段を有効にする形態を変更することで、用途に応じて適切な時間計測手段を選択することができる。例えば、所定間隔で時間計測を行うような場合、1回当たりの計測を複数回行ってその平均値を求める方法においては、リングオシレータの停止時に全ての保持手段を有効として使用する形態が高分解能の計測を実現することができ、所定間隔で1回しか計測しないように場合は、リングオシレータの停止時に特定の保持手段を有効として使用する形態が計測条件を一定とした高精度の計測を実現することができる。
【0023】
第2の発明は、計測開始信号が入力されたとき、リングオシレータ内の信号移動が可能な状態となるように保持手段の制御端子を制御し、計測停止信号が入力されたとき、予め
定めた特定の位置でリングオシレータ内の信号移動が停止するように保持手段の制御端子を制御するか、停止信号が入力された時点の信号移動位置で停止するように保持手段の制御端子を制御するか、を選択できる構成としたことを特徴とするものである。
【0024】
そして、計測開始信号と計測停止信号で出力が切り替わるラッチ回路の出力を保持手段の状態を変更する制御端子に接続し、保持手段を介してリングオシレータの動作を制御すると共に、保持手段の動作を制御し出力保持機能を有効または無効にするようにしているため、簡単な構成で保持手段を有効にする形態を変更し、用途に応じた適切な時間計測手段が選択できるようになっている。
【0025】
第3の発明は、複数組の信号生成手段をリング状に接続して構成したリングオシレータにおいて、それぞれの信号生成手段がほぼ同等の特性を有するように構成したことを特徴とするものである。
【0026】
そして、反転手段一段当たり、つまり1組の信号生成手段の時間間隔が一定となるため、正確な時間を計測することができ、時間間隔の検定も不要となる。
【0027】
第4の発明は、信号生成手段を構成する遅延手段は、反転手段を偶数個接続することで所定の遅延時間を設定する構成としたことを特徴とするものである。
【0028】
そして、反転手段と遅延手段の構成が同じなので、リングオシレータ内の移動する信号の速度が一定になり、検知手段で検知する信号の間隔が等しくなるので、正確な時間を計測することができ、時間間隔の検定も不要となる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態におけるタイマ装置を超音波流速計に用いた場合のブロック図を示すものである。
【0031】
図1において、流体が流れる流路1に超音波の送信手段及び受信手段を構成する超音波振動子2および3を流れの方向に相対して設置し、この超音波振動子2および3の間で一方から超音波を送信し他方で受信して、その伝搬時間を測定する。制御部4からの信号で駆動回路6を動作させ超音波振動子2または3から超音波の送信を開始すると同時にタイマ5を動作させ送信開始からの時間計測を開始する。
【0032】
超音波振動子2または3の一方から送信された超音波は他方の超音波振動子で受信され、この受信信号が受信検知回路7に送られ所定レベル以上の受信信号を検知すると受信完了となり、タイマ5の動作を停止し伝搬時間の計測を終了する。
【0033】
また、駆動回路6の出力は方向切替手段13に入力され、制御部4の方向切替出力に応じて超音波の送受方向を決定し、決定された送受方向に基づいて超音波振動子2、3と駆動回路6、受信検知回路7とを接続して超音波の送受動作を行い、次の方向切替出力で超音波振動子2、3と駆動回路6、受信検知回路7の接続を変更し超音波の伝搬方向を切替える。例えば、初めに駆動回路6と超音波振動子2、受信検知回路7と超音波振動子3とを接続する。駆動回路6の出力により超音波振動子2が駆動され送信された超音波は、超音波振動子3で受信される。超音波振動子3の出力を受けた受信検知回路7により受信検知される。受信検知回路7は受信検知するとタイマ5の動作を停止する。
【0034】
このように、まず初めに上流側に設置された超音波振動子2から流体の流れ方向に送信された超音波の伝搬時間が、タイマ5に設けられた2つのタイマのうち、一方のタイマを用いて計測される。このタイマ5に設けられた2つのタイマは制御部4が出力する方向切替信号により選択され、選択された一方のタイマにより超音波の伝搬時間を計測する。
【0035】
次に、制御部4は方向切替出力を変更し、駆動回路6と超音波振動子3、受信検知回路7と超音波振動子2とを接続する。以下同様に、下流側に設置された超音波振動子3から流体の流れ方向に逆らって送信される超音波の伝搬時間が、タイマ5に設けられた2つのタイマのうち、他方のタイマを用いて計測される。
【0036】
このように、制御部4から出力される方向切替信号によって、上流側から送信される超音波の伝搬時間と下流側から送信される超音波の伝搬時間がタイマ5に設けられた2つのタイマを用いてそれぞれ計測される。
【0037】
そして、演算部8はタイマ5が計測した伝搬時間から伝搬時間逆数差法により流路1内の流速を求める。
【0038】
次に、タイマ5の具体的構成について図2のブロック図を用いて説明する。
【0039】
タイマ5は、上流側から送信される超音波の伝搬時間と下流側から送信される超音波の伝搬時間を計測するために、リングタイマA16とリングタイマB17の2つのタイマが設けられ、制御部4からの方向切替信号によりどちらのタイマで時間を計測するかを選択するセレクタ18を備えている。
【0040】
セレクタ18は制御部4から出力される方向切替信号によってリングタイマA16とリングタイマB17とを切替え、各方向毎に異なるタイマで伝搬時間を計測する。
【0041】
そして、リングタイマA16、リングタイマB17の詳細構成は図3に示すように構成されている。
【0042】
入力信号を判定させて出力する反転手段10と、該反転手段10からの出力を所定時間遅延させて出力する遅延手段11と、該遅延手段11の出力をそのまま次段に出力するかHiに変化したときの出力を保持するかを選択可能な保持手段19とで構成された1組の信号生成手段5aを複数個リング状に接続して発振部を形成しリングオシレータを構成している。
【0043】
そして、リング状に接続された経路一周中に反転手段10は奇数個設置され、保持手段19の入力がLoの間、安定することなく時間経過と共に信号がリング状経路を移動し発振するように構成している。つまり、計測開始信号の入力で初段の信号生成手段5aが動作を開始し所定の遅延時間を経過したのち次段の信号生成手段5bに出力する。信号生成手段5bでも同様に所定の遅延時間を経過したのち次段の信号生成手段5cに出力する。以下同様に、信号生成手段5d、5e、5fを経由して最終段の信号生成手段5gの遅延手段11の出力をカウンタ20で計数し、再度初段の信号生成手段5aに入力して上記動作を繰り返すことで、最終段の信号生成手段5gの出力は、複数の信号生成手段5a〜5gで設定される遅延時間の合計で規制されたHi/Loのクロック信号を生成することになる。このクロック信号の立ち上がり、または立ち下りを検知し計数することで時間計測を行うことができる。
【0044】
また、制御部4からの計測開始信号、及び受信検知回路7からの計測停止信号で出力状態をHiまたはLoに保持し、リングタイマA16やリングタイマB17のリングオシレ
ータを動作状態または停止状態に保持するためのラッチ手段として、タイマ5にはRSラッチ回路21が設けられており、制御部4からの計測開始信号はリセット端子(R)に接続され、受信検知回路7からの計測停止信号はセット端子(S)に接続されている。そして、RSラッチ回路21の出力(Q)は保持手段19の制御端子に接続され、保持手段19を介してリングオシレータの初段の信号生成回路5aに入力されている。
【0045】
ここで、保持手段19は、RSラッチ回路21の出力(Q)がLoのときは入力をそのまま出力し、出力(Q)がHiのときは各信号生成回路の遅延手段11がHiに変化したときの出力を保持する。RSラッチ回路21の入力は制御部4の出力である計測開始信号と受信検知回路7の出力の計測停止信号となっている。計測開始信号によりRSラッチ回路21はリセットされ出力(Q)がLo状態となって保持手段19の出力保持機能を無効としてリングタイマA16またはリングタイマB17の動作を開始させる。
【0046】
次に、受信検知回路7が受信検知すると受信検知信号が発生しRSラッチ回路21はセットされ出力(Q)がHi状態となって保持手段19の出力保持機能を有効としてリングオシレータの初段の信号生成回路5aの入力をHi状態に保持し、リングタイマA16、あるいはリングタイマB17の動作を停止状態とする。
【0047】
また、保持手段19の出力保持機能を有効にする方法として、リングオシレータ内の特定の保持手段19のみを有効として作用させる方法と、リングオシレータ内の全ての保持手段19を有効として作用させる方法があり、この方法選択手段として保持選択手段22を設け、制御部4から指示される選択信号に基づいて、特定の保持手段19のみを有効とするか、全ての保持手段19を有効とするかを選択するようにしている。そして、どちらかが選択され、計測停止信号が入力されてRSラッチ回路21の出力(Q)がHi状態になったとき、選択された出力保持機能に応じて保持手段19の制御端子にHi信号が供給される。
【0048】
この保持選択手段22で全ての保持手段19を有効にする方法が選択された場合は、計測停止信号によりカウンタ20でカウントされずリングオシレータの途中で信号移動が停止した場合、その停止時の信号移動状態を保持手段19で信号位置情報として保持することができ、途中の状態を失うことなく、次回の同方向の伝搬時間計測時に停止時に保持した信号位置情報から引き続いて計測を開始することができ、複数回の時間計測を実施してその平均値から伝搬時間を求めるという計測方法にあっては、計測誤差をほとんど無くすことが可能となり、計測分解能を高めることができる。つまり、リングオシレータの発振周波数を高くすることなく、発振周波数以上の時間分解能を得ることができる。
【0049】
また、保持選択手段22で特定の保持手段19のみ有効にする方法が選択された場合は、計測停止信号が入力されたとき、必ず特定の保持手段19がHi状態で停止するため、次回の計測開始時には必ず同一条件で発振を開始することになり、例えば、図3において信号生成手段5gの保持手段19を計測停止信号でHi状態を保持するようにしておくと、次回の計測開始信号が入力されたときは、初段の信号生成手段5aの入力は必ずHi状態から開始することになり、計測開始時の測定条件を同一にすることができる。
【0050】
この方法にあっては、所定周期で1回だけ時間計測してその値を伝搬時間として求めるように場合に計測開始時の測定条件を一定にすることで、測定バラツキを抑えた精度の高い計測を実現することができる。
【0051】
また、複数組の信号生成手段5a〜5gをリング状に接続して構成したリングオシレータにおいて、それぞれの信号生成手段5a〜5gがほぼ同等の特性を有するように構成しており、この構成により、反転手段10の一段当たり、つまり1組の信号生成手段5a〜
5gの時間間隔が一定となるため、正確な時間を計測することができ、時間間隔の検定も不要となる。
【0052】
さらに、信号生成手段5a〜5gを構成する遅延手段11は、反転手段23を偶数個接続することで所定の遅延時間を設定する構成としており、この構成により、反転手段10と遅延手段11の構成が同じとなり、リングオシレータ内の移動する信号の速度が保持手段19の間で一定となり、保持する時間間隔が一定となるので、正確な時間を計測することができ、時間間隔の検定も不要となる。
【0053】
また、制御部4が判断する計測モードに応じて、保持選択手段22を介して保持手段19の出力保持機能を有効にする形態を変更することで、用途に応じて適切な時間計測手段を選択することができる。
【0054】
例えば、リングオシレータの停止時に全ての保持手段19を有効として使用した高分解能計測モードは、計測停止時点におけるリングオシレータの発振位相情報を用いて次回の計測を開始することができるため、時間分解能は反転手段10の一段分の遅延時間となり、リングオシレータの発振周波数を上げることなく高い時間分解能を得ることができる。
【0055】
また、リングオシレータの停止時に予め定めた保持手段19のみ有効として使用した高精度計測モードは、計測停止時点における特定の保持手段19の信号を固定することができ、最終段の信号生成回路5gに接続した保持手段19のみ有効として使用すると、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件を一定にすることができ、1回の計測を同一条件で行うことができるため正確な計測が可能となる。
【0056】
つまり、1回当たりの計測を複数回行ってその平均値を求める方法においては、リングオシレータの停止時に全ての保持手段19を有効として使用する形態の高分解能計測モードが高分解能の計測を実現することができ、所定間隔で1回しか計測しないような場合はリングオシレータの停止時に特定の保持手段19を有効として使用する形態の高精度計測モードが計測条件を一定とした高精度の計測を実現することができる。
【0057】
そして、制御部4が判断する計測モードとして、前回計測時の伝搬時間が予め定めた所定値以上のとき、高精度計測モードを選択するように時間選択信号を出力するモードを有し、制御部4から時間選択信号が出力されたとき、予め定めた保持手段19のみ有効となるように保持手段19の制御端子を制御する時間保持選択手段14を備えている。
【0058】
上記構成によれば、流速の分解能は伝搬時間と時間分解能との比で決まるため、伝搬時間が長くなると計測分解能が高くなる。そこで、伝搬時間が必要な計測分解能が得られる値以上の場合に、予め定めた保持手段19のみ有効とし1回の計測結果を正確に求める。
【0059】
また、別の計測モードとして、前回計測時の流速が予め定めた所定値以上のとき、高精度計測モードを選択するように流速選択信号を出力するモードを有し、制御部4から流速選択信号が出力されたとき、予め定めた保持手段19のみ有効となるように保持手段19の制御端子を制御する流速保持選択手段15を備えている。
【0060】
上記構成においても、必要な流速の計測精度を計測値に対して一定とすると、計測流速が早くなるにつれ流速の分解能も多くなり、必要な時間分解能は長くなる。そこで、流速計測に必要な分解能が得られる値以上の場合に、予め定めた保持手段19のみ有効とし1回の計測結果を正確に求める。
【0061】
以上のように構成された超音波流速計において、その動作を簡単に説明すると、まず、
制御部4から計測開始信号が出力されると、駆動回路6が動作を開始して方向切替手段13により上流側に設置された超音波振動子2から超音波が送信され、流路1内の流体を伝搬して下流側に設置された超音波振動子3で受信される。
【0062】
また、制御部4からの計測開始信号は同時にタイマ5に送られ、方向切替信号によりセレクタ18がリングタイマA16を選択し、リングタイマA16のRSラッチ回路21のリセット端子(R)に入力された計測開始信号によって出力(Q)がLo状態に保持され、保持手段19の出力保持機能が無効となって、反転手段10と遅延手段11と保持手段19で構成された信号生成手段5a〜5gが所定の遅延時間を経過してリング状に信号移動を開始し所定の幅を有したHi/Lo信号がクロック信号として生成される。このクロック信号として生成される最終段の信号生成手段5gの出力をカウンタ20で計数することで時間を計測することができる。
【0063】
そして、超音波振動子3で受信された信号は受信検知手段7で所定レベル以上の信号を検知したとき受信完了と判断して計測停止信号を出力する。
【0064】
受信検知手段7からの計測停止信号は、リングタイマA16のRSラッチ回路21のセット端子(S)に入力され、出力(Q)をHi状態に保持し、保持手段19の制御端子をHi固定して出力保持機能を有効に作用させ、リング状に形成した信号生成手段5a〜5g内の信号移動を停止させる。
【0065】
この制御部4の計測開始信号から受信検知手段7の計測停止信号までの時間をカウンタ20で計数し演算部8で伝搬時間として求める。
【0066】
このとき、制御部4が前回計測時の伝搬時間または流速が予め定めた所定値以上のときは、高分解能計測モードで時間計測をする必要がないと判断し、リング状に接続された保持手段19のうち、最終段の信号生成手段5gを形成する保持手段19のみ出力保持機能が有効となるように、時間保持選択手段14あるいは流速保持選択手段15等の保持選択手段22を作用させ、高精度計測モードを選択する。
【0067】
この場合、計測開始信号でリングオシレータの発振が開始し、計測停止信号が入力されると発振を停止する。その間の発振回数をカウンタ20が計数する。
【0068】
そして、発振停止時は必ず特定の保持手段19の出力、例えば信号生成手段5gの保持手段19の出力をHi固定して停止する。これにより、次回の計測開始時は必ず同じ位置の信号生成手段5aからリングオシレータの信号移動を開始させることができ、1回の計測で時間を求めるように場合は、測定条件を一定にした精度の高い時間計測を行うことができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、高精度計測モードを選択する条件として、伝搬時間と流速について説明したが、これに限定されるものではなく、電池電圧、漏洩検知時、温度等、計測モードを選択して有効と考えられる条件、全てに適用できることは言うまでもない。
【0070】
そして、制御部4が前回計測時の伝搬時間または流速が所定値以下で高分解能計測モードが必要であると判断したときは、リング状に接続された全ての保持手段19の出力保持機能が有効になるように、保持選択手段22を作用させ、高分解能計測モードを選択する。
【0071】
この場合、計測開始信号でリングオシレータの発振が開始し、計測停止信号が入力されると発振を停止する。その間の発振回数をカウンタ20が計数する。
【0072】
そして、発振停止時にリング状に形成したリングオシレータの途中で信号移動が停止した場合、例えば信号生成手段5cで信号移動が停止した場合は信号生成手段5cの保持手段19の出力をHi固定して停止する。これにより発振位相情報として保持することができ、次の計測開始信号が入力されたとき、前回の停止時の発振位相から引き続いて信号移動を開始させることができ、連続して複数回の時間計測を行いその平均値を求めるような場合は、停止のたびに変動する発振位相の影響を受けることなく、分解能の高い時間計測を行うことができる。
【0073】
つまり、リング状経路一周で定まるクロック信号の幅を、信号生成手段5a〜5gの数で定まる分解能まで高めることができ、発振周波数を大きくすることなく、高分解能時間計測を実現することができる。
【0074】
次に、制御部4から方向切替信号が出力されると、下流側に設置された超音波振動子3から流体の流れに逆らって超音波が送信され、流路1内の流体を伝搬して上流側に設置された超音波振動子2で受信される。
【0075】
同時に計測開始信号はタイマ5に送られ、方向切替信号によりセレクタ18がリングタイマB17を選択し、リングタイマB17のRSラッチ回路21のリセット端子(R)に入力された計測開始信号によって出力(Q)がLo状態に保持され、保持手段19の出力保持機能が無効となって、反転手段10と遅延手段11と保持手段19で構成された信号生成手段5a〜5gが所定の遅延時間を経過してリング状に信号移動を開始し所定の幅を有したHi/Lo信号がクロック信号として生成される。このクロック信号として生成される最終段の信号生成手段5gの出力をカウンタ20で計数することで時間を計測することができる。
【0076】
そして、超音波振動子2で受信された信号は受信検知手段7で所定レベル以上の信号を検知したとき受信完了と判断して計測停止信号を出力する。
【0077】
受信検知手段7からの計測停止信号は、リングタイマB17のRSラッチ回路21のセット端子(S)に入力され、出力(Q)をHi状態に保持し、保持手段19の制御端子をHi固定して出力保持機能を有効に作用させ、リング状に形成した信号生成手段5a〜5g内の信号移動を停止させる。
【0078】
この制御部4の計測開始信号から受信検知手段7の計測停止信号までの時間をカウンタ20で計数し演算部8で伝搬時間として求める。
【0079】
以下、高分解能計測モードと高精度計測モードの選択は、上流側から下流側に超音波を伝搬して時間計測を行う場合と同様の条件で行うことができ、その作用も全く同じであるため、説明を省略する。
【0080】
そして、演算部8は、このようにして求めた上流側から下流側の伝搬時間と下流側から上流側の伝搬時間から、伝搬時間逆数差法により流路1内の流速を求める。
【0081】
以上のように、本実施の形態におけるタイマ装置は、反転手段10と遅延手段11で構成する信号生成手段5a〜5gの出力を保持する保持手段19を設け、この保持手段19を介在させて信号生成手段5a〜5gをリング状に複数組接続してリングオシレータを構成し、計測停止信号で作動するラッチ手段21によりリングオシレータの動作を停止したとき保持手段19の動作が有効となるようにしているため、この保持手段19の動作により、リング状に接続された信号生成手段5a〜5gの途中で計測停止状態となったとき、
最終段の信号生成手段5gの出力を計数するカウンタ20に計上されない時間であるリングオシレータの発振位相情報を失うことなく保持することが可能となり、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件として反映させることができる。
【0082】
このように、リングオシレータの停止時に全ての保持手段19を有効として使用した場合は、計測停止時点におけるリングオシレータの発振位相情報を用いて次回の計測を開始することができるため、時間分解能は反転手段一段分の遅延時間となり、リングオシレータの発振周波数を上げることなく高い時間分解能を得ることができる。
【0083】
また、保持手段19を有効にする別の形態として、リングオシレータの停止時に予め定めた保持手段19のみ有効として使用する形態があり、この場合は計測停止時点における保持手段19の信号を固定することができ、最終段の信号生成回路5gに接続した保持手段19のみ有効として使用すると、次の計測開始信号で動作を開始するリングオシレータの発振開始条件を一定にすることができ、1回の計測を同一条件で行うことができるため正確な計測が可能となる。
【0084】
以上のように、保持手段19を有効にする形態を変更することで、用途に応じて適切な時間計測手段を選択することができる。例えば、所定間隔で時間計測を行うような場合、1回当たりの計測を複数回行ってその平均値を求める方法においては、リングオシレータの停止時に全ての保持手段19を有効として使用する形態が高分解能の計測を実現することができ、所定間隔で1回しか計測しないように場合は、リングオシレータの停止時に特定の保持手段19を有効として使用する形態が計測条件を一定とした高精度の計測を実現することができる。
【0085】
また、計測開始信号と計測停止信号で出力が切り替わるラッチ回路21の出力を保持手段19の状態を変更する制御端子に接続し、保持手段19を介してリングオシレータの動作を制御すると共に、保持手段19の動作を制御し出力保持機能を有効または無効にするようにしているため、簡単な構成で保持手段19を有効にする形態を変更し、用途に応じた適切な時間計測手段が選択できるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明のタイマ装置は、発振周波数を上げることなく計測分解能を高めることができ、低消費電力で高精度な時間計測が可能になり、ガスメータや水道メータ等の電池駆動の各種計測装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態1におけるタイマ装置を用いた超音波流速計の全体ブロック図
【図2】同超音波流速計のタイマのブロック図
【図3】同超音波流速計のタイマの詳細構成を示すリングタイマのブロック図
【図4】従来の超音波流速計の全体ブロック図
【図5】従来の超音波流速計のタイマの詳細構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0088】
1 流路
2、3 超音波振動子(送受信手段)
4 制御部
5 タイマ
5a〜5g 信号生成手段
8 演算手段
10 反転手段
11 遅延手段
16 リングタイマA(タイマ)
17 リングタイマB(タイマ)
19 保持手段
20 カウンタ
21 RSラッチ回路(ラッチ手段)
22 保持選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を反転して出力する反転手段と、前記反転手段からの入力信号を所定時間遅延させて出力する遅延手段と、前記遅延手段に接続され所定の制御信号により出力を所定の状態に保持する保持手段とを備え、
前記反転手段と前記遅延手段と前記保持手段とで1組の信号生成手段を構成すると共に、この信号生成手段を複数段設けリング状に接続してHi/Loのクロック信号を生成するリングオシレータを構成し、前記リングオシレータの最終段の信号生成手段の出力をカウントして時間計測を行うタイマ装置であって、
計測開始信号と計測停止信号が入力されたとき、その指示信号を前記保持手段の制御端子に所定の形態で入力する保持選択手段及びラッチ手段を有することを特徴とするタイマ装置。
【請求項2】
計測開始信号が入力されたとき、リングオシレータ内の信号移動が可能な状態となるように保持手段の制御端子を制御し、
計測停止信号が入力されたとき、予め定めた特定の位置でリングオシレータ内の信号移動が停止するように保持手段の制御端子を制御するか、停止信号が入力された時点の信号移動位置で停止するように保持手段の制御端子を制御するか、を選択できる構成としたことを特徴とする請求項1記載のタイマ装置。
【請求項3】
複数組の信号生成手段をリング状に接続して構成したリングオシレータにおいて、それぞれの信号生成手段がほぼ同等の特性を有するように構成した請求項1または2記載のタイマ装置。
【請求項4】
信号生成手段を構成する遅延手段は、反転手段を偶数個接続することで所定の遅延時間を設定する構成とした請求項1〜3のいずれか1項記載のタイマ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−215906(P2008−215906A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50985(P2007−50985)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】